説明

水分散型粘着剤組成物、その製造方法、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】水分散型共重合体の分散性に優れ、接着性が高く、高い耐熱性および耐湿性を有する水分散型粘着剤組成物、その水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた粘着型光学フィルム、画像表示装置、および、水分散型粘着剤組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびリン酸基含有ビニルモノマーを必須成分として含有し、必須成分と共重合可能な共重合性ビニルモノマーを任意成分として含有するモノマー成分と、疎水化処理されたシリカ微粒子とを配合して、シリカ微粒子がモノマー成分中に分散される分散液を調製し、次いで、分散液を、油滴の体積基準のメジアン径が500nm以下となるように乳化させて、乳化液を調製し、次いで、乳化液中のモノマー成分を開始剤の存在下で重合させることにより、水分散型粘着剤組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型粘着剤組成物、その製造方法、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大フィルムなどの光学フィルムが、各種産業用途に用いられており、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの画像表示装置に貼着して用いられている。
【0003】
画像表示装置に貼着される光学フィルムとして、光学フィルムに粘着剤を積層した粘着型光学フィルムが知られている。
【0004】
このような粘着剤は、一般に、機械強度(弾性率)が低いと、発泡を生じやすくなる。そのため、弾性率の低下を改善すべく、水分散型粘着剤に無機微粒子を配合することが検討されている。例えば、乳化重合により得られる水分散型の重合体に、コロイダルシリカを配合して、水分散型粘着剤を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、乳化重合により得られるアクリル系水分散型ポリマーに、水酸化アルミニウムおよび高分子界面活性剤を配合して、粘着組成物を得ることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−241725号公報
【特許文献2】特開2005−225976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の水分散型粘着剤においては、コロイダルシリカを単に重合体に配合するのみでは、水分散型重合体が凝集して外観不良を生じるという不具合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の水分散型粘着剤では、界面活性剤の配合により、水分散型ポリマーの分散性を向上させているが、界面活性剤を配合すると、粘着剤組成物の耐水性が低下するという不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、水分散型共重合体の分散性に優れ、接着性が高く、高い耐熱性および耐湿性を有する水分散型粘着剤組成物、その水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた粘着型光学フィルム、画像表示装置、および、水分散型粘着剤組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の水分散型粘着剤組成物は、炭素数が4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびリン酸基含有ビニルモノマーを必須成分として含有し、前記必須成分と共重合可能な共重合性ビニルモノマーを任意成分として含有するモノマー成分と、疎水化処理されたシリカ微粒子とが、前記モノマー成分100重量部に対して、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが60〜99重量部となり、前記カルボキシル基含有ビニルモノマー、前記リン酸基含有ビニルモノマーおよび前記共重合性ビニルモノマーの総量が1〜40重量部となり、前記シリカ微粒子が1〜10重量部となるように、配合して、前記シリカ微粒子が前記モノマー成分中に分散される分散液を調製し、次いで、前記分散液を、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定される油滴の体積基準のメジアン径が500nm以下となるように乳化させて、乳化液を調製し、次いで、前記乳化液中の前記モノマー成分を開始剤の存在下で重合させることにより得られることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物では、さらに、疎水性化合物が配合されることが好適である。
【0011】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物では、前記モノマー成分100重量部に対して、前記共重合性ビニルモノマーとしてアルコキシシリル基含有ビニルモノマーを0.001〜1重量部含有していることが好適である。
【0012】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物では、前記シリカ微粒子の平均粒子径が、5〜500nmであることが好適である。
【0013】
また、本発明の粘着型光学フィルムは、光学フィルムと、前記光学フィルムの少なくとも片面に積層される、上記した水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層とを備えることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の画像表示装置は、上記した粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物の製造方法は、炭素数が4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびリン酸基含有ビニルモノマーを必須成分として含有し、前記必須成分と共重合可能な共重合性ビニルモノマーを任意成分として含有するモノマー成分と、疎水化処理されたシリカ微粒子とを、前記モノマー成分100重量部に対して、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが60〜99重量部となり、前記カルボキシル基含有ビニルモノマー、前記リン酸基含有ビニルモノマーおよび前記共重合性ビニルモノマーの総量が1〜40重量部となり、前記シリカ微粒子が1〜10重量部となるように、配合して、前記シリカ微粒子をモノマー成分中に分散して、分散液を調製する工程と、前記分散液を、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定される油滴の体積基準のメジアン径が500nm以下となるように乳化させて、乳化液を調製する工程と、前記乳化液中の前記モノマー成分を開始剤の存在下で重合させる工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水分散型粘着剤組成物は、重合安定性および水分散型共重合体の分散性に優れ、外観が良好でありながら、優れた機械強度(弾性率)を確保して、発泡の抑制を図ることができる。
【0017】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物、および、その水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた粘着型光学フィルムは、接着力が高く、強固な接着を達成することができる。さらに、高い耐熱性および耐湿性を有するので、高温高湿雰囲気下での優れた耐久性を得ることができる。
