説明

水性ガスシフト反応触媒および該触媒の製造方法。

【課題】
燃料電池に使用される水素ガス中に含まれる一酸化炭素を転化除去するための水性ガスシフト反応触媒を提供する。
【解決手段】
(i)ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と(ii)周期律表第4A族元素の非晶質酸化物とからなる複合酸化物担体に、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ruからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の金属微粒子が担持されてなり、かつ前記複合酸化物担体中の、周期律表第4A族元素の酸化物の含有量が5〜25重量%の範囲にある水性ガスシフト反応触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性ガスシフト反応触媒および該触媒の製造方法に関する。
さらに詳しくは、燃料電池に使用される水素ガス中に含まれる一酸化炭素を転化除去するための水性ガスシフト反応触媒および該触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンな水素をエネルギー源とする高効率、無公害でCO2等温暖化ガスを発
生しない発電システムとして燃料電池が注目されている。このような燃料電池は、家庭や事業所など固定設備、自動車などの移動設備などでの使用を目的に本格的な開発研究が行われている。
【0003】
燃料電池は使用する電解質によって分類され、アルカリ電解質型、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型に分けられる。このとき固体高分子電解質型およびリン酸型は電荷移動体がプロトンであり、プロトン型燃料電池ともいわれる。
【0004】
この燃料電池に用いる燃料としては、天然ガス、LPガス、都市ガス、アルコール、ガソリン、灯油、軽油などの炭化水素系燃料が挙げられる。
このような炭化水素系燃料を、まず水蒸気改質、部分酸化などの反応により水素ガスに富む改質ガスを得、含まれているCOガスを除去して水素ガスを得る。
【0005】
COガスの除去は、水性ガスシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)を利用してCO
を選択的に転化除去して、CO濃度を通常1重量%以下に低減している。
COガスが除去された水素ガスは、アノードに供給され、アノードの金属触媒によってプロトン(水素イオン)と電子に解離し、電子は回路を通じて仕事をしながらカソードに流れ、プロトン(水素イオン)は電解質膜を拡散してカソードに流れ、カソードにてこの電子、水素イオンとカソードに供給される酸素とから水となって電解質膜に拡散する。すなわち、酸素と燃料ガスに由来する水素とを供給して水を生成する過程で電流を取り出すメカニズムになっている。
【0006】
ところで、水素ガス中のCOガスの除去が不充分な場合、アノードの金属触媒がCOによって被毒し失活するという問題があった。特に、例えば、室温付近の低温で燃料電池が運転される場合は、数十ppm以下のCOの存在によっても触媒が完全に失活してしまうことがあった。また、完全に失活しない場合であっても安全上の問題、たとえばCOガス中毒の可能性などが指摘されていた。
【0007】
このため、COガスを除去する際には、少なくとも数ppmレベルまで除去することが求められていた。
従来、COガス除去技術として、深冷分離法、PSA法、有機・金属膜分離法などが提案されているがCO除去レベル、コンパクト性、耐久性、コストなどの点において一長一短があるといわれている。
【0008】
これまで、COガス除去触媒として金属酸化物担体に活性成分として金属微粒子を担持した触媒が提案されている。(特許文献1(特開平8−295502号公報)、特許文献2(国際公開WO00/54879号)、特許文献3(特開2002−54427号公報))
特許文献1には、酸化マンガン、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ニッケルおよびこれらの複合酸化物から選ばれる金属酸化酸化物に、金超微粒子が分散担持さ
れた、燃料電池用一酸化炭素除去触媒が記載されている。
【0009】
特許文献2には、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、シリカ・マグネシア、ゼオライト、マグネシア、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化クロムなどの金属酸化物担体に、白金超微粒子が分散担持された、燃料電池用一酸化炭素除去触媒が記載されている。
【0010】
さらに特許文献3には、CeO2、PrO4などの希土類金属酸化物と、NiO、Fe2
3、CuO、Mn25などの遷移金属酸化物からなる酸素吸蔵能を有する担体に、Pt
、Pd、Ru、Ir、Agなどの貴金属を担持した水性ガスシフト反応触媒が例示されている。また、担体として、CeO2が好ましく、さらにZrO2で安定化されたCeO2
ZrO2が好ましい旨が開示されている。
【0011】
また、Debora J、Myers et al、Electrochemical
Technology Program、American Institute of Chemical Engineers March 10−14、2002(非特許文献1)には、水性ガスシフト触媒の担体の調製法としてグリシン−硝酸法が開示されている。具体的に非特許文献1には、硝酸セリウムとドーピング剤(ジルコニウム等の塩)とを水に溶解し、これにグリシンを混合し、この混合物を加熱し、水を蒸発させて硝酸化合物を急速に酸化したのち、生成した粉末を空気中、800℃で2時間焼成し、比表面積が30〜60m2/gの均一にドーピングされたセリア粉末を調製し、この粉末に白金
を担持した水性ガスシフト触媒が開示されている。このようにして得られた水性ガスシフト触媒は活性が高いことが報告されている。
【0012】
なお、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの担体に、金微粒子を担持することは特公平5−34284号公報、特公平6−20559号公報、特公平6−29137号公報などに開示されている。
【特許文献1】特開平8−295502号公報
【特許文献2】国際公開WO00/54879号
【特許文献3】特開2002−54427号公報
【非特許文献1】Debora J、Myers et al、Electrochemical Technology Program、American Institute of Chemical Engineers March 10−14、2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1および2のような従来の担体成分では、COシフト反応の活性低下が早く、耐久性が不充分であるという問題点があった。
また特許文献3に記載された複合酸化物の担体であれば、触媒活性を高めることが可能となるものの、製造毎の触媒性能の変動が大きく、また必ずしも長期間の使用に耐えられない場合があった。
【0014】
その理由としては、特許文献3には、[0017]欄に、CeO2/ZrO2が特定の範囲を外れると、結晶構造が壊れやすくなると記載されている。すなわち特許文献3に開示されたCeO2/ZrO2は結晶構造を有するものであると思料される。そして、このような結晶性の固溶体では、十分に高い比表面積を有する担体を得ることができず、COシフト反応の活性が変動するという問題があった。
【0015】
非特許文献1では、やはり得られる担体の比表面積が低く、このような担体を用いて得られる触媒は、製造毎にCOシフト反応の活性が変動するという問題点があった。この原
因としては、製造方法に起因していると考えている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような情況のもと、熱的安定性に優れ、長期にわたって高活性を維持することが可能な水性ガスシフト反応触媒の出現が望まれていた。
上記問題点に鑑み、本願発明者等は鋭意検討した結果、
(i)ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と(ii)周期律表第4A族元素の非晶質酸化物とからなる複合酸化物担体に、
Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ruからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の金属微粒子が
担持されてなり、かつ
前記複合酸化物担体中の、周期律表第4A族元素の酸化物の含有量が5〜25重量%の範囲にある水性ガスシフト反応触媒は、
担体が、特定の結晶性の組合せの複合酸化物からなるので、熱安定性が高く、特定の結晶性の酸化物と、非晶質の酸化物とからなっており、比表面積が高いので、長期にわたって高活性を維持することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
さらに、前記担体の比表面積が50〜200m2/gの範囲にあり、金属微粒子が担持
された担体の比表面積が45〜180m2/gの範囲にあることが好ましく、この範囲に
あれば活性が高く、熱安定性に優れている。
【0018】
前記担体は、前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と第4A族元素の非晶質酸化物以外に、
さらに周期律表の第1A族、第1B族、第2A族、第2B族、第3A族(ランタノイド元素およびイットリウムを除く)、第3B族、第4B族、第5A族、第5B族、第6A族、第6B族、第7A族、第8族からなる群から選ばれる元素(M)の1種以上の酸化物を含有することが好ましく、特に前記元素(M)の酸化物がSiO2、ZnO、Al23
WO3、Fe23、Sb23、Na2O、K2O、Li2Oから選ばれる1種以上の非晶質酸化物であることが望ましい。このような非晶質酸化物を含有していると経時的な活性低下を特に抑制することが可能となる。
【0019】
前記酸化物担体中に含まれる元素(M)の酸化物の量が、25重量%以下の量であることが望ましく、このような範囲にあればより効果的である。
以上のような本発明に係る水性ガスシフト反応触媒は、
周期律表の前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の塩または有機錯体水溶液と、
周期律表の第4A族元素の塩または有機錯体水溶液と、必要に応じて酸または塩基とを
同時に混合し、得られた複合酸化物または水酸化物を洗浄し、ついで乾燥および/または焼成して担体を成形したのち、
