説明

水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法

本発明は、仕上り外観に優れた塗膜を形成できる水性塗料組成物を提供することを目的とする。本発明は、構成成分中の特定炭素数以上の長鎖の、直鎖型ジカルボン酸及び/又は直鎖型ジオールの含有量が特定範囲量であり、特定範囲の水酸基価及び酸価を有するポリエステル樹脂、疎水基を有するウレタン会合型増粘剤及び/又は疎水基を有するポリアクリル酸系増粘剤、硬化剤及び疎水性溶媒を含有し、該増粘剤及び疎水性溶媒の含有量がポリエステル樹脂と硬化剤の総量に対して特定範囲内である水性塗料組成物及び該水性塗料組成物を用いた複層塗膜形成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑性等の仕上り外観に優れた水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模で環境問題に大きな関心が寄せられているが、自動車産業においても生産過程における環境改善の取り組みが積極的に進められている。自動車の製造工程からは、地球温暖化、産業廃棄物、揮発性有機溶剤(VOC)の排出等の問題が発生し、特にVOCについては、そのほとんどが塗装工程から発生するものであり、この対策が急務となってきている。
【0003】
自動車車体の外板部は、防食及び美感の付与を目的として、通常、カチオン電着塗料による下塗り塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる複層塗膜により被覆されているが、
VOC削減の観点から、中塗り塗料及び上塗り塗料においても水性化が進められている。
【0004】
また、自動車の塗膜においては、特に仕上り外観及び塗膜性能に優れた塗膜であることが求められている。
【0005】
しかしながら、従来の水性塗料は、主たる溶媒が水であるため、一般的に溶剤型塗料に比べ、塗膜の仕上り外観が不十分であるという問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1には、特定のアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂、特定のポリカーボネート樹脂、硬化剤を主成分とする水性塗料が開示されている。しかしながら、該水性塗料は、仕上り外観が不十分である場合があった。また、特許文献2には、特定のアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂、特定のポリカーボネート樹脂、硬化剤、特定の樹脂粒子を主成分とする水性塗料が開示されている。しかしながら、該水性塗料によって得られる塗膜も、平滑性等の仕上り外観に劣る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−12925号公報
【特許文献2】特開平8−209059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、平滑性等の仕上り外観に優れた塗膜を形成できる水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特に、ポリエステル樹脂と増粘剤の関係に着目し、鋭意検討を重ねた結果、構成成分中の特定炭素数以上の長鎖の、直鎖型ジカルボン酸及び/又は直鎖型ジオールの含有量が特定量以上であり、特定範囲の水酸基価及び酸価を有するポリエステル樹脂、疎水基を有するウレタン会合型増粘剤及び/又は疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤、硬化剤及び疎水性溶媒を含有し、該増粘剤及び疎水性溶媒の含有量がポリエステル樹脂と硬化剤の総量に対して特定範囲内である水性塗料組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の項を提供する:
項1.ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)、増粘剤(C)及び炭素数が6〜14の疎水性溶媒(D)を含有する水性塗料組成物であって、
該ポリエステル樹脂(A)が、酸成分とアルコール成分との反応によって得られ、該反応で用いられる酸成分及びアルコール成分の総量を基準にして、炭素数8以上の直鎖型ジカルボン酸(a−1)及び炭素数8以上の直鎖型ジオール(a−2)の合計の含有量が5〜30質量%であり、かつ水酸基価100〜200mgKOH/g、酸価8〜22mgKOH/gのポリエステル樹脂であり、
該増粘剤(C)が、炭素数が8〜36の疎水基を有するウレタン会合型増粘剤及び/又は炭素数が8〜36の疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤であり、そして、
樹脂(A)及び硬化剤(B)の総量を基準にして、増粘剤(C)を0.01〜3質量%、疎水性溶媒(D)を4〜20質量%含有する、水性塗料組成物。
【0010】
項2.炭素数が8〜36の疎水基を有するウレタン会合型増粘剤が、下記一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、X及びZは、同一又は異なって、炭素数8〜36の炭化水素基であり、Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基であり、OR、OR’及びOR’’は、同一又は異なって、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、a及びdは同一又は異なって、0〜50の整数であり、bは10〜500の整数であり、cは0又は1以上の整数である。]
で示されるウレタン会合型増粘剤である、項1に記載の水性塗料組成物。
【0013】
項3.炭素数が8〜36の疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤が、
(c−1)(メタ)アクリル酸又はその塩、
(c−2)下記一般式(2)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、メチル又はエチル基、Rは炭素数8〜36の炭化水素基、nは3〜60の整数を表す。)
で表される重合性不飽和モノマー、
(c−3)アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート、及び
(c−4)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー
を含有する重合性不飽和モノマー混合物であって、重合性不飽和モノマーの総量に基づいて、(c−1)の含有割合が1〜50質量%であり、(c−2)の含有割合が5〜60質量%であり、(c−3)の含有割合が5〜60質量%であり、かつ(c−4)の含有割合が0.05〜5質量%である重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる共重合体である、項1に記載の水性塗料組成物。
【0016】
項4.硬化剤(B)として、ブトキシ基とメトキシ基の比率が20/80〜50/50mol%である完全もしくは部分アルキルエーテル化メラミン樹脂を含有する項1〜3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0017】
項5.被塗物に、中塗塗料及び上塗塗料を順次塗装する複層塗膜形成方法において、中塗塗料として、項1〜4のいずれか一項に記載の水性塗料組成物を塗装する、複層塗膜形成方法。
【0018】
項6.工程(1):被塗物上に、中塗塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、第1の上塗り塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、第2の上塗り塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に焼き付け乾燥する工程、
を備える、項5に記載の複層塗膜形成方法。
【0019】
項7.項6に記載の複層塗膜形成方法を実施するに当たり、工程(1)で用いる中塗塗料に含有される硬化剤(B)として、イソシアネート基含有化合物(b−1)、オキサゾリン基含有化合物(b−2)、カルボジイミド基含有化合物(b−3)、ヒドラジド基含有化合物(b−4)及びセミカルバジド基含有化合物(b−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を使用する、複層塗膜形成方法。
【0020】
項8.中塗塗料(X)が、乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率が15〜95質量%の範囲内となる塗料である、項6又は7に記載の複層塗膜形成方法。
【0021】
項9.項1〜4のいずれか一項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
【0022】
項10.項5〜8のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水性塗料組成物において、ポリエステル樹脂は、炭素数8以上の直鎖型ジカルボン酸及び/又は炭素数8以上の直鎖型ジオールを特定量範囲量構成成分とするものであり、また、増粘剤は、疎水基を有することを特徴とするものである。
【0024】
これにより、ポリエステル樹脂(A)中に存在する炭素数8以上の直鎖型ジカルボン酸及び/又は炭素数8以上の直鎖型ジオールに由来する疎水性基、増粘剤(C)に存在する疎水性基及び疎水性溶媒(D)の間に疎水性相互作用が生じることによって、優れた塗膜外観を与えることができる最適な粘度挙動が発現するため、塗膜の平滑性等の仕上り外観に優れた塗料を得ることができる。
以上、本発明の水性塗料組成物によれば、塗面平滑性等の仕上り外観に優れた水性塗料組成物を得ることができるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の水性塗料組成物について詳細に説明する。
【0026】
本発明の水性塗料組成物(以下、「本塗料」ということがある。)は、ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)、増粘剤(C)及び疎水性溶媒(D)を含んでなるものである。
【0027】
ポリエステル樹脂(A)
本発明の水性塗料組成物に用いられるポリエステル樹脂(A)は、酸成分とアルコール成分との反応によって得られ、該反応で用いられる酸成分及びアルコール成分の総量を基準にして、炭素数8以上の直鎖型ジカルボン酸(a−1)及び炭素数8以上の直鎖型ジオール(a−2)の含有量が5〜30質量%、好ましくは7〜25質量%、さらに好ましくは10〜22質量%であり、かつ水酸基価100〜200mgKOH/g、酸価8〜22mgKOH/gのポリエステル樹脂である。
【0028】
本明細書において酸価(mgKOH/g)は、試料1g(固形分)に含まれる酸基の量を水酸化カリウムに換算したときの水酸化カリウムのmg数で表したものである。水酸化カリウムの分子量は56.1とする。
【0029】
本明細書において水酸基価(mgKOH/g)は、試料1g(固形分)に含まれる水酸基の量を水酸化カリウムに換算したときの水酸化カリウムのmg数で表したものである。水酸化カリウムの分子量は56.1とする。
【0030】
本発明において、水酸基価及び酸価は、本願実施例に記載の方法に従い測定することができる。
【0031】
炭素数8以上の直鎖型脂肪族ジカルボン酸(a−1)としては、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸等をあげることができる。炭素数8以上の直鎖型脂肪族ジカルボン酸(a−1)の炭素数は、仕上り性及びタレ抵抗性を両立できる塗料粘性並びに塗膜物性の観点から、8〜16であるのが好ましく、8〜12であるのがさらに好ましい。上記炭素数8以上の直鎖型脂肪族ジカルボン酸(a−1)は、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0032】
炭素数8以上の直鎖型ジオール(a−2)としては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等をあげることができる。炭素数8以上の直鎖型ジオール(a−2)の炭素数は、仕上り性、タレ抵抗性を両立できる塗料粘性の観点及び塗膜物性の観点から、8〜16であるのが好ましく、8〜12であるのがさらに好ましい。上記炭素数8以上の直鎖型ジオールは、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0033】
前記炭素数8以上の直鎖型脂肪族ジカルボン酸(a−1)以外の酸成分としては、特に限定されず、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの無水物等の脂肪族多価カルボン酸(酸無水物を含む);フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸無水物、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸(酸無水物を含む);1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸1,2−無水物、ヘット酸等の1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物及び該化合物の酸無水物である脂環族多価カルボン酸(酸無水物を含む);ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;安息香酸、4−tert−ブチル安息香酸等を挙げることができる。
【0034】
上記(a−1)以外の酸成分は単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0035】
前記炭素数8以上の直鎖型ジオール(a−2)以外のアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環族多価アルコール等を挙げることができる。
【0036】
上記(a−2)以外のアルコール成分は単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0037】
また、水分散性向上の観点から、上記アルコール以外のアルコール成分として、水酸基を2個以上有するヒドロキシ酸(a−3)をアルコール成分として導入しても構わない。
【0038】
水酸基を2個以上有するヒドロキシ酸(a−3)としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸及びこれらを縮合したポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0039】
また、さらに上記酸、アルコール成分以外としては、例えば、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等のα−オレフィンエポキシド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させることでポリエステル中に導入することもできる。
【0040】
ポリエステル樹脂(A)の合成方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができ、例えば、前記酸成分とアルコール成分を窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間加熱し、水酸基とカルボキシル基のエステル化反応を行なうことにより合成することができる。
【0041】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応せしめる際には、これらを一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させてハーフエステル化させてもよい。
【0042】
また、前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0043】
また、ポリエステル樹脂(A)は、該ポリエステル樹脂(A)の調製中又はエステル化反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0044】
上記脂肪酸としては、例えば、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸等の(半)乾性油脂肪酸等をあげることができる。これらの脂肪酸の変性量は一般に油長で30重量%以下であることが適している。また、ポリエステル樹脂は安息香酸等の一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
【0045】
上記モノエポキシ化合物としては、例えば、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等のα−オレフィンエポキシド、前記「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等が挙げられる。
【0046】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の環状脂肪族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらは、1種で又は2種以上混合して使用することができる。
【0047】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物との反応割合は、反応により得られるウレタン変性ポリエステル樹脂の水酸基価が100〜200mgKOH/gの範囲内、酸価が8〜22mgKOH/gの範囲内となるような割合であれば特に限定されるものではない。
【0048】