【0018】
そのため、本発明の粘着型光学フィルムが用いられている本発明の画像表示装置は、高い耐熱性や耐湿性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の水分散型粘着剤組成物は、モノマー成分と、シリカ微粒子とを配合して、シリカ微粒子がモノマー成分中に分散される分散液を調製し、次いで、分散液を乳化させて、乳化液を調製し、次いで、乳化液中のモノマー成分を開始剤の存在下で重合させることにより得ることができる。
【0020】
モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびリン酸基含有ビニルモノマーを必須成分として含有し、必須成分と共重合可能な共重合性ビニルモノマーを任意成分として含有している。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数が4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステル)であって、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数4〜18の直鎖または分岐アルキル)エステルが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、好ましくは、アクリル酸ブチルが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または併用することができる。例えば、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとを併用することができ、その配合割合(重量比)は、例えば、1/99〜55/45(アクリル酸ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシル)、好ましくは、5/95〜60/40である。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、60〜99重量部、好ましくは、70〜99重量部、さらに好ましくは、80〜99重量部である。
【0023】
カルボキシル基含有ビニルモノマーは、熱架橋させるための架橋点(カルボキシル基)を導入して、粘着剤層(後述)の基板に対する接着性の向上を図るためのビニルモノマーであって、分子内にカルボキシル基を有するビニルモノマーである。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸、例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和ジカルボン酸モノエステル、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−メタクリロイルオキシエチルピロメリット酸などの不飽和トリカルボン酸モノエステル、例えば、カルボキシエチルアクリレート(β−カルボキシエチルアクリレートなど)、カルボキシペンチルアクリレートなどのカルボキシアルキルアクリレートなどが挙げられる。
【0024】
また、カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などの不飽和ジカルボン酸無水物なども挙げられる。
【0025】
これらカルボキシル基含有ビニルモノマーは、適宜、単独または併用して用いられる。
【0026】
これらカルボキシル基含有ビニルモノマーのうち、好ましくは、アクリル酸やカルボキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0027】
カルボキシル基含有ビニルモノマーのカルボキシル基濃度は、モノマー成分中、例えば、0.05〜1.50ミリモル/g、好ましくは、0.20〜0.90ミリモル/gである。カルボキシル基含有ビニルモノマーのカルボキシル基濃度を、上記した範囲にするには、カルボキシル基含有ビニルモノマーの分子量にもよるが、カルボキシル基含有ビニルモノマーの配合割合を、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.4〜41重量部、好ましくは、1.4〜25重量部に設定する。また、カルボキシル基含有ビニルモノマーの配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、上記したカルボキシル基濃度の範囲内で、例えば、0.5〜15重量部、好ましくは、0.5〜10重量部に設定することもできる。上記した範囲より少ないと、水分散型粘着剤組成物の凝集力が低下し、上記した範囲より多いと、乳化重合時の安定性および水分散型粘着剤組成物の耐水性が低下する場合がある。
【0028】
なお、カルボキシル基含有ビニルモノマーのカルボキシル基濃度は、下記式により算出される。
【0029】
カルボキシル基濃度[ミリモル/g]=1000×{(カルボキシル基含有ビニルモノマーの配合重量[g])/(カルボキシル基含有ビニルモノマーの分子量[g/モル])}/(モノマー成分重量[g])
リン酸基含有ビニルモノマーは、例えば、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートリン酸エステルであって、
【0030】
【化1】

(一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を、Rは、ポリオキシアルキレン基を、Xは、リン酸基またはその塩を示す。)
で示されるポリオキシアルキレン基としては、下記一般式(2)で表され、
【0031】
【化2】

(一般式(2)中、nは1〜4の整数、mは2以上の整数を示す。)
例えば、ポリオキシエチレン基(一般式(2)中、n=2に相当。)、ポリオキシプロピレン基(一般式(2)中、n=3に相当。)およびこれらのランダム、ブロックまたはグラフトユニットなどが挙げられ、これらオキシアルキレン基の重合度、すわわち、一般式(2)中、mは、好ましくは、4以上、通常40以下が挙げられる。
【0032】
オキシアルキレン基の重合度が高いほど、リン酸基を有する側鎖の運動性が高く、基板と迅速に相互作用することから、水分散型粘着剤組成物の基板への接着性が向上する。
【0033】
また、Xで示されるリン酸基またはその塩は、下記一般式(3)で表され、
【0034】
【化3】

(一般式(3)中、MおよびMは、それぞれ独立に、水素原子またはカチオンを示す。)
カチオンとしては、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、例えば、4級アミン類などの有機カチオンなどが挙げられる。
【0035】
また、リン酸基含有ビニルモノマーは、一般に市販されているものを用いることができ、例えば、Sipomer PAM−100(ローディア日華社製)、Phosmer PE(ユニケミカル社製)、Phosmer PEH(ユニケミカル社製)、Phosmer PEDM(ユニケミカル社製)などのモノ[ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル、例えば、Sipomer PAM−200(ローディア日華社製)、Phosmer PP(ユニケミカル社製)、Phosmer PPH(ユニケミカル社製)、Phosmer PPDM(ユニケミカル社製)などのモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステルなどが挙げられる。
【0036】
これらリン酸基含有ビニルモノマーは、単独使用または併用することができる。
【0037】
