説明

水性防汚コーティング組成物および防汚コーティング層の形成方法

【課題】耐糊残り性および耐候性が良好である防汚コーティング層を設けることができる水性防汚コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】シリカ微粒子(A)、界面活性剤(B)および樹脂エマルション(C)を含む、水性コーティング組成物であって、このシリカ微粒子(A)および樹脂エマルション(C)の固形分質量比(A)/(C)が80/20〜95/5の範囲内であり、この樹脂エマルション(C)が、塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)またはスチレン系ブロック共重合体のエマルション(C2)である、水性防汚コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚コーティング層を形成することができる水性防汚コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅外壁材の表面には、外観美粧を維持することを目的として、しばしば、防汚コーティング剤の塗布により、セルフクリーニング機能を有する防汚膜を形成されることが多い。そしてこのような防汚コーティング剤としては、シリカ微粒子の水分散体を主成分とするものが知られている。
【0003】
一方で、外壁材を組み合わせて住宅を建造するにあたり、気密性や防水性を高めるため、外壁材の建材の継ぎ目などの隙間にシリコーン系樹脂の充填剤(コーキング剤)を埋める工程が一般的に行われる。そしてこの工程においては、必要部分以外にコーキング剤が付着しないように、マスキング用テープを用いた外壁材表面の保護が行われている。しかしながら、外壁材などの建材が、上記のようなシリカ微粒子の水分散体を主成分とする防汚膜を有している場合において、マスキング用テープを用いた外壁材表面の保護を行う場合に、作業後にマスキング用テープを剥がすとテープの糊および/または痕が残る、いわゆる糊残りという不具合が生じることがあった。
【0004】
さらに、シリカ微粒子の水分散体を主成分とする防汚コーティング剤によって得られる防汚膜を、濃彩色を有する建材上に設ける場合においては、屋外での曝露によって濃彩色の建材を黒変させてしまうという耐候性の問題があった。
【0005】
特開2010−138358号公報(特許文献1)には、必須成分としてシリカ微粒子と、水と、界面活性剤とを含有し、かつ、アルコールを実質的に含有しない防汚コーティング液が記載されている(請求項1など)。
【0006】
特開平11−116885号公報(特許文献2)には、(i)水性コロイダルシリカのSiO固形分100重量部に対し、(ii)アクリル系樹脂エマルション(固形分)30〜400重量部を含有する低汚染性水性塗料組成物であって、前記アクリル系樹脂エマルション(ii)の最低造膜温度が15℃以上であることを特徴とする水性塗料組成物が記載されている(請求項1など)。この水性塗料組成物に含まれる(ii)アクリル系樹脂エマルションは、加水分解性シリル基および炭素−炭素不飽和結合を有する架橋性モノマー(A)と、アクリル酸などの不飽和酸および/または不飽和酸のアルキルエステル(B)とを乳化重合させて得られるエマルションが用いられている(請求項2〜4および第0017段落など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−138358号公報
【特許文献2】特開平11−116885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂成分を含んでいるにもかかわらず、水接触角が低く良好な防汚性を有し、そしてマスキング用テープを貼り付けても糊残りの不具合が生じることなく、さらに濃彩色の建材を黒変させるといった不具合を伴わない防汚コーティング層を設けることができる水性防汚コーティング組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
シリカ微粒子(A)、界面活性剤(B)および樹脂エマルション(C)を含む、水性コーティング組成物であって、
このシリカ微粒子(A)および樹脂エマルション(C)の固形分質量比(A)/(C)が80/20〜95/5の範囲内であり、および
この樹脂エマルション(C)が、塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)およびスチレン系ブロック共重合体のエマルション(C2)から選択される少なくとも1種である、水性防汚コーティング組成物を提供するものであり、これにより上記課題が解決される。
【0010】
上記塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)は、塩化ビニル−アクリル共重合体のエマルションであるのが好ましい。
【0011】
また、上記塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)を構成する、塩化ビニルセグメント(c−1)と、その他のセグメント(c−2)との質量割合(c−1):(c−2)が、70:30〜95:5の範囲内であるのが好ましい。
【0012】
