説明

水処理システム

【課題】逆浸透膜におけるファウリングの発生を抑制することができ、フッ化物を含有する被処理水を効率的に浄化することができる水処理システムを提供すること。
【解決手段】フッ化物を含有する被処理水W1を浄化する水処理システム1は、促進酸化処理装置としての酸化剤添加装置5と、促進酸化処理装置としての紫外線照射装置7と、被処理水W1にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置10と、被処理水W1のpH値を測定するpH値測定装置12と、pH値測定装置12により測定されたpH値に基づいてpH調整剤添加装置10によるpH調整剤の添加量を制御する制御装置15と、pH値が測定された後の被処理水W1を逆浸透膜により透過水W2と濃縮水W3とに膜分離処理を行う逆浸透膜装置13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水に各種水処理を行う水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、半導体部品や電子基板等を生産する工場で排出される廃水(以下、「被処理水」ともいう)から不純物を除去することにより、工業用水等として再利用可能な水(以下、「処理水」という)を生成することが行われている。この被処理水は、例えば、電子基板のエッチングや洗浄等の工程において排出された水である場合には、HF(フッ化水素),HBF(テトラフルオロホウ酸),NHF(フッ化アンモニウム)等のフッ化物を含有している。
【0003】
フッ化物を含有する被処理水の処理方法として、被処理水中のフッ素をカルシウム系晶析出剤でアパタイト化して除去し、被処理水のフッ素濃度を低減した後に、逆浸透膜を用いて被処理水を浄化する手段が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−174479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、逆浸透膜の上流側において、被処理水中のフッ化物をアパタイト化して除去することにより、逆浸透膜において濾過する不純物の量(負荷)を低減することができる。
しかし、フッ化物を含む被処理水の多くは酸性であるため、被処理水のpH調整が不十分な場合には、フッ素のアパタイト化が十分に進行せず、フッ素除去率が低下する。そのため、逆浸透膜へ未反応のフッ化物が流入し易く、逆浸透膜のファウリングが発生し易かった。なお、「ファウリング」とは、被処理水中の濁質や難溶性塩類等が逆浸透膜の膜面等に沈着又は吸着する現象をいい、透過流束や塩除去率の低下を招く。
このように、逆浸透膜におけるファウリングの発生は、透過流束の維持や処理水の水質の安定化の阻害要因となっていた。
【0006】
したがって、本発明は、逆浸透膜におけるファウリングの発生を抑制することができ、フッ化物を含有する被処理水を効率的に浄化することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フッ化物を含有する被処理水を浄化する水処理システムであって、前記被処理水の促進酸化処理を行う促進酸化処理装置と、前記促進酸化処理装置を経た前記被処理水にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置と、前記被処理水のpH値を測定するpH値測定装置と、前記pH値測定装置により測定された前記pH値に基づいて前記pH調整剤添加装置による前記pH調整剤の添加量を制御する制御装置と、前記pH値が測定された後の前記被処理水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに膜分離処理を行う逆浸透膜装置と、を備える。
【0008】
また、本発明は、前記促進酸化処理装置の上流側に、前記被処理水に含まれる濁質の濾過処理を行う濾過装置を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記濾過装置による濾過処理が行われる前に、前記被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加装置を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記凝集剤添加装置に通水される前の前記被処理水にpH調整剤を添加する上流用pH調整剤添加装置と、前記被処理水のpH値を測定する上流用pH値測定装置と、前記上流用pH値測定装置により測定された前記pH値に基づいて前記上流用pH調整剤添加装置による前記pH調整剤の添加量を制御する上流用pH調整制御装置と、を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記促進酸化処理装置を経た前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加装置を更に備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記促進酸化処理装置を経た前記被処理水に分散剤を添加する分散剤添加装置を更に備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記逆浸透膜装置からの濃縮水を前記促進酸化処理装置の上流側に返送する濃縮水返送ラインを更に備えることが好ましい。
【0014】
また、前記逆浸透膜は、塩化ナトリウムの濃度が1500mg/Lの食塩水を前記被処理水として用い、運転圧力が1MPa、回収率が15%及び水温が25℃の条件で前記膜分離処理を行った場合において、透過水量が42L/h/MPa/m以上、かつ塩除去率が99%以上となる合成ポリアミド膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、逆浸透膜におけるファウリングの発生を抑制することができ、フッ化物を含有する被処理水を効率的に浄化することができる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態の水処理システム1を示す構成図である。
