説明

水和能力が強化された組成物

本発明は、主に、(A)式(I):


[式中、
R1は、5から21個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し;
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は1から4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基を表し;
R4は、ベヘニル基を除く1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基、2から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルケニル基、又は置換若しくは非置換のステリル基を表し;
nは、0から2の整数を表す]によって表される少なくとも1種のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルと、
(B)3個以上のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の多価アルコールと
を含む、油中水型以外のエマルション、好ましくは水中油型エマルションの形態の化粧用及び/又は皮膚科用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは皮膚及び/又は唇の保湿に用いられる、水和能力が強化された化粧用及び/又は皮膚科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
角質層は、生体と脱水性の外部環境との間に界面を形成する薄い角化層である。これは、上部の上皮組織、すなわち、表皮と、下位に位置する結合された組織、すなわち、真皮とから形成される。
【0003】
厚さおよそ10から15μmの角質層は、ラメラ液晶相中で組織化された脂質から形成されるマトリックスによって囲まれた、垂直に積み重ねられた角質細胞から構成される。したがって、これは、無核細胞(「レンガ」)及び細胞間のラメラ液晶相(「セメント」)から構成される、レンガ壁に例えることができる2コンパートメント系である。
【0004】
角質層の機能は、特に、皮膚に出入りする水の流量を調節すること、したがって、表皮のより深い層から生じる水の過剰な喪失を遅らせることである。角質層はまた、機械的な攻撃及び化学生成物及び外来の微生物の通過に対して保護する。角質層はまた、UV照射に対して第一線の防御を成す。
【0005】
一般に、保湿剤又は水和剤(hydrating agent)は、添加又は保持によって皮膚の水分に影響を与えることにより乾燥肌の印象を抑える物質として定義される。
【0006】
皮膚を十分に水和させておくことが重要であり、特に皮膚が乾燥の影響を受けるとき、これが重要であるということをだれもが知っている。皮膚、具体的には乾燥肌にうるおいを与えるための化粧用及び/又は皮膚科用組成物は、広く用いられている。
【0007】
例えば、特開平5-112514は、化粧用組成物又は皮膚科用組成物の原料として用いられる、特定の化学構造を有するN-長鎖アシル中性アミノ酸のステロールエステルを開示している。特開平5-112514によれば、ステロールエステルは、水和能力を強化し、エモリエント効果をもたらすことができるとされている。
【0008】
更に、特開2000-355531は、化粧用組成物又は皮膚科用組成物の原料として、上記ステロールエステル及び特定の化学構造を有するN-長鎖アシル中性アミノ酸のアルキルエステル又はアルケニルエステルの混合物を開示している。特開2000-355531によれば、上記混合物を含む組成物は、優れた水分保持性及び優れた水分透過性等の優れた保湿効果をもたらすことができるとされている。
【0009】
更に、特開2008-260707は、上記混合物、シリコーン油及び水を含む、化粧品のために用いられる油中水型(W/O)エマルションを開示している。
【0010】
また、グリセリンは、化粧用組成物における水和剤として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5-112514号公報
【特許文献2】特開2000-355531号公報
【特許文献3】特開2008-260707号公報
【特許文献4】特公昭51-38681号公報
【特許文献5】特開平2-295912号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】operators guide、Malvern Instruments、1998年12月、61〜67頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、水和能力が強化された組成物を提供する必要性が依然として存在する。
【0014】
本発明の1つの目的は、上記原料を含む化粧用組成物及び皮膚科用組成物に使用するための、水中油型エマルション等の油中水型エマルション以外のエマルションに優れた保湿効果をもたらすことである。
【0015】
本発明の上記目的は、水中油型エマルションにおいて、上記原料を3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールと組み合わせることにより達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の一つの側面は、
(A)式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
[式中、
R1は、5から21個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し;
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は1から4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基を表し;
R4は、ベヘニル基を除く1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基、2から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルケニル基、又は置換若しくは非置換のステリル基を表し;
nは、0から2の整数を表す]
によって表される少なくとも1種のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルと、
(B)3個以上のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の多価アルコールと
を含む、油中水型エマルション以外のエマルション、好ましくは水中油型エマルションの形態の化粧用及び/又は皮膚科用組成物である。
【0019】
式(I)によって表される(A)のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、
(i)式(I)中のR4が、ベヘニル基を除く1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基であるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステル;及び
(ii)式(I)中のR4が置換若しくは非置換のステリル基であるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの混合物を含むことが好ましい。
【0020】
式(I)中のR1が、10から21個の炭素原子を有する非置換の直鎖アルキル基を表し;式(I)中のR4が、23から34個の炭素原子を有する非置換の分枝アルキル基又はフィトステリル基を表し;式(I)中のnが、1を表すことが好ましい。
【0021】
