説明

水処理装置および水処理方法

【課題】水およびエネルギの浪費を防ぐことができる水処理装置および水処理方法を提供する。
【解決手段】水処理装置87は、ナノバブルを含有する養殖水が供給され、ろ過砂106および中和ろ材107が充填された急速ろ過塔60と、急速ろ過塔60でろ過された養殖水が供給され、バクテリアろ材108および中和ろ材109が充填されると共に、急速ろ過塔60よりも遅い速度でろ過する緩速ろ過槽67とを備える。これにより、急速ろ過塔60においてろ過砂106および中和ろ材107が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できると共に、緩速ろ過槽67のバクテリアろ材108および中和ろ材109が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。また、ナノバブルの洗浄力および酸化力によって、中和ろ材106,108の表面が洗浄酸化されるので、中和ろ材106,108からカルシウム等の鉱物を溶出させて水の中和を合理的に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば魚類、甲殻類及び貝類の養殖、プールおよび池等に使用される水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノバブル含有液体の製造方法及びナノバブル含有液体の製造装置に関する発明はされているが、従来のナノバブル発生器から発生するナノバブル量は少ないことが一般的であった。
【0003】
ナノバブルを多量に発生することができるナノバブル発生機は、2006年、株式会社協和機設から販売が開始された。このナノバブル発生機を構成する各種部品はナノバブルの特殊性から特別に製作されていた。このため、株式会社協和機設のナノバブル発生機は、製造コストが高くなることのみならず、納期に長い期間を要していた。
【0004】
また、株式会社協和機設のナノバブル発生装置は、単品装置であるため、ナノバブルの発生量を目的に応じて自由に調節制御できない構造であり、又システムであった。
【0005】
このような株式会社協和機設のナノバブル発生装置の発明が特許第4118939号公報(特許文献1)で開示されている。
【0006】
また、特開2004−121962号公報(特許文献2)には、ナノバブルを用いた水処理の技術が開示されている。この技術は、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用および殺菌作用などの特性を活用したものである。より具体的には、上記技術は、上記浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などが相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能によって各種物体を高機能、低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができるようにするものである。
【0007】
また、特開2003−334548号公報(特許文献3)には、オゾンマイクロバブルを廃液の処理に利用する技術が開示されている。この技術は、液体中において液体の一部を分解ガス化する工程、液体中で超音波を印加する工程または液体の一部を分解ガス化する工程、および、超音波を印加する工程から構成されている。
【0008】
また、特開2004−321959号公報(特許文献4)には、オゾンマイクロバブルを廃液の処理に利用する技術が開示されている。この技術では、マイクロバブル発生装置に、オゾン発生装置より生成されたオゾンガスと、処理槽の下部から抜き出された廃液とを、加圧ポンプを介して供給している。また、上記技術では、オゾン発生装置より生成されたオゾンマイクロバブルを、ガス吹き出しパイプの開口部より処理槽内の廃液中に通気している。
【0009】
ところで、近年、漁船に使用する重油の上昇により、魚類を遠洋まで出かけて行って捕獲するよりも、近場での魚類の養殖が注目されてきた。
【0010】
しかしながら、魚類を水槽で養殖する場合、水槽内の養殖水を循環使用し続けると、養殖水中のアンモニア性窒素が酸化されて、硝酸性窒素が増加する。これにより、上記養殖水中のpHが低下して魚類の成長が悪化したり、多量の魚類が死滅したりすることがある。
【0011】
このため、上記養殖水中のpHを維持するため、折角温度調節して養殖水を排水し、新鮮な養殖水を水槽に導入すると共に、その新鮮な養殖水の温度調節を行わなければならないが、新鮮な養殖水の導入および温度調節は水およびエネルギの浪費の問題を引き起してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4118939号公報
【特許文献2】特開2004−121962号公報
【特許文献3】特開2003−334548号公報
【特許文献4】特開2004−321959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の課題は、水およびエネルギの浪費を防ぐことができる水処理装置および水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の水処理装置は、
ナノバブルを含有する被処理水が供給され、ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔と、
上記急速ろ過塔でろ過された被処理水が供給され、バクテリアろ材および中和ろ材が充填されると共に、上記急速ろ過塔よりも遅い速度でろ過する緩速ろ過槽と
を備えたことを特徴としている。
【0015】
上記構成の水処理装置によれば、上記ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔には、ナノバブルを含有する被処理水が供給されるので、急速ろ過塔においてろ過砂および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0016】
また、上記被処理水は、バクテリアろ材および中和ろ材が充填された緩速ろ過槽にも供給されるので、緩速ろ過槽のバクテリアろ材および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0017】
また、上記ナノバブルの洗浄力および酸化力によって、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材の表面が洗浄酸化されるので、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材からカルシウム等の鉱物を溶出させて水の中和を合理的に実施することができる。
【0018】
また、上記緩速ろ過槽のバクテリアろ材中に繁殖した微小のニトロソモナスやニトロバクター等のバクテリアをナノバブルで活性化して、水中のアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素を酸化処理できる。
【0019】
したがって、上記急速ろ過塔および緩速ろ過槽で例えば魚類の養殖水をろ過した場合、養殖水中のpHの低下を防ぐことができるので、養殖水の再利用が可能となり、水およびエネルギの浪費を防ぐことができる。
【0020】
一実施形態の水処理装置では、
上記緩速ろ過槽でろ過された被処理水が供給される第1水槽と、
上記第1水槽に設置され、マイクロバブル含有水を生成する第1のマイクロバブル発生装置と、
上記マイクロバブル含有水が供給される第2水槽と、
上記第2水槽に設置され、上記マイクロバブル含有水をベースにマイクロナノバブル含有水を生成する第2のマイクロバブル発生装置と、
上記マイクロナノバブル含有水が供給される第3水槽と、
上記第3水槽に設置され、上記マイクロナノバブル含有水をベースにナノバブル含有水を生成する第3のマイクロバブル発生装置と、
上記ナノバブル含有水のナノバブル量を増加させる第4のマイクロバブル発生装置と
を備える。
【0021】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記第1〜第4のマイクロバブル発生装置はナノバブル発生装置に比べて安価であるので、多量のナノバブルを安価に生成することができる。
【0022】
仮に、上記ナノバブル発生装置で多量のナノバブルを生成しようとすると、高価なナノバブル発生装置が複数必要となって、多量のナノバブルを安価に生成することができない。
【0023】
一実施形態の水処理装置では、
上記第4のマイクロバブル発生装置は渦流ポンプを有する。
【0024】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記第4のマイクロバブル発生装置が渦流ポンプを有するので、サイズが小さいナノバブルを多量に生成することできる。
【0025】
一実施形態の水処理装置では、
上記第4のマイクロバブル発生装置は、上記渦流ポンプの吐出側に設置され、ラセン状流路およびカレントカッタを含むラインミキサを有する。
【0026】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記渦流ポンプの吐出側には、ラセン状流路およびカレントカッタを含むラインミキサが設置されているので、サイズがより小さいナノバブルつまり微小なバブルを多量に生成することできる。
【0027】
一実施形態の水処理装置では、
養殖水および魚類が入る魚類養殖水槽から出た養殖水を、上記急速ろ過塔、上記緩速ろ過槽、上記第1のマイクロバブル発生装置、上記第2のマイクロバブル発生装置、上記第3のマイクロバブル発生装置および上記第4のマイクロバブル発生装置を通過させて再び上記魚類養殖水槽に戻す。
【0028】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記魚類養殖水槽から出た養殖水が、急速ろ過塔、緩速ろ過槽、第1のマイクロバブル発生装置、第2のマイクロバブル発生装置、第3のマイクロバブル発生装置および第4のマイクロバブル発生装置を通過して再び魚類養殖水槽に戻ることによって、養殖水の水質を常に良好に維持することができるので、魚類養殖水槽中の魚類は疾病にかかり難い。
【0029】
その結果、上記魚類養殖水槽で養殖する魚類の歩留まりが高くなり、魚類の養殖を効率的に行える。
【0030】
一実施形態の水処理装置では、
上記第3のマイクロバブル発生装置が生成した上記ナノバブル含有水の電位を検出する電位検出装置と、
上記電位検出装置が検出した電位に基づいて、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを調節する調節装置と
を備える。
【0031】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記調節装置は、電位検出装置が検出した電位に基づいて、第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを調節するので、マイクロバブル発生量、マイクロナノバブル発生量およびナノバブル発生量のうちの少なくとも1つを最適な量に維持することができる。
【0032】
一実施形態の水処理装置では、
上記調節装置は、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを界面活性剤で調節する。
【0033】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記調節装置は、第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを界面活性剤で調節するので、マイクロバブル発生量、マイクロナノバブル発生量およびナノバブル発生量のうちの少なくとも1つを容易に最適な量に維持できる。
