説明

水晶発振式膜厚モニタ装置、及び、これを用いたEL材料の蒸発源装置と薄膜形成装置

【課題】 リニアソースに好適な水晶発振式膜厚モニタ装置と共に、膜厚モニタを用いたEL材料の蒸発源装置や薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】 外周端に沿って複数の水晶振動子50を保持する円盤状の水晶振動子ホルダ10と、その表面を覆い、かつ、その一個に対応した位置にだけ開口部21を設けたカバー20を備えたヘッダと、ヘッダの裏面に設けられた回転機構と、ホルダの回転に伴って開口部から表面を外部に露出する一の水晶振動子の共振周波数を検出する共振周波数検出手段を備えた水晶発振式膜厚モニタ装置では、ヘッダを構成する円盤状のホルダの外周部を円錐状に、内側に角度θだけ窪ませて水晶振動子表面から延長した垂線を円盤状のホルダの回転軸に対して角θだけ傾斜させ、ホルダを回転する駆動部550を含む回転機構を、水晶振動子ホルダの回転軸に対して垂直に伸びた方向に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振式膜厚モニタ及びこれを用いた膜厚のモニタ技術に関し、特に、有機ELデバイスを製造する成膜装置に好適な水晶発振式膜厚モニタ装置、更には、これを用いたEL材料の蒸発源装置と薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスを製造するために有力な方法として、真空蒸着法があり、かかる真空蒸着法を利用して有機ELデバイスを製造する場合、特に、ガラス板などの被蒸着基板の表面に電極で挟まれた発光材料層(EL層)を形成するために成膜装置が利用されている。かかる成膜装置内では、真空室内において、加熱して気化したガス状(又は、蒸気状)のEL材料を基板表面に蒸着するため、所謂、蒸着源を当該被蒸着基板に対向する位置に配置し、互いにその位置を移動しながら成膜する。特に、近年においては、特に、大型のデバイスの生産性を向上するため、例えば、以下の特許文献1〜3によれば、ガス状のEL材料を、基板と蒸着源との相対的な移動方向に対して垂直な方向(所謂、幅方向に)広く供給するため、ケースの内部に坩堝を備えると共に、当該ケースを幅方向に延長した、所謂、リニアソースが既に知られている。
【0003】
一方、上記の成膜装置内では、基板表面に形成される膜厚を安定、かつ、均一に制御するため、上述した蒸着源から供給されるガス状のEL材料の発生量を測定することが行われており、そのため、例えば、以下の特許文献4や5によれば、水晶振動子の表面に物質が付着するとその共振振動数が変化することを利用した、所謂、水晶発振式膜厚モニタが既に知られている。なお、この特許文献2により知られる水晶発振式膜厚モニタは、複数の水晶板(水晶振動子)を円盤状のホルダに保持し、水晶振動子の表面に付着する物質が一定膜厚(即ち、寿命)に達すると当該ホルダを回転して新たな水晶板(水晶振動子)に交換するものである。
【0004】
加えて、以下の特許文献6によれば、上述した水晶発振式膜厚モニタの寿命、即ち、そのメンテナンスの間隔を延ばすため、真空室内においてガス状のEL材料に曝される水晶板(水晶振動子)の表面上で、円盤の一部に切欠き部を設けた遮蔽板を回転するもの(所謂、チョッパ)も既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−214185号公報
【特許文献2】特開2003−160855号公報
【特許文献3】特開2005−256113号公報
【特許文献4】特開2003−139505号公報
【特許文献5】特許第3213613号
【特許文献6】特開平11−222670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述の膜厚モニタは、上述した特許文献1〜3により知られたリニアソースに適用した場合、リニアソースの移動に伴い、その位置関係を維持したまま膜厚モニタも移動することが望ましい。これは熱源である蒸発源との位置が変化すると、膜厚モニタの水晶振動子の温度が変化し、安定した膜厚測定ができないためである。