(A)のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンデシルテトラデシル、又はそれらの混合物であることがより好ましい。混合物は、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル及びN-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンデシルテトラデシルを20:80から80:20の比で含むことができる。
【0022】
他方では、(B)の3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、又はそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、組成物中の油相は、好ましくは少なくとも1種の非シリコーン油を含む。
【0024】
本発明の組成物では、(A)のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの量は、組成物の全重量に対して0.01重量%から20重量%であることが好ましく、(B)の3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの量が、組成物の全重量に対して0.1重量%から30重量%であることが好ましい。
【0025】
(B)の3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの量対(A)N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの量の比は、1以上、好ましくは2であることがより好ましい。
【0026】
有利には、本発明の組成物は、水中油型エマルションである。
【0027】
本発明の組成物は、好ましくは、皮膚を水和させるために用いることができる。
【0028】
本発明の他の側面は、本発明の組成物を乾燥肌及び/又は唇に局所的に適用することを含む、乾燥肌及び/又は唇を処置するための化粧方法、並びに本発明の組成物をその乾燥肌及び/又は唇に局所的に適用することを含む皮膚及び/又は唇を水和させるための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
鋭意検討の結果、本発明者らは、好ましくはN-長鎖アシル中性アミノ酸のアルキルエステル又はアルケニルエステルと共に、N-長鎖アシル中性アミノ酸のステロールエステルを含む、化粧用組成物及び皮膚科用組成物に用いられる、水中油型エマルション等の、油中水型エマルション以外のエマルションに、3個以上のヒドロキシ基を有する1種又は複数の多価アルコールを前記エステルと組み合わせることによって、優れた保湿効果をもたらすことが可能であるということを発見している。
【0030】
したがって、本発明の化粧用組成物及び皮膚科用組成物は、
(A)式(I):
【0031】
【化2】

【0032】
[式中、
R1は、5から21個の炭素原子を有する、置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し;
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は1から4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基を表し;
R4は、ベヘニル基を除く、1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基、2から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルケニル基、又は置換若しくは非置換のステリル基を表し;
nは、0から2の整数を表す]
によって表される少なくとも1種のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルと
(B)3個以上のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の多価アルコールと
を含むことによって特徴付けられる。
【0033】
以下、本発明の化粧用及び/又は皮膚科用組成物を、より詳細に説明する。
【0034】
(A)N-長鎖アシル中性アミノ酸エステル

本発明に用いられるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、以下の化学式:
【0035】
【化3】

【0036】
[式中、
R1は、5から21個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し;
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は1から4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基を表し;
R4は、ベヘニル基を除く、1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基、2から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルケニル基、又は置換若しくは非置換のステリル基を表し;
nは、0から2の整数を表す]
によって表される。
【0037】
前述の式(I)に現れる長鎖アシル基(R1CO)は、6から22個の炭素原子を有する、置換若しくは非置換の、直鎖又は分枝鎖の、飽和又は不飽和の基であることができる。それらの例として、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、水素化パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸及び水素化牛脂脂肪酸に由来し得るアシル基を挙げることができる。かかる脂肪酸は、ヒドロキシル基を有する脂肪酸であることができる。好ましいアシル基は、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基及びベヘノイル基、並びにヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、水素化パーム核油脂肪酸及び水素化牛脂脂肪酸に由来し得る一価の酸残基(アシル基)であることができる。
【0038】
したがって、R1は、5から21個の炭素原子、好ましくは7から21個の炭素原子、より好ましくは10から21個の炭素原子を有する、置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基である。式(I)中のR1が、10から21個の炭素原子を有する、非置換の直鎖アルキル基を表すことがより好ましい。具体的には、ミリスチル基が、式(I)中のR1として好ましい。
【0039】
前述の式(I)中に示すように、R2及びR3は、水素原子又は1から4個の炭素原子を有する、置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基を独立に表すことができる。アルキル基として、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0040】
したがって、前述の式(I)によって表されるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの中性アミノ酸部分を構成する中性アミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、β-アラニン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸、サルコシン又はN-メチル-β-アラニン等の中性アミノ酸を挙げることができる。この中でも、好ましいものは、グリシン、アラニン、β-アラニン、α-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、サルコシン及びN-メチル-β-アラニンであり;より好ましいものは、サルコシン、アラニン、グリシン及びN-メチル-β-アラニンであり;最も好ましいものは、サルコシン及びN-メチル-β-アラニンである。したがって、前述の式(I)が1であることが好ましい。このようなアミノ酸は、光学活性の形態であってもラセミ体であってもよい。