【0034】
一実施形態の水処理装置では、
上記調節装置は、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを無機塩類で調節する。
【0035】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記調節装置は、第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを無機塩類で調節するので、マイクロバブル発生量、マイクロナノバブル発生量およびナノバブル発生量のうちの少なくとも1つを容易に最適な量に維持できる。
【0036】
一実施形態の水処理装置では、
上記調節装置は、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを界面活性剤および無機塩類で調節する。
【0037】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記調節装置は、第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを界面活性剤および無機塩類で調節するので、マイクロバブル発生量、マイクロナノバブル発生量およびナノバブル発生量のうちの少なくとも1つを容易に最適な量に維持できる。
【0038】
一実施形態の水処理装置では、
上記第3のマイクロバブル発生装置が生成した上記ナノバブル含有水が上記第3水槽から供給される測定槽を備え、
上記電位検出装置は、上記測定槽に貯えられた上記ナノバブル含有水の電位を検出する。
【0039】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記電位検出装置は、測定槽に貯えられたナノバブル含有水の電位を検出するので、ナノバブル含有水の電位を容易かつ正確に検出できる。
【0040】
一実施形態の水処理装置では、
上記電位検出装置が検出する電位は酸化還元電位またはゼータ電位である。
【0041】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記酸化還元電位およびゼータ電位がナノバブル量と相関関係があるので、この酸化還元電位またはゼータ電位に基づくことにより、ナノバブル含有水中のナノバブル量を正確に検出することができる。
【0042】
一実施形態の水処理装置では、
上記第1水槽の上部と上記第2水槽の上部とを互いに接続する第1のオーバーフロー管と、
上記第2水槽の上部と上記第3水槽の上部とを互いに接続する第2のオーバーフロー管と、
上記第1水槽の下部と上記第2水槽の下部とを互いに接続する第1の連通管と、
上記第2水槽の下部と上記第3水槽の下部とを互いに接続する第2の連通管と
を備える。
【0043】
上記実施形態の水処理方法によれば、上記第1,第2のオーバーフロー管を備えるので、第3水槽の水面で浮遊物質を濃縮することができる。
【0044】
また、上記第1,第2の連通管を備えるので、浮遊物質を含まないマイクロバブル含有水を第1水槽から第2水槽へ送ったり、浮遊物質を含まないマイクロナノバブル含有水を第2水槽から第3水槽へ送ったりすることができる。
【0045】
一実施形態の水処理装置では、
上記第3水槽から供給されたナノバブル含有水と微細浮遊物質と分離させるための第4水槽を備える。
【0046】
上記実施形態の水処理装置によれば、上記第3水槽から供給されたナノバブル含有水と微細浮遊物質と分離させるための第4水槽を備えるので、ナノバブル含有水から微細浮遊物質を除去し、ナノバブル含有水の水質を向上させることができる。
【0047】
本発明の水処理方法は、
ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔で、ナノバブルを含有する被処理水をろ過した後、バクテリアろ材および中和ろ材が充填され、上記急速ろ過塔よりも遅い速度でろ過する緩速ろ過槽によって、上記急速ろ過塔でろ過された被処理水をろ過することを特徴としている。
【0048】
上記構成の水処理方法によれば、上記ナノバブルを含有する被処理水を、ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔でろ過するので、急速ろ過塔においてろ過砂および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0049】
また、上記被処理水は、急速ろ過塔でろ過した後、バクテリアろ材および中和ろ材が充填された緩速ろ過槽でろ過するので、緩速ろ過槽のバクテリアろ材および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0050】
また、上記ナノバブルの洗浄力および酸化力によって、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材の表面が洗浄酸化されるので、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材からカルシウム等の鉱物を溶出させて水の中和を合理的に実施することができる。
【0051】
また、上記緩速ろ過槽のバクテリアろ材中に繁殖した微小のニトロソモナスやニトロバクター等のバクテリアをナノバブルで活性化して、水中のアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素を酸化処理できる。
【0052】
したがって、上記急速ろ過塔および緩速ろ過槽で例えば魚類の養殖水をろ過した場合、養殖水中のpHの低下を防ぐことができるので、養殖水の再利用が可能となり、水およびエネルギの浪費を防ぐことができる。
【0053】
一実施形態の水処理方法では、
上記緩速ろ過槽でろ過された被処理水をベースに第1のマイクロバブル発生装置でマイクロバブル含有水を生成する工程と、
上記マイクロバブル含有水をベースに第2のマイクロバブル発生装置でマイクロナノバブル含有水を生成する工程と、
上記マイクロナノバブル含有水をベースにナノバブル含有水を第3のマイクロバブル発生装置で生成する工程と、
上記ナノバブル含有水のナノバブル量を第4のマイクロバブル発生装置で増加させる工程とを備える。
【0054】
上記実施形態の水処理方法によれば、上記第1〜第4のマイクロバブル発生装置はナノバブル発生装置に比べて安価であるので、多量のナノバブルを安価に生成することができる。
【0055】
仮に、上記ナノバブル発生装置で多量のナノバブルを生成しようとすると、高価なナノバブル発生装置が複数必要となって、多量のナノバブルを安価に生成することができない。
【0056】
一実施形態の水処理方法では、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を魚類の養殖水として使用する。
【0057】
上記実施形態の水処理方法によれば、上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を魚類の養殖水として使用するので、魚類の養殖に伴う、残餌や魚類の排泄物に起因する疾病を防止することができる。その結果、上記魚類の養殖における歩留まりを向上させることができる。
【0058】
そして、上記ナノバブル量が増加したナノバブル含有水は、魚類の血流量を増加させて、魚類を活発化して餌の摂取量を増加させ、魚類の成長を促進させることができる。
【0059】
一実施形態の水処理方法では、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水をプール水として使用する。
【0060】
上記実施形態の水処理方法によれば、上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水をプール水として使用するので、プール水が殺菌されている状態と同様となり、例えば次亜塩素酸ソーダ等の薬品投入量を減少させることができる。
【0061】
また、上記ナノバブル量が増加したナノバブル含有水であるプール水は、例えばアオコ等の藻類が繁殖することを防止することができる。
【0062】
一実施形態の水処理方法では、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を池に導入する。
【0063】
上記実施形態の水処理方法によれば、上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を池に導入するので、富栄養化の進展により浄化が困難な池に対して、従来の多量の薬品を使用して多量の汚泥を発生させること無く、池の水を浄化できる。
【0064】
また、上記池の水の浄化の原理は、ナノバブルが有するフリーラジカル起因の酸化作用による池の水中の有機物に対する酸化分解と池の水に生息する微生物の活性化による浄化効率の改善である。
【0065】
一実施形態の水処理方法では、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を水族館展示水槽に導入する。
【0066】
上記実施形態の水処理方法によれば、上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を水族館展示水槽に導入するので、水族館展示水槽での飼育水の透明度向上と、飼育水中の毒性のあるアンモニア性窒素の酸化処理とを期待できる。
【0067】
特に、上記水族館展示水槽は、微生物処理槽を有していることが一般的で、上記ナノバブルで微生物処理槽のバクテリアを活性化させることができ、その結果、透明度をより向上させることができる。
【0068】
また、上記飼育水中の毒性のあるアンモニア性窒素については、アンモニア性窒素が微量でも、ナノバブルが有するフリーラジカルによる酸化力でアンモニア性窒素を酸化処理することができる。
【0069】
また、上記ナノバブルが飼育水中または微生物処理槽のバクテリアを活性化して、アンモニア性窒素を酸化処理することができる。
【発明の効果】
【0070】
本発明の水処理装置によれば、ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔には、ナノバブルを含有する被処理水が供給されるので、急速ろ過塔においてろ過砂および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0071】
また、上記被処理水は、バクテリアろ材および中和ろ材が充填された緩速ろ過槽にも供給されるので、緩速ろ過槽のバクテリアろ材および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0072】
また、上記ナノバブルの洗浄力および酸化力によって、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材の表面が洗浄酸化されるので、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材からカルシウム等の鉱物を溶出させて水の中和を合理的に実施することができる。
【0073】
また、上記緩速ろ過槽のバクテリアろ材中に繁殖した微小のニトロソモナスやニトロバクター等のバクテリアをナノバブルで活性化して、水中のアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素を酸化処理できる。
【0074】
したがって、上記急速ろ過塔および緩速ろ過槽で例えば魚類の養殖水をろ過した場合、養殖水中のpHの低下を防ぐことができるので、養殖水の再利用が可能となり、水およびエネルギの浪費を防ぐことができる。