また、上記シリカ微粒子(A)は平均1次粒子径3〜50nmを有するのが好ましい。
【0013】
本発明はさらに、被塗物の表層に、上記水性防汚コーティング組成物を塗装する工程を包含する、防汚コーティング層の形成方法も提供する。この被塗物の表層は、アルコキシシラン構成単位を有する重合物を含む塗膜を有するものであるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性防汚コーティング組成物は、住宅外装材の表面に設けられる塗膜の上に、良好に、防汚コーティング層を設けることができる。こうして得られる防汚コーティング層は、水接触角が低いため優れた防汚性を有し、さらにマスキング用テープなどを貼り付けた後にテープを剥がしてもいわゆる糊残りの不具合が生じないという利点がある。本発明の水性防汚コーティング組成物によって得られた防汚コーティング層は、マスキング用テープなどを用いる場合における作業性が良好であるという利点がある。さらに本発明の水性防汚コーティング組成物によって得られた防汚コーティング層は、濃彩色を有する建材上に設ける場合であっても、屋外の暴露に伴い濃彩色の建材が黒変するという不具合を伴わないという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
水性防汚コーティング組成物
本発明の水性防汚コーティング組成物は、シリカ微粒子(A)、界面活性剤(B)および樹脂エマルション(C)を含む。そしてこのシリカ微粒子(A)および樹脂エマルション(C)の固形分質量比(A)/(C)が80/20〜95/5の範囲内であること、上記樹脂エマルション(C)が、塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)およびスチレン系ブロック共重合体のエマルション(C2)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。以下、各成分について詳述する。
【0016】
シリカ微粒子(A)
本発明の水性防汚コーティング組成物は、シリカ微粒子(A)を含む。シリカ微粒子(A)が含まれることによって、得られるコーティング層の水接触角が低くなり、優れた防汚効果が発揮される。
【0017】
本発明の水性コーティング組成物におけるシリカ微粒子(A)の含有量は、水性コーティング組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜5質量部であるのがより好ましい。シリカ微粒子(A)の含有量が0.1質量部未満である場合は、十分な防汚効果が得られないおそれがある。一方で、シリカ微粒子(A)の含有量が10質量部を超えると、経時によりコーティング層に割れなどの不具合が発生するおそれがある。
【0018】
また、シリカ微粒子(A)は、微粒子の平均1次粒子径が3〜50nmであるのが好ましい。平均1次粒子径が3nm未満である場合は、シリカ微粒子と水との親和性が極めて高い傾向があるため、得られたコーティング層に水が接触するとコーティング層の脱離が生じ、コーティング層の防汚効果が不十分となるおそれがある。また微粒子の平均1次粒子径が50nmを超える場合は、得られるコーティング層の凸凹が大きくなるため塗膜外観が低下するおそれがある。
【0019】
ここでシリカ微粒子(A)の平均1次粒子径は、BET法(比表面積法)などのよく知られた測定方法によって測定することができる。
【0020】
シリカ微粒子(A)として、シリカ微粒子(A)を含む懸濁液(コロイダルシリカ)を用いることができる。シリカ微粒子(A)を含む懸濁液は、酸性領域または塩基性領域で安定化されたものであってもよい。酸性領域で安定なシリカ微粒子(A)を含む懸濁液としては、シリカ微粒子を含む懸濁液に一般的に含まれるナトリウムを除去したものや、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などの酸で安定化させたものが挙げられる。塩基性領域で安定なシリカ微粒子(A)を含む懸濁液としては、アンモニア、ナトリウム化合物(例えば水酸化ナトリウムなど)、カリウム化合物(例えば水酸化カリウムなど)、カルシウム化合物(例えば水酸化カルシウムなど)、水酸化アルミニウムなどの塩基で安定化させたものが挙げられる。これらのうち1成分のみ、または複数を組み合わせて使用することができる。
【0021】
なお、シリカ微粒子(A)を含む懸濁液を用いる場合における「シリカ微粒子(A)の含有量」は、水性防汚コーティング組成物総量に対するシリカ微粒子(A)の固形分含有量を意味する。
【0022】
酸性領域で安定化されたシリカ微粒子(A)の懸濁液のpHは、2.0〜5.0であるのが好ましく、2.5〜4.5であるのがより好ましい。pHがこの範囲を超えると、シリカ微粒子(A)の懸濁液の安定性が損なわれるおそれがある。
【0023】
塩基性領域で安定化されたシリカ微粒子(A)の懸濁液として、強塩基性化合物を用いることなく安定化されたシリカ微粒子の懸濁液を用いるのがより好ましい。より具体的には、シリカ微粒子(A)の懸濁液のpHは、8.0〜11.0であるのが好ましく、8.5〜10.5であるのがより好ましい。pHが上記範囲から外れる場合は、シリカ微粒子(A)の懸濁液の安定性が損なわれるおそれがある。
【0024】