【0007】
そして、有機ELに使用される有機材料は、非常に高価なものであり、その材料使用効率は最終製品であるデバイス価格を決定する大きな要因となるため、蒸発源をできるだけ被蒸着基板に近づけ、基板の外部飛散する材料を少なくし、材料使用効率を高める必要がある。
【0008】
蒸着源を被蒸着基板に近づけると、蒸発面に向けて取り付けられた膜圧モニタが、蒸発面よりも大きく飛び出している場合、設置装置内の機構等と干渉し易くなり、蒸着源を被蒸着基板に近づけることによる材料効率の向上は難くなる。従って、前記リニアソースに使用される膜圧モニタは、蒸発面よりも被蒸着基板方面に飛び出し過ぎない形状のものが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、特に、ガス状のEL材料を、幅方向に広く供給するリニアソースに採用するのに好適な水晶発振式膜厚モニタ装置を提供すると共に、更には、かかる膜厚モニタを用いたEL材料の蒸発源装置と薄膜形成装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、まず、複数の水晶振動子と、前記複数の水晶振動子をその外周端に沿って保持する円盤状の水晶振動子ホルダと、前記水晶振動子ホルダの表面を覆い、かつ、当該ホルダに保持された複数の水晶振動子の一つに対応した位置に開口部を設けたカバー部とを備えたヘッダ部と、前記ヘッダ部の水晶振動子ホルダの裏面側に設けられ、前記水晶振動子を当該ホルダを一体に回転する回転機構と、前記回転機構による前記水晶振動子ホルダの回転に伴って前記開口部からその表面の一部を外部に露出した一の水晶振動子の共振周波数を検出するための共振周波数検出手段とを備えた水晶発振式膜厚モニタ装置において、前記ヘッダ部を構成する円盤状の水晶振動子ホルダの外周部を円錐状に窪ませ、もって、当該ホルダに保持された水晶振動子の表面から延長した垂線が、当該円盤状のホルダの回転軸に対して所定の角度だけ傾斜するようにすると共に、前記ホルダを回転する回転機構を、前記水晶振動子ホルダの回転軸に対して垂直に伸びた方向に設けた水晶発振式膜厚モニタ装置が提供される。
【0011】
本発明では、前記に記載した水晶発振式膜厚モニタ装置において、前記カバー部も、その外周部を円錐状に窪ませてもよく、又は、前記ヘッダ部は、更に、上記水晶振動子ホルダの表面側に同心上に設けられた円盤状の部材の一部に開口部を設けたチョッパ部を備えると共に、前記回転機構は、前記チョッパ部を回転するための回転機構を更に備えていることが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、やはり上記の目的を達成するため、水平な一方向に向かって長く伸びた筐体の内部に、EL材料を収容した坩堝と、当該坩堝を所定の温度で加熱するための加熱手段とを備えると共に、その上面又はその一側面に、当該水平な一方向に沿って蒸発したEL材料を放出する孔を設けたEL材料の蒸発源装置であって、更に、前記に記載した水晶発振式膜厚モニタ装置を備えており、当該水晶発振式膜厚モニタ装置は、前記筐体を構成する面のうち、前記蒸発したEL材料を放出する孔が形成された面に隣接する少なくとも一の面に、そのマスク部の開口部が当該放出孔が形成された面に対して所定の角度で対向するように突出して配置されると共に、その回転機構を前記隣接する面に取り付けて配置された蒸発源装置が提供される。
【0013】
なお、本発明では、前記に記載した蒸発源装置において、前記水晶発振式膜厚モニタ装置は、常に同じ位置関係を維持し、前記蒸発源装置が移動機構を有し、被蒸着基板に対して水平移動する場合においても、その位置関係のまま共に移動することが好ましく、又は、更に、前記坩堝を加熱する前記加熱手段へ供給する電力を制御する制御手段を備えていることが好ましい。
