説明

水処理装置および水処理方法

【課題】静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体のうち少なくとも1つを含む水を処理対象とし、処理水の着色を抑制する水処理装置を提供する。
【解決手段】静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体のうち少なくとも1つを含む水を処理対象とし、前記水のフェントン処理を行うフェントン処理手段と、フェントン処理を行ったフェントン処理水に金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成する金属塩添加手段と、を有する水処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称する場合がある)の製造工場における水系分散体の製造工程では、着色成分等を含有する水が発生する。これらの水には、着色成分である顔料、染料や、界面活性剤等が含まれていることがあるため、固形分濃度とともに化学的酸素要求量(COD)が大きく、このままの状態で河川や下水道等に排出することはできない。このため、これらの水は、工場内の水処理施設にて処理された後に再利用されたり、外部に排出される。
【0003】
特に、近年、トナーの製造方法として、従来の混練粉砕法に代わり、乳化重合法によるトナーを始め、懸濁重合法、溶解懸濁法などの各種化学的トナー製法が開発され、実施されている。例えば乳化重合法では、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させて形成された樹脂分散液と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を界面活性剤の存在下、水系溶媒中で撹拌、混合しながら、凝集、加熱融合させ、所定の粒径、粒度分布、形状、構造を有する着色樹脂粒子であるトナー粒子を作製する。
【0004】
このようなトナーの製造の凝集工程等において、金属イオンと配位結合を形成するエチレンジアミンジコハク酸などの有機化合物(以下、「キレート化剤」と呼ぶ場合がある。)が用いられることがある。また、トナーの結着樹脂として、ポリエステル樹脂などのエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体(以下、「エステル系重合体」と呼ぶ場合がある。)が用いられることがある。このため、トナーの製造工程で、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含むキレート化剤含有溶液や、エステル結合を分子の主鎖中に有する重合体を含むエステル系重合体含有溶液が発生することがある。
【0005】
通常、一般の水処理としては、凝集沈殿処理が利用される場合が多い。凝集沈殿処理とは、五訂公害防止の技術と法規水質編(通商産業省環境立地局監修、平成13年発行)141〜153ページに記載されているように、水処理の分野において最も一般的に用いられている固液分離操作であり、広く用いられている。凝集沈殿処理は、原水に凝集剤を添加することによりフロック(凝集により生じた粗大粒子)を生じさせ、水とフロックとの比重差により、フロックを沈殿させて固液分離を行う処理方法である。こうして固体として分離されたフロックは、産業廃棄物の汚泥として処理され、固体を分離した水は、化学的酸素要求量を低減し、再利用されたり、河川や下水道等へ排出されている。これらの固液分離した後の汚泥は、そのまま加圧濾過脱水装置にて脱水処理される場合が多い。加圧濾過脱水装置とは、五訂公害防止の技術と法規水質編(通商産業省環境立地局監修、平成13年発行)182ページにも記載されているように、水処理の分野において最も一般的に用いられている脱水装置である。
【0006】
一方、処理水の着色を防ぐ方法については、例えば、特許文献1には、色度の悪化を防ぐために、有機性廃棄物を熱処理後、その少なくとも一部を微生物反応を用いて分解する方法であって、熱処理工程における有機性廃棄物の溶解性リン酸態リン濃度を20mg/L以下に保つ有機性廃棄物の処理方法が記載されている。
【0007】
特許文献2には、被処理水のpHが低い場合だけでなくpHが高い場合であっても、処理水が赤色化するのを防止するために、被処理水に含まれるリンを除去するために用いられるリン除去材であって、被処理水に含まれるリン酸イオンを配位子交換により除去する基材と、被処理水のpHを低下させるためのpH低下材と、リン除去材を成形するための耐火粘土とを混合成形した素地材を焼成してなるリン除去材が記載されている。
【0008】
特許文献3には、水中の重金属を除去するために、有機酸および重金属を含む排水を処理する排水処理方法であって、排水にカルシウム化合物を添加すると共に、このカルシウム化合物の添加に併せて、またはその後に無機系凝集剤を添加し凝集処理を行うことで、重金属を除去する排水処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−340491号公報
【特許文献2】特開2007−14923号公報
【特許文献3】特開2003−47971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体のうち少なくとも1つを含む水を処理対象とし、処理水の着色を抑制する水処理装置および水処理方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体のうち少なくとも1つを含む水を処理対象とし、前記水のフェントン処理を行うフェントン処理手段と、前記フェントン処理を行ったフェントン処理水に金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成する金属塩添加手段と、を有する水処理装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記金属塩添加手段の前段側あるいは後段側において無機系凝集剤を添加する無機系凝集剤添加手段と、前記無機系凝集剤の添加により形成されたフロックを固液分離する固液分離手段と、を有する凝集処理手段を有する請求項1に記載の水処理装置である。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記凝集処理手段の後段側において生物処理を行う生物処理手段を有する請求項2に記載の水処理装置である。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記生物処理手段の後段側において活性炭吸着処理を行う活性炭吸着処理手段を有する請求項3に記載の水処理装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体のうち少なくとも1つを含む水を処理対象とし、前記水のフェントン処理を行うフェントン処理工程と、前記フェントン処理を行ったフェントン処理水に金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成する金属塩添加工程と、を含む水処理方法である。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記金属塩添加工程の前段側あるいは後段側において無機系凝集剤を添加する無機系凝集剤添加工程と、前記無機系凝集剤の添加により形成されたフロックを固液分離する固液分離工程と、を含む凝集処理工程を含む請求項5に記載の水処理方法である。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記水が金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む場合に、前記凝集処理工程における凝集pHをpH6以上9以下に調整して処理を行う請求項6に記載の水処理方法である。
【0018】
請求項8に係る発明は、前記水がエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体を含む場合に、前記凝集処理工程における凝集pHをpH5以上8以下に調整して処理を行う請求項6に記載の水処理方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1によると、フェントン処理を行ったフェントン処理水に金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成する金属塩添加手段を有さない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理装置を提供する。
【0020】
本発明の請求項2によると、金属塩添加手段の前段側あるいは後段側において無機系凝集剤を添加する無機系凝集剤添加手段と、無機系凝集剤の添加により形成されたフロックを固液分離する固液分離手段と、を有する凝集処理手段を有さない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理装置を提供する。
【0021】
本発明の請求項3によると、凝集処理手段の後段側において生物処理を行う生物処理手段を有さない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理装置を提供する。
【0022】
本発明の請求項4によると、生物処理手段の後段側において活性炭吸着処理を行う活性炭吸着処理手段を有さない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理装置を提供する。
【0023】
本発明の請求項5によると、フェントン処理を行ったフェントン処理水に金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成する金属塩添加工程を含まない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理方法を提供する。
【0024】
本発明の請求項6によると、金属塩添加工程の前段側あるいは後段側において無機系凝集剤を添加する無機系凝集剤添加工程と、無機系凝集剤の添加により形成されたフロックを固液分離する固液分離工程と、を含む凝集処理工程を含まない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理方法を提供する。