リン酸基含有ビニルモノマーのリン酸基濃度は、モノマー成分中、例えば、0.01〜0.45ミリモル/g、好ましくは、0.02〜0.20ミリモル/gである。リン酸基含有ビニルモノマーのリン酸基濃度を、上記した範囲にするには、リン酸基含有ビニルモノマーの分子量にもよるが、リン酸基含有ビニルモノマーの配合割合を、モノマー成分の総量100重量部に対して、例えば、0.4〜22重量部、好ましくは、0.8〜10重量部に設定する。また、リン酸基含有ビニルモノマーの配合割合は、モノマー成分の総量100重量部に対して、上記したリン酸基濃度の範囲内で、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは、0.5〜10重量部に設定することもできる。上記した範囲より少ないと、基板への接着力向上の効果が十分得られず、上記した範囲より多いと、乳化重合時の安定性が低下したり、水分散型粘着剤組成物の弾性率が過度に高くなることにより接着性が低下する場合がある。
【0038】
なお、リン酸基含有ビニルモノマーのリン酸基濃度は、下記式により算出される。
【0039】
リン酸基濃度[ミリモル/g]=1000×{(リン酸基含有ビニルモノマーの配合重量[g])/(リン酸基含有ビニルモノマーの分子量[g/モル])}/(モノマー成分重量[g])
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有ビニルモノマー以外の官能基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0040】
そのような官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカルボン酸アミドなどのアミド基含有不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルt−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有不飽和モノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有不飽和モノマー、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有不飽和モノマー、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和モノマー、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー、例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマーなどが挙げられる。
【0041】
さらに、上記した官能基含有ビニルモノマーとしては、多官能性モノマーが挙げられる。
【0042】
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。また、多官能性モノマーとして、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなども挙げられる。
【0043】
また、共重合性ビニルモノマーとしては、上記した官能基含有ビニルモノマーの他に、例えば、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニルモノマー、例えば、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有不飽和モノマー、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー、例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー、例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有不飽和モノマー、その他、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのビニル基含有複素環化合物、例えば、フッ素(メタ)アクリレートなどの、フッ素原子などのハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0044】
さらにまた、共重合性ビニルモノマーとしては、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーが挙げられる。アルコキシシリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーや、シリコーン系ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0045】
シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0046】
また、シリコーン系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン、例えば、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0047】
これら共重合性ビニルモノマーは、適宜、単独または併用して用いられる。
【0048】
これら共重合性ビニルモノマーのうち、好ましくは、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0049】
共重合性ビニルモノマーとしてアルコキシシリル基含有ビニルモノマーを用いることにより、ポリマー鎖にアルコキシシリル基が導入され、それら同士の反応により架橋構造を形成することができる。特に水分散型粘着剤組成物では、後述する架橋剤では不均一な架橋構造となるため、端末剥がれが起こり易くなる。しかし、アルコキシシリル基含有モノマーを用いると、均一な架橋構造を形成することができるため、基板への接着固定性を向上させることができる。また、アルコキシシリル基が基板と相互作用して、基板との接着性を高めることができる。
【0050】
共重合性ビニルモノマーは、必要により任意的に配合され、その配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、40重量部以下、好ましくは、30重量部以下、さらに好ましくは、20重量部以下である。また、共重合性ビニルモノマーが、官能基含有ビニルモノマーである場合には、その配合割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に対して、例えば、0.5〜12重量部、好ましくは、1〜8重量部である。また、共重合性ビニルモノマーがアルコキシシリル基含有ビニルモノマーである場合には、その配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部、好ましくは、0.01〜0.1重量部である。アルコキシシリル基含有ビニルモノマーが、上記した範囲より少ないと、アルコキシシリル基による架橋が不足して、水分散型接着剤組成物の凝集力の低下を招いたり、水分散型接着剤組成物と基板との接着性の向上が得られず、上記した範囲より多いと、乳化重合時の安定性低下や接着性の低下を招く場合がある。
【0051】
また、上記したモノマー成分のうち、上記したカルボキシル基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマーおよび共重合性ビニルモノマーの総量は、その配合割合が、モノマー成分100重量部に対して、1〜40重量部、好ましくは、1〜30重量部である。
【0052】
シリカ微粒子は、表面が疎水化処理されたシリカエーロゲルである。疎水化処理における処理方法は適宜選択され、例えば、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどによる処理が挙げられる。疎水化処理における処理量は、適宜選択される。表面が疎水化処理されていない場合には、通常のシリカ微粒子(未疎水化処理のシリカ)が親水性であることから、後述する分散液の乳化において、シリカ微粒子が油相(油滴)から水相に移動して、モノマー成分の油滴に内包されず、重合中に凝集するおそれがある。
【0053】