【0041】
前述の式(I)に示す通り、R4は、ベヘニル基を除く1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基、2から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルケニル基、又は置換若しくは非置換のステリル基を表す。
【0042】
したがって、前述の式(I)によって表されるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルのアルコール部分を構成する非ステリル炭化水素基(R4)として、1から21個又は23から34個の炭素原子を有する、置換若しくは非置換の、分枝鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基、好ましくは、23から34個の炭素原子を有する非置換の分枝鎖のアルキル基を挙げることができる。その中でも、好ましいものとして、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、イソブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、フーゼル油、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラルキルアルコール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール、2-ヘキサデシルアルコール、2-オクチルドデカノール及びイソステアリルアルコールに由来し得るアルキル基を挙げることができる。その中でも、好ましいものは、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラルキルアルコール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール、2-ヘキサデシルアルコール、2-オクチルドデカノール及びイソステアリルアルコールであり;より好ましいものは、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール、2-ヘキサデシルアルコール、2-オクチルドデカノール及びイソステアリルアルコールであり;最も好ましいものは、デシルテトラデカノール、2-ヘキサデシルアルコール、2-オクチルドデカノール、及びイソステアリルアルコールである。
【0043】
前述の式(I)によって表されるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルのアルコール部分を構成する置換若しくは非置換のステリル基(R4)として、コレステロール、ジヒドロコレステロール、シトステロール、キャンペステロール(campesterol)、スチグマステロール、フィトステロール、ラノステロール及びそれらの水素化生成物に由来するステリル基を挙げることができる。その中でも、好ましいものは、コレステロール、シトステロール、キャンペステロール、スチグマステロール、フィトステロール及びラノステロールであり;より好ましいものは、コレステロール、シトステロール、キャンペステロール、スチグマステロール及びフィトステロールであり;最も好ましいものは、コレステロール及びフィトステロールである。したがって、R4が、フィトステリル基であることが好ましい。これらは、動物及び植物に由来するもの及び合成のもののいずれであってもよい。
【0044】
したがって、本発明に用いられる最も好ましいN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル又はN-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンデシルテトラデシルである。
【0045】
本発明に用いられるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、前述の式(I)によるエステルの混合物であってもよい。
【0046】
混合物は、
(i)式(I)中のR4が、ベヘニル基を除く1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基である、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステル;及び
(ii)式(I)中のR4が置換若しくは非置換のステリル基である、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルを含むことが好ましい。
【0047】
上記の式(I)によって表されるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルが上記の(i)及び(ii)エステルから構成される場合、(i)エステル及び(ii)エステルは、99:1から35:65の重量比の範囲で、より好ましくは、96:4から40:60の重量比の範囲内で、最も好ましくは、93:7から60:40の重量比の範囲内で合わせることができる。(i)エステルの比が、99:1を超えるとき、十分な保湿性は達成することができず、一方、(i)エステルの比が35:65未満であるとき、粘着性が生じることがあり、これは好ましくない。
【0048】
混合物は、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル及びN-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンデシルテトラデシルの両方を含むことがより好ましい。この場合では、混合物は、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル及びN-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンデシルテトラデシルを20:80から80:20の比で、好ましくは30:70から70:30の比で、より好ましくは40:60から60:40の比で、更により好ましくは50:50の比で含むことができる。
【0049】
この混合物の好ましい例として、味の素株式会社によってELDEW(登録商標)APS-307という商品名で販売されているものを挙げることができる。
【0050】
N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、例えば、大気圧又は真空中で熱による脱水によってアルキル及び/又はアルケニルアルコール及び/又はステロールでN-長鎖アシル中性アミノ酸を縮合エステル化することによって調製することができる。例えば、N-長鎖アシル中性アミノ酸1モル及びアルコール及び/又はステロール1.0から1.2モルをベンゼン又はトルエン等の非極性溶媒に溶解し、撹拌する。次いで、硫酸、p-トルエンスルホン酸、塩化水素又は強酸イオン交換樹脂等の酸触媒0.01から1.5モルをそこに加え、70℃から200℃で1から10時間撹拌しながら加熱する。反応中、反応をできるだけ促進するために副生成物として生成した水を除去することが好ましい。
【0051】
