説明

水晶振動子

【課題】 良好な振動特性が得られ、水晶ブランクの厚みに関わらず水晶ブランクを確実に支持することができ、更にコストを低減することができる水晶振動子を提供する。
【解決手段】 丸型の水晶ブランク1をサポータ30によってベース5に垂直に支持して、水晶ブランク1とサポータ30とを接着した水晶振動子であり、2本のサポータ30が水晶ブランク1の直径より狭い間隔で配置され、各サポータ30が、水晶ブランク1と重なる部分において、水晶ブランク1の外周部に向かって外側方向に突出し、更に先端がL字状に折れ曲がって形成された突起部32を備え、水晶ブランク1の外周部付近と突起部32とが導電性接着剤で接合された水晶振動子としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子に係り、特に良好な振動特性が得られ、水晶ブランクの厚みに関わらず水晶ブランクを確実に支持することができ、更にコストを低減することができる水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、高安定水晶振動子としては、丸型のブランクを2本のサポータで接着支持するものがある。
[従来の水晶振動子:図5]
従来の水晶振動子の構成について図5を用いて説明する。図5は、従来の水晶振動子の構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
図5に示すように、従来の水晶振動子は、金属で形成されたベース5に垂直に突出したリード6に取り付けられたサポータ3によって、丸型(円板状)の水晶ブランク1が支持された構成となっている。
【0003】
具体的には、水晶ブランク1は、主としてSCカット、ITカット、ATカットのブランクであり、両主面に励振電極2が形成されている。一方の主面の励振電極2は、水晶ブランク1の直径の一端に引き出されて、他方の主面の励振電極2は当該直径の他端に引き出されている。水晶ブランク1は、電極2が引き出された外周部でサポータ3によって保持され、導電性接着剤によりサポータ3に電気的及び機械的に接合されている。
【0004】
サポータ3は、金属から成り、水晶ブランク1を保持するものである。
図5に示すように、サポータ3は、水晶ブランク1の保持位置付近で内側に湾曲し、湾曲部にはスリット4が形成されている。
そして、対向する2本のサポータ3が、スリット4において水晶ブランク1の直径の両端付近の外周部を挟み込んで保持している。つまり、従来のサポータ3は、スリット4が水晶ブランク1の両面から挟んで保持する構成となっている。
【0005】
対向して配置された2本のサポータ3の間隔は、水晶ブランク1を保持位置付近で水晶ブランク1の直径にほぼ等しくなるよう配置され、水晶ブランク1の保持位置とは反対側の端部がリード6に固定されている。
そして、水晶ブランク1がサポータ3で保持された状態で、カバーによって覆われて封止される。
【0006】
[水晶ブランク1の厚みとスリット幅]
ところで、水晶ブランク1の厚みは仕様によって異なり、要求される様々な周波数に応じて異なっている。例えば、厚みが0.09mm〜0.55mmの各種の水晶ブランク1を用いた水晶振動子が製造されている。
そのため、水晶ブランク1を支持するサポータ3のスリットの幅を、使用する水晶ブランク1の厚みに応じて形成しなければならない。
【0007】
水晶ブランク1の厚みに対してスリット幅が狭い場合には、水晶ブランク1を挿入できない。
水晶ブランク1の厚みに対してスリット幅が広すぎる場合には、水晶ブランク1の傾きによって水晶ブランク1とカバーとが接触したり、接着剤が過多となってガスが多く発生し振動の妨げになったり、経年変化により接着強度が劣化して周波数特性が変動する、といった不具合が発生する。
【0008】
[関連技術]
尚、水晶ブランクの支持に関する技術としては、特許第3753619号公報「水晶振動子」(日本電波工業株式会社、特許文献1)、特開2003−032069号公報「圧電振動素子の保持構造」(東洋通信機株式会社、特許文献2)、特開2009−188718号公報「水晶振動子」(日本電波工業株式会社、特許文献3)、実開平5−85122号公報「水晶発振器のサポート構造」(株式会社大真空、特許文献4)がある。
【0009】
特許文献1には、水晶振動子において、ベースと対面して配置されたATカットの水晶片を、平板状のサポータに形成されたスリットで外周部端面が露出するよう保持し、サポータの外面側から導電性接着剤を塗布し、水晶片の両端外周部とサポータとを接続することが記載されている。