シリカ微粒子は、その1次粒子径が、例えば、5〜100nm、好ましくは、5〜70nm、さらに好ましくは、5〜50nmである。また、シリカ微粒子は、モノマー成分中に分散されている場合においては、その平均粒子径が、例えば、5〜500nm、好ましくは、10〜300nmとなる。平均粒子径が500nmを超えると、シリカ微粒子が、後述する特定メジアン径の油滴に内包されず、重合中に凝集するおそれがある。また、平均粒子径が500nmを超えると、粘着剤層が白濁して、視認性を低下させるおそれがある。一方、平均粒子径が5nmに満たないと、機械強度が低下する場合がある。なお、平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、サブミクロンアナライザー N5 ベックマンコールター社製)で測定される体積平均粒子径である。
【0054】
このようなシリカ微粒子は、通常、一般の市販品が用いられ、例えば、アエロジルシリーズ(日本アエロジル社製)が用いられる。より具体的には、アエロジルR8200(1次粒子径12nm、ヘキサメチルジシラザン処理)、アエロジルR104(1次粒子径12nm、オクタメチルシクロテトラシロキサン処理)、アエロジルR974(1次粒子径12nm、ジメチルジクロロシラン処理)、アエロジルR812(1次粒子径7nm、ヘキサメチルジシラザン処理)などが挙げられる。
【0055】
シリカ微粒子の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは、2〜9重量部である。シリカ微粒子の配合割合が上記範囲を超える場合には、水分散型粘着剤組成物の接着性が低下する。一方、シリカ微粒子の配合割合が上記範囲に満たない場合には、水分散型粘着剤組成物の機械強度が低下する。
【0056】
また、分散液には、さらに、疎水性化合物を配合させることもできる。
【0057】
疎水性化合物は、例えば、水に不溶性または難溶性で、モノマー成分に可溶性である。そのような疎水性化合物としては、例えば、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの炭素数8〜30の高級アルカン類、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの炭素数8〜30のアルキル基を有する高級アルコール類、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの炭素数8〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類、例えば、ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタンなどの炭素数8〜30のアルキル基を有するチオール類、例えば、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレートなどのポリマー類などが挙げられる。これら疎水性化合物は、単独または2種以上併用することができる。好ましくは、高級アルカン類が挙げられる。
【0058】
疎水性化合物の配合割合は、例えば、モノマー成分100重量部に対して、例えば、1〜30重量部である。
【0059】
疎水性化合物を分散液に配合させれば、後述する乳化液中の油滴を特定範囲のメジアン径に維持することができる。
【0060】
そして、本発明では、モノマー成分と、シリカ微粒子と、必要により疎水性化合物とを配合して、シリカ微粒子がモノマー成分中に分散される分散液を調製する。
【0061】
分散液を調製するには、まず、上記したモノマー成分とシリカ微粒子と必要により疎水性化合物との配合と同時に、また、これら配合の後に、例えば、ディスパー、スターラーなどの攪拌装置により攪拌する。これにより、シリカ微粒子をモノマー成分中に分散させる分散液を調製することができる。
【0062】
次いで、分散液を、油滴の体積基準のメジアン径が500nm以下となるように乳化させて、乳化液を調製する。
【0063】
乳化液の調製では、上記した分散液と水と必要により乳化剤とを配合する。そして、これらの配合と同時に、または、配合の後に、乳化装置により乳化させる。
【0064】
乳化剤は、必要により配合され、乳化に通常使用される公知の乳化剤が用いられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。
【0065】
また、乳化剤としては、これらアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(反応性基)が導入されたラジカル重合性(反応性)乳化剤(例えば、HS−10(第一工業製薬社製))などが挙げられる。
【0066】
これら乳化剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、乳化剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.2〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部である。
【0067】
乳化装置としては、例えば、油滴の体積基準のメジアン径を500nm以下とすることができれば、特に制限されず、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(PANDA 2K、NIRO−SOAVI社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)、ナノマイザー(吉田機械興業社製)、TKホモミキサー(プライミクス社製)、TKフィルミックス(プライミクス社製)などが用いられる。
【0068】
超音波ホモジナイザーでは、使用される超音波の周波数は特に制限されず、例えば、20〜40kHzである。超音波ホモジナイザーでは、超音波照射によるキャビテーション効果によって、油滴が上記したメジアン径にまで微細化される。
【0069】
高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーおよびナノマイザーでは、加圧される圧力は特に制限されず、例えば、10〜300MPaである。高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーおよびナノマイザーでは、分散液と乳化剤と水との混合液を加圧しながら、これを微細孔から吐出させて、かかる吐出において発生するキャビテーション効果および高剪断力の付加により、油滴が上記したメジアン径にまで微細化される。
【0070】
TKホモミキサーおよびTKフィルミックスは、回転体の高速回転を利用する乳化装置であって、混合液中で回転体が高速回転することにより、高剪断力が混合液に付加されて、油滴が上記したメジアン径にまで微細化される。
【0071】
これら乳化装置は、単独使用することができ、また、2種以上を組み合わせて多段で使用することもできる。
【0072】
これにより、油滴のメジアン径を上記した特定範囲となるように乳化させて、乳化液を調製することができる。
【0073】
また、乳化液における油滴の体積基準のメジアン径は、500nm以下であるが、好ましくは、400nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、50nm以上に設定することもできる。油滴のメジアン径が、上記した範囲を超えると、重合安定性が低下して、重合中に凝集する。
【0074】
この乳化液における油滴の体積基準のメジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定される。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、通常、一般の市販品が用いられ、具体的には、LS13 320(ベックマンコールター社製)などが用いられ、測定条件は、レーザー光源がレーザーダイオードおよびタングステンハロゲンランプであり、波長が450〜900nmである。
【0075】