得られた担体に、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Ni、Ir、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ruからなる群から選ばれる1種以上の元素の塩または有機錯体の水溶液を接触させ、
ついで乾燥した後、還元雰囲気下で加熱処理して、前記塩または有機錯体を還元して、金属微粒子を担体に担持させることで製造される。
【0020】
前記複合酸化物または水酸化物を洗浄した後、得られる担体中の酸化チタンナノチューブ含有量が酸化物に換算して50重量%以下となるよう添加してもよい。
前記周期律表の前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の塩または有機錯体水溶液と、周期律表の第4A族元素の塩または有機錯体水溶液と、必要に応じて酸または塩基との混合時または混合後に、前記ランタノイド元素および
イットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と第4A族元素の非晶質酸化物以外に、さらに周期律表の第1A族、第1B族、第2A族、第2B族、第3A族(ランタノイド元素およびイットリウムを除く)、第3B族、第4B族、第5A族、第5B族、第6A族、第6B族、第7A族、第8族からなる群から選ばれる元素(M)の1種以上の元素(M)の化合物の水溶液を混合してもよい。
【0021】
さらに、成形された担体の比表面積が50〜200m2/gの範囲にあり、金属微粒子
が担持された担体の比表面積が45〜180m2/gの範囲にあることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、担体がランタノイド元素および/またはYの結晶質酸化物と周期律表の4A族元素の非晶質酸化物とからなる高比表面積で均一に複合化した複合酸化物担体であるので熱的安定性に優れ、このような複合酸化物担体に微粒の金属微粒子が凝集することなく均一に分散しているので長期にわたって高活性を維持することができる水性ガスシフト反応触媒および該水性ガスシフト反応触媒の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、まず本発明に係る水性ガスシフト反応触媒について説明する。
水性ガスシフト反応触媒
本発明に係る水性ガスシフト反応触媒は、周期律表のランタノイド元素および/またはYの結晶質酸化物と周期律表の4A族元素の非晶質酸化物とからなる複合酸化物担体に、金属微粒子が担持されてなることを特徴としている。
【0024】
複合酸化物担体
本発明に用いる複合酸化物担体(以後、単に担体という)は、周期律表のランタノイド元素および/またはYからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の結晶性酸化物と周期律表の4A族元素の非晶性酸化物とからなっている。
【0025】
このような特定の酸化物の組合せからなる担体は、特許文献3に記載されているように、酸素吸蔵能が高く、貴金属を担持させた触媒は、水性ガスシフト反応触媒として高い活性を有している。
【0026】
その理由としては明確ではないものの、本発明の製造方法では、高比表面積の担体が得られ、この担体の比表面積が高いことに起因していると思料される。さらに、貴金属粒子の粒子成長が起こりにくいと思料される。なお、担体を構成する酸化物の双方が結晶性であるか、結晶性の固溶体となるような場合は、比表面積の高い担体となりにくいと考えている。
【0027】
ランタノイド元素としてはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種または2種以上が挙げられる。なかでもCeは活性の高い水性ガスシフト反応触媒が得られるので好ましい。
【0028】
複合酸化物担体中に含まれる、ランタノイド元素および/またはYの酸化物量は、75重量%以上、さらに、75〜95重量%、さらには80〜90重量%の範囲にあることが好ましい。ランタノイド元素および/またはYの酸化物の含有量が、75重量%未満の場合は、得られるランタノイド元素および/またはYの酸化物が無定型であったり、結晶性であっても結晶性が充分でなく、得られる触媒の水性ガスシフト反応活性が低下する。担体中のランタノイド元素および/またはYの酸化物の含有量が多すぎても、第4A族元素を含む効果が顕現されず、活性が低下することがある。
【0029】
第4A族元素としてはTi、Zr、Hf、Rfが挙げられる。これらのなかでもZrは、ランタノイド元素および/またはYと均一に複合化しやすく、得られる触媒は熱的安定性に優れるとともに高い活性を示すので、好適である。
【0030】
担体中の第4A族元素の酸化物の含有量は、25重量%以下、さらには5〜25重量%、さらに好ましくは10〜15重量%の範囲にあることが望ましい。担体中の第4A族元素の酸化物の含有量が、少ない場合は活性が不充分である。第4A族元素の酸化物の含有量が、酸化物として25重量%を超えると得られるランタノイド元素および/またはYの酸化物が無定型であったり、結晶性であっても結晶性が充分ではなく、得られる触媒の水性ガスシフト反応活性が低下する。
【0031】
本発明では、周期律表のランタノイド元素および/またはYの酸化物が結晶質である。なお、結晶質・非晶質の判断は、X線回折による。
ランタノイド元素および/またはYの酸化物が結晶質であるとは、複合酸化物担体のX線回折において、ランタノイド元素および/またはYの酸化物結晶のスペクトルが認められることを意味している。
【0032】
ランタノイド元素および/またはYの酸化物が非晶質であると、(金属微粒子を担持させた触媒の)初期活性が低下するとともに、経時的にも活性が低下する傾向にある。その理由は明確ではないものの、水分存在下での反応であるため、たとえば、比表面積の低下を伴うような構造変化が起こるものと思料される。
【0033】
また、本発明に用いる担体は、周期律表の第4A族元素の酸化物が非晶質である。なお、第4A族元素の酸化物が非晶質であるとは、複合酸化物担体のX線回折において、第4A族元素の酸化物結晶のスペクトルが認められないことを意味している。
【0034】
すなわち、このことは、第4A族元素がX線的に結晶性を示すほど大きな酸化物の状態になく、ランタノイド元素および/またはYの酸化物中でランタノイド元素またはY元素の一部が第4A族元素に置換した状態(ドーピングということもある)にあると考えられる。
【0035】
周期律表の第4A族元素の酸化物が結晶質であると、周期律表の第4A族元素を用いた効果が不充分となり、触媒として用いたときに、活性が低下する傾向にある。
本発明では、このような第4A族元素をドーピングした複合酸化物を使用しているので、本発明では、前記のような複合酸化物を使用しているので活性が高く、経時的な活性低下が抑制される傾向にある。
【0036】
本発明の担体には、前記ランタノイド元素の結晶質酸化物と4A族元素の非晶質酸化物以外に、さらに周期律表の第1A族、第1B族、第2A族、第2B族、第3A族(ランタノイド元素およびYを除く)、第3B族、第4B族、第5A族、第5B族、第6A族、第6B族、第7A族、第8族から選ばれる元素(M)の1種以上の酸化物を含有していてもよい。
【0037】
元素(M)の酸化物(MOx)の含有量は、25重量%以下、さらには1〜20重量%
、さらに好ましくは2〜10重量%の範囲にあることが望ましい。
このような酸化物(MOx)としては、SiO2、ZnO、Al23、WO3、Fe23
、Sb25、CuO、AgO、AuO、RuO2、BaO、Na2O、K2O、Li2O等が挙げられる。
【0038】
これらのなかでも、酸化物(MOx)として、SiO2、ZnO、Al23、WO3、F
23、Sb25、Na2O、K2O、Li2Oから選ばれる1種以上の酸化物であること
が好ましい。このような酸化物を含んでいると、触媒を構成したときに、経時的な活性低下が抑制される傾向にある。これは、金属微粒子表面へのCOの吸着力が弱められるためと考えられる。
【0039】
担体には、さらに酸化チタンナノチューブを含んでいることが好ましく、担体中の該酸化チタンナノチューブの含有量が50重量%以下、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。酸化チタンナノチューブを含んでいると、所望の形状への成形が容易となり、また強度を有する成形体を得ることが可能となる。
【0040】
酸化チタンナノチューブとしては、従来公知の酸化チタンナノチューブを用いることができる。なかでも、本願出願人の出願による特開2003−137549号公報に開示した酸化チタンナノチューブ粒子(本願でいう酸化チタンナノチューブ)は結晶性が高く、ナトリウム等の不純物が少なく好適に用いることができる。
【0041】
担体中の該酸化チタンナノチューブの含有量が50重量%を超えると、比表面積は高くなるものの、触媒として使用するに際して所望の形状、強度等を有する成形体を得ることが困難であったり、周期律表のランタノイド元素および/またはYからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の結晶性酸化物と周期律表の4A族元素の非晶質酸化物とからなる担体成分の割合が少なく活性が不充分となる。
【0042】
本発明に用いる酸化チタンナノチューブは、酸化チタン単独からなるものであっても、酸化チタンと酸化チタン以外の酸化物との複合物であってもよく、また酸化チタンと複合物の混合物であってもよい。
【0043】
酸化チタン以外の酸化物が周期律表の第Ia族、第Ib族、第IIa族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族、第IVb族、第Va族、第Vb族、第VIa族、第VIb族、第VIIa族、第VIII族から選ばれる元素(M)の1種以上の酸化物であることが好ましい。具体的にはSiO2、ZrO2、ZnO、Al23、CeO2
23、Nd23、WO3、Fe23、Sb25、CeO2、CuO、AgO、AuO、Li2O、Sr2O、BaO、RuO2等を挙げることができる。
【0044】
このような酸化物が含まれていると、金属微粒子を担持した触媒のCO酸化活性の劣化を抑制する傾向がある。
本発明に用いる酸化チタンナノチューブは、以下の組成式で表される。
【0045】
Tiabx (1)
式中、a+nb/4=1、b=0〜0.2、1≦x≦2であり、M:Ti以外の元素、nはMの価数を示す。
【0046】
すなわち、本発明で使用される酸化チタンナノチューブは、完全な酸化物であっても、一部が還元された低次酸化物であってもよい。
酸化物の場合、酸化チタンの型は、酸化チタンが取りうるものであれば、そのいずれであってよい。具体的には、無定型、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれであってもよい。
【0047】
本発明では、これらの中でもアナタース型酸化チタンであることが好ましい。