ポリエステル樹脂(A)は、得られる塗膜の耐チッピング性、耐水性、上塗り付着性の観点から、水酸基価が100〜200mgKOH/g、特に130〜180mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。
【0049】
ポリエステル樹脂(A)は、疎水基を有する増粘剤との相互作用により発現する塗料粘性の観点から、酸価が8〜22mgKOH/g、特に9〜18mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。
【0050】
ポリエステル樹脂(A)は、得られる塗膜の平滑性及び塗膜性能の観点から、数平均分子量が300〜50000、好ましくは500〜20000、さらに好ましくは800〜10000の範囲内であることが好適である。
【0051】
なお、本明細書における数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した数平均分子量又は重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min、検出器RIの測定条件で行なった。
【0052】
ポリエステル樹脂(A)は、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが、水分散性を向上させる観点から好ましい。
【0053】
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール等の第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン等の第2級モノアミン化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン等の第3級モノアミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン化合物;ピリジン;モルホリン等をあげることができる。これらのうち、第1級モノアミン化合物、第2級モノアミン化合物、第3級モノアミン化合物、ポリアミン化合物を使用するのが好ましい。
【0054】
硬化剤(B)
本発明の水性塗料組成物に含まれる硬化剤(B)は、特に制限されるものではなく、水性塗料に用いられるものを広く使用することができる。
【0055】
硬化剤(B−1)
好ましい第一の実施形態において、例えば、以下にあげるメラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。硬化剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0056】
メラミン樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;メチロールメラミンとアルコールとのアルキルエーテル化物;メチロールメラミンの縮合物とのアルコールのエーテル化物等を挙げることができる。ここで、アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる。
【0057】
メラミン樹脂としては、市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル212」、「サイメル253」、「サイメル254」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製);「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」、「(以上、モンサント社製);「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」(以上、住友化学社製);「ユーバン20SE」(三井化学社製)等を挙げることができる。
【0058】
メラミン樹脂としては、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を好適に使用することができる。
【0059】
上記のメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂において、塗膜の耐水性、疎水基を有する増粘剤との相互作用により発現する塗料粘性の観点から、ブトキシ基とメトキシ基のモル比が、20/80〜50/50、特に30/70〜45/55であるアルキルエーテル化メラミン樹脂を好適に使用することができる。
【0060】
ここで、硬化剤(B)としてメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を用いる場合、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂は、硬化剤(B)中、50質量%以上含まれていればよい。
【0061】
また、硬化剤としてメラミン樹脂を使用する場合、硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を使用することができる。
【0062】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物である。
【0063】
ブロック化ポリイソシアネート化合物におけるポリイソシアネート化合物としては、例えば、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等をあげることができる。
【0064】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0065】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)又はその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等をあげることができる。
【0066】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−もしくは1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等をあげることができる。
【0067】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート又はその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等をあげることができる。
【0068】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0069】
上記のブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系ブロック剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系ブロック剤;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル等のグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系ブロック剤;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック剤;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系ブロック剤;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系ブロック剤等のブロック剤を挙げることができる。
【0070】
また、ブロック剤の一部として1分子中に1個以上のヒドロキシル基及び1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸を使用することができる。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸等を挙げることができる。ヒドロキシカルボン酸でブロックされたモノブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシカルボン酸由来のカルボキシル基を有しており、該カルボキシル基の親水性に基づいて、水分散性が良好である点から好ましい。
【0071】
また、ブロック剤の一部として末端の一方が水酸基、他方がメトキシ基であるポリエチレングリコールを使用することで、ノニオン性の親水基を導入し、水分散性を付与したものも有効に使用できる。
【0072】
硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を使用する場合、硬化触媒として、有機錫化合物を用いることができる。
【0073】
第一の実施形態において、上記硬化剤を用いる本発明の水性塗料組成物は、仕上り外観及び塗膜性が優れているだけでなく、塗装作業性(ワキ抵抗性、タレ抵抗性)が良好である点で好ましい。
【0074】
硬化剤(B−2)
本発明の第二の好ましい実施形態において、硬化剤(B)としては、例えば、イソシアネート基含有化合物(b−1)、オキサゾリン基含有化合物(b−2)、カルボジイミド基含有化合物(b−3)、ヒドラジド基含有化合物(b−4)及びセミカルバジド基含有化合物(b−5)、メラミン樹脂(b−6)、及びブロック化ポリイソシアネート化合物(b−7)の少なくとも一種を用いることができる。
【0075】
なかでも、得られる塗膜の鮮映性の観点から、硬化剤(B)として、イソシアネート基含有化合物(b−1)、オキサゾリン基含有化合物(b−2)、カルボジイミド基含有化合物(b−3)、ヒドラジド基含有化合物(b−4)、セミカルバジド基含有化合物(b−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を好適に用いることができる。なかでも、イソシアネート基含有化合物(b−1)を含有することが好ましい。
【0076】
上記硬化剤(B)は、水性第1着色塗料(X)中の樹脂固形分100質量部を基準として、1〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の割合で使用することが好適である。
【0077】
上記硬化剤(B)が、メラミン樹脂である場合、一般に、前記ポリエステル樹脂(A)は水酸基を含有し、なかでも、該ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が100〜200mgKOH/g、好ましくは130〜180mgKOH/g、さらに好ましくは140〜170mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0078】
メラミン樹脂(b−6)としては、前述の「硬化剤(B−1)」に記載したものと同様のメラミン樹脂を用いることができる。
【0079】
上記硬化剤(B)が、イソシアネート基含有化合物(b−1)である場合、一般に、前記ポリエステル樹脂(A)は水酸基を含有し、なかでも、該ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が100〜200mgKOH/g、好ましくは130〜180mgKOH/g、さらに好ましくは140〜170mgKOH/gの範囲内であることが好適である。また、上記イソシアネート基含有化合物(b−1)のイソシアネート基と上記ポリエステル樹脂(A)の水酸基の当量比(NCO/OH)は、0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5の範囲内であることが好適である。
【0080】
上記イソシアネート基含有化合物(b−1)は、イソシアネート基を1分子中に少なくとも2個有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0081】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0082】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)又はその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0083】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−もしくは1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0084】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート又はその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0085】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0086】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独で、又は2種以上併用して好適に使用することができる。
【0087】
本発明にかかるイソシアネート基含有化合物(b−1)としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、上記ポリイソシアネート化合物を親水性に変性した、親水化ポリイソシアネート化合物(b−1’)が特に好適である。
【0088】
上記親水化ポリイソシアネート化合物(b−1’)としては、例えば、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物の活性水素基を、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させて得られるアニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(b−1’−1)、ポリオキシエチレンのモノアルコール等の親水性ポリエーテルアルコールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(b−1’−2)等を挙げることができ、また、乳化剤を併用して水に分散可能なものとしてもよい。
【0089】
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、スルホベタイン等のべタイン構造含有基等のアニオン性基を有し、かつ、イソシアネート基と反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物であって、該化合物とポリイソシアネート化合物を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物に親水性を付与することができる。
【0090】
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシルカルボン酸、例えば、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニン等のジアミノカルボン酸、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等を挙げることができる。
【0091】
また、スルホン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0092】
また、リン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート等を挙げることができる。
【0093】
また、ベタイン構造含有基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N−メチルジエタノールアミン等の3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物等を挙げることができる。
【0094】
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させることによってアルキレンオキサイド変性体としてもよい。
【0095】
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0096】
また、イソシアネート化合物の水分散性を付与する乳化剤としては、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤を用いることができる。ノニオン性乳化剤としてはポリエチレンオキサイドが好適に使用でき、アニオン性乳化剤としては、スルホン酸及びリン酸等の塩が好適に用いられ、これらを併用しても良い。
【0097】
ポリイソシアネート化合物としては、前記したものと同様のポリイソシアネート化合物を用いることができるが、この中でも好ましい例として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の誘導体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)の誘導体を挙げることができる。
【0098】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b−7)としては、上記、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体をブロックしたものが用いられる。
【0099】
上記ブロック剤としては、前述の「硬化剤(B−1)」に記載したものと同様のブロック剤を用いることができる。
【0100】
硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を使用する場合、硬化触媒として、有機錫化合物を用いることができる。
【0101】
前記オキサゾリン基含有化合物(b−2)としては、オキサゾリン基を側鎖に2個以上有する重合体状の化合物(b−2−1)、1分子中にオキサゾリン基を2個以上有する単体状の化合物(b−2−2)等が好ましいものとして挙げられる。ここで、オキサゾリン基は下記式
【0102】
【化3】

