説明

水中油滴型エマルション及びその製造方法、並びに機能性粉末及びその製造方法

【課題】透明性が高く、且つ、保存安定性に優れた機能性油性成分を含むエマルションの製造方法を提供する。
【解決手段】機能性油性成分を含む油相と水相とを混合してエマルションを得る水中油滴型エマルションの製造方法であって、前記油相及び水相の少なくとも一方がHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、それぞれ独立にマイクロミキサ−の微小空間に分けられた前記油相及び水相を、別な微小空間において80℃以下の温度でミクロ混合することを特徴とする水中油滴型エマルションの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油滴型エマルション、その製造方法、およびそれらを用いて形成された機能性粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水性飲料、水性食品ならびに水性化粧品に油性成分を添加することは行われてきた。しかし、油性成分は水に対して不溶性または難溶性のため、乳化手段等の手段を用いて、油性成分をいわゆるエマルションとして水性媒体中に混合することが一般的であった。エマルションは、その粒径に依存して光を散乱するため、エマルションおよびそれを添加した食品や化粧品に濁りを生じ、外観上好ましくない場合が有り、光散乱が非常に小さくなるまでエマルションの粒径を微細化する事が望まれていた。
【0003】
また、エマルションは一般に準安定状態であり、保存中に粒径が大きくなり、また長期保存をすると水相と油相が分離する事も大きな問題であった。飲料における油滴凝集物の器壁付着やネックリングは、こうしたエマルション中の油滴分離現象の一つである。
【0004】
前記エマルションを微細化するための方法として、PIT乳化法(例えば、非特許文献1参照。)等の界面化学的乳化法が知られているが、この方法は油性成分に応じて、使用出来る界面活性剤、乳化温度領域および組成が限定されるため、一般的に用いるのは難しい方法であった。
【0005】
汎用的に用いる微細乳化法として、機械力を用いた方法、すなわち外部から強い剪断力を与えることで油滴を分裂させる方法が適用されている。機械力として最も一般的なものは、高速、高剪断攪拌機である。このような攪拌機としては、ホモミキサー、ディスパーミキサーおよびウルトラミキサーと呼ばれるものが市販されている。高速、高剪断力攪拌機では、数リットル以下の少量の場合、微細化に有効であるが、スケールが大きくなるに伴い、全体の液を流動させるために消費されるエネルギーが大きくなり、エネルギー効率がきわめて悪くなる。
【0006】
また、微細化に有用な別な装置として高圧ホモジナイザーがあり、種々の装置が市販されている。高圧ホモジナイザーでは、実際の乳化に使われるエネルギーに対し熱に変換されるエネルギーがきわめて大きいため、乳化時の発熱が著しく、乳化中に機能性素材が変質、劣化するリスクが高い。
【0007】
比較的エネルギー効率の良い分散装置として超音波ホモジナイザーがある。しかし、超音波ホモジナイザーは数百ミリリットル以下のバッチ照射では微細化効果はあるものの、同じ微細化効果を持ちつつスケールアップに対応する装置が無いのが現状である。
【0008】
また、カロテノイド等のような油性成分を、食品、化粧品、医薬品及びその他の加工品等に添加して使用するためには、分散性の高い安定したエマルションとする必要があった。しかしながら、カロテノイド等のような油性成分は不安定な構造を有するため、長期間に亘り、乳化粒子の粒径が満足できる範囲内で、かつ、高い分散性を保った状態で安定化させることは困難であった。
【0009】
これらに対して、カロテノイド系色素の分散安定性を検討した技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、エマルション中の油滴粒径、色素成分の酸化等による劣化の点で、充分満足できるものではなかった。
【0010】
一方、近年マイクロ化学プロセスという技術が注目を浴びている。これは、混合、反応、抽出、分離、濃縮、加熱と言った化学プロセスを数百μm以下の微少な流路や空間で行うことにより、プロセス効率を飛躍的に高めようというものである。すなわち、微少空間であることによって、原材料同士の分子間の距離が小さくなり反応速度が上がる、流路壁や原材料同士での接触面積が体積に比べ大きくなり反応速度が上がる、原材料や装置の質量が小さくなるので熱容量が小さくなり加熱、冷却を容易に行うことができる、と言った特徴を生かし従来の大量生産,大規模プラントに代わり、必要な場所で必要な量だけを効率よく生成することを目指している。
【0011】
マイクロ化学プロセスの中で主に混合を目的に用いるものを総称してマイクロミキサーと呼んでいる。マイクロミキサーを用いたミクロ混合の試みは盛んに行われているが、水と油と言った通常では混ざりにくいもの同士を瞬時に混合し、同時に一方の液中に他方の液を微細滴として分散する、いわゆる乳化技術としての応用はあまり行われていなかった。
【0012】
このような中、上記マイクロミキサーを用いた化粧品や薬剤の調合物の調製方法としてエマルション調製について開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、ここで行われている乳化方法では主として非常に粒径の大きなエマルションしか調製出来ず、安定性も不十分なものであった。また、一部に透明エマルションの例が示されてはいるが、これは大量のグリセリンを添加して100℃付近まで加熱するという過酷な条件でしか微細化が出来ない特殊な方法であり、食品等も含め一般的に適用するのは困難な方法であった。特に加熱や、酸化に弱い機能性油性成分の微細乳化には適さない方法であった。
【0013】
【特許文献1】特開平9−328419号公報
【特許文献2】特表2005−506841号公報
【特許文献3】国際公開第00/54735号パンフレット
【非特許文献1】Emulsion and Solubilization, K.Shinoda,S.Friberg,John Wiley & Sons,p.95〜123(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、透明性が高く、且つ、保存安定性に優れた機能性油性成分を含むエマルション、その製造方法、およびそれを用いて製造された機能性粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0016】
<1> 機能性油性成分を含む油相と水相とを混合してエマルションを得る水中油滴型エマルションの製造方法であって、前記油相及び水相の少なくとも一方がHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、それぞれ独立にマイクロミキサ−の微小空間に分けられた前記油相及び水相を、別な微小空間において80℃以下の温度でミクロ混合することを特徴とする水中油滴型エマルションの製造方法。
<2> 機能性油性成分を含む油相と水相とを混合してエマルションを得る水中油滴型エマルションの製造方法であって、前記機能性成分を含有する油相中に水溶性有機溶媒を含み、前記油相及び水相の少なくとも一方が非イオン性界面活性剤を含み、かつ、それぞれ独立にマイクロミキサ−の微小空間に分けられた前記油相及び水相を、別な微小空間において80℃以下の温度でミクロ混合することを特徴とする水中油滴型エマルションの製造方法。
【0017】
<3> 前記マイクロミキサーが中心衝突型マイクロミキサーであることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
<4> 前記マイクロミキサ−の微小空間に分けられた水相、油相及びマイクロミキサーの保温温度がそれぞれ80℃以下であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【0018】
<5> 前記非イオン性界面活性剤がレシチンを含むことを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
<6> 前記油性成分がカロテノイド類を含むことを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか1項に水中油滴型エマルションの製造方法。
【0019】
<7> 前記カロテノイド類がアスタキサンチン類を含むことを特徴とする上記<6>の水中油滴型エマルションの製造方法。
<8> 前記水中油滴型エマルションがタンパク質類及び糖類から選択される1種以上含むことを特徴とする上記<1>〜<7>のいずれか1項に水中油滴型エマルションの製造方法。
【0020】
<9> 前記エマルションの油滴の体積平均粒径を40nm以上200nm以下とすることを特徴とする上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
<10> 機能性油性成分を含む油相と水相とを有する水中油滴型エマルションであって、前記エマルションがHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、油滴の体積平均粒径が40nm以上200nm以下であることを特徴とする水中油滴型エマルション。
【0021】
<11> 前記機能性油性成分が水に不溶又は水に難溶性の食品用機能性材料を含むことを特徴とする上記<10>に記載の水中油滴型エマルション。
<12> 前記機能性油性成分が水に不溶性または難溶性の化粧品用機能性材料を含むことを特徴とする上記<10>に記載の水中油滴型エマルション。
【0022】