【0075】
本発明の水処理方法によれば、ナノバブルを含有する被処理水を、ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔でろ過するので、急速ろ過塔においてろ過砂および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0076】
また、上記被処理水は、急速ろ過塔でろ過した後、バクテリアろ材および中和ろ材が充填された緩速ろ過槽でろ過するので、緩速ろ過槽のバクテリアろ材および中和ろ材が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0077】
また、上記ナノバブルの洗浄力および酸化力によって、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材の表面が洗浄酸化されるので、急速ろ過塔および緩速ろ過槽の中和ろ材からカルシウム等の鉱物を溶出させて水の中和を合理的に実施することができる。
【0078】
また、上記緩速ろ過槽のバクテリアろ材中に繁殖した微小のニトロソモナスやニトロバクター等のバクテリアをナノバブルで活性化して、水中のアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素を酸化処理できる。
【0079】
したがって、上記急速ろ過塔および緩速ろ過槽で例えば魚類の養殖水をろ過した場合、養殖水中のpHの低下を防ぐことができるので、養殖水の再利用が可能となり、水およびエネルギの浪費を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の魚類養殖装置の模式図である。
【図2】図2は本発明の第2実施形態の魚類養殖装置の模式図である。
【図3】図3は本発明の第3実施形態の魚類養殖装置の模式図である。
【図4】図4は本発明の第4実施形態の魚類養殖装置の模式図である。
【図5】図5は本発明の第5実施形態の魚類養殖装置の模式図である。
【図6】図6は本発明の第6実施形態のプール装置の模式図である。
【図7】図7は本発明の第7実施形態の池装置の模式図である。
【図8】図8は本発明の第8実施形態の水族館展示水槽装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態の魚類養殖装置117の模式図である。
【0082】
上記魚類養殖装置117は、水処理装置87と魚類養殖部112を備え、ナノバブルを多量に生成し、この多量のナノバブルを魚類100の養殖に利用する。
【0083】
上記水処理装置87は、処理部84、第1ナノバブル製造部85および第2ナノバブル製造部86を有する。
【0084】
最初に、上記処理部84および魚類養殖部112について詳細に説明する。
【0085】
上記処理部84はピット57、急速ろ過塔60と、この急速ろ過塔60よりも遅い速度でろ過する緩速ろ過槽67とを有し、魚類養殖部112から出た養殖水がピット57、急速ろ過塔60および緩速ろ過槽67をこの順で通過する。
【0086】
上記魚類養殖部112は、魚類養殖水槽1と、この魚類養殖水槽1の最下部に連なる底部汚泥ピット110と、底部排水配管102と、魚類養殖水槽1の上部に一端が連なるオーバーフロー配管52とを有する。
【0087】
上記魚類養殖水槽1内では、養殖対象魚としての魚類100が養殖されている。この魚類100としては、海水魚、淡水魚、またそれらの数多くの稚魚などがあげられる。特に、稚魚のようにウイルス性感染症に弱い時期の魚類に対しては、魚類養殖装置117は、養殖水に除菌機能を有しているので、歩留まりの向上に大きく貢献できる。
【0088】
上記魚類100に餌を与えて養殖するため、残餌や魚類からの糞が、底部汚泥ピット110に沈殿して、底部排水配管102とオーバーフロー配管52を経由してピット57に流入する。一方、上記魚類養殖水槽1の水面に浮いた浮遊物質等もオーバーフロー配管52を経由してピット57に流入する。
【0089】
上記ピット57には移送ポンプ58が設置され、ピット57に流入した被処理水つまり養殖水は、移送ポンプ58によって、水配管59を介して急速ろ過塔60に導入された後、水配管59を介して緩速ろ過槽67に導入される。
【0090】
上記急速ろ過塔60内には急速ろ過ろ材層61が充填されている。この急速ろ過ろ材層61は、ろ過砂106と、ろ過砂106下に位置する中和ろ材107とから構成されている。これにより、ろ過砂106による養殖水中の浮遊物資の除去と、中和ろ材107による養殖水の中和とを実施することができる。
【0091】
上記緩速ろ過槽67内には緩速ろ過ろ材層68が充填されている。この緩速ろ過ろ材層68はバクテリアろ材108および中和ろ材109から成る。バクテリアろ材108は中和ろ材109上に充填されている。
【0092】
すなわち、上記緩速ろ過槽67は、養殖水中の有害なアンモニア性窒素を酸化して硝酸性窒素に無害化するためのバクテリアろ材108と、養殖水を中和するための中和ろ材109とを有している。
【0093】
従来の急速ろ過塔はろ過砂のみしか有しておらず、従来の緩速ろ過槽はバクテリアろ材しか有しておらず、従来の急速ろ過塔および緩速ろ過槽内には中和ろ材が充填されていなかたった。
【0094】
このような従来の急速ろ過塔および緩速ろ過槽を使用した場合、養殖水を循環使用し続けると、養殖水中のアンモニア性窒素が酸化されて、硝酸性窒素が増加するため、養殖水中のpHが低下して魚類の成長が悪化したり、また魚類が多量死滅することがある。
【0095】
そのため、上記養殖水中のpHを維持するために、折角、図示しない温調設備で温調した養殖水を排水し、新鮮な温調が必要な飼育水を導入する結果、多量のエネルギーの浪費することになる。また、上記養殖水を排水するので、水自体も浪費することになる。
【0096】
本第1実施形態では、急速ろ過塔60内に中和ろ材107を配置すると共に、緩速ろ過槽67内に中和ろ材109を配置し、中和ろ材107および中和ろ材109を効率的にナノバブルで洗浄して中和反応を促進するようにしている。
【0097】
上記魚類養殖装置117内を循環している養殖水を魚類養殖部112と水処理装置87との間で循環させることにより、ナノバブルを含有する養殖水が中和ろ材107および中和ろ材109に接触する結果、養殖水の中和を効果的行うことができ、魚類を経済的に養殖できる。
【0098】
また、上記急速ろ過塔60は、ナノバブルを含有する養殖水中の浮遊物質をろ過砂106で除去できる。
【0099】
また、上記緩速ろ過槽67は、ナノバブルを含有する養殖水中のアンモニア性窒素をバクテリアろ材108で酸化処理できる。
【0100】
したがって、上記ピット57を出た養殖水は、第1に、ろ過砂106による浮遊物質の除去、第2に、中和ろ材107による中和、第3に、バクテリアろ材108アンモニア性窒素の酸化、第4に、中和ろ材109による中和が行われる。
【0101】
その結果、上記養殖水を多量排水等による浪費すること無く、魚類を養殖することができる。
【0102】
すなわち、中和とろ過の両方が可能な急速ろ過塔60と緩速ろ過槽67を提供することができる。
【0103】
特に、上記養殖水にナノバブルを含有しているので、中和ろ材107と中和ろ材109のろ材表面が効率的に洗浄されて微調整の中和が円滑に実施されることになる。
【0104】
本第1実施形態では養殖水に対して第1,第2の中和が行われる。この第1の中和が急速ろ過塔60に充填された中和ろ材107での中和である。一方、上記第2の中和は、第1の中和の後に行われる中和であって、緩速ろ過槽67に充填された中和ろ材109での微調整の中和である。
【0105】
上記急速ろ過塔60のろ過速度と緩速ろ過槽67のろ過速度とを比較すると、緩速ろ過槽67のろ過速度よりも、急速ろ過塔60のろ過速度が速く大きい。このため、急速ろ過塔60ではいわゆる荒中和(荒い中和)が行われる一方、緩速ろ過槽67では、微調整の中和が行われる。
【0106】
尚、上記急速ろ過塔60のろ過砂106は、養殖水中の浮遊物質を除去することが目的である。また、緩速ろ過槽67のバクテリアろ材108は、バクテリアによる養殖水中のアンモニア性窒素の酸化が目的である。
【0107】
上記養殖水中には魚類から排泄されるアンモニア性窒素があり、このアンモニア性窒素は毒性があって魚類には有害である。そこで、上記アンモニア性窒素をバクテリアろ材108に繁殖した微生物で酸化して、硝酸性窒素として無害化し、かつ硝酸性窒素が増加すると養殖水中のpHが低下するので、中和ろ材109で中和する。
【0108】
上記養殖水中のナノバブルは、バクテリアろ材108に繁殖した微生物を活性化するし、また、中和ろ材107と中和ろ材109の表面を効率よく洗浄して、養殖水の中和を促進する。
【0109】
また、上記養殖水中のナノバブルは、急速ろ過塔60のろ過砂106が、浮遊物質により、閉塞することを防止する。
【0110】
上記緩速ろ過槽67内には、緩速ろ過槽67を逆洗水で逆洗するための逆洗水吐出配管69が配置されている。
【0111】
上記逆洗水吐出配管69からは、逆洗水が吐出して、緩速ろ過槽67のバクテリアろ材108や中和ろ材109に堆積した浮遊物質などろ材を閉塞させる物質を逆洗浄により、効率的に洗浄する。
【0112】
次に、上記緩速ろ過槽67の養殖水を移送ポンプ71で吸い込み配管70から吸い込み、水配管70を経由して、第1槽5に移送する。尚、第1槽5は第1水槽の一例である。
【0113】
次に、上記第1ナノバブル製造部85について詳細に説明する。そして、その後に、第2ナノバブル製造部86について詳細に説明する。
【0114】
上記第1ナノバブル製造部85は、大きくは、第1槽5、第2槽11、第3槽20、第4槽48、第5槽29、界面活性剤タンク32、無機塩類タンク37、各種ポンプおよび配管等から構成されている。尚、第2槽11は第2水槽の一例であり、第3槽20は第3水槽の一例であり、第4槽48は第4水槽の一例である。
【0115】
上記第1槽5には、必要に応じて、界面活性剤タンク32から界面活性剤が第1定量ポンプ33により、薬品配管43を経由して添加される。また、第1槽5には、必要に応じて、無機塩類タンク37から無機塩類が第4定量ポンプ38により、薬品配管42を経由して添加される。上記界面活性剤および無機塩類の添加量は、第1槽5でのマイクロバブルの発生量で決定される。そして、マイクロバブル発生量としてのマイクロバブルの個数は、例えば、ベックマン・コールター株式会社のコールターカウンターで測定することができる。
【0116】
また、上記水処理装置87における全体の水処理システムにおいては、酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62により、酸化還元電位測定値と相関関係にあるナノバブル発生量が、界面活性剤および無機塩類の添加量で制御されることになる。尚、酸化還元電位検出部30は電位検出装置の一例である。
【0117】
すなわち、上記界面活性剤および無機塩類の添加量は、ナノバブル発生量と相関関係にあり、酸化還元電位測定値で制御されている。
【0118】
また、上記界面活性剤や無機塩類の添加量について、システムの観点からより詳細に記載すると、後述する第5槽29に設置されている酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62の信号をシーケンサ31で受けて、その信号により連携して、第1定量ポンプ33や第4定量ポンプ38の吐出量が調整され、第5槽29における設定の酸化還元電位が維持される。尚、第5槽29は測定槽の一例である。また、酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62で酸化還元電位計を構成する。尚、シーケンサ31は調節装置の一例である。