【0103】
で示される基であり、式中、R、R、R及びRは互に独立して水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わす。
【0104】
オキサゾリン基を側鎖に2個以上有する重合体状の化合物(b−2−1)は、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体(b−2−1a)を、必要に応じその他の重合性不飽和単量体(b−2−1b)と共に重合させることにより得ることができる。
【0105】
単量体(b−2−1a)は、1分子中にオキサゾリン基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個もしくはそれ以上有する化合物であり、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。
【0106】
単量体(b−2−1b)は、単量体(b−2−1a)以外の1分子中に重合性不飽和結合を1個以上有する化合物であり、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24個のアルキル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上適宜選択される。本発明において、各化合物の語尾の「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0107】
また、上記不飽和単量体を共重合する際に用いるラジカル重合開始剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、過酸化ベンゾイル、ジt−ブチルハイドロパーオキサイド
、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物;α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、α,α’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0108】
重合方法としては従来公知の方法を使用でき、例えば溶液重合、乳化重合等を挙げることができる。
【0109】
前記重合体状化合物(b−2−1)において、単量体(b−2−1a)の含有率は、単量体(b−2−1b)との合計質量を基準にして、1〜100質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲内が好適である。また、重合体状化合物(b−2−1)の数平均分子量は500〜100,000、好ましくは1,000〜50,000、さらに好ましくは3,000〜30,000の範囲内が好適である。単量体(b−2−1a)及び単量体(b−2−1b)の重合は通常の溶液重合法等によって行うことができ、得られる重合体状化合物(b−2−1)は水溶性もしくは水分散性のいずれかであることができる。
【0110】
他方、単量体状化合物(b−2−2)としては、例えば、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等があげられ、これらは単独で又は2種以上併用することができる。
【0111】
また、前記オキサゾリン基を側鎖に2個以上有する重合体状の化合物(b−2−1)と上記1分子中にオキサゾリン基を2個以上有する単体状の化合物(b−2−2)を併用してもよい。
【0112】
本発明におけるオキサゾリン基含有化合物(b−2)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基1モルに対しオキサゾリン基含有化合物(b−2)中のオキサゾリン基が0.2〜1.0モル、特に0.5〜1.0モルの範囲内であることが、低温硬化性の点から好ましい。
【0113】
前記カルボジイミド基含有樹脂(b−3)は、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得ることができ、該当する市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を用いることができる。
【0114】
前記硬化剤(B)として、オキサゾリン基含有化合物(b−2)又はカルボジイミド基含有化合物(b−3)を用いる場合、一般に、前記ポリエステル樹脂(A)はカルボキシル基を含有し、なかでも、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基由来の酸価が5〜80、好ましくは10〜70mgKOH/g、さらに好ましくは30〜70mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0115】
前記ヒドラジド基含有化合物(b−4)は、−CO−NH−NHで示されるヒドラジド基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜10個有する化合物であって、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド又はイソフタル酸ジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させることにより得られるポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0116】
また、前記セミカルバジド基含有化合物(b−5)は、−NH−CO−NH−NHで示されるセミカルバジド基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜10個有する化合物であって、例えば、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート又はそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルとポリオール化合物やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル化合物等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物等のセミカルバジド基を有する化合物;ビスアセチルジヒドラゾン等のヒドラゾン基を有する化合物等が挙げられる。
【0117】
前記硬化剤(B)として、ヒドラジド基含有化合物(b−4)又はセミカルバジド基含有化合物(b−5)を用いる場合、一般に、前記ポリエステル樹脂(A)はカルボニル基を含有することが好適である。
【0118】
当該第二の実施形態においては、上記硬化剤を用いることによって、平滑性、鮮映性及び耐水性に優れた複層塗膜を形成することができる。
【0119】
より具体的には、以下の通りである:
自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗装を施した後、「中塗塗料の塗装→焼付け硬化→水性ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化」の3コート2ベーク(3C2B)方式により複層塗膜を形成する方法が広く採用されているが、近年では、省エネルギーの観点から、中塗塗料の塗装後の焼付け硬化工程を省略し、被塗物に電着塗装を施した後、「水性中塗塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→水性ベース塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化」とする3コート1ベーク(3C1B)方式が試みられている(例えば特開2002−282773号公報)。
【0120】
しかしながら、上記3C1B方式は、中塗塗膜とベースコート塗膜との混層が起こりやすいため、得られる塗膜の平滑性や鮮映性が低下したり、塗膜間における硬化剤等の物質移行に伴う硬化バランスの変化によると推察される耐チッピング性の低下や耐水性の低下が生じたりする場合があり、課題とされていた。
【0121】
本発明の第二の実施形態においては、上記硬化剤を用いることによって、第2着色塗料が塗装される直前の第1着色塗膜の粘度が充分に高く、あるいは架橋反応の進行に伴い、第1着色塗膜と第2着色塗膜との混層を軽減することができる。これにより、平滑性、鮮映性及び耐水性に優れた複層塗膜を形成することができる。
【0122】
また、例えば、低湿度化においては塗着塗料の固形分濃度は高くなるが、その場合においても塗着塗料の粘度は大幅に上昇することなく、良好な塗面平滑性を有している。このような適度な相互作用が発現することにより、本発明の複層塗膜形成方法によれば、良好な仕上り外観を有する複層塗膜を得ることができる。
【0123】
また、当該第二の実施形態においては、該水性第1着色塗料(X)は、前記硬化剤(B)の補助架橋剤として、1分子中に水酸基及びブロックイソシアネート基が併存するウレタン変性ポリエステル樹脂等を含有することができる。
【0124】
前記1分子中に水酸基及びブロックイソシアネート基が併存するウレタン変性ポリエステル樹脂は、自己架橋性樹脂であり、例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部に、部分ブロックポリイソシアネート化合物をウレタン化反応せしめることによって合成することができる。ポリイソシアネート化合物及びブロック剤はブロック化ポリイソシアネート化合物(b−7)で挙げたものを使用することができる。
【0125】
また、上記硬化剤(B)として、前記イソシアネート基含有化合物(b−1)を使用する場合は、上記硬化剤が、さらに、界面活性剤、好ましくはアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤、さらに好ましくはアニオン性界面活性剤を含有することが好適である。
【0126】
増粘剤(C)
本発明の塗料組成物に含まれる増粘剤(C)は、疎水基を有するウレタン会合型増粘剤及び/又は疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤である。
【0127】
ウレタン会合型増粘剤としては、例えば分子中にウレタン結合とポリエーテル鎖を有し、かつ、末端に疎水基を有する化合物を挙げることができ、一般に水性媒体中において、疎水性相互作用により増粘効果を発揮するものである。
【0128】
疎水基を有するウレタン会合型増粘剤としては、例えば、下記一般式(1)で表わされる化合物をあげることができる。
【0129】
【化4】

【0130】
上記一般式(1)において、X及びZは、同一又は異なって、炭素数8〜36の炭化水素基であり、Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基であり、OR、OR’及びOR’’は、同一又は異なって、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、a及びdは、同一又は異なって、0〜50の整数であり、bは10〜500の整数であり、cは0又は1以上の整数である。
【0131】
炭素数8〜36の炭化水素基としては、直鎖の炭化水素基としては、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基等が挙げられ、分岐の炭化水素基としては2−エチルヘキシル基、2−ブチルオクチル基、2−(3−メチルブチル)−1,6−ジメチルヘキシル基、2−ペンチルノニル基、2−ヘキシルデシル基、2−ヘプチルウンデシル基、エメリー型イソステアリル基、3−(1,3,3 −トリメチルブチル)−5,7,7 −トリメチルオクチル基、2−オクチルドデシル基、2−ノニルトリデシル基、コレステリル基、ラノステリル基、アグノステリル基及びラノリン基から選ばれる基である。
【0132】
炭素数が8未満では、十分な増粘効果が得られなかったり、基体樹脂との相溶性が低下する場合がある。また炭素数が36を越えると、水分散性の低下により、塗膜の仕上り外観又は貯蔵性が低下する場合がある。
【0133】
その中でも炭素数が18以上のものが特に好ましく、直鎖型ではオクタデシル基、分岐型ではコレステリル基やラノステリル基が特に好ましい。
【0134】
また、前記一般式(1)において、Yはジイソシアネート化合物に基づく2価の有機残基であり、いいかえれば、ジイソシアネート化合物から2つの−N=C=Oが脱離した基を示す。該ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族系ジイソシアネート化合物、芳香族系ジイソシアネート化合物、脂環族系ジイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0135】
上記脂肪族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0136】
前記芳香族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジエトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート及び2,2’−ジメチル−5,5’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0137】
前記脂環族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、シクロヘキシルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0138】
前記一般式(1)におけるOR、OR’及びOR’’はそれぞれ独立して炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。該オキシアルキレン基の炭素数が2未満であるか又は4を越えると、増粘剤(C)の増粘性が低下する場合がある。炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられ、これらのうちオキシエチレン基が特に好ましい。オキシエチレン基の存在割合は、通常OR、OR’及びOR’’のオキシアルキレン基の合計の少なくとも60質量%、特に好ましくは、少なくとも80質量%、さらに特に好ましくは、少なくとも90質量%であることが望ましい。オキシエチレン基が60質量%以上存在すると高い増粘性を得ることができる。
【0139】
また、前記一般式(1)中のOR、OR’及びOR’’は、互いに同種のオキシアルキレン基であってもよく又は異種のオキシアルキレン基であってもよい。また、(OR)a、(OR’)b及び(OR’’)dはいずれも同種の少なくとも2個のオキシアルキレン基が付加結合した形態のものであってもよく、また、2種以上のオキシアルキレン基がブロック又はランダム状に連結した形態のものであってもよい。
【0140】
前記一般式(1)におけるa及びdは各々OR、OR’’の繰り返し数を表わし、それぞれ独立して0〜50、好ましくは0〜30、さらに好ましくは0〜25の整数である。a及びdが50を越えると、増粘剤(C)の増粘性が低下する場合がある。
【0141】
前記一般式(1)におけるbはOR’の繰り返し数を表わし、10〜500、好ましくは20〜400、さらに好ましくは30〜300の整数である。bが10未満の場合及び500を越える場合には、増粘剤(C)の増粘性が低下する場合がある。
【0142】
前記一般式(1)におけるcは、繰り返し単位
【0143】
【化5】