【0025】
本発明の請求項7によると、水が金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む場合に、凝集処理工程における凝集pHをpH6以上9以下に調整して処理を行わない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理方法を提供する。
【0026】
本発明の請求項8によると、水がエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体を含む場合に、凝集処理工程における凝集pHをpH5以上8以下に調整して処理を行わない場合に比較して、処理水の着色を抑制する水処理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】比較例で用いた水処理装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0029】
静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物(キレート化剤)およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体(エステル系重合体)のうち少なくとも1つを含む水をフェントン処理後に、そのまま凝集沈殿処理を行うと、キレート化剤あるいはエステル系重合体のフェントン処理により生成する二酸化炭素あるいは有機酸に起因する凝集処理水の着色が増大したり、また、この凝集処理水を生物処理あるいは活性炭吸着処理を行った処理水の着色が増大することがある。
【0030】
本発明者らは、フェントン処理後に、フェントン処理水に金属塩を添加し、フェントン処理で生成する二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成して、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つを固定化処理し、二酸化炭素あるいは有機酸の溶解分を低減することにより、凝集処理水の着色や、この凝集処理水を生物処理あるいは活性炭吸着処理を行った処理水の着色が抑制されることを見出した。したがって、水質が安定的に維持され、環境により配慮された水処理が行われる。
【0031】
図1には本実施形態に係る水処理を行うための水処理装置の一例の概略構成を示す。本実施形態に係る水処理装置1は、フェントン処理手段としてのフェントン処理装置10と、金属塩添加手段としての金属塩添加槽12とを備える。水処理装置1は、凝集処理手段として、無機系凝集剤添加手段としての無機系凝集剤添加槽14、高分子凝集剤添加手段としての高分子凝集剤添加槽16、および固液分離手段としての沈殿槽18を備える凝集処理装置24と、生物処理手段としての生物処理装置20と、活性炭吸着処理手段としての活性炭吸着処理装置22とを備えていてもよい。水処理装置1は、金属塩添加手段としての金属塩添加槽12の後段側に無機系凝集剤添加手段としての無機系凝集剤添加槽14を備える。
【0032】
水処理装置1において、フェントン処理装置10、金属塩添加槽12、無機系凝集剤添加槽14、高分子凝集剤添加槽16、沈殿槽18、生物処理装置20、活性炭吸着処理装置22の入口と出口とがそれぞれ直列に配管等を介して接続されている。また、金属塩添加手段として金属塩添加配管、無機系凝集剤添加手段として無機系凝集剤添加配管、高分子凝集剤添加手段として高分子凝集剤添加配管がポンプ等を介して、金属塩添加槽12、無機系凝集剤添加槽14、高分子凝集剤添加槽16にそれぞれ接続されていてもよい。金属塩添加槽12、無機系凝集剤添加槽14、高分子凝集剤添加槽16には撹拌羽根等の撹拌手段が設置されてもよい。
【0033】
本実施形態に係る水処理装置の動作および水処理方法を、図1を参照して説明する。
【0034】
トナー製造工程から排出される、キレート化剤およびエステル系重合体のうち少なくとも1つを含む原水に対しては、まずフェントン処理が行われる(フェントン処理工程)。
【0035】
キレート化剤としては、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物であればよく、特に制限はないが、例えば、金属イオンと配位結合を形成する酸基を2つ以上6つ以下有する有機化合物が挙げられる。酸基としては、カルボキシル基(−COOH基)、スルホ基(−SOH)、ホスホ基(−P(=O)(OH))等が挙げられる。このようなキレート化剤としては、例えば、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ジカルボキシメチルグルタル酸テトラナトリウム塩(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ヒドロキシエチルエチレンジアミンテトラ酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、L−グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸(HIDS)、L−アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸(ASDA)、メチルグリシジンジ酢酸(MGDA)、ヘプトグルコン酸(GH−NA)、タウリン−N,N−ジ酢酸等のアミノ多価カルボン酸化合物、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)等の多価ホスホン酸化合物等、あるいはそれらのナトリウム等のアルカリ金属塩、水和物等が挙げられる。キレート化剤は水溶性であることが好ましい。
【0036】
エステル系重合体としては、エステル結合を分子の主鎖中に有する重合体であればよく、特に制限はないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0037】
フェントン処理は、過酸化水素と2価の鉄イオンとの反応により生成したヒドロキシラジカルにより、有機物を酸化分解する方法である。フェントン処理装置10において、原水に過酸化水素と2価の鉄塩が添加され、キレート化剤、エステル系重合体等の有機物が酸化により分解される。このとき、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つ等が生成する。
【0038】
フェントン反応液は酸等によりpH2以上3以下の酸性に調整されることが好ましい。また、酸化分解処理後、フェントン反応液中の残留過酸化水素を分解するために例えばpH9以上10以下の条件で重亜硫酸ナトリウム等の還元剤を用いて還元処理されてもよい。
【0039】
2価の鉄塩としては、例えば、硫酸第一鉄、塩化第一鉄などが挙げられる。
【0040】
過酸化水素の添加量は、例えば、処理対象水に対して2,500mg/L以上10,000mg/L以下の範囲である。2価の鉄塩の添加量は、例えば、処理対象水に対して鉄として250mg/L以上1,000mg/L以下の範囲である。
【0041】
本実施形態において、処理対象である原水中のキレート化剤の量が、100mg/L以上1,000mg/L以下の範囲である場合に、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法が好適に適用される。原水中のキレート化剤の量が100mg/L未満の場合は、過度のフェントン分解反応により凝集沈殿性が悪くなる場合があり、1,000mg/Lを超えると、フェントン分解反応の不足による処理水の着色および凝集沈殿性が悪化する場合がある。
【0042】
また、処理対象である原水中のエステル系重合体の量が、1質量%以上4質量%以下の範囲である場合に、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法が好適に適用される。原水中のエステル系重合体の量が1質量%未満の場合は、本実施形態による処理が必要でない場合があり、4質量%を超えると、処理水の着色および凝集沈殿性が悪化する場合がある。
【0043】
本実施形態において、フェントン処理後のフェントン処理水中の二酸化炭素の量が1.45g/L以上14.5g/L以下の範囲である場合に、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法が好適に適用される。フェントン処理水中の二酸化炭素の量が1.45g/L未満の場合は、本実施形態による処理が必要でない場合があり、14.5g/Lを超えると、処理水の着色および凝集沈殿性が悪化する場合がある。
【0044】
また、フェントン処理後のフェントン処理水中の有機酸の量が100mg/L以上1,000mg/L以下の範囲である場合に、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法が好適に適用される。フェントン処理水中の有機酸の量が100mg/L未満の場合は、本実施形態による処理が必要でない場合があり、1,000mg/Lを超えると、処理水の着色および凝集沈殿性が悪化する場合がある。
【0045】
ここで、有機酸とは、カルボキシル基(−COOH基)またはスルホ基(−SOH)等の酸基を有する有機化合物のことをいい、主にカルボキシル基を有する有機化合物のことをいう。
【0046】
フェントン処理が行われたフェントン処理水は、金属塩添加槽12に送液される。金属塩添加槽12において、フェントン処理水に対して、撹拌羽根等の撹拌手段により撹拌されながらポンプ等により金属塩を含有する溶液等が添加され、フェントン処理で生成した二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩が形成される(金属塩添加工程)。このとき、金属塩反応液は酸またはアルカリ等によりpH8以上10以下に調整されることが好ましい。
【0047】
金属塩としては、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成するものであればよく、特に制限はないが、例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、石こう等のカルシウム塩、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩などのアルカリ土類金属の水酸化物、塩化物、硫化物等が挙げられる。これらのうち、取り扱い性等の点から、カルシウム塩およびマグネシウム塩のうち少なくとも1つが好ましく、コスト等の点から、カルシウム塩がより好ましく、水酸化カルシウムがさらに好ましい。