【0119】
マイクロバブル、マイクロナノバブルおよびナノバブルのいずれか一つが多量に存在すると、酸化還元電位の値がプラスのミリボルトを示す。
【0120】
本第1実施形態では、第5槽29の酸化還元電位の値が20ミリボルト(mv)以上となるように、界面活性剤および無機塩類の添加量が調整される。例えば、上記第1槽5の酸化還元電位の値が5mv以上となるようにし、第2槽11の酸化還元電位の値が10mv以上となるようにし、第3槽20の酸化還元電位の値が20mv以上となるようにしてもよい。
【0121】
上記第5槽29での酸化還元電位の決定値は、養殖水の水質、成分によって決定することができる。
【0122】
上記マイクロバブルの発生量は界面活性剤や無機塩類が有る無しでは相当異なり、界面活性剤および無機塩類が有ると、マイクロバブルの発生量が極端に増大する。
【0123】
上記界面活性剤としては、原水の水質やバブル発生量の実験を行って、これらの実験データにより、市販品の例えばカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の中から適当なものを選定すればよい。
【0124】
また、上記無機塩類としては、例えばカルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等の中から、原水の水質やバブル発生量の実験データに基づいて適当なものを選定すれば良い。
【0125】
尚、上記界面活性剤タンク32には、内部を撹拌する目的で、第1撹拌機36が取り付けられ、また、界面活性剤タンク32と同様に、無機塩類タンク37にも、内部を攪拌する目的で、第2撹拌機41が取り付けられている。
【0126】
そして、上記第1槽5の内部には、マイクロバブル発生装置81の一部となる水中ポンプ型マイクロバブル発生機6が設置されている。また、第1槽5の外部には、水中ポンプ型マイクロバブル発生機6に気体配管8を介して接続された小型ブロワー7が設置されている。尚、マイクロバブル発生装置81は第1のマイクロバブル発生装置の一例である。
【0127】
上記マイクロバブル発生装置81は、水中ポンプ型マイクロバブル発生機6、小型ブロワー7および気体配管8から構成されている。水中ポンプ型マイクロバブル発生機6には、小型ブロワー7から吐出する気体としての空気が、気体配管8を経由して供給され、バブル水流9が発生する。また、水中ポンプ型マイクロバブル発生機6は、一般的な水中ポンプと同様、インペラ部分が高速回転し、そこに小型ブロワー7から供給された空気が、インペラが高速回転することによって、小型ブロワー7からの空気がせん断されてマイクロバブルを発生する。
【0128】
上記構成の水中ポンプ型マイクロバブル発生機6の特徴は、液中に360度方向すなわち水中ポンプ型マイクロバブル発生機6の全周囲方向にマイクロバブルを噴射することができる。
【0129】
上記水中ポンプ型マイクロバブル発生機6に供給する小型ブロワー7からの空気量は、2〜5リットル/分である。
【0130】
上記界面活性剤および無機塩類を第1槽5内の被処理水つまり養殖水に添加すると、添加量により異なるが、被処理水が牛乳のように白濁する。
【0131】
上記第1槽5の水面近くの養殖水は、第1槽5の上部と第2槽11の上部との間に設置されたオーバーフロー配管10を経て第2槽11に流入する。尚、オーバーフロー配管10は第1のオーバーフロー管の一例である。
【0132】
また、上記第1槽5の下部から流出した養殖水は、浮遊物質を含まない状態で、第2槽11内に流入して、マイクロナノバブル発生装置82に導入されて、マイクロナノバブルが生成される。尚、マイクロナノバブル発生装置82は第2のマイクロバブル発生装置の一例である。
【0133】
上記オーバーフロー配管10を経て第2槽11に流入する養殖水は、スカム(浮上した汚泥)を含んでいる。このスカムは、第1槽5において養殖水中の微量の浮遊物質が浮上して成るものである。第1槽5に流入する養殖水は、処理部84でろ過された養殖水であるが、第1槽5でマイクロバブルを吐出されることにより、溶解している成分に起因する浮遊物質が発生する。この発生した浮遊物質すなわちスカムは、マイクロナノバブル発生装置82、ナノバブル発生装置83および多量ナノバブル発生装置116にとって、バブル発生性能の観点から好ましくないので、取り除く必要がある。尚、多量ナノバブル発生装置116は第4のマイクロバブル発生装置の一例である。
【0134】
また、上記第1槽5の下部は、マイクロバブル配管50を介して第2槽11の下部に接続されている。これにより、遊物質を含まない養殖水がマイクロバブル配管50を経由して第2槽11に流入する。尚、マイクロバブル配管50は第1の連通管の一例である。
【0135】
上記第2槽11にはマイクロナノバブル発生装置82が設置されている。この第2槽11においてマイクロナノバブルを多量に発生させるには、浮遊物質を含まない養殖水がマイクロナノバブル発生装置82の吸い込み配管14に流入した方が良い。もし、上記スカムを含む養殖水がマイクロナノバブル発生装置82の吸い込み配管14に流入したなら、マイクロナノバブル発生器13の閉塞を起こし、マイクロナノバブル発生器13の性能が劣化する。
【0136】
上記マイクロナノバブル発生装置82は第2槽11内にバブル水流12を起こす。このマイクロナノバブル発生装置82は、循環ポンプ15、部品としてのマイクロナノバブル発生器13、吸い込み配管14、空気配管16、空気ニードルバルブ17および水配管18から構成されている。
【0137】
上記マイクロナノバブル発生器13はマイクロバブルを発生するノズルであるが、マイクロバブルを含む水の供給を受けると、マイクロナノバブルを発生することができる。
【0138】
上記第2槽11には、必要に応じて、界面活性剤タンク32から界面活性剤が第2定量ポンプ34により、薬品配管44を経由して添加されたり、無機塩類タンク37から無機塩類が第5定量ポンプ39により、薬品配管46を経由して添加されたりする。
【0139】
上記界面活性剤や無機塩類の添加量は、水処理装置における全体的な観点から記載すると、後述する第5槽29に設置されている酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62の信号をシーケンサ31で受けて、第2定量ポンプ34や第5定量ポンプ39の吐出量が調整される。
【0140】
上記界面活性剤および無機塩類は、マイクロナノバブル発生装置82が発生するマイクロナノバブルの発生量を飛躍的に増大させる添加剤である。マイクロナノバブルの発生量は界面活性剤や無機塩類が有る無しでは相当異なり、界面活性剤および無機塩類が有ると、マイクロナノバブルの発生量が極端に増大する。
【0141】
上記第2槽11からオーバーフローで流出した養殖水は、オーバーフロー配管19を第3槽20に流入する。尚、オーバーフロー配管19は第2のオーバーフロー管の一例である。
【0142】
上記オーバーフロー配管19は、第2槽11の上部と第2槽11の上部との間に設置されており、第2槽11の水面近くの養殖水が流入する。
【0143】
また、上記第2槽11の下部と第2槽11の下部との間にはマイクロナノバブル配管51が設置されている。これにより、第2槽11の下部内の養殖水がマイクロナノバブル配管51を経由して第3槽20に流入する。尚、マイクロナノバブル配管51は第2の連通管の一例である。
【0144】
上記第3槽20は、ナノバブル発生するナノバブル発生槽であって、ナノバブル発生装置83が設置されている。尚、ナノバブル発生装置83は第3のマイクロバブル発生装置の一例である。
【0145】
上記ナノバブル発生装置83は、循環ポンプ24、部品としてのナノバブル発生器22、吸い込み配管23、空気配管25、空気ニードルバルブ26および水配管27より構成され、バブル水流21を発生する。
【0146】
上記ナノバブル発生器22は、マイクロバブルを発生するノズルであるが、マイクロナノバブルを含む水の供給を受けると、ナノバブルを発生することができる。
【0147】
上記第3槽20には、必要に応じて、界面活性剤タンク32から界面活性剤が第3定量ポンプ35により、薬品配管45を経由して添加されたり、無機塩類タンク37から無機塩類が第6定量ポンプ40により、薬品配管47を経由して添加されたりする。
【0148】
上記界面活性剤や無機塩類の添加量は、装置の観点から記載すると、後述する第5槽29に設置されている酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62の信号をシーケンサ31で受けて、第3定量ポンプ35や第6定量ポンプ40の吐出量で調整される。
【0149】
上記界面活性剤と無機塩類の作用は、ナノバブル発生装置83が発生するナノバブルの発生量を飛躍的に増大させる添加剤である。
【0150】
上記ナノバブルの発生量は界面活性剤や無機塩類が有る無しでは相当異なり、界面活性剤および無機塩類が有ると、ナノバブルの極端に発生量が極端に増大する。
【0151】
上記第3槽20からオーバーフローした養殖水は、第4槽48にオーバーフロー配管28を経由して流入する。
【0152】
上記オーバーフロー配管28は、第3槽20の上部と第4槽48の上部との間に設置されており、第3槽20の水面近くの養殖水が流入する。
【0153】
上記第4槽48は浮遊物質分離槽である。より詳しくは、第1槽5におけるマイクロバブル、第2槽11におけるマイクロナノバブル、第3槽20におけるナノバブルが養殖水中の浮遊物質に付着することによって、第1槽5から第3槽20までの3つの槽内で浮遊物質が浮上する。そして、上記養殖水が第4槽48に流入した時点で、浮遊物質が第4槽48の水面49の部分に集積し、高濃度浮遊物質排水配管53から系外に排出される。一方、第4槽48において、浮遊物質と分離された養殖水は、下部連通配管54を通過して第5槽29に流入する。
【0154】
上記第5槽29には流入した養殖水中の酸化還元電位を測定するための酸化還元電位検出部30が設置されている。この酸化還元電位検出部30は、ナノバブルの有する酸化力を測定するための検出部であり、ナノバブル量と酸化還元電位は相関関係がある。
【0155】
そこで、上記第5槽29において、設定した酸化還元電位が確保できるよう、酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62を、第1定量ポンプ33、第2定量ポンプ34、第3定量ポンプ35、第4定量ポンプ38、第5定量ポンプ39および第6定量ポンプ40と信号線55により連結し、これらのポンプをシーケンサ31により連携運転する。
【0156】
上記養殖水の酸化還元電位は設定量確保されるが、養殖水には魚類養殖における疾病対策としてさらに多量のナノバブルが必要となる。
【0157】
特に、陸上養殖の場合、多量の養殖魚を飼育し、多量の餌を与えるため、残餌や魚類からの排泄物が魚類養殖水槽1の内部に滞留することにより、残餌や魚類からの排泄物に起因するウイルス性疾患が発生しやすくなる。
【0158】
上記ウイルス性疾患は、コイヘルペスに代表される感染力の強い疾患であるが、養殖場において、残餌や魚類からの排泄物に起因するウイルス性疾患が発生した場合、養殖魚の全数が死滅する場合が過去多く発生している。このため、養殖場において、絶対ウイルス性疾患が発生しない魚類養殖装置117が必要となる。
【0159】
上記第1ナノバブル製造部85は、主として養殖水に各種バブルを吐出させて、養殖水中の成分に起因して発生する浮遊物質を除去するための設備である。最終的には、ナノバブル量は少ないが、第5槽29においてナノバブルを含有する養殖水が得られる。