次いで、乳化液中のモノマー成分を開始剤の存在下で乳化重合させる。
【0076】
乳化液中のモノマー成分を開始剤の存在下で乳化重合させるには、乳化液に、開始剤と、必要により連鎖移動剤とを配合する。
【0077】
開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される重合開始剤が用いられ、例えば、水溶性開始剤または油溶性開始剤が用いられる。
【0078】
水溶性開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤(油溶性アゾ系開始剤を除く。)、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤(油溶性過酸化物系開始剤を除く。)、例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤、例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せなどのレドックス系開始剤などが挙げられる。
【0079】
油溶性開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシドなどの油溶性過酸化物系開始剤、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの油溶性アゾ系開始剤などが挙げられる。
【0080】
これら重合開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。重合開始剤のうち、好ましくは、水溶性開始剤、さらに好ましくは、過硫酸塩系開始剤が用いられる。
【0081】
開始剤の配合割合は、適宜選択されるが、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.005〜1重量部である。
【0082】
連鎖移動剤は、水分散型粘着剤組成物(固形分)の分子量を調節するものであって、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどのメルカプタン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分の総量100重量部に対して、例えば、0.001〜0.5重量部である。
【0083】
開始剤(および必要により配合される連鎖移動剤)を乳化液中のモノマー成分に存在させるには、開始剤を予め分散液に溶解させることができ、または、開始剤を予め水性媒体(例えば、水)に溶解させ、これを乳化液中に加えることができ、あるいは、開始剤を乳化液中に直接加えることができる。
【0084】
なお、上記したモノマー成分に、重合開始剤を配合する前、または配合しながら、窒素置換によって、モノマー溶液中の溶存酸素濃度を低減することができる。
【0085】
また、開始剤(必要により配合される連鎖移動剤)の投入と同時に、または、投入の前後に、乳化液を、必要により加熱する。加熱温度(重合温度)は、例えば、20〜90℃に設定される。また、重合時間は、例えば、3〜10時間に設定される。
【0086】
そして、このような重合によって、共重合体のエマルション、すなわち、水分散型粘着剤組成物を得ることができる。
【0087】
なお、この水分散型粘着剤組成物には、その目的および用途に応じて、必要により、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。なお、これら架橋剤は、特に制限されず、油溶性または水溶性の架橋剤が用いられる。これら架橋剤は、適宜、単独または併用して用いられ、その配合割合は、水分散型粘着剤組成物の固形分100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部である。
【0088】
また、水分散型粘着剤組成物は、エマルションの安定性を向上する目的で、例えば、アンモニア水などにより、例えば、pH7〜9、好ましくは、pH7〜8に調整される。
【0089】
さらに、水分散型粘着剤組成物には、例えば、必要に応じて、粘度調整剤(例えば、アクリル系増粘剤など)、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料など)、老化防止剤、界面活性剤など、水分散型粘着剤組成物に通常添加される添加剤を、適宜、添加することができる。これら添加剤の配合割合は、特に制限されず、適宜、選択することができる。
【0090】
このように調製された水分散型粘着剤組成物(固形分)のゲル分率は、例えば、50〜100重量%、好ましくは、70〜100重量%である。ゲル分率が上記した値より低いと、この水分散型粘着剤組成物を粘着型光学フィルムに適用して、高温高湿の雰囲気下で使用したときに、発泡や剥がれが生じる場合がある。
【0091】
なお、ゲル分率は、水分散型粘着剤組成物を、テフロンシート(登録商標)で被覆し、これを酢酸エチルに7日間浸漬したときに、下記式で算出することができる。
ゲル分率(重量%)=(浸漬後のテフロンシートに付着する水分散型粘着剤組成物の重量/浸漬前の水分散型粘着剤組成物の重量)×100
また、水分散型粘着剤組成物は、そのヘイズが、例えば、10%以下である。ヘイズが10%を超える場合には、目視で白く(白濁して)見え、好ましくない。
【0092】
そして、本発明の水分散型粘着剤組成物は、重合安定性および水分散型共重合体の分散性に優れ、外観が良好でありながら、優れた機械強度(弾性率)を確保して、発泡の抑制を図ることができる。
【0093】
すなわち、この水分散型粘着剤組成物は、高温高湿雰囲気下においても、機械強度(弾性率)の低下が抑制されており、そのため、発泡の抑制を図ることができる。
【0094】
なお、通常のシリカ微粒子(親水性シリカ微粒子)を水に分散させた後、これと水分散型の重合体とを混合すれば、重合体とシリカ微粒子との相互作用により、重合体が凝集する場合がある。この凝集を防止するには、シリカ微粒子の表面を分散剤(界面活性剤など)で保護する必要があるところ、シリカ微粒子の比表面積が大きいことから、シリカ微粒子の表面の保護には、多量の分散剤が必要とされる。そうすると、耐水性の低下が懸念され、さらには、透明性が低下するおそれもある。
【0095】
しかし、本発明の水分散型粘着剤組成物では、疎水化処理されたシリカ微粒子をモノマー成分中に分散するので、シリカ微粒子のモノマー成分への分散では、分散剤を不要とすることができる。また、シリカ微粒子が分散される分散液を乳化させ、この乳化液を重合させるので、かかる重合では、シリカ微粒子が共重合体に取り込まれるので、重合安定性に優れている。さらにまた、得られた水分散型粘着剤組成物では、耐湿性が高く、また、凝集が防止されていることから、透明性に優れるため、外観が良好である。
【0096】
以下、図1を参照して、本発明の粘着型光学フィルムの製造方法について、説明する。
【0097】
粘着型光学フィルムを得るには、まず、光学フィルム1を用意する。
【0098】
光学フィルム1としては、光学特性を有し、液晶ディスプレイなどに貼着されるフィルムであれば特に制限されず、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大フィルムなどが挙げられる。
【0099】
偏光フィルムとしては、偏光子の片面または両面に、透明保護フィルムが設けられたものが用いられる。
【0100】
偏光子としては、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質で染色し一軸延伸したものや、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色して一軸延伸した偏光子が挙げられる。
【0101】