【図2】被処理水W1のpH値とフッ素除去率との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第2実施形態の水処理システム1Bを示す構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態の水処理システム1Cを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の水処理システム1を示す構成図である。
図1に示す第1実施形態の水処理システム1は、例えば、半導体部品や電子基板等を生産する工場で排出される廃水(被処理水W1)の不純物を除去し、工業用水等として再利用可能な水(処理水W2)を生成するものである。この被処理水W1は、例えば、電子基板のエッチングや洗浄等の工程において排出された水であるため、フッ化物を含有している。
【0018】
被処理水W1中のフッ化物は、工場の排水処理槽2(図1参照)において、カルシウム化合物と反応させながら、凝集沈殿処理が行われる。これにより、被処理水W1中のフッ化物の大部分は、被処理水W1から除去される。
しかし、被処理水W1中には、まだフッ化物が残留しているため、被処理水W1からこの残留したフッ化物を更に除去する必要がある。
本実施形態の水処理システム1は、凝集沈殿処理後の被処理水W1に残留したフッ化物を効率的に除去するために、以下のように構成されている。
【0019】
図1に示すように、水処理システム1は、排水処理槽2と、原水ポンプ3と、凝集剤添加装置4と、促進酸化処理装置としての酸化剤添加装置5と、濾過装置としての砂濾過装置6と、促進酸化処理装置としての紫外線照射装置7と、還元剤添加装置8と、分散剤添加装置9と、pH調整剤添加装置10と、補助濾過装置11と、pH値測定装置12と、逆浸透膜装置13と、処理水タンク14と、制御装置としてのpH調整制御装置15と、通水ラインL1,L2,L3,L4,L5,L6と、濃縮水返送ラインL7と、を主体に構成されている。
なお、本明細書でいう「ライン」とは、流路、経路、管路等の物体の流通が可能なラインの総称である。
【0020】
この水処理システム1によれば、排水処理槽2を経た被処理水W1は、原水ポンプ3によって砂濾過装置6、紫外線照射装置7、補助濾過装置11、逆浸透膜装置13へと順に送出され、その間に設けられた添加点J1,J2,J3,J4,J5において各種薬剤を添加されることによって次第に浄化される。そして、逆浸透膜装置13によって最終的に浄化された水(以下、「透過水」という)W2は、処理水タンク14に貯留される。
【0021】
この逆浸透膜装置13による水処理は、本実施形態の水処理システム1による最終処理であるため、この透過水のことを「処理水」ともいう。
逆浸透膜装置13によって濃縮された水(以下、「濃縮水」という)W3は、濃縮水返送ラインL7及び通水ラインL1を介して排水処理槽2に戻される。
以下、水処理システム1の各部について詳しく説明する。
【0022】
通水ラインL1は、工場から排出されたフッ化物を含有する被処理水W1を、排水処理槽2に導入するものである。排水処理槽2は、通水ラインL1の下流側の端部に接続されている。
排水処理槽2は、通水ラインL1から通水されたフッ化物を含有する被処理水W1を貯留し、フッ化物等の凝集沈殿処理を行うものである。
【0023】
排水処理槽2は、貯留した被処理水W1をカルシウム化合物(例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウム等)と反応させ、生成したフッ化カルシウムの凝集沈殿処理を行うことにより、被処理水W1から大部分のフッ化物を除去する。
排水処理槽2の下流側には、砂濾過装置6が設けられている。排水処理槽2と砂濾過装置6とは、通水可能な通水ラインL2によって接続されている。
【0024】
原水ポンプ3は、この通水ラインL2に設けられている。原水ポンプ3は、排水処理槽2に貯留された被処理水W1を砂濾過装置6に向けて送出する。原水ポンプ3は、図示しない制御装置によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0025】
次に、凝集剤添加装置4について説明する。
凝集剤添加装置4は、砂濾過装置6による濾過処理が行われる前に、通水ラインL2内の被処理水W1に凝集剤を添加するものである。凝集剤添加装置4は、通水ラインL2における原水ポンプ3よりも下流側の添加点J1に接続されている。
【0026】
凝集剤添加装置4は、凝集剤貯留部4aと、凝集剤添加ポンプ4bと、を備えている。凝集剤貯留部4aは、凝集剤を貯留する。凝集剤貯留部4aは、凝集剤の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0027】
凝集剤添加ポンプ4bは、凝集剤貯留部4aに貯留された凝集剤を、通水ラインL2の添加点J1を介して被処理水W1(原水)に送出し、添加する。凝集剤添加ポンプ4bは、図示しない制御装置によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0028】
凝集剤は、被処理水W1中の微細粒子(濁質)の電荷を中和して凝集物を形成させるものである。大きさが数μm程度の微細粒子は、そのままの状態では、砂濾過装置6の濾材層(図示せず)を通過してしまう。そのため、被処理水W1に凝集剤を添加することで微細粒子を凝集(フロック化)し、砂濾過装置6による濾過処理を行い易くする。
凝集剤としては、例えば、無機系凝集剤を用いることができ、具体的には、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や硫酸アルミニウム等が挙げられる。
【0029】
次に、酸化剤添加装置5について説明する。
酸化剤添加装置5は、凝集剤添加装置4により凝集剤を添加された被処理水W1に、酸化剤を添加するものである。酸化剤添加装置5は、通水ラインL2における原水ポンプ3よりも下流側の添加点J2に接続されている。
【0030】
酸化剤添加装置5は、酸化剤貯留部5aと、酸化剤添加ポンプ5bと、を備えている。酸化剤貯留部5aは、酸化剤を貯留する。酸化剤貯留部5aは、酸化剤の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0031】
