説明

水循環式コンプレッサにおける循環水交換方法及び循環水交換装置

【課題】循環水の水質が交換を必要とする程度に悪化したときに,随時,必要量だけ交換を行うことができる循環水の交換方法及び装置を提供する。
【解決手段】水循環式コンプレッサの循環水の循環系(10,20,31,32)に,給水回路50と排水回路33を連通し,それぞれに電磁開閉弁SV1,SV2を設ける。また,前記循環系内の循環水の電気伝導率を測定する測定手段61を設けると共に,測定手段61による測定結果に従って,前記電磁開閉弁SV1,SV2を開閉制御する制御手段70を設ける。そして,前記制御手段70により,測定された電気伝導率が予め設定された第1基準値Ss1以上となったとき,前記電磁開閉弁SV1,SV2を制御させ,循環水の電気伝導率が前記第1基準値Ss1に対して所定の低い値に設定された第2基準値Ss2未満となる迄,前記循環系に対する給・排水を交互に繰り返させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水循環式コンプレッサの循環水交換方法及び循環水交換装置に関し,より詳細には,純水器によって不純物が除去された水を循環水として使用する水循環式コンプレッサにおいて,循環水の水質を維持するための循環水交換方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油分を含む圧縮空気の供給を嫌う空気作業機や,油分を含む圧縮空気を使用できない例えば食品製造等の分野において使用する圧縮空気を得るために,一般に冷却,密封,潤滑のために使用される油に代えて,空気と共に水を吸い込んで吸入空気の圧縮を行う水循環式コンプレッサが存在する。
【0003】
この水循環式コンプレッサにおいて,空気と共に圧縮機本体内に供給された水は,圧縮空気と共に吐出されてセパレータレシーバタンク内に導入され,該セパレータレシーバタンク内で圧縮空気と水とに分離される。そして,セパレータレシーバタンク内で圧縮空気と分離された循環水は,ラジエータやフィルタなどを経て再度圧縮機本体に供給されて,圧縮作業の際の冷却,密封等に使用される。
【0004】
以上のように,水循環式コンプレッサでは,圧縮機本体,セパレータレシーバタンク,ラジエータ及びこれらを連通する管路等により形成された循環水の循環系が形成されていると共に,この循環水の循環系には,外部給水源に連通された給水回路が連結され,この給水回路に設けた開閉弁の開閉により循環水の循環系内に給水を行うことができるように構成されている。
【0005】
ところで,このような給水に使用する外部給水源としては,一般に水道水(上水道)が使用されるが,このような外部給水源より導入された水には金属イオン等の不純物が含まれている。そのため,このような不純物を含んだままの水を循環水の循環系内に導入すると,圧縮作業の際の熱等によって循環水が蒸発して減少した際に,循環水中の金属イオンが濃縮され,濃縮された金属イオンが結晶化して析出し,配管詰まりの原因となる等の問題が発生する。
【0006】
そのため,このような金属イオンの析出等による弊害を是正するために,水循環式コンプレッサに純水器を設け,外部給水源からの供給水中に含まれる不純物を予めこの純水器によって除去して純水に近付けた後,前記循環系に導入することが行われている。
【0007】
しかし,このようにして純水器を通過させた純水を循環水として導入したとしても,コンプレッサの配管等に使用している金属材料がイオンとなって循環水に溶解する等して,循環水中の金属イオン等の不純物が増加して,循環水の水質が悪化する。
【0008】
そのため,コンプレッサの累積運転時間が所定時間に達する毎に,循環水を交換して循環水の水質を改善する方法が提案されている。
【0009】
また,別の方法としては,前記循環水の循環系にバイパス回路を設け,循環系内の循環水を純水器に導入して不純物を除去した後,再度循環系に戻すことにより,循環水の水質を維持することが提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特許第3065302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
水循環式コンプレッサにおいて,循環水の水質悪化は,前述したように配管等に使用されている金属材料が循環水中に溶出することに起因するだけでなく,吸入する外気によっても悪化する。
【0012】