透明保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマーフィルム、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマーフィルム、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマーフィルム、ポリカーボネート系ポリマーフィルムなど挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロまたはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマーフィルム、塩化ビニル系ポリマーフィルム、ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマーフィルム、イミド系ポリマーフィルム、スルホン系ポリマーフィルム、ポリエーテルスルホン系ポリマーフィルム、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマーフィルム、ポリフェニレンスルフィド系ポリマーフィルム、ビニルアルコール系ポリマーフィルム、塩化ビニリデン系ポリマーフィルム、ビニルブチラール系ポリマーフィルム、アリレート系ポリマーフィルム、ポリオキシメチレン系ポリマーフィルム、エポキシ系ポリマーフィルム、または上記したポリマーのブレンド物のフィルムなども挙げられる。
【0102】
透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0103】
透明保護フィルムとしては、好ましくは、セルロース系ポリマーが挙げられる。透明保護フィルムの厚さは、特に制限されず、例えば、500μm以下、好ましくは、1〜300μm、さらに好ましくは、5〜200μmである。
【0104】
偏光子と透明保護フィルムとを接着処理するには、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系接着剤、ラテックス系接着剤、水系ポリエステル接着剤などを用いて接着する。
【0105】
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。位相差フィルムの厚さは、特に制限されず、例えば、20〜150μmである。
【0106】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などが挙げられる。これら高分子素材は、延伸などにより配向物(延伸フィルム)となる。
【0107】
液晶性ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどが挙げられる。主鎖型の液晶性ポリマーとしては、例えば、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造であり、具体的には、ネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどが挙げられる。側鎖型の液晶性ポリマーとしては、例えば、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどが挙げられる。これら液晶性ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコールなどの薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより得られる。
【0108】
また、位相差フィルムは、例えば、各種波長フィルムや液晶層の複屈折による着色や視野角などの拡大を目的としたもの、その他使用目的に応じて、適宜、位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差フィルムを積層して位相差などの光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0109】
輝度向上フィルムとしては、例えば、誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体など、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものなど、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどが挙げられる。
【0110】
視野角拡大フィルムは、液晶ディスプレイの画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムであり、例えば、位相差フィルム、液晶ポリマーなどの配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマーなどの配向層を支持したものなどが挙げられる。視野角拡大フィルムとして用いられる位相差フィルムには、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。
【0111】
そして、光学フィルム1の片面に、水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層2を設ける。
【0112】
粘着剤層2を設けるには、例えば、上記した光学フィルム1に、粘着剤層2が形成された離型シート3から、粘着剤層2を転写する方法が挙げられる。粘着剤層2が形成された離型シート3は、離型シート3にナイフコーティング法などの公知のコーティング方法により、水分散粘着剤組成物を直接コーティングして、これを乾燥することにより調製することができる。また、粘着剤層2を転写するには、粘着剤層2が形成された離型シート3を、光学フィルム1に、貼り合わせた後、粘着剤層2から離型シート3を引き剥がす。
【0113】
また、粘着剤層2を設けるには、例えば、光学フィルム1に、水分散型粘着剤をナイフコーティング法などの公知のコーティング方法により、直接コーティングして乾燥するようにすることもできる。
【0114】
離型シート3としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、またこれら積層シート体などが挙げられる。離型シート3の表面には、粘着剤層2からの剥離性を高めるため、必要に応じて、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの処理がなされていてもよい。
【0115】
粘着剤層2の厚み(乾燥後厚み)は、例えば、1〜100μm、好ましくは、5〜50μm、さらに好ましくは、10〜30μmの範囲に設定される。
【0116】
また、図2に示すように、光学フィルム1には、粘着剤層2との接着力(投錨力)を向上させるため、あらかじめ、適宜、下塗り層4を設けるなどの下塗り処理を施すことができる。
【0117】
下塗り層4は、例えば、オキサゾリン基含有ポリマーなどからなり、このようなオキサゾリン基含有ポリマーとしては、一般の市販品が用いられ、エポクロスシリーズ(例えば、エポクロスWS700、日本触媒社製)などが挙げられる。
【0118】
このように、光学フィルム1の片面に、水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層2を設けることにより、本発明の粘着型光学フィルムを得ることができる。
【0119】
このようにして得られる粘着型光学フィルムは、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大フィルムなどの粘着型光学フィルムなどとして、各種産業用途に好適に用いられる。
【0120】
そして、本発明の水分散型粘着剤組成物は、基板に接着する場合にも、高い接着性を有するので、基板へ粘着型光学フィルムを強固に接着することができる。
【0121】
さらに、水分散型粘着剤組成物および粘着型光学フィルムが高い耐熱性および耐湿性を有するので、画像表示装置の基板の表面に貼着すれば、高温高湿雰囲気でも優れた耐久性を得ることができる。
【0122】