トルエン等の溶媒を用いて共沸によるエステル化縮合反応によって又はエステル交換によってN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルを調製することも可能である。このようなN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの合成に使用するためのN-長鎖アシル中性アミノ酸は、必ずしも単一の化合物である必要はなく、異なる種類のアシル基又は中性アミノ酸を有するN-長鎖アシル中性アミノ酸の混合物であってもよい。同様に、このようなN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの合成に使用するためのアルコールは、必ずしも単一の化合物である必要はなく、異なる鎖の長さ等を有するアルコールの混合物であってもよい。
【0052】
もちろん、N-長鎖アシル中性アミノ酸とアルキル及び/又はアルケニルアルコールとのエステル及びN-長鎖アシル中性アミノ酸とステロールとのエステルが別々に調製され、その後、この2種類のエステルを混合してN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルを調製することも可能である。
【0053】
上述したように調製されたN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、本発明の化粧用及び/又は皮膚科用組成物のための本発明の効果を損なわない限り、反応混合物自体の形態で、そのままで用いることができ、必要なら又は望むなら、これは、再結晶法又はカラムクロマトグラフィー法等、当業者によって用いられる公知の及び一般の方法によって精製することができる。
【0054】
N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの製造用の出発物質として使用するためのN-長鎖アシル中性アミノ酸又はそれらの塩、及びアルコール又はステロール、並びにN-長鎖アシル中性アミノ酸又はそれらの塩に存在し得る中性アミノ酸等、及び副生成物として形成し得る脂肪酸等がすべて、通常、化粧用及び/又は皮膚科用組成物中に含まれ、したがって、これらが、本発明の効果を低下させない限り本発明の化粧用及び/又は皮膚科用組成物中に含まれ得ることは言うまでもない。
【0055】
なお、N-長鎖アシル中性アミノ酸は、長鎖脂肪酸ハロゲン化物及びアミノ酸を塩基性触媒の存在下で放置して互いに反応させるいわゆるショッテン-バウマン反応等の公知の方法によって製造することができる(例えば、特公昭51-38681を参照のこと)。
【0056】
N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの量は限定されない。N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの量は、組成物の全重量に対して0.01から20重量%、好ましくは0.1から10重量%、より好ましくは0.5から7重量%、更により好ましくは1から5重量%であることが好ましい。
【0057】
(B)3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール

必須成分として本発明に用いられる多価アルコールは、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有していなければならない。
【0058】
多価アルコールが3個以上のヒドロキシ基を有する限り、多価アルコールのタイプは限定されない。3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールの例として、グリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリン等のグリセロール;グルコース、果糖、マルトース、ラクトース、スクロース、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトール等の多糖類;グルコン酸及びポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0059】
3から100個の炭素原子、好ましくは3から50個の炭素原子を含むもの等の分子量が低い3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールを用いることが好ましい。したがって、グリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリン等のグリセロールが好ましく、グリセリンが最も好ましい。
【0060】
3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの量は限定されない。3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの量は、組成物の全重量に対して0.1から30重量%、好ましくは0.5から20重量%、より好ましくは1から15重量%であることが好ましい。
【0061】
3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの量対N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの量の比は限定されない。しかし、この比は2以上が好ましい。
【0062】
3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール及びN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、皮膚、具体的には乾燥肌についての水和性に関して相乗効果を示し得る。言い換えれば、3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールは、3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルのそれぞれの水和能力の合計に基づいた予想を超えてN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの水和能力を強化することができる。他方では、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルはまた、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールとN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルのそれぞれの水和能力の合計に基づいた予想を超えて3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの水和能力を強化することもできる。
【0063】
したがって、3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールは、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの水和能力の増強剤として機能することができ、他方では、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの水和能力の増強剤として用いることができる。すなわち、3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールは、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの水和能力を強化するために用いることができ、他方では、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの水和能力を強化するために用いることができる。
【0064】