すなわち,吸入した外気に不純物が含まれていると,この不純物が圧縮等の際に循環水中に溶け込み,この作業を繰り返すことにより,循環水中に不純物が徐々に蓄積されて,水質が悪化する。
【0013】
そして,このような水質の悪化は,コンプレッサが吸入する外気の状態に影響され,吸入する外気が不純物を多く含むものである場合には循環水の水質低下は比較的短時間で起こり,一方,吸入する外気に含まれる不純物が少なければ,循環水の水質は,比較的長時間低下しない。
【0014】
このように,循環水の水質悪化の進行が,コンプレッサの累積運転時間以外の要因によって変化するものでありながら,コンプレッサの累積運転時間により一律に循環水の交換を行う前記従来技術の方法によれば,循環水の水質が既に交換が必要な程度に悪化していたとしても,コンプレッサの累積運転時間が設定時間に満たないときには交換されずにそのまま使用されることになり,前述のような配管詰まり等の弊害が生じる原因となる。
【0015】
また逆に,循環水の水質が低下していないにも拘わらず,設定された累積運転時間の経過により循環水の交換が行われれば,循環水が過剰に交換されることとなり,外部給水源からの供給水を処理するための純水器の使用頻度も増し,比較的高価な純水器,又は純水器のイオン交換樹脂カートリッジの交換頻度も高くなり経済的でない。
【0016】
一方,前述の特許文献1として挙げた従来技術にあっては,循環水の一部を純水器にバイパスさせることにより,循環水の水質を維持することができるものであるが,回路構成が複雑となるという問題がある。
【0017】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,比較的簡単な構成により,循環水の水質が交換を必要とする程度に悪化したときに,随時,必要量だけ交換を行うことができる循環水の交換方法及び装置を提供することで,循環水の交換不足による配管詰まり等の発生を好適に防止することができると共に,循環水を経済的に交換可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために,本発明の水循環式コンプレッサにおける循環水交換方法は,吸入空気を循環水と共に圧縮する圧縮機本体10と,前記圧縮機本体10の吐出口11と連通し,圧縮機本体10より吐出された圧縮空気と循環水とを導入して圧縮空気と循環水とに分離・貯溜するセパレータレシーバタンク20を備え,前記圧縮機本体10とセパレータレシーバタンク20間で前記循環水の循環系が形成された水循環式コンプレッサ1において,
前記循環系内の循環水の電気伝導率Smが予め設定された第1基準値Ss1以上となったとき,純水器45を通過させた外部給水源からの供給水を前記循環系に導入する給水と,前記循環系内の循環水の一部を排出する排水とを交互に行い,
前記循環水の電気伝導率が前記第1基準値Ss1に対して所定の低い値に設定された第2基準値Ss2未満となる迄,前記給排水を繰り返すことを特徴とする(請求項1)。
【0019】
前述の循環水交換方法において,前記循環系に対する給排水は,好ましくは以下の段階に従って行う。
【0020】
前記循環水の電気伝導率Smが前記第1基準値Ss1以上となったとき,前記循環系に対する給水を開始する第1段階と,
前記セパレータレシーバタンク20内の水位が所定の上限位置Lhとなったとき,前記第1段階で開始した給水を停止すると共に,循環水の排水を開始する第2段階と,
前記セパレータレシーバタンク20内の水位が所定の下限位置Llとなったとき,前記第2段階で開始した排水を停止すると共に,前記循環系に対する給水を再開する第3段階と,
前記セパレータレシーバタンク20内の水位が所定の中間位置Lmとなったときの前記循環水の電気伝導率Smが,前記第2基準値Ss2未満であるとき,前記3段階で開始した給水を停止して給排水処理を終了する段階,又は,前記第2基準値Ss2以上であるとき,前記第3段階で開始した給水を継続すると共に,前記第2段階以降の処理を繰り返す段階(請求項2)。
【0021】
なお,以上説明した循環水交換方法において,前記循環水の電気伝導率Smは,これを所定時間毎に所定回数測定し,前記所定回数測定された電気伝導率の平均値を求めると共に,求めた電気伝導率の平均値を,前記第1及び第2基準値と比較するものとしても良い(請求項3)。
【0022】
また,本発明の水循環式コンプレッサにおける循環水交換装置は,前記同様の基本構成を備えた水循環式コンプレッサ1に,