<13> 前記油相が有機溶媒を含有することを特徴とする上記<10>〜<12>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
<14> 前記油性成分がカロテノイド類を含むことを特徴とする上記<10>〜<13>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
【0023】
<15> 前記HLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤がレシチンを含むことを特徴とする上記<10>〜<14>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
<16> 前記水中油滴型エマルションがタンパク質類及び糖類から選択される1種以上を含有することを特徴とする上記<10>〜<15>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
【0024】
<17> 前記油相が水相の全質量に対して0.5〜30質量%であることを特徴とする上記<10>〜<16>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
<18> 上記<10>〜<17>のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションを乾燥して水易分散性乾燥粉末を製造することを特徴とする機能性粉末の製造方法。
<19> 上記<18>に記載の機能性粉末の製造方法を用いて製造された機能性粉末。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、機能性油性成分を劣化させることなく、乳化粒子の粒径が小さく且つ保存安定性に優れた、機能性油性成分を含む水中油滴型エマルション、及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、機能性油性成分の微細油滴状態を保持したまま、水易分散性の乾燥粉末、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[水中油滴型エマルション及びその製造方法]
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法は、機能性油性成分を含む油相と水相とを混合してエマルションを得る水中油滴型エマルションの製造方法であって、前記油相及び水相の少なくとも一方がHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、それぞれ独立にマイクロミキサ−の微小空間に分けられた前記油相及び水相を、別な微小空間において80℃以下の温度でミクロ混合することを特徴とする(第1の態様)。
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法は、機能性油性成分を含む油相と水相とを混合してエマルションを得る水中油滴型エマルションの製造方法であって、前記機能性成分を含有する油相中に水溶性有機溶媒を含み、前記油相及び水相の少なくとも一方が非イオン性界面活性剤を含み、かつ、それぞれ独立にマイクロミキサ−の微小空間に分けられた前記油相及び水相を、別な微小空間において80℃以下の温度でミクロ混合することを特徴とする(第2の態様)。
本発明の製造方法は、前記第1の態様又は第2の態様の構成を有することにより、機能性油性成分を劣化させることなく、乳化粒子の粒径が小さく透明性に優れ、且つ保存安定性に優れた、水中油滴型エマルションを製造することが出来るものである。
本発明におけるミクロ混合とは、後述するマイクロミキサーを所定の混合条件下で使用して、少なくとも300nm以下の体積平均粒径となる微細粒子を生成可能な混合をいう。
【0027】
(マイクロミキサー)
本発明において用いられるマイクロミキサーとは、独立した微小空間中で異なる液同士を均一混合する装置を表す。
本発明に於けるマイクロミキサーは、主に2つの異なる液を微小空間中で混合するもので、一方の液が機能性油性成分を含有する油相であり、もう一方が水を主成分とする水相である。
本発明者はマイクロ化学プロセスの一つである粒径が小さなエマルション調製にマイクロミキサーを適用した場合、比較的低エネルギーで発熱が少なく、通常の攪拌乳化方式や高圧ホモジナイザー乳化に比べて、粒径が揃っていて、保存安定性にも優れる良好なエマルションが得られることを見出した。熱劣化し易い機能性油性成分(特に、カロテノイド等)を含む乳化に最適な方法であることも明らかになった。
【0028】
マイクロミキサーを用いて乳化するポイントは、水相と油相をそれぞれ微小空間に分け、それぞれの微小空間同士を接触、あるいは衝突させることにある。片方だけを微小空間に分け、もう一方がバルクであるような方法である、膜乳化法やマイクロチャネル乳化法とは明らかに異なるものであり、実際に片方だけを微小空間に分けても本発明のような効果は得られなかった。
【0029】
本発明で用いられるマイクロミキサーとしては、種々の構造のものを用いることが出来る。
マイクロミキサーにおけるミキシング方法としては、層流を維持してミキシングする方法と、流れを乱して、すなわち乱流でミキシングする方法の2種を挙げることができる。
層流を維持してミキシングする方法では、流路幅より流路深さの寸法を大きくとることで、2液の境界面積をなるべく大きくし、両層の厚さを薄くすることが微細粒子とする点で効果的である。また、2液の入り口を多数に分割して交互に流す多層流にすることも微細粒子とする点で効果的である。
一方、乱流でミキシングする方法では、それぞれの液を狭い流路に分けて比較的高速で流す方法が一般的である。アレイ化したマイクロノズルを用いて片方の液を、微小空間に導入されたもう一方の液中に噴出させる方法も微細粒子とする点で効果的である。また、高速で流れる液同士を種々の手段を用いて強制的に接触させる方法は特に好ましい方法である。
前者の層流を用いた方法は、粒子サイズ分布をシャープにするということができ、後者の乱流を用いた方法は、非常に微細なエマルションが得ることができる。安定性及び透明性の点で、乱流を用いた方法がより好ましい。
【0030】
乱流を用いた方法としては、櫛歯型、中心衝突型、遠心力型、山武型等のマイクロミキサーを挙げることができる。
前記櫛歯型マイクロミキサーとしては、IMM社製に代表されるように、2つの櫛歯状の流路が対面して交互に入り組むように配置された構造となっている。櫛歯状流路の幅は、25〜50μmを選択することができ、この中でも、流路幅は狭い方が好ましく、最も狭い25μmのものが好ましい(例えば、SSIMM−SS−Ni25、IMM社製)。
【0031】
中心衝突型マイクロミキサーとしては、KMミキサーに代表されるように運動エネルギーを利用して強制接触をはかる構造となっている。具体的には、長澤ら(「H.Nagasawa et al, Chem.Eng.Technol,28,No.3,324−330(2005)」、特開2005−288254号公報)によって開示された、中心衝突型マイクロミキサーが挙げられる。
【0032】
前記強制接触を図る中心衝突型マイクロミキサーとは異なる、別の強制接触方式のマイクロミキサーとしては、山武マイクロミキサー((株)山武製)に代表されるマイクロミキサーが挙げられる。具体的には、柳川ら「(Savemation Review,vol.23,60−63(2005)」によって開示された。
【0033】
遠心力型マイクロミキサーとしては、遠心力を用いて強制接触をはかるマイクロミキサーが挙げられ、具体的には、S.Haeberle(「S.Haeberle et al, Chem.Eng.Technol,28,No.5,613−616(2005)」)らによって開示された、遠心力強制接触型マイクロミキサーが挙げられる。
【0034】
上記マイクロミキサーの中でも、エマルション粒径の微細化、機能性素材の乳化時の劣化を防止する観点から、櫛歯型マイクロミキサー、中心衝突型マイクロミキサー(KMミキサー)がより好ましく、中心衝突型マイクロミキサー(KMミキサー)が特に好ましい。
【0035】
本発明におけるマイクロミキサーでミクロ混合して乳化する場合、乳化時の温度(乳化温度)は得られるエマルションの粒径均一性の観点からマイクロミキサーの前記別な微小空間の温度(マイクロミキサーのミクロ混合部の温度)を80℃以下としてミクロ混合する必要があるが、0〜80℃が好ましく、5〜75℃が特に好ましい。
前記乳化温度0℃以上とすることにより、分散媒の主体が水であるため、乳化温度管理でき好ましい。
【0036】
また、水中油滴型エマルションでは分散媒の主体は水であるため、マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は100℃以下であることが好ましい。
前記保温温度を100℃以下とすることにより、保温温度の管理が容易に制御でき、また、乳化性能に悪影響があるミクロな突沸現象を無くすことができる。前記保温温度は80℃以下の温度で制御することがさらに好ましい。
マイクロミキサーの前記微小空間に分けられた油相、水相、及びマイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は、水相及び油相に添加される成分によっても異なるが、それぞれ独立に0〜80℃が好ましく、5〜75℃が特に好ましい。
油相に水溶性有機溶媒を含む場合、マイクロミキサーの前記微小空間に分けられた油相、水相、及びマイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は、それぞれ独立に、0〜50℃が好ましく、5〜25℃が特に好ましい。
マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度と、マイクロミキサーの前記微小空間に分けられた油相および水相の保温温度と、マイクロミキサーの前記微小空間に分けられる前の油相および水相の保温温度(即ち、油相および水相供給タンクの保温温度)がそれぞれ異なっていても良いが、同じ温度にする事が混合の安定性の点で好ましい。
【0037】
本発明において、マイクロミキサーの微小空間に分けられる前後の水相、油相、及びマイクロミキサーの前記微小空間及び前記別な微小空間の保温温度を室温より高くして、ミクロ混合して乳化した後は、マイクロミキサーにより得られた水中油滴型エマルションは採取後、冷却して常温にすることが好ましい。
【0038】
本発明におけるマイクロミキサーで乳化する場合、乳化時の油相と水相の流量としては、用いるマイクロミキサーによっても異なるが、エマルション粒径の微細化および粒径分布のシャープ化の観点から、水相の流量としては、10〜500ml/minが好ましく、20〜400ml/minがより好ましく、50〜300ml/minが特に好ましい。
油相の流量としては、エマルション粒径の微細化および混合安定性の観点から、1〜70ml/min(が好ましく、3〜60ml/minがより好ましく、7〜40ml/minが特に好ましい。
【0039】
また、水相及び油相の送液圧力としては、水相と油相は50〜5000KPaと10〜1000KPaが好ましく、100〜2000KPaと20〜500KPaがより好ましく、200〜1000KPaと40〜200KPaが特に好ましい。
前記水相の送液圧力を50〜5000KPaとすることにより、安定な送液流量を維持出来る傾向となり、油相の送液圧力が10〜1000KPaとすることにより、均一な混合性が得られる傾向となり好ましい。
【0040】
本発明において、前記流量、送液圧力及び保温温度はそれぞれ好ましい例の組合せがより好ましい。
【0041】
次に、前記水相、油相がマイクロミキサーに導入され、水中油滴型エマルションとして排出されるまでの経路について、本発明におけるマイクロミキサーの一例としてマイクロデバイスの例(図1)を用いて説明する。
【0042】
図1に示されるようにマイクロデバイス100は、それぞれが円柱状の形態の供給要素102、合流要素104および排出要素106により構成されている。
【0043】
供給要素102の合流要素104に対向する面には、本発明における油相又は水相の流路としての断面が矩形の環状チャネル108および110が同心状に形成されている。供給要素102にはその厚さ(または高さ)方向に貫通してそれぞれの環状チャンネルに至るボア112および114が形成されている。
【0044】
合流要素104には、その厚さ方向に貫通するボア116が形成されている。このボア116は、マイクロデバイス100を構成するために要素を締結した場合、供給要素102に対向する合流要素104の面に位置するボア116の端部120が環状チャンネル108に開口するようになっている。図示した態様では、ボア116は4つ形成され、これらが環状チャンネル108の周方向で等間隔に配置されている。
【0045】
合流要素104には、ボア116と同様にボア118が貫通して形成されている。ボア118も、ボア116と同様に、環状チャンネル110に開口するように形成されている。ボア118も環状チャンネル110の周方向で等間隔に配置され、かつ、ボア116とボア118が交互に位置するように配置されている。
【0046】
合流要素104の排出要素106に対向する面122には、マイクロチャンネル124および126が形成されている。このマイクロチャンネル124または126の一端はボア116または118の開口部であり、他方の端部は、面122の中心128であり、全てのマイクロチャンネルはこの中心128に向かってボアから延在し、中心で合流している。マイクロチャンネルの断面は、例えば矩形であってよい。
【0047】
排出要素106は、その中心を通過して厚さ方向に貫通するボア130が形成されている。従って、このボアは、一端にて合流要素104の中心128に開口し、他端にてマイクロデバイスの外部に開口している。
【0048】
本マイクロデバイス100では、ボア112および114の端部にてマイクロデバイス100の外部から供給される流体AおよびBは、それぞれボア112および114を経由して環状チャンネル108および110に流入する。
【0049】
環状チャンネル108とボア116が連通し、環状チャンネル108に流入した流体Aは、ボア116を経由してマイクロチャンネル124に入る。また、環状チャンネル110とボア118が連通し、環状チャンネル110に流入した流体Bは、ボア118を経由してマイクロチャンネル126に入る。流体AおよびBは、それぞれマイクロチャンネル124および126に流入した後、中心128に向かって流れて合流する。
【0050】
前記合流した流体は、ボア130を経由してマイクロデバイスの外部にストリームCとして排出される。
【0051】
このようなマイクロデバイス100は、下記のような仕様とすることができる。
環状チャンネル108の断面形状、幅/深さ/直径:矩形、1.5/1.5/25mm
環状チャンネル110の断面形状、幅、深さ、直径:矩形、1.5/1.5/20mm
ボア112の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア114の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア116の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
ボア118の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
マイクロチャンネル124の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、100μm/100μm/12.5mm
マイクロチャンネル126の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、100μm/100μm/10mm
ボア130の直径、長さ:500μm、10mm(円形断面)
【0052】
次に本発明の水中油滴型エマルションにおける油相、水相等の含有成分等について具体的に説明する。
また、これらの含有成分等の記載については、特に断りがない限りは、前述の本発明の水中油滴型エマルションの製造方法(第1、第2の態様)において用いる油相、水相等の含有成分等と同様であり、好ましい例、添加量等も同様である。
【0053】
<水中油滴型エマルション>
本発明の水中油滴型エマルションは、機能性油性成分を含む油相と水相とを有する水中油滴型エマルションであって、前記エマルションがHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、油滴の体積平均粒径が40nm以上200nm以下であることを特徴とする。
本発明の水中油滴型エマルションは、前記構成とすることにより、機能性油性成分を劣化させることなく、乳化粒子の粒径が小さく且つ保存安定性に優れたエマルションとすることができる。
【0054】
[非イオン性界面活性剤]
本発明の水中油滴型エマルションは、ミクロ混合による乳化分散向上のためHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤(単に、非イオン性界面活性剤ともいう。)を含有する。
前記非イオン性界面活性剤は、油相及び水相のいずれか一方に含有しても、また、双方に含有してもよいが、少なくとも1つは水相に添加すること好ましい。
【0055】
本発明で使用できる非イオン性界面活性剤の少なくとも一つはエマルション粒径の微細化の観点から、水溶性の非イオン性界面活性剤であることが好ましい。水溶性の非イオン性界面活性剤としては、水性媒体に溶解する非イオン性界面活性剤であれば、特に限定は無い。
【0056】
前記非イオン性界面活性剤は、前述の通り、HLB10以上でHLB18以下とする必要があるが、ミクロ混合によるエマルションの安定性の観点から、好ましくは12以上16以下である。
【0057】
ここで、HLBとは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスであり、通常用いる計算式として、例えば川上式等が使用できる。
本発明においては、下記川上式を採用する。
【0058】
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
ここで、Mwは親水基の分子量、M0は疎水基の分子量である。
【0059】
また、メーカーが公表しているカタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の非イオン性界面活性剤を得ることが出来る。
【0060】
本発明で好適に使用できる非イオン性界面活性剤の例としては、(モノ、ジ、トリ)グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、などが挙げられる。上記の中でも、エマルションの安定性向上の観点から、より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルである。
これらの非イオン性界面活性剤をそれぞれ単独または、それらの2種以上を任意の割合で併用する事も出来る。