酸化剤添加ポンプ5bは、酸化剤貯留部5aに貯留された酸化剤を、通水ラインL2のの添加点J2を介して被処理水W1に送出し、添加する。酸化剤添加ポンプ5bは、図示しない制御装置によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0032】
酸化剤は、砂濾過装置6内における菌の繁殖を抑制する殺菌剤として使用されると共に、後述の紫外線照射装置7において促進酸化処理を行う際の酸化剤として使用される。
酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。
【0033】
このように構成された酸化剤添加装置5は、後述の紫外線照射装置7と共に、促進酸化処理装置としても機能する。促進酸化処理の詳細については、後述する。
【0034】
次に、砂濾過装置6について説明する。
砂濾過装置6は、被処理水W1に含まれる濁質(例えば、ゴミ、前記排水処理槽2で生成したフッ化カルシウムの一部等)を捕捉して除去する濾過処理を行うものである。砂濾過装置6は、通水ラインL2の下流側の端部に接続されている。
【0035】
砂濾過装置6としては、例えば、硅石等の粗粒濾材と、アンスラサイト、濾過砂等の細粒濾材と、から形成された濾材層(図示せず)を有する塔式のものが挙げられる。砂濾過装置6は、逆洗可能に構成され、濾材層の再生処理が定期的に行われるようになっている。
【0036】
砂濾過装置6の下流側には、通水可能な通水ラインL3が接続されている。この通水ラインL3の下流側の端部は、紫外線照射装置7に接続されている。
【0037】
次に、紫外線照射装置7について説明する。
紫外線照射装置7は、砂濾過装置6を経た被処理水W1に紫外線を照射するものである。紫外線照射装置7は、通水ラインL3の下流側の端部に接続されている。
紫外線照射装置7は、紫外線を被処理水W1に照射する紫外線ランプ(図示せず)と、被処理水W1が流通する処理槽(図示せず)と、を備える。
【0038】
紫外線ランプは、所定波長の紫外線を被処理水W1に照射可能に構成されている。処理槽は、被処理水W1が流通可能な形状(例えば、円筒状)に構成されている。紫外線ランプは、処理槽の内部に収容されている。
【0039】
処理槽内の被処理水W1は、酸化剤添加装置5によって添加された酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)を含んでいる。この酸化剤に、紫外線ランプによって紫外線が照射されると、促進酸化処理が行われることとなる。
【0040】
「促進酸化処理」とは、特定の酸化剤に紫外線を照射することにより、強力な酸化力を有するヒドロキシルラジカルを生成し、これにより被処理水W1に含まれる難分解性の有害物質を酸化分解すると共に、被処理水W1の色度成分や臭気成分を分解し、微生物を殺菌等する処理をいう。
【0041】
紫外線照射装置7は、酸化剤を含む被処理水W1を処理槽内に流通させながら、紫外線ランプによって被処理水W1に紫外線を照射する。これにより、紫外線照射装置7は、被処理水W1中にヒドロキシルラジカルを生成することができる。
したがって、紫外線照射装置7は、被処理水W1に含まれる難分解性の有害物質を酸化分解する。また、紫外線照射装置7は、被処理水W1中の色度成分や臭気成分を分解する。更に、紫外線照射装置7は、微生物を殺菌等することもできる。このように、紫外線照射装置7は、酸化剤添加装置5と共に、促進酸化処理装置として機能する。
【0042】
紫外線照射装置7の下流側には、通水可能な通水ラインL4が接続されている。この通水ラインL4の下流側の端部は、補助濾過装置11に接続されている。
【0043】
次に、還元剤添加装置8について説明する。
還元剤添加装置8は、紫外線照射装置7を経た被処理水W1に残留する酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)を還元するために、還元剤を添加するものである。還元剤添加装置8は、通水ラインL4における上流側の添加点J3に接続されている。
【0044】
還元剤添加装置8は、還元剤貯留部8aと、還元剤添加ポンプ8bと、を備えている。還元剤貯留部8aは、還元剤を貯留する。還元剤貯留部8aは、還元剤の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0045】
還元剤添加ポンプ8bは、還元剤貯留部8aに貯留された還元剤を、通水ラインL4の添加点J3を介して被処理水W1に送出し、添加する。還元剤添加ポンプ8bは、図示しない制御装置によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0046】
還元剤は、酸化剤添加装置5によって添加された酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)を還元するものである。
酸化剤は、紫外線照射装置7における促進酸化処理に用いられ、被処理水W1に含まれる難分解性の有害物質を酸化分解等する一方で、紫外線照射装置7の下流側に設けられる逆浸透膜装置13の逆浸透膜(図示せず)を酸化させ、濾過能力を早期に低下させる虞がある。そこで、酸化剤を還元することによって、この逆浸透膜の酸化劣化を抑制し、塩除去率及び透過流束を維持して処理水W2の水質と処理流量の安定化を図ることができるようにしている。
【0047】
還元剤としては、例えば、重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。重亜硫酸ナトリウムが被処理水W1に添加されると、被処理水W1中に残留する次亜塩素酸イオンは、塩化物イオンに還元され、被処理水W1から除去される。
【0048】
次に、分散剤添加装置9について説明する。
分散剤添加装置9は、紫外線照射装置7を経ると共に還元剤添加装置8により還元剤が添加された被処理水W1に、分散剤を添加するものである。分散剤添加装置9は、通水ラインL4における添加点J3よりも下流側の添加点J4に接続されている。
【0049】
分散剤添加装置9は、分散剤貯留部9aと、分散剤添加ポンプ9bと、を備えている。分散剤貯留部9aは、分散剤を貯留する。分散剤貯留部9aは、分散剤の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0050】