アナタース型酸化チタンは、無定型の酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンに比して、触媒担体性能に優れている。
【0048】
酸化チタン以外の酸化物を含む場合に於いて、上記式のTi以外の元素Mの割合bが0.2を越えると、CO酸化活性が低下する場合がある。
また、酸素原子(O)の割合はa+nb/4=1としたときに1≦x≦2、さらには1.2≦x≦2の範囲にあることが好ましい。
【0049】
xが1未満の場合は、酸素欠陥が多く酸化チタンの結晶性が低下したり、結晶性を維持できない場合があり、CO酸化活性が不充分となることがある。
前記酸化チタンナノチューブは、平均管外径(Dout)が6〜60nm、さらには10
〜40nmの範囲にあり、平均管内径(Din)が4〜20nm、さらには5〜15nmの範囲にあり、平均管の厚みが1〜20nm、2〜15の範囲にあり、平均長さ(L)が30〜1200、50〜600nmの範囲にあり、この平均長さ(L)と平均管外径(Dout)との比アスペクト比(L)/(Dout)が5〜200の範囲にあることが好ましい。
【0050】
また、酸化チタンナノチューブは比表面積が150〜700m2/g、さらには200
〜600m2/gの範囲にあることが好ましい。
このような酸化チタンナノチューブを担体成分に混合して用いると比表面積の高い(有効用面積の高い)担体を得ることができ、水性ガスシフト反応活性の高い触媒を得ることができる。
【0051】
酸化チタンナノチューブの平均管外径(Dout)が小さいものは、得ることが困難であ
り、得られたとしても酸化チタンナノチューブの内部に前記複合酸化物担体成分および金属微粒子を担持することが困難であり、すなわち有効な表面ではないために活性向上効果が不充分となることがある。
【0052】
酸化チタンナノチューブの平均管外径(Dout)が大きいものも得ることが困難であり
、得られたとしても酸化チタンナノチューブ内部の空隙が大きくなり、触媒全体として見た場合に比表面積(単位重量当たりの表面積)が高くならず、十分な効果を発現できないことがある。
【0053】
酸化チタンナノチューブの平均管内径(Din)が小さいと酸化チタンナノチューブの内部に前記複合酸化物担体成分および金属微粒子を担持することが困難であり、すなわち有効な表面ではないために活性向上効果が不充分となることがある。平均管内径(Din)が大きいと、触媒全体として見た場合に比表面積(単位重量当たりの表面積)が高くならず、十分な効果を発現できない。
【0054】
酸化チタンナノチューブの平均長さ(L)が短いものは得にくく、長いものはCOガスの拡散速度が低下し、活性が不充分となることがある。また、酸化チタンナノチューブ粒子の平均長さ(L)が長すぎると触媒の成形性が低下し強度が不充分となることがある。
【0055】
以上の外径(Dout)、内径(Din)、長さ(L)等は透過型電子顕微鏡写真を撮影し
、100個の粒子について各値を測定し、この平均値としてもとめる。また、内径(Din)は、外径を求める線の内側に認められるコントラストの境をなす線より求めることができる。
【0056】
担体は、比表面積が50〜200m2/g、さらには55〜180m2/gの範囲にあることが好ましい。このような比表面積にあれば、高い活性を有する触媒を得ることができる。担体の比表面積が前記下限未満の場合は活性が不充分となり、担体の比表面積が前記上限を超えるものは得ることが困難でとなることがある。なお、担体の比表面積は、すなわち、金属微粒子を担持させていないときの比表面積を示す。
【0057】
以上のような担体に、以下に示す金属微粒子が担持されている。
金属微粒子
本発明の水性ガスシフト反応触媒に用いる金属微粒子は、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Ni、Ir、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ruから選ばれる1種以上の元素からものである。金属微粒子が2種以上の元素からなる場合、混合物であっても、合金(固溶体)であっても、共晶体等からなるものであってもよい。
【0058】
2種以上の元素からなる場合の好ましい組合せとしては、Au−Cu、Ag−Pt、Ag−Pd、Au−Pd、Au−Rh、Pt−Pd、Pt−Rh、Pt−Ir、Pt−Ru、Cu−Co、Ru−Ag、Ni−Pd、Au−Cu−Ag、Ag−Cu−Pt、Ag−Cu−Pd、Ag−Au−Pd、Au−Rh−Pd、Ag−Pt−Pd、Ag−Pt−Rh、Cu−Co−Pd等が挙げられる。
【0059】
このような金属微粒子は、平均粒子径が1〜50nm、さらには1〜10nm、特に1〜5nmの範囲にあることが好ましい。
金属微粒子の平均粒子径が1nm未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても安定性が小さいために活性が経時的に低下することがある。
【0060】
金属微粒子の平均粒子径が50nmを越えると金属微粒子の表面積が低下するために活性が不充分となる。
本発明における金属微粒子の平均粒子径は担持されたものの平均粒径であり、以下にして測定される。
【0061】
金属微粒子担持触媒をステンレス製反応管に充填し、触媒層温度300℃で1時間水素還元した後、触媒層を50℃に維持し、COガスをパルス導入する。1、2回目のパルスは化学吸着が起こりその後パルス面積より小さくなる。パルス面積が変化しなくなるまで続け、その面積から始めの1、2回の小さな面積を引いたものを化学吸着量とした。
以下の算式により求める。
【0062】
(1)計算パラメーター
chem[mol・g-1]:化学吸着量
MW:担持金属原子量
σm[nm2]:担持金属断面積
SF:ストイキオメトリー(1とした)
c[wt%]:担持金属量
ρ[g・cm-3]:担持金属密度
(2)計算式
金属分散度(Dm[%])
Dm[%]=(化学吸着サイト/担持金属原子数) ×100
=[Vchem*SF*MW/(c/100)] ×100
金属表面積(触媒1g当たり)
m(m2/g)=Vchem*6.02×1023*SF*σm*10-18
金属表面積(担持金属1g当たり)
m(m2/g)=Vchem*6.02×1023*SF*σm*10-18*100/c
平均粒子径
m(nm)=2r*109=6c/(Am*100*ρ*106)*100*109
=60c/(Am*ρ)
水性ガスシフト反応触媒中の金属微粒子の含有量は、金属として0.1〜5重量%、さらには0.5〜3重量%、特に1〜2.5重量%の範囲にあることが好ましい。
【0063】
金属微粒子の含有量が金属として前記範囲にあれば、活性の高い触媒を得ることができる。
なお金属微粒子の含有量が0.1重量%未満の場合は、活性が不充分となり、5重量%を超えると、金属微粒子同士が凝集するためか活性が低下する傾向にある。
【0064】
本発明に係る水性ガスシフト触媒(金属微粒子を担持させたもの)は、比表面積が45〜180m2/g、さらには50〜160m2/gの範囲にあることが好ましい。
水性ガスシフト触媒の比表面積が45m2/g未満の場合は活性が不充分となり、比表
面積が180m2/gを超えるものは得ることが困難である。
【0065】
また、本発明に係る水性ガスシフト触媒の形状は特に制限されるものではなく、微粉体であってもよく、また、球状、ペッレト、ハニカム等所望の形状に成形したものであってもよい。
【0066】
水性ガスシフト反応触媒の製造方法
つぎに、本発明に係る水性ガスシフト反応触媒の製造方法について説明する。
本発明に係る製造方法では、まず、担体を成形したのち、金属微粒子を担持させる。
(i)担体の製造
本発明ではまず、周期律表の前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の塩または有機錯体水溶液と、周期律表の第4A族元素の塩または有機錯体水溶液と、必要に応じて酸または塩基とを同時に混合し、得られた複合酸化物または水酸化物を洗浄し、ついで乾燥し、担体を成形する。
【0067】
使用されるランタノイド元素および/またはYの化合物としては、塩化セリウム、塩化ランタン等の塩化物塩、硝酸セリウム、硝酸ランタン等の硝酸塩、硫酸セリウム、硫酸ランタン等の硫酸塩、塩化イットリウム、硝酸イットリウム等の無機塩、アルコキシド化合物、アセチルアセトナトキレート化合物などの有機錯体等が挙げられる。
【0068】
なかでも、セリウムの塩または有機錯体を用いると、最終的に活性の高い水性ガスシフト反応触媒が得られるので好ましい。
4A族元素の化合物としては、塩化チタン、塩化チタニル、硝酸チタン、硝酸チタニル、硫酸チタン、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等の無機塩、アルコキシド化合物、アセチルアセトナトキレート化合物などの有機錯体が挙げられる。
【0069】
なかでも、ジルコニウム化合物を使用すると、前記ランタノイド元素および/またはYから選ばれる酸化物に均一にドープされて複合化されやすく、得られる触媒は熱的安定性に優れるとともに高い活性を示すので好適である。
【0070】
ランタノイド元素またはYの化合物の水溶液と、第4A族元素の化合物の水溶液とを混合し、複合水酸化物の沈殿物を生成させる。
ランタノイド元素の化合物と、第4A族元素の化合物との混合比率は、前記したような複合酸化物担体中の第4A族元素の酸化物の含有量となるように、選択される。
【0071】
たとえば、ランタノイド元素の化合物1モルに対し第4A族元素の化合物を0.15〜0.40モル、さらには0.20〜0.35モルの範囲にあることが好ましい。ランタノイド元素の化合物1モルに対し4A族元素の化合物が0.15モル未満の場合は、得られる複合酸化物担体中の第4A族元素の酸化物の含有量が5重量%未満となり活性が不充分となることがある。ランタノイド元素の化合物1モルに対し4A族元素の化合物が0.40モルを超えると、得られる複合酸化物担体中の第4A族元素の酸化物の含有量が25重
量%を超えることがあり、ランタノイド元素および/またはYの酸化物が無定型であったり、結晶性であっても結晶性が充分でなく、得られる触媒の水性ガスシフト反応活性が低下することがある。
【0072】
本発明では、この混合水溶液に必要に応じて塩基または酸を添加する。酸・アルカリの添加によって、沈殿の形成が促進される。
沈殿物は、ランタノイド元素またはYの水酸化物または酸化物に、第4A族元素がドープされた複合水酸化物または複合酸化物である。
【0073】
塩基としては、NH4OH、4級アミン、NaOH、Na2CO3、KOH等が挙げられ
る。これらのなかでも、NH4OHは安価で洗浄が容易になるので好適に用いることがで
きる。
【0074】
また、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸のほかに、酢酸などの有機酸が挙げられる。なかでも、塩酸、硝酸が望ましい。