また、上記の非イオン性界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0061】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が4以上、好ましくは6〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−15D、理研ビタミン(株)社製ポエムJ−0381V、ポエムJ−0021Vなどが挙げられる。
【0062】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170S、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、OWA−1570、L−1695、LWA−1570、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルF140、DKエステルF160、DKエステルSS等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
本発明には上記の水溶性非イオン性界面活性剤と併用してレシチンを用いることが出来る。本発明に用いられるレシチンは、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、リン脂質とも称されるものである。
レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有しているため、従来から、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0064】
産業的にはレシチン純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、微細な油滴粒径の形成及び機能性油性成分の安定性の観点から、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。
【0065】
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
このようなレシチンの具体例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物等から由来する各種レシチンを挙げることができる。
このようなレシチンを化合物名で例示すると、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることが出来る。
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することが出来る。本発明で用いることができるこれらのレシチンは、単独又は複数種の混合物の形態で用いることが出来る。
【0066】
これら非イオン性界面活性剤の添加量は、エマルション全質量に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。
また、機能性油性成分に対しては、好ましくは10〜1000質量%、より好ましくは50〜500質量%である。
非イオン性界面活性剤の添加量を0.1質量%以上とすることにより、微細な粒径の乳化物が得られ易くなり、得られた乳化物の安定性が向上する点で好ましい。また、50質量%以下とすることにより、乳化物の泡立ちが激しくなる等の問題点を生じ難くなる点で好ましい。
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法における第1の態様においては、前記HLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含有することが必要である。 また、本発明の水中油滴型エマルションの製造方法における第2の態様においては、前記非イオン性界面活性剤を含有することが必要である。
【0067】
(機能性油性成分)
本発明における油相には機能性油性成分を含有する。また、必要に応じて、後述の本発明における非イオン性界面活性剤、及びその他の添加物を添加することができる。
ここで、「機能性油性成分」とは、食品や化粧品に使用した際に有用な効果を示す油性成分を表す。
また、本発明における「化粧品用機能性材料」とは、前記機能性油性成分のうち、化粧品用材料として用いることができる全ての成分を言う。
本発明における「食品用機能性材料」とは、前記機能性油性成分のうち、食品用材料として用いることができる全ての成分をいう。
前記機能性油性成分として、化学構造面からは、油脂類、炭化水素、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などがある。また、それらの混合物である、各種の植物由来油、動物由来油も含まれる。
また、前記機能油性成分の機能面からは、紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、毛髪保護剤、分散剤、溶剤、美白剤、抗シミ剤、細胞賦活剤、エモリエント剤、角質溶解剤、帯電防止剤、ビタミン類、メタボリックシンドローム改善剤、降圧剤、鎮静剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本発明に用いられる好ましい機能性油性成分の例としては、カロテノイド類、ビタミンE類(トコフェロール、トコトリエノール等)、コエンザイムQ類、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂)などを挙げることが出来る。
【0069】
本発明において、これらの機能性油性成分の中で、特に油溶性機能色素であるカロテノイド(カロチノイドとも言う)類に本発明の製造方法を適用すると体内への吸収性が良く且つ保存安定性に優れるという顕著な効果を有する水中油滴型エマルションとすることができる。
【0070】
本発明に用いられるカロテノイド類は常法に従って得られるものが使用できる。カロテノイド類は、天然に存在する黄色から赤色のテルペノイド類の色素であり、これには植物類、藻類、及びバクテリアのものが含まれる。
【0071】
カロテノイド類としては、炭化水素類(カロテン類)及びこれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
これらの例として、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0072】
カロテノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
カロテノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロテノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮膚及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0073】
本発明において用いられるカロテノイド類は乳化粒径の微細化の観点から、好ましくは常温で油状のものである。特に好ましい例としては、黄色から赤色の範囲の着色料として知られているアスタキサンチンである。
アスタキサンチンは、着色料としてだけでなく酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果を有することから、従来より、食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等に添加されている。
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38−165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione (C4052、分子量596.82)である。
本発明においては、上記のアスタキサンチン及びアスタキサンチンエステル等の誘導体を含めて「アスタキサンチン類」と称する。
【0074】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種で、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0075】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411−1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen−Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625−627.)。
【0076】
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3’R)−Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009−1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003−1007.)。
【0077】
アスタキサンチンおよび同エステル体はR. Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465−466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571−587.)。
【0078】
前記アスタキサンチン及びアスタキサンチンのエステル(アスタキサンチン類)を含有するアスタキサンチン含有オイルは、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出することができる。例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、ナンキョクオキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは異なることが知られている。