【0160】
上記ナノバブルは一端形成されると、長時間持続することが判明している。このため、第5槽29内の養殖水は、第2ナノバブル製造部86に導入されても、ナノバブル量が変化せず維持される。
【0161】
上記第2ナノバブル製造部86は、第1ナノバブル製造部85で製造したナノバブル含有水をさらに、多量ナノバブル発生装置116に導入して、多量ナノバブルを含有する養殖水を製造する設備である。
【0162】
上記第1ナノバブル製造部85で製造したナノバブル含有水すなわち養殖水には、界面活性剤や無機塩類が含有されているので、第2ナノバブル製造部86においては、渦流ポンプ74とラインミキサ78の組み合わせでナノバブルを多量に製造可能である。
【0163】
上記第2ナノバブル製造部86は、多量のナノバブル含有養殖水を製造するための設備であり、渦流ポンプ74およびラインミキサ78を有する。
【0164】
上記渦流ポンプ74の動力や吐出量は、水中ポンプ型マイクロバブル発生機6、循環ポンプ15、および循環ポンプ24の動力や吐出量と比較した場合、3倍以上となる。このため、多量ナノバブル発生装置116によって、多量のナノバブルを含有する養殖水を製造し、多量のナノバブルが有するフリーラジカルによって殺菌性を有する養殖水を製造することができる。
【0165】
また、上記渦流ポンプ74は、第5槽29からの養殖水を吸い込み配管73で吸い込むと共に、空気を空気配管75から、空気量をニードルバルブ76で調整して吸い込む。そして、渦流ポンプ74内で圧力をかけて養殖水に空気を混合した後、養殖水を、気液混合配管77を経由してラインミキサ78に導入する。
【0166】
上記ラインミキサ78は酸素溶解効率を10%程度維持可能なミキサである。そして、ラインミキサ78の下部にはラセン状流路79が設けられ、ラインミキサ78の上部にはカレントカッタ80が設けられている。ラセン状流路78では養殖水と空気との旋回流が発生する。また、ラセン状流路78には、渦流ポンプ74が吐出する空気の1.3倍量の被処理水としての養殖水が引き込まれる。そして、ラセン状流路78にて混合した養殖水と空気とをカレントカッタ80で微細にせん断して多量のナノバブルを発生させる。尚、カレントカッタ80は別名「きのこ状カッタ」と言う。
【0167】
一方、前に戻って記載することになるが、第5槽29での酸化還元電位検出部30による酸化還元電位に関する測定値を、酸化還元電位調節計62で受けて調節して、シーケンサ31に信号を送って、第1定量ポンプ33、第2定量ポンプ34、第3定量ポンプ35、第4定量ポンプ38、第5定量ポンプ39および第6定量ポンプ40のそれぞれの吐出量を制御している。
【0168】
すなわち、上記酸化還元電位検出部30、酸化還元電位調節計62、およびシーケンサ31による第1定量ポンプ33、第2定量ポンプ34、第3定量ポンプ35、第4定量ポンプ38、第5定量ポンプ39および第6定量ポンプ40の吐出流量の調整制御である。
【0169】
本第1実施形態では、第5槽29内の養殖水の酸化還元電位が+20mv〜+40mvの範囲となるように、水処理装置87を運転した。
【0170】
一般的なことであるが、排水処理の脱窒槽(すなわち還元槽)では、酸化槽に対して還元槽であるため、脱窒槽内の被処理水の酸化還元電位はマイナスミリボルトで−50mv〜−400mvの範囲であることが多い。
【0171】
尚、上記酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62のメーカーとしては、特に限定しないが、本第1実施形態では東亜DKK株式会社の製品を採用した。
【0172】
ここで、整理のため、第1ナノバブル製造部85における第1槽5、第2槽11、第3槽20、第4槽48および第5槽29での役割を纏めると以下の内容である。
【0173】
1)第1槽5(マイクロバブル発生槽)
上記第1槽5は、マイクロバブル発生装置81を用いると共に、界面活性剤および無機塩類の添加によって、マイクロバブルを多量発生させるための槽である。
【0174】
2)第2槽11(マイクロナノバブル発生槽)
上記第2槽11は、マイクロナノバブル発生装置82を用いると共に、界面活性剤および無機塩類の添加によって、マイクロナノバブルを多量発生させるための槽である。
【0175】
備考
上記マイクロナノバブル発生装置82は、正確に表現すると、マイクロバブル発生装置である。マイクロバブル配管50より、第1槽5で生成されたマイクロバブル含有被処理水が第2槽11内に流入するので、マイクロナノバブル発生装置(マイクロバブル発生装置)82がマイクロバブル含有被処理水をせん断することになる。その結果、第2槽11内において、マイクロバブルとナノバブルとの混合物(マイクロナノバブル)が発生する。
【0176】
そして、上記界面活性剤および無機塩類の添加によって、マイクロバブルとナノバブルとの混合物すなわちマイクロナノバブルが多量に発生する。
【0177】
3)第3槽20(ナノバブル発生槽)
上記第3槽20は、ナノバブル発生装置83を用いると共に、界面活性剤および無機塩類の添加によって、ナノバブルをある程度発生させるための槽である。
【0178】
備考
上記ナノバブル発生装置83は、正確に表現すると、マイクロバブル発生装置である。マイクロナノバブル配管51より、第2槽11で生成されたマイクロナノバブル含有被処理水が第3槽20に流入するので、ナノバブル発生装置(マイクロバブル発生装置)83がその被処理水をせん断することになる。その結果、マイクロバブルとナノバブルとの混合物が発生する。この混合物の大部分はナノバブルが占めることになる。
【0179】
そして、上記界面活性剤および無機塩類の添加によって、マイクロバブルとナノバブルとの混合物すなわちナノバブル等が多量に発生する。
【0180】
但し、量的には、ナノバブル発生装置83よりも多量ナノバブル発生装置116の方が、圧倒的に多いナノバブルを生成する。
【0181】
また、上記ナノバブル発生装置83が有する循環ポンプ24の動力および吐出量と、多量ナノバブル発生装置116が有する渦流ポンプ74の動力および吐出量とを比較しても、渦流ポンプ74の動力および吐出量の方が圧倒的に大きい。
【0182】
4)第4槽48(浮遊物質分離槽)
上記第1槽5、第2槽11および第3槽20において、各種バブルが付着することによって浮遊物質が浮上する。この浮遊物質の集合体が、第4槽48で、被処理水と物理的に分離され、高濃度浮遊物質排水配管53により、水処理装置87外に排出される。
【0183】
5)第5槽29(測定槽)
上記第5槽29は、第1槽5から第3槽20までで発生し、第4槽48を経由したナノバブルの量を、ナノバブルが有する酸化還元電位で測定するための槽である。
【0184】
上記第5槽29のナノバブルの量が不足している場合、すなわち、酸化還元電位検出部30によって検出された酸化還元電位が設定値よりも低い場合は、シーケンサ31の信号により、界面活性剤および無機塩類を養殖水に添加して、その酸化還元電位が設定値となるよう、ナノバブルの量を増加させることができる。
【0185】
尚、上記界面活性剤と無機塩類とを合わせた添加量、または、界面活性剤もしくは無機塩類の単独の添加量は、被処理水によって異なる。
【0186】
また、上記界面活性剤および無機塩類のそれぞれの被処理水への添加量は、あらかじめの実験により確認できる内容である。
【0187】
以下、上記マイクロバブル発生装置81、マイクロナノバブル発生装置82およびナノバブル発生装置83についてより詳細に説明する。
【0188】
上記マイクロバブル発生装置81、マイクロナノバブル発生装置82およびナノバブル発生装置83は、正確には、装置としての性能は単独で使用した場合は、全てマイクロバブル発生装置である。
【0189】
上記マイクロバブル発生装置81は、マイクロナノバブル発生装置82およびナノバブル発生装置83と比較して、使用空気量が2〜5リットル/分で多く、発生させるバブルのサイズも大きい。
【0190】
尚、上記マイクロナノバブル発生装置82およびナノバブル発生装置82の使用空気量は、1リットル/分である。
【0191】
最終的に、ナノバブル含有被処理水を製造することが目的である。このため、第1槽5内においてマイクロバブル発生装置81が発生させるバブルのサイズが大きくても、第3槽20内においてナノバブルが得られればよい。すなわち、被処理水が第1槽5、第2槽11および第3槽20の3つの槽を通過することによって、ナノバブルを含有することになればよい。
【0192】
そして、上記第1槽5、第2槽11および第3槽20において、バブル含有被処理水をポンプおよび発生器へ導入することによって、マイクロバブル、マイクロナノバブルおよびナノバブルが生成されることになる。
【0193】
上記マイクロバブル発生装置81は、水中ポンプ型マイクロバブル発生機6、小型ブロワー7および気体配管8から構成されている。解りやすく言えば、水中ポンプにおけるインプラを高速回転させて、インプラに空気を小型ブロワーから供給し、その空気をせん断してマイクロバブルを発生させている。
【0194】
また、上記マイクロナノバブル発生装置82は、ナノバブル発生装置83と全く同じ構造構成である。
【0195】
但し、上記マイクロナノバブル発生装置82は、マイクロバブル含有被処理水を吸い込み、ナノバブル発生装置83はマイクロナノバブル含有被処理水を吸い込んでいる点が異なる。
【0196】
上記マイクロナノバブル発生装置82は、マイクロナノバブル発生器13、吸い込み配管14、循環ポンプ15、空気配管16、空気ニードルバルブ17および水配管18から構成されている。
【0197】
また、上記ナノバブル発生装置83は、ナノバブル発生器22、吸い込み配管23、循環ポンプ24、空気配管25、空気ニードルバルブ26および水配管27から構成されている。
【0198】
上記マイクロナノバブル発生器13やナノバブル発生器22では、流体力学的に圧力を制御し、負圧形成部分から空気を吸入し、高速流体運動させて、負圧部を形成し、バブルを発生させる。より解かりやすく簡単に説明すると、水と空気とを効果的に自給混合溶解し、圧送することにより、マイクロナノバブルやナノバブルを発生させる。
【0199】
上記マイクロナノバブル発生装置82とナノバブル発生装置83に使用している循環ポンプ15,24は共に揚程15m以上(すなわち、1.5kg/cmの高圧)の高揚程のポンプである。
【0200】
すなわち、上記循環ポンプ15,24としては、高揚程のポンプであり、かつ、トルクが安定している2ポールのポンプを選定することが望ましいが、その選定は絶対的な条件ではない。
【0201】
また、上記循環ポンプ15,24の圧力は制御するのが望ましい。この循環ポンプ15,24の回転数をインバータ等の回転数制御器で制御して、循環ポンプ15,24の圧力を目的の圧力とすることも可能である。
【0202】
上記循環ポンプ15,24の圧力を目的にあった圧力とすれば、サイズが纏まったバブルを製造することができる。
【0203】
ここで、上記循環ポンプ15,24によるバブル発生のメカニズムについて説明する。
【0204】
上記マイクロナノバブル発生器13およびナノバブル発生器22において、液体および気体の混相旋回流を発生させ、発生器中心部に気体空洞部を形成する。次に、上記気体空洞部を圧力で竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。この気体空洞部に空気(空気の換わりに、オゾン、炭酸ガス、窒素ガスおよび酸素ガスのうちの少なくとも一つを選定してもよい)をマイナス圧(負圧)を利用して自動的に供給する。さらに、上記空気を切断・粉砕しながら、混相流を回転させる。この切断・粉砕は、装置出口付近における内外の気液二相流体の旋回速度差により起きる。また、上記混相流の回転速度は500〜600回転/秒である。