【0048】
金属塩の添加量は、例えば、原水中のキレート化剤またはエステル系重合体の含有量に対して、金属塩の金属とキレート化剤の重量比で1.0以上2.0以下の範囲で、金属塩の金属とエステル系重合体の重量比で67以上100以下の範囲である。これにより、金属塩反応液中の二酸化炭素または有機酸の量が添加前の30%以下程度に低減する。
【0049】
二酸化炭素と金属塩とにより形成される難溶塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムである。また、有機酸と金属塩とにより形成される難溶塩は、例えば、シュウ酸カルシウム、シュウ酸マグネシウムである。
【0050】
金属塩が添加されて難溶塩が形成された金属塩添加水は凝集処理装置24へ送液され、凝集剤が添加されてフロックを成長させ、凝集処理が行われる(凝集処理工程)。凝集処理装置24は、凝集処理を行うことができるものであればよく、特に制限はない。図1の例では、凝集処理装置24は、無機系凝集剤添加槽14、高分子凝集剤添加槽16、沈殿槽18を備える。凝集処理は、例えば、無機系凝集剤添加槽14における、金属塩添加水への無機系凝集剤の添加および凝集反応を行い、凝集物を得る無機系凝集剤添加工程(凝集反応工程)と、高分子凝集剤添加槽16における、凝集反応した凝集反応液への高分子凝集剤の添加および凝集物からフロックを形成するフロック形成工程と、沈殿槽18における、凝集沈殿によりフロックを含む汚泥スラリと分離液とに分離する固液分離工程と、を含む。なお、凝集沈殿処理の代わりに加圧浮上処理等による固液分離処理を行ってもよい。
【0051】
金属塩添加水に対しては、無機系凝集剤添加槽14において撹拌羽根等の撹拌手段により急速撹拌されながらポンプ等により無機系凝集剤が添加され、凝集反応が行われる(無機系凝集剤添加工程)。その後、凝集反応が行われた凝集反応液は、高分子凝集剤添加槽16に送液される。
【0052】
無機系凝集剤添加工程において撹拌羽根等の撹拌手段によって急速撹拌することにより凝集反応が行われるが、撹拌速度は、100rpm以上500rpm以下の範囲であることが好ましい。撹拌速度が100rpmより小さいと、凝集反応が十分に行われず、細かい粒子が減らない場合があり、500rpmより大きいと、一度形成された凝集物が再び細かくなってしまう場合がある。
【0053】
次に、高分子凝集剤添加槽16において、必要に応じて高分子凝集剤が添加され、無機系凝集剤添加槽14から移送された凝集反応液に対して撹拌羽根等の撹拌手段により緩速撹拌が行われ、水中の懸濁物質が凝集したフロックが形成される(フロック形成工程)。このフロック中には、主に、金属塩添加工程において形成された難溶塩、トナー製造において使用された着色剤、離型剤、トナー粒子等が含まれている。フロックは、緩速撹拌されることにより成長する。このとき得られるフロックの懸濁液(処理液)の固形分濃度は0.5%以上1.5%以下程度である。なお、無機系凝集剤添加槽14と高分子凝集剤添加槽16とを一体化した槽を使用して、1つの槽内で無機系凝集剤添加工程と、フロック形成工程とが行われてもよい。また、金属塩添加槽12と無機系凝集剤添加槽14と高分子凝集剤添加槽16とを一体化した槽を使用して、1つの槽内で金属塩添加工程と、無機系凝集剤添加工程と、フロック形成工程とが行われてもよい。
【0054】
フロック形成工程において撹拌羽根等の撹拌手段によって撹拌することによりフロックを成長させるが、撹拌速度は、60rpm以上500rpm以下の範囲であることが好ましく、100rpm以上300rpm以下の範囲であることがより好ましい。撹拌速度が60rpmより小さいと、フロックの形成が十分ではなく、細かい粒子が減らない場合があり、500rpmより大きいと、一度形成されたフロックが再び細かくなってしまう場合がある。
【0055】
この凝集処理工程において使用される凝集剤としては、一般の無機系凝集剤、有機系凝集剤を用いればよい。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリシリカ鉄凝集剤等が用いられ、安価であること、凝集性が良好であること等から、塩化第二鉄が用いられることが好ましい。
【0056】
また、有機系凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ソーダ系等のアニオン性高分子凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアミン系、ポリジシアンジアミド系等のカチオン性高分子凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリエチレンオキサイド系等のノニオン性高分子凝集剤;アクリル酸ジメチルアミノエチル系等の両性高分子凝集剤を使用すればよい。凝集性が良好であること等から、ポリアクリルアミド系アニオン性高分子凝集剤を使用することがより好ましい。また、凝集剤として、上記無機系凝集剤および有機系凝集剤から選択される2つ以上の凝集剤を組み合わせて使用してもよく、無機系凝集剤として塩化第二鉄を使用し、さらにフロックを成長させるために有機系凝集剤としてポリアクリルアミド系アニオン性高分子凝集剤を併用することが好ましい。有機系凝集剤は無機系凝集剤添加工程において添加してもよい。
【0057】
無機系凝集剤を使用する場合の添加量は、処理する原水に対して500mg/L以上5,000mg/L以下の範囲の濃度であることが好ましく、1,000mg/L以上3,000mg/L以下の範囲の濃度であることがより好ましい。
【0058】
また、有機系凝集剤を使用する場合の添加量としては、処理する原水に対して0.5mg/L以上5mg/L以下の範囲の濃度であることが好ましく、1mg/L以上3mg/L以下の範囲の濃度であることがより好ましい。
【0059】
凝集反応時の反応液の凝集pHは、原水がキレート化剤を含む場合には、凝集効果等の点から、pH6以上9以下に調整して処理を行うことが好ましい。凝集pHが6未満では、凝集沈殿処理上澄み水に橙色等の着色が発生する場合があり、9を超えると、凝集沈殿処理上澄み水に濁りが発生する場合がある。
【0060】
また、凝集反応時の反応液の凝集pHは、原水がエステル系重合体を含む場合には、凝集効果等の点から、pH5以上8以下に調整して処理を行うことが好ましい。凝集pHが5未満では、凝集沈殿処理上澄み水に橙色等の着色が発生する場合があり、8を超えると、凝集沈殿処理上澄み水に濁りが発生する場合がある。
【0061】
さらに、凝集反応時の反応液の凝集pHは、原水がキレート化剤およびエステル系重合体を含む場合には、凝集効果等の点から、pH6以上8以下に調整して処理を行うことが好ましい。凝集pHが6未満では、凝集沈殿処理上澄み水に橙色等の着色が発生する場合があり、8を超えると、凝集沈殿処理上澄み水に濁りが発生する場合がある。
【0062】
高分子凝集剤添加槽16においてフロック形成された処理液は、次に沈殿槽18に送液される。フロック形成工程において、凝集反応液は通常、高分子凝集剤添加槽16に連続的に流入され、フロック形成された処理液は連続的に沈殿槽18へ送液される。このとき、高分子凝集剤添加槽16における滞留時間としては、5分以上20分以下の範囲であることが好ましく、10分以上15分以下の範囲であることがより好ましい。滞留時間が5分より小さいと、フロックの形成が十分ではなく、細かい粒子が減らない場合があり、20分より大きいと、処理効率が低下する場合がある。また、高分子凝集剤添加槽16においてバッチ式で水の凝集処理が行われてもよい。この場合、処理時間は5分以上15分以下の範囲であることが好ましく、5分以上10分以下の範囲であることがより好ましい。
【0063】
凝集処理工程における処理する水の温度としては、通常、10℃以上30℃以下の範囲で行われ、好ましくは、15℃以上25℃以下の範囲で行われる。
【0064】
沈殿槽18に送液された処理液は、沈殿槽18において自然沈降分離によって、フロックが濃縮された沈殿物(汚泥スラリ)と分離液とに分離される(固液分離工程)。なお、固液分離工程において、凝集沈殿処理の代わりに加圧浮上処理等を行ってもよいが、汚泥の発生量の点から凝集沈殿処理および加圧浮上処理のうち少なくとも1つを行うことが好ましい。なお、加圧浮上処理とは、加圧水が減圧されることにより加圧状態で溶け込んだ空気が微細気泡となって放出される特性を利用した水処理方法であり、加圧浮上槽内に加圧水を流入させ、発生した微細気泡に水内の浮遊物質を付着させ、浮遊物質を浮上分離させる処理方法である。
【0065】
沈殿槽18において汚泥スラリと分離された分離液(凝集処理水)は、生物処理装置20へ送液される。生物処理装置20において分離液に対して生物処理が行われ、溶存有機物が除去される(生物処理工程)。生物処理では、例えば、生物処理槽で活性汚泥に生息するバクテリア等で溶存有機物が分解処理され、次の汚泥沈殿槽で自然沈降等により、活性汚泥と上澄み水に分離される。
【0066】
生物処理装置20において分離された上澄み水(生物処理水)は、活性炭吸着処理装置22へ送液される。活性炭吸着処理装置22において上澄み水に対して活性炭吸着処理が行われ、活性炭により上澄み水に含まれるCOD成分が主に吸着除去される(活性炭吸着処理工程)。
【0067】
活性炭吸着処理の前に、生物処理装置20において分離された上澄み水(生物処理水)のpHを4以上6以下の範囲に調整してもよい。pHの調整方法は、特に制限はなく、活性炭吸着処理装置22の前段側にpH調整槽等を設けて行ってもよいし、生物処理装置20と活性炭吸着処理装置22とを接続する配管等へのライン注入によって行ってもよい。pHの調整は、酸またはアルカリの添加により行えばよい。
【0068】
活性炭吸着処理装置22としては、活性炭による吸着処理を行うものであればよく、特に制限はないが、例えば、多段流動床式活性炭吸着装置、固定床式活性炭吸着装置等を用いればよいが、運転管理および吸着効率等の点から多段流動床式活性炭吸着装置が好ましい。
【0069】
用いる活性炭としては特に制限はないが、石炭系、ヤシガラ系等の粉末活性炭、粒状活性炭等を用いればよい。
【0070】