そのため、このようにして得られる粘着型光学フィルムを、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの画像表示装置の基板の表面に、粘着剤層を介して貼着することにより、耐久性に優れた画像表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0123】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例に何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0124】
実施例1
(分散液の調製)
容器に、アクリル酸ブチル93部、アクリル酸5部、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(PAM−200、プロピレンオキシドの平均重合度約5.0)2部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(KBM−503、信越化学社製)0.05部、ヘキサデカン3部を加えて混合した。次いで、これに、アエロジルR8200(1次粒子径12nm、ヘキサメチルジシラザン処理)5部を添加して、ディスパーを用いて、3000(1/min)で攪拌して、分散液を調製した。
(乳化液の調製)
イオン交換水600gにアニオン性乳化剤ハイテノールLA−16(非反応性乳化剤、第一工業製薬社製)11gが溶解された水溶液を、上記した分散液389gに加え、これらを、ホモジナイザー(特殊機化社製)を用いて、1分間、6000(1/min)で攪拌し強制乳化し、続いて、高圧ホモジナイザー(PANDA 2K)を用いて、圧力120MPaで、1パス処理して強制乳化し、乳化液を調製した。
(水分散型粘着剤組成物の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製した乳化液を仕込み、次いで、反応容器を窒素置換した後、乳化液を攪拌しながら、70℃に昇温した。次いで、10%の過硫酸アンモニウム水溶液1.8gを添加して、3時間、乳化重合させることにより、固形分40%の共重合体のエマルションを得た。その後、これを室温まで冷却し、次いで、10%アンモニア水を添加して、pHを8に調整し、水分散型粘着剤組成物を調製した。
(光学フィルムの調製)
ポリビニルアルコールフィルム(厚み80μm)を、40℃のヨウ素水溶液中で、元長の5倍に延伸し、その後、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液から引き上げ、50℃で、4分間乾燥させて、偏光子を得た。この偏光子の両側に、ポリビニルアルコール型接着剤を用いて、透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを接着して、光学フィルムを得た。
(下塗り層の形成)
エポクロスWS−700(オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、日本触媒社製)を、水/エタノール(重量比で、1:1)混合溶液で、固形分0.25%となるように希釈し、下塗り層の塗布液を調製した。この塗布液を、マイヤーバー#5を用いて、光学フィルムの片面にコーティングし、40℃で2分間乾燥させて、下塗り層を形成した。
(粘着型光学フィルムの作製)
調製した水分散型粘着剤組成物を、離型フィルム(ポリエチレンテレフタレート基材、ダイヤホイル MRF38、三菱化学ポリエステル社製)上に、乾燥後厚みが23μmとなるようにコーティングした。その後、熱風循環式オーブンで、120℃で、5分間加熱処理して、離型フィルム上に粘着剤層を形成し、これを予め下塗り処理した光学フィルムの処理面に貼着し、粘着型光学フィルムを作製した。
【0125】
実施例2
実施例1の分散液の調製において、アエロジルR8200 5部を、アエロジルR8200 8部に変更した以外は、実施例1と同様に処理して、分散液を調製し、続いて、乳化液を調製し、次いで、水分散型粘着剤組成物を調製し、その後、粘着型光学フィルムを作製した。
【0126】
比較例1
実施例1の分散液の調製において、ヘキサデカンを添加しなかった以外は、実施例1と同様に処理して、分散液を調製し、続いて、乳化液を調製し、次いで、水分散型粘着剤組成物を調製し、その後、粘着型光学フィルムを作製した。
【0127】
比較例2
実施例1の分散液の調製において、ヘキサデカンおよびアエロジルR8200を添加しなかった以外は、実施例1と同様に処理して、分散液を調製し、続いて、乳化液を調製し、次いで、水分散型粘着剤組成物を調製し、その後、粘着型光学フィルムを作製した。
【0128】
比較例3
(シリカ微粒子水分散液の調製)
水70gに、分散剤(EFKA4550、固形分50%、ウィルバーエリス社製)20gを溶解させた後、これに、アエロジル200(1次粒子径12nm、未疎水化処理(親水性タイプ)、日本アエロジル社製)10gを添加し、ディスパーを用いて、3000(1/min)で攪拌して、シリカ微粒子水分散液を調製した。
(水分散型粘着剤組成物の調製)
実施例1の分散液の調製において、ヘキサデカンおよびアエロジルR8200を添加しなかった以外は、実施例1と同様に処理した後、水分散型粘着剤組成物の固形分100部に対して、アエロジル200が5部となるように、シリカ微粒子水分散液を添加して、これらを攪拌した。続いて、実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0129】
比較例4
(シリカ微粒子水分散液の調製)
水70gに、アエロジル200(1次粒子径12nm、未疎水化処理(親水性タイプ)、日本アエロジル社製)を添加し、ディスパーを用いて、3000(1/min)で攪拌して、シリカ微粒子水分散液を調製した。
【0130】
(水分散型粘着剤組成物の調製)
実施例1の分散液の調製において、ヘキサデカンおよびアエロジルR8200を添加しなかった以外は、実施例1と同様に処理した後、水分散型粘着剤組成物の固形分100部に対して、アエロジル200が5部となるように、シリカ微粒子水分散液を添加して、これらを攪拌した。続いて、実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0131】
評価
1) 油滴のメジアン径
各実施例および各比較例により得られた乳化液を、レーザー回折散乱式粒度分布計(LS13 320、レーザー光源:レーザーダイオードおよびタングステンハロゲンランプ、波長450〜900nm、ベックマンコールター社製)を用いて、油滴の体積基準の平均メジアン径を測定した。その結果を表1に示す。
2) 重合体のメジアン径
各実施例および各比較例により得られた重合後の水分散型粘着剤組成物を、レーザー回折散乱式粒度分布計(LS13 320、レーザー光源:レーザーダイオードおよびタングステンハロゲンランプ、波長450〜900nm、ベックマンコールター社製)を用いて、共重合体の体積基準の平均メジアン径を測定した。その結果を表1に示す。
3) 重合安定性(凝集物率)
水分散型粘着剤組成物の調製において、乳化重合後から、pH調整の前に、共重合体のエマルションをナイロンメッシュ(#80)で濾過した後、ナイロンメッシュに残存した凝集物と、反応容器および攪拌羽根に付着した凝集物との総量を計量し、下記式により凝集物率を算出した。その結果を表1に示す。
【0132】
凝集物率(%)={(A+B)/C}×100
A:ナイロンメッシュに残存した凝集物の重量
B:反応容器および攪拌羽根に付着した凝集物の重量
C:モノマー成分、ヘキサデカンおよびシリカ微粒子の総重量
4) ヘイズ
実施例1、2および比較例2〜4において、離型フィルム(すなわち、粘着剤層を形成する前の粘着型光学フィルム)上に、乾燥後厚みが50μmとなるようにコーティングした。その後、熱風循環式オーブンで、120℃で、5分間乾燥させて、離型フィルム上に粘着剤層を形成した。その後、これを50×50mmに切断し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS−10、東レ社製)上に4枚重ねて積層して、200μmの粘着剤層を形成した。その後、ヘイズメーター(HM−150型、村上色彩技術研究所製)により、ヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