このようなシリカ微粒子(A)(シリカ微粒子(A)の懸濁液である形態のものも含む)として、下記の市販品(何れも商品名)などが挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
アデライトAT−20、30、50、20A、30A、20Q(何れもADEKA社製)、
スノーテックスSS、スノーテックスXS、スノーテックスS、スノーテックスN、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスC、スノーテックスO(何れも日産化学工業社製)、
カタロイド350、20H、30、30H、40、50、SA、SN(何れも触媒化成工業社製)、
シリカドール20、30、40(何れも日本化学工業社製)、
サイトンX−30、D−30、T−40(三菱モンサント社製)、
ルドックスSM−30、L、HS−30、HS−40、TM、AM(何れもデュポン社製)、
ナルコアグ1115、1130、1030、1140、1050、2327(何れもナルコ社製)。
【0025】
界面活性剤(B)
本発明の水性防汚コーティング組成物は、界面活性剤(B)を含む。界面活性剤(B)が含まれることによって、被塗物に対する水性防汚コーティング組成物の良好な濡れ性を確保することができる。
【0026】
本発明の水性防汚コーティング組成物における界面活性剤(B)の含有量は、水性防汚コーティング組成物100質量部に対して、0.05〜1.00質量部であるのが好ましい。界面活性剤(B)の含有量が0.05質量部未満である場合は、被塗物に対する水性防汚コーティング組成物の濡れ性が劣るおそれがある。また界面活性剤(B)の含有量が1.00質量部を超える場合は、得られるコーティング層の塗膜性能(耐水性など)が劣るおそれがある。
【0027】
界面活性剤(B)として、水性防汚コーティング組成物の貯蔵安定性などの観点から、ノニオン系界面活性剤が好ましい。上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキレンオキサイドユニットを有する界面活性剤、アセチレンジオールユニットを有する界面活性剤、アルキレンオキサイドユニットとアセチレンジオールユニットとを有する界面活性剤、アクリル系ポリマー界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記「アルキレンオキサイドユニットを有する界面活性剤」としては、例えば、下記の市販品(何れも商品名)、
ニューコール2302、2303、2305、2307、2308、2308HE、2310、2312、2314、1204、1210、1305、1310、2502−A、3504−C、2303−Y、2304−YM、2304−Y、NT−3、NT−5、NT−7、NT−9(何れも日本乳化剤社製);
ナロアクティーN−40、ID−40、エマルミン40、50、60、セドランFF−180、200、210、セドランSF−506、イオネットDL−200、MO−200、サンモリン11(何れも三洋化成社製);および
SNウェット366、980、984(何れもサンノプコ社製)
が挙げられる。
上記「アセチレンジオールユニットを有する界面活性剤」としては、例えば、下記の市販品(何れも商品名)、
サーフィノール104、420、440、465、MD20、PSA−336、2502、ダイノール604、607(何れもエアプロダクツジャパン社製)が挙げられる。
上記「アクリル系ポリマー界面活性剤」としては、例えば、下記の市販品(何れも商品名)、
ポリフローWS、WS−30、WS−314(何れも共栄社化学社製);および
BYK−380N、BYK−381(何れもビッグケミージャパン社製)
が挙げられる。
上記「シリコーン系界面活性剤」としては、例えば、下記の市販品(何れも商品名)、
グラノール100、400、440、ポリフローKL−245、KL−270、KL−280、KL−600(何れも共栄社化学社製);
BYK−307、333、345、346、348、375、378(何れもビッグケミージャパン社製);および
SNウェット125、126(何れもサンノプコ社製)
が挙げられる。
上記「フッ素界面活性剤」としては、例えば、下記の市販品(何れも商品名)、
フタージェント250、251、222F、208G(何れもネオス社製);
メガファックF−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−475、F−477、F−479(何れもDIC社製);
NOVEC FC−4430、4432(何れも3M社製);
ユニダイン DS−401、403(何れも日進化成社製);および
エフトップ EF−121、EF−122A、EF−128B、EF−122C(何れもジェムコ社製)が挙げられる。
【0029】
本発明において、界面活性剤(B)は、アルキレンオキサイドユニットを有する界面活性剤、アセチレンジオールユニットを有する界面活性剤を用いるのがより好ましい。
【0030】
樹脂エマルション(C)