【0205】
すなわち、上記マイクロナノバブル発生器13およびナノバブル発生器22において、流体力学的に圧力を制御することで、負圧形成部分から気体を吸入し、高揚程ポンプで高速流体運動させて、負圧部を形成し、マイクロナノバブルやナノバブルを発生させる。より解かりやすく簡単に説明すると、高揚程ポンプで水と空気とを効果的に自給混合溶解し、圧送することにより、マイクロナノバブルやナノバブルを製造することができるのである。
【0206】
以上が、上記マイクロナノバブル発生装置82およびナノバブル発生装置83のバブル発生のメカニズムである。
【0207】
以下、上記界面活性剤や無機塩類の作用について説明する。
【0208】
1)界面活性剤
例えば、界面活性剤を含む洗剤の水溶液は、良く泡立つ。この現象は、空気と水との間の界面張力(表面張力とも言います。)が低下するためである。このため、上記界面張力が低下して泡立ち、その結果として、界面活性剤を添加するとナノバブルまたはマイクロバブルを多量に発生させることができる。
【0209】
すなわち、水が空気と接触すると2相界面の面積をできるだけ小さくする力である界面張力が働くことになる。この界面張力を低下させる作用を界面活性と称し、少量で著しい効果を持つ物質を界面活性剤と言っている。
【0210】
2)無機塩類
例えば、淡水の滝での発泡よりも、海岸における発泡の方が良く観察できる。特に、冬の日本海の海岸での発泡は有名である。すなわち、無機塩類を多く含む海水の方が、発泡は良く発生する。
【0211】
よって、結果として無機塩類を添加すると液の性質が電解質となり、泡の発生について好条件となり、ナノバブルまたはマイクロバブルを多量に発生させることがでる。
【0212】
尚、本第1実施形態では、上記マイクロバブル発生装置81として、野村電子工業株式会社のマイクロバブラーMB−400を採用した。また、上記ナマイクロナノバブル発生器13およびナノバブル発生器22として、株式会社ナノプラネット研究所の製品であるマイクロバブル発生器M2型を採用した。
【0213】
ここで、3種類のバブルについて説明する。
【0214】
通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0215】
マイクロバブルは、直径が50ミクロン(μm)以下の微細気泡で、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。
【0216】
ナノバブルは、マイクロバブルよりさらに小さいバブル、具体的には直径が1ミクロン以下の100〜200nmのバブルで、いつまでも水の中に存在することが可能なバブルといわれている。
【0217】
マイクロナノバブルは、マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと説明できる。
【0218】
以下、上記魚類養殖装置117を構成する魚類養殖部112、処理部84、第1ナノバブル製造部85および第2ナノバブル製造部86に関係する処理水配管98、急速ろ過塔逆洗配管63、緩速ろ過槽逆洗配管66について説明する。
【0219】
最終的に、第2ナノバブル製造部86で製造された多量のナノバブルを含有する養殖水は、多量のナノバブルを含有しているので、殺菌性を有している。そして、多量ナノバブル発生装置116から吐出して、処理水配管98を経て、電動弁90が開であると、魚類養殖水槽1に導入され、多量の養殖魚が、残餌や魚類排泄物が存在しても疾患を発生させないで、養殖可能となる。
【0220】
上記養殖水に多量のナノバブルが含有されていると、残餌や魚類排泄物が存在しても魚類100に疾病が発生しないという現象と、魚類100の血流量が増加して成長が早まる現象が起きる。この魚類100の成長が早まる現象は、養殖対象の貝類でも起きる現象である。
【0221】
また、上記電動弁90が開いている時は、電動弁64および電動弁65は閉じられている。
【0222】
上記残餌や魚類排泄物は、時間の経過に伴って、魚類養殖水槽1からオーバーフロー配管52や、底部汚泥ピット110から底部排水配管102を経て、ピット57に移動し、移送ポンプ58にて水配管59を経て急速ろ過塔60のろ過砂106の表面に堆積される。
【0223】
そして、上記電動弁64が1日数回開くので、逆洗水が急速ろ過塔逆洗配管63を経由して、急速ろ過塔60下部より導入される。これにより、ろ過砂106の表面に堆積された残餌や魚類排泄物は、逆洗配管56を経由して逆洗排水に含有されて、急速ろ過塔60から系外に排水される。その結果、魚類養殖水槽1で発生する残餌や魚類排泄物は、時間の経過に伴い、系外に排水される。
【0224】
また、上記電動弁64が開いている時は、電動弁90および電動弁65は閉じられている。
【0225】
また、上記電動弁65も1日数回開くので、逆洗水が緩速ろ過槽逆洗配管66を経由して、緩速ろ過槽67の下部より導入される。これにより、養殖水の成分から発生し、緩速ろ過槽67のバクテリアろ材108の表面に堆積した浮遊物は、逆洗配管117を経由して逆洗排水に含有されて、緩速ろ過槽67から系外に排水される。その結果、魚類養殖装置117での水質が維持される。
【0226】
また、上記電動弁65が開いている時は、電動弁90および電動弁64が閉じられている。
【0227】
本第1実施形態の魚類養殖装置117によれば、ろ過砂106および中和ろ材107が充填された急速ろ過塔には、ナノバブルを含有する養殖水が供給されるので、急速ろ過塔60においてろ過砂106および中和ろ材107が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0228】
また、上記養殖水は、バクテリアろ材108および中和ろ材109が充填された緩速ろ過槽67にも供給されるので、緩速ろ過槽67においてバクテリアろ材108および中和ろ材109が閉塞するのをナノバブルの洗浄力で防止できる。
【0229】
また、上記ナノバブルの洗浄力および酸化力によって、急速ろ過塔60および緩速ろ過槽67の中和ろ材107,109の表面が洗浄酸化されるので、急速ろ過塔60および緩速ろ過槽67の中和ろ材107,109からカルシウム等の鉱物を溶出させて水の中和を合理的に実施することができる。
【0230】
また、上記緩速ろ過槽67のバクテリアろ材108中に繁殖した微小のニトロソモナスやニトロバクター等のバクテリアをナノバブルで活性化して、水中のアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素を酸化処理できる。
【0231】
したがって、上記急速ろ過塔60および緩速ろ過槽67で養殖水を処理することによって、養殖水中のpHの低下を防ぐことができるので、養殖水の再利用が可能となり、水およびエネルギの浪費を防ぐことができる。
【0232】
また、上記マイクロバブル発生装置81、マイクロナノバブル発生装置82、ナノバブル発生装置83および多量ナノバブル発生装置116は、正確には、装置としての性能は単独で使用した場合は、全てマイクロバブル発生装置であり、ナノバブル発生装置に比べて安価であるので、多量のナノバブルを安価に生成することができる。
【0233】
仮に、上記ナノバブル発生装置で多量のナノバブルを生成しようとすると、高価なナノバブル発生装置が複数必要となって、多量のナノバブルを安価に生成することができない。
【0234】
また、上記多量ナノバブル発生装置116が渦流ポンプ74を有するので、サイズが小さいナノバブルを多量に生成することできる。
【0235】
また、上記渦流ポンプ74の吐出側には、ラセン状流路78およびカレントカッタ80を含むラインミキサ78が設置されているので、サイズがより小さいナノバブルつまり微小なバブルを多量に生成することできる。
【0236】
また、上記魚類養殖水槽1から出た養殖水が、急速ろ過塔60、緩速ろ過槽67、マイクロバブル発生装置81、マイクロナノバブル発生装置82、ナノバブル発生装置83および多量ナノバブル発生装置116を通過して再び魚類養殖水槽1に戻ることによって、養殖水の水質を常に良好に維持することができるので、魚類養殖水槽1中の魚類は疾病にかかり難い。
【0237】
その結果、上記魚類養殖水槽1で養殖する魚類の歩留まりが高くなり、魚類の養殖を効率的に行える。
【0238】
また、上記シーケンサ31は、酸化還元電位検出部30が検出した酸化還元電位に基づいて、マイクロバブル発生装置81のマイクロバブル発生量と、マイクロナノバブル発生装置82のマイクロナノバブル発生量と、ナノバブル発生装置83のナノバブル発生量との全てを界面活性剤および無機塩類で調節するので、酸化還元電位検出部30が検出する酸化還元電位を容易かつ確実に所望値にすることができる。
【0239】
また、上記酸化還元電位検出部30は、第5槽29に貯えられた養殖水の酸化還元電位を検出するので、養殖水の酸化還元電位を容易かつ正確に検出できる。
【0240】
また、上記オーバーフロー配管10によって、第1槽5の上部と第2槽11の上部とを互いに接続すると共に、オーバーフロー配管19によって、第2槽11の上部と第3槽20の上部とを互いに接続するので、第3槽20の水面で浮遊物質を濃縮することができる。
【0241】
また、上記マイクロバブル配管50によって、第1槽5の下部と第2槽11の下部とを互いに接続するので、浮遊物質を含まないマイクロバブル含有水を第1槽5から第2槽11へ送ることができる。
【0242】
また、上記マイクロナノバブル配管51によって、第2槽11の下部と第3槽20の下部とを互いに接続するので、浮遊物質を含まないマイクロナノバブル含有水を第2槽11から第3槽20へ送ることができる。
【0243】
また、上記第4槽48の水面49の部分に集積した浮遊物質を高濃度浮遊物質排水配管53から系外に排出するので、第5槽29内に貯まる養殖水の水質を向上させることができる。
【0244】
〔第2実施形態〕
図2は本発明の第2実施形態の魚類養殖装置217の模式図である。また、図2において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0245】
本第2実施形態の魚類養殖装置217は、上記第1実施形態の魚類養殖装置117と比較して、無機塩類タンク37、第4定量ポンプ38、第5定量ポンプ39、第6定量ポンプ40、第2撹拌機41および薬品配管42,46,47を備えていない点のみが異なっている。
【0246】
上記第1実施形態の魚類養殖装置117では、無機塩類タンク37、第4定量ポンプ38、第5定量ポンプ39、第6定量ポンプ40および第2撹拌機41が設置されていた。
【0247】
しかし、養殖する魚類が異なり、被処理水の一例としての養殖水の水質によっては、それらの設備は必要なく、バブル発生量を増加させるためには、界面活性剤のみでも充分な被処理水としての養殖水も存在する。
【0248】
目的は、上記第5槽29におけるナノバブルによる酸化還元電位の値であるから、目的とした酸化還元電位の測定値が低い場合、例えば、界面活性剤の添加のみで容易に第5槽29での酸化還元電位を満足できる場合など、あるいは、第1,第2ナノバブル製造部85,86でナノバブルが発生しやすく、また、第5槽29での酸化還元電位が容易に所定値まで確保できる養殖水となっている場合に適合する。
【0249】
〔第3実施形態〕
図3は本発明の第3実施形態の魚類養殖装置317の模式図である。また、図3において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0250】