5) ガラス接着性
実施例1、2および比較例2により得られた粘着型光学フィルムを、幅25mmに切断し、これを、ガラス板(コーニング#1737、コーニング社製)に貼着し、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着して、50℃、0.5MPaのオートクレーブ中に15分間放置し、次いで、25℃に冷却して、90°剥離接着力(剥離速度300mm/min)を測定した(初期接着力)。
【0133】
また、オートクレーブ中で放置した後、さらに、60℃、および、60℃/90%RHの雰囲気下で、40時間それぞれ放置し、次いで、25℃に冷却して、90°剥離接着力(剥離速度300mm/min)をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0134】
なお、ガラス接着性は、剥離接着力の値が高いほど、良好であることを示す。
6) 伸び(クリープ)
実施例1、2および比較例2における水分散型粘着剤組成物を、離型フィルム(ポリエチレンテレフタレート基材、ダイヤホイル MRF38、三菱化学ポリエステル社製)上に、乾燥後厚みが50μmとなるようにコーティングし、その後、熱風循環式オーブンで、120℃で、5分間、加熱処理して、粘着剤層を形成した。これを、幅30mmの平面視矩形シート形状に成形した。次いで、これを手で巻回することにより、重量0.14g±0.003g、長さ30mmの円柱形状に成形して、試験片を作製した。次いで、試験片の長手方向両端の10mmの部分をクリップでそれぞれ挟んだ。そして、23℃/50%RH、90℃、および、60℃/90%RHの雰囲気下で、1時間放置して、試験片をそれぞれ養生させた。
【0135】
その後、試験片におけるクリップで挟まれていない長手方向途中の長さ(初期の長さ)L(mm)を予め定規により測定した。次いで、試験片の一端のクリップを固定し、試験片の他端のクリップに18gのおもりを取り付けて、上記した各雰囲気下で、試験片を3時間、それぞれ垂下させた。3時間垂下後における、試験片におけるクリップで固定されていない長手方向途中の長さL(mm)を、定規により、それぞれ測定した。なお、初期の長さLは、約10mmである。
【0136】
そして、下記式から、23℃/50%RH、90℃、および、60℃/90%RHにおける伸び(クリープ)を、それぞれ算出した。その結果を表1に示す。
【0137】
伸び(%)=(L−L)/L×100
【0138】
【表1】

表1中の略号を以下に示す。
PAM−200:Sipomer PAM−200(モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(プロピレンオキシドの平均重合度約5.0)、ローディア日華社製)
KBM−503:3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学社製)
LA−16:アニオン性乳化剤ハイテノールLA−16(非反応性乳化剤、第一工業製薬社製)
アエロジルR8200:疎水性処理シリカ微粒子(1次粒子径12nm、ヘキサメチルジシラザン処理、日本アエロジル社製)
EFKA4550:分散剤(EFKA4550、固形分50%、ウィルバーエリス社製)アエロジル200:未疎水化処理シリカ微粒子(1次粒子径12nm、日本アエロジル社製)
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の粘着型光学フィルムの一実施形態である粘着型光学フィルムの拡大断面図である。
【図2】本発明の粘着型光学フィルムの他の実施形態である粘着型光学フィルムの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0140】
1 光学フィルム
2 粘着剤層
3 離型シート
4 下塗り層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびリン酸基含有ビニルモノマーを必須成分として含有し、前記必須成分と共重合可能な共重合性ビニルモノマーを任意成分として含有するモノマー成分と、疎水化処理されたシリカ微粒子とが、前記モノマー成分100重量部に対して、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが60〜99重量部となり、前記カルボキシル基含有ビニルモノマー、前記リン酸基含有ビニルモノマーおよび前記共重合性ビニルモノマーの総量が1〜40重量部となり、前記シリカ微粒子が1〜10重量部となるように、配合して、前記シリカ微粒子が前記モノマー成分中に分散される分散液を調製し、
次いで、前記分散液を、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定される油滴の体積基準のメジアン径が500nm以下となるように乳化させて、乳化液を調製し、
次いで、前記乳化液中の前記モノマー成分を開始剤の存在下で重合させることにより得られることを特徴とする、水分散型粘着剤組成物。
【請求項2】
さらに、疎水性化合物が配合されることを特徴とする、請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記モノマー成分100重量部に対して、前記共重合性ビニルモノマーとしてアルコキシシリル基含有ビニルモノマーを0.001〜1重量部含有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記シリカ微粒子の平均粒子径が、5〜500nmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項5】
光学フィルムと、
前記光学フィルムの少なくとも片面に積層される、請求項1〜4のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層とを備えることを特徴とする、粘着型光学フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする、画像表示装置。
【請求項7】
炭素数が4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびリン酸基含有ビニルモノマーを必須成分として含有し、前記必須成分と共重合可能な共重合性ビニルモノマーを任意成分として含有するモノマー成分と、疎水化処理されたシリカ微粒子とを、前記モノマー成分100重量部に対して、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが60〜99重量部となり、前記カルボキシル基含有ビニルモノマー、前記リン酸基含有ビニルモノマーおよび前記共重合性ビニルモノマーの総量が1〜40重量部となり、前記シリカ微粒子が1〜10重量部となるように、配合して、前記シリカ微粒子をモノマー成分中に分散して、分散液を調製する工程と、
前記分散液を、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定される油滴の体積基準のメジアン径が500nm以下となるように乳化させて、乳化液を調製する工程と、
前記乳化液中の前記モノマー成分を開始剤の存在下で重合させる工程と
を備えることを特徴とする、水分散型粘着剤組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−303327(P2008−303327A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153033(P2007−153033)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】