また、上記混合水溶液を調製する際に、前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と第4A族元素の非晶質酸化物以外に、さらに周期律表の第1A族、第1B族、第2A族、第2B族、第3A族(ランタノイド元素およびイットリウムを除く)、第3B族、第4B族、第5A族、第5B族、第6A族、第6B族、第7A族、第8族からなる群から選ばれる元素(M)の1種以上の元素(M)の化合物が添加してもよい。このような化合物としては前記元素Mの無機塩または有機錯体が例示される。なかでも、珪酸ナトリウム、テトラアルコキシシラン、硝酸亜鉛、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、タングステン酸アンモン、塩化第1鉄、硝酸第2鉄、硝酸アンチモン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどは、活性を助長したり、経時的な活性低下を抑制する効果が発現されるので望ましい。
【0075】
元素(M)の化合物の添加比率はランタノイド元素の化合物1モルに対し元素(M)の化合物が0.01〜0.10モル、さらには0.02〜0.08モルの範囲にあることが好ましい。ランタノイド元素の化合物1モルに対し元素(M)の化合物が0.01モル未満の場合は、前記した活性を助長したり、経時的な活性低下を抑制する効果が充分得られることがある。ランタノイド元素の化合物1モルに対し元素(M)の化合物が0.10モルを超えると活性が低下する傾向にある。
【0076】
このときの、混合水溶液の温度は、特に制限はないが、通常、室温〜90℃、さらには室温〜60℃の範囲にあることが好ましい。
塩基を添加するときの混合水溶液は、可能な範囲で均一になるように撹拌することが好ましい。このとき、撹拌が不充分であると、得られる複合酸化物担体の第4A族元素の酸化物が結晶質となる傾向があり、最終的に得られる水性ガスシフト反応触媒の活性と寿命の向上効果が得られない場合がある。
【0077】
酸または塩基の添加量は、生成する沈殿物懸濁液(ヒドロゲルスラリー)のpHがアルカリ領域(pHが7以上)にあればよく、好ましくは概ねpHが7.5〜11の範囲となるように添加する。
【0078】
なお、前記した元素(M)の化合物は、前記混合水溶液を調製する際に添加してもよく、さらに、生成した、沈殿物懸濁液に添加してもよい。
pHを調製することで、沈殿物の生成が促進される。また、沈殿物の形成条件は、酸化物、すなわち担体の比表面積に影響を及ぼす。
【0079】
pHが低いと、ランタノイド族元素および/またはYの酸化物の結晶性が低下する傾向
にあり、また、得られる複合酸化物担体の比表面積が低下し、最終的に得られる水性ガスシフト反応触媒の活性と寿命の向上効果が得られない場合がある。pHを高くすれば、複合酸化物担体の比表面積を高めることができるが、pHを高くしすぎると、反応性が早くなりすぎてしまい、得られる複合酸化物担体の比表面積が却って、低下し、最終的に得られる水性ガスシフト反応触媒の活性と寿命の向上効果が得られない場合がある。
【0080】
ついで、沈殿物の懸濁液(以下、ヒドロゲルスラリーということがある)は、熟成することが好ましい。熟成する際の温度は30〜90℃、さらには40〜80℃の範囲にあることが好ましい。
【0081】
この温度範囲で熟成すれば、第4A族元素のドーピングが均一に行うことができるとともに、ランタノイド族元素および/またはYの酸化物の結晶性が高めることが可能となり、その結果、比表面積の高い担体を調製することができる。
【0082】
熟成温度が低いと、複合酸化物とならずに第4A族元素の酸化物が生成することがあり、第4A族元素のドーピングが不充分となったり、触媒としての活性が低下することがある。熟成温度が90℃を超えると、熟成が進行しすぎて、得られる担体の比表面積が低下し、最終的に得られる水性ガスシフト反応触媒の活性が低下する傾向がある。
【0083】
熟成温度が高く、時間を長めに設定すると、90℃以下でも、比表面積が低くなりすぎることがあり、熟成温度が低く、時間を短めに設定すると、30℃以上でも複合酸化物にならないことがある。
【0084】
また、熟成時間は熟成温度によっても異なるが概ね0.5〜10時間の範囲である。
熟成したヒドロゲルスラリーは、ついで濾過し、洗浄し、乾燥する。
洗浄は、副生した塩、過剰の酸・塩基を除去することができれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、純水、好ましくは温水、あるいはアンモニア水などを用いて洗浄することができる。
【0085】
酸化チタンナノチューブを含む担体を作製する場合、洗浄したヒドロゲルに前記した酸化チタンナノチューブを添加すればよい。酸化チタンナノチューブは、得られる担体中の該酸化チタンナノチューブの含有量が酸化物換算で50重量%以下、さらには5〜30重量%の範囲となるように添加される。
【0086】
なお、酸化チタンナノチューブの添加は、洗浄したヒドロゲルに添加する以外に、洗浄する前のいずれの段階でも添加することができるが、触媒性能、性能の再現性等の観点から洗浄したヒドロゲルに添加することが好ましい。
【0087】
ついで、ヒドロゲルあるいは酸化チタンナノチューブを添加したヒドロゲルは、洗浄した後、通常50〜130℃で乾燥する。
乾燥して得た複合酸化物粉体は、約3mm以上の凝集体がある場合は粉砕し、約1mm以下の粉体とすることが望ましい。粉砕することによって、後に高温で焼成する際に凝集体がそのまま硬い固まりになることがなく、しかも均一に焼成することができ、成形して用いる場合も成形が容易でかつ強度に優れた成形体が得られる。
【0088】
成型方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、
複合酸化物粉体を水に分散させた分散液を噴霧乾燥する方法
複合酸化物粉体をそのまま成形容器に充填し、加圧して成型する方法
複合酸化物粉に水分を加え、必要に応じて成形助剤を加えて混練し、ダイスより押し、
適当な長さに切断したペレットにする方法
ペレットを回転造粒機にて球状に成型する方法
等が挙げられる。
【0089】
得られた複合酸化物粉体、成形体を300〜900℃、さらには400〜750℃の範囲で焼成することが好ましい。この焼成処理によって、水酸化物が脱水されて酸化物となり、担体として利用されるようになる。
【0090】
複合酸化物粉体または成形体の焼成温度が低い場合はランタノイド元素および/またはYの酸化物の結晶性が不充分な場合があり、触媒の活性も経時的に低下する傾向がある。
複合酸化物粉体または成形体の焼成温度が高すぎると、酸化物が焼結してしまい、比表面積が低下し、得られる触媒の活性が不充分となることがある。
【0091】
また、ヒドロゲルを乾燥することなく、焼成しても担体を作製することも可能である。
焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常1〜10時間である。
ついで、焼成して得られた担体に金属微粒子を担持させる。
(ii)金属微粒子の担持
金属微粒子を担持する方法としては、従来公知の方法を採用することができるが、以下に示す含浸法は好適に採用することができる。
【0092】
すなわち、調製した前記担体を、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Ni、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ruから選ばれる1種以上の元素の化合物(金属微粒子前駆体ということもある)の水溶液と接触させ、乾燥後、還元ガス雰囲気下、加熱処理することによって担体に担持された化合物を還元して、金属化することで、金属微粒子を担持させる。
【0093】
具体的には、先ず、担体を、前記金属微粒子前駆体水溶液に接触させて、吸収させる。
金属微粒子前駆体水溶液量は、通常、担体の吸水量と同程度の量を用いる。ここで、担体の吸水量とは、担体に水を加えていき、担体が粉体である場合は、粉体がペースト状になる直前で粉体状態(すなわち団子状)を維持している際の水の吸収量(ml)を粉体重量(g)で除した値をいう。
【0094】
担体が成形体である場合は、成形体の表面に水の層が認められるようになる直前での水の吸収量(ml)を成形体重量(g)で除したものをいう。
金属微粒子前駆体水溶液の濃度は特に制限はなく、溶解度以下の濃度で、金属として所望の金属量が担持できる濃度であればよい。
【0095】
水溶液と接触後、50〜130℃の温度で乾燥する。
なお、金属微粒子前駆体水溶液の吸収と乾燥を繰り返し行うことも可能である。担持する金属微粒子の量によって金属微粒子前駆体水溶液の濃度を調整したり、吸収と乾燥の繰り返しの回数を調整することができる。
【0096】
250〜500℃、さらには300〜450℃の範囲で焼成することが好ましい。焼成温度が250℃未満の場合は、金属元素化合物の原料に由来するアニオンを充分除去できず最終的に得られる触媒の活性を阻害することがある。焼成温度が500℃を超えると最終的に得られる触媒中の金属微粒子が大きくなりすぎたり、担体との結合が強くなりすぎるためか活性が不充分となることがある。
【0097】
ついで、還元ガス雰囲気下、100〜450℃、さらには200〜400℃の範囲で還元処理して、金属元素の化合物を還元して金属微粒子にする。
還元ガスとしては、通常、水素ガスが使用される。さらに、窒素ガス等不活性ガスを混合して用いることもできる。
【0098】
還元処理温度が100℃未満の場合は、金属微粒子の還元が不充分となり、充分な活性が得られないことがある。
還元処理温度が450℃を超えると、凝集した金属微粒子が生成したり、粒子径の大きな金属微粒子が生成し、活性が不充分となることがある。
【0099】
なお、還元処理時間は、還元処理温度によって異なるが、通常、0.5〜5時間が好ましい。
このようにして得られた水性ガスシフト反応触媒は、ランタノイド元素および/またはYの結晶質酸化物と周期律表の第4A族元素の非晶質酸化物とからなる複合酸化物担体と前記金属微粒子を含んでいる。
【0100】
本発明では、成形された担体の比表面積が50〜120m2/gの範囲にあり、金属微
粒子が担持された担体の比表面積が45〜100m2/gの範囲にあることが望ましい。
本発明に係る触媒は、金属微粒子が担持された担体が粉末の場合、そのまま水性ガスシフト反応触媒として使用することもできるが、必要に応じて、加圧成形、射出成形などの周知手段によって、成形してもよい。
【0101】
なお、本発明に係る触媒は水性ガスシフト反応触媒として、活性が非常に高く、温度に対する耐性も高いので、高温で使用しても劣化することがない。さらに水性ガスシフト反応触媒としての用途以外に、他の酸化触媒、消臭剤、吸着材等としても有用である。
【0102】
[実施例]
以下、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0103】