分散剤添加ポンプ9bは、分散剤貯留部9aに貯留された分散剤を、通水ラインL4の添加点J4を介して被処理水W1に送出し、添加する。分散剤添加ポンプ9bは、図示しない制御装置によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0051】
分散剤は、被処理水W1中の硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)やシリカ成分等を分散させてスケールの析出を抑制するものである。「スケール」とは、炭酸カルシウムやケイ酸カルシウム等の難溶性塩類が溶解度以上に濃縮されることによって、逆浸透膜の膜面等に析出したものをいう。
【0052】
紫外線照射装置7を経た被処理水W1には、硬度成分やシリカ成分が含まれている場合がある。これらの成分が所定濃度以上に濃縮されると、スケールが逆浸透膜装置13の逆浸透膜で析出し、ファウリングの要因となる。そのため、硬度成分やシリカ成分が所定濃度以上の場合には、分散剤を添加することにより、これらの成分を分散させてスケールの析出を抑制するようにしている。
分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムやポリアクリル酸カリウム等のアクリル酸系ポリマーが挙げられる。
【0053】
次に、pH調整剤添加装置10について説明する。
pH調整剤添加装置10は、紫外線照射装置7を経た被処理水W1にpH調整剤を添加するものである。pH調整剤添加装置10は、通水ラインL4における添加点J4よりも下流側の添加点J5に接続されている。
【0054】
pH調整剤添加装置10は、pH調整剤貯留部10aと、pH調整剤添加ポンプ10bと、を備えている。
pH調整剤貯留部10aは、pH調整剤を貯留する。pH調整剤貯留部10aは、pH調整剤の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0055】
pH調整剤添加ポンプ10bは、pH調整剤貯留部10aに貯留されたpH調整剤を、通水ラインL4の添加点J4を介して被処理水W1に送出し、添加する。
pH調整剤添加ポンプ10bは、pH調整制御装置15と電気的に接続されている。pH調整剤添加ポンプ10bは、pH調整制御装置15によって運転(駆動及び停止)を制御される。被処理水W1へのpH調整剤の添加量は、後述のpH値測定装置12により測定されたpH値に基づいて、pH調整制御装置15によって制御される。
【0056】
pH調整剤は、紫外線照射装置7を経た被処理水W1のpH値(水素イオン指数値)を調整するものである。つまり、pH調整剤は、逆浸透膜装置13に通水される前の被処理水W1のpH値を調整するものである。
フッ化物を含む被処理水W1は、通常は酸性である。そのため、酸性の被処理水W1を中和するpH調整剤としては、アルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。
【0057】
被処理水W1のpH値を、中性域(例えば、pH値が6.8〜7.5)となるように調整することによって、逆浸透膜装置13の逆浸透膜のフッ素除去率を維持して処理水W2の水質の安定化を図るようにしている。
【0058】
次に、補助濾過装置11について説明する。
補助濾過装置11は、逆浸透膜装置13の上流側において被処理水W1中の濁質の濾過処理(粗濾過)を行い、逆浸透膜装置13への濁質の流入を抑制するものである。補助濾過装置11は、通水ラインL4の下流側の端部に接続されている。
【0059】
補助濾過装置11の濾材(フィルタ)としては、例えば、不織布フィルタや糸巻きフィルタ(ワインドフィルタ)等が挙げられる。不織布フィルタは、繊維径の異なる数種類の不織布を円筒状に巻いて構成される。糸巻きフィルタは、固体濃度の高い被処理水や幅広い粒度分布を有する被処理水から不純物を粗取りする場合に用いられ、所定の糸を円筒状に巻いて構成される。
補助濾過装置11は、逆洗可能に構成され、濾材の再生処理が定期的に行われるようになっている。
【0060】
補助濾過装置11の下流側には、通水可能な通水ラインL5が接続されている。この通水ラインL5の下流側の端部は、逆浸透膜装置13に接続されている。
【0061】
次に、pH値測定装置12について説明する。
pH値測定装置12は、逆浸透膜装置13に流入する前の被処理水W1のpH値を測定するものである。pH値測定装置12は、逆浸透膜装置13の上流側に接続された通水ラインL5に設けられている。
【0062】
pH値測定装置12は、pH調整制御装置15と電気的に接続されている。pH値測定装置12により測定されたpH値は、pH調整制御装置15に入力されるようになっている。
【0063】
次に、pH調整制御装置15について説明する。
pH調整制御装置15は、pH値測定装置12及びpH調整剤添加装置10のpH調整剤添加ポンプ10bと電気的に接続されている。pH調整制御装置15は、pH値測定装置12により測定されたpH値に基づいて、pH調整剤添加ポンプ10bの運転(駆動及び停止)を制御し、pH調整剤の添加量をフィードバック制御する。
【0064】
pH調整制御装置15は、図示しないメモリ部と演算部とを備えている。メモリ部は、被処理水W1のpH値に係る複数のテーブル(図示せず)を有している。テーブルには、被処理水W1のpH値に基づくpH調整剤の添加量データが複数記憶されている。
【0065】
演算部は、pH値測定装置12により測定されたpH値に基づいてpH調整剤の添加量を算出する。添加量の算出は、メモリ部に記憶された添加量データに基づいて行われ、テーブルからpH調整剤の適切な添加量を判定し、選択することにより行われる。
【0066】
次に、逆浸透膜装置13について説明する。
逆浸透膜装置13は、pH値測定装置12によりpH値が測定された後の被処理水W1(pH調整剤添加装置10によりpH値が調整された被処理水W1)を、逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)により、純度の高い透過水(処理水)W2と、不純物を多く含む濃縮水W3とに膜分離処理を行うものである。
逆浸透膜装置13は、通水ラインL5を介して補助濾過装置11の下流側に接続されている。