【0014】
加えて、本発明によれば、やはり上記の目的を達成するため、真空室内において、水平な一方向に向かって長く伸びた筐体の内部に、EL材料を収容した坩堝と、当該坩堝を所定の温度で加熱するための加熱手段とを備えると共に、その上面又はその一側面に、当該水平な一方向に沿って蒸発したEL材料を放出する孔を設けたEL材料の蒸発源装置を備え、前記真空室内に導入した基板の蒸着面を、前記筐体を構成する面のうち、前記蒸発したEL材料を放出する孔が形成された面に近接し、その位置を相対的に移動させながら、蒸発したEL材料の薄膜を当該基板の蒸着面に形成する薄膜形成装置において、更に、前記に記載した水晶発振式膜厚モニタ装置を備えており、当該水晶発振式膜厚モニタ装置は、前記蒸発源装置の筐体を構成する面のうち、前記蒸発したEL材料を放出する孔が形成された面に隣接する少なくとも一の面に、そのマスク部の開口部が当該放出孔が形成された面に対して所定の角度で対向するように突出して配置されると共に、その回転機構を前記隣接する面に取り付けて配置している薄膜形成装置が提供される。
【0015】
なお、前記に記載した薄膜形成装置において、更に、前記真空室内には、導入した前記基板の蒸着面を略垂直に保持する部材を備えると共に、前記蒸発源装置は、当該真空室内において上下方向に移動することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
即ち、上述した本発明によれば、ガス状のEL材料を、幅方向に広く供給するリニアソースに採用するのに好適な水晶発振式膜厚モニタ装置を提供すると共に、更には、かかる膜厚モニタを用いたEL材料の蒸発源装置と薄膜形成装置を提供することが可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態になる水晶発振式膜厚モニタ装置、特に、そのヘッダ部の構造を説明するための、一部断面を含む展開斜視図である。図である。
【図2】上記ヘッダ部、特に、その水晶振動子ホルダの詳細を説明するための、一部断面を含む展開斜視図である。
【図3】水晶発振式膜厚モニタ装置において、上記水晶振動子ホルダの水晶振動子を含で形成される高周波共振回路の一例を示す回路図である。
【図4】上記本発明の水晶発振式膜厚モニタ装置を内部に備えた薄膜形成装置の要部構成を示す図である。
【図5】上記本発明薄膜形成装置の内部に設けられたEL材料の蒸発源装置の構造の一例を示す展開斜視図である。
【図6】上記EL材料の蒸発源装置の詳細構造を示す断面図である。
【図7】上記本発明の水晶発振式膜厚モニタ装置を、薄膜形成装置のリニアソースであるEL材料の蒸発源装置に取り付けた構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する、
【0019】
まず、添付の図1には、本発明の一実施の形態になる水晶発振式膜厚モニタ装置、特に、そのヘッダ部について説明する。
【0020】
この図1からも明らかなように、ヘッダ部は、外形が略円盤状であり、かつ、外周部(例えば、半径の略半分より外側)を、所定の角度(以下の図2のθを参照)だけ内側に、円錐状に窪ませてなる水晶振動子ホルダ10と、この水晶振動子ホルダ10の全体を覆うように形成され、もって、ホルダの表面を覆う(即ち、外周部を円錐状に窪ませる)と共に、その一部(後にも述べるが、その頂部)に円形の開口部21を形成した、所謂、カバー(覆い部)20とを備えている。
【0021】
水晶振動子ホルダ10の中心部にはローラベアリング11が取り付けられており、そして、当該ベアリングを介して、後にも述べるが、チョッパ板40を回転駆動するための回転シャフト30が、回転可能に植立されている。更に、当該シャフトは、上記カバー20の中心部に取り付けられたローラベアリング22を介して、当該カバーに対しても回転可能に取り付けられている。そして、当該シャフトの上記ロールベアリング22から突出した先端部には、やはり外形が略円盤状であり、かつ、その外周部を円錐状に窪ませ、かつ、その一部に開口部(例えば、穴や切欠き)41を形成したチョッパ板40が、その中心部において、例えば、ネジ42により一体に回転可能に固定されている。