[実施例1]
水性ガスシフト触媒(1)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物52.11gと、硝酸酸化ジルコニウム二水和物7.02gと、硝酸プラセオジウム(3)六水和物1.63gとを、水60.8gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0104】
濃度15重量%のNH3水溶液57.63gを充分に撹拌しながら混合水溶液を滴下し
、複合水酸化物の沈殿のヒドロゲルスラリーを調製した。このときのヒドロゲルスラリーのpHは7.8であった。ついで、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
【0105】
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。
ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(1)を得た。
【0106】
粉体の複合酸化物担体(1)中の酸化セリウムの含有量は84.2重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.6重量%、酸化ジルコニウムの含有量は13.2重量%であった。また、吸水量は0.4ml/gであった。
【0107】
複合酸化物担体(1)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークのみ
が測定された。すなわち、担体は、酸化セリウム中にプラセオジウム、ジルコニウムがドープされた複合酸化物であった。
【0108】
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.5gを、ビーカーに採取した複合酸化物担体(1)30gを攪拌しながら、これに徐々に滴下して、吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0109】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(1)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(1)を調製した。
【0110】
得られた水性ガスシフト触媒(1)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(1)10gを、錠剤成型器に充填し、50Kg/cm2で加圧成
型し、ついで粉砕し、粒度を20〜42メッシュに調整した。
【0111】
この粒度調整した触媒0.8ml(粉体容積)を、内径6mmのステンレス製反応管に充填し、触媒層温度300℃で水素流通下に1時間還元処理し、触媒層温度を200℃に調整した。その後、一酸化炭素6.7vol%、二酸化炭素8.0vol%、水素52.vol%、水蒸気33.3vol%のガスをSV=12,000h-1となるように供給し、約1時間後の定常状態での生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、反応管出口のCO濃度を測定し、CO転化率を反応管入口のCO濃度の減少率として算出した。結果を表1に示す。
【0112】
ついで、触媒層温度を230℃に調整した場合および触媒層温度を250℃に調整した場合についても同様にして測定した。結果を表1に示す。
耐久性
上記において、一酸化炭素25vol%、二酸化炭素6.0vol%、水素39vol%、水蒸気30vol%のガスを用いた以外は同様にして測定し、耐久性として評価した。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例2]
水性ガスシフト触媒(2)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物50.48gと硝酸酸化ジルコニウム二水和物7.02gと、硝酸プラセオジウム(3)六水和物1.63gと、硝酸ランタン(3)六水和物1.62gとを、水60.8gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0114】
濃度15重量%のNH3水溶液57.63gと、前記混合水溶液とを、十分に攪拌しな
がら混合して、複合水酸化物沈殿のヒドロゲルスラリーを調製した。このときのヒドロゲルスラリーのpHは7.68であった。ついで、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
【0115】
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。
ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(2)を得た。
【0116】
粉体の複合酸化物担体(2)中の酸化セリウムの含有量は81.7重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.6重量%、酸化ランタンの含有量は2.5重量%、酸化ジルコニウムの含有量は13.2重量%であった。
【0117】
複合酸化物担体(2)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークのみ
が測定された。
つぎに、Ptとして濃度5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、
複合酸化物担体(2)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0118】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(2)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(2)を調製した。
【0119】
得られた水性ガスシフト触媒(2)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(2)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(2)の活性および耐久性を測定した。結果を表1に示す。
【0120】
[実施例3]
水性ガスシフト触媒(3)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物52.11gと、硝酸酸化ジルコニウム二水和物7.02gと、硝酸ランタン(3)六水和物1.62gとを、水60.8gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0121】
濃度15重量%のNH3水溶液57.63gと、前記混合水溶液とを充分に撹拌しなが
ら混合し、複合水酸化物沈殿のヒドロゲルスラリーを調製した。このときのヒドロゲルスラリーのpHは7.80であった。ついで、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
【0122】
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥したのち、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(3)を得た。
【0123】
粉体の複合酸化物担体(2)中の酸化セリウムの含有量は84.3重量%、酸化ランタンの含有量は2.5重量%、酸化ジルコニウムの含有量は13.2重量%であった。
複合酸化物担体(3)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークのみ
が測定された。
【0124】
つぎに、Ptとして濃度5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、複合酸化物担体(3)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0125】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(3)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(3)を調製した。
【0126】
得られた水性ガスシフト触媒(3)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(3)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(3)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0127】
[実施例4]
水性ガスシフト触媒(4)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物53.7gと、硝酸酸化ジルコニウム二水和物7.0gとを、水60.8gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0128】
濃度15重量%のNH3水溶液57.63gを、前記混合水溶液とを充分に撹拌しなが
ら混合し、複合水酸化物の沈殿のヒドロゲルスラリーを調製した。このときのヒドロゲルスラリーのpHは7.78であった。ついで、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
【0129】
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥したのち、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(4)を得た。
【0130】
粉体の複合酸化物担体(4)中の酸化セリウムの含有量は86.8重量%、酸化ジルコニウムの含有量は13.2重量%であった。
複合酸化物担体(4)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークのみ
が測定された。
【0131】
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、複合酸化物担体(4)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0132】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(4)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(4)を調製した。
【0133】