したがって、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステル及び3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの組み合わせは、水和能力を相乗的に強化した水和剤として組み合わせて用いることができる。好ましくは、上記組み合わせは、皮膚のための、具体的には乾燥肌のための水和剤として用いることができる。
【0065】
(C)化粧用及び/又は皮膚科用組成物

本発明の化粧用及び/又は皮膚科用組成物には、必須成分として、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステル及び3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールが含まれる。本発明の化粧用及び/又は皮膚科用組成物は、N-長鎖アシル中性アミノ酸エステル及び3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの組み合わせに基づいた相乗的な保湿効果を有する。
【0066】
好ましくは、本発明の組成物は、生理的に許容される媒体を含む。「生理的に許容される媒体」という用語は、皮膚、唇、毛髪、まつげ、眉毛及び爪に適用することができる非毒性の媒体を意味するものとする。
【0067】
本発明の組成物は、水中油型(O/W)、水中油中水型(W/O/W)及び油中水中油型(O/W/O)等、油中水型以外のエマルションの形態であり、好ましくは、水中油型エマルションの形態である。これは、本発明の組成物が油連続相及び油相に分散した水相を含まないが、好ましくは水連続相及び水相に分散した油相を含むことを意味する。以下、水中油型エマルションの形態である、本発明の組成物の好ましい実施形態を記載している。
【0068】
油相の液滴の平均サイズは、Mastersizer 2000粒径分析計(Malvern Instrumentsによって販売されている)を用いた光回折によって測定することができる。これらの測定は、1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の水溶液に希釈したエマルションで実施することができる。コンピュータプログラムによって、体積平均直径D[4.3](μm)を得ることが可能になる(operators guide、Malvern Instruments、1998年12月、61〜67頁を参照のこと)。
【0069】
本発明の組成物の油相の液滴の平均サイズD[4.3](μm)は、0.01μmから6μmの範囲、より具体的には0.1μmから4μmの範囲、好ましくは0.1μmから2μmの範囲であることができる。
【0070】
油相の量は限定されず、これは、組成物の全重量に対して1から80重量%の量で存在し得る。油相の量は、例えば、組成物の全重量に対して5から70重量%、好ましくは8から60重量%、より好ましくは10から50重量%の範囲であることができる。
【0071】
油相は、油(液体脂肪物質)のみを含んでも、油とより高いアルコール及び脂肪酸等の他の脂肪物質の混合物を含んでもよい。しかし、油の量は、好ましくは油相の全重量に対して少なくとも20重量%であり、好ましくは油相の全重量に対して30重量%以上である。「油」という用語は、周囲温度(25℃)で液体である脂肪物質を意味するものとする。
【0072】
油相は、少なくとも1種の非シリコーン油を含むことができる。
【0073】
非シリコーン油として、例えば、鉱物又は合成炭化水素系油を用いることができる。「炭化水素系油」という用語は、主に炭素原子及び水素、場合によってはエステル、エーテル及び/又はフッ素化された基を含む油を意味するものとする。
【0074】
炭化水素系油として、脂肪酸エステル、好ましくは1から30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝鎖を含むアルコールから得られたもの及び3から30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖を含む脂肪酸から得られたもの(前記エステルの炭素原子の総計は24個以上である);アルカン;及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0075】
脂肪酸エステルとして、例えば、パルミチン酸2-エチルヘキシル(又はパルミチン酸オクチル)、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル(又はステアリン酸オクチル)、ネオペンタン酸オクチルドデシル、イソノナン酸セテアリル、イソノナン酸イソデシル、ペンタエリスリトールテトライソステアラート、イソノナン酸イソトリデシル、C12〜C15脂肪アルコールベンゾアート(Finetex製のFinsolv TN)及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0076】
炭化水素系油の量は限定されないが、油相の全重量の少なくとも10%、好ましくは油相の全重量の少なくとも20%であることが好ましい。この量は、好ましくは油相の全重量の10から100重量%、更に良好には20から90重量%の範囲である。
【0077】
アルカンとして、例えば、石油ゼリー、流動石油ゼリー、NOF Corporation社によって販売されているParleam(登録商標)油(INCI名:水素化ポリイソブテン)等の水素化イソパラフィン、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0078】
本発明のより好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、スクアランを含む。
【0079】
油相は、他の油を含むことができる。他の油として、カプリン酸/カプリル酸2-エチルヘキシル(又はカプリン酸/カプリル酸オクチル)、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソブチル、ミリスチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルモノココアート(又はオクチルモノココアート)、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソブチル、イソステアリン酸イソプロピル、ペラルゴン酸2-エチルヘキシル(又はペラルゴン酸オクチル)、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル(又はヒドロキシステアリン酸オクチル)、オレイン酸デシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸2-ジエチルヘキシル(又はアジピン酸ジオクチル)、アジピン酸ジイソセチル、コハク酸2-エチルヘキシル(又はコハク酸オクチル)、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸2-エチルヘキシル(又はリンゴ酸オクチル)、カプリン酸/カプリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、(又はヘキサン酸オクチル)、オクタノン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル(又は2-エチルヘキサン酸オクチル)、オクタン酸2-エチルヘキシル(又はオクタン酸オクチル)、及びそれらの混合物等、分子量360g/モル未満のエステル;イソプロピルラウロイルサルコシネート(Unipex製のEldew SL 205)、炭酸ジカプリリル(Cognis製のCetiol CC);
ジカプリリルエーテル(Cognis製のCetiol OE)等のエーテル;