【0067】
逆浸透膜装置13は、上流側に設けられる加圧ポンプ13aと、下流側に設けられるRO膜モジュール13bと、を備える。
加圧ポンプ13aは、紫外線照射装置7から補助濾過装置11を介して供給される被処理水W1を加圧し、RO膜モジュール13bに送出する。
【0068】
RO膜モジュール13bは、多数のRO膜(図示せず)を備えており、これらのRO膜によりフッ化物を含む溶存塩類等の不純物を除去する。RO膜は、分子量が数十程度のものを濾過可能な膜であり、低ファウリング膜として構成されている。
【0069】
例えば、RO膜は、塩化ナトリウムの濃度が1500mg/Lの食塩水を被処理水として用い、運転圧力が1MPa、回収率が15%及び水温が25℃の条件で膜分離処理を行った場合において、透過水量が42L/h/MPa/m以上、かつ塩除去率が99%以上となる合成ポリアミド膜であることが好ましい。
【0070】
このように構成された逆浸透膜装置13は、被処理水W1をRO膜に供給しながら、透過水(処理水)W2を生成すると共に、被処理水W1の不純物濃度が高まった濃縮水W3を生成する。
逆浸透膜装置13には、透過水W2を通水可能な通水ラインL6と、濃縮水W3を通水可能な濃縮水返送ラインL7が接続されている。
【0071】
通水ラインL6の下流側の端部は、処理水タンク14に接続されている。濃縮水返送ラインL7の下流側の端部は、通水ラインL1における合流部J6に接続されている。
【0072】
逆浸透膜装置13により生成された透過水W2は、通水ラインL6を介して処理水タンク14に供給されるようになっている。また、逆浸透膜装置13により生成された濃縮水W3は、濃縮水返送ラインL7、合流部J6及び通水ラインL1を介して排水処理槽2に戻されるようになっている。
【0073】
次に、処理水タンク14について説明する。
処理水タンク14は、逆浸透膜装置13により生成された透過水を処理水W2として貯留するものである。処理水タンク14は、通水ラインL6を介して逆浸透膜装置13の下流側に接続されている。処理水タンク14は、処理水W2の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0074】
処理水タンク14は、図示しない通水ラインを介して、例えば、工場における工業用水等の供給設備に接続されている。そして、処理水タンク14に貯留された処理水W2は、各種プロセス水(例えば、洗浄水や冷却水),中水,雑用水等として再利用される。
【0075】
なお、図示例を省略するが、上述した通水ラインL1,L2,L3,L4,L5,L6及び濃縮水返送ラインL7には、被処理水W1、処理水W2又は濃縮水W3を送出するポンプや、流路を開閉するバルブ等が適宜設けられている。これらのポンプやバルブ等も、図示しない制御装置によって制御される。
【0076】
次に、本実施形態の水処理システム1の動作について図1を参照しながら説明する。
水処理システム1が運転されると、図示しない制御装置により、原水ポンプ3が起動される。すると、被処理水W1(原水)が、排水処理槽2から通水ラインL2を介して砂濾過装置6に通水される。この被処理水W1には、ゴミ,コロイド粒子等の濁質,あるいは排水処理槽2において凝集沈殿処理された後の残渣物が含まれている。
【0077】
通水ラインL2に通水された被処理水W1には、凝集剤添加装置4から、例えば、凝集剤としてのポリ塩化アルミニウム(PAC)溶液が添加される。ポリ塩化アルミニウム溶液の添加量は、図示しない制御装置によって凝集剤添加ポンプ4bの運転(駆動及び停止)を制御することによって調整される。濁質や残渣物は、ポリ塩化アルミニウムによる電荷中和作用によって凝集するので、砂濾過装置6による濾過処理により、捕捉され易くなる。
【0078】
続いて、被処理水W1には、酸化剤添加装置5から、酸化剤として、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液が添加される。次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量は、図示しない制御装置によって酸化剤添加ポンプ5bの運転(駆動及び停止)を制御することによって調整される。次亜塩素酸ナトリウム溶液は、砂濾過装置6における濾材の微生物による固着を抑制する。また、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、紫外線照射装置7において促進酸化処理を行う際の酸化剤として使用される。
【0079】
次いで、被処理水W1は、砂濾過装置6に通水される。被処理水W1は、砂濾過装置6の前記濾材層で濾過処理されることによって、前記ゴミや凝集物等が捕捉され、除去される。また、被処理水W1には、殺菌剤として作用する次亜鉛塩素酸ナトリウムが含まれているので、砂濾過装置6内における菌の繁殖を防ぐことができる。
【0080】
砂濾過装置6を経た被処理水W1は、通水ラインL3を介して紫外線照射装置7の処理槽内に通水される。この被処理水W1には、酸化剤添加装置5によって添加された酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウムが含まれている。
【0081】
処理槽内に通水された被処理水W1は、紫外線ランプによって紫外線を照射される。前記酸化剤を含む被処理水W1に紫外線が照射されると、ヒドロキシルラジカルが生成される。このヒドロキシルラジカルは、強力な酸化力を有し、処理槽内では、被処理水W1の促進酸化処理が行われる。そのため、この促進酸化処理により、被処理水W1に含まれる難分解性の有害物質が酸化分解される。また、この促進酸化処理により、被処理水W1に含まれる色度成分や臭気成分が分解される。更に、この促進酸化処理により、被処理水W1に含まれる微生物が殺菌される。
【0082】
また、被処理水W1をこのように促進酸化処理することにより、下流側の逆浸透膜装置13のRO膜において、微生物が増殖してRO膜に付着する、いわゆるバイオファウリングの発生を抑制することができる。
【0083】
紫外線照射装置7を経た被処理水W1は、通水ラインL4を介して補助濾過装置11に通水される。通水ラインL4に通水された被処理水W1には、還元剤添加装置8から、還元剤として、例えば、重亜硫酸ナトリウム溶液が添加される。
