説明

水性組成物及び先駆体系及びその適用システム

アルミノ珪酸塩と、110℃以上の沸点を有する有機液体、例えばシリコーン油とからな水性ゲル−形成性組成物、例えば難燃性塗料であって、該有機液体は、該組成物を塗料として表面に適用しついで乾燥させることにより形成させた皮膜の保全性を増大させるものである水性ゲル−形成性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性組成物、かかる組成物を製造するための先駆体系(先駆体組成物;precursor system)及びかかる組成物を表面又は支持体に、例えば塗料(coatings)として適用するための適用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可溶性珪酸塩は接着剤(adhesives)、塗料(coatings)及び結合剤(bondings)として広く使用されている。可溶性珪酸塩の固有の溶解性はこれらが使用される多くの用途については利点であるが、例えば構造体の耐水性、保全性(integrity)及び強度が重要とみなされる用途については不利益である。
【0003】
上記した種類の組成物中の珪酸塩の溶解性を最小にするために多くの努力がなされている;例えば、金属(例えば、カルシウム及びマグネシウム)の塩を添加することが行われている。しかしながら、かかる金属塩の添加により、連続的な網状構造を有する製品ではなしに、沈殿した形状(precipitated form)のものが得られる。沈殿反応で形成される可溶性塩は、適用された皮膜の物理的保全性、及び、従って、最終的に、得られる製品の強度に有害である。
【0004】
これらの要因により、珪酸塩を例えば難燃性塗料の製造に使用することが阻害される。難燃性塗料は建造物(construction)及び建築物(building)保全工業において、例えば、建築物構造体中に組入れる前又はその後に可燃性建築材料に適用するために、多くの用途を有する。可燃性材料の例は、例えば発泡ポリスチレン又はウレタンプラスチックス及びかかるプラスチックスを含有する複合体からなるポリマータイル(polymer tile)及びシート(sheeting)である。木材、木材チップ及び紙に基づく材料も、かかる塗料を塗布することによる利益が得られる。難燃性塗料のクラスに包含されるものとしては、熱及び火炎に暴露されたときに部分的に膨張することにより保護作用を発揮する、いわゆる発泡性防災塗料(intumescent coating)が挙げられる。
【0005】
ある場合には、可燃性材料は、予め塗布された(pre-applied)難燃性塗料と共に販売されている。例えば、SafeCoat E84TMとして知られる発泡性耐火性塗料は、販売前に、発泡ポリスチレン/ポリウレタンフォーム物品に予め塗布されている。
【0006】
US-A−462699号は、特に建築材料に適用するための難燃性組成物に関するものであり、この組成物は珪酸塩、水及び表面活性剤を含有している。
【0007】
発泡ポリスチレンのごとき建造物断熱材料(例えば屋根の断熱)について珪酸塩系難燃性組成物を使用する場合の問題は、かかる材料は、しばしば、建築現場に運搬された後、必要とされるまで好ましくない気象条件に暴露されることである。湿潤から材料を保護するために注意を行わない場合には、かかる暴露によって珪酸塩系組成物の耐火性が著しく損失される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今般、本発明者は、上記したごとき溶解性の問題を著しく解消しかくして本発明の組成物を耐火性組成物として使用するのに適当なものにせしめるような方法で、珪酸塩から改善された水性塗料を製造し得ることを発見した。しかしながら、本発明は耐火性の用途に使用するための水性塗料組成物に限定されるものではない;接着剤又は結合剤としての組成物の使用のごとき他の用途も本発明の範囲である。本発明の組成物の他の利点は、これらの組成物を、ハロゲン含有化合物を実質的に含まない耐火性システムの製造に使用し得ることである。ハロゲン含有化合物は、該化合物は重大な環境汚染を生じるという理由で望ましくないものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明によれば、アルミノ珪酸塩と、本発明の組成物を塗料として表面に適用しついで乾燥することにより形成させた皮膜の保全性を増大させる有機液体とからなる水性ゲル形成性組成物が提供される。
【0010】
本発明の第1の要旨によれば、
(a) 5%〜40重量%、好ましくは、5%〜30重量%のアルミノ珪酸塩;