スイートアーモンド油、アボカド油、ヒマシ油、コリアンダー油、オリーブ油、ホホバ油、ゴマ油、ラッカセイ油、グレープシード油、ナタネ油、ヤシ油、ヘーゼルナッツ油、シアバター、パーム油、杏仁油、ビューティーリーフ(beauty-leaf)油、糠油、コーン胚芽油、麦芽油、ダイズ油、ヒマワリ油、月見草油、ベニバナ油、トケイソウ油、ライムギ油、Stearineries Dubois社によって販売されているもの又はDynamit Nobel社によってMiglyol 810、812及び818という名で販売されているもの等のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド等、植物由来の炭化水素系油;
周囲温度で液体又はペースト状である直鎖又は環式シリコーン鎖を含む揮発性若しくは不揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS)、具体的にはシクロヘキサシロキサン等のシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン);ペンダントである又はシリコーン鎖の末端にあるアルキル基、アルコキシ基又はフェニル基を含むポリジメチルシロキサン(これらの基は、2から24個の炭素原子を有する);フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチル-シロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリカート、ポリメチルフェニルシロキサン等のフェニルシリコーン等、揮発性若しくは不揮発性シリコーン油;部分的に炭化水素系及び/又はシリコーン系のフッ素油、例えば、特開平2-295912に記載されているもの;
イソヘキサデカン、イソドデカン、C8〜9及びC11〜13イソパラフィン(CTFA名:C8〜9イソパラフィン及びC11〜13イソパラフィン)から選択される、鉱物由来、合成由来又は動物由来の直鎖又は分枝状の炭化水素系油;及びそれらの混合物を特に挙げることができる。
【0080】
本発明の組成物は、組成物の全重量の99重量%以下、好ましくは90重量%以下の量の水相を含むことができ、この量は、例えば、組成物の全重量に対して、20から99重量%、好ましくは30から90重量%の範囲であることが可能である。水相中の水の量は、例えば、水相の重量に対して50から100重量%の範囲であってよい。
【0081】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、水相に一般に存在する2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種のポリオール(又は多価アルコール)を含むことができる。かかるポリオールとして、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、イソプレングリコール及びPEG-8等のポリエチレングリコール等のグリコールを挙げることができる。かかるポリオールの量は、一般に、水相の全重量に対して0.1から30重量%、更に良好には0.5から20重量%の範囲である。
【0082】
水相は、例えば、水及び2個のヒドロキシ基を有する上記の場合によるポリオールに加えて、水溶性の低級アルコールから選択される1種又は複数の水溶性溶媒を含むことができる。「低級アルコール」という用語は、1から8個の炭素原子を含むアルコールを意味するものとする。低級アルコールとして、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール及びそれらの混合物を挙げることができる。これらが、本発明の組成物に存在するとき、水溶性の低級アルコールは、水相の全重量に対して0.01から40重量%、好ましくは0.01から20重量%の量であることができる。
【0083】
本発明の組成物は、任意のアジュバント又は添加物、例えば、対象分野において、具体的には化粧品又は皮膚科の分野において常用されるものを含むこともできる。もちろん、本発明の組成物に本質的に関連する有利な性質は、想定された添加により変化しない、又は実質的に変化しないようなやり方で、当業者は注意して、本発明の組成物の場合による添加物を選択するであろう。
【0084】
(これらのアジュバントの水溶性又は脂溶性の性質に従って)本発明のエマルションの水相及び/又は油相中に含まれ得る従来のアジュバントのうち、陰イオン性(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム又はトリデセス硫酸ナトリウム等)、両性(アルキルベタイン又はココアンホ二酢酸二ナトリウム等)又はHLBが10を超える非イオン性(POE/PPG/POE、アルキルポリグルコシド、又はポリグリセリル-3ヒドロキシラウリルエーテル等)である起泡性の界面活性剤;保存剤;金属イオン封鎖剤(EDTA);酸化防止剤;香料;可溶性色素、顔料及びパール剤等の染料;マット化、テンショニング(tensioning)、漂白又は角質除去充填剤;日焼け止め;化粧用若しくは皮膚用の有効な薬剤及び親水性又は親油性である皮膚の化粧特性を改善する効果を有する薬剤;電解質;親水性若しくは親油性、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性又は両性の、増粘化又は分散化ポリマーを挙げることができる。これらの様々なアジュバントの量は、対象分野で常用されるものであり、例えば、組成物の全重量0.01から20重量%である。
【0085】
本発明の組成物に用いることができる有効な添加剤として、例えば、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)ビタミンB3(ナイアシンアミド)、これらのビタミンの誘導体(具体的にはエステル)及びこれらの混合物等の水溶性若しくは脂溶性のビタミン;防腐剤;2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(若しくはトリクロサン)又は3,4,4'-トリクロロカルバニリド(若しくはトリクロカルバン)等の抗菌性の有効な薬剤;抗脂漏薬;過酸化ベンジル、サリチル酸、トリクロサン、アゼライン酸又はナイアシン(vit.PP)等の抗菌剤;カフェイン等の痩身剤;蛍光増白剤、及び組成物の最終目的に適した任意の有効な添加剤、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0086】
有効な添加剤の量は、所望の目的に依存する。有効な薬剤は、例えば、組成物の全重量に対して0.001から20重量%、好ましくは0.01から10重量%、更に良好には0.05から5重量%の濃度で存在し得る。
【0087】
本発明の組成物は、通常、水相中に油相を分散させるための1種又は複数の乳化剤を含む。乳化剤のタイプは、限定されない。乳化剤の例として、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル(ステアリン酸PEG-100等)及びグリセロールの脂肪酸エステル(ステアリン酸グリセリル等)を挙げることができる。ステアリン酸グリセリル及びステアリン酸PEG-100の混合物は、乳化剤として好ましい。乳化剤の量は、限定されないが、組成物の全重量に対して0.001から15重量%であることができる。
【0088】
本発明のエマルションは、油相用の材料を水相用の材料に加え、その後、撹拌する等の従来の方法によって得ることができる。
【0089】
あるいは、本発明のエマルションは、転相方法によって調製することができる。この調製方法は、
1)容器中で、(いずれかがある場合には、熱感受性の出発物質を除く)組成物のすべての構成要素を秤量するステップと、
2)例えば、Rayneri 350rpmで混合物をホモジナイズするステップと、例えば、水浴で、転相温度T2以上の温度まで、すなわち、透明な相又は半透明な相(マイクロエマルション又はラメラ相領域)が得られ、逆のエマルション (W/O)が得られていることを示すより粘性の白色相が得られるまで、温度を次第に上昇させることにより加熱するステップと、