被処理水W1に重亜硫酸ナトリウム溶液が添加されると、被処理水W1中に残留する次亜塩素酸イオンが塩化物イオンに還元され、除去される。
【0084】
残留塩素が除去された被処理水W1には、排水処理槽2で使用したカルシウム化合物由来の硬度成分が含まれている。この硬度成分が所定濃度以上の場合には、RO膜へのファウリングを引き起こす。そのため、図示しない制御装置によって分散剤添加装置9の分散剤添加ポンプ9bが制御され、分散剤として、例えば、アクリル酸系ポリマーが添加される。
【0085】
アクリル酸系ポリマーが添加されると、被処理水W1中の硬度成分が分散するので、硬度成分に起因するスケールが逆浸透膜装置13のRO膜に付着することが抑制される。これにより、RO膜におけるファウリングの発生が抑制される。
【0086】
また、通水ラインL4に通水された被処理水W1には、pH調整剤添加装置10から、pH調整剤として、例えば、水酸化ナトリウム溶液が所定量添加される。
水酸化ナトリウム溶液の添加量は、pH値測定装置12により測定されたpH値に基づいて、pH調整制御装置15によって調整される。具体的には、被処理水W1のpH値が、例えば、6.8〜7.5になるように、pH調整剤添加ポンプ10bの運転(駆動及び停止)が制御され、水酸化ナトリウム溶液の添加量が調整される。
【0087】
このように、逆浸透膜装置13に通水される前の被処理水W1のpH値を中性域に調整することで、逆浸透膜装置13のRO膜のフッ素除去率の低下を抑制する。これにより、フッ素除去率を所定値以上(例えば、80%以上)に維持して処理水W2の水質の安定化を図ることが可能となる。
【0088】
続いて、pH値を調整された被処理水W1は、補助濾過装置11に通水される。補助濾過装置11では、被処理水W1中の濁質の濾過処理(粗濾過)を行う。これにより、逆浸透膜装置13への濁質の流入を抑制することができ、RO膜におけるファウリングの発生を抑制することができる。
【0089】
補助濾過装置11を経た被処理水W1は、逆浸透膜装置13に通水される。被処理水W1は、逆浸透膜装置13のRO膜により、透過水W2と濃縮水W3とに膜分離処理される。これにより、フッ化物を含む溶存塩類等の不純物が除去された透過水(処理水)W2を得ることができる。
【0090】
逆浸透膜装置13により生成された透過水(処理水)W2は、通水ラインL6を介して処理水タンク14に通水され、処理水タンク14に貯留される。処理水タンク14に貯留された処理水W2は、各種プロセス水,中水,雑用水等として再利用される。
【0091】
一方、逆浸透膜装置13により生成された濃縮水W3は、濃縮水返送ラインL7、合流部J6及び通水ラインL1を介して排水処理槽2に戻される。
【0092】
以上のように、第1実施形態の水処理システム1によれば、以下に示す各効果が奏される。
第1実施形態の水処理システム1は、促進酸化処理装置としての酸化剤添加装置5と、促進酸化処理装置としての紫外線照射装置7と、pH調整剤添加装置10と、pH値測定装置12と、逆浸透膜装置13と、制御装置としてのpH調整制御装置15と、を備える。
【0093】
そのため、促進酸化処理された被処理水W1は、逆浸透膜装置13に通水される前に、pH値測定装置12によってpH値を測定される。そして、被処理水W1は、そのpH値に基づいてpH調整剤添加装置10によるpH調整剤の添加量が調整され、pH値が中性域に調整される。そのため、逆浸透膜装置13のRO膜のフッ素除去率の低下を抑制することができるので、フッ化物を含有する被処理水を効率的に浄化することができる。したがって、フッ素除去率を維持して処理水W2の水質の安定化を図ることができる。
【0094】
被処理水W1は、酸化剤添加装置5によって酸化剤を添加された後に、紫外線照射装置7によって紫外線を照射され、促進酸化処理される。したがって、この促進酸化処理により、被処理水W1に含まれる難分解性の有害物質を酸化分解することができる。また、この促進酸化処理により、被処理水W1に含まれる色度成分や臭気成分を分解することができる。更に、この促進酸化処理により、被処理水W1に含まれる微生物を殺菌することもできる。
【0095】
また、被処理水W1をこのように促進酸化処理することにより、下流側の逆浸透膜装置13のRO膜において、いわゆるバイオファウリングの発生を抑制することができる。
【0096】
促進酸化処理された被処理水W1は、逆浸透膜装置13に通水され、逆浸透膜装置13のRO膜により、透過水W2と濃縮水W3とに膜分離処理される。そのため、フッ化物を含む溶存塩類等の不純物が除去された処理水(透過水)W2を得ることができる。
【0097】
また、処理水タンク14に貯留された処理水W2を、各種プロセス水,中水,雑用水等として再利用することができる。そのため、工場における上水使用量を低減することができる。
【0098】
また、水処理システム1は、紫外線照射装置7の上流側に、濾過装置としての砂濾過装置6を更に備える。そのため、被処理水W1は、砂濾過装置6で濾過処理されることによって、ゴミや濁質の凝集物等を除去することができる。
【0099】
また、水処理システム1は、凝集剤添加装置4を更に備える。そのため、被処理水W1中の微細粒子(濁質)や残渣物の電荷を中和して凝集物を形成することができ、砂濾過装置6による濾過処理を行い易くすることができる。
【0100】
また、水処理システム1は、還元剤添加装置8を更に備える。そのため、酸化剤添加装置5によって添加された酸化剤を還元して除去することができ、逆浸透膜装置13のRO膜の酸化劣化を抑制することができる。したがって、RO膜の塩除去率及び透過流束の低下を抑制することができ、処理水W2の水質と処理流量の安定化を図ることができる。
【0101】
また、水処理システム1は、分散剤添加装置9を更に備える。そのため、被処理水W1中の硬度成分を分散させてスケールの析出を抑制することができる。したがって、硬度成分に起因するスケールが逆浸透膜装置13のRO膜に付着するのを抑制することができ、RO膜におけるファウリングの発生を抑制することができる。
【0102】
また、水処理システム1は、濃縮水返送ラインL7を更に備える。そのため、逆浸透膜装置13により生成された濃縮水W3を、濃縮水返送ラインL7を介して排水処理槽2に戻すことができる。したがって、工場における排水量を低減することができる。