本発明の水性防汚コーティング組成物は、樹脂エマルション(C)を含む。そして本発明においては、この樹脂エマルション(C)が、塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)およびスチレン系ブロック共重合体のエマルション(C2)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。本発明においては、樹脂成分として上記のような特定の樹脂エマルション(C)を用いることによって、得られるコーティング層において低い水接触角を保ちつつ、マスキング用テープを貼り付けた際における糊残りの不具合を解消することが可能となった。
【0031】
また、本発明の水性防汚コーティング組成物においては、シリカ微粒子(A)および樹脂エマルション(C)の固形分質量比(A)/(C)が80/20〜95/5の範囲内である。このように本発明の水性防汚コーティング組成物は、樹脂成分である樹脂エマルション(C)の質量に対して、シリカ微粒子(A)の質量が極めて多いことを条件とする。固形分質量比(A)/(C)が95/5より大きく、シリカ微粒子(A)が過剰量である場合は、マスキングテープを貼り付けた後に剥がす際の糊残りの不具合を解消することが困難となる。また固形分質量比(A)/(C)が80/20より小さく、樹脂エマルション(C)が過剰量である場合は、得られるコーティング層の防汚性能が低下することとなる。
【0032】
塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)
上記塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)を構成する、塩化ビニルセグメントを(c−1)とし、塩化ビニルセグメント以外のセグメント(本明細書において「その他のセグメント」と示す。)を(c−2)とする。ここで、その他のセグメント(c−2)として、下記(i)〜(viii)のモノマーから構成されるセグメントが挙げられる。
(i)α,β−不飽和カルボン酸およびその塩類:アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸カリウムなど。
(ii)α,β−不飽和カルボン酸エステル類:アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレートなど)、置換アルキルアクリレート(例えば、2−クロロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリ−レート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレートなど)、置換アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシプロピレンの付加モル数=2ないし100のもの)、3−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、クロロ−3−N,N,N−トリメチルアンモニオプロピルメタクリレート、(2−カルボキシエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、4−オキシスルホブチルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど)、不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジブチルなど)、多官能エステル類(例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレートなど)。
(iii)α,β−不飽和カルボン酸のアミド類:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、N−メチルマレイミド、2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミド、ジメタクリロイルピペラジンなど。
(iv)不飽和ニトリル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど。
(v)スチレンおよびその誘導体:スチレン、ビニルトルエン、p−tertブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩、p−スチレンスルフィン酸カリウム塩、p−アミノメチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼンなど。
(vi)ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルなど。
(vii)ビニルエステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニルなど。
(viii)その他の重合性単量体:N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホンなど。
【0033】
塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)として、上記モノマー中、(i)〜(iii)から選択される1種またはそれ以上のモノマーを用いて得られる、塩化ビニル−アクリル共重合体のエマルションが、本発明において特に好ましく用いられる。なお本明細書において「塩化ビニル−アクリル共重合体」における「アクリル」とは、上記(i)α,β−不飽和カルボン酸およびその塩類、(ii)α,β−不飽和カルボン酸エステル類、(iii)α,β−不飽和カルボン酸のアミド類、の1種またはそれ以上のモノマーによって構成されるセグメントを意味する。
