説明

水晶発振器の温度制御装置及び温度制御方法

【課題】風による水晶発振器の出力周波数特性への影響を抑える。
【解決手段】少なくとも恒温槽10と恒温槽10内に設けられた水晶振動子11を内部に有する水晶発振器100と、水晶発振器100の外部に設けられた風速センサー20と、水晶発振器100の外部に設けられた補助ヒーター回路21を有する水晶発振器100の温度制御装置である。風速センサー20により一定値以上の風速を検出したときに、補助ヒーター回路21により水晶発振器100に対して熱を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽内に設けられた水晶振動子を有する水晶発振器の温度制御装置及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、無線基地局装置は、無線基地局制御装置に接続されている伝送路からの抽出クロック信号に同期して動作している。無線基地局制御装置は周波数安定度の非常に高い水晶発振器を搭載しているため、無線基地局装置を無線基地局制御装置から送られてくる伝送路からの抽出クロック信号に同期させるように動作させれば、無線基地局装置に搭載される水晶発振器も出力周波数安定度を高く保ち続けることが可能である。
【0003】
しかし、無線基地局装置と無線基地局制御装置との伝送路にIP(Internet Protocol)伝送路を使用する場合がある。この場合、無線基地局装置は伝送路からの抽出クロック信号に同期するように動作させることができないため、無線基地局装置に搭載された水晶発振器が自走して動作することになる。
【0004】
従って、このようなネットワーク環境下で使用される可能性があることを考慮すると、無線基地局装置に搭載される水晶発振器にも無線基地局制御装置に搭載される水晶発振器と同様に、高安定の水晶発振器を搭載する必要性が発生し、一般的には周波数安定度の非常に高い恒温槽付水晶発振器が搭載されていることが多い。
【0005】
ここで、水晶発振器に関する技術としては、例えば、特開2010−220152号公報(特許文献1)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−220152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記恒温槽付水晶発振器には以下のような問題がある。
【0008】
すなわち、恒温槽付水晶発振器はその内部に恒温槽及びヒーター回路を搭載する発熱部品であり、一般的には風による出力周波数特性への影響を受けやすくなる。
【0009】
具体的に説明すると、恒温槽付水晶発振器は内部の恒温槽及びヒーター回路の発熱により水晶振動子の動作温度を常時一定(通常80℃以上)に保ち、外部周囲温度の変化による出力周波数の変化量が最も小さくなるように動作している。このため、通常は、恒温槽付水晶発振器には装置内ファンなどの風が直接当たらないようにするなど使い方に注意する必要がある。
【0010】
そのため、恒温槽付水晶発振器に強い風が当たる環境下になると、恒温槽付水晶発振器のケース表面を介して内部の熱が奪われ、水晶振動子の動作温度を一定に保つことができなくなるという問題がある。
【0011】
水晶振動子の動作温度を一定に保てないことにより、恒温槽付水晶発振器の出力周波数安定度が劣化し、最終的には無線基地局装置の通信エラーにつながることになる。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術の課題を解決するための技術を提供することにあり、風による水晶発振器の出力周波数特性への影響を抑えることが可能な水晶発振器の温度制御装置及び温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る水晶発振器の温度制御装置は、
少なくとも恒温槽と、この恒温槽内に設けられた水晶振動子を内部に有する水晶発振器と、
前記水晶発振器の外部に設けられた風速センサーと、
前記恒温槽付水晶発振器の外部に設けられたヒーターを有し、
前記風速センサーにより一定値以上の風速を検出したときに、前記ヒーターにより前記恒温槽付水晶発振器に対して熱を加えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、少なくとも恒温槽と、この恒温槽内に設けられた水晶振動子を内部に有する水晶発振器の温度制御方法であって、
前記水晶発振器に外部から当たる風の風速を検出し、
前記検出した風速が一定値以上のときに、前記恒温槽付水晶発振器に対して熱を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、風による水晶発振器の出力周波数特性への影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る水晶発振器の温度制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る水晶発振器の温度制御装置の構成について説明する。
【0019】
水晶発振器100の内部には、恒温槽10、水晶振動子11、ヒーター回路12、周波数制御回路13、発振回路14、アンプ回路15、バッファ回路16、電源回路17が設けられている。尚、水晶発振器100は、ケース200で覆われている。水晶振動子11は恒温槽10の内部に搭載されている。
【0020】
水晶発振器100には、制御電圧信号18が入力され、周波数制御回路13、発振回路14、アンプ回路15及びバッファ回路16を介して、出力信号19を生成する。
【0021】
一方、水晶発振器100の外部には、風速センサー20と補助ヒーター回路21が設けられている。
【0022】
水晶発振器100は、恒温槽10及びヒーター回路12の発熱により水晶振動子11の動作温度を常時一定に保ち、外部周囲温度変化による出力周波数の変化量が最も小さくなるように動作している。このため、周波数安定度の非常に高い出力信号19を生成することができる。
【0023】
水晶発振器100の外部に設けられた風速センサー20は、一定以上の風速を検出する機能を有する。水晶発振器100の外部に設けられた補助ヒーター回路21は、風速センサー20が一定以上の風速を検出した場合に水晶発振器100のケース200の表面に熱を加える機能を有している。
【0024】
次に、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る水晶発振器の温度制御装置の動作について説明する。
【0025】