活性炭吸着処理工程において活性炭吸着処理された処理水は、再利用あるいは河川等に放流される。必要に応じて、活性炭吸着処理の後に砂ろ過処理等が行われてもよい。
【0071】
一方、沈殿槽18において分離液と分離された汚泥スラリは、ポンプ等にて例えば汚泥濃縮装置等に送液される。汚泥濃縮装置において汚泥スラリは水分である汚泥分離液と固形分とに分離される(分離工程)。汚泥濃縮装置においては、例えば6時間以上12時間以下程度をかけて、自然沈降にて濃縮される。濃縮前の固形分の固形分濃度は0.5質量%以上1.5質量%以下程度である。また、濃縮後の固形分の固形分濃度は2.0質量%以上4.0質量%以下程度である。濃縮後の固形分は、例えば脱水装置で脱水処理された(脱水処理工程)後、産業廃棄物の汚泥として処理される。なお、脱水後の汚泥ケーキの固形分濃度は30質量%以上60質量%以下程度である。なお、汚泥濃縮装置および脱水装置で発生した濾過液である汚泥分離液は、トナー製造工程で発生した新たな原水と混合された後、上述の水処理方法で処理されてもよい。
【0072】
脱水装置としては、加圧葉状濾過機、加圧ヌッチェ等の加圧濾過機、フィルタプレス、加圧浮上機、真空濾過機等が挙げられるが、通常は、フィルタプレスが用いられる。また、発生する汚泥の量が減少すること、処理時間が短縮すること、凝集剤の量が減少すること、装置のメンテナンス性等の点から脱水処理工程の前に遠心分離装置を使用した遠心濃縮により脱水してもよい。
【0073】
本実施形態に係る水処理装置および水処理方法により、凝集処理水の着色や、この凝集処理水を生物処理あるいは活性炭吸着処理を行った処理水の着色が抑制され、水質が安定的に維持され、環境により配慮された水処理が行われる。また、無機系凝集剤の使用量が削減される。
【0074】
図2には本実施形態に係る水処理を行うための水処理装置の他の例の概略構成を示す。図2の水処理装置3は、金属塩添加手段としての金属塩添加槽12の前段側に無機系凝集剤添加手段としての無機系凝集剤添加槽14を備える。
【0075】
水処理装置3において、フェントン処理装置10、無機系凝集剤添加槽14、金属塩添加槽12、高分子凝集剤添加槽16、沈殿槽18、生物処理装置20、活性炭吸着処理装置22の入口と出口とがそれぞれ直列に配管等を介して接続されている。
【0076】
トナー製造工程から排出される、キレート化剤およびエステル系重合体のうち少なくとも1つを含む原水に対しては、まずフェントン処理が行われる(フェントン処理工程)。
【0077】
フェントン処理が行われたフェントン処理水は、凝集処理装置24へ送液され、凝集剤が添加されてフロックを成長させ、凝集処理が行われる(凝集処理工程)。まず、無機系凝集剤添加槽14において撹拌羽根等の撹拌手段により急速撹拌されながらポンプ等により無機系凝集剤が添加され、凝集反応が行われる(無機系凝集剤添加工程)。
【0078】
その後、凝集反応が行われた凝集反応液は、金属塩添加槽12に送液される。金属塩添加槽12において、凝集反応液に対して、撹拌羽根等の撹拌手段により撹拌されながらポンプ等により金属塩が添加され、フェントン処理で生成した二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩が形成される(金属塩添加工程)。このとき、金属塩反応液は酸またはアルカリ等によりpH6以上8以下に調整されることが好ましい。
【0079】
金属塩が添加されて難溶塩が形成された金属塩添加水は、高分子凝集剤添加槽16に送液される。高分子凝集剤添加槽16において、必要に応じて高分子凝集剤が添加され、金属塩添加槽12から移送された金属塩添加水に対して撹拌羽根等の撹拌手段により緩速撹拌が行われ、水中の懸濁物質が凝集したフロックが形成される(フロック形成工程)。このフロック中には、主に、金属塩添加工程において形成された難溶塩、トナー製造において使用された着色剤、離型剤、トナー粒子等が含まれている。フロックは、緩速撹拌されることにより成長する。なお、無機系凝集剤添加槽14と金属塩添加槽12と高分子凝集剤添加槽16とを一体化した槽を使用して、1つの槽内で無機系凝集剤添加工程と、金属塩添加工程と、フロック形成工程とが行われてもよい。
【0080】
高分子凝集剤添加槽16においてフロック形成された処理液は、次に沈殿槽18に送液される。沈殿槽18に送液された処理液は、沈殿槽18において自然沈降分離によって、フロックが濃縮された沈殿物(汚泥スラリ)と分離液とに分離される(固液分離工程)。
【0081】
沈殿槽18において汚泥スラリと分離された分離液は、生物処理装置20へ送液されて、生物処理が行われ(生物処理工程)、生物処理装置20において分離された上澄み水は、活性炭吸着処理装置22へ送液されて、活性炭吸着処理が行われる(活性炭吸着処理工程)。
【0082】
図2に示す水処理装置および水処理方法によると、図1の方法に比べて、化学的酸素要求量(COD−Mn)がより低下する等の利点がある。
【0083】
本発明の実施の形態に係る水処理装置および水処理方法は、キレート化剤およびエステル系重合体のうち少なくとも1つを使用する静電荷像現像用トナーの製造工程から排出される水を処理対象とするが、乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法などの各種化学的トナー製造方法による製造工程から排出される水の処理に好ましく適用される。乳化重合法では、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させて形成された樹脂分散液と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を水系溶媒中で撹拌、混合しながら、凝集、加熱融合させ、所定の粒径、粒度分布、形状、構造を有する着色樹脂粒子であるトナー粒子を作製する。乳化重合法は、トナーの原材料となる樹脂粒子の製造工程と、着色剤分散液、離型剤分散液等の分散液の製造工程と、現像用トナーの製造工程とに大きく分けられる。以下に、それぞれについて例を挙げて説明する。
【0084】
<静電荷像現像用トナー製造工程>
(樹脂粒子の製造工程)
樹脂粒子を生成するには、通常、重合性単量体と界面活性剤とを水に加え、撹拌してエマルションとする。重合性単量体エマルションが生成したら、該エマルションの好ましくは25質量%以下(すなわち、少量のエマルション)と、遊離基開始剤とを、水相に加えて混合し、所望の反応温度で種重合を開始する。種粒子の生成後、この種粒子含有組成物にさらに残りのエマルションを追加し、所定の温度で、所定の時間、重合を続けて重合を完了し、樹脂粒子(樹脂粒子分散液)を生成させる。この樹脂粒子の製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、樹脂粒子等の固形分を含有する樹脂粒子分散液、界面活性剤水溶液等が排出される。また、樹脂としてエステル系重合体を使用した場合、この樹脂粒子の製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、エステル系重合体含有溶液が排出される。樹脂粒子が生成したら、着色剤分散液、離型剤分散液等とともに凝集させて凝集体粒子とし、次にこれを融合させてトナー粒子とする。
【0085】
前記重合性単量体の種類としては、遊離基開始剤と反応しうるものであれば特に制限はない。重合性単量体の具体例としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類等が挙げられ、これらの重合性単量体は重合されて、単独重合体あるいは共重合体とされる。
【0086】
また、ポリエステル類、ポリウレタン類のような樹脂を界面活性剤とともに水系媒体中でせん断し、分散させてもよい。また、樹脂粒子として、アンモニア成分を含むものも用いられる。
【0087】
樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤を使用すればよく、一般的にはアニオン系界面活性剤が、分散力が強く、樹脂粒子の分散に優れているため、好ましく用いられる。非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0088】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類;スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;などが挙げられる。
【0089】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;などが挙げられる。
【0090】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類;などが挙げられる。
【0091】
遊離基開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0092】
本実施形態において、樹脂粒子の大きさは、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上1μm以下程度である。
【0093】
本実施形態に用いられる結晶性ポリエステル樹脂や非晶性ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成されることが好ましい。なお、前記ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0094】
ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。一方、DSCにおいて階段状の吸熱量変化が認められる樹脂は、「非晶性ポリエステル樹脂」を意味する。
【0095】
前記多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるが、この限りではない。
【0096】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、およびこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