【0022】
次に、添付の図2には、上述した水晶振動子ホルダ10の詳細が示されており、この水晶振動子ホルダ10は、上記カバー20やチョッパ板40と同様に、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属により形成されており、そして、その外周部の窪んだ面(即ち、円錐面に)には、複数(本例では、8箇所)の凹部12、12…が円周上に均等な距離だけ隔れて形成されている。図にも示すように、これらの凹部12、12…の内部には、外形円盤状の水晶振動子50が、複数(本例では、8個)、それぞれ、挿入されると共に、その上部からは、リング状でかつ円錐状に窪んだ面に複数(本例では、8箇所)の開口部13、13…を形成した押付け板14が取り付けられている。なお、ここでは図示しないが、これら水晶振動子ホルダ10の凹部11や押付け板14には、それぞれ、例えば、板バネなどからなる電極が取り付けられており、更に、上記水晶振動子ホルダ10の下部に設けられた一対の接触式電極板15、15を介してヘッダ部の外部に電気的に導かれる。また、図中の符号51は、上記水晶振動子50の表面に形成された電極を示している。
【0023】
また、後にも説明するが(例えば、以下の図5を参照)、上記水晶振動子ホルダ10の円錐状に窪んだ面によれば、ヘッダ部を構成する水晶振動子ホルダ10の外周部の円錐状部に形成された凹部11内に保持された水晶振動子50は、その表面から延長した垂線が、当該円盤状のホルダを含むヘッダ部の回転軸に対し、所定の角度θだけ傾斜するように配置されることとなる。
【0024】
即ち、上記の図1において、ヘッダ部を構成するカバー20の円形の開口部21を介して外部にその電極を露出した水晶振動子50を挟んで(より具体的には、その両面に形成した電極を挟んで)、添付の図3にも示すように、高周波の発信源(発信機)55からの高周波信号が印加されており、これによって、所謂、共振回路を形成している。即ち、水晶振動子50の表面にEL材料の蒸気を含む物質が付着すると、その共振振動数が変化する現象を利用して、所謂、水晶発振式膜厚モニタが形成されている。そして、上記水晶振動子50の表面に付着する物質が一定の膜厚(即ち、寿命)に達すると、水晶振動子ホルダ10を所定の角度(本例では、360/8=40度)だけ回転駆動し、もって、新たな水晶板水晶振動子50と交換する(即ち、インデックス機能、図1中の矢印を参照)。
【0025】
一方、上記回転シャフト30は、ヘッダ部により構成される水晶発振式膜厚モニタが作動している期間は、常に回転しており、もって、上記チョッパ板40を所定の回転速度で回転駆動する(図中の矢印を参照)。即ち、このチョッパ板40の回転により、上記カバー20の開口部21を介して水晶振動子50の電極を外部に露出する時間を一定の間隔にし、即ち、当該水晶振動子50に向かって飛翔する蒸発材料を間欠的に遮蔽し、もって、水晶振動子50の表面に付着する物質が一定膜厚に達する時間、即ち、その寿命を延長する。
【0026】
続いて、上記にその詳細な構成を説明したヘッダ部(即ち、水晶発振式膜厚モニタ)を、その回転駆動機構と共に、有機ELデバイスを製造するための薄膜形成装置内において取り付ける構造について、以下、添付の図4及び5を参照しながら詳細に説明する。なお、これら図4及び5からも明らかなように、本実施の形態では、水晶発振式膜厚モニタを構成する上記ヘッダ部を、その回転駆動機構と一体に構成し、水平方向に向かって長く伸びた、所謂、リニアソースと呼ばれるEL材料の蒸発源装置に取り付けた構造について説明する。
【0027】