【0034】
塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)の調製は、塩化ビニルモノマーと、上記(i)〜(viii)のモノマーとを、当業者に通常用いられる方法で共重合させることによって調製することができる。こうして塩化ビニルセグメント(c−1)およびその他のセグメント(c−2)を有する塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)を調製することができる。
【0035】
本発明で用いることができる塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)における、塩化ビニルセグメント(c−1)と、その他のセグメント(c−2)との質量割合(c−1):(c−2)は、70:30〜95:5であるのが好ましい。塩化ビニルセグメント(c−1)の質量割合が上記範囲を超える場合は、得られた塗膜の水接触角が高くなり、耐汚染性が低下するおそれがある。またその他のセグメント(c−2)の質量割合が上記範囲を超える場合は、得られた塗膜が、屋外での曝露により黒変するおそれがある。
【0036】
スチレン系ブロック共重合体のエマルション(C2)
本発明の水性防汚コーティング組成物に含まれる樹脂エマルション(C)として、もう一つの好ましいものとして、スチレン系ブロック共重合体のエマルション(C2)が挙げられる。ここで、スチレン系ブロック共重合体とは、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、SISの水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびSBSの水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)など、両端のスチレンポリマーブロックの間に、エチレン構造など他の構造のポリマーが混在して構成される共重合体を示す。このうち、耐テープ痕性の観点から、SEBSが好ましい。
【0037】
スチレン系ブロック共重合体は、公知の方法で製造することができるが、市販のものを使用することもできる。SEBSの例としては、タフテックM1911、タフテックM1913、タフテックM1943、タフテックH1221、タフテックH1052、タフテックH1062、タフテックH1053、タフテックH1041、タフテックH1051(何れも商品名、旭化成社製)、クレイトンFG−1901X(クレイトンポリマー社製)などが挙げられる。
【0038】
上記SEBSを用いる場合、そのスチレン:エチレンおよびブチレンとの質量比は、10:90〜40:60であるのが好ましく、20:80〜30:70であるのがより好ましい。スチレン含有量が10%未満の場合、耐テープ痕性が低下するおそれがあり、また、スチレン含有量が40%を超える場合は、得られた塗膜の耐候性が低下するおそれがある。
【0039】
さらに、上記SEBSを用いる場合、酸変性したSEBSを用いるのがより好ましい。SEBSを酸変性する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、SEBSにカルボキシル基または酸無水物基を導入することによって行うことができ、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などが好適に用いられる。上記酸変性したSEBSは、酸価が2〜20mgKOH/gであることが好ましく、7〜15mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が2mgKOH/g未満の場合、得られた塗膜の水接触角が高くなり、十分な低汚染性が得られないおそれがある。また、20mgKOH/gを超える場合は、得られた塗膜の耐候性が低下するおそれがある。
【0040】
上記スチレン系ブロック共重合体を水系で安定に使用するために、分散、乳化し、エマルションとすることが好ましい。エマルション化するためには、通常用いられる界面活性剤で乳化するなど公知の方法で行うことができる。
【0041】
その他の成分
本発明の水性防汚コーティング組成物は、必要に応じて、pH調整剤を含むことができる。水性防汚コーティング組成物のpHは、前述のシリカ微粒子(A)の懸濁液が水中で安定である領域において、任意に決定することができ、被塗物への濡れ性の観点から、pHが3.0〜5.0であることが好ましい。前記pH調整剤は、特に限定されないが、酸解離定数(pKa)が3.5〜7.0である酸が好ましく、3.5〜5.0である酸がより好ましい。このようなpKaをもつ酸としては、例えば、酢酸(pKa=4.76)、グリコール酸(pKa=3.82)、リンゴ酸(pKa=3.40)、グルタル酸(pKa=4.34)、アジピン酸(pKa=4.42)、コハク酸(pKa=4.21)、乳酸(pKa=3.86)、クエン酸(pKa=3.09)およびギ酸(pKa=3.77)が挙げられ、2種類以上の酸を併用してもよい。前記酸のpKaが3.5未満および7.0を超える場合は、後述する被塗物である住宅などの外壁材の表面にアルコキシシラン構成単位を有する重合体を含有する塗膜が形成されている場合、塗膜に含まれるアルコキシシラン部の重合反応が急速に進むおそれがある。アルコキシシラン部の重合反応が急速に進んだ場合、アルコキシシラン構成単位を有する重合体を含有する塗膜表面の撥水性が高くなりすぎるおそれがあり、そのような塗膜の上に本発明の水性防汚コーティング組成物を塗布しても、均一に塗布することができないおそれがある。