さらに、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有してもよい。2重結合を持つジカルボン酸は、2重結合を介して、ラジカル的に架橋結合させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いられる。当該ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でもコスト等の点で、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0098】
前記多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類等が挙げられる。これら多価アルコールは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
なお、非晶性ポリエステル樹脂の場合は、これら多価アルコール中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が望ましく、さらには芳香族ジオールがより望ましい。一方、結晶性ポリエステル樹脂の場合は、脂肪族ジオールが望ましく、主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオールがより望ましい。前記脂肪族ジオールが分岐型の場合、ポリエステル樹脂および低温定着性が得られない場合がある。また、炭素数が7未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合、融点が高くなり、低温定着が困難となることがある一方、20を超えると実用上の材料の入手が困難となり易い。前記炭素数としては14以下であることがより望ましい。
【0100】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に好適に用いられる脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0101】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる多価アルコール成分のうち、前記脂肪族ジオール成分の含有量が80モル%以上であることが望ましく、より好適には、90モル%以上である。前記脂肪族ジオール成分の含有量が80モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、良好な耐トナーブロッキング性、画像保存性および低温定着性が得られない場合がある。
【0103】
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用してもよい。
【0104】
ポリエステル樹脂は、前記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造すればよい。例えば、前記多価アルコールおよび多価カルボン酸に、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサ等を備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150℃以上250℃以下で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造すればよい。
【0105】
このポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒等が挙げられる。上記触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01質量%以上1質量%以下とすることが好ましい。
【0106】
本実施形態のトナーに使用される非晶性ポリエステル樹脂の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5,000以上200,000以下の範囲であることが望ましく、より好適には7,000以上100,000以下の範囲であり、数平均分子量(Mn)は2,000以上10,000以下の範囲であることが望ましく、分子量分布Mw/Mnは1.5以上50以下の範囲であることが望ましく、さらに好適には2以上10以下の範囲である。
【0107】
また、結晶性ポリエステル樹脂については、重量平均分子量(Mw)が5,000以上70,000以下であることが望ましく、さらに好適には15,000以上50,000以下の範囲であり、数平均分子量(Mn)は2,000以上20,000以下の範囲であることが望ましく、分子量分布Mw/Mnは1.5以上10以下の範囲であることが望ましく、さらに好適には2.0以上4.0以下の範囲である。
【0108】
(着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程)
着色剤分散液は、着色剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。同様にして、離型剤分散液は、離型剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。この着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、着色剤等の固形分を含有する着色剤分散液や、界面活性剤、離型剤等の固形分を含有する離型剤分散液、界面活性剤水溶液等が排出される。
【0109】
着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカライトグリーンオキサレート、などの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などが挙げられる。これらの着色剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
また、着色剤分散液中の着色剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0111】
また離型剤として働くワックスの種類としては特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス類;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;などが挙げられる。
【0112】
また、離型剤分散液中の離型剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0113】
界面活性剤としては、上記樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤と同様のものが挙げられる。
【0114】
(トナーの製造工程)
上記調製法により得られた樹脂粒子は、次のような方法でトナーの調製に用いられる。上記調製法により得られた樹脂粒子と、着色剤分散液と、離型剤分散液と、必要に応じて凝集剤と、必要に応じて帯電制御剤と、および必要に応じて他の添加剤とを混合し、得られた混合物を樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)近辺の温度、好ましくは、樹脂粒子のTg±10℃で、凝集体を生成するのに効果的な時間、例えば1時間以上8時間以下加熱して、トナー大の凝集体を生成する。次に、この凝集体懸濁液を、樹脂粒子のTgまたはそれより高い温度、好ましくは樹脂粒子のTg+40℃、例えば約60℃以上約120℃以下に加熱して合体または融合させてトナー粒子を造粒し、このトナー粒子をろ過などの手段で母液から分離して、イオン交換水などで洗浄(洗浄工程)した後、乾燥する。
【0115】
樹脂粒子は、通常トナーの結着樹脂として用いられ、トナーの固形分に対して75質量%以上98質量%以下程度トナー内に存在する。
【0116】
着色剤は、通常トナー中に、着色に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して1質量%以上15質量%以下程度、好ましくは3質量%以上10質量%以下程度存在する。
【0117】
離型剤として働くワックス類の好ましい量としては、トナーの固形分に対して、5質量%以上20質量%以下程度である。
【0118】
必要に応じて使用される凝集剤は、融合に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.01質量%以上10質量%以下程度を用いればよい。使用する凝集剤としては、一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のアニオン系界面活性剤類;塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類;塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム等の塩類;等が挙げられるが、これらに限るものではない。好ましい凝集剤としては、硝酸等の窒素成分を有するものが挙げられる。
【0119】
また、凝集体を生成する凝集工程等において、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物(キレート化剤)が用いられることがある。
【0120】
帯電制御剤は、帯電させるのに効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.1質量%以上5質量%以下で使用してもよい。適当な帯電制御剤としては、アルキルピリジニウムハロゲン化物類、重硫酸塩類、シリカ等の帯電制御剤類、アルミニウム錯体のような陰帯電制御剤等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0121】
その他必要に応じて添加剤として、無機粒子等を湿式添加してもよい。湿式添加する無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど、通常トナー表面の外添剤として使用される全てのものを、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基等で水に分散して、シリカ等の無機粒子分散液として湿式添加してもよい。
【0122】
本実施形態において使用される無機粒子の分散液中の大きさは、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、4nm以上150nm以下程度である。
【0123】