(b) 0.1%〜10重量%の有機液体
を含有し、上記有機液体は110℃を超える沸点を有することを特徴とする水性ゲル形成性組成物が提供される。
【0011】
本明細書における沸点は標準大気圧で測定されたものである。
【0012】
水性という用語は、組成物の残部が水及び場合により1種又はそれ以上の他の成分からなることを意味する。例えば、本発明の組成物は少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも30重量%、より好ましくは、少なくとも40重量%の水からなる。
【0013】
本明細書で使用されるごとく、“ゲル”という用語は、連続液体相(本発明の場合、主として、水)を包囲している連続固体骨格(solid skeleton)(本発明の場合、アルミノ珪酸塩に基づく)を含有する物質を意味する−例えば、Sol-Gel Science,The Physics and Chemistry of Sol-Gel Processing (C J Brinker 及び G W Scheer),Academic Press Inc.,1990発行,例えば、8頁参照。これらの材料はコ-ゲル(co-gel)又はコアゲル(coagel)とも呼ばれている。当初、固体は分散した、不連続の固体粒子の形であるが、これらの個々の粒子は凝集して連続固体網状構造を形成する。本発明の組成物は、当初、ゾルの形であるが、時間の経過と共にゲルに変換する。
【0014】
本発明の第1の要旨に従った、好ましい種類の組成物は、
(a) 5%〜40重量%、好ましくは、5%〜30重量%、より好ましくは、10〜25重量%の
アルミノ珪酸塩;
(b) 0.1%〜10重量%、好ましくは0.3%〜5重量%の有機液体;及び
(c) 場合により、更に、1種又はそれ以上の他の成分を含む残部の水;
からなる組成物からなる。
【0015】
本発明者は、有機液体が存在しない場合には、所与の乾燥温度について、乾燥(即ち、水の損失)をより多く行うほど、アルミノ珪酸塩組成物を使用して製造される皮膜は、比較的短時間内に脆弱な、粉末性の(powdery)皮膜を生じる傾向があることを知見した。しかしながら、有機液体が存在する場合には、皮膜の保全性は、その強度と非粉末性に関して、著しく改善される。
【0016】
本明細書において、液体という用語は、明らかに反対な説明がない限り、25℃、大気圧下で、液状で、好ましくは注入し得る(pourable)液体を意味する。更に、本明細書において非ニュートン液体又はゲルについて言及されている粘度は、全て、23s−1のせん断速度及び25℃で測定された粘度である。
【0017】
有機液体は実質的に水不混和性のものであることが好ましい。通常、水不混和性の程度は、25℃において、約10重量%以下(好ましくは約5重量%以下、より好ましくは1重量%以下)の程度まで水に有機液体が溶解するか、又は、約10重量%以下(好ましくは約5重量%以下、より好ましくは1重量%以下)の程度まで有機液体に水が溶解するような程度である。
【0018】
本発明の組成物は表面又は支持体に難燃性塗料として使用し得るが、この特定の用途に限定されるものではなく、接着剤又は結合剤として使用することができ、或いは、耐水性塗料として、該組成物がかかる用途において難燃性を付与するのに寄与するか否かに拘りなしに使用し得る。
【0019】
本発明で使用されるアルミノ珪酸塩は、典型的には、ゾル−ゲルルートにより形成され、このことは、先駆体液体を混合することにより、使用時に、その場で、アルミノ珪酸塩を形成させることにより行い得る。従って、本発明の第2の要旨によれば、本発明の第1の要旨に従った被覆剤組成物を形成させるための先駆体系(precursor system)であって、
(i) 場合により水溶液中の金属アルミン酸塩(metal aluminate);
(ii) 金属珪酸塩(metal silicate)の水溶液;及び
(iii) 有機液体;
からなる先駆体系が提供される。
【0020】
ゾル−ゲルは、基本的には、当初、液体としての先駆体系の成分から形成されるが、後にゲルを形成し、最終的には固化する反応性生物である。ゲル−ゾルを形成するためには、固体アルミン酸塩を珪酸塩水溶液と混合するか、又は、アルミン酸塩水溶液を珪酸塩水溶液と混合する。
【0021】
有機液体の少なくとも一部を成分(i)及び/又は(ii)中に配合し得る。別法として、当初、有機液体の全体を成分(i)及び (ii)の両者から分離しておき、成分(i)及び (ii)の混合物に同時的に又は逐次的に混合し得る。成分(i)及び/又は(ii)を混合する前に有機液体をこれらの成分に配合してゾル−ゲル系を形成させることが好ましい。