【0010】
特許文献2には、圧電振動子において、2つのサポートに合計3箇所以上の保持部を設け、保持部の基板受け片によって圧電振動子の端縁よりの一面を保持し、接着剤により接着することが記載されている。
【0011】
特許文献3には、水晶振動子において、ベースと対面して配置された水晶片を、スリットの上端が閉塞し、水晶片に水平となる舌片を備えたサポータによって保持し、水晶片の下面と舌片及び水晶片の上面とスリットの閉塞した上端内側との間に接着剤を塗布して接着することが記載されている。
【0012】
特許文献4には、サポートを、断面コの字形状としてブランク搭載面の長手方向先端部分において内側に折り曲げて形成し、切り込みを設け、当該切り込みにより形成されたブランク搭載面に短冊状の水晶ブランクを搭載することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3753619号公報
【特許文献2】特開2003−032069号公報
【特許文献3】特開2009−188718号公報
【特許文献4】実開平05−085122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の水晶振動子では、水晶ブランクの厚みに対してサポータのスリット幅が大きいと、水晶ブランクとカバーとが接触したり、接着剤が過多となってエージング特性が劣化するという問題点があった。
【0015】
また、従来の水晶振動子では、サポータが、水晶ブランクの外周両端部において、表と裏の両面を挟んで支持するため、水晶ブランクを締め付けることになり、振動特性に影響を与えるおそれがあるという問題点があった。
【0016】
更に、従来の水晶振動子では、製品の仕様に応じてスリット幅の異なる種々のサポータを備えたベースを用意しなければならず、ベースの製造や在庫管理のコストが増大するという問題点があった。
【0017】
尚、特許文献1〜4には、水晶ブランクの外周部の内側に配置されたサポータ本体から外側に突出し、L字形状に屈曲した幅の狭い保持部を備え、当該保持部に水晶ブランクの一面の外周付近を接着して支持することは記載されていない。
【0018】
また、特許文献1〜4には、水晶ブランクの外周付近に配置されたサポータ本体から内側に突出した保持部を備え、サポータ本体から当該保持部に亘ってL字型に形成されたスリットを設け、水晶ブランクの一面の外周付近を保持部に接着して支持することは記載されていない。
【0019】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、良好な振動特性が得られ、水晶ブランクの厚みに関わらず水晶ブランクを確実に支持することができ、更にコストを低減することができる水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、丸型の水晶ブランクが、対向する2本のサポータによってベースに垂直に支持された水晶振動子であって、2本のサポータが、水晶ブランクの直径より狭い間隔で配置され、各サポータが、水晶ブランクと重なる部分において、水晶ブランクの外周部に向かって外側に突出し、先端がL字状に折れ曲がって形成された突起部を備え、水晶ブランクが各突起部に導電性接着剤によって接合されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記水晶振動子において、突起部が、水晶ブランクの、ベースに平行な直径の両端付近の外周部に相当する位置に、当該直径の両端付近の外周部を支持可能な程度の幅で形成されていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、上記水晶振動子において、2本のサポータにおける突起部のL字を形成する先端の面同士の間隔は、水晶ブランクの直径より広いことを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記水晶振動子において、サポータの幅が、ベースに近い端部に比べて、水晶ブランクと重なる部分は狭く形成されていることを特徴としている。