【0079】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物(抽出エキス)、またさらにこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であっても良い。前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0080】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
前記ヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含み、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むものである。
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5O、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstinSCE7等が挙げられる。
本発明において、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
【0081】
本発明における機能性油性成分は機能性の異なる成分同志を組み合わせる事で相乗効果をもたらす場合がある。例えば、カロテノイド類とトコフェロール類を組み合わせで含有するエマルション組成物は特に抗酸化力において好ましいものである。トコフェロール類とはトコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群から選ばれるものである。トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。これらは、混合物の状態で使用する場合が多く、抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれる状態で使用できる。本発明のエマルション組成物におけるカロテノイドに対するトコフェロールの含有量は、特に限定されないが、カロテノイド量に対して0.1〜5の比率であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3、更に好ましくは0.5〜2の比率である。
【0082】
本発明の水中油滴型エマルションにおける機能性油性成分の含有量は、乳化粒径の微細化と生産効率の観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%である。
【0083】
(有機溶媒)
本発明の水中油滴型エマルションにおける油相には、機能性油性成分及びその他の成分を溶解するために、また、得られるエマルション中の油滴の平均粒径をより微細化するために有機溶媒を添加することが好ましい。
本発明に使用できる有機溶媒としては水溶性であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品、化粧品等への用途を考慮したとき、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0084】
本発明の水中油滴型エマルションの製造方法における第1の態様においては、前記有機溶媒を含有することができ、前記水溶性有機溶媒であることが好ましい。
また、本発明の水中油滴型エマルションの製造方法における第2の態様においては、前記水溶性有機溶媒を含有する必要がある。
本発明の第2の態様において、油相中における有機溶媒の含有量は、好ましくは30〜99質量%であり、より好ましくは40〜98質量%、さらに好ましくは60〜97質量%である。前記有機溶媒の含有量が30質量%以上であると乳化粒径の微細化に効果的であり、99質量%以下であると生産効率の点で好ましい。
【0085】
(酸化防止剤)
本発明の水中油滴型エマルションは、機能性油性成分の安定性保持の観点から、酸化防止剤を含むことが好ましい。
前記酸化防止剤は、油相及び水相のいずれか一方に含有しても、また、双方に含有してもよいが、少なくとも1つは油相に添加することが好ましい。
【0086】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはそれらの塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはそれらの塩からなる化合物群、(b)ポリフェノール類からなる化合物群、(c)ラジカル捕捉剤等が挙げられる。
また、親水性の酸化防止剤、及び/又は、油溶性の酸化防止剤を、単独又は併用して使用することが出来る。例えば、親水性の酸化防止剤としては化合物群(a)に属する化合物、油溶性の酸化防止剤としては化合物群(b)に属する化合物が挙げられる。
【0087】
以下、前記酸化防止剤として、前記化合物群(a)〜(c)の具体的な例を挙げるが、本発明に使用できる酸化防止剤を制限するものではない。
【0088】
(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはそれらの誘導体またはそれらの塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはそれらの塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸2−グルコシド等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩が特に好ましい。
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはそれらの塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0089】
(b)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルテイン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。
また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。
これらのポリフェノール類のうち、安定化効果の大きさの点で特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0090】
(c)ラジカル捕捉剤からなる群
ラジカル捕捉剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である。
本発明において用いることができるラジカル捕捉剤としては、ラジカル捕捉剤としての機能を有するものであればいずれでもよい。
ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
【0091】
前記酸化防止剤の含有量は、水中油滴型エマルションの全質量に対して、一般的には0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.2〜2質量%である。
【0092】
(安定化剤)
エマルションの安定化剤および、後述するような乾燥粉末化のキャリア素材として、種々の水溶性高分子化合物や水分散性微粒子を用いることが出来る。以下、前記安定化剤およびキャリア素材を併せて安定化剤というものとする。
【0093】
前記水溶性高分子化合物としては、広く合成高分子、天然高分子、半合成高分子のいずれも用いることが出来る。
本発明では水溶性高分子化合物の中でも、安定性及び粉末化の容易性の観点から、特に糖類、タンパク質類およびそれらの複合体が好ましい。
【0094】
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、デキストリン、デンプン誘導体、ガム類、ムコ多糖類、セルロース類等を含むがこれらに限定されるものではない。
これらの中で、代表的なものは、アガロース、アラビノース、アミロース、アミロペクチン、アカシアガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルキルグリコシド、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルドース、イヌリン、オリゴ糖、ガッティガム、カードラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、ガラクトース、キサンタンガム、キシロース、キシログルカン、キチン、キトサン、グアーガム、クラスターデキストリン、β−グルカン、グルクロン酸、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、グリセルアルデヒド、グルコサミン、グルコース、グルコマンナン、ケトース、コンドロイチン硫酸、サイリウムシードガム、ジェランガム、シクロデキストリン、スクロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セロビオース、ソルビトール、デオキシリボース、デキストリン、マルトデキストリン、転化糖、デンプン、大豆多糖類、糖アルコール、糖タンパク質、トラガントガム、トレハロース、ヒアルロン酸、フコース、フルクトース、プルラン、ペクチン、ヘパリン、ヘミセルロース、マルトース、マンニトール、マンナン、ラクトース、リボース等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