【0144】
の繰り返し数を表わし、0又は1以上の整数であり、好ましくは1〜500、さらに好ましくは20〜400の範囲内の整数である。
【0145】
上記式(1)の化合物は、それ自体既知のウレタン化反応を用いて合成することができ、例えば、ポリエーテルモノオール、ポリエーテルジオール及びジイソシアネートを2〜10時間反応させることにより製造することができる。ポリエーテルモノオール、ポリエーテルジオール及びジイソシアネートは、これら3成分を反応容器に一括に仕込み反応させてもよく、或いはポリエーテルジオールとジイソシアネートをまず反応させた後、ポリエーテルモノオールと反応させてもよく、又はポリエーテルモノオールとジイソシアネートをまず反応させた後、ポリエーテルジオールと反応させてもよい。反応は通常約40〜約130℃、好ましくは約70〜約100℃の温度で行うことができる。該反応により副生成物が生じる場合があるが、副生成物は分離除去する必要はなく、式(1)の化合物は副生成物との混合物の状態で使用することができる。
【0146】
これらの反応は、必要に応じて、活性水素を含有しない溶剤中で行うことができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;石油エーテル、n−ヘキサン等の脂肪族系溶剤;シクロヘキサン、シクロヘキサノン、デカリン等の脂環式系溶剤;クロロホルム、四塩化炭素、エチレンジクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン含有溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、N−メチルピロリドン等を使用することができる。
【0147】
また、上記の反応は、必要に応じて、ウレタン化反応に使用される触媒の存在下に行うことができ、該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘプタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルホリン、ベンジルトリエチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアミン系化合物;塩化第1スズ、塩化第2スズ、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸カリウム、三塩化アンチモン等の金属含有化合物等が挙げられる。これら触媒の使用量は、仕込み反応物の合計質量を基準にして、通常0.001〜1質量%の範囲内とすることができる。また、上記触媒の添加は通常反応初期に行なわれるが、反応中に分割して添加してもよい。
【0148】
(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。該(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤の酸価としては、30〜300mg/KOH、好ましくは80〜280mg/KOHの範囲内であることが望ましい。
【0149】
(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤としては、以下の共重合体が好ましい。
(c−1)(メタ)アクリル酸又はその塩、
(c−2)下記一般式(2)
【0150】
【化6】

【0151】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、メチル又はエチル基、Rは炭素数8〜36の炭化水素基、nは3〜60の整数を表す。)
で表される重合性不飽和モノマー、
(c−3)アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート、及び
(c−4)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー
を含有する重合性不飽和モノマー混合物であって、重合性不飽和モノマーの総量に基づいて、(c−1)の含有割合が1〜50質量%であり、(c−2)の含有割合が5〜60質量%であり、(c−3)の含有割合が5〜60質量%であり、かつ(c−4)の含有割合が0.05〜5質量%である重合性不飽和モノマーを共重合することによって得られる共重合体である
(メタ)アクリル酸(塩)(c−1)
(メタ)アクリル酸(塩)(c−1)とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩又はメタクリル酸塩を意味する。
【0152】
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩等の炭素数1〜4のアルキルアミン塩;等が含まれる。
【0153】
上記(メタ)アクリル酸(塩)としては、アクリル酸、メタクリル酸及びメタクリル酸アンモニウム塩及びジメチルエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の3級アミン塩が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がさらに好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0154】
重合性不飽和モノマー(c−2)
重合性不飽和モノマー(c−2)は、下記一般式(2)
【0155】
【化7】