純水器45を備え,外部給水源と前記循環系とを連通する給水回路50と,
前記循環系に連通された排水回路33と,
前記循環系内の循環水の電気伝導率を測定する,例えば電気伝導率計や抵抗計等の電気伝導率測定手段61と,
前記給水回路50及び前記排水回路33の開閉手段(図示の例では電磁開閉弁SV1,SV2)をそれぞれ設けると共に,
前記電気伝導率測定手段61により測定された電気伝導率Smを,予め設定された第1基準値Ss1,及び前記第1基準値Ss1に対して所定の値低く設定された第2基準値Ss2と比較し,測定された電気伝導率Smが前記第1基準値Ss1以上であるときに前記給水回路50及び排水回路33に設けた前記開閉手段SV1,SV2を開閉制御して,前記循環系に対する給水と,前記循環水の一部排水とを交互に行わせると共に,前記循環水の電気伝導率Smが前記第2基準値Ss2未満となる迄,前記給排水を繰り返させる制御手段70を設けたことを特徴とする(請求項4)。
【0023】
上記構成の循環水交換装置において,さらに,前記セパレータレシーバタンク20内の水位を検知する水位検知手段(図示の例ではレベルスイッチ62)を設けると共に,前記制御手段70が,以下の各段階に従って前記開閉手段SV1,SV2の開閉制御を行うように構成することができる。
【0024】
前記電気伝導率測定手段61により測定された電気伝導率Smを,前記第1基準値Ss1と比較し,測定された電気伝導率Smが前記第1基準値Ss1以上であるときに前記給水回路50の開閉手段SV1を開く第1段階と,
前記水位検知手段62により所定の上限位置Lhの水位が検知されたとき,前記給水回路50の前記開閉手段SV1を閉じると共に,前記排水回路33の前記開閉手段SV2を開く第2段階と,
前記水位検知手段62により,所定の下限位置Llの水位が検知されたとき,前記排水回路33の前記開閉手段SV2を閉じる共に,前記給水回路50の前記開閉手段SV1を開く第3段階と,
前記水位検知手段62により所定の中間位置Lmの水位が検知されたとき,前記電気伝導率測定手段61により測定された電気伝導率Smを,前記第2基準値Ss2と比較して,測定された電気伝導率Smが前記第2基準値Ss2未満であるとき,前記給水回路50の開閉手段SV1を閉じて給排水を終了させる段階,又は前記第2基準値Ss2以上であるとき,前記給水回路50の開閉手段SV1の開状態を維持して前記第2段階以降の制御を繰り返す段階(請求項5)。
【0025】
なお,前記制御手段70は,前記電気伝導率測定手段61が測定した電気伝導率を,所定の時間隔毎に所定回数取得して,該取得した所定回数の電気伝導率の平均値を算出すると共に,前記平均値を前記第1及び第2電気伝導率と比較するように構成しても良い(請求項6)。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した本発明の構成により,本発明の循環水交換方法及び循環水交換装置によれば,コンプレッサ1の累積運転時間に拘わらず,測定された循環水の電気伝導率Smに基づき循環水の水質が交換が必要な程度に悪化したとき,随時,循環水の交換を行うと共に,必要量のみの循環水の交換を行うことが可能であり,循環水の交換不足や,過剰な交換を防止することができた。
【0027】
その結果,循環水の交換不足による金属イオン等の不純物の析出,及びこれに基づく配管詰まり等を好適に防止することができると共に,循環水の過剰な交換による純水器45のイオン交換樹脂の能力低下を防止して,経済的な循環水の交換を行うことが可能となった。
【0028】
また,循環系に対する給水,排水を繰り返すと共に,循環水を一部ずつ置き換える構成としたことから,水循環式コンプレッサ1の運転中における循環水の交換が可能であり,循環水の交換に際して作業を停止する必要がない。
【0029】
さらに,前記循環水の交換を,セパレータレシーバタンク20内の水位に対応して行うことにより,循環系内の循環水を好適な量に維持することが可能である。
【0030】
なお,循環水の電気伝導率Smを所定の時間毎に所定回数測定し,前記所定回数測定された電気伝導率の平均値に基づいて循環水の電気伝導率を基準値と比較することとした場合には,電気伝導率の測定値の正確性を担保することができ,一時的な変動による作動等を好適に防止することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0032】
〔水循環式コンプレッサの基本構成〕