これらの糖類の中では、粉末の取り扱い性の観点から、特に多糖類が好ましい。多糖類の中でも、乳化粒径の微細化および粉末の取り扱い性の点で、安定化および粉末化素材として、アラビアガム、イヌリン、デキストリン、マルトデキストリンが好ましく、アラビアガム、イヌリンが特に好ましい。
【0095】
また、本発明で用いることができるタンパク質類は、アミノ酸がペプチド結合で重合したポリマー又はオリゴマーであればいかなる種類のものも用いることが出来るが、より好ましくは天然由来で且つ水溶性のものである。
タンパク質にはアミノ酸からなる単純タンパク質と、アミノ酸以外の構成成分を含む複合タンパク質とがあり、いずれも用いることが出来る。
単純タンパク質の例としては、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロイン、セリシン、ケラチン、プロタミン等が挙げられる。
また複合タンパク質としては、炭水化物に結合したタンパク質である糖タンパク質、脂質に結合したタンパク質であるリポタンパク質、金属イオンに結合したタンパク質である金属タンパク質、リボ核酸に結合したタンパク質である核タンパク質、リン酸基に結合したタンパク質であるリンタンパク質等がある。
一方、一般的には、タンパク質原料から呼称される場合も多く、動物性筋肉タンパク質、乳タンパク質、卵タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質(小麦グルテン)、大豆タンパク質、酵母タンパク質、細菌タンパク質等が挙げられる。
これらは、いくつかのタンパク質の混合物である事が多いが、本発明でそのまま使用することも出来る。
これらのタンパク質類の中では、特にゼラチンと水溶性コラーゲンが好ましい。
【0096】
これらの安定化剤は、機能性油性成分に対して任意の割合で添加することが出来るが、エマルションの安定化のためには、機能性油性成分に対して10質量%以上500質量%以下が好ましく、50質量%以上200質量%以下がより好ましく、また、粉末化キャリア素材として用いる場合には機能性油性成分の総量と等量以上10000倍以下用いることが好ましく、特に好ましくは、3倍以上100倍以下である。
【0097】
本発明の水中油滴型エマルションの油滴の体積平均粒径(メジアン径)は、得られたエマルションの透明性の観点から、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは5〜200nm、更に好ましくは40〜200nmで、特に好ましくは40〜130nmである。
本発明の水中油滴型エマルションの粒径は市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定した値を採用する。
【0098】
本発明における水中油滴型エマルションの一つの応用例として、機能性油性成分としてカロテノイドを用いた飲料に応用することでカロテノイドの劣化が極めて少なく、且つ透明性が高く、ネックリング等の無い安定な飲料が得られる。
【0099】
(機能性粉末の製造方法、機能性粉末)
本発明の機能性粉末の製造方法は、前記本発明の水中油滴型エマルションを乾燥して水易分散性乾燥粉末を得ることを特徴とする。
本発明の水中油滴型エマルションを乾燥することにより、機能性油性成分の微細油滴状態を保持したままの水易分散性の乾燥粉末である機能性粉末とすることができる。
【0100】
本発明の機能性粉末の製造方法において、前記本発明の水中油滴型エマルションの製造方法における乳化前または乳化後(ミクロ混合前後)に、キャリア素材として糖類やタンパク質から選択される1種以上を添加することが、機能性油性成分の微細油滴状態の保持向上及び粉末化容易性向上の観点から、好ましい。
また、本発明の機能性粉末の製造方法により得られた粉末は、本発明の水中油滴型エマルションにおける水分の大半を除くことで、油滴の合一による粗大化を防止し、機能性油性成分の加水分解等による変質を防止し、保存中の腐敗や黴防止を図ることが出来る。
また、本発明の水中油滴型エマルションにおける水分を除いて機能性粉末を得ることで軽量化できるため、輸送コストを大幅に低減することが可能となるものである。
【0101】
前記水分は、機能性粉末の水分活性Awで規定することができる。ここで、水分活性(Aw)とは、粉末を入れた密閉容器内の水蒸気圧(P)とその温度における純水の蒸気圧(P0)の比で定義されます。
Aw=P/P0
前記水分活性Aw値としては、0.1〜0.8が好ましく、0.2〜0.7がより好ましく、0.3〜0.6が特に好ましい。
前記水分活性の測定は、ポータブル水分活性計Pawkit(アイネクス(株)製)で、測定することできる。本発明は、これにより測定した値を採用する。
前記水分値の範囲とすることにより、油滴合一による粗大化を防止することができ、機能性油性成分の加水分解がなくなる。また、保存中の腐敗・かび発生防止することができ、更に後述の復水性の容易性、即ち、乾燥前のエマルションの状態に復元することができる。
【0102】
本発明の水中油滴型エマルションを乾燥する方法としては、公知の乾燥手段を用いることが出来る。
公知の乾燥手段としては、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、高周波乾燥、超音波乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。これらの手段は単独で用いても良いが、2種以上の手段を組み合わせて用いることも出来る。
本発明では熱に比較的弱い機能性素材を含む事が多いため、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましい。また、真空乾燥の一つであるが、0℃以下氷結温度以上の温度を保ちながら真空(減圧)乾燥する方法も好ましい。
【0103】
本発明の水中油滴型エマルションを真空乾燥又は減圧乾燥する場合、突沸によるエマルションの飛散を回避するため、徐々に減圧度を上げながら濃縮を繰り返しつつ、乾燥させることが好ましい。
また、突沸を防ぐために、キャリア素材の種類や添加量ならびに温度を調節することによって、高粘性あるいはゲル化させつつ乾燥する方法も好ましい方法である。この場合のエマルションの粘度は1Pa・s以上、好ましくは10Pa・sである。
【0104】
本発明のエマルションの乾燥手段としては、凍結状態にある材料から氷を昇華させて水分を除去する凍結乾燥が好ましい。この凍結乾燥方法では、通常、乾燥過程が0℃以下、通常は−20℃〜−50℃程度で進行するため、素材の熱変性が起こらず、復水過程で味、色、栄養価、形状、テクスチャーなどが乾燥以前の状態に復元し易い事が大きなメリットとして挙げられる。
市販の凍結乾燥機の例としては、凍結乾燥機VD−800F(タイテック(株))、フレキシドライMP(FTSシステムズ社)、デュラトップ・デュラストップ(FTSシステムズ社)、宝真空凍結乾燥機A型((株)宝エーテーエム)、卓上凍結乾燥機FD−1000(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機FD−550(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機((株)宝製作所)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0105】
また、本発明のエマルションの乾燥手段として、噴霧乾燥も好ましい手段である。噴霧乾燥は対流熱風乾燥の一種である。液状のエマルションが熱風中に数100μm以下の微小な粒子として噴霧され、乾燥されながら塔内を落下して行くことで固体粉末として回収される。素材は一時的に熱風に曝されるが、曝されている時間が非常に短いことと水の蒸発潜熱のため余り温度が上がらないことから、凍結乾燥同様に素材の熱変性が起きにくく、復水による変化も小さいものである。非常に熱に弱い素材の場合、熱風の代わりに冷風を供給することも可能である。その場合、乾燥能力は落ちるが、よりマイルドな乾燥を実現できる点で好ましい。
市販の噴霧乾燥機の例としては、噴霧乾燥機スプレードライヤSD−1000(東京理化器械(株))、スプレードライヤL−8i(大川原化工機(株))、クローズドスプレードライヤCL−12(大川原化工機(株))、スプレードライヤADL310(ヤマト科学(株))、ミニスプレードライヤB−290(ビュッヒ社)等が挙げられるがこれに限定されることはない。
また、例えば流動層造粒乾燥機MP−01((株)パウレック)のように。乾燥と造粒とを同時に行える装置で、乾燥と同時に取り扱い性の優れた顆粒状にすることも好ましい。
【0106】
本発明の機能性油性成分を含む機能性粉末は、復水性、すなわち再び水の中に再分散させたとき、乾燥前のエマルションの状態を復元する性質を有する。
この機能性粉末を用いることにより、飲料、機能性食品、化粧品等を製造する場合、容易に飲料、機能性食品、化粧品等を製造することができる。
また、この機能性粉末を用いることにより、機能性成分の機能を損なうことなく、機能を発揮させることができ、また、再分散した製品の透明性など外観や保存時の安定性も良好である。
本発明の機能性粉末における復水時の粒径が、乾燥前の粒径に対し著しく粗大化している場合、乾燥過程で油滴の合一が起こっている可能性が高いと考えられる。
本発明の水中油滴型エマルションを前記乾燥装置を用いて乾燥を施すことにより、復水時の油滴粒径を200nm以下に保持することができる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」と「%」}表示してあるものは、特にことわらない限り質量基準である。
【0108】
<実施例1>
(エマルションAの調製)