【0042】
本発明の水性防汚コーティング組成物は、さらに必要に応じて、粘性調整剤(例えばアルカリ増粘剤など)、充填剤、分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、凍結防止剤、防藻剤、消泡剤、造膜助剤、表面調整剤、防腐剤、防かび剤、顔料、ツヤ消し剤(光沢調整剤)などを含んでもよい。
【0043】
水性防汚コーティング組成物の調製
水性防汚コーティング組成物の調製法としては特に限定されず、上述した各成分を、攪拌機などの通常用いられる装置を用いて攪拌することによって調製することができる。水性防汚コーティング組成物中に顔料などの成分が含まれる場合は、分散性のよいものは攪拌機により混合することができ、他の方法として、水、界面活性剤または分散剤などを含むビヒクルにサンドグラインドミルなどを用いて予め分散させたものを加えることもできる。
【0044】
防汚コーティング層の形成
本発明の水性防汚コーティング組成物を塗装することによって、防汚コーティング層を形成することができる。ここで本発明の水性防汚コーティング組成物は、被塗物に対して、糊残りなどの不具合を伴うことなく、良好に防汚コーティング層を設けることができるという利点がある。
【0045】
本発明の方法において用いられる被塗物は、住宅などの外壁材であるのが好ましい。このような外壁材として、例えば、窯業建材(窯業系サイディング)が挙げられる。窯業建材(窯業系サイディング)として、セメント、ケイ酸質原料、繊維質原料、混和材料などを用いて板状に成型し、乾燥(養生・硬化)させることによって製造される、JIS A 5422に規定された建材が挙げられる。
【0046】
本発明の水性防汚コーティング組成物は、特に、被塗物である住宅外装材の表層に設けられる塗膜の上に、密着性不良などの不具合を伴うことなく良好に防汚コーティング層を設けることができるという利点がある。ここで上記塗膜として、耐候性の観点から、アルコキシシラン構成単位を有する重合物を含む塗膜であることが好ましい。アルコキシシラン構成単位を有する重合物を含む塗膜として、例えば、W−3108F(カネカ社製無機有機ハイブリッド樹脂)とQC#006C(カネカ社製硬化剤)とから形成されるものを挙げることができる。
【0047】
水性防汚コーティング組成物を塗装する方法は特に限定されず、例えば、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアレススプレーなどの一般に用いられている塗装方法など用いることができる。こうして形成されたコーティング層を乾燥することによって、防汚コーティング層が得られる。塗装後の乾燥は、常温で行ってもよく、また乾燥時間を短縮するため、加熱して行ってもよい。
【0048】
本発明の水性防汚コーティング組成物を塗装し、乾燥して得られる、防汚コーティング層は、膜厚が0.05〜2.0μmであることが好ましい。防汚コーティング層の膜厚が0.05μm未満である場合は、必要とされる防汚効果が得られないおそれがある。また防汚コーティング層の膜厚が2.0μmを超える場合は、経時によりコーティング層にワレなどの不具合が発生するおそれがある。なお水性防汚コーティング組成物の塗装量は、組成物の固形分濃度および乾燥後の膜厚の関係で決定される。
【0049】
本発明の水性防汚コーティング組成物は、被塗物である住宅外壁材の表面に設けられる塗膜の上に、防汚コーティング層を形成することができる。こうして得られる防汚コーティング層は、水接触角が低いため、防汚性に優れている。そして本発明の水性防汚コーティング組成物によって得られた防汚コーティング層は、マスキング用テープなどを貼り付けた後にテープを剥がしても、テープの糊痕が残る、いわゆる糊残りの不具合が生じないという利点がある。そのため、本発明の水性防汚コーティング組成物によって得られた防汚コーティング層は、マスキング用テープなどを用いる場合における作業性が良好であるという利点がある。さらに本発明の水性防汚コーティング組成物によって得られた防汚コーティング層は、濃彩色を有する建材上に設ける場合であっても、屋外の暴露に伴い濃彩色の建材が黒変するという不具合を伴わないという利点がある。
【実施例】
【0050】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、固形分換算での質量基準による。
【0051】
製造例1 SEBS樹脂エマルション(C2)の製造