図1において,1は,水循環式コンプレッサであり,この水循環式コンプレッサは,循環水と共に圧縮空気を圧縮する圧縮機本体10を備えると共に,この圧縮機本体10の吐出口11に吐出回路31を介して連通され,圧縮機本体10より循環水との気液混合流体として吐出された圧縮空気を導入するセパレータレシーバタンク20を備えている。
【0033】
また,このセパレータレシーバタンク20には,セパレータレシーバタンク20内で圧縮空気と分離された循環水を,前記圧縮機本体10の給水口12に導入するリターン回路32が設けられ,前記圧縮機本体10,セパレータレシーバタンク20及び両者間を連通する吐出回路31,リターン回路32によって,前述の循環水が循環する系(循環系)が形成されている。
【0034】
なお,図1において,リターン回路32中に示す符号41はラジエータ,符号42は水フィルタであり,前記セパレータレシーバタンク20内の循環水を冷却すると共に,濾過して,圧縮機本体10の給水口12に導入する。
【0035】
〔循環水交換装置〕
以上のような基本構成を備えた水循環式コンプレッサ1において,本発明の循環水交換装置は,循環系に対する給水を行うための構成(給水部),循環系からの排水を行うための構成(排水部),及び,前記給排水を制御するための構成(制御部)として,以下の構成を備えている。
【0036】
1.給水部
前記循環水の循環系に対する給水を行うために,外部給水源からの供給水を前記循環系に導入するための給水回路50が設けられている。
【0037】
この給水回路50は,循環水の循環系に対して外部供給源からの供給水を導入し得るものであればその接続位置は適宜変更可能であるが,本実施形態にあってはこの給水回路50の一端を,開閉弁43を介して上水道等の外部給水源に連通すると共に,他端を圧縮機本体10の吸気側に連通することで,コンプレッサ1の運転中における給水を可能とした。
【0038】
そして,この給水回路50に,上流側から順に水フィルタ44,純水器45を配置し,外部給水源からの供給水を水フィルタ44で濾過した後,純水器45で純水と成し,循環水の循環系内に,不純物の除去された純水を給水できるように構成した。
【0039】
また,前記給水回路50中には,この給水回路50の開閉手段である電磁開閉弁(本実施形態にあっては常時閉型)SV1を設け,この電磁開閉弁SV1を後述する制御手段70からの電気信号によって制御することで給水回路50を開閉して,循環系に対する給水の開始,停止を行うことができるように構成した。
【0040】
2.排水部
前記循環系内の循環水を機外に排水するために,一端を前記循環系に連結する排水回路33を設けている。
【0041】
図示の実施形態にあっては,この排水回路33の一端をセパレータレシーバタンク20に連通し,このセパレータレシーバタンク20内に貯溜された循環水を,セパレータレシーバタンク20内の圧力によって排水可能とした。
【0042】
もっとも,この排水回路33は,循環水の排水を可能とするものであれば,循環系のいずれの位置に連通しても良く,例えばリターン回路32に連通する等,循環系の他の位置に連通するものとしても良い。
【0043】
この排水回路33には,図1に示すように,排水回路33を開閉する開閉手段として,電磁開閉弁(本実施形態にあっては常時閉型)SV2を設け,この電磁開閉弁SV2を後述する制御手段70からの電気信号によって制御することで,循環系内の循環水の排水を開始及び停止することができるように構成した。
【0044】
3.制御部
前述の給水回路50の開閉手段(電磁開閉弁SV1)及び,排水回路33の開閉手段(電磁開閉弁SV2)を開閉制御して,循環系に対する給排水を,所定の手順で行うために,本発明の循環水交換装置は,循環系内の循環水の電気伝導率(又はその逆数である抵抗率)を測定するための電気伝導率測定手段61,前記セパレータレシーバタンク20内の水位を検知する水位検知手段62,及び,前記電気伝導率測定手段61による測定結果,及び前記水位検知手段62の検知信号に基づいて,前記電磁開閉弁SV1,SV2を所定の段階に従って開閉制御する制御手段70を設けている。
【0045】
(1)電気伝導率測定手段
電気伝導率測定手段61は,循環系内の循環水の電気伝導率Smを測定し,測定結果を電気信号として後述する制御手段70に出力する。
【0046】
この電気伝導率測定手段61としては,既知の各種の電気伝導率計を使用することができ,また,電気伝導率は抵抗率の逆数であることから,前記電気伝導率計に代えて抵抗計を設け,これにより供給水の電気伝導率(抵抗率)を測定するものとしてもよい。