【0022】
本発明の第3の要旨によれば、金属アルミン酸塩の水溶液と、ポリヒドロキシアルコール、鉱油、流動パラフィン油、グリコールエーテル、シリコーン油及びこれらの混合物から選ばれた有機液体の少なくとも1種とからなる組成物が提供される。この組成物は本発明の第2の要旨に従った先駆体系の一部として適当である。
【0023】
本発明の第4の要旨によれば、金属珪酸塩の水溶液と、ポリヒドロキシアルコール、鉱油、流動パラフィン油、グリコールエーテル、シリコーン油及びこれらの混合物から選ばれた有機液体の少なくとも1種とからなる組成物が提供される。この組成物は本発明の第2の要旨に従った先駆体系の一部として適当である。
【0024】
本発明の別の要旨によれば、本発明の第2の要旨に従った先駆体系から本発明の第1の要旨に従って被覆剤組成物を形成させついでかく形成された被覆剤組成物を支持体に適用するための適用システムであって、成分 (i)、(ii)及び(iii)の混合用の装置、得られた混合物による支持体の被覆を行うための適用装置からなる適用システムが提供される。被覆剤組成物を形成させついでかく形成された被覆剤組成物を適当な支持体に適用するための適用システムは、第1貯蔵装置中に貯蔵された金属アルミン酸塩(i)、第2貯蔵装置中に貯蔵された金属珪酸塩の水溶液(ii)、第3貯蔵装置中又は第1及び/又は第2貯蔵装置中に貯蔵された有機液体(iii)、成分 (i)、(ii)及び(iii)の混合用の装置及び得られた混合物による支持体の被覆を行うための適用システムからなる。
【0025】
有機液体はそれ自体で貯蔵するか、別個の貯蔵装置中に貯蔵するか又は金属アルミン酸塩又は金属アルミン塩の水溶液の一方又は両者と、それぞれの貯蔵装置内で混合し得る。
【0026】
金属アルミン酸塩は水溶液の形であり得る。適当な貯蔵装置はタンク、コンテナ又は中空容器(vessel)であり、前記成分の混合装置と液体によって連結されている。前記成分の混合装置への輸送及び該装置からの輸送は、各々の成分の混合装置への供給量を計量するためのポンプと弁の配列によって行い得る。
【0027】
本発明の別の要旨によれば、
(i) 場合により水溶液中の金属アルミン酸塩;
(ii) 金属珪酸塩の水溶液;及び
(iii) 有機液体;
を混合することからなる、本発明の第1の要旨に従った被覆剤組成物の製造方法が提供される。
【0028】
本発明に従った組成物から形成される塗膜は、慣用の珪酸塩系と比較して、より優れた物理的保全性と長期間安定性を示す。理論に拘束されるものではないが、この改善はアルミノ珪酸塩が結合分子の網状構造の形で存在し、この網状構造が溶液中に展開すること及び前記有機溶剤が存在することによるものと考えられる。
【0029】
典型的には、本発明の第1の要旨に従った被覆剤組成物は、表面又は支持体に適用する前には、少なくとも5重量%のアルミノ珪酸塩と少なくとも0.1重量%の前記有機溶剤を含有している。
【0030】
明確にするために、以下に詳述する成分についての好ましい値を本発明の全ての要旨に適用する。しかしながら、この値は本発明の第1の要旨の組成物に関して示されている。例えば、先駆体系又は適用システム又は先駆体組成物に適用される場合には、好ましい値は、得られるゾル−ゲル組成物において達成される値に適用される。
【0031】
本発明の組成物中の水の量は、全組成物の、好ましくは60%から95重量%、より好ましくは70〜90重量%である。
【0032】
アルミノ珪酸塩は典型的には非晶質であり、このことは、この物質のX-線粉末回折スペクトル中に鋭いピークが存在しないことによって評価される。組成物におけるSi:Alのモル比は、典型的には3〜30、好ましくは4〜15、より好ましくは5〜10である。これに関連して、Si:Alのモル比は組成物の製造に使用されたアルミン酸塩中の珪素の量(モル)とアルミニウムの量(モル)に基づくものである。アルミノ珪酸塩は、通常、ゾル−ゲルルートにより、好ましくは、使用時に、先駆体組成物の混合によりその場で形成される。
【0033】
本発明の組成物は、貯蔵時の水の吸収を防止するため及び/又は組成物の皮膜形成性、特に、保全性を保持するために金属又は金属酸化物も含有している。金属又は金属酸化物は、通常、粒状であり、水に僅かしか溶解しない。金属又は金属酸化物の容積メジアン粒度(volume median particle diameter)は50μm 又はそれ以下であることが適当である。金属又は金属酸化物の1容量%以下が200μmを越えることが好ましいであろう。典型的には、両性又は酸性の酸化物がこの目的に使用される。