【0024】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、丸型の水晶ブランクが、対向する2本のサポータによってベースに垂直に支持された水晶振動子であって、2本のサポータが、水晶ブランクの直径と同程度若しくは直径より広い間隔で配置され、各サポータが、リード端子を介してベースに接続されるサポータ側板と、サポータ側板から水晶ブランクの内側方向に突出し、水晶ブランクの主面に平行に形成されたサポータ底板とを備え、サポータ側板からサポータ底板にかけてスリットが形成されており、水晶ブランクとサポータ側板及びサポータ底板とが、導電性接着剤によって接合されていることを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、上記水晶振動子において、スリットが、水晶ブランクの、ベースに平行な直径の両端付近の外周部に相当する位置に形成されていることを特徴としている。
【0026】
また、本発明は、上記水晶振動子において、スリットが、サポータ側板で開口し、サポータ底板で閉塞していることを特徴としている。
【0027】
また、本発明は、上記水晶振動子において、サポータ側板の幅が、ベースに近い端部に比べて、水晶ブランクと重なる部分は狭く形成され、当該狭く形成された部分にサポータ底板が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、丸型の水晶ブランクが、対向する2本のサポータによってベースに垂直に支持された水晶振動子であって、2本のサポータが、水晶ブランクの直径より狭い間隔で配置され、各サポータが、水晶ブランクと重なる部分において、水晶ブランクの外周部に向かって外側に突出し、先端がL字状に折れ曲がって形成された突起部を備え、水晶ブランクが各突起部に導電性接着剤によって接合されている水晶振動子としているので、水晶ブランクを保持する突起部の幅を狭くして接着剤が過多になるのを防ぎ、水晶ブランクの一方の主面をほぼ開放として、振動を妨げず、良好な周波数特性を得ることができると共に、様々な厚みの水晶ブランクを支持することができ、製造コストを低減することができる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、2本のサポータにおける突起部のL字を形成する先端の面同士の間隔が、水晶ブランクの直径より広い上記水晶振動子としているので、水晶ブランクの側面を締め付けず、一層良好な振動特性とすることができる効果がある。
【0030】
また、本発明によれば、サポータの幅が、ベースに近い端部に比べて、水晶ブランクと重なる部分は狭く形成されている上記水晶振動子としているので、水晶ブランクを収納する空間を確保し、水晶振動子の厚みを増大させないようにすることができる効果がある。
【0031】
また、本発明によれば、丸型の水晶ブランクが、対向する2本のサポータによってベースに垂直に支持された水晶振動子であって、2本のサポータが、水晶ブランクの直径と同程度若しくは直径より広い間隔で配置され、各サポータが、リード端子を介してベースに接続されるサポータ側板と、サポータ側板から水晶ブランクの内側方向に突出し、水晶ブランクの主面に平行に形成されたサポータ底板とを備え、サポータ側板からサポータ底板にかけてスリットが形成されており、水晶ブランクとサポータ側板及びサポータ底板とが、導電性接着剤によって接合されている水晶振動子としているので、水晶ブランクの一方の主面をほぼ開放とし、更に水晶ブランクを締め付けないため振動を妨げず、良好な周波数特性を得ることができると共に、様々な厚みの水晶ブランクを支持することができ、製造コストを低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子の構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図2】第1の水晶振動子におけるサポータ30の構成を示す模式説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子の構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図4】第2の水晶振動子におけるサポータ33の構成を示す模式説明図である。