ガラス容器にトルエン280部およびクレイトンFG−1901X(クレイトンポリマー社製SEBS、[スチレン]:[エチレンおよびブチレン]=30:70、マレイン酸1.7%による酸変性、有効成分100%)120部を入れ、温度を40℃に上げ、1時間撹拌しながら溶解し、SEBSトルエン溶液を得た。別のガラス容器に、イオン交換水164部およびニューコール2314(日本乳化剤社製乳化剤)17部を入れ、室温で充分に撹拌して溶解した後、前記SEBSトルエン溶液200部を徐々に加え、ホモディスパーにて1,500rpmで5分間撹拌した。その後、ホモゲナイザー(三和エンジニアリング社製)で処理し、白色乳濁液を得た。得られた白色乳濁液を、温度計および撹拌装置を備えたガラス容器に移し、撹拌しながら6時間減圧し、トルエンを留去することによりSEBS樹脂エマルション(C2)(固形分濃度32%)を得た。
【0052】
製造例2 塩化ビニル共重合体のエマルション(C1−1)の製造
撹拌機能付ステンレス製オートクレーブに、イソブチルアクリレート9部、アクリル酸3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、グリシジルメタクリレート5部、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)2部、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(界面活性剤)3部およびイオン交換水150部を入れ、窒素雰囲気下で、塩化ビニル70部を入れ、温度を55℃に上げ、過硫酸アンモニウム(反応開始剤)0.5部およびイオン交換水5部の混合水溶液を添加し、反応を開始した。さらに、内圧を一定に維持するように、塩化ビニル10部を連続的に追加して反応させた。その後、3時間の熟成を行い、塩化ビニル共重合体のエマルション(C1−1)(固形分濃度40%、塩化ビニルセグメント(c−1):その他のセグメント(c−2)=80:20)を得た。
【0053】
製造例2〜9 塩化ビニル共重合体のエマルション(C1−2)〜(C1−8)の製造
モノマー配合を表1のとおりにしたこと以外は、製造例2と同様の方法で、塩化ビニル共重合体のエマルション(C1−2)〜(C1−8)を得た。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1 水性防汚コーティング組成物(1)の調製
イオン交換水6,500部に、アデライトAT−20(ADEKA社製シリカ微粒子水分散体、固形分濃度20%、平均粒子径13nm)80部、100%酢酸3部、サーフィノール420(エアプロダクツジャパン社製界面活性剤)13部、ニューコール2303−Y(日本乳化剤社製界面活性剤)13部および製造例1のSEBS樹脂エマルション(C2)20部を、撹拌しながら順次添加して混合し、水性防汚コーティング組成物(1)を得た。
【0056】
実施例2〜10および比較例1〜4 水性防汚コーティング組成物(2)〜(14)の調製
組成物の配合を表2または3のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、水性防汚コーティング組成物(2)〜(14)を調製した。
【0057】
比較例5 水性防汚コーティング組成物(15)の調製
樹脂エマルション(C)の代わりに、アデカノールUH420(ADEKA社製ポリエーテル樹脂、固形分濃度30%)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、水性防汚コーティング組成物(15)を調製した。
【0058】
比較例6 水性防汚コーティング組成物(16)の調製
樹脂エマルション(C)として、塩化ビニル共重合体のエマルション(c1−8)およびアクリセットEX35(日本触媒社製アクリル樹脂エマルション、固形分濃度43%)の混合物を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、水性防汚コーティング組成物(16)を調製した。
【0059】
防汚コーティング層の形成
1.塗装基材の調製
UBボード12フラット2本溝(ウベボード社製シーラー塗装サイディングボード)に、オーデタイト390(濃紺色)(日本ペイント社製建材用上塗り塗料)をエアースプレーにて塗布量40g/mで塗装後、ジェット乾燥機(風速10m/s)にて100℃で10分間乾燥させた。
その上に、W−3108F(カネカ社製アルコキシシラン構成単位を有する重合体を含有する無機有機ハイブリッド樹脂)100質量部に対し、硬化剤としてQC#006C(カネカ社製)を12.5質量部添加したものを、エアースプレーにて塗布量30g/mで塗装後、ジェット乾燥機(風速10m/s)にて100℃で1分間乾燥させて、耐汚染性塗膜を有する塗装基材を調製した。なお、本明細書中の塗布量は乾燥質量を表す。
【0060】
2.水性防汚コーティング組成物の塗装
上記実施例および比較例で得られた水性防汚コーティング組成物(1)〜(16)を、上記より得られた塗装基材に、エアースプレーにて、塗布量1.2g/mで塗装した。
こうして得られた防汚コーティング層の乾燥は、前記クリヤー塗装工程でおこなったジェット乾燥機による塗装基材の加熱の余熱で行った。
【0061】
こうして得られた防汚コーティング層を有する塗板を用いて下記評価を行った。
【0062】
耐テープ痕性評価