【0103】
また、水処理システム1は、逆浸透膜装置13の上流側の近傍に補助濾過装置11を更に備える。そのため、被処理水W1中の濁質の濾過処理(粗濾過)を行い、逆浸透膜装置13への濁質の流入を抑制することができる。
【0104】
次に、被処理水W1のpH値とフッ素除去率との関係について、図2を参照しながら説明する。図2は、被処理水W1のpH値とフッ素除去率との関係を示すグラフである。
【0105】
逆浸透膜装置13のRO膜には、次のような低ファウリング膜を用いた。すなわち、塩化ナトリウムの濃度が1500mg/Lの食塩水を被処理水として用い、運転圧力が1MPa、回収率が15%及び水温が25℃の条件で膜分離処理を行った場合において、透過水量が42L/h/MPa/m以上、かつ塩除去率が99%以上となる合成ポリアミド膜を用いた。
【0106】
このようなRO膜を有する逆浸透膜装置13を備えた水処理システム1によって、図2に示すように、被処理水W1のpH値を、中性域(例えば、pH値が6.8〜7.5)になるように調整したところ、フッ素除去率が略80%以上となることを確認することができた。
【0107】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2実施形態の水処理システム1Bを示す構成図である。
図3に示すように、第2実施形態の水処理システム1Bは、前記第1実施形態の水処理システム1の構成に加え、通水ラインL2における凝集剤添加装置4の上流側に、上流用pH調整剤添加装置20と、上流用pH値測定装置22と、上流用pH調整制御装置25と、を更に備える。
【0108】
上流用pH調整剤添加装置20は、凝集剤添加装置4に通水される前の被処理水W1にpH調整剤を添加するものである。上流用pH調整剤添加装置20は、通水ラインL2における添加点J1よりも上流側の添加点J6に接続されている。上流用pH調整剤添加装置20は、pH調整剤貯留部20aと、pH調整剤添加ポンプ20bと、を備えている。pH調整剤貯留部20aは、pH調整剤を貯留する。pH調整剤貯留部20aは、pH調整剤の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0109】
pH調整剤添加ポンプ20bは、pH調整剤貯留部20aに貯留されたpH調整剤を、通水ラインL2の添加点J6を介して被処理水W1に送出し、添加する。pH調整剤添加ポンプ20bは、上流用pH調整制御装置25と電気的に接続されている。pH調整剤添加ポンプ20bは、上流用pH調整制御装置25によって運転(駆動及び停止)を制御される。被処理水W1へのpH調整剤の添加量は、pH値測定装置22により測定されたpH値に基づいて、上流用pH調整制御装置25によって制御される。
【0110】
pH調整剤は、凝集剤添加装置4に通水される前の被処理水W1のpH値を、凝集剤添加装置4によって被処理水W1に凝集剤が添加されたときに最適な凝集効果が得られるように、調整するものである。フッ化物を含む被処理水W1は、通常は酸性である。そのため、酸性の被処理水W1を中和するpH調整剤としては、アルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。被処理水W1のpH値を、中性域(例えば、pH値が6〜8の範囲)となるように調整することによって、最適な凝集効果が得られるようにする。
【0111】
上流用pH値測定装置22は、凝集剤添加装置4に通水される前の被処理水W1のpH値を測定するものである。上流用pH値測定装置22は、通水ラインL2における添加点J6よりも下流側であり、かつ、添加点J1の上流側に設けられている。上流用pH値測定装置22は、上流用pH調整制御装置25と電気的に接続されている。上流用pH値測定装置22により測定されたpH値は、上流用pH調整制御装置25に入力されるようになっている。
【0112】
上流用pH調整制御装置25は、上流用pH値測定装置22及び上流用pH調整剤添加装置20のpH調整剤添加ポンプ20bと電気的に接続されている。上流用pH調整制御装置25は、上流用pH値測定装置22により測定されたpH値に基づいて、pH調整剤添加ポンプ20bの運転(駆動及び停止)を制御し、pH調整剤の添加量をフィードバック制御する。
【0113】
上流用pH調整制御装置25は、図示しないメモリ部と演算部とを備えている。メモリ部は、被処理水W1のpH値に係る複数のテーブル(図示せず)を有している。テーブルには、被処理水W1のpH値に基づくpH調整剤の添加量データが複数記憶されている。演算部は、上流用pH値測定装置22により測定されたpH値に基づいてpH調整剤の添加量を算出する。添加量の算出は、メモリ部に記憶された添加量データに基づいて行われ、テーブルからpH調整剤の適切な添加量を判定し、選択することにより行われる。
【0114】
以上のように、第2実施形態の水処理システム1Bは、前記第1実施形態の水処理システム1の構成に加え、通水ラインL2における凝集剤添加装置4の上流側に、上流用pH調整剤添加装置20と、上流用pH値測定装置22と、上流用pH調整制御装置25と、を更に備える。そのため、前記第1実施形態の場合と同様の効果を奏するほか、凝集剤添加装置4に通水される前の被処理水W1にpH調整剤を添加することにより、凝集剤添加装置4によって凝集剤を添加されたときに、最適な凝集効果を得ることができる。したがって、砂濾過装置6による濾過処理を行い易くすることができる。
【0115】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の第3実施形態の水処理システム1Cを示す構成図である。
前記第1実施形態の水処理システム1は、濁質が含まれる被処理水W1を浄化するが、第3実施形態の水処理システム1Cは、濁質がほとんど含まれていない被処理水W1を浄化する。図4に示すように、水処理システム1Cは、前記第1実施形態の水処理システム1の構成から、濁質を除去するための凝集剤添加装置4、砂濾過装置6及び通水ラインL3を除いた構成となっている。
【0116】