【図5】従来の水晶振動子の構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る水晶振動子は、丸型の水晶ブランクをサポータによってベースに垂直に支持して、水晶ブランクとサポータとを接着した構成であり、サポータは、水晶ブランクの外周より内側に設置され、サポータ本体から外側に突出し、更にL字に屈曲した幅の狭い突起部を備え、当該突起部と水晶ブランクの外周部付近が導電性接着剤によって接着された構成としており、水晶ブランクを両面から締め付けないため良好な振動が得られ、突起部の幅が狭いため導電性接着剤の量が過多になるのを防いでエージング特性を向上させ、水晶ブランクの厚みに関係なく支持可能なサポータ形状として種々の水晶ブランクに対応でき、コストを低減することができるものである。
【0034】
また、本発明の実施の形態に係る水晶振動子は、丸型の水晶ブランクをサポータによってベースに垂直に支持して、水晶ブランクとサポータとを接着した構成であり、サポータは、水晶ブランクの外周より外側に設置され、サポータ本体から内側に突出した底板部を設け、サポータ本体から当該底板部に亘ってL字型のスリットが形成され、水晶ブランクが底板部に搭載されて導電性接着剤によって接着された構成としており、水晶ブランクを両面から締め付けないため良好な振動が得られ、スリットから導電性接着剤を塗布して水晶ブランクとサポータとを確実に接着すると共に、余分な接着剤がスリットから流出することにより導電性接着剤の量が過多になるのを防いでエージング特性を向上させ、水晶ブランクの厚みに関係なく支持可能なサポータ形状として種々の水晶ブランクに対応でき、コストを低減することができるものである。
【0035】
[第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子の構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子(第1の水晶振動子)は、従来と同様の丸型の水晶ブランク1が、金属製のベース5に垂直に突出したリード(リード端子)6に取り付けられたサポータ30によって支持された構成である。
【0036】
第1の水晶振動子の構成について具体的に説明する。
水晶ブランク1は、図5に示した従来の水晶振動子における水晶ブランク1と同様の構成であり、主としてSCカット、ITカット、ATカットのブランクであり、両主面に励振電極2が形成され、直径の両端方向に引き出されている。
【0037】
サポータ30は、第1の水晶振動子の特徴部分であり、リン青銅等の金属で形成され、水晶ブランク1の両側に対向して配置され、水晶ブランク1を保持するものである。
そして、第1の水晶振動子のサポータ30は、リード6に接続された側面支持部31と、側面支持部31から水晶ブランク1の外側方向に突出して形成された突起部32とを備えており、図1(b)に示すように、側面支持部31は、細長い板状で、リード6に近い部分では幅が広く形成され、水晶ブランク1が搭載される部分では幅が狭く形成されている。
【0038】
これにより、水晶ブランク1を、側面支持部31の幅広の部分よりも突出しないように収納することができるものである。
つまり、水晶ブランク1が搭載される領域の側面支持部31を狭くして、水晶ブランク1とサポータ30との接触面を少なくすると共に、水晶振動子の奥行き(図1(b)の左右方向)を増大させないものである。
【0039】
そして、図1(c)に示すように、第1の水晶振動子においては、向かい合うサポータ30の側面支持部31はリード6に平行で、2本の間隔が水晶ブランク1の直径よりも短い間隔となるよう配置されている。
そして、各サポータ30は、水晶ブランク1が搭載される領域(水晶ブランク1と重なる領域)ではベース5に垂直に形成され、下に向かって水晶ブランク1の外周に沿うようにベース5の内側寄りに傾斜し、リード6に接続する部分では再びベース5に垂直に形成されている。
【0040】
そのため、対向するサポータ30の間隔は、リード6に接続する部分では水晶ブランク1が搭載される領域における間隔に比べて狭くなっている。
これにより、ベース5を小型化できると共に、サポータ30を変形しにくくするものである。
【0041】
更に、サポータ30は、側面支持部31の狭い部分に、突起部32が設けられている。突起部32は、側面支持部31から水晶ブランク1の外側方向に向かって突出し(図1(c)参照)、先端が正面側(図1(b)の向かって左側)に向かってL字型に折り曲げられた形状に形成されている。
そして、突起部32は、水晶ブランク1の励振電極2が設けられた直径の両端に相当する位置に設置されている。
【0042】