マスキングテープ(No.SB246S、KAMOI社製、幅18mm)を塗板に貼付した後、マスキングテープの上を消しゴムで擦って塗板とマスキングテープとを圧着させ、24時間放置した。その後、マスキングテープを剥離し、塗板のテープ痕を下記基準に従い目視評価した。

5点:全く異常なし
4点:テープ痕が薄く残る
3点:テープ痕がはっきり残る
2点:テープ糊が薄く残る
1点:テープ糊が残る
【0063】
促進耐候性
JIS K 5600−7−7のキセノンランプ法に従い、スーパーキセノンウェザーメーターSX2−75(スガ試験機社製)で促進試験を実施し、試験時間100時間後の塗板の色差を、CR400(コニカミノルタ社製)によりL値を測定し、試験前のL値に対する変化の絶対値|ΔL|の大きさで評価した。

○ : |ΔL|≦1.5
△ : 1.5<|ΔL|<2.5
× : |ΔL|≧2.5
【0064】
水接触角の測定
塗板に形成された防汚コーティング層の水接触角を、4μLの純水をコーティング層表面に滴下させ、液滴の接線と固体表面とのなす角度として求めた。なお、接触角(θ)の測定は、固液界面解析装置 Drop Master 500(協和界面科学社製)を用いて、θ/2法によって行った。

○ : θ≦10
△ : 10<θ<30
× : θ≧30
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
実施例の水性防汚コーティング組成物を用いた場合は、何れも、耐テープ痕性が優れており、そして耐候性にも優れていた。また、水接触角も低く、防汚性にも優れていると考えられる。
樹脂エマルション(C)を含まない比較例1の水性防汚コーティング組成物を用いた場合は、耐テープ痕性が顕著に悪化した。
シリカ微粒子(A)と樹脂エマルション(C)の固形分質量比(A)/(C)が本発明の範囲から外れる比較例2および3は、耐テープ痕性と水接触角を低く維持することの両立が達成できなかった。
樹脂エマルションとして、塩化ビニル共重合体ではなく、塩化ビニル重合体を用いた比較例4は、水接触角が高くなったので、防汚性が低下すると考えられる。
樹脂エマルションを用いる代わりに水溶性ポリエーテル樹脂を用いた比較例5は、耐候性が顕著に悪化した。
樹脂エマルションとして、塩化ビニル共重合体ではなく、塩化ビニル重合体エマルションおよびアクリルエマルションの混合物を用いた比較例6は、水接触角が高くなり、防汚性が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の水性防汚コーティング組成物は、特に住宅外装材の表面に設けられる塗膜の上に、防汚コーティング層を形成することができる。こうして得られる防汚コーティング層は、水接触角が低いため優れた防汚性を有し、さらにマスキング用テープなどを貼り付けた後にテープを剥がしても、テープの糊痕が残る、いわゆる糊残りの不具合が生じないという利点がある。本発明の水性防汚コーティング組成物によって得られた防汚コーティング層は、マスキング用テープなどを用いる場合における作業性が良好であるという利点がある。さらに本発明の水性防汚コーティング組成物によって得られた防汚コーティング層は、濃彩色を有する建材上に設ける場合であっても、屋外の暴露に伴い濃彩色の建材が黒変するという不具合を伴わないという利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ微粒子(A)、界面活性剤(B)および樹脂エマルション(C)を含む、水性コーティング組成物であって、
該シリカ微粒子(A)および樹脂エマルション(C)の固形分質量比(A)/(C)が80/20〜95/5の範囲内であり、および
該樹脂エマルション(C)が、塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)およびスチレン系ブロック共重合体のエマルション(C2)から選択される少なくとも1種である、
水性防汚コーティング組成物。
【請求項2】
前記塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)は、塩化ビニル−アクリル共重合体のエマルションである、請求項1記載の水性防汚コーティング組成物。
【請求項3】
前記塩化ビニル共重合体のエマルション(C1)を構成する、塩化ビニルセグメント(c−1)と、その他のセグメント(c−2)との質量割合(c−1):(c−2)が、70:30〜95:5の範囲内である、請求項1または2記載の水性防汚コーティング組成物。
【請求項4】
前記シリカ微粒子(A)は平均1次粒子径3〜50nmを有する、請求項1〜3いずれかに記載の水性防汚コーティング組成物。
【請求項5】
被塗物の表層に、請求項1〜4いずれかに記載の水性防汚コーティング組成物を塗装する工程を包含する、防汚コーティング層の形成方法。
【請求項6】
前記被塗物の表層が、アルコキシシラン構成単位を有する重合物を含む塗膜を有する、請求項5記載の防汚コーティング層の形成方法。

【公開番号】特開2012−241181(P2012−241181A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115991(P2011−115991)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】