以上のような樹脂粒子の製造工程、着色剤分散液の製造工程、離型剤分散液の製造工程、トナー製造工程等の製造工程(トナーの洗浄工程を含む)から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、着色剤、離型剤、無機粒子、トナー等の固形分を含有する界面活性剤水溶液、樹脂粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液、無機粒子分散液、トナー分散液、装置洗浄水等の界面活性剤含有液が排出される。また、凝集体を生成する凝集工程等において、キレート化剤を用いた場合に、この製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、キレート化剤含有溶液が発生することがある。これらの原水は原水槽に集められ、上記水処理方法による処理が施される。
【実施例】
【0124】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0125】
(樹脂粒子分散液1の調製)
スチレン 320質量部
n−ブチルアクリレート 80質量部
アクリル酸 10質量部
ドデカンチオール 10質量部
この溶液420質量部と、非イオン性界面活性剤(三洋化成社製、ノニポール400)6質量部、およびアニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC)10質量部とをイオン交換水550質量部に溶解した溶液をフラスコ中に入れて分散、乳化し、10分間ゆっくりと撹拌、混合しながら、過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で充分に置換してから撹拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、樹脂粒子分散液1を得た。
【0126】
樹脂粒子分散液1で得られた樹脂粒子は、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で樹脂粒子の体積平均粒径(D50)を測定したところ155nmであり、示差走査熱量計(島津制作所社製、DSC−50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移点を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製、HLC−8020)を用い、THFを溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ33,000であった。
【0127】
(樹脂粒子分散液2の調製)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 310質量部
テレフタル酸 116質量部
フマル酸 12質量部
ドデセニルコハク酸 54質量部
Ti(OBu) 0.05質量部
加熱乾燥した三口フラスコに、上記原料を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌にて180℃で5時間還流を行った。その後、反応系内に生成した水を減圧蒸留にて留去しながら、240℃まで徐々に昇温を行った。さらに240℃で2時間脱水縮合反応を継続し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量19,000になったところで、減圧蒸留を停止し、非晶性ポリエステル樹脂を得た。分子量分布Mw/Mnは2.5であった。
【0128】
次いで、この非晶性ポリエステル樹脂100質量部と、酢酸エチル50質量部と、イソプロピルアルコール25質量部と、10質量%アンモニア水溶液5質量部とをセパラブルフラスコに入れ、充分混合、溶解した後、40℃で加熱撹拌しながら、イオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下した。液が白濁した後、送液速度25g/minに上げて転相させ、送液量が135質量部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、樹脂粒子分散液2を得た。得られたポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は132nm、ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は38質量%であった。
【0129】
(着色剤分散液の調製)
顔料 150質量部
アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 20質量部
イオン交換水 400質量部
以上を混合して、アルティマイザーにて分散処理し、着色剤分散液を調製した。なお、顔料は、イエロー用としてはC.I.ピグメントイエロー74(大日精化社製)、シアン用としてはC.I.ピグメントブルー15:3(BASF社製)、マゼンタ用としてはC.I.ピグメントレッド122(大日精化社製)、ブラック用としてはカーボンブラック(キャボット社製)をそれぞれ使用した。
【0130】
(離型剤分散液の調製)
ポリエチレンワックス(東洋ペトロライト(株)製、ポリワックス725)50質量部
カチオン系界面活性剤(花王(株)製、サニゾールB50) 5質量部
イオン交換水 200質量部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザ(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザで分散処理し、体積平均粒径が550nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液を調製した。
【0131】
(静電荷像現像用トナー1の調製)
[凝集粒子の調製]
樹脂粒子分散液1 200質量部
着色剤分散液 30質量部
離型剤分散液 70質量部
カチオン系界面活性剤(花王(株)製、サニゾールB50) 1.5質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザ(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が約5μmである凝集粒子(体積:95cm)が形成されていることが確認された。凝集時に、キレート剤として、エチレンジアミンジコハク酸・3Na(キレスト(株)製)0.2質量部を用いた。
【0132】
[付着粒子の調製]
調製した上記凝集粒子の分散液に、上記樹脂粒子分散液1を緩やかに60質量部追加した。なお、前記樹脂粒子分散液1に含まれる樹脂粒子の体積は25cmであった。そして、加熱用オイルバスの温度を50℃に上げて1時間保持した。光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.7μmである付着粒子が形成されていることが確認された。
【0133】
その後、調製した上記付着粒子の分散液に、アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製)3質量部を追加した後、前記ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら、105℃まで加熱し、3時間保持した。そして、冷却後、反応生成物を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、静電荷像現像用トナー1を得た。
【0134】
(静電荷像現像用トナー2の調製)
樹脂粒子分散液1の代わりに樹脂粒子分散液2を、エチレンジアミンジコハク酸・3Na(キレスト(株)製)の代わりにヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸・3Na(キレスト(株)製)を用いた以外は、静電荷像現像用トナー1と同様にして、静電荷像現像用トナー2を得た。
【0135】
(処理対象水Aの組成)
処理対象水Aとは、上記静電荷像現像用トナー1のようなトナー製造工場から排出される水であり、その中には、着色剤分散液、離型剤(ワックス)分散液、樹脂粒子分散液1、界面活性剤水溶液、キレート化剤含有溶液等が含まれる水である。処理対象水Aの主な組成についてトナーの作製に用いた材料より、以下に示すものと推定される。また、この水の化学的酸素要求量(COD−Mn)の測定結果は260mg/Lであった。
アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 0.5質量%
樹脂粒子 1.0質量%
着色剤 2.0質量%
ワックス(ポリワックス725、東洋ペトロライト(株)製) 1.0質量%
エチレンジアミンジコハク酸・3Na(キレスト(株)製) 0.01質量%
水 95.49質量%
【0136】
化学的酸素要求量(COD−Mn)は、JIS K 0102 17にて定められている方法で測定した。具体的には、試料に酸化剤を加え、一定の条件の下で反応させ、そのとき消費した酸化剤の量を酸素の量に換算して表す試験方法である。
【0137】
(処理対象水Bの組成)
処理対象水Bは、処理対象水Aと組成は同じであるがその濃度が異なる。処理対象水Bの主な組成についてトナーの作製に用いた材料より、以下に示すものと推定される。また、この水の化学的酸素要求量(COD−Mn)の測定結果は1,060mg/Lであった。
アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 2.0質量%
樹脂粒子 1.0質量%
着色剤 2.0質量%
ワックス(ポリワックス725、東洋ペトロライト(株)製) 1.0質量%
エチレンジアミンジコハク酸・3Na(キレスト(株)製) 0.06質量%
水 93.94質量%
【0138】
(処理対象水Cの組成)
処理対象水Cは、処理対象水Aと組成は同じであるがその濃度が異なる。処理対象水Cの主な組成についてトナーの作製に用いた材料より、以下に示すものと推定される。また、この水の化学的酸素要求量(COD−Mn)の測定結果は2,100mg/Lであった。
アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 4.0質量%
樹脂粒子 1.0質量%
着色剤 2.0質量%
ワックス(ポリワックス725、東洋ペトロライト(株)製) 1.0質量%