突起部32の幅、つまり側面支持部31に接続する垂直方向(図1(c)の上下方向)の長さは、水晶ブランク1の直径両端の外周部付近を支持可能な程度に形成されている。図1の例では、突起部32の幅は、従来のサポータ3におけるスリット4が設けられている湾曲部の垂直方向(図5(a)(c)の上下方向)の長さよりも短く、つまり幅が狭く形成されている。
【0043】
また、突起部32の奥行き方向(図1(b)の左右方向)の長さは、側面支持部31の幅の広い部分と狭い部分との幅の差程度としており、様々な厚みを備えた多様な水晶ブランクに対応可能である。
尚、突起部32の奥行き方向の長さは、搭載される水晶ブランク1の厚みが突出しない程度の長さとすることが望ましい。
また、サポータ30の側面支持部31と突起部32とは一体に切り出され、側面支持部31と突起部32の境界部分及び突起部32の先端部がL字型に折り曲げられて形成される。
【0044】
そして、2本のサポータ30は、対向する突起部32の先端同士の間隔が水晶ブランク1の直径より若干広くなるよう配置されている。これにより、突起部32のL字に折れ曲がった先端部の面は、水晶ブランク1に直接接することはなく、水晶ブランク1を側面から強く挟み込まないものである。
【0045】
従って、図1(a)に示すように、正面から見ると、サポータ30は、水晶ブランク1の外周より外側となる突起部32の先端と、側面支持部31の先端及びリード6に近い下部のみが見えるものである。
【0046】
そして、第1の水晶振動子では、サポータ30の突起部32のL字に折り曲げられた2面の内、水晶ブランク1の主面と水平な一方の面に水晶ブランク1が搭載された状態で、当該一方の面及びそれに垂直な他方の面と、水晶ブランク1とが導電性接着剤により電気的且つ機械的に接合されているものである。
突起部32の水晶ブランク1の主面に垂直な面は、直接水晶ブランク1には接しておらず、導電性接着剤が水晶ブランク1との間に充填されている。
【0047】
これにより、水晶ブランク1は背面及び側面(外周部端面)でサポータ30に接合され、正面側からはサポータに締め付けられることは無いため、良好な振動が得られるものである。
特に、第1の水晶振動子では、水晶ブランク1の側面がサポータ30の突起部32に直接接触しないので、一層良好な振動が得られるものである。
【0048】
更に、突起部32は水晶ブランク1の背面側と側面側の2面で形成されており、正面側は開放としているので、様々な厚みの水晶ブランク1に対応可能であり、複数の製品で部材を共通化することができ、コストを低減することができるものである。
【0049】
[サポータ30の構成と導電性接着剤の塗布:図1,図2]
次に、第1の水晶振動子のサポータ30の構成と、水晶ブランク1を搭載した場合の導電性接着剤の塗布方法について図1及び図2を用いて説明する。図2は、第1の水晶振動子におけるサポータ30の構成を示す模式説明図である。
図2に示すように、サポータ30は、幅の広い部分と狭い部分とを備えた側面支持部31と、側面支持部31の狭い部分から突出した突起部32とから構成されており、更に、突起部32は、水晶ブランク1を搭載した場合に水晶ブランク1の主面に水平になる突起部底板32aと、突起部底板32aから垂直に水晶ブランク1の正面方向(図1(a)の手前方向)に折り曲げられた突起部側板32bとを備えている。
【0050】
上述したように、側面支持部31の長手方向に沿った突起部32の幅(図1では「垂直方向の長さ」としている)は、水晶ブランク1の直径両端の外周部付近を確実に保持できる程度に形成されており、例えば、側面支持部31の広い部分の幅と狭い部分の幅との中間程度となっている。これにより、突起部32の幅は、従来のサポータ3のスリット部4(図5(b)参照)に比べて狭く(短く)なっている。
【0051】
そして、ベース5にサポータ30が取り付けられた状態で、正面側から、対向する2本のサポータ30の突起部32の間に水晶ブランク1を搭載する。図2では、水晶ブランク1が搭載された状態を点線で示している。
このとき、水晶ブランク1は、突起部32の突起部底板32aと、側面支持部31の狭い部分の2箇所の端面とに搭載されており、突起部側板32bと側面支持部31の広い部分には接触していないものである。
【0052】
そして、導電性接着剤を塗布してサポータ30と水晶ブランク1とを接着する。
導電性接着剤は、水晶ブランク1の下側から、水晶ブランク1の下面と突起部底板32aとを接合するよう塗布され、水晶ブランク1の側面から水晶ブランク1の側面と突起部側板32bとの間を埋めて接合するよう充填され、更に、水晶ブランク1の上側から、水晶ブランク1の上面と突起部32とを接合するよう塗布される。