【0034】
本明細書において使用されるごとく、“酸性酸化物”という用語は、アルカリ又は塩基と反応して塩と水を生成する酸化物を意味する。
【0035】
“両性酸化物”という用語は、これと反応する反応剤に応じて及び/又は反応条件に応じて、酸性又は塩基性を示し得る酸化物を意味する。
【0036】
金属酸化物は、例えば、III族の元素の両性酸化物、好ましくは、アルミニウム、ホウ素及びガリウムの酸化物、又は、酸化亜鉛及びこれらの混合物から選ばれ得る。別法として、金属酸化物は、例えば、IV族の元素の酸性酸化物、好ましくは、珪素、スズ及びゲルマニウムの酸化物、又は、酸化ジルコニウム及びこれらの混合物から選ばれ得る。1種又はそれ以上の両性酸化物と1種又はそれ以上の両性酸化物との混合物も使用し得る。金属を金属酸化物の形で導入する代わりに、別法として、金属それ自体を組成物に添加することにより、金属酸化物をその場で形成させ得る。理論によって拘束されるものではないが、亜鉛又は他の金属の酸化物は残留珪酸塩と反応して、組成物を支持体に被覆又は施すことによって形成される塗膜の溶解度を減少させると考えられる。
【0037】
金属酸化物又は金属の量は、全組成物の0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%(例えば0.3〜3重量%)であることが好ましい。
【0038】
本発明の第1の要旨に従った組成物は0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%(例えば0.3〜4重量%)の有機液体を含有することが好ましい。
【0039】
有機液体は110℃を越える沸点(大気圧下)を有することが適当である。有機液体は少なくとも約120℃、典型的には少なくとも約130℃、典型的には約500℃までの沸点(大気圧下)を有することが好ましい。沸点は500℃以下、好ましくは300℃以下であることが好ましい。
【0040】
有機液体はアルカリ性条件下で安定なものであることが望ましい;このことは、有機液体が重大な化学的分解を生じることなしに(即ち、25℃で30日、貯蔵した場合の、分解による液体の損失量が1重量%以下であること)、9又はそれ以上のpH、好ましく12又はそれ以上のpHの水性組成物中での貯蔵に耐えることができ、かつ、酸化、熱及び光に対して安定であることを意味している。
【0041】
有機液体は、典型的には、23 sec−1のせん断速度で測定して、25℃の温度で5000 mPa.s以下、好ましくは2000 mPa.s 以下(例えば1000 mPa.s 以下)の粘度を有するものである。
【0042】
有機液体はポリヒドロキシアルコール、鉱油、流動パラフィン油、グリコールエーテル、シリコーン油及びこれらの混合物から選ばれた、実質的に水と非混和性の有機溶剤の1種又はそれ以上からなり得る。これらの内、シリコーン油が特に好ましい。有機液体はシリコーン油であることが好ましい。
【0043】
従って、本発明の組成物及び先駆体系で使用するのに適当なシリコーン油はオルガノシロキサン、典型的には、一般式(1):

[ 式中、nは重合体中の反復単位の数であり、2から、例えば、10から1,000,000まで、より好ましくは、30から、例えば50から500,000までの間で変動し得るものであり、Rは水素又はメチル基から選ばれることができ、Rは水素又はSiR(Rは 水素、ヒドロキシル又はメチルであることができる)から選ばれることができ、R及びRは、独立して、C−C12の直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル、アルケニル又はフェニル部分から選ばれるか、又は、上記式(1)に従った単位から選ばれるか、又は、置換アルキル部分又は置換フェニル部分(これらにおいて、置換基はハロゲン、アミノ基、サルフェート基、スルホネート基、カルボキシ基、ヒドロキシル基又はニトロ基であり得る)から選ばれることができる]で表されるオルガノシロキサンである。R及びRはメチル基であることが好ましい。本発明で使用されるシリコーン油はハロゲン置換基を有していないことが好ましい。
【0044】
本発明のいずれかの要旨に従った組成物中に、他の随意の成分の1種又はそれ以上を、任意の又は各々の種類について、該組成物の0.001%から5重量%の量、例えば、0.001%から2重量%の量で配合することが有益である;かかる成分は下記の種類から選択し得る:
(i) 好ましくは、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性及び双性イオン表面活性剤及びこれらの混合物から選ばれた表面活性剤の1種又はそれ以上、例えば、アルカリ カプリバンフォプロプリオネート(alkali caprybamphoproprionate)のごとき珪酸塩又はアルミン酸溶液と相溶性であることが知られているもの;
(ii) トリフェニルホスフェート及びニトリロトリ(メチレン)トリホスホン酸のごときホスホネート及びホスホン酸の1種又はそれ以上;
(iii) リン酸二水素アルミニウム(dihydrogen aluminium phosphate)のごときプロトン放出遅延性無機塩の1種又はそれ以上;
(iv) EDTAのごとき又はホスホネート型の金属イオン封鎖剤の1種又はそれ以上、例えば、Dequestの名称で販売されているもの;及び
(v) メチレン ジイソシアネートのごときイソシアネートの1種又はそれ以上。
【0045】
本発明の組成物(場合により、使用する時点で先駆体系から調製し得る)は、例えば、スプレーガン(場合により空気又はガスで加圧)、ローラー装置又は刷毛塗り装置によって支持体に適用される。別法として、被覆剤組成物を適当な容器に収容し、処理すべき材料を被覆剤組成物に浸漬することにより上記材料を被覆し或いは該材料に含浸させることができる。
【0046】
難燃剤として使用すべき本発明の組成物は任意の可燃性支持体に適用し得るが、膨張又は発泡重合体からなる支持体に特に適している。最も好ましくは、この重合体は室温で有機液体に実質的に不溶なものである;即ち、液体成分は要件を考慮に入れて選択される。
【0047】
硬化組成物について意図された機能に応じて、組成物は木材、非発泡重合体、金属、ガラス、セラミック、コンクリート、複合建築材料、例えば石炭殻コンクリートブロック、タイル又はレンガ、紙又は陶器又は他のガラス質製品から選ばれた物質の1種又はそれ以上からなる支持体に適用し得る。
【0048】
本発明の組成物を難燃剤の調製に使用する場合には、得られる系がハロゲン−含有化合物を実質的に含有していないこと、即ち、かかる化合物を1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の量で含有していることが好ましい。
【0049】
得られた硬化又は乾燥組成物皮膜の水分含有量は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。乾燥組成物の水分含有量は17重量%又はそれ以下であることが更に好ましい。
【0050】
本発明の組成物から得られる皮膜の性質は、組成物が20重量%以上の水分含有量を有するように保持しながら、組成物を少なくとも30分間、50℃又はそれ以上の温度に保持することにより改善することができる。
【0051】
更に、疎水性又は滑性のごとき皮膜の性質は、低融点ワックス、例えば、微粉砕ポリエチレンワックス(低分子量ポリエチレン重合体;この重合体は酸化されるか又は酸化されず、その分子量が低いため、ワックス状の物理的性質を有する);又は、ステアリン酸塩、例えば、グリコールステアレート(例えばグリコールトリステアレート)又は金属ステアリン酸塩(例えば、Zn、Ca、Na、Mg ステアレート)又は1種又はそれ以上のワックスの混合物又は1種又はそれ以上のステアリン酸塩の混合物を皮膜に施すことにより増大させ得る。ワックス、ステアリン酸塩又はその混合物は好ましくは60℃〜150℃、より好ましくは80℃〜135℃、最も好ましくは90〜130℃の融点を有すべきである。例えば、120〜130℃の融点を有するステアリン酸亜鉛は、重合体材料に施した場合、塗膜の加工を更に容易にするための潤滑剤として作用させるために塗膜に施し得る。
【0052】
好ましい塗料は、皮膜を80℃で水分含有量が約17%になるまでオーブン乾燥しついで約22℃の温度で7日間水に浸漬した後、後記で定義するごとき耐水性/溶解性測定法によって測定して、25%以下、典型的には20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下に長時間溶解度を有する。
【0053】
本発明の別の要旨によれば、実質的に発泡重合体のみから形成された物品又は物品の一部以外である支持体に被覆、含浸又は適用する方法であって、本発明の第1の要旨に従った組成物を上記支持体に被覆、含浸又は適用することからなる被覆、含浸又は適用方法が提供される。
【実施例】
【0054】
本発明を以下の実施例により更に詳しく説明する。
【0055】
実施例1:8.5のSi/Alのモル比を有するアルミノ珪酸塩ゾル−ゲルの調製(比較例)