エチレンジアミンジコハク酸・3Na(キレスト(株)製) 0.10質量%
水 91.90質量%
【0139】
(処理対象水Dの組成)
処理対象水Dとは、上記静電荷像現像用トナー2のようなトナー製造工場から排出される水であり、その中には、着色剤分散液、離型剤(ワックス)分散液、樹脂粒子分散液2、界面活性剤水溶液が含まれる水である。処理対象水Dの主な組成についてトナーの作製に用いた材料より、以下に示すものと推定される。また、この水の化学的酸素要求量(COD−Mn)の測定結果は1,250mg/Lであった。
アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 0.5質量%
樹脂粒子 1.0質量%
着色剤 2.0質量%
ワックス(ポリワックス725、東洋ペトロライト(株)製) 1.0質量%
ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸・3Na(キレスト(株)製)
0.01質量%
水 95.49質量%
【0140】
(処理対象水Eの組成)
処理対象水Eは、処理対象水Dと組成は同じであるがその濃度が異なる。処理対象水Eの主な組成についてトナーの作製に用いた材料より、以下に示すものと推定される。また、この水の化学的酸素要求量(COD−Mn)の測定結果は3,000mg/Lであった。
アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 2.0質量%
樹脂粒子 2.0質量%
着色剤 2.0質量%
ワックス(ポリワックス725、東洋ペトロライト(株)製) 1.0質量%
ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸・3Na(キレスト(株)製)
0.06質量%
水 92.94質量%
【0141】
(処理対象水Fの組成)
処理対象水Fは、処理対象水Dと組成は同じであるがその濃度が異なる。処理対象水Fの主な組成についてトナーの作製に用いた材料より、以下に示すものと推定される。また、この水の化学的酸素要求量(COD−Mn)の測定結果は6,000mg/Lであった。
アニオン系界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) 4.0質量%
樹脂粒子 4.0質量%
着色剤 2.0質量%
ワックス(ポリワックス725、東洋ペトロライト(株)製) 1.0質量%
ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸・3Na(キレスト(株)製)
0.10質量%
水 88.90質量%
【0142】
<実施例1>
図1に示す水処理装置を用いて、処理対象水Aの処理を行った。処理対象水A100質量部に、フェントン処理として、硫酸第一鉄の水溶液を500mg/L(2価の鉄イオンとして)投入した後、塩酸にてpH2.5に調整した。ついで過酸化水素の水溶液を5,000mg/L(過酸化水素として)投入し、2時間撹拌し、フェントン反応を行った。pH9.5として、還元処理を行った。なお、TOC計(全有機体炭素計)((株)島津製作所製)により測定したところ、フェントン処理水中の二酸化炭素の量は(基準の濃度)220mg/L、イオンクロマトグラフ(Dionex Corporation製)により測定したところ、有機酸の量は400mg/Lであった。
【0143】
その後、金属塩添加処理として、フェントン処理水100質量部に対し、水酸化カルシウムの水溶液を100mg/L(カルシウム分として)添加し、15分間撹拌した。
【0144】
次に、凝集沈殿処理として金属塩添加水100質量部に対し、その他の工場排水を70質量部追加した後、塩化第二鉄の38質量%水溶液を200mg/L(鉄イオンとして)投入し、その後、凝集pHをpH6に調整し、撹拌速度500rpm、滞留時間15分にて凝集反応を行った。次いでアニオン性高分子凝集剤(サンフロック CH−799P、三洋化成工業株式会社製)を10mg/L添加し、撹拌速度250rpm、滞留時間15分にてフロック形成を行い、フロックを沈澱槽にて沈降分離し、分離液を得た。
【0145】
その後、分離液のpHを7に調整し、生物処理を行った。生物処理槽(曝気槽)に、前もって汚泥を吸収させた充填材、上澄みを取り除いた汚泥を投入し、分離液を通水した。曝気槽には、栄養塩としてリン酸カリウムを添加した。曝気槽を通った水は、汚泥沈殿槽で生物汚泥と分離され、上澄み水として汚泥沈殿槽の出口から回収した。
【0146】
その後、生物処理水(上澄み水)のpHを5に調整して活性炭吸着処理を行った。活性炭吸着処理は、多段流動床式活性炭吸着装置(段数10段)に生物処理水を通水し、処理水のCODMn値を測定した(測定方法:JIS K0102 17)。また、処理水の色度を白金コバルト吸光光度法の色度計(笠原理化工業(株)製)で測定した。結果を表1に示す。
【0147】
<実施例2>
処理対象水Bについて、水酸化カルシウムの添加量を300mg/L、塩化第二鉄の添加量を250mg/L、アニオン性高分子凝集剤の添加量を15mg/Lとした以外は、実施例1と同様にして処理を行った。TOC計(全有機体炭素計)により測定したところ、フェントン処理水中の二酸化炭素の量は540mg/L、イオンクロマトグラフィ法により測定したところ、有機酸の量は1,000mg/Lであった。結果を表1に示す。
【0148】
<実施例3>
処理対象水Cについて、水酸化カルシウムの添加量を600mg/L、塩化第二鉄の添加量を500mg/L、アニオン性高分子凝集剤の添加量を20mg/Lとした以外は、実施例1と同様にして処理を行った。TOC計(全有機体炭素計)により測定したところ、フェントン処理水中の二酸化炭素の量は700mg/L、イオンクロマトグラフィ法により測定したところ、有機酸の量は1,300mg/Lであった。結果を表1に示す。
【0149】
<実施例4>
処理対象水Aについて、凝集pHをpH9に調整した以外は、実施例1と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0150】
<実施例5>
処理対象水Bについて、凝集pHをpH9に調整した以外は、実施例2と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0151】
<実施例6>
処理対象水Cについて、凝集pHをpH9に調整した以外は、実施例3と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0152】
<実施例7>
図2に示す水処理装置を用いて、処理対象水Aの処理を行った。処理対象水A100質量部に、フェントン処理として、硫酸第一鉄の水溶液を500mg/L(2価の鉄イオンとして)投入した後、塩酸にてpH2.5に調整した。ついで過酸化水素の水溶液を5,000mg/L(過酸化水素として)投入し、2時間撹拌し、フェントン反応を行った。
【0153】
その後、凝集沈殿処理としてフェントン処理水100質量部に対し、その他の工場排水を70質量部追加した後、塩化第二鉄の38質量%水溶液を200mg/L(鉄イオンとして)投入し、その後、凝集pHをpH6に調整し、撹拌速度500rpm、滞留時間15分にて凝集反応を行った。次に、金属塩添加処理として、凝集反応液100質量部に対し、水酸化カルシウムの水溶液を100mg/L(カルシウム分として)添加し、15分間撹拌した。次いでアニオン性高分子凝集剤(サンフロック CH−799P、三洋化成工業株式会社製)を10mg/L添加し、撹拌速度250rpm、滞留時間15分にてフロック形成を行い、フロックを沈澱槽にて沈降分離し、分離液を得た。その後、分離液のpHを7に調整し、以下、実施例1と同様にして、生物処理、活性炭吸着処理を行った。結果を表1に示す。
【0154】
<実施例8>
処理対象水Bについて、水酸化カルシウムの添加量を300mg/L、塩化第二鉄の添加量を250mg/L、アニオン性高分子凝集剤の添加量を15mg/Lとした以外は、実施例7と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0155】
<実施例9>
処理対象水Cについて、水酸化カルシウムの添加量を600mg/L、塩化第二鉄の添加量を500mg/L、アニオン性高分子凝集剤の添加量を20mg/Lとした以外は、実施例7と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0156】
<実施例10>
処理対象水Aについて、凝集pHをpH9に調整した以外は、実施例7と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0157】
<実施例11>
処理対象水Bについて、凝集pHをpH9に調整した以外は、実施例8と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0158】
<実施例12>
処理対象水Cについて、凝集pHをpH9に調整した以外は、実施例9と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0159】
<実施例13>
処理対象水Bについて、凝集pHをpH5に調整した以外は、実施例2と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0160】
<実施例14>
処理対象水Bについて、凝集pHをpH10に調整した以外は、実施例2と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0161】
<比較例1>
図3に示す水処理装置5を用いて、処理対象水Aの処理を行った。図3の水処理装置5において、フェントン処理装置50、無機系凝集剤添加槽54、高分子凝集剤添加槽56、沈殿槽58、生物処理装置60、活性炭吸着処理装置62の入口と出口とがそれぞれ直列に接続されている。処理対象水Aについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0162】
<比較例2>
処理対象水Bについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0163】
<比較例3>
処理対象水Cについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例3と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0164】