以上のように、第3実施形態の水処理システム1Cは、濁質がほとんど含まれていない被処理水W1を浄化することができ、前記第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0117】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0118】
また、前記実施形態においては、水処理システム1,1B,1Cは、還元剤添加装置8を備えるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、水処理システム1,1B,1Cは、還元剤添加装置8に代えて、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を吸着除去する活性炭フィルタ装置を備えてもよい。また、酸化剤添加装置5によって添加された酸化剤を還元する必要がない場合には、水処理システム1,1B,1Cは、還元剤添加装置8を備えなくてもよい。
【0119】
また、前記実施形態においては、水処理システム1,1B,1Cは、分散剤添加装置9を備えるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、被処理水W1中の所定濃度以上の硬度成分が含まれておらず、被処理水W1中の硬度成分を分散させてスケールの析出を抑制する必要がない場合には、水処理システム1,1B,1Cは、分散剤添加装置9を備えなくてもよい。
【0120】
また、前記実施形態においては、水処理システム1,1B,1Cは、濃縮水返送ラインL7を備えるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、逆浸透膜装置13により生成された濃縮水W3を、別途の処理装置(図示せず)によって処理した後に、所定の排水ライン(図示せず)に排水する場合には、水処理システム1,1B,1Cは、濃縮水返送ラインL7を備えなくてもよい。
【0121】
また、前記実施形態においては、逆浸透膜装置13は、前記所定性能の低ファウリング膜を有するものとして説明したが、逆浸透膜装置13のRO膜は、前記性能以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1,1B,1C 水処理システム
4 凝集剤添加装置
5 酸化剤添加装置(促進酸化処理装置)
6 砂濾過装置(濾過装置)
7 紫外線照射装置(促進酸化処理装置)
8 還元剤添加装置
9 分散剤添加装置
10 pH調整剤添加装置
12 pH値測定装置
13 逆浸透膜装置
15 pH調整制御装置(制御装置)
20 上流用pH調整剤添加装置
22 上流用pH値測定装置
25 上流用pH調整制御装置
L7 濃縮水返送ライン
W1 被処理水
W2 透過水
W3 濃縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物を含有する被処理水を浄化する水処理システムであって、
前記被処理水の促進酸化処理を行う促進酸化処理装置と、
前記促進酸化処理装置を経た前記被処理水にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置と、
前記被処理水のpH値を測定するpH値測定装置と、
前記pH値測定装置により測定された前記pH値に基づいて前記pH調整剤添加装置による前記pH調整剤の添加量を制御する制御装置と、
前記pH値が測定された後の前記被処理水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに膜分離処理を行う逆浸透膜装置と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記促進酸化処理装置の上流側に、前記被処理水に含まれる濁質の濾過処理を行う濾過装置を更に備える請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記濾過装置による濾過処理が行われる前に、前記被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加装置を更に備える請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記凝集剤添加装置に通水される前の前記被処理水にpH調整剤を添加する上流用pH調整剤添加装置と、
前記被処理水のpH値を測定する上流用pH値測定装置と、
前記上流用pH値測定装置により測定された前記pH値に基づいて前記上流用pH調整剤添加装置による前記pH調整剤の添加量を制御する上流用pH調整制御装置と、
を更に備える請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記促進酸化処理装置を経た前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加装置を更に備える請求項1から4のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項6】
前記促進酸化処理装置を経た前記被処理水に分散剤を添加する分散剤添加装置を更に備える請求項1から5のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項7】
前記逆浸透膜装置からの濃縮水を前記促進酸化処理装置の上流側に返送する濃縮水返送ラインを更に備える請求項1から6のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項8】
前記逆浸透膜は、塩化ナトリウムの濃度が1500mg/Lの食塩水を前記被処理水として用い、運転圧力が1MPa、回収率が15%及び水温が25℃の条件で前記膜分離処理を行った場合において、透過水量が42L/h/MPa/m以上、かつ塩除去率が99%以上となる合成ポリアミド膜である請求項1から7のいずれかに記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−31146(P2011−31146A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178212(P2009−178212)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】