【0047】
図示の実施形態にあっては,この電気伝導率測定手段61を,セパレータレシーバタンク20で分離された循環水を圧縮機本体10の給水口12に導入するためのリターン回路32中に設けているが,この電気伝導率測定手段61は,循環水の電気伝導率Smを測定可能な位置であれば,循環系内のいずれの位置に設けるものとしても良く,例えばセパレータレシーバタンク20内の循環水の電気伝導率を測定するようにしても良い。
【0048】
(2)水位検知手段
水位検知手段62は,セパレータレシーバタンク20内の水位を検知して後述の制御手段70に出力し,後述する制御手段70は,前述の電気伝導率測定手段61による電気伝導率と共に,この検知信号に基づいて前記電磁開閉弁SV1,SV2を開閉制御する。
【0049】
本実施形態にあっては,この水位測定手段としてレベルスイッチ62をセパレータレシーバタンク20内に配置し,このレベルスイッチ62により,セパレータレシーバタンク20内の水位を,上限位置Lh,中間位置Lm,下限位置Llの三位置で検知可能とした。
【0050】
本実施形態にあっては,このレベルスイッチ62に設けた上限位置Lh,中間位置Lm,下限位置Llの各位置のスイッチを等間隔に配置し,上限位置Lhと中間位置Lm間,及び,中間位置Lmと下限位置Ll間に,それぞれ同量の循環水を貯溜できるように構成した。従って,このレベルスイッチ62により,水位のみならず,水量の計測が可能となっている。
【0051】
(3)制御手段
制御手段70は,前述した電気伝導率測定手段61及び水位検知手段(レベルスイッチ62)からの電気信号を受信して,受信した電気信号に従って,給水回路50に設けた電磁開閉弁SV1,及び排水回路33に設けた電磁開閉弁SV2を,予め設定されたプログラム等に従って開閉制御するものであり,前記プログラムを記憶した電子制御装置等によって実現される。
【0052】
この制御手段70による制御を,図2及び図3に従って説明すれば,以下の通りである。
【0053】
なお,後述するように,本発明の装置による循環水の交換は,循環水を供給水と一部ずつ置き換えることにより行うものであり,給水された純水と循環水とが十分に混ざり合っていない状態では測定される電気伝導率が不安定な場合がある。そこで,本実施形態にあっては,以下における第1,第2基準値との比較を測定された電気伝導率の平均値と比較するものとした。
【0054】
具体的には,前記制御手段70が前記電気伝導率測定手段61によって測定された電気伝導率Smを取得するに際し,内蔵されたタイマ等によって所定時間毎に測定値を取得し,取得した各測定値を一時的に記憶すると共に,取得した測定値が所定数に達したときに,前記取得した数値の平均値を算出して,この平均値を,循環水の電気伝導率Smとした。
【0055】
(3-1)初期状態
循環水の交換が行われていない状態,すなわち,制御手段70が,給水回路50及び排水回路33に設けられた電磁開閉弁SV1,SV2のいずれに対しても制御信号を出力していない初期状態において,常時閉型の前記電磁開閉弁SV1,SV2は,給水回路50及び排水回路33をいずれも閉じた状態にあり(図1参照),循環系に対する給排水は,行われていない状態にある。
【0056】
なお,セパレータレシーバタンク20内の循環水の水位は,図示せざる水位調整機構によって中間位置Lmとなるように調整されており,この状態において制御手段70は,レベルスイッチ62の下限位置Ll及び中間位置Lmのスイッチからの検知信号を受信した状態にある(図3中のT0)。
【0057】
(3-2) 第1段階
以上の初期状態から,水循環式コンプレッサ1が外気を吸入して圧縮作業を行うにつれ,循環水中の金属イオン等の不純物量が増加し,これに伴い循環水の電気伝導率が上昇する。
【0058】
そして,電気伝導率計61により測定された電気伝導率Smが,所定の第1基準値Ss1以上になり,制御手段70がこれを判定すると,電磁開閉弁SV1に制御信号を出力してこれを開く(図3中のT1)。その結果,この電磁開閉弁SV1の開により,給水回路50を介して循環系内に給水が開始される。
【0059】
(3-3) 第2段階
前述の第1段階で開始された給水は,セパレータレシーバタンク20内の水位が,所定の上限位置Lhとなる迄行われ,従って制御手段70は,レベルスイッチ62がセパレータレシーバタンク20内の水位が所定の上限位置Lhに達したことを検知するまで,電磁開閉弁SV1を開と成す制御信号の出力を維持する。