3)加熱を停止するステップと、再び周囲温度になるまで撹拌を維持し、転相温度T1、すなわち、微細なO/Wエマルションが得られる温度を経るステップと、
4)温度が再び転相温度(T1)領域以下に下がった場合、場合によっては、熱感受性の出発物質を加えるステップを含むことができる。
【0090】
本発明の組成物は、水中油型(O/W)、水中油中水型(W/O/W)及び油中水中油型(O/W/O)等、油中水型以外のエマルション及び等の形態であり、好ましくは水中油型(O/W)エマルションの形態であり、本発明の組成物は、具体的には、化粧用組成物又は皮膚科用組成物、例えば皮膚、具体的には顔、粘膜、まつげ、頭皮、毛髪及び爪等のケラチン質の処置のための化粧用組成物を構成する。本発明のエマルションは、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、含浸タオル、貼付剤、ボディウォッシュ、洗顔料等の洗浄製品等になり得る。
【0091】
これらは、例えば、メークアップ除去組成物及び/又はクレンジング組成物及び/又は皮膚用、唇等の粘膜用及び/又はまつげ用のケア組成物、顔の皮膚又は身体の皮膚をマッサージするための組成物、(組成物が角質除去粒子を含む場合)顔用及び手用のスクラブ(scrubbing)(又は角質除去)組成物、日光防止組成物(UV防御)及び日焼け後用組成物を構成することもできる。これらは、適当な顔料及び/又は充填剤を添加後に、ケラチン質、具体的には皮膚、唇及びまつげ用のメークアップ用組成物、より具体的にはファンデーション、口紅又はリップグロス等を構成することもできる。
【0092】
本発明の組成物は、シャワーケアバルムとして;リンス剤及び毛髪ケアバルム(例えば、油が放出するまで生成物中でマッサージし、次いで、その場合は柔軟でうるおいを与えられた皮膚をすすぐことにより、すすぎ落とされる)として;ひげそり用製品として;日焼け後の修復用マスクを含むマスクとして;オレンジピールスキンの領域への(そこでマッサージされ、次いで、洗い流される)スリミング用湿布として;マッサージバルムとして;洗い流される唇を修復するバルムとして;乾燥した足用のバルムとして用いることもできる。これらの使用において、使用後に生成物は洗い流される。
【0093】
組成物が角質除去生成物(クレンジング生成物とも呼ばれる)であるとき、使用は、生成物を顔又は手又は身体に適用し、1分又は2分間こすり、次いですすぐことを含む。その場合は、皮膚は、滑らかで柔らかく清潔になる。
【0094】
本発明の組成物は、皮膚、具体的には顔を水和させるために好ましくは用いられる。好ましくは、本発明の組成物は、乾燥肌を処置するために用いることができる。
【0095】
したがって、本発明の組成物は、乾燥肌及び/又は唇を処置するための方法、好ましくは乾燥肌及び/又は唇を美容上処置するための方法に用いることができ、これは、前記乾燥肌及び/又は唇に本発明の組成物を局所的に適用することを含む。
【0096】
あるいは、本発明の組成物は、皮膚及び/又は唇、具体的には乾燥肌及び/又は唇を水和するための方法に用いることができ、前記皮膚及び/又は唇に本発明の組成物を局所的に適用することを含む。
【0097】
あるいは、本発明の組成物は、処置を必要とする皮膚及び/又は唇、具体的には処置を必要とするヒトの皮膚及び/又は唇を水和するための方法に用いることができる。ヒトの皮膚とは、成人、小児又は乳児の皮膚等のすべてのヒトの皮膚と理解される。
【実施例】
【0098】
(実施例)
本発明は、具体例を用いてより詳細に記載されるが、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0099】
以下の例において、用いられるフィトステリル/デシルテトラデシルミリストイルメチルβ-アラニンは、味の素株式会社によってELDEW(登録商標)APS-307という商品名で販売されているものである。
【0100】
Corneometer(登録商標)(CM 825、Courage+Khazaka、Germany)によって、静電容量方法により角質層(SC)中の水分量を定量化した。この測定には、皮膚がより水和されるにつれて増加する任意の単位を用いる。
【0101】
(実施例1及び比較例1から3)
実施例1及び比較例1から3の水中油型エマルションの形態の以下の組成物を、後述の調製方法に従って表1に示す成分を混合することにより調製した。表1中の数字は、組成物の全重量に対する重量パーセントを意味する。
【0102】
【表1】

【0103】
調製方法
1) A相及びB相を、別々に約70〜75℃までそれぞれ加熱した。
2) B相をA相中に注いだ。
3) 混合物をホモジナイザーで8000rpmで5分間ホモジナイズした。
4) C相を混合物に加え撹拌した。
5) 混合物を冷却し、D相及びE相を加えた。
【0104】
実施例1及び比較例1〜3について、水和性を、以下の方法に従って測定し評価した。
【0105】
試験方法
1) 24名の女性ボランティアについて、前腕の素肌の状態を、Corneometer(登録商標)(CM 825、Courage+Khazaka、Germany)で測定した。
2) 実施例1及び比較例1〜3の組成物を2mg/cm2の量で前腕に適用した。
3) 適用の1時間後、前腕の皮膚状態を、再びCorneometer(登録商標)(CM 825、Courage+Khazaka、Germany)で測定した。
【0106】
試験の結果を、表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
表2は、フィトステリル/デシルテトラデシルミリストイルメチルβ-アラニン単独ではいかなる水和強化効果をも有さないことを示す。他方では、表2は、フィトステリル/デシルテトラデシルミリストイルメチルβ-アラニン及びグリセリンの組み合わせが、皮膚の水和に関して相乗効果を示すことを明らかに示している。比較例2及び3と比較例1との差の合計(-0.6+9.27=8.67)は、実施例1と比較例1との差(+12.98)をはるかに下回る。
【0109】
(比較例4から7)
比較例4から7の水中油型エマルションの形態の以下の組成物を、後述の調製方法に従って表3に示す成分を混合することにより調製した。表3中の数字は、組成物の全重量に対して重量パーセントを意味する。
【0110】
【表3】

【0111】
調製方法
1) A相及びB相を、別々に約70〜75℃までそれぞれ加熱した。
2) 相BをA相中に注いだ。
3) 混合物をホモジナイザーで8000rpmで5分間ホモジナイズした。
4) C相を混合物に加え撹拌した。
5) 混合物を冷却し、D相及びE相を加えた。
【0112】
比較例4〜7について、水和性を、以下の方法に従って測定し評価した。
【0113】
試験方法
1) 24名の女性ボランティアについて、前腕の素肌の状態を、Corneometer(登録商標)(CM 825、Courage+Khazaka、Germany)で測定した。
2) 比較例4〜7の組成物を2mg/cm2の量で前腕に適用した。
3) 適用の1時間後、前腕の皮膚状態を、再びCorneometer(登録商標)(CM 825、Courage+Khazaka、Germany)で測定した。
【0114】
試験の結果を、表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
表4は、フィトステリル/デシルテトラデシルミリストイルメチルβ-アラニン及び分子中で2個のヒドロキシ基を有する化合物である及びブチレングリコールの組み合わせが、皮膚の水和に関して改善を示さないことを明らかに示している。
【0117】
(比較例8から11)
比較例8から11の水中油型エマルションの形態の以下の組成物を、後述の調製方法に従って表5に示す成分を混合することにより調製した。表5中の数字は、組成物の全重量に対して重量パーセントを意味する。