50gの珪酸ナトリウム溶液(8.6% NaO、29% SiO、残部 水)をプラスチック容器内で直接秤量した。珪酸ナトリウム溶液を激しく攪拌した。激しく攪拌されている珪酸塩溶液に、40gのアルミン酸ナトリウム溶液(2.6% NaO、3.6%AlO)を3〜4分で滴下した。更に10〜20秒間混合した後、攪拌を中止した。
【0056】
形成された透明なアルミノ珪酸塩ゾル約25gを正確に秤量し、予め秤量した平らな円形のプラスチック製皿(直径〜10cm)上に注いだ。アルミノ珪酸塩ゾルを約5分間硬化させてゲル網状構造を形成させた。上記の全ての工程は室温条件下(約22℃)で行った。被覆された皿を80℃のオーブン内に24時間放置しついでプラスチックと乾燥内容物を秤量した。形成された乾燥アルミノ珪酸塩は約1mmの厚さを有する連続的な、強力な円形シートであり、その固形分含有量は74重量%(即ち、水分含有量26重量%)であった。
【0057】
実施例2(比較例)
アルミン酸塩溶液を添加しないこと及びアルミン酸塩溶液の代わりに37.5gの純粋な水を添加したこと以外、実施例1の実験を繰り返した。同様に、得られた皮膜(珪酸塩のみ)を最終水分含有量が26重量%になるまで乾燥した。
【0058】
耐水性/溶解性定法
耐水性/溶解性を試験するために、下記の手法を採用した:
最初、乾燥皮膜を破砕して大きな砕片とした(直径約2cm)。この砕片2.0gをステレリン(SterelinTM)ジャーに装入し、28gの水を添加した。砕片を完全に水中に沈め、周囲温度(約22℃)で24時間放置した。溶液の内容物を分析し(滴定及び重量分析法を使用)、24時間浸漬した後の 砕片の溶解度を下記の式を使用して決定した:
溶液中の溶解内容物x100/2.0
この手法を実施例1で得られた皮膜及び実施例2で得られた皮膜に適用した場合、下記の溶解度の結果が得られた:
溶解度%
実施例1 5
実施例2 100
これらの結果は、ゾル−ゲルプロセスを経てアルミノ珪酸塩皮膜を形成させた場合、最初、強い固体の皮膜が得られるばかりでなしに、製造された皮膜の耐水性が著しく増大することを明らかに示している。
【0059】
上記した結果は水分含有量が26重量%になるまで乾燥させた皮膜に関するものである。本明細書においては、乾燥及び浸漬の程度が明記されるごとく変化させている以外は、いずれの場合にも、同様の方法が使用されている。
【0060】
実施例3:有機液体の効果
実施例1で形成された皮膜は強力でかつ透明であった。しかしながら、かかる皮膜を24時間以上、オーブン乾燥した場合には、徐々に、白色斑点(patch)を形成し始め、72時間以内には脆弱なかつ白色のフレーク状/粉末状物質に変換した。
【0061】
24時間以上乾燥させたアルミノ珪酸塩皮膜の保全性を増大させるために、少量の有機液体を実施例1の珪酸塩溶液に添加した。例えば、50 mPa.s.の粘度を有するシリコーン油を0.5g添加した場合、80℃で168時間、オーブン乾燥した後においても、アルミノ珪酸塩皮膜の保全性は保持されていた。種々の沸点(BP)を有する多数の有機液体を試験した(各々、組成物の0.55重量%に相当する0.5gの水準で添加した);長時間の乾燥(80℃で168時間、オーブン乾燥)後の、アルミノ珪酸塩皮膜の保全性に対するその影響を以下に示す:
試験した有機液体 BP(℃) 皮膜の保全性
ヘキサメチルシラザン 110 粉体状、白色
ヘキサメチルジシロキサン(0.65 mPa.s.) 100 粉体状、白色
シリコーン油(10 mPa.s.) > 150 透明、非粉体状
シリコーン油(20 mPa.s.) > 150 透明、非粉体状
シリコーン油(50 mPa.s.) > 150 透明、非粉体状
シリコーン油(200 mPa.s.) > 150 透明、非粉体状
シリコーン油(1000 mPa.s.) > 150 透明、非粉体状
流動パラフィン油 〜300 透明、非粉体状
実施例4(耐水性に対する皮膜の水分含有量の影響)
実施例1に従って製造された乾燥皮膜は26%の水分含有量を有していた。この皮膜を24時間、浸漬した場合には、皮膜は全く変化しなかった。しかしながら、水中への浸漬を3日及びついで7日まで延長した場合には、皮膜の溶解度は比例して増大した。例えば乾燥時間を延長することによって皮膜の水分含有量を減少させることにより、その溶解度は最小になるであろう。しかしながら、このことは、水分含有量を最小にするための長時間の乾燥は弱い、粉体状の皮膜が生じるので、実施例1で製造した皮膜については選択し得ないことである。しかしながら、実施例3で製造されたかつシリコーン油を含有する皮膜はかかる問題を有しておらず、従って、50 mPa.s.のシリコーン油を使用した実施例3のシリコーン油含有皮膜をより長時間乾燥して、種々の水分含有量を有する皮膜を形成させた。かかる皮膜の溶解度に対する水分含有量の影響を測定して、下記の結果を得た:


溶解度の結果
水中への浸漬日数

皮膜の水分含有量 %
26 5% 20% 47%
22 4% 15% 30%
17 3% 4% 5%
【0062】
上記の表はシリコーン油のごとき水非混和性液体を含有するかつ約17%の水分含有量を有するアルミノ珪酸塩皮膜は耐水性が著しく大きいことを明らかに示している。
【0063】
実施例5(長時間の耐水性)
実施例4に従って製造したかつ7日間浸漬したアルミノ珪酸塩皮膜(水分含有量17%)は良好な耐水性を有する。しかしながら、同一の皮膜を7日以上、例えば10日及び25日間浸漬した場合には、その耐水性は浸漬時間の増大とともに減少する。
【0064】
アルミノ珪酸塩皮膜の長時間の耐水性を更に改善するために、1gの酸化亜鉛を添加し、珪酸塩とシリコーン油混合物中に懸濁させたこと以外、実施例4を反復した。実施例4及び5に従って製造した皮膜(水分含有量17%)の溶解度を、前記した方法を使用してかつ7、10及び25日の浸漬時間を使用して評価した。下記の結果が得られた:
7、10及び25日間浸漬後の溶解度
7日 10日 25日
実施例
実施例4(酸化亜鉛非添加) 3% 10% 30%
実施例5(酸化亜鉛添加) 1% 1.3% 4%
【0065】
上記の結果から、少量の酸化亜鉛を添加することにより、ゾル−ゲルルートにより得られる水性アルミノ珪酸塩組成物を使用して製造された皮膜の長時間耐水性が増大することが判る。
【0066】
実施例6(イン−ラインミキサーを使用する、アルミノ珪酸塩ゾル−ゲル皮膜(Si/Al比8.5)の製造
攪拌されている珪酸ナトリウム溶液(7.1% NaO、23.9% SiO、残部の水) 1335gに、11gのシリコーン油(粘度 25℃でmPa.s.)を添加した。シリコーン油 珪酸塩混合物とアルミン酸ナトリウム溶液(4.6% NaO、5.6% AlO)を、それぞれ、253ml/分及び107ml/分の速度で高せん断イン−ラインミキサー(得られるゾルの粘度に適合した入り口を有する)に供給した。透明なアルミノ珪酸塩ゾルが形成され、このゾルを実施例1と同様の方法で処理し、特徴を調べた。
【0067】
実施例7
22gの酸化亜鉛を珪酸塩/シリコーン混合物に添加したこと以外、実施例6と同一。
【0068】
17%の水分含有量まで乾燥し、7、10及び14日間水に浸漬した実施例6及び7の試料についての溶解度試験の結果は下記の通りである:
7、10及び14日間浸漬後の溶解度
7日 10日 25日
実施例
実施例6(酸化亜鉛非添加) 2.7% 9.5% 13%
実施例7(酸化亜鉛添加) 1% 1.2% 2.2%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 5%〜40重量%のアルミノ珪酸塩
(b) 0.1%〜10重量%の有機液体
を含有すること及び上記有機液体は110℃を超える沸点を有することを特徴とする水性ゲル形成性組成物。
【請求項2】
5%〜30重量%のアルミノ珪酸塩を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
有機液体は少なくとも120℃の沸点を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
有機液体は500℃以下の沸点を有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
有機液体は実質的に水と非混和性である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
有機液体はアルカリ性条件下で安定である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
有機液体は25℃の温度で5,000 mPa.s 以下の粘度を有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
有機液体は鉱油、流動パラフィン油、シリコーン油及びこれらの混合物から選ばれた液体からなる、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
有機液体はポリヒドロキシアルコール、グリコールエーテル及びこれらの混合物から選ばれた液体からなる、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