【0156】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を表し、R及びRは各々独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Rは炭素数8〜36の炭化水素基を表し、nは3〜60の整数を表し、Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子を表す。)で表される重合性不飽和モノマーである。
【0157】
なかでも、上記R及びRは、得られる塗膜の平滑性の観点から、各々独立に水素原子及び/又はメチル基であることが好ましく、なかでも水素原子であることが特に好ましい。
【0158】
また、上記Rは、炭素数8〜36の炭化水素基、好ましくは炭素数12〜32のアルキル基又はアルケニル基であって、例えば、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルケニル基、分岐アルケニル基等が含まれる。
【0159】
上記直鎖アルキル基としては、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基等が挙げられ、分岐アルキル基としては、2−エチルヘキシル基、イソデシル基、イソトリデシル基、イソステアリル基、2−ブチルオクチル基、2−(3−メチルブチル)−1,6−ジメチルヘキシル基、2−ペンチルノニル基、2−ヘキシルデシル基、2−ヘプチルウンデシル基、3−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクチル基、2−オクチルドデシル基、2−ノニルトリデシル基、等が挙げられる。
【0160】
また、直鎖アルケニル基としては、n−オクテニル基、n−デセニル基、n−ウンデセニル基、n−ドデセニル基、n−トリデセニル基、n−テトラデセニル基、n−ペンタデセニル基、n−ヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基等が挙げられ、分岐アルケニル基としては、イソオクテニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、インドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基等が挙げられる。
【0161】
また、nは3〜60の整数であり、なかでも、得られる塗料の貯蔵安定性の観点から、10〜50の整数であることが好ましく、20〜40の整数であることがさらに好ましい。
【0162】
上記重合性不飽和モノマー(c−2)としては、n−ドコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−ヘンエイサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−エイコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−ノナデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−オクタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−ヘプタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート及びn−ヘキサデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0163】
なかでも、n−ドコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−オクタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、n−ヘキサデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート、特にn−ドコサノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレート及びn−オクタデカノールエチレンオキシド3〜60モル付加体の(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0164】
アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート(c−3)
アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート(c−3)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0165】
なかでも、得られる塗膜の平滑性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0166】
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−4)
重合性不飽和モノマー(c−4)としては、前記(メタ)アクリル酸(塩)(c−1)、重合性不飽和モノマー(c−2)及びアルキル(メタ)アクリレート(c−3)と共重合でき、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーであれば特に限定されず、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個有する2官能重合性不飽和モノマー(c−4−1)、重合性不飽和基を1分子中に3個有する3官能重合性不飽和モノマー(c−4−2)、重合性不飽和基を1分子中に4〜8個有する4〜8官能重合性不飽和モノマー(c−4−3)等を使用することができる。
【0167】
2官能重合性不飽和モノマー(c−4−1)
2官能重合性不飽和モノマー(c−4−1)としては、例えば、ポリオールのジ(メタ)アクリレート、ポリオールアルキレンオキシド付加体のジ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0168】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2、3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチルー1,3−ジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びグリセリン等が挙げられ、なかでも、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチルー1,3−ジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリンを好適に使用することができる。
【0169】
前記ポリオールアルキレンオキシド付加体としては、上記ポリオールのアルキレンオキシド付加体であれば特に制限されないが、アルキレンオキシドの付加モル数が、ポリオール1molに対して、2〜100mol、好ましくは4〜80mol、さらに好ましくは6〜60molの範囲内であることが好適である。
【0170】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0171】
また、上記アルキレンオキシドは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれでもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、30〜100mol%、好ましくは50〜100mol%、さらに好ましくは70〜100mol%の範囲内であることが好適である。
【0172】
3官能重合性不飽和モノマー(c−4−2)
3官能重合性不飽和モノマー(c−4−2)としては、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオールのトリ(メタ)アクリレート及びポリオールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0173】
上記1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びシクロヘキサンテトラオール等を使用することができる。
【0174】
また、ポリオールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ポリオール1molに対して、3〜200mol、好ましくは6〜150mol、さらに好ましくは9〜100molの範囲内であることが好適である。
【0175】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0176】
また、上記アルキレンオキシドは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれでもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、30〜100mol%、好ましくは50〜100mol%、特に好ましくは70〜100mol%の範囲内であることが好適である。
【0177】
4〜8官能重合性不飽和モノマー(c−4−3)
4〜8官能重合性不飽和モノマー(c−4−3)としては、例えば、1分子中に4個以上の水酸基を有するポリオールのテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレート及びポリオールアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0178】
上記1分子中に4個以上の水酸基を有するポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ヘキサペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン、シクロヘキサンテトラオール、ソルビタン等を使用することができる。
【0179】
また、ポリオールアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ポリオール1molに対して、3〜200mol、好ましくは6〜150mol、さらに好ましくは9〜100molの範囲内であることが好適である。
【0180】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0181】
また、上記アルキレンオキシドは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれでもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、30〜100mol%、好ましくは50〜100mol%、特に好ましくは70〜100mol%の範囲内であることが好適である。
【0182】
重合性不飽和モノマー(c−4)としては、仕上り性等の観点から、前記2官能重合性不飽和モノマー(c−4−1)及び/又は3官能重合性不飽和モノマー(c−4−2)を使用することが好ましい。
【0183】
なかでも、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、好ましくはポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート及びグリセリンアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、さらに好ましくはポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することが好適である。
【0184】
その他の重合性不飽和モノマー(c−5)
上記(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤には、上記(c−1)〜(c−4)に加えその他の重合性不飽和モノマー(c−5)を含む重合性不飽和モノマー混合物の共重合体も含まれる。
【0185】
その他の重合性不飽和モノマー(c−5)としては、前記重合性不飽和モノマー(c−1)〜(c−4)と共重合できる重合性不飽和モノマーであれば特に限定されないが、なかでも、得られる塗膜の平滑性の観点から、エチレン性不飽和カルボン酸(塩)、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキシド付加mol数2〜100)(メタ)アクリル酸モノエステル、アルコキシポリアルキレングリコール(アルキレンオキシド付加mol数2〜100)(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びアミド基含有重合性不飽和モノマー、好ましくはクロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ポリオキシエチレン(エチレンオキシド付加mol数2〜100)モノ(メタ)アクリレート、炭素数1〜6の脂肪族アルコールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド付加mol数2〜100)の(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド、さらに好ましくはマレイン酸、フマル酸、ポリオキシエチレン(エチレンオキシド付加mol数2〜100)モノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドを好適に使用することができる。
【0186】
上記重合性不飽和モノマー(c−1)〜(c−5)は、それぞれ、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0187】
上記(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤は、前記重合性不飽和モノマー(c−1)〜(c−4)及び必要に応じて(c−5)を含有する重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる。共重合に際しての重合性不飽和モノマー(c−1)〜(c−5)の使用割合は、重合性不飽和モノマーの合計質量、すなわち(c−1)〜(c−5)の合計質量を基準にして、下記の範囲内とすることができる。
(メタ)アクリル酸(塩)(c−1):1〜50質量%、好ましくは1〜45質量%、さらに好ましくは7〜40質量%、
重合性不飽和モノマー(c−2):5〜60質量%、好ましくは10〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%、
アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート(c−3):5〜60質量%、好ましくは7〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%、
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−4):0.05〜5質量%、好ましくは0.07〜4質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%。
その他の重合性不飽和モノマー(c−5):0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%の範囲内であることが好適である。
【0188】
重合性不飽和モノマー(c−1)〜(c−5)の配合割合が上記範囲内である場合、仕上り性等がさらに良好となる。
【0189】
上記重合性不飽和モノマー(c−1)〜(c−5)の共重合は、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の従来公知(例えば、特開2004−27208号公報に記載)の方法により行なうことができる。なかでも、乳化重合法及び溶液重合法、好ましくは溶液重合法により行なうことが好適である。
【0190】
疎水性溶媒(D)
本発明の水性塗料組物において使用される疎水性溶媒(D)は、その炭素数が6〜14であり、且つ、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下の有機溶媒であって、例えば、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール、イソドデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0191】
疎水性溶媒(D)としては、塗料のタレ抵抗性、得られる塗膜の平滑性等の観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、特に、n−オクタノール、2−オクタノール、イソドデカノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒が特に好適である。
【0192】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、増粘剤(C)及び疎水性溶媒(D)を、該水性塗料組成物中のポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)の総量を基準にして、以下に述べる範囲内の量で含有することができる。
増粘剤(C):0.01〜3質量%、好ましくは0.02〜2質量%、さらに好ましくは0.02〜1質量%、
疎水性溶媒(D):4〜20質量%、好ましくは5〜18質量%、さらに好ましくは6〜15質量%。
【0193】
本発明の水性塗料組成物中のポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)の量は、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として、固形分として、ポリエステル樹脂(A)が40〜90質量%、好ましくは50〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%、硬化剤(B)が10〜60質量%、好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲内であるのが適している。
【0194】
本発明の水性塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、疎水基を有する増粘剤(C)及び疎水性溶媒(D)の相互作用により、擬塑性を発現し、そのため、例えば、高湿度下で塗装しても、塗着塗料の粘度は大幅に低下することなく、十分なタレ抵抗性を有している。
【0195】
また、例えば、低湿度化においては塗着塗料の固形分濃度は高くなるが、その場合においても塗着塗料の粘度は大幅に上昇することなく、良好な塗面平滑性を有している。このような適度な相互作用が発現することにより、本発明の水性塗料組成物は、良好な仕上り外観を得ることができる。
【0196】
本発明の水性塗料組成物は、前記ポリエステル樹脂(A)の他に、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の改質用樹脂を含むことができる。
【0197】
また、本塗料は、上記改質用樹脂が、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有する場合には、前記硬化剤(B)として、該官能基と反応し得る架橋性官能基を有する硬化剤を含有することができる。
【0198】
このような硬化剤としては、上記架橋性官能基と反応し得る、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられ、なかでも、カルボジイミド基含有化合物を用いることができる。
【0199】
また、本発明の水性塗料組成物は、通常塗料の分野で用いられる着色顔料、光輝性顔料及び体質顔料を含有することができる。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸鉛、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、鉛丹、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等が挙げられ、また、光輝性顔料としては、例えば、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等が挙げられ、また、体質顔料としては、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0200】