下記の成分を、70℃にて1時間溶解後、超音波ホモジナイザーで5分間均質化を行い、水相組成物Aを得た。
・ショ糖オレイン酸エステル(HLB=15) 1.0g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 5.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・純水 272.2g
【0109】
また、下記成分を、70℃にて1時間溶解して、油相組成物Aを得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 1.0g
・ミックストコフェロール 0.3g
・中鎖脂肪酸トリグリセライド 20g
【0110】
ここで、ショ糖オレイン酸エステルは三菱化学フーズ(株)製リョートーシュガーエステルO−1670(HLB=15)、モノオレイン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ(株)製NIKKOL Decaglyn 1−O(HLB=12)を使用した。ヘマトコッカス藻抽出物は、武田紙器(株)製ASTOTS−Sを使用した。ミックストコフェロールは理研ビタミン(株)製の理研Eオイル800を使用した。レシチン(大豆由来)は理研ビタミン(株)製のレシオンPを使用した。中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては(株)花王のココナードMTを使用した。
【0111】
乳化に用いるマイクロミキサーとして、流路にそれぞれ5μmの燒結金属フィルターを設置された、櫛歯型SSIMM−SS−Ni25(IMM社製)を準備し、マイクロミキサー、水相組成物A、油相組成物Aをいずれも70℃に保温した。
水相の流量が37.7ml/min.油相の流量が2.9ml/min.となるように精密定量ポンプを設定し、水相と油相をそれぞれマイクロミキサーに導入し、ミクロ混合した。
続いて、前記流量および送液圧力が安定した段階で、エマルションを採取し直ちに室温まで冷却し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションAとした。
【0112】
(エマルションBの調製)
下記の成分を、室温にて1時間溶解後、超音波ホモジナイザーで5分間均質化を行った後、6℃に冷却し、水相組成物Bを得た。
・ショ糖オレイン酸エステル(HLB=15) 1.0g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 1.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・純水 256.2g
【0113】
また、下記成分を、室温にて1時間溶解して、油相組成物Bを得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 1.0g
・ミックストコフェロール 0.3g
・エタノール 40g
【0114】
乳化に用いるマイクロミキサーとして、試料Aと同様、SSIMM−SS−Ni25(IMM社製)を準備し、マイクロミキサー、水相組成物B、油相組成物Bはいずれも6℃に保温した。精密定量ポンプを用いて水相と油相をそれぞれマイクロミキサーに導入した。
なお、流路にそれぞれ5μmの燒結金属フィルターを設置し、不溶解物を除いた。水相の流量は35.0ml/min.油相の流量は5.6ml/min.に設定した。流量および送液圧力が安定した段階でエマルション試料を採取し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションBを得た。
【0115】
(エマルションCの調製)
エマルションAと同じ組成になるように、水相組成物Aと油相組成物Aをスターラーで混合した後、直ちに攪拌式ホモジナイザー(日本精機(株)製)にて、10000rpmで5分間乳化を行う事で、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションCを得た。
【0116】
(エマルションDの調製)
エマルションBと同じ組成になるように、水相組成物Bと油相組成物Bをスターラーで混合した後、直ちに攪拌式ホモジナイザー(日本精機(株)製)にて、10000rpmで5分間乳化を行う事で、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションDを得た。
【0117】
(エマルションEの調製)
エマルションAにおいて、水相組成物Aを下記組成に変更した以外はエマルションAと同様に作製し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションEを得た。
−水相組成物E−
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=9) 1.0g
・モノオレイン酸ヘキサグリセリル(HLB=9) 5.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・純水 272.2g
【0118】
なお、ショ糖ステアリン酸エステルは三菱化学フーズ(株)製リョートーシュガーエステルS−970(HLB=9)、モノオレイン酸ヘキサグリセリルは日光ケミカルズ(株)製NIKKOL Hexaglyn 1−O(HLB=9)を使用した。
【0119】
(エマルションFの調製)
エマルションBにおいて、水相を下記組成に変更した以外はエマルションBと同様に作製し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションFを得た。
−水相組成物F−
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=9) 1.0g
・モノオレイン酸ヘキサグリセリル(HLB=9) 1.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・純水 256.2g
【0120】
(エマルションGの調製)
エマルションAにおいて、水相を下記組成に変更した以外はエマルションAと同様に作製し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションGを得た。
−水相組成物G−
・ショ糖オレイン酸エステル(HLB=15) 1.0g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 3.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・アラビアガム(アカシア由来セネガル種) 30.0g
・純水 244.2g
【0121】
(エマルションHの調製)
エマルションAにおいて、マイクロミキサー、水相組成物A、油相組成物Aをいずれも85℃に保温した以外はエマルションAと同様に作製し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションHを得た。
【0122】
(エマルションIの調製)
エマルションAにおいて、水相組成物からレシチン(大豆由来)を除去した以外はエマルションAと同様に作製し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションIを得た。
【0123】
(エマルションJの調製)
エマルションAにおいて、マイクロミキサーとしてSSIMM−SS−Ni25の代わりに、特開2005−288254号公報の図4に記載のKMミキサーを用いた以外はエマルションAと同様に作製し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションJを得た。
【0124】
(エマルションKの調製)
エマルションBにおいて、マイクロミキサーとしてSSIMM−SS−Ni25の代わりに、特開2005−288254号公報の図4に記載のKMミキサーを用いた以外はエマルションBと同様に作製し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションKを得た。
【0125】
(エマルションLの調製)
エマルションJにおいて、水相を下記組成に変更した以外はエマルションJと同様に作製した。
−水相組成物L−
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 6.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・純水 272.2g
【0126】
(エマルションMの調製)
エマルションJにおいて、水相を下記組成に変更した以外はエマルションJと同様に作製した。
−水相組成物M−
・ジイソステアリン酸デカグリセリル(HLB=10) 6.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・純水 272.2g
ここで、ジイソステアリン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ(株)NIKKOL Decaglyn 2−ISV(HLB=10.0)を使用した。
【0127】
(エマルションNの調製)
エマルションJにおいて、水相を下記組成に変更した以外はエマルションJと同様に作製した。
−水相組成物N−
・モノオレイン酸ヘキサグリセリル(HLB=9) 6.0g
・レシチン(大豆由来) 0.5g
・純水 272.2g
ここで、モノオレイン酸ヘキサグリセリルは日光ケミカルズ(株)製NIKKOL Hexaglyn 1−O(HLB=9)を使用した。
【0128】
[評価]
(粒径測定)