得られた水性ガスシフト触媒(4)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(4)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(4)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
[実施例5]
水性ガスシフト触媒(5)の調製
実施例1と同様の粒状の複合酸化物担体(1)を使用した。
【0135】
Ruとしての濃度が5重量%の塩化ルテニウム水溶液10.4gを、実施例1と同様の方法で、複合酸化物担体(1)30gに吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0136】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(5)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Ru微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(5)を調製した。
【0137】
得られた水性ガスシフト触媒(5)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(5)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(5)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0138】
[実施例6]
水性ガスシフト触媒(6)の調製
実施例1と同様にして複合水酸化物粉体を得たのち、500℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(6)を得た。
【0139】
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、実施例1と同様の方法で複合酸化物担体(6)30gに吸収させ、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0140】
金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(6)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(6)を調製した。
【0141】
得られた水性ガスシフト触媒(6)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(6)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(6)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0142】
[実施例7]
水性ガスシフト触媒(7)の調製
実施例1と同様にして複合水酸化物粉体を得たのち、700℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(7)を得た。
【0143】
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、複合酸化物担体(7)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0144】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(7)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(7)を調製した。
【0145】
得られた水性ガスシフト触媒(7)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(7)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(7)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0146】
[実施例8]
水性ガスシフト触媒(8)の調製
実施例1で調製した粉体の複合酸化物担体(1)を使用した。
【0147】
つぎに、Ptとして濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液6.1gを、複合酸化物担体(1)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、ついで130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0148】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(8)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(8)を調製した。
【0149】
得られた水性ガスシフト触媒(8)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(8)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(
8)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0150】
[実施例9]
水性ガスシフト触媒(9)の調製
実施例1で調製した粉体の複合酸化物担体(1)を使用した。
つぎに、Ptとして濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液15.4gを、複合酸化物担体(1)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0151】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(9)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(9)を調製した。
【0152】
得られた水性ガスシフト触媒(9)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(9)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(9)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0153】
[実施例10]
水性ガスシフト触媒(10)の調製
実施例1で調製した粉体の複合酸化物担体(1)を使用した。
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液6.1gとPdとしての濃度が5重量%のPd(NO32水溶液6.1gとを複合酸化物担体(1)30gに吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0154】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(10)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt−Pd微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(10)を調製した。
【0155】
得られた水性ガスシフト触媒(10)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(10)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(10)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0156】
[実施例11]
水性ガスシフト触媒(11)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物56.01gと、硝酸酸化ジルコニウム二水和物3.17gと、硝酸プラセオジウム(3)六水和物1.73gとを、水60.8gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0157】
濃度15重量%のNH3水溶液57.48gを充分に撹拌しながら混合水溶液を滴下し
、複合水酸化物の沈殿のヒドロゲルスラリーを調製した。このときのヒドロゲルスラリーのpHは7.89であった。ついで、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
【0158】
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(11)を得た。
【0159】
粉体の複合酸化物担体(11)中の酸化セリウムの含有量は91.2重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.8重量%、酸化ジルコニウムの含有量は6.0重量%であった。
【0160】
複合酸化物担体(11)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークの
みが測定された。
つぎに、Ptとしての濃度5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを複合酸化物担体(11)30gに、実施例1と同様に吸収させたのち、ついで130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0161】
金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(11)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(11)を調製した。
【0162】
得られた水性ガスシフト触媒(11)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
活性試験
水性ガスシフト触媒(11)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(11)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0163】
[実施例12]
水性ガスシフト触媒(12)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物56.01gと、硝酸酸化ジルコニウム二水和物12.39gと、硝酸プラセオジウム(3)六水和物1.73gとを、水60.8gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0164】
濃度15重量%のNH3水溶液66.86gと、前記混合水溶液とを、充分に撹拌しな
がら、混合して、複合水酸化物沈殿のヒドロゲルスラリーを調製した。