<比較例4>
処理対象水Aについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0165】
<比較例5>
処理対象水Bについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例5と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0166】
<比較例6>
処理対象水Cについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例6と同様にして処理を行った。結果を表1に示す。
【0167】
<実施例15>
処理対象水Dについて、凝集pHをpH5に調整した以外は、実施例1と同様にして処理を行った。TOC計(全有機体炭素計)により測定したところ、フェントン処理水中の二酸化炭素の量は214mg/L、イオンクロマトグラフィ法により測定したところ、有機酸の量は1,400mg/Lであった。結果を表2に示す。
【0168】
<実施例16>
処理対象水Eについて、凝集pHをpH5に調整した以外は、実施例2と同様にして処理を行った。TOC計(全有機体炭素計)により測定したところ、フェントン処理水中の二酸化炭素の量は540mg/L、イオンクロマトグラフィ法により測定したところ、有機酸の量は2,000mg/Lであった。結果を表2に示す。
【0169】
<実施例17>
処理対象水Fについて、凝集pHをpH5に調整した以外は、実施例3と同様にして処理を行った。TOC計(全有機体炭素計)により測定したところ、フェントン処理水中の二酸化炭素の量は700mg/L、イオンクロマトグラフィ法により測定したところ、有機酸の量は2,800mg/Lであった。結果を表2に示す。
【0170】
<実施例18>
処理対象水Dについて、凝集pHをpH8に調整した以外は、実施例1と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0171】
<実施例19>
処理対象水Eについて、凝集pHをpH8に調整した以外は、実施例2と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0172】
<実施例20>
処理対象水Fについて、凝集pHをpH8に調整した以外は、実施例3と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0173】
<実施例21>
処理対象水Dについて、凝集pHをpH5に調整した以外は、実施例7と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0174】
<実施例22>
処理対象水Eについて、凝集pHをpH5に調整した以外は、実施例8と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0175】
<実施例23>
処理対象水Fについて、凝集pHをpH5に調整した以外は、実施例9と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0176】
<実施例24>
処理対象水Dについて、凝集pHをpH8に調整した以外は、実施例7と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0177】
<実施例25>
処理対象水Eについて、凝集pHをpH8に調整した以外は、実施例8と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0178】
<実施例26>
処理対象水Fについて、凝集pHをpH8に調整した以外は、実施例9と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0179】
<実施例27>
処理対象水Eについて、凝集pHをpH4に調整した以外は、実施例8と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0180】
<実施例28>
処理対象水Eについて、凝集pHをpH9に調整した以外は、実施例8と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0181】
<実施例29>
処理対象水Eについて、凝集pHをpH10に調整した以外は、実施例8と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0182】
<比較例7>
処理対象水Dについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例15と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0183】
<比較例8>
処理対象水Eについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例16と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0184】
<比較例9>
処理対象水Fについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例17と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0185】
<比較例10>
処理対象水Dについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例18と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0186】
<比較例11>
処理対象水Eについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例19と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0187】
<比較例12>
処理対象水Fについて、フェントン処理水に対して水酸化カルシウムの水溶液を添加しなかった以外は、実施例20と同様にして処理を行った。結果を表2に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
【表2】

【0190】
実施例1〜29では、フェントン処理の後、金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成することにより、フェントン処理、凝集沈殿処理、生物処理および活性炭吸着処理を行った処理水の着色が抑制された。また、無機系凝集剤の使用量が削減された。一方、比較例1〜12では、処理水の色度が高く、これを低下させるのに、無機系凝集剤を多量に使用する必要性があった。
【符号の説明】
【0191】
1,3,5 水処理装置、10,50 フェントン処理装置、12 金属塩添加槽、14,54 無機系凝集剤添加槽、16,56 高分子凝集剤添加槽、18,58 沈殿槽、20,60 生物処理装置、22,62 活性炭吸着処理装置、24 凝集処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体のうち少なくとも1つを含む水を処理対象とし、
前記水のフェントン処理を行うフェントン処理手段と、
前記フェントン処理を行ったフェントン処理水に金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成する金属塩添加手段と、
を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記金属塩添加手段の前段側あるいは後段側において無機系凝集剤を添加する無機系凝集剤添加手段と、前記無機系凝集剤の添加により形成されたフロックを固液分離する固液分離手段と、を有する凝集処理手段を有することを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記凝集処理手段の後段側において生物処理を行う生物処理手段を有することを特徴とする請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記生物処理手段の後段側において活性炭吸着処理を行う活性炭吸着処理手段を有することを特徴とする請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物およびエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体のうち少なくとも1つを含む水を処理対象とし、
前記水のフェントン処理を行うフェントン処理工程と、
前記フェントン処理を行ったフェントン処理水に金属塩を添加し、二酸化炭素および有機酸のうち少なくとも1つと難溶塩を形成する金属塩添加工程と、
を含むことを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
前記金属塩添加工程の前段側あるいは後段側において無機系凝集剤を添加する無機系凝集剤添加工程と、前記無機系凝集剤の添加により形成されたフロックを固液分離する固液分離工程と、を含む凝集処理工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記水が金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む場合に、前記凝集処理工程における凝集pHをpH6以上9以下に調整して処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記水がエステル結合を分子の主鎖中に有する重合体を含む場合に、前記凝集処理工程における凝集pHをpH5以上8以下に調整して処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−50887(P2011−50887A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203332(P2009−203332)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】