【0053】
すなわち、水晶ブランク1は、突起部底板32aに搭載されてしっかり接着されるが、突起部側板32bとの間には隙間があり、この隙間を埋めるように導電性接着剤を塗布することにより、水晶ブランク1と突起部側板32bとを接合する。
導電性接着剤は可塑性があり変形しやすいため、水晶ブランク1をサポータに密着して固定する場合に比べて、水晶ブランク1の自由な振動を妨げにくく、良好な振動特性が得られるものである。
【0054】
このように、突起部32の周囲の様々な方向から導電性接着剤を塗布することにより、水晶ブランク1と突起部32とが接する部分を包囲するように導電性接着剤が塗布され、水晶ブランク1とサポータ30との接着強度を十分に確保することができるものである。
また、突起部32の幅を狭くすることにより、導電性接着剤のつけ過ぎを防ぐことができ、接着剤過多による振動特性やエージング特性の劣化を未然に防ぐことができるものである。
【0055】
[第1の実施の形態の効果]
本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子によれば、丸型の水晶ブランク1をサポータ30によってベース5に垂直に支持して、水晶ブランク1とサポータ30とを接着した水晶振動子であり、サポータ30が、ベース5に垂直に設置された側面支持部31と、側面支持部31から水晶ブランク1の外側方向に突出し、更に奥行き方向にL字に折り曲げられた幅の狭い突起部32とを備え、水晶ブランク1の直径より狭い間隔で向かい合って設置された2本のサポータ30の突起部32の間に水晶ブランク1が搭載され、水晶ブランク1の外周部付近と突起部32とが導電性接着剤で接合されているので、水晶ブランク1の主面が締め付けられず、また、突起部32の幅を従来のスリットの長さより短く(狭く)して、接着剤が過多になるのを防いで良好な振動を得ることができ、更に、サポータ30で種々の厚みの水晶ブランク1を支持可能として、複数の製品に共通の部材とすることができ、コストを低減することができる効果がある。
【0056】
また、第1の水晶振動子によれば、対向するサポータ30の突起部側板32b同士の間隔を、水晶ブランク1の直径より広くしており、水晶ブランク1の側面が、突起部32の突起部側板32bに直接接することはなく、導電性接着剤を充填することにより接合されているので、水晶ブランク1の側面を締め付けないようにして、振動を妨げず、良好な振動特性を実現することができる効果がある。
【0057】
[第2の実施の形態:図3]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子について図3を用いて説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子の構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子(第2の水晶振動子)は、基本的な構成は第1の水晶振動子とほぼ同様であり、丸型の水晶ブランク1をベース5に垂直に搭載したものであるが、サポータの形状が第1の水晶振動子とは異なっている。
【0058】
図3に示すように、第2の水晶振動子のサポータ33は、水晶ブランク1の両側に対向して配置されており、それぞれ、ベース5に垂直且つリード6に平行となるよう、リード6に取り付けられた細長い板状のサポータ側板35と、サポータ側板35から水晶ブランク1の内側に突出したサポータ底板34とから構成されている。
【0059】
サポータ底板34は、サポータ側板35のリード6に接続された根元側の端部とは反対側の端部に設けられ、長さ(図3(c)の上下方向の長さ)及び幅(図3(c)の左右方向の長さ)は、水晶ブランク1の直径両端付近の外周部を保持可能な程度とし、図3の例では、長さは水晶ブランク1の半径より短く、幅は従来のサポータ3の湾曲部分(図5(a)(c)参照)の幅(図5(a)(c)の左右方向の長さ)と同程度に形成されている。
【0060】
また、サポータ側板35の幅(図3(b)の左右方向)は、従来のサポータ3の幅(図5(b)の左右方向)と同程度としており、搭載される種々の水晶ブランク1が突出しない程度の幅とすることが望ましい。
【0061】