外部環境が安定している状態においては、水晶発振器100はそれ単体で周波数安定度の非常に高い出力信号19を生成することができる。しかし、水晶発振器100はその内部に恒温槽10及びヒーター回路12を搭載する発熱部品であるため、一般的には風による出力周波数特性への影響を受けやすくなる。そのため、例えば、水晶発振器100に装置内ファン(図示せず)などの強い風が当たる環境下になると、水晶発振器100のケース200の表面を介して内部の熱が奪われ、水晶振動子11の動作温度を一定に保つことができなくなる場合があり、最終的に水晶発振器100の出力信号19の周波数安定度が劣化してしまう。
【0026】
このような問題点に鑑みて、本発明の実施の形態では、水晶発振器100の外部に風速センサー20と補助ヒーター回路21を設けて、強い風が当たる環境下での対策機能を有している。
【0027】
すなわち、風速センサー20により水晶発振器100に当たる一定以上の風速を検出し、風速センサー20で一定以上の風速を検出した際には補助ヒーター回路21を駆動させ、水晶発振器100のケース200の表面に熱を加えるように動作させる。
【0028】
このように、補助ヒーター回路21により水晶発振器100のケース200の表面に熱を加えるように動作させることで、水晶発振器100のケース200の表面温度を上昇させ、水晶発振器100の内部と外部の熱抵抗を大きくして熱遮蔽効果を高める。
【0029】
そのため、風の影響により水晶発振器100の内部の熱が奪われることを防止することができ、水晶発振器100の出力周波数特性への影響を最小限に抑える。
【0030】
以上説明したように、本発明の実施の形態では、風速センサー20により一定以上の風速を検出し、風速センサー20で一定以上の風速を検出した際には補助ヒーター回路21を駆動させ、水晶発振器100のケース200の表面に熱を加えるように動作させる。これにより、水晶発振器100の内部と外部の熱抵抗を大きくして熱遮蔽効果を高め、風の影響により水晶発振器100の内部の熱が奪われることを防止することができる。このように、既存の水晶発振器100の設計を変更することなく、風の影響による水晶発振器100の出力周波数特性への影響を最小限に抑えることができる。
【0031】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する
本発明の他の実施の形態では、図1に示した本発明の実施の形態に係る水晶発振器の温度制御装置(水晶発振器100、風速センサー20及び補助ヒーター回路21)を無線基地局装置(図示せず)内に装備する。
【0032】
上述のように、無線基地局装置と無線基地局制御装置との伝送路にIP(Internet Protocol)伝送路を使用する場合がある。この場合、無線基地局装置は伝送路からの抽出クロック信号に同期するように動作させることができないため、無線基地局装置に搭載された水晶発振器が自走して動作することになる。
【0033】
従って、このようなネットワーク環境下で使用される可能性があることを考慮すると、無線基地局装置に搭載される水晶発振器にも無線基地局制御装置に搭載される水晶発振器と同様に、高安定水晶発振器を搭載する必要性が発生し、周波数安定度の非常に高い水晶発振器が要求される。
【0034】
このような要求を満たすために、本発明の実施の形態に係る水晶発振器の温度制御装置(水晶発振器100、風速センサー20及び補助ヒーター回路21)を無線基地局装置内に装備する。このようにすれば、装置内ファンなどの風の影響による水晶発振器100の出力周波数特性への影響を最小限に抑えることができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0036】
例えば、上記他の実施の形態では、図1に示した本発明の実施の形態に係る水晶発振器の温度制御装置(水晶発振器100、風速センサー20及び補助ヒーター回路21)を無線基地局装置内に装備したが、本発明はこれに限定されず、周波数安定度の非常に高い水晶発振器の要求があれば、他の装置内に装備しても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 恒温槽
11 水晶振動子
12 ヒーター回路
13 周波数制御回路
14 発振回路
15 アンプ回路
16 バッファ回路
17 電源回路
18 制御電圧信号
19 出力信号
20 風速センサー
21 補助ヒーター回路
100 水晶発振器
200 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも恒温槽と、この恒温槽内に設けられた水晶振動子を内部に有する水晶発振器と、
前記水晶発振器の外部に設けられた風速センサーと、
前記水晶発振器の外部に設けられたヒーターを有し、
前記風速センサーにより一定値以上の風速を検出したときに、前記ヒーターにより前記水晶発振器に対して熱を加えることを特徴とする水晶発振器の温度制御装置。
【請求項2】
前記水晶発振器は、ケースで覆われており、
前記ヒーターの熱は、このケースの表面に加えられることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器の温度制御装置。
【請求項3】
前記ケースの表面に熱を加えることにより、前記ケースの表面温度を上昇させて熱遮蔽効果を高めることを特徴とする請求項2に記載の水晶発振器の温度制御装置。
【請求項4】
前記熱遮蔽効果により前記水晶振動子の動作温度を一定に保って、風による前記晶発振器の出力周波数特性への影響を抑えることを特徴とする請求項3に記載の水晶発振器の温度制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記水晶発振器の温度制御装置を有することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項6】
少なくとも恒温槽と、この恒温槽内に設けられた水晶振動子を内部に有する水晶発振器の温度制御方法であって、
前記水晶発振器に外部から当たる風の風速を検出し、
前記検出した風速が一定値以上のときに、前記水晶発振器に対して熱を加えることを特徴とする水晶発振器の温度制御方法。
【請求項7】
前記水晶発振器は、ケースで覆われており、
前記熱は、このケースの表面に加えられることを特徴とする請求項6に記載の水晶発振器の温度制御方法。
【請求項8】
前記ケースの表面に熱を加えることにより、前記ケースの表面温度を上昇させて熱遮蔽効果を高めることを特徴とする請求項7に記載の水晶発振器の温度制御方法。
【請求項9】
前記熱遮蔽効果により前記水晶振動子の動作温度を一定に保って、風による前記晶発振器の出力周波数特性への影響を抑えることを特徴とする請求項8に記載の水晶発振器の温度制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−227629(P2012−227629A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91687(P2011−91687)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】