着色顔料の配合量は、本塗料中のポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)の固形分総量を基準として、1〜150質量%、好ましくは20〜120質量%、さらに好ましくは30〜100質量%の範囲内であることが好適である。
【0201】
体質顔料の配合量は、本塗料中のポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)の固形分総量を基準として、1〜100質量%、好ましくは2〜80質量%、さらに好ましくは2〜60質量%の範囲内であることが好適である。
【0202】
また、本発明の水性塗料組成物は、さらに必要に応じて、光輝性顔料、前記増粘剤(C)以外の増粘剤、硬化触媒、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、可塑剤、前記疎水性溶媒(D)以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0203】
また、前記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩(例えば、ヘクトライト及びベントナイト等の粘土鉱物を精製するか、既知の方法で合成することにより容易に得ることができ、金属としてはナトリウム、マグネシウム、リチウム等をあげることができる)、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤(市販品として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」等が挙げられる);カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等が挙げられ、これらの増粘剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0204】
また、本塗料が、(C)に加えて上記増粘剤を含有する場合、該(C)以外の増粘剤の配合量は、本塗料中の固形分総量を基準として、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%の範囲内であることが好適である。
【0205】
本発明の水性塗料組成物は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであっても良いが、貯蔵安定性の観点から必要に応じて、ポリエステル樹脂(A)を含有する主剤、及び硬化剤(B)を含有する硬化剤からなる二液型塗料とすることができる。また、一般に、上記主剤が、さらに、顔料及び溶媒を含有し、上記硬化剤が、さらに、硬化触媒及び溶媒を含有することが好ましい。
【0206】
複層塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物は、タレ抵抗性に優れ、かつ、塗面平滑性等の仕上り外観に優れた塗膜を形成することができるので、例えば、自動車の中塗塗料及び上塗塗料、特に中塗塗料として好適に使用することができる。
【0207】
本発明の水性塗料組成物の塗装は、従来から知られている方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により行なうことができる。これらの塗装方法においては、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。この中でも特に静電印加による回転霧化塗装が好ましい。また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。その膜厚は硬化塗膜に基いて、3〜100μm、特に5〜60μm、さらに特に10〜50μmの範囲内が好ましく、その塗膜は、例えば、120〜170℃、特に130〜160℃で、10〜40分間程度加熱することにより硬化させることができる。加熱硬化は、それ自体既知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を用いて行うことができる。必要に応じて加熱硬化を行なう前に溶媒等の揮発成分の揮散を促進するために、50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なってもよい。
【0208】
被塗物としては、特に制限はないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等が好ましい。また、これらにより形成される自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体等であってもよい。
【0209】
また、該被塗物は、金属基材や上記車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0210】
また、これらの被塗物はあらかじめ、下塗塗装(例えばカチオン電着塗装等)等を行なったものであってもよい。
【0211】
本発明の水性塗料組成物は、その使用に際して、必要に応じて添加される添加剤等を混合し、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
【0212】
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20〜60秒程度、好ましくは25〜50秒程度の粘度である。また、上記において、本塗料の塗装固形分濃度は、通常、40〜65質量%程度、好ましくは45〜60質量%程度である。
【0213】
カチオン電着塗料としては、例えば、金属基材の塗装に際しプライマーとして通常用いられているそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、有機酸又は無機酸で中和して水溶化又は水分散化することができる塩基性の水溶性又は水分散性樹脂、例えば、樹脂骨格中に多数のアミノ基を有するエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等の樹脂に、中和剤、顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料等)、親水性溶剤及び水、さらに必要に応じて、硬化剤、添加剤等を配合した水性塗料をあげることができる。塩基性の水溶性又は水分散性樹脂を水溶化又は水分散化するための中和剤としては、例えば、酢酸、ヒドロキシル酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリシン等の有機酸;硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸を使用することができる。これらの中和剤の配合量は、上記樹脂のアミン価(通常、約30〜約200mgKOH/gの範囲内にある)に対する中和当量が約0.1〜約1.0の範囲内となるようにするのが適当である。
【0214】
カチオン電着塗料は、固形分含有率が5〜40質量%、好ましくは8〜30質量%の範囲内となるように脱イオン水で希釈し、pHを5.5〜8.0の範囲内の電着浴として、常法により、被塗物にカチオン電着塗装することができる。形成される電着塗膜の膜厚は、通常、硬化塗膜として、約10〜約40μm、特に約15〜約30μmの範囲内が好ましい。形成されるカチオン電着塗膜は、約140〜約210℃、好ましくは約160〜約180℃の温度で、10〜40分間程度加熱することにより硬化させることができる。
【0215】
上記被塗物上に、中塗塗料として、本発明の水性塗料組成物が塗装される。
【0216】
中塗塗料としての、本発明の水性塗料組成物の塗装及び加熱硬化は、前記した方法と同様にして行なうことができる。
【0217】
上記本発明の水性塗料組成物により形成された硬化又は未硬化の中塗塗膜上に、上塗塗料が塗装される。上塗塗料としては、それ自体既知の上塗塗料を使用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂・アミノ樹脂系塗料、アルキド樹脂・アミノ樹脂系塗料、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系塗料、酸樹脂・エポキシ樹脂系塗料等の液状塗料を使用することができる。これらの液状塗料の形態は、有機溶剤系塗料、水系塗料のいずれであってもよい。
【0218】
これらの上塗塗料は、着色顔料が配合された着色塗料、メタリック顔料が配合されたメタリック塗料、これらの顔料を全く又は殆ど含有しないクリヤ塗料等に分類され、本方法では、これらの塗料を適宜使用して1コート方式(1コート1ベーク)、2コート方式(2コート1ベーク、2コート2ベーク)等により、上塗塗膜を形成することができる。
【0219】
具体的には、例えば、上記加熱硬化した中塗塗膜上に着色塗料を硬化塗膜として、約10〜約40μmの膜厚になるように塗装し、必要に応じて50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なった後、約100〜約160℃の温度で10〜40分間加熱して行なう1コート方式によるソリッドカラー仕上げ;上記加熱硬化した中塗塗膜上に着色塗料又はメタリック塗料を硬化塗膜として、約10〜約30μmの膜厚になるように塗装し、必要に応じて50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なった後、加熱硬化後又は未硬化の状態で、クリヤ塗料を硬化塗膜として、約20〜約60μmの膜厚になるように塗装し、必要に応じて50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なった後、約120〜約160℃の温度で10〜40分間加熱して行なう2コート1ベーク方式(2C1B)又は2コート2ベーク方式(2C2B)によるソリッドカラー又はメタリック仕上げ方法等をあげることができる。
【0220】
好ましい実施形態において、例えば、以下に示す工程(1)〜(4)を含む方法により複層塗膜を形成することができる。
【0221】
工程(1)
本発明の複層塗膜形成方法によれば、まず、被塗物上に、ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)、増粘剤(C)及び疎水性溶媒(D)を含有する本発明の水性塗料組成物(中塗塗料(以下、「水性第1着色塗料(X)」ともいう)が塗装される。
【0222】
水性塗料組成物の塗装方法としては、前述の方法に従い行うことができる。ここで、本発明の水性第1着色塗料(X)は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率が、1〜95質量%、好ましくは15〜95質量%、さらに好ましくは30〜80質量%の範囲内となる塗料であることが好適である。
【0223】
工程(2)
上記の如くして形成される水性第1着色塗料(X)の塗膜上には、さらに、第1の上塗塗料(以下、「水性第2着色塗料(Y)」ともいう)が塗装される。
【0224】
上記水性第1着色塗料(X)の塗膜は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、例えば、予備加熱(プレヒート)、エアブロー等の手段により、塗膜の固形分含有率が、70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、の範囲内となるように調整することが好ましい。また、ゲル分率が1〜95質量%、好ましくは15〜95質量%、さらに好ましくは30〜60質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0225】
上記プレヒートは、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で約50〜約110℃、好ましくは約60〜約90℃の温度で1〜30分間程度直接的又は間接的に加熱することにより行うことができ、また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0226】
また、前記固形分含有率は、以下の方法により測定される。
【0227】
まず、被塗物と同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上に、水性第1着色塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、予備加熱等がされた該アルミホイルを、水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
また、本明細書中において、ゲル分率は、以下の方法により測定される。
まず、被塗物と同時に、予め質量を測定しておいたポリプロピレン板(質量;Wa)上に水性第1着色塗料(X)を塗装し、塗装後、80℃で10分プレヒートした該ポリプロピレン板を、水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に回収する。
【0228】
次に、第1着色塗膜と共に該ポリプロピレン板の質量(W)を測定する。その後、該塗膜をポリプロピレン板と共に300メッシュのステンレススチール製の網状容器に入れ、64℃に加温したアセトンとメタノールの等質量混合溶剤中で5時間抽出処理を行い、110℃で60分間乾燥した後、残存した塗膜と共に該ポリプロピレン板の質量(W)を測定し、以下の式に従って得られる不溶塗膜残存率(質量%)をゲル分率とする。
ゲル分率(質量%)=(W−W)/(W−W)×100
上記第1着色塗膜上には、次いで、水性第2着色塗料(Y)が塗装される。
【0229】
該水性第2着色塗料(Y)としては、例えば、カルボキシル基、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の基体樹脂と、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等の架橋剤からなる樹脂成分を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。
【0230】
顔料成分としては、前記水性第1着色塗料(X)の説明において例示した着色顔料、光輝性顔料、体質顔料等を使用することが可能であり、顔料成分の少なくとも1種として光輝性顔料を用いることによって、緻密感を有するメタリック調又はパール調の塗膜を形成せしめることができる。
【0231】
水性第2着色塗料(Y)の塗装は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜40μm、好ましくは10〜30μmの範囲内とすることができる。
【0232】
塗装された水性第2着色塗料(Y)の塗膜は、例えば、プレヒート、エアブロー等により、約50〜約110℃、好ましくは約60〜約90℃の温度で1〜60分間程度加熱することにより乾燥することができる。
【0233】
工程(3)
上記の如くして形成される水性第2着色塗料(Y)の塗膜上には、さらに、第2の上塗塗料(以下、「クリヤ塗料(Z)」ともいう)が塗装される。
【0234】
クリヤ塗料(Z)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂等の架橋剤を樹脂成分として含有する有機溶剤系熱硬化型塗料、水性熱硬化型塗料、熱硬化粉体塗料等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂を含む熱硬化型塗料、及び水酸基含有樹脂とブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含む熱硬化型塗料が好適である。
【0235】
また、上記クリヤ塗料(Z)としては、一液型塗料を用いても良いし、二液型ウレタン樹脂塗料等の二液型塗料を用いても良い。
【0236】
また、上記クリヤ塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0237】
上記クリヤ塗料(Z)は、前記水性第2着色塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。乾燥膜厚で10〜60μm、好ましくは25〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0238】
工程(4)
以上に述べた如くして形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層の塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により、約80〜約170℃、好ましくは約120〜約160℃の温度で約20〜約40分間程度加熱して同時に乾燥させることができる。
【実施例】
【0239】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとし、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基くものである。
【0240】
ポリエステル樹脂(A)の製造
製造例1〜17
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び精留塔を備えた4つ口フラスコに、下記図表1に示す質量比で酸成分及びアルコール成分を仕込み、160℃まで昇温させた後、160℃から230℃まで3時間かけて、生成する縮合水を精留塔を用いて溜去しながら、昇温させ、その後230℃で2時間反応させた。
【0241】
図表1中、「(a−1)+(a−2)(重量%)」は、上記反応で用いられる酸成分及びアルコール成分の総量を基準にして、炭素数8以上の直鎖型ジカルボン酸(a−1)及び炭素数8以上の直鎖型ジオール(a−2)の合計の含有量(質量%)を示す。
【0242】
次に精留塔を水分離器に付け替え、反応生成物にトルエンを適宜加え、230℃で還流状態を保持し、縮合水を水分離器で分離、溜去しながら縮合反応させた。
【0243】
樹脂酸価が2となった時点で、減圧下でトルエンを除去し、反応生成物を170℃まで冷却した。反応生成物に下記図表1に示す量の無水トリメリット酸を添加し、170℃で60分間付加反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを反応生成物に対して10質量%加え、温度を85℃とした後、酸価を測定した。反応生成物を、その酸価に対して0.9当量に相当する量のN,N−ジメチルエタノールアミンで中和し、さらに脱イオン水を徐々に添加して水分散体とすることにより、各ポリエステル樹脂(PE−1)〜(PE−17)を得た。得られた各ポリエステル樹脂の固形分質量(%)、数平均分子量、水酸基価及び酸価を併せて下記図表1に示す。なお、製造例17のPE−17は、水分散性不良により、水分散体を得ることができなかった。
【0244】
ここで、酸価の測定は、JISK−5601−2−1(1999)に準拠して行った。具体的には、試料をトルエン/エタノール=2/1体積比の混合溶剤で溶解し、フェノールフタレインを指示薬として水酸化カリウム溶液で滴定し、下記式により算出した。
酸価(mgKOH/g)=56.1×V×C/m
V:滴定量(ml)、C:滴定液の濃度(mol/l)、m:試料の固形分重量(g)
また、水酸基価の測定は、JISK−0070(1992)に準拠して行った。具体的には、試料にアセチル化試薬(無水酢酸25gにピリジンを加えて全体が100mlになるように調整した無水酢酸ピリジン溶液)を5ml加えてグリセリン浴中で加熱させた後、水酸化カリウム溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、下記式により算出した。
水酸基価(mgKOH/g)=〔V×56.1×C/m〕+D
V:滴定量(ml)、C:滴定液の濃度(mol/l)、m:試料の固形分重量(g)、D:試料の酸価(mgKOH/g)(以下、水酸基価及び酸価の測定方法は、本明細書中において同じ)。
【0245】
【表1】