本第3実施形態の魚類養殖装置317は、上記第1実施形態の魚類養殖装置117と比較して、界面活性剤タンク32、第1定量ポンプ33、第2定量ポンプ34、第3定量ポンプ35、第1撹拌機36および薬品配管43,44,45を備えていない点のみが異なっている。
【0251】
上記第1実施形態の魚類養殖装置117では、界面活性剤タンク32、第1定量ポンプ33、第2定量ポンプ34、第3定量ポンプ35および第1撹拌機36が設置されていた。
【0252】
しかし、被処理水の一例としての養殖水の水質によっては、それらの設備は必要なく、バブル発生量を増加させるためには、無機塩類のみでも充分な被処理水も存在する。
【0253】
目的は、上記第5槽29におけるナノバブルによる酸化還元電位の値であるから、目的とした酸化還元電位の測定値が低い場合、例えば、無機塩類の添加のみで容易に第5槽29での酸化還元電位の測定値を満足できる場合など、あるいは、第1,第2ナノバブル製造部85,86でナノバブルが発生しやすく、また、第5槽29での酸化還元電位が容易に所定値まで確保できる被処理水としての養殖水となっている場合に適合する。
【0254】
〔第4実施形態〕
図4は本発明の第4実施形態の魚類養殖装置417の模式図である。また、図4において、図3に示した第3実施形態の構成部と同一構成部は、図3における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0255】
本第4実施形態の魚類養殖装置417は、上記第3実施形態の魚類養殖装置317と比較して、酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62の代替として、ゼータ電位検出部88とゼータ電位調節計89を備えている点のみが異なる。尚、ゼータ電位検出部88は電位検出装置の一例である。
【0256】
ゼータ電位とは一般に、「表面電位によって形成された電気二重層の、滑り面での電位」と定義されている。
【0257】
ナノバブルの発生量とゼータ電位とは相関関係があり、ナノバブルの発生量を酸化還元電位と同様に管理手段として利用することができる。
【0258】
本第4実施形態の魚類養殖装置417は、被処理水の種類によって異なるが、ゼータ電位検出部88が検出するゼータ電位が−30mv〜−70mvの範囲となるように運転が行われる。
【0259】
上記ゼータ電位検出部88およびゼータ電位調節計89のメーカーは特に限定しないが、本第4実施形態では、日本ルフト株式会社のゼータ電位測定装置DT型におけるゼータ電位検出部88およびゼータ電位調節計89を採用した。
【0260】
〔第5実施形態〕
図5は本発明の第5実施形態の魚類養殖装置517の模式図である。また、図5において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0261】
本第5実施形態の魚類養殖装置517は、上記第1実施形態の魚類養殖装置117と比較して、マイクロバブル発生装置81を有する第1ナノバブル製造部85の代替として、マイクロバブル発生装置581を有する第1ナノバブル製造部585を備えている点のみ異なっている。尚、マイクロバブル発生装置581は第1のマイクロバブル発生装置の一例である。
【0262】
上記マイクロバブル発生装置581は、マイクロバブル発生器92、吸い込み配管93、循環ポンプ94、空気配管95、空気ニードルバルブ96、水配管97および処理水配管98から構成されており、バブル水流91を発生させる。
【0263】
上記マイクロバブル発生器92は、マイクロバブルを発生するノズルであり、マイクロナノバブル発生器13と同様のものである。
【0264】
本第5実施形態の魚類養殖装置517は、マイクロバブル発生器92、吸い込み配管93、循環ポンプ94、空気配管95、空気ニードルバルブ96、水配管97および処理水配管98から構成されたマイクロバブル発生装置581を備えているので、上記第1実施形態のマイクロバブル発生装置81よりも細かいすなわちサイズが小さいマイクロバブルを第1槽5内に発生させることができる。
【0265】
そして、最終的に第5槽29でのナノバブルのサイズを、上記第1実施形態より小さくすることができる。
【0266】
したがって、ナノバブルについて、サイズがより小さい方がフリーラジカル起因の酸化力や微生物活性化作用等の作用効果があることが判明しているので、本第5実施形態は養殖水の水質を上記第1実施形態よりも向上させることができる。
【0267】
〔第6実施形態〕
図6は本発明の第6実施形態のプール装置118の模式図である。また、図6において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0268】
上記第1実施形態では、養殖水の水質を良好に維持することを目的としていたが、本第6実施形態では、被処理水の一例としての一般的なプール用水の水質を良好に維持することを目的とする。
【0269】
すなわち、本第6実施形態のプール装置118は、魚類養殖水槽1を有する魚類養殖部112を備えていなくて、水泳用プール槽2を有するプール部113を備えている点のみが上記第1実施形態の魚類養殖装置117と異なっている。
【0270】
上記水泳用プール槽2において、使用中または使用後のプール用水に対して、浮遊物質、全有機炭素(TOC)および化学的酸素要求量(COD)等の低減と、大腸菌等の微生物に対する殺菌とが必要である。
【0271】
従来、水泳用プール槽では、急速ろ過塔や次亜塩素酸ソーダ等の薬品による殺菌を実施していたが、浮遊物質の除去が殆んどで、また、次亜塩素酸ソーダ等の薬品臭気が使用者に不快感を与えていた。
【0272】
本第6実施形態のプール装置118は急速ろ過塔60および緩速ろ過槽67を備えているので、プール用水に関する浮遊物質、全有機炭素および化学的酸素要求量等を低減できる。
【0273】
また、上記プール用水の殺菌に多量のナノバブルを利用するので、次亜塩素酸ソーダ等の薬品による臭気の不快感は全く存在しない。
【0274】
また、上記プール装置118が備える水処理装置87は、多少複雑であるが、水泳用プール槽2の規模に比較して規模が小さいので、スペース上の問題も特に発生しない。
【0275】
〔第7実施形態〕
図7は本発明の第7実施形態の池装置118の模式図である。また、図7において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0276】
上記第1実施形態では、養殖水の水質を良好に維持することを目的としていたが、本第7実施形態では、被処理水の一例としての池3の水の水質を良好に維持することを目的とする。
【0277】
すなわち、本第7実施形態の池装置118は、魚類養殖部112を備えていなくて、池部114を備えている点のみが上記第1実施形態の魚類養殖装置117と異なっている。
【0278】
上記池3においては、一般に、流入水の浮遊物質や、流入水中の有機物としての全有機炭素(TOC)および化学的酸素要求量(COD)等を処理することが必要である。また、上記池3においては、アオコ等藻類の異常繁殖も防止する必要もある。
【0279】
上記流入水の浮遊物質に対しては急速ろ過塔60で処理できる。そして、上記流入水中の有機物としての全有機炭素(TOC)および化学的酸素要求量(COD)等に対しては、緩速ろ過槽67で処理できる。また、上記アオコ等藻類の異常繁殖については、最終的に第2ナノバブル製造部86において、発生する多量のナノバブルを池3の水に含有させることにより、異常繁殖を防止できる。
【0280】
尚、上記池3の規模にもよるが、水処理装置87の規模は、池3の水を使用した水処理実験によって、決定すれば良い。
【0281】
上記第7実施形態では、水処理装置87を用いて、池3の水の水質を良好に維持していたが、水処理装置87を用いて、今日問題となっている閉鎖水域の湖沼の水の水質を良好に維持してもよい。
【0282】
〔第8実施形態〕
図8は本発明の第8実施形態の水族館展示水槽装置120の模式図である。また、図8において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一または同様の構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0283】
本第8実施形態の水族館展示水槽装置120は、魚類養殖部112を備えていなくて、水族館展示水槽部115を備えている点のみが上記第1実施形態の魚類養殖装置117と異なっている。
【0284】
上記水族館展示水槽101は魚類養殖部112の魚類養殖水槽1と類似しているが、水族館展示水槽101と魚類養殖水槽1との差は、水族館展示水槽101では観客の視点を意識して水族館展示水槽101内の飼育水の透明度と疾病対策を重要視するが、魚類養殖水槽1では、飼育水の透明度よりも、残餌や魚類の排泄物由来の疾病を重要視することにある。尚、水族館展示水槽101内の飼育水は被処理水の一例である。
【0285】
このように、上記水族館展示水槽101では飼育水の透明度も重要視するので、水処理装置87を通過する飼育水の量が、魚類養殖水槽1の第1実施形態よりもはるかに多く、移送ポンプ58、移送ポンプ71、渦流ポンプ74の能力は本第8実施形態の方が上記第1実施形態よりも大きく、展示動物103の種類によっても異なるが、一般的に2倍以上となる。
【0286】
また、上記水族館展示水槽装置120において、急速ろ過塔60の容量や緩速ろ過槽67の容量も、展示動物103の種類によっても異なるが、上記第1実施形態に比べて一般的に2倍以上となる。
【0287】
そして、上記水族館展示水槽101で飼育する魚種は、貴重な魚種が多いので、単位容量当りのナノバブル量も多く、第1ナノバブル製造部85と第2ナノバブル製造部86の機器も、上記第1実施形態での同様の機器を比較した場合、本第8実施形態の機器の方が、2倍以上吐出量が大きい機器を選定している。
【0288】
また、本第8実施形態では、貴重な魚類の健康の維持や化学物質の影響の観点から、界面活性剤タンクや無機塩類タンクは設置するもの、界面活性剤や無機塩類を極力使用しない運転としている。
【0289】
〔実験例1〕
図1の魚類養殖装置117の実験装置を製作した。この実験装置では、魚類養殖水槽1の容量20m、急速ろ過塔60の容量0.6m、緩速ろ過槽67の容量3m、第1槽5の容量0.4m、第2槽11の容量0.4m、第3槽20の容量0.4m、第4槽48の容量0.6m、第5槽29の容量0.2m、界面活性剤タンク32の容量0.1m、無機塩類タンク37の容量0.1mとした。
【0290】
そして、上記急速ろ過塔60内には、ろ過砂106として川砂を充填すると共に、中和ろ材107として大理石を充填した。
【0291】
また、上記緩速ろ過槽67内には、バクテリアろ材108として活性炭を充填すると共に、中和ろ材109としてサンゴ砂を充填した。
【0292】
上記活性炭として、クラレケミカル株式会社の活性炭で商品名クラレコールGWを採用した。
【0293】
また、上記第1槽5に設置すべきマイクロバブル発生装置81として、野村電子工業株式会社の製品であるマイクロバブラMD−400を採用した。
【0294】
また、上記第2槽11に設置すべきマイクロナノバブル発生装置82、および、第3槽20に設置すべきナノバブル発生装置83として、同一の株式会社ナノプラネット研究所の製品M2型を採用した。
【0295】
また、上記第5槽29に設置すべき酸化還元電位検出部30および酸化還元電位調節計62として、東亜DKKの製品を採用した。
【0296】
また、上記第5槽29内の養殖水を吸い込む渦流ポンプ74として、動力1.5kwの株式会社ニクニのKED型を採用した。
【0297】
また、上記渦流ポンプ74の吐出側に設置するラインミキサとして、OHR研究所の商品MX型を採用した。