【0060】
そして,レベルスイッチ62が,セパレータレシーバタンク20内の水位が上限位置Lhであると検知すると,この検知信号を受信した制御手段70は給水回路50の電磁開閉弁SV1を閉じ,循環系に対する給水を停止すると共に,排水回路33の電磁開閉弁SV2を開き,循環水の排水を開始する(図3中のT2)。
【0061】
(3-4) 第3段階
前述の第2段階で開始された排水は,セパレータレシーバタンク20内の水位が,所定の下限位置Llとなる迄行われ,従って制御手段70は,レベルスイッチ62がセパレータレシーバタンク20内の水位が所定の下限位置Llにあることを検知するまで,電磁開閉弁SV2を開と成す制御信号の出力を維持する。
【0062】
そして,レベルスイッチ62により,セパレータレシーバタンク20内の水位が下限位置Llにあると検知されると,制御手段70は排水回路33の電磁開閉弁SV2を閉じ,循環系からの排水を停止すると共に,給水回路50の電磁開閉弁SV1を開き,循環系に対する給水を再開する(図3中のT3)。
【0063】
(3-5) 終了又は継続段階
前述の第3段階で開始された給水により,セパレータレシーバタンク20内の水位が上昇し,レベルスイッチ62がセパレータレシーバタンク20内の水位が所定の中間位置Lmにあると検知すると,制御手段70はこの時点における循環水の電気伝導率Smが,第2基準値Ss2未満であるか否かを判定する。
【0064】
そして,電気伝導率計61により測定された電気伝導率Smが前記第2基準値Ss2未満であると判定すると,給水回路50の電磁開閉弁SV1を閉じて給水を停止し,循環系に対する給排水を終了する(図3中のT4’)。
【0065】
一方,電気伝導率計61により測定された電気伝導率Smが前記第2基準値Ss2以上であると判定すると,電磁開閉弁SV1に対する制御信号の出力を継続し,循環系に対する給水を継続する(図3中のT4)。
【0066】
その後,制御手段70は,前述の第2段階以降の動作を繰り返し,循環水の電気伝導率Smが,第2基準値Ss2未満となる迄,前述した段階に従った給排水が繰り返される。
【0067】
(3-6) その他
以上の説明では,制御手段70は,判定ないしはレベルスイッチ62からの検知信号の受信に同期して電磁開閉弁SV1.SV2を作動するものとして説明したが,例えば判定ないしは検知信号の受信に対して,一方,又は双方の電磁開閉弁SV1,SV2を,所定のタイムラグを持たせて制御するよう構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の循環水交換装置を備えた水循環式コンプレッサの全体構成図。
【図2】本発明の方法による給排水制御のフロー図。
【図3】本発明の水交換装置の各部の動作を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0069】
1 水循環式コンプレッサ
10 圧縮機本体
11 吐出口
12 給水口
20 セパレータレシーバタンク
31 吐出回路
32 リターン回路
33 排水回路
41 ラジエータ
42,44 水フィルタ
43 開閉弁
45 純水器
50 給水回路
61 電気伝導率測定手段(電気伝導率計)
62 水位検知手段(レベルスイッチ)
70 制御手段
SV1,SV2 電磁開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入空気を循環水と共に圧縮する圧縮機本体と,前記圧縮機本体の吐出口と連通し,圧縮機本体より吐出された圧縮空気と循環水とを導入して圧縮空気と循環水とに分離・貯溜するセパレータレシーバタンクを備え,前記圧縮機本体とセパレータレシーバタンク間で前記循環水の循環系が形成された水循環式コンプレッサにおいて,
前記循環系内の循環水の電気伝導率が予め設定された第1基準値以上となったとき,純水器を通過させた外部給水源からの供給水を前記循環系に導入する給水と,前記循環系内の循環水の一部を排出する排水とを交互に行い,
前記循環水の電気伝導率が前記第1基準値に対して所定の低い値に設定された第2基準値未満となる迄,前記給排水を繰り返すことを特徴とする水循環式コンプレッサにおける循環水交換方法。
【請求項2】
前記循環系に対する給排水を,以下の段階に従って行うことを特徴とする請求項1記載の水循環式コンプレッサにおける循環水交換方法。