更に、第2の水晶振動子のサポータ33では、サポータ側板35からサポータ底板34にまたがって、スリット4が形成されている。つまり、スリット36は、サポータ側板35からサポータ底板34にかけてL字状に形成されており、サポータ側板35側で開口し、サポータ底板34側で閉塞しているものである。
【0062】
スリット36は、水晶ブランク1の励振電極2が設けられた直径の両端に相当する位置に設置されており、導電性接着剤を注入するための隙間となっている。つまり、スリット36の周囲のサポータ側板35及びサポータ底板34と水晶ブランク1とが接合されるものである。
尚、サポータ33は、スリット36を備えたサポータ側板35とサポータ底板34とを一体に形成した後、サポータ底板34部分をL字状に折り曲げることによって形成される。
【0063】
第2の水晶振動子の2本のサポータ33は、対向するサポータ側板35の間隔が水晶ブランク1の直径と同程度若しくは直径より若干広くなるよう平行に配置されている。
これにより、水晶ブランク1を側面からしっかり押さえないようにして、振動特性の向上を図るものである。
【0064】
そして、第2の水晶振動子では、対向するサポータ33のサポータ底板34に水晶ブランク1が搭載された状態で、スリット36から注入された導電性接着剤により、水晶ブランク1とサポータ底板34及びサポータ側板35とが電気的且つ機械的に接合されているものである。
【0065】
第2の水晶振動子においても、サポータ33は、水晶ブランクの両主面を挟みこむ構成ではないため、様々な厚みの水晶ブランク1を搭載可能であり、複数の製品でサポータやベースを共通の部材としてコストを低減することができるものである。
また、水晶ブランク1の背面側はサポータ33に密着されるが、正面側はほぼ開放状態となるため、水晶ブランク1が強く締め付けられることは無く、従来に比べて良好な振動特性が得られるものである。
【0066】
[サポータ33の構成と導電性接着剤の塗布:図3,図4]
次に、第2の水晶振動子のサポータ33の構成と、水晶ブランクを搭載した場合の導電性接着剤の塗布方法について図3及び図4を用いて説明する。図4は、第2の水晶振動子におけるサポータ33の構成を示す模式説明図である。
図4に示すように、サポータ33は、サポータ側板35と、サポータ底板34とから成り、サポータ側板35からサポータ底板34にかけてL字型のスリット36が形成されている。
【0067】
第2の水晶振動子のサポータ33に水晶ブランク1を搭載すると、水晶ブランク1の主面はサポータ底板34に搭載され、スリット36から水晶ブランク1の外周部が一部露出する。但し、2本のサポータ33のサポータ側板35の間隔は、水晶ブランク1の直径と同程度又は若干広くしているので、水晶ブランク1の外周部は、サポータ側板35によって締め付けられないようになっている。
【0068】
そして、第2の水晶振動子では、導電性接着剤は、水晶ブランク1の下側からスリット36を介して、水晶ブランク1の下面とサポータ底板34とを接合するよう塗布され、水晶ブランク1の側面から、水晶ブランク1の側面とサポータ底板34及びサポータ側板35とを接合するよう塗布され、更に、水晶ブランク1の上面から、水晶ブランク1の上面とサポータ側板35とを接合するよう塗布される。
【0069】
このように、スリット36の様々な方向から導電性接着剤を塗布することにより、水晶ブランク1とサポータ側板35及びサポータ底板34とを確実に接着することができるものである。
また、導電性接着剤を多く塗布しすぎた場合でも、余分な導電性接着剤はスリット36から外に流出するので、導電性接着剤のつけ過ぎを防ぐことができ、接着剤過多による振動特性やエージング特性の劣化を防ぐことができるものである。
【0070】
[第2の実施の形態の効果]
本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子によれば、丸型の水晶ブランク1を対向する1組のサポータ33によってベース5に垂直に支持して、水晶ブランク1とサポータ33とを接着した水晶振動子であり、サポータ33が、ベース5に垂直に設置されたサポータ側板35と、サポータ側板35から水晶ブランク1の内側方向に突出したサポータ底板34とを備え、サポータ側板35からサポータ底板34にまたがってスリット36が形成され、水晶ブランク1の直径程度の間隔で向かい合って設置された2本のサポータ33のサポータ底板34に水晶ブランク1が搭載され、スリット36から注入された導電性接着剤によって水晶ブランク1とサポータ33とが接合されているので、水晶ブランク1の主面が締め付けられず、また、スリット36から余分な接着剤が流出するため接着剤が過多になるのを防ぎ、良好な振動特性が得られると共に、エージング特性を向上させることができ、更に、サポータ33で種々の厚みの水晶ブランク1を支持可能として、複数の製品に共通の部材とすることができ、コストを低減することができる効果がある。