【0298】
また、上記界面活性剤タンク32に、魚類に影響しないカチオン界面活性剤を投入して、第1撹拌機36でカチオン界面活性剤を撹拌し、さらに、無機塩類タンク37に、塩化ナトリウムを投入して、第2撹拌機で塩化ナトリウムを撹拌して、養殖水を処理する準備した。
【0299】
そして、上記魚類養殖水槽1に、淡水魚の鯉を100匹投入して、6ヶ月飼育しその歩留まりを確認したところ、98%であつた。
【0300】
また、上記魚類養殖水槽1のオーバーフロー配管52における養殖水と魚類養殖水槽1に導入される水処理装置87で処理後の養殖水の水質の比較をしたところ、下記の内容であった。

【0301】
尚、上記全有機炭素は、株式会社島津製作所のTOC計(TOC−500A)で測定し、また、化学的酸素要求量は、JIS法の過マンガン酸カリウムによる酸素要求量で測定した。
【0302】
また、上記処理水配管98の養殖水をベックマン・コールター株式会社のコールターカウンターにて測定したところ、サイズが180nm付近を中心に386,000個/mlのナノバブルを確認できた。
【0303】
また、上記ベックマン・コールター株式会社のコールターカウンターを用いた測定を行った時、第5槽29内の養殖水の酸化還元電位を測定したところ、+38mvであった。
【符号の説明】
【0304】
1 魚類養殖水槽 2 水泳用プール槽
3 池 5 第1槽
6 水中ポンプ型マイクロバブル発生機 7 小型ブロワー
8 空気配管 9 バブル水流
10 オーバーフロー配管 11 第2槽
12 バブル水流 13 マイクロナノバブル発生器
14 吸い込み配管 15 循環ポンプ
16 空気配管 17 空気ニードルバルブ
18 水配管 19 オーバーフロー配管
20 第3槽 21 バブル水流
22 ナノバブル発生器 23 吸い込み配管
24 循環ポンプ 25 空気配管
26 空気ニードルバルブ 27 水配管
28 オーバーフロー配管 29 第5槽
30 酸化還元電位検出部 31 シーケンサ
32 界面活性剤タンク 33 第1定量ポンプ
34 第2定量ポンプ 35 第3定量ポンプ
36 第1撹拌機 37 無機塩類タンク
38 第4定量ポンプ 39 第5定量ポンプ
40 第6定量ポンプ 41 第2撹拌機
42 薬品配管 43 薬品配管
44 薬品配管 45 薬品配管
46 薬品配管 47 薬品配管
48 第4槽 49 水面
50 マイクロバブル配管 51 マイクロナノバブル配管
52 オーバーフロー配管 53 高濃度浮遊物質排水配管
54 下部連通配管 55 信号線
56 逆洗配管 57 ピット
58移送ポンプ 59 水配管
60 急速ろ過塔 61 急速ろ過ろ材層
62 酸化還元電位調節計 63 急速ろ過塔逆洗配管
64 電動弁 65 電動弁
66 緩速ろ過槽逆洗配管 67 緩速ろ過槽
68 緩速ろ過ろ材層 69 逆洗水吐出配管
70 吸い込み配管 71 移送ポンプ
72 水配管 73 吸い込み配管
74 渦流ポンプ 75 空気配管
76 ニードルバルブ 77 気液混合配管
78 ラインミキサ 79 ラセン状流路
80 カレントカッタ 81 マイクロバブル発生装置
82 マイクロナノバブル発生装置 83 ナノバブル発生装置
84 処理部 85 第1ナノバブル製造部
86 第2ナノバブル製造部 87 水処理装置
88 ゼータ電位検出部 89 ゼータ電位調節計
90 電動弁 91 バブル水流
92 マイクロバブル発生器 93 吸い込み配管
94 循環ポンプ 95 空気配管
96 空気ニードルバルブ 97 水配管
98 処理水配管 100 魚類
101 水族館展示水槽 102 底部排水配管
103 展示動物 106 ろ過砂
107 中和ろ材 108 バクテリアろ材
109 中和ろ材 110 底部汚泥ピット
112 魚類養殖部 113 プール部
114 池部 115 水族館展示水槽部
116 多量ナノバブル発生装置 117 魚類養殖装置
118 プール装置 119 池装置
120水族館展示水槽装置 217 魚類養殖装置
317 魚類養殖装置 417 魚類養殖装置
581 マイクロバブル発生装置 585 第1ナノバブル製造部
517 魚類養殖装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノバブルを含有する被処理水が供給され、ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔と、
上記急速ろ過塔でろ過された被処理水が供給され、バクテリアろ材および中和ろ材が充填されると共に、上記急速ろ過塔よりも遅い速度でろ過する緩速ろ過槽と
を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置において、
上記緩速ろ過槽でろ過された被処理水が供給される第1水槽と、
上記第1水槽に設置され、マイクロバブル含有水を生成する第1のマイクロバブル発生装置と、
上記マイクロバブル含有水が供給される第2水槽と、
上記第2水槽に設置され、上記マイクロバブル含有水をベースにマイクロナノバブル含有水を生成する第2のマイクロバブル発生装置と、
上記マイクロナノバブル含有水が供給される第3水槽と、
上記第3水槽に設置され、上記マイクロナノバブル含有水をベースにナノバブル含有水を生成する第3のマイクロバブル発生装置と、
上記ナノバブル含有水のナノバブル量を増加させる第4のマイクロバブル発生装置と
を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記第4のマイクロバブル発生装置は渦流ポンプを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記第4のマイクロバブル発生装置は、上記渦流ポンプの吐出側に設置され、ラセン状流路およびカレントカッタを含むラインミキサを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか一項に記載の水処理装置において、
養殖水および魚類が入る魚類養殖水槽から出た養殖水を、上記急速ろ過塔、上記緩速ろ過槽、上記第1のマイクロバブル発生装置、上記第2のマイクロバブル発生装置、上記第3のマイクロバブル発生装置および上記第4のマイクロバブル発生装置を通過させて再び上記魚類養殖水槽に戻すことを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項2から5までのいずれか一つに記載の水処理装置において、
上記第3のマイクロバブル発生装置が生成した上記ナノバブル含有水の電位を検出する電位検出装置と、
上記電位検出装置が検出した電位に基づいて、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを調節する調節装置と
を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水処理装置において、
上記調節装置は、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを界面活性剤で調節することを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載の水処理装置において、
上記調節装置は、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを無機塩類で調節することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項6に記載の水処理装置において、
上記調節装置は、上記第1のマイクロバブル発生装置のマイクロバブル発生量と、上記第2のマイクロバブル発生装置のマイクロナノバブル発生量と、上記第3のマイクロバブル発生装置のナノバブル発生量とのうちの少なくとも1つを界面活性剤および無機塩類で調節することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項6から9までのいずれか一項に記載の水処理装置において、
上記第3のマイクロバブル発生装置が生成した上記ナノバブル含有水が上記第3水槽から供給される測定槽を備え、
上記電位検出装置は、上記測定槽に貯えられた上記ナノバブル含有水の電位を検出することを特徴とする水処理装置。
【請求項11】
請求項6から10までのいずれか一項に記載の水処理装置において、
上記電位検出装置が検出する電位は酸化還元電位またはゼータ電位であることを特徴とする水処理装置。
【請求項12】
請求項2から11までのいずれか一項に記載の水処理装置において、
上記第1水槽の上部と上記第2水槽の上部とを互いに接続する第1のオーバーフロー管と、
上記第2水槽の上部と上記第3水槽の上部とを互いに接続する第2のオーバーフロー管と、
上記第1水槽の下部と上記第2水槽の下部とを互いに接続する第1の連通管と、
上記第2水槽の下部と上記第3水槽の下部とを互いに接続する第2の連通管と
を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項13】
請求項2から12のいずれか一項に記載の水処理装置において、
上記第3水槽から供給されたナノバブル含有水と微細浮遊物質と分離させるための第4水槽を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項14】
ろ過砂および中和ろ材が充填された急速ろ過塔で、ナノバブルを含有する被処理水をろ過した後、バクテリアろ材および中和ろ材が充填され、上記急速ろ過塔よりも遅い速度でろ過する緩速ろ過槽によって、上記急速ろ過塔でろ過された被処理水をろ過することを特徴とする水処理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の水処理方法において、
上記緩速ろ過槽でろ過された被処理水をベースに第1のマイクロバブル発生装置でマイクロバブル含有水を生成する工程と、
上記マイクロバブル含有水をベースに第2のマイクロバブル発生装置でマイクロナノバブル含有水を生成する工程と、
上記マイクロナノバブル含有水をベースにナノバブル含有水を第3のマイクロバブル発生装置で生成する工程と、
上記ナノバブル含有水のナノバブル量を第4のマイクロバブル発生装置で増加させる工程とを備えたことを特徴とする水処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の水処理方法において、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を魚類の養殖水として使用することを特徴とする水処理方法。
【請求項17】
請求項15に記載の水処理方法において、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水をプール水として使用することを特徴とする水処理方法。
【請求項18】
請求項15に記載の水処理方法において、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を池に導入することを特徴とする水処理方法。
【請求項19】
請求項15に記載の水処理方法において、
上記第4のマイクロバブル発生装置でナノバブル量が増加したナノバブル含有水を水族館展示水槽に導入することを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−162517(P2010−162517A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8872(P2009−8872)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】