前記循環水の電気伝導率が前記第1基準値以上となったとき,前記循環系に対する給水を開始する第1段階と,
前記セパレータレシーバタンク内の水位が所定の上限位置となったとき,前記第1段階で開始した給水を停止すると共に,循環水の排水を開始する第2段階と,
前記セパレータレシーバタンク内の水位が所定の下限位置となったとき,前記第2段階で開始した排水を停止すると共に,前記循環系に対する給水を再開する第3段階と,
前記セパレータレシーバタンク内の水位が所定の中間位置となったときの前記循環水の電気伝導率が,前記第2基準値未満であるとき,前記3段階で開始した給水を停止して給排水処理を終了する段階,又は,前記第2基準値以上であるとき,前記第3段階で開始した給水を継続すると共に,前記第2段階以降の処理を繰り返す段階。
【請求項3】
前記循環水の電気伝導率を所定時間ごとに所定回数測定し,前記所定回数測定された電気伝導率の平均値を求めると共に,求めた電気伝導率の平均値を,前記第1及び第2基準値と比較することを特徴とする請求項1又は2記載の水循環式コンプレッサにおける循環水交換方法。
【請求項4】
吸入空気を循環水と共に圧縮する圧縮機本体と,前記圧縮機本体の吐出口と連通し,圧縮機本体より吐出された圧縮空気と循環水とを導入して圧縮空気と循環水とに分離・貯溜するセパレータレシーバタンクを備え,前記圧縮機本体とセパレータレシーバタンク間で前記循環水の循環系を形成した水循環式コンプレッサにおいて,
純水器を備え,外部給水源と前記循環系とを連通する給水回路と,
前記循環系に連通された排水回路と,
前記循環系内の循環水の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段と,
前記給水回路及び前記排水回路の開閉手段をそれぞれ設けると共に,
前記電気伝導率測定手段により測定された電気伝導率を,予め設定された第1基準値,及び前記第1基準値に対して所定の値低く設定された第2基準値と比較し,測定された電気伝導率が前記第1基準値以上であるときに前記給水回路及び排水回路に設けた前記開閉手段を開閉制御して,前記循環系に対する給水と,前記循環水の一部排水とを交互に行わせると共に,前記循環水の電気伝導率が前記第2基準値未満となる迄,前記給排水を繰り返させる制御手段70を設けたことを特徴とする水循環式コンプレッサにおける循環水交換装置。
【請求項5】
前記セパレータレシーバタンク内の水位を検知する水位検知手段を設けると共に,前記制御手段が,以下の各段階に従って前記開閉手段の開閉制御を行うことを特徴とする請求項4記載の水循環式コンプレッサにおける循環水交換装置。
前記電気伝導率測定手段により測定された電気伝導率を,前記第1基準値と比較し,測定された電気伝導率が前記第1基準値以上であるときに前記給水回路の開閉手段を開く第1段階と,
前記水位検知手段により所定の上限位置の水位が検知されたとき,前記給水回路の前記開閉手段を閉じると共に,前記排水回路の前記開閉手段を開く第2段階と,
前記水位検知手段により,所定の下限位置の水位が検知されたとき,前記排水回路の前記開閉手段を閉じる共に,前記給水回路の前記開閉手段を開く第3段階と,
前記水位検知手段により所定の中間位置の水位が検知されたとき,前記電気伝導率測定手段により測定された電気伝導率を,前記第2基準値と比較して,測定された電気伝導率が前記第2基準値未満であるとき,前記給水回路の開閉手段を閉じて給排水を終了させる段階,又は前記第2基準値以上であるとき,前記給水回路の開閉手段の開状態を維持して前記第2段階以降の制御を繰り返す段階。
【請求項6】
前記制御手段が,前記電気伝導率測定手段が測定した電気伝導率を,所定の時間間隔毎に所定回数取得して,該取得した所定回数の電気伝導率の平均値を算出すると共に,前記平均値を前記第1及び第2電気伝導率と比較することを特徴とする請求項4又は5記載の水循環式コンプレッサにおける循環水交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−218209(P2007−218209A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41298(P2006−41298)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000241795)北越工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】