このときのヒドロゲルスラリーのpHは8.04であった。ついで、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
【0165】
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。
ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(12)を得た。
【0166】
粉体の複合酸化物担体(12)中の酸化セリウムの含有量は77.6重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.4重量%、酸化ジルコニウムの含有量は20.0重量%であった。
【0167】
複合酸化物担体(12)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークの
みが測定された。
つぎに、Ptとしての濃度5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを複合酸化物担体(12)30gに、実施例1と同様に吸収させたのち、ついで130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0168】
金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(12)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(12)を調製した。
【0169】
得られた水性ガスシフト触媒(12)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
活性試験
水性ガスシフト触媒(12)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(12)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0170】
[実施例13]
水性ガスシフト触媒(13)の調製
先ず、以下のようにして酸化チタンナノチューブを調製した。
【0171】
酸化チタンナノチューブ分散液の調製
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5重量%の塩化チタン水溶液を
調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiO2として濃度9重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0172】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.
5重量%であった。
【0173】
ついで95℃で10時間加熱して酸化チタン粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分散液中のTiO2に対するモル比が0.016となるようにテトラメチルアンモニ
ウムハイドロオキサイド(TMAH MW=149.2)を添加した。このときの分散液のpHは11であった。ついで、230℃で5時間水熱処理して酸化チタン粒子分散液を調製した。酸化チタン粒子の平均粒子径は30nmであった。
【0174】
ついで、酸化チタン粒子分散液に、濃度40重量%のNaOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/(TM
が10となるように添加し、150℃で2時間水熱処理した。
【0175】
得られた粒子は純水にて充分洗浄した。このときのNa2O残存量は0.9重量%であ
った。ついで陽イオン交換樹脂にてアルカリを低減し、乾燥して酸化チタンナノチューブを調製した。このときの結晶形はアナタース型であり、Na2O残存量は0.15重量%
であった。平均粒子長は400nm、平均管外径は12nm、平均管内径は8nm、アスペクト比は33、結晶型はアナタース型であった。
【0176】
別途、実施例1と同様にして熟成したヒドロゲルスラリーを調製し、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、固形分濃度20重量%の洗浄スラリーを調製した。これに上記で調製した酸化チタンナノチューブを、最終的に得られる担体中の酸化チタンナノチューブの含有量が酸化物換算で10重量%となるように添加し、均一に混合し、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。
【0177】
ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(13)を得た。
粉体の複合酸化物担体(13)中の酸化セリウムの含有量は75.8重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.3重量%、酸化ジルコニウムの含有量は11.9重量%であった(残りは酸化チタン)。また、吸水量は0.42ml/gであった。
【0178】
複合酸化物担体(13)のX線回折測定の結果、酸化チタンナノチューブ以外には結晶性CeO2に帰属されるピークのみが測定された。すなわち、担体は、酸化セリウム中に
プラセオジウム、ジルコニウムがドープされた複合酸化物であった。
【0179】
つぎに、Ptとして濃度5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、複合酸化物担体(13)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0180】
つぎに、金属微粒子前駆体を担持した複合酸化物担体(13)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(13)を調製した。
【0181】
得られた水性ガスシフト触媒(13)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(13)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(13)の活性および耐久性を測定した。結果を表1に示す。
【0182】
[実施例14]
水性ガスシフト触媒(14)の調製
実施例13において、固形分濃度20重量%のヒドロゲル洗浄スラリーに酸化チタンナノチューブを、最終的に得られる担体中の酸化チタンナノチューブの含有量が酸化物換算で20重量%となるように添加し、均一に混合し、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(14)を得た。
【0183】
粉体の複合酸化物担体(14)中の酸化セリウムの含有量は67.4重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.0重量%、酸化ジルコニウムの含有量は10.6重量%であった。また、吸水量は0.43ml/gであった。
【0184】
複合酸化物担体(14)のX線回折測定の結果、酸化チタンナノチューブ以外には結晶性CeO2に帰属されるピークのみが測定された。すなわち、担体は、酸化セリウム中に
プラセオジウム、ジルコニウムがドープされた複合酸化物であった。
【0185】
つぎに、Ptとして濃度5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、複合酸化物担体(14)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0186】
つぎに、金属微粒子前駆体を担持した複合酸化物担体(14)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(14)を調製した。
【0187】
得られた水性ガスシフト触媒(14)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(14)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(14)の活性および耐久性を測定した。結果を表1に示す。
【0188】
[実施例15]
水性ガスシフト触媒(15)の調製
実施例1において、固形分濃度20重量%のヒドロゲル洗浄スラリーに酸化チタンナノチューブを、最終的に得られる担体中の酸化チタンナノチューブの含有量が酸化物換算で30重量%となるように添加し、均一に混合し、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(15)を得た。
【0189】
粉体の複合酸化物担体(14)中の酸化セリウムの含有量は60.8重量%、酸化ジルコニウムの含有量は9.2重量%であった。また、吸水量は0.40ml/gであった。
複合酸化物担体(15)のX線回折測定の結果、酸化チタンナノチューブ以外には結晶性CeO2に帰属されるピークのみが測定された。すなわち、担体は、酸化セリウム中に
プラセオジウム、ジルコニウムがドープされた複合酸化物であった。
【0190】
つぎに、Ptとして濃度5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを、複合酸化物担体(15)30gに、実施例1と同様の方法で吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0191】
つぎに、金属微粒子前駆体を担持した複合酸化物担体(15)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(15)を調製した。
【0192】
得られた水性ガスシフト触媒(15)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(15)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(15)の活性および耐久性を測定した。結果を表1に示す。
【0193】
[比較例1]
水性ガスシフト触媒(R1)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物36.15gと、硝酸酸化ジルコニウム二水和物17.84gとを、水60.8gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0194】
濃度15重量%のNH3水溶液57.12gと、前記混合水溶液とを充分に撹拌しなが
ら混合し、複合水酸化物の沈殿のヒドロゲルスラリーを調製した。このときのヒドロゲルスラリーのpHは7.85であった。ついで、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
【0195】
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。
ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(R1)を得た。
【0196】
粉体の複合酸化物担体(R1)中の酸化セリウムの含有量は63.6重量%、酸化ジルコニウムの含有量は36.4重量%であった。
複合酸化物担体(R1)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークと
結晶性ZrO2に帰属されるピークが測定された。
【0197】
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを複合酸化物担体(R1)30gに吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0198】
金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(R1)をステンレス製反応管に充填し、
水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(R1)を調製した。
【0199】
得られた水性ガスシフト触媒(R1)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(R1)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(R1)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0200】
[比較例2]
水性ガスシフト触媒(R2)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物52.11gと、硝酸プラセオジウム(3)六水和物1.63gとを、水51.07gに溶解して混合水溶液を調製した。
【0201】
濃度15重量%のNH3水溶液47.54gと、前記混合水溶液とを充分に撹拌しなが
ら混合し、セリア系ヒドロゲルスラリーを調製した。このときのセリア系ヒドロゲルスラリーのpHは7.88であった。
【0202】
別途、硝酸酸化ジルコニウム二水和物7.02gを水20.01gに溶解して水溶液を調製した。濃度15重量%のNH3水溶液10.09gを充分に撹拌しながら水溶液を滴
下し、ジルコニアヒドロゲルスラリーを調製した。このときのジルコニアヒドロゲルスラリーのpHは7.69であった。
【0203】
ついで、セリア系ヒドロゲルスラリーとジルコニアヒドロゲルスラリーを混合し、60℃で1時間撹拌して熟成を行った。
熟成したヒドロゲルスラリーを、濾過分離し、純水を充分かけて洗浄を行い、ついで、130℃で24時間乾燥して複合水酸化物粉体を得た。
【0204】
ついで、600℃で1時間焼成し、粉体の複合酸化物担体(R2)を得た。
粉体の複合酸化物担体(R2)中の酸化セリウムの含有量は84.2重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.6重量%、酸化ジルコニウムの含有量は13.2重量%であった。
【0205】
複合酸化物担体(1)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークと結
晶性ZrO2に帰属されるピークが測定された。
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液10.4gを複合酸化物担体(R2)30gに吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0206】
つぎに、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(R2)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(R2)を調製した。
【0207】
得られた水性ガスシフト触媒(R2)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(R2)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(R2)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0208】
[比較例3]
水性ガスシフト触媒(R3)の調製
硝酸セリウム(3)六水和物52.11gと、硝酸ジルコニウム二水和物6.90gと、硝酸プラセオジウム(3)六水和物1.63gとを、水62.8gに溶解し、グリシン28.13gを加えた後、100℃以上に加熱して水分を蒸発させ、自己発火させて粉末を得た。
【0209】
ついで、800℃で2時間焼成して粉体の複合酸化物担体(R3)を得た。
粉体の複合酸化物担体(R3)中の酸化セリウムの含有量は84.6重量%、酸化ジルコニウムの含有量は12.6重量%、酸化プラセオジウムの含有量は2.8重量%であった。
【0210】
複合酸化物担体(R3)のX線回折測定の結果、結晶性CeO2に帰属されるピークと
結晶性ZrO2に帰属されるピークが測定された。
つぎに、Ptとしての濃度が5重量%のPt(NH34Cl2・H2O水溶液6.1gを複合酸化物担体(R3)30gに吸収させたのち、130℃で2時間乾燥し、400℃で1時間焼成した。
【0211】
ついで、金属微粒子前駆体を吸収した複合酸化物担体(R3)をステンレス製反応管に充填し、水素ガスを供給しながら、300℃で1時間還元処理をして、金属微粒子前駆体を金属微粒子に還元し、Pt微粒子が担体に担持された水性シフト触媒(R3)を調製した。
【0212】
得られた水性ガスシフト触媒(R3)の比表面積、細孔容積および金属微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
活性試験
水性ガスシフト触媒(R3)を用いた以外は実施例1と同様にして水性ガスシフト触媒(R3)の活性を測定した。結果を表1に示す。
【0213】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と(ii)周期律表第4A族元素の非晶質酸化物とからなる複合酸化物担体に、
Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ruからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の金属微粒子が
担持されてなり、かつ
前記複合酸化物担体中の、周期律表第4A族元素の酸化物の含有量が5〜25重量%の範囲にある
ことを特徴とする水性ガスシフト反応触媒。
【請求項2】
前記担体がさらに酸化チタンナノチューブを含み、担体中の該酸化チタンナノチューブの含有量が酸化物として50重量%以下であることを特長とする請求項1に記載の水性ガスシフト反応触媒。
【請求項3】
前記担体の比表面積が50〜200m2/gの範囲にあり、金属微粒子が担持された担
体の比表面積が45〜180m2/gの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に
記載の水性ガスシフト反応触媒。
【請求項4】
前記担体が、
前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と第4A族元素の非晶質酸化物以外に、
さらに周期律表の第1A族、第1B族、第2A族、第2B族、第3A族(ランタノイド元素およびイットリウムを除く)、第3B族、第4B族、第5A族、第5B族、第6A族、第6B族、第7A族、第8族からなる群から選ばれる元素(M)の1種以上の酸化物を
含有することを特徴とする請求項1〜3に記載の水性ガスシフト反応触媒。
【請求項5】
前記元素(M)の酸化物がSiO2、ZnO、Al23、WO3、Fe23、Sb23、Na2O、K2O、Li2Oから選ばれる1種以上の非晶質酸化物であることを特徴とする
請求項4に記載の水性ガスシフト反応触媒。
【請求項6】
前記担体中に含まれる元素(M)の酸化物の量が、25重量%以下の量であることを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載の水性ガスシフト反応触媒。
【請求項7】
周期律表の前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の塩または有機錯体水溶液と、
周期律表の第4A族元素の塩または有機錯体水溶液と、必要に応じて酸または塩基とを
同時に混合し、得られた複合酸化物または水酸化物を洗浄し、ついで乾燥および/または焼成して担体を成形したのち、
得られた担体に、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Ni、Ir、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ruからなる群から選ばれる1種以上の元素の塩または有機錯体の水溶液を接触させ、
ついで乾燥した後、還元雰囲気下で加熱処理して、前記塩または有機錯体を還元して、金属微粒子を担体に担持させることを特徴とする水性ガスシフト反応触媒の製造方法。
【請求項8】
前記複合酸化物または水酸化物を洗浄した後、得られる担体中の酸化チタンナノチューブ含有量が酸化物に換算して50重量%以下となるように添加することを特長とする請求項7に記載の水性ガスシフト反応触媒の製造方法。
【請求項9】
前記周期律表の前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種
の元素の塩または有機錯体水溶液と、
周期律表の第4A族元素の塩または有機錯体水溶液と、必要に応じて酸または塩基との混合時または混合後に、
前記ランタノイド元素およびイットリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の結晶質酸化物と第4A族元素の非晶質酸化物以外に、さらに周期律表の第1A族、第1B族、第2A族、第2B族、第3A族(ランタノイド元素およびイットリウムを除く)、第3B族、第4B族、第5A族、第5B族、第6A族、第6B族、第7A族、第8族からなる群から選ばれる元素(M)の1種以上の元素(M)の化合物を混合することを特徴とする請求項8に記載の水性ガスシフト反応触媒の製造方法。
【請求項10】
成形された担体の比表面積が50〜200m2/gの範囲にあり、金属微粒子が担持さ
れた担体の比表面積が45〜180m2/gの範囲にあることを特徴とする請求項7〜9
のいずれかに記載の水性ガスシフト反応触媒の製造方法。

【公開番号】特開2006−35127(P2006−35127A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220157(P2004−220157)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】