【0118】
【表5】

【0119】
調製方法
1) A相及びB相を、別々に約70〜75℃までそれぞれ加熱した。
2) B相をA相中に注いだ。
3) 混合物をホモジナイザーで8000rpmで5分間ホモジナイズした。
4) C相を混合物に加え撹拌した。
5) 混合物を冷却し、D相及びE相を加えた。
【0120】
比較例8〜11について、水和性を、以下の方法に従って測定し評価した。
【0121】
試験方法
1) 24名の女性ボランティアについて、前腕の素肌の状態を、Corneometer(登録商標)(CM 825、Courage+Khazaka、Germany)で測定した。
2) 比較例8〜11の組成物を2mg/cm2の量で前腕に適用した。
3) 適用の1時間後、前腕の皮膚状態を、再びCorneometer(登録商標)(CM 825、Courage+Khazaka、Germany)で測定した。
【0122】
試験の結果を、表6に示す。
【0123】
【表6】

【0124】
表6は、フィトステリル/デシルテトラデシルミリストイルメチルβ-アラニン及び分子中で2個のヒドロキシ基を有する化合物である及びジプロピレングリコールの組み合わせが、皮膚の水和に関して改善を示さないことを明らかに示している。
【0125】
比較例1は、比較例5及び9に対応し、比較例2は、比較例6及び10に対応することに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(I):
【化1】

[式中、
R1は、5から21個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し;
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は1から4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基を表し;
R4は、ベヘニル基を除く1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基、2から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルケニル基、又は置換若しくは非置換のステリル基を表し;
nは、0から2の整数を表す]
によって表される少なくとも1種のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルと、
(B)3個以上のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の多価アルコールと
を含む、油中水型以外のエマルションの形態の化粧用及び/又は皮膚科用組成物。
【請求項2】
前記(A)の式(I)によって表されるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルが、
(i)式(I)中のR4が、ベヘニル基を除く1から34個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、分枝状又は直鎖のアルキル基であるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルと
(ii)式(I)中のR4が、置換若しくは非置換のステリル基であるN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルと
の混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)中のR1が、10から21個の炭素原子を有する非置換の直鎖アルキル基を表す、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)中のR4が、23から34個の炭素原子を有する非置換の分枝アルキル基又はフィトステリル基を表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)中のnが1を表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記(A)のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルが、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンデシルテトラデシル、又はそれらの混合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
混合物が、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリルとN-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンデシルテトラデシルとを20:80から80:20の比で含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記(B)の3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールが、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、又はそれらの混合物から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
油相が、少なくとも1種の非シリコーン油を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記(A)のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの量が、組成物の全重量に対して0.01から20重量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記(B)の3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの量が、組成物の全重量に対して0.1から30重量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記(B)の3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールの量対前記(A)のN-長鎖アシル中性アミノ酸エステルの量の比が1以上である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記エマルションが水中油型エマルションである、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚を水和することを目的とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を乾燥肌及び/又は唇に局所的に適用するステップを含む、乾燥肌及び/又は唇を処置するための化粧方法。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を皮膚及び/又は唇に局所的に適用するステップを含む、皮膚及び/又は唇を水和するための化粧方法。

【公表番号】特表2013−513550(P2013−513550A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527929(P2012−527929)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/JP2009/071196
【国際公開番号】WO2011/074127
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】