【0071】
また、第2の水晶振動子によれば、2本のサポータ33は、サポータ側板35同士の間隔が水晶ブランク1の直径と同程度又は直径より若干広くなるよう設置されているので、水晶ブランク1の側面を締め付けないようにして、振動を妨げず、良好な振動特性を実現することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、良好な振動特性が得られ、水晶ブランクの厚みに関わらず水晶ブランクを確実に支持することができ、更にコストを低減することができる水晶振動子に適している。
【符号の説明】
【0073】
1...水晶ブランク、 2...励振電極、 3,30,33...サポータ、 4,36...スリット、 5...ベース、 6...リード、 31...側面支持部、 32...突起部、 32a...突起部底板、 32b...突起部側板、 34...サポータ底板、 35...サポータ側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸型の水晶ブランクが、対向する2本のサポータによってベースに垂直に支持された水晶振動子であって、
前記2本のサポータが、前記水晶ブランクの直径より狭い間隔で配置され、
前記各サポータが、前記水晶ブランクと重なる部分において、前記水晶ブランクの外周部に向かって外側に突出し、先端がL字状に折れ曲がって形成された突起部を備え、
前記水晶ブランクが前記各突起部に導電性接着剤によって接合されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
突起部が、水晶ブランクの、ベースに平行な直径の両端付近の外周部に相当する位置に、前記直径の両端付近の外周部を支持可能な程度の幅で形成されていることを特徴とする請求項1記載の水晶振動子。
【請求項3】
2本のサポータにおける突起部のL字を形成する先端の面同士の間隔は、水晶ブランクの直径より広いことを特徴とする請求項1又は2記載の水晶振動子。
【請求項4】
サポータの幅が、ベースに近い端部に比べて、水晶ブランクと重なる部分は狭く形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の水晶振動子。
【請求項5】
丸型の水晶ブランクが、対向する2本のサポータによってベースに垂直に支持された水晶振動子であって、
前記2本のサポータが、前記水晶ブランクの直径と同程度若しくは直径より広い間隔で配置され、
前記各サポータが、リード端子を介して前記ベースに接続されるサポータ側板と、前記サポータ側板から前記水晶ブランクの内側方向に突出し、前記水晶ブランクの主面に平行に形成されたサポータ底板とを備え、前記サポータ側板から前記サポータ底板にかけてスリットが形成されており、
前記水晶ブランクと前記サポータ側板及び前記サポータ底板とが、導電性接着剤によって接合されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項6】
スリットが、水晶ブランクの、ベースに平行な直径の両端付近の外周部に相当する位置に形成されていることを特徴とする請求項5記載の水晶振動子。
【請求項7】
スリットが、サポータ側板で開口し、サポータ底板で閉塞していることを特徴とする請求項5又は6記載の水晶振動子。
【請求項8】
サポータ側板の幅が、ベースに近い端部に比べて、水晶ブランクと重なる部分は狭く形成され、前記狭く形成された部分にサポータ底板が設けられていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか記載の水晶振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98964(P2013−98964A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243247(P2011−243247)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】