有機液体はシリコーン油である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の金属又は金属酸化物を更に含有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
金属酸化物は両性酸化物からなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
両性酸化物は、III族の元素の両性酸化物、好ましくは、アルミニウム、ホウ素及びガリウムの酸化物、又は、酸化亜鉛及びこれらの混合物から選ばれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
金属酸化物は酸性酸化物である、請求項11〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
酸性酸化物は、IV族の元素の酸性酸化物、好ましくは、珪素、スズ及びゲルマニウムの酸化物、又は、酸化ジルコニウム及びこれらの混合物から選ばれる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
10重量%までの金属又は金属酸化物を含有する、請求項11〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
アルミノ珪酸塩は3〜30のSi:Alのモル比を有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
被覆剤組成物を形成させついでかく形成された被覆剤組成物を支持体に適用するための適用システムであって、該適用システムは、第1貯蔵装置中に貯蔵された金属アルミン酸塩(i)、第2貯蔵装置中に貯蔵された金属珪酸塩の水溶液(ii)、第3貯蔵装置中又は第1及び/又は第2貯蔵装置中に貯蔵された有機液体(iii)、成分 (i)、(ii)及び(iii)を混合して
請求項1から17のいずれか一つに記載された水性ゲル形成性被覆剤組成物を形成させる装置及び得られた被覆剤組成物による支持体の被覆を行うための適用装置からなることを特徴とする適用システム。
【請求項19】
適用装置は、噴霧装置、ローラー装置、ブラシ装置又は被覆剤組成物を収容するための容器であって、被覆されるべき又は含浸されるべき製品を浸漬することのできる容器を更に含有している、請求項21に記載の適用システム。
【請求項20】
実質的に発泡重合体のみから形成されている物品又は物品の一部以外からなる支持体であって、請求項1〜17に記載のかつ乾燥させた又は硬化させた組成物で被覆されるか、又は、該組成物を含浸させるか又は適用される支持体。
【請求項21】
乾燥させた又は硬化させた組成物の水分含有量は40重量%以下である、請求項20に記載の支持体。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれかに記載の組成物から製造されたアルミノ珪酸塩の皮膜であって、該アルミノ珪酸塩皮膜の長時間溶解度は25%以下であるアルミノ珪酸塩皮膜。
【請求項23】
下記の成分:
(i) 金属アルミン酸塩;
(ii) 金属珪酸塩の水溶液;及び
(iii) 有機液体;
を混合することからなる、請求項1〜17のいずれかに記載の被覆剤組成物の製造方法。
【請求項24】
実質的に発泡重合体のみから形成された物品又は物品の一部以外からなる支持体に被覆、含浸又は適用する方法であって、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物を上記支持体に被覆、含浸又は適用することを特徴とする被覆、含浸又は適用方法。
【請求項25】
被覆剤組成物を40重量%又はそれ以下の水分含有量まで乾燥させる後続の工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
被覆剤組成物を使用して支持体を第2の支持体に接着させる工程を包含する、請求項24又は25に記載の方法。

【公表番号】特表2009−507940(P2009−507940A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523442(P2008−523442)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002760
【国際公開番号】WO2007/012832
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(501388205)イネオス シリカス リミテッド (7)
【Fターム(参考)】