【0246】
【表2】

【0247】
硬化剤(B)
下記図表2中の硬化剤はそれぞれ以下の意味を表わす。
MF−1:メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、重量平均分子量1000、固形分80%。ブトキシ基とメトキシ基とのモル比:ブトキシ/メトキシ=30/70。
MF−2:メトキシエーテル化メラミン樹脂、重量平均分子量800、固形分80%。 BNCO−1:バイヒジュールVP LS−2310、水分散型ブロックイソシアネート、
NCO%=9.9%、固形分38%。
【0248】
増粘剤(C)の製造
製造例18
加熱装置、温度計、窒素導入管及び高粘度用攪拌機を備えた容量1,000mlの4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール6000(分子量6,000)420部及びコレステリンにエチレンオキサイドを20モル付加したポリエーテルモノオール177部を入れ、混合物を減圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水反応させ、系の水分含有量を0.03%とした。次いで、反応生成物を70℃に冷却し、これにヘキサメチレンジイソシアネートを23.5部加えた。得られた混合物を、窒素気流下85〜90℃で、IRによる追跡で、イソシアネート含有量が実質的に0%になるまで(3時間)反応させることにより、前記一般式(1)におけるX及びZが共にコレステリル基であり、Yがヘキサメチレン基であり、OR、OR’及びOR’’がいずれもオキシエチレン基であり、かつa、b、c及びdがそれぞれ、20、136、1及び20である増粘剤(C−1)を得た。
【0249】
製造例19
加熱装置、温度計、窒素導入管及び高粘度用攪拌機を備えた容量1,000mlの4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール10000(分子量10,000)500部及びラノステリンにエチレンオキサイドを2モル付加したポリエーテルモノオール17.2部を入れ、混合物を減圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水反応させ、系の水分含量を0.03%とした。次いで、反応生成物を70℃に冷却し、これにトリレンジイソシアネートを11.6部加えた。得られた混合物を窒素気流下80〜85℃で、IRによる追跡で、イソシアネート含量が実質的に0%になるまで(2時間)反応させることにより、前記一般式(1)におけるX及びZが共にラノステリル基であり、Yがトリレン基であり、OR、OR’及びOR’’がいずれもオキシエチレン基であり、かつa、b、c及びdがそれぞれ、2、227、2及び2である増粘剤(C−2)を得た。
【0250】
製造例20
加熱装置、温度計、窒素導入管及び高粘度用攪拌機を備えた容量1,000mlの4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール6000(分子量6,000)420部及び2−オクチルドデカノールにエチレンオキサイドを10モル付加したポリエーテルモノオール103部を入れ、混合物を減圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水反応させ、系の水分含量を0.03%とした。次いで、反応生成物を70℃に冷却し、これにヘキサメチレンジイソシアネートを23.5部加えた。得られた混合物を、窒素気流下85〜90℃で、IRによる追跡で、イソシアネート含量が実質的に0%になるまで(3時間)反応させることにより、前記一般式(1)におけるX及びZが共に2−オクチルドデカニル基であり、Yがヘキサメチレン基であり、OR、OR’及びOR’’がいずれもオキシエチレン基であり、かつa、b、c及びdがそれぞれ、10、136、1及び10である増粘剤(C−3)を得た。
【0251】
製造例21
加熱装置、攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、メチルトリグリコール350部を仕込み、80〜90℃に昇温した。次に、撹拌下、当該メチルトリグリコールに、メタクリル酸20部、n−オクタデシルアルコールエチレンオキシド60モル付加物のアクリレート19.5部、エチルアクリレート60部及びエチレングリコールエチレンオキシド15モル付加物のジアクリレート0.5部からなる単量体混合物と、2,2’−アソビスイソブチロニトリルの1%メチルトリグリコール溶液50部とをそれぞれ1.5時間かけて滴下した。その間、反応温度は80〜90℃を保持した。滴下終了後、反応生成物を3時間同温度に保った後、室温まで冷却することにより、増粘剤(C−4)(共重合体の濃度:20%)を得た。
【0252】
製造例22
加熱装置、温度計、窒素導入管及び高粘度用攪拌機を備えた容量1000mlの4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール10000(分子量10,000)500部及びオクタデシルアルコールにエチレンオキサイドを10モル付加したポリエーテルモノオール35.5部を入れ、混合物を減圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水反応させ、系の水分含量を0.03%とした。次いで、反応生成物を70℃に冷却し、これに4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートを18.8部加えた。得られた混合物を、窒素気流下85〜90℃で、IRによる追跡で、イソシアネート含量が実質的に0%になるまで(3時間)反応させることにより、前記一般式(1)におけるX及びZが共にオクタデシル基であり、Yがジフェニルメチレン基であり、OR、OR’及びOR’’がいずれもオキシエチレン基であり、かつa、b、c及びdがそれぞれ、10、227、2及び10である増粘剤(C−5)を得た。
【0253】
製造例23
加熱装置、温度計、窒素導入管及び高粘度用攪拌機を備えた容量1,000mlの4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール10000(分子量10,000)500部及びヘキサノールにエチレンオキサイドを2モル付加したポリエーテルモノオール6.27部を入れ、混合物を減圧下(5〜10mmHg)にて80〜90℃で3時間脱水反応させ、系の水分含量を0.03%とした。次いで、反応生成物を70℃に冷却し、これにトリレンジイソシアネートを11.6部加えた。得られた混合物を、窒素気流下80〜85℃で、IRによる追跡で、イソシアネート含量が実質的に0%になるまで(2時間)反応させることにより、前記一般式(1)におけるX及びZが共にヘキシル基であり、Yがトリレン基であり、OR、OR’及びOR’’がいずれもオキシエチレン基であり、かつa、b、c及びdがそれぞれ、2、227、3及び2である増粘剤(C−6)を得た。
【0254】
製造例24
加熱装置、攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、メチルトリグリコール350部を仕込み、80〜90℃に昇温した。次に、当該メチルトリグリコールに、撹拌下、メタクリル酸20部、n−ヘキシルアルコールエチレンオキシド30モル付加物のアクリレート19.5部、プロピルアクリレート60部及びエチレングリコールエチレンオキシド15モル付加体のジアクリレート0.5部からなる単量体混合物と、2,2’−アソビスイソブチロニトリルの1%メチルトリグリコール溶液50部とをそれぞれ1.5時間かけて滴下した。その間、反応温度は80〜90℃を保持した。滴下終了後、反応生成物を3時間同温度に保った後、室温まで冷却することにより、増粘剤(C−7)(共重合体の濃度:20%)を得た。
【0255】
図表2中の増粘剤(C−8)は以下の意味を表わす。
増粘剤(C−8):プライマルASE−60、ローム・アンド・ハース社製、固形分濃度28%。
【0256】
顔料分散ペースト用樹脂の製造
製造例25
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び精留塔を備えた4つ口フラスコに、カージュラE10P(HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)30.4部、トリメチロールプロパン41.5部、無水イソフタル酸80.7部、アジピン酸79.9部及びネオペンチルグリコール83.0部を仕込み、混合物を160℃に昇温後、生成する縮合水を精留塔を用いて溜去しながら、160から230℃まで3時間かけて昇温した。その後、昇温した混合物を230℃で2時間反応させた。次に、精留塔を水分離器に付け替え、反応生成物にトルエンを適宜加え、230℃で還流状態を保持し、縮合水を水分離器で分離、溜去しながら樹脂酸価が2以下となるまで縮合反応させた。次いで減圧下でトルエンを溜去し、得られた反応性生物を170℃まで冷却した。その後、反応生成物に無水トリメリット酸19.6部を加え、170℃で30分間付加反応させた。その後、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを反応生成物に対して10質量%加え、温度を85℃とした後、N,N−ジメチルエタノールアミンで中和し、さらに脱イオン水を徐々に添加して水分散体とすることにより、固形分40%の顔料分散ペースト用樹脂を得た。
【0257】
得られた顔料分散ペースト用樹脂は、酸価が40mgKOH/g、水酸基価が108mgKOH/g、数平均分子量が1500であった。
【0258】
水性塗料組成物(水性中塗塗料)の製造
実施例1
製造例25で得た顔料分散ペースト用樹脂 37.5部に、カーボンMA100(カーボンブラック、三菱化学社製)1部、JR806(チタン白、テイカ社製)70部及びMICRO ACE S−3(微粉タルク、日本タルク社製)10部を順次加えながら混合し、ペイントシェーカーで30分間分散し、顔料分散ペーストを得た。
【0259】
得られた顔料分散ペースト 118.5部に、攪拌しながら順に、製造例1で得たポリエステル樹脂(PE−1、固形分48%)114.6部(固形分で55部となる量)、メラミン樹脂MF−1(メトキシ・ブトキシ混合アルキル化メラミン樹脂、固形分80%)37.5部及び2−エチルヘキサノール7部を加えて混合攪拌し、さらに、脱イオン水、ジメチルエタノールアミンを加えて、pH8.5、フォードカップNo.4で20℃にて、40秒の粘度に調整して水性塗料組成物1を得た。
【0260】
実施例2〜20及び比較例1〜15
下記図表2に示す配合で、実施例1と同様にして混合攪拌を行なうことにより、各水性塗料組成物2〜35を得た。なお、図表2中の疎水性溶剤(D)以外の配合量は固形分配合である。
【0261】
試験板の作成1
実施例1〜20及び比較例1〜15で得られた水性塗料組成物1〜35を使用して、それぞれについて以下の様にして試験板を作製した。
【0262】
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、りん酸亜鉛処理)で処理した冷延鋼板に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。
【0263】
該電着塗膜上に各水性塗料組成物1〜35を膜厚が30μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で5分間プレヒートを行なった後、140℃で20分間加熱して硬化させた。次に、水性メタリックベースコートWBC713(関西ペイント社製、アクリル・メラミン樹脂系水性上塗着色ベースコート塗料、シルバー塗色)を膜厚15μmとなるように塗装し、室温で3分間放置してから、80℃で3分間プレヒートを行なった後、スワゾール1000(コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素溶剤)を用いてフォードカップNo.4による測定で20℃にて25秒の粘度となるように調整した有機溶剤型クリヤコート塗料KINO#1200TW(関西ペイント社製、酸・エポキシ硬化型アクリル樹脂系クリヤ塗料)を膜厚35μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、ベースコート及びクリヤコート両塗膜を一緒に硬化させることにより試験板を得た。なお塗装機は、回転霧化型のベル型塗装機「ABBメタリックベル塗装機」(商品名、ABB社製)を用いた。塗装はブース温度23℃、ブース湿度67%の条件で実施した。
【0264】
得られた各試験板について下記仕上り性の評価を行なった:
仕上り性:BYK Gardner社製のWave Scan(商品名)により測定した。Wave ScanによりLong Wave値(LW)及びShort Wave値(SW)が測定される。Long Wave値は、1.2〜12mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の中波肌の具合を評価することができる。Short Wave値は、0.3〜1.2mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の微少肌の具合を評価することができる。また、各Wave Scan値は、測定値が小さいほど塗面平滑性が高いことを示す。目安として、Wave Scan値は、LWで10未満、SWで12未満であれば、塗面平滑性が良好と判断される。
【0265】
試験板の作成2
実施例1〜20及び比較例1〜15で得られた水性塗料組成物1〜35を使用して、それぞれについて以下の様にして試験板を作製した。
【0266】
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、りん酸亜鉛処理)を施した冷延鋼板に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。
【0267】
被塗物として、11cm×45cmの大きさで端部から3cmの部分に、直径10mmのポンチ孔を2cm間隔で14個一列状に設けた上記電着塗装板と孔を開けていない電着塗装板を並べ、各水性塗料組成物を長尺方向にほぼ25μm〜50μmの膜厚勾配をつけて塗装した。ポンチ孔を設けた塗装板を垂直に、孔を開けていない塗装板を水平にして、水性塗料組成物塗装後室温で5分間放置してから、80℃で5分間プレヒートを行なった後、140℃で20分間加熱して硬化させることにより試験板を作成した。なお塗装は、ブース温度23℃、ブース湿度78%の条件で実施した。
【0268】
ポンチ孔を設けた各試験板につき、ポンチ孔から5mmの塗膜のタレが観察される位置を調べた。そして、その位置に相当する膜厚を、孔を開けていない塗装板の膜厚を測定することによりタレ限界膜厚の評価を行なった。タレ限界膜厚が大きいほど耐タレ性は良好であることを示す。
【0269】
各試験板の仕上り性及びタレ限界膜厚の評価結果を併せて図表2に示す。
【0270】
【表3】