得られたアスタキサンチン含有水中油滴型エマルション(A〜N)各10.0gに90.0gの純水を添加して、マグネチックスターラーにて5分間攪拌を行った。得られた水希釈エマルションについて、動的光散乱粒径分散測定装置LB−550(株式会社堀場製作所社製)を使用して、25℃にて粒径測定を行った。平均粒径の値はメジアン径で示した。
【0129】
(アスタキサンチンの有効含量)
エマルション中のアスタキサンチンの有効含量を見積もるため、アスタキサンチン類含有エマルション(A〜N)各10.0gに90.0gのアセトンを添加し、良く振とうした後上澄み液を濾別しアスタキサンチンのアセトン抽出液を得た。このアセトン抽出液の波長478nmの吸光度測定を、Nano Drop Technologies,Inc.社製のND−1000Spectrophotometerを用いて行った(Ce)。一方比較のため、ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン20%)の濃度が0.0333%となるようアセトンに溶かし、前記同様にこのアセトン溶液の波長478nmの吸光度(Cs)測定を行い、アスタキサンチン有効含量[%]=Ce/Cs×100を計算した。
【0130】
(経時乳化安定性)
上記で得られたエマルションA〜Nを蓋付きガラス瓶に入れて、60℃に保たれた恒温槽中に1週間保管した。
【0131】
−相分離性−
1週間保存後のエマルションA〜Nについて、油相・水相の相分離を目視観察して下記評価基準により評価した。
○: 油相と水相との分離は見られない。
△: 油相と水相との分離が僅かに見られる。
×: 油相と水相との分離がはっきりと見られる。
【0132】
−平均粒径−
1週間保存前後のエマルションA〜Nにおける平均粒径について、上記粒径測定法に従い、25℃にて測定を行った。
【0133】
これらの結果をまとめて、表1に示した。
上記の結果より、本発明を用いた試料は、乳化直後の平均粒径が小さく、60℃の強制保存経時後でもその粒径にほとんど変化が見られなかった。強制保存経時後のエマルションの目視観察においても、ネックリング等の分離現象は見られず良好であった。また、本発明の方法に従えば、乳化プロセスによってアスタキサンチンの分解等の変質もほとんど起こることなく良好であることが分かった。
【0134】
【表1】

【0135】
<実施例2>
実施例1のアスタキサンチン含有水中油滴型エマルションGについて、以下の3種類の乾燥法を用いて、エマルション中の水分を蒸発させ、それぞれ乾燥粉末試料を作製した。
【0136】
乾燥I:(熱風乾燥法)
シャーレに入れたエマルション試料50mlをヤマト科学製インキュベータIC402型を用い、80℃にて3時間乾燥させることで、乾燥粉末I(9.1g)を得た。
【0137】
乾燥II:(凍結乾燥法)
ナスフラスコにエマルション試料50mlを入れ、液体窒素で予備凍結した後、ヤマト科学製フリーズドライヤDC400にて、16時間凍結乾燥を行い、乾燥粉末II(9.2g)を得た。
【0138】
乾燥III:(噴霧乾燥法)
ヤマト科学製スプレードライヤADL310型を用い、出口温度80℃の条件で、噴霧乾燥を行い、乾燥粉末III(8.9g)を得た。
【0139】
得られた乾燥粉末I〜IIIにつき、各粉末1.00gに純水99.00gを加え、マグネチックスターラーで30分攪拌することで、再分散エマルションI〜IIIを得た。 これらの再分散エマルションについて、実施例1と同様にアスタキサンチン有効含量および平均粒径の評価を行った。また、さらに、水分活性を測定し評価した。水分活性の測定は、上記乾燥粉末I〜IIIにつき、各粉末1.0gを用いて、25℃にてポータブル水分活性計Pawkit(アイネクス(株)製)で、測定した。この結果を表2に示した。
【0140】
【表2】

【0141】
この結果から、特に噴霧乾燥と凍結乾燥によって得た粉末が、アスタキサンチン含有量も高く、再分散平均粒径も小さく良好であることが分かった。
【0142】
また、これらの粉末試料I〜IIIを60℃にて1ヶ月保存したが、乾燥粉末の再分散エマルション平均粒径は保存前後でほとんど変わらなかった。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は本発明に使用できるマイクロデバイスの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0144】
A…流体
B…流体
C…ストリーム
100…マイクロミキサーデバイス全体
102…供給要素
104…合流要素、
106…排出要素、
108,110…環状チャンネル
124,126…マイクロチャンネル
128…中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性油性成分を含む油相と水相とを混合してエマルションを得る水中油滴型エマルションの製造方法であって、前記油相及び水相の少なくとも一方がHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、それぞれ独立にマイクロミキサ−の微小空間に分けられた前記油相及び水相を、別な微小空間において80℃以下の温度でミクロ混合することを特徴とする水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項2】
機能性油性成分を含む油相と水相とを混合してエマルションを得る水中油滴型エマルションの製造方法であって、前記機能性成分を含有する油相中に水溶性有機溶媒を含み、前記油相及び水相の少なくとも一方が非イオン性界面活性剤を含み、かつ、それぞれ独立にマイクロミキサ−の微小空間に分けられた前記油相及び水相を、別な微小空間において80℃以下の温度でミクロ混合することを特徴とする水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項3】
前記マイクロミキサーが中心衝突型マイクロミキサーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項4】
前記マイクロミキサ−の微小空間に分けられた水相、油相及びマイクロミキサーの保温温度がそれぞれ80℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤がレシチンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項6】
前記油性成分がカロテノイド類を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項7】
前記カロテノイド類がアスタキサンチン類を含むことを特徴とする請求項6の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項8】
前記水中油滴型エマルションがタンパク質類及び糖類から選択される1種以上含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項9】
前記エマルションの油滴の体積平均粒径を40nm以上200nm以下とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションの製造方法。
【請求項10】
機能性油性成分を含む油相と水相とを有する水中油滴型エマルションであって、前記エマルションがHLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤を含み、かつ、油滴の体積平均粒径が40nm以上200nm以下であることを特徴とする水中油滴型エマルション。
【請求項11】
前記機能性油性成分が水に不溶又は水に難溶性の食品用機能性材料を含むことを特徴とする請求項10に記載の水中油滴型エマルション。
【請求項12】
前記機能性油性成分が水に不溶性または難溶性の化粧品用機能性材料を含むことを特徴とする請求項10に記載の水中油滴型エマルション。
【請求項13】
前記油相が有機溶媒を含有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
【請求項14】
前記油性成分がカロテノイド類を含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
【請求項15】
前記HLB10以上でHLB18以下の非イオン性界面活性剤がレシチンを含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
【請求項16】
前記水中油滴型エマルションがタンパク質類及び糖類から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
【請求項17】
前記油相が水相の全質量に対して0.5〜30質量%であることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルション。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項に記載の水中油滴型エマルションを乾燥して水易分散性乾燥粉末を製造することを特徴とする機能性粉末の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の機能性粉末の製造方法を用いて製造された機能性粉末。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−142588(P2008−142588A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329720(P2006−329720)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】