【0271】
【表4】

【0272】
【表5】

【0273】
水性第1着色塗料(X)の製造
製造例26
製造例25で得た顔料分散ペースト用樹脂 37.5部に、カーボンMA100(カーボンブラック、三菱化学社製)1部、JR806(チタン白、テイカ社製)70部及びMICRO ACE S−3(微粉タルク、日本タルク社製)10部を順次加えながら混合し、ペイントシェーカーで30分間分散し、顔料分散ペーストを得た。
【0274】
得られた顔料分散ペースト 118.5部に、攪拌しながら順に、製造例1で得たポリエステル樹脂(PE−1、固形分48%)112.5部(固形分で54部となる量)、硬化剤(B−1)(バイヒジュールVP LS−2319(住化バイエルウレタン社製、水分散型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率18.0%))31部、増粘剤(C−1)0.5部及び2−エチルヘキサノール10部を加えて混合攪拌し、さらに、脱イオン水、ジメチルエタノールアミンを加えて、pH8.5、フォードカップNo.4で20℃にて、40秒の粘度に調整して水性第1着色塗料(X−1)を得た。
【0275】
製造例27〜68
下記図表3に示す配合で、製造例26と同様にして混合攪拌を行なうことにより、各水性第1着色塗料(X−2)〜(X−43)を得た。なお、図表3中の疎水性溶剤(D)以外の配合量は固形分配合である。
【0276】
また、下記図表3中の硬化剤はそれぞれ以下の意味を表わす。
【0277】
硬化剤(B−1):バイヒジュールVP LS−2319(住化バイエルウレタン社製、水分散型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率18.0%)
硬化剤(B−2):ロードコートEZM−502(ローディア・ジャパン社製、水分散型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率18.5%)
硬化剤(B−3):バイヒジュールXP2570(住化バイエルウレタン社製、水分散型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率20.6%)
硬化剤(B−4):エポクロスWS−500(日本触媒社製、オキサゾリン基含有化合物、固形分40%、オキサゾリン基含有量4.5mmol/g樹脂固形分)
硬化剤(B−5):カルボジライトV−02(日清紡社製、カルボジイミド基含有化合物、固形分40%、カルボジイミド基含有量1.7mmol/g樹脂固形分)
硬化剤(B−6):アジピン酸ジヒドラジド (水溶解品 固形分10%、ヒドラジド基含有量11.48mmol/g樹脂固形分)
硬化剤(B−7):SX−601(旭化成工業社製、セミカルバジド基含有化合物、固形分45%、セミカルバジド基含有量 4.8mmol/g樹脂固形分)
硬化剤(B−8):メチル−ブチル混合エーテル化イミノ基含有メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量1000、メチル/ブチル=70/30(モル比)、内部溶剤;n−ブタノール)
硬化剤(B−9):バイヒジュールVP LS−2310(住化バイエルウレタン社製、水分散型ブロックポリイソシアネート、固形分38%、NCO含有率9.9%)
【0278】
【表6】

【0279】
【表7】

【0280】
【表8】

【0281】
複層塗膜形成方法
前記製造例26〜68で得た水性第1着色塗料(X−1)〜(X−43)について、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0282】
(試験用被塗物の作製)
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、りん酸亜鉛処理剤)で処理した冷延鋼板に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0283】
実施例21
上記製造例26で得た水性第1着色塗料(X−1)の80℃×10分プレヒート後のゲル分率は以下の様に測定した。
【0284】
ゲル分率測定用のポリプロピレン板に膜厚30μmになるように塗装し、次いで、80℃で10分間プレヒートを行なった後、前述の方法に従い第1着色塗膜のゲル分率を測定した。
【0285】
試験に供する試験板は、温度23℃、湿度67%の塗装環境において、上記試験用被塗物に上記製造例26で得た水性第1着色塗料(X−1)を、回転霧化塗装機を用いて、乾燥膜厚30μmとなるように塗装した。室温で5分間放置した後、80℃で5分間プレヒートを行ない、次いで、該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)(WBC−713T#202(黒塗色)、アクリルメラミン系水性上塗ベースコート塗料、商品名、関西ペイント社製) を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、膜厚15μmとなるように塗装し、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該第2着色塗膜上にスワゾール1000(コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素溶剤)を用いてフォードカップNo.4による測定で20℃にて25秒の粘度となるように調整したクリヤ塗料(Z)(マジクロンKINO#1210TW、酸/エポキシ硬化型アクリル樹脂系溶剤型上塗クリヤ塗料、商品名、関西ペイント社製)を膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に硬化させ、試験板を作製した。
【0286】
実施例22〜48、比較例16〜30
実施例21において、製造例26で得た水性第1着色塗料(X−1)を、図表3に示した水性第1着色塗料(X−2)〜(X−43)とする以外は、実施例21と同様にして、ゲル分率を測定し、試験板を作製した。
【0287】
上記実施例21〜48及び比較例16〜30で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を図表4に示す。
【0288】
(試験方法)
仕上り性:BYK Gardner社製のWave Scan(商品名)により測定した。Wave ScanによりLong Wave値(LW)及びShort Wave値(SW)が測定される。Long Wave値は、1.2〜12mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の中波肌の具合を評価することができる。Short Wave値は、0.3〜1.2mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の微少肌の具合を評価することができる。また、各Wave Scan値は、測定値が小さいほど塗面平滑性が高いことを示す。
【0289】
耐水性:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなハガレが生じていない
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなハガレが生じている
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0290】
【表9】

【0291】
【表10】

【0292】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)、増粘剤(C)及び炭素数が6〜14の疎水性溶媒(D)を含有する水性塗料組成物であって、
該ポリエステル樹脂(A)が、酸成分とアルコール成分との反応によって得られ、該反応で用いられる酸成分及びアルコール成分の総量を基準にして、炭素数8以上の直鎖型ジカルボン酸(a−1)及び炭素数8以上の直鎖型ジオール(a−2)の合計の含有量が5〜30質量%であり、かつ水酸基価100〜200mgKOH/g、酸価8〜22mgKOH/gのポリエステル樹脂であり、
該増粘剤(C)が、炭素数が8〜36の疎水基を有するウレタン会合型増粘剤及び/又は炭素数が8〜36の疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤であり、そして、
樹脂(A)及び硬化剤(B)の総量を基準にして、増粘剤(C)を0.01〜3質量%、疎水性溶媒(D)を4〜20質量%含有する、水性塗料組成物。
【請求項2】
炭素数が8〜36の疎水基を有するウレタン会合型増粘剤が、下記一般式(1)
【化1】

[式中、X及びZは、同一又は異なって、炭素数8〜36の炭化水素基であり、Yはジイソシアネ−ト化合物から導かれる2価の有機残基であり、OR、OR’及びOR’’は、同一又は異なって、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、a及びdは同一又は異なって、0〜50の整数であり、bは10〜500の整数であり、cは0又は1以上の整数である。]
で示されるウレタン会合型増粘剤である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
炭素数が8〜36の疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤が、
(c−1)(メタ)アクリル酸又はその塩、
(c−2)下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、メチル又はエチル基、Rは炭素数8〜36の炭化水素基、nは3〜60の整数を表す。)
で表される重合性不飽和モノマー、
(c−3)アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート、及び
(c−4)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー
を含有する重合性不飽和モノマー混合物であって、重合性不飽和モノマーの総量に基づいて、(c−1)の含有割合が1〜50質量%であり、(c−2)の含有割合が5〜60質量%であり、(c−3)の含有割合が5〜60質量%であり、かつ(c−4)の含有割合が0.05〜5質量%である重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる共重合体である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
硬化剤(B)として、ブトキシ基とメトキシ基の比率が20/80〜50/50mol%である完全もしくは部分アルキルエーテル化メラミン樹脂を含有する請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
被塗物に、中塗塗料及び上塗塗料を順次塗装する複層塗膜形成方法において、中塗塗料として、請求項1に記載の水性塗料組成物を塗装する、複層塗膜形成方法。
【請求項6】
工程(1):被塗物上に、中塗塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、第1の上塗り塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、第2の上塗り塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に焼き付け乾燥する工程、
を備える、請求項5に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の複層塗膜形成方法を実施するに当たり、工程(1)で用いる中塗塗料に含有される硬化剤(B)として、イソシアネート基含有化合物(b−1)、オキサゾリン基含有化合物(b−2)、カルボジイミド基含有化合物(b−3)、ヒドラジド基含有化合物(b−4)及びセミカルバジド基含有化合物(b−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を使用する、複層塗膜形成方法。
【請求項8】
中塗塗料(X)が、乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率が15〜95質量%の範囲内となる塗料である、請求項6に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項9】
請求項1に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
【請求項10】
請求項5に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。

【公表番号】特表2011−528381(P2011−528381A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549975(P2010−549975)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/JP2009/062073
【国際公開番号】WO2010/007891
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】