まず、図4では、薄膜形成装置の真空室が符号100で示されており、この真空室100内では、内部に導入されてその表面に有機ELデバイスを製造するガラス板などの被蒸着基板110が、図示しない保持装置により、略直立した状態で保持されている。
【0028】
そして、添付の図5及び6からも明らかなように、EL材料の蒸発源装置200は、水平な一方向に向かって長く伸びた筐体(水冷シールドボックス)201を備え、その内部に、発光材料層(EL層)を形成するためのEL材料202を収容した坩堝203と、当該坩堝を所定の温度で加熱するための加熱装置(ヒータ)204とを備えている。そして、上記基板110との対向面(以下、「ガス放出面206」とも言う)には、複数の放出孔205、205…が、水平方向に均一に、又は、その両端部での距離が中央部よりも近接するように形成されている。なお、この蒸発源装置200は、図に実線の矢印で示すように、上下の方向に移動可能となっている。これによれば、当該蒸発源装置200が上下に移動すると共に、そのガス放出面206に形成した放出孔205、205…を通って、上記ヒータ204よる加熱で蒸発したガス状の有機EL材料が放出され、もって、対向する基板110の表面上に広く蒸着することとなる。
【0029】
なお、本実施例では、被蒸着基板110が直立し、他方、水平に長く伸びたEL材料の蒸発源装置200が、そのガス放出面206を当該基板の表面に近接した状態で、上下に移動しながら(図中の矢印を参照)、その表面に有機ELデバイスを製造するものとして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、被蒸着基板110を水平に保持し、他方、蒸発源装置200を当該基板の下面に近接した状態で水平方向に移動してもよい。なお、かかる場合には、上記複数の放出孔205、205…は、上記筐体201の基板110との対向面である、上面に形成されることとなる。
【0030】
そして、本発明では、上記にその詳細構成を述べた水晶発振式膜厚モニタ装置を構成するヘッダ部と、その回転駆動機構とを、一体に略箱状の筐体501内に収納すると共に、当該水晶発振式膜厚モニタ装置500を、当該ヘッダ部の頂部であるカバー20の開口部21が、上記蒸発源装置200の筐体201を構成する面のうち、上記複数の放出孔205、205…が形成された面、即ち、ガス放出面206に隣接する4つの面のうちの少なくとも一の面上に、当該ガス放出面206に対して所定の角度で望むよう取り付けられて配置されている。即ち、水晶発振式膜厚モニタ装置500は、図に実線で示すように、蒸発源装置200の筐体201の両端の側面に、又は、図に破線で示すように、その上下の面に取り付けられる。
【0031】
即ち、上述した水晶発振式膜厚モニタ装置500の、上記蒸発源装置200の筐体201への取り付け構造によれば、添付の図5にその詳細に示すように、ヘッダ部を構成する水晶振動子ホルダ10の外周部の窪んだ円錐面に形成された凹部12内に保持された水晶振動子50は、その表面から延長した垂線が、当該円盤状のホルダの回転軸に対して所定の角度θだけ傾斜するように配置されていることから、当該モニタ装置を、そのモニタ面(即ち、円盤状の水晶振動子ホルダ10の回転軸に垂直な面)の頂部(即ち、カバー20の開口部21が形成されている部分)がガス放出面206から基板110側に飛び出し、かつ、当該蒸発源装置200の筐体201の両端の側面、又は、上下の面に沿って、取り付ける。
【0032】
このようにして、水晶発振式膜厚モニタ装置500を蒸発源装置200の筐体201の両端の側面、又は、上下の面に沿って取り付け状態を添付の図5に示す。即ち、上記の構成によれば、図5に破線で示すように、上記蒸発源装置200を、リニアソースである蒸発源装置200のガス放出面206に対して、所定の角度θだけ傾斜して、簡単に、取り付けることが可能となる。
【0033】
なお、この図5にも明らかなように、ヘッダ部の頂部に位置して膜厚をモニタする水晶振動子50は、その表面から延長した垂線が、蒸発源装置200の筐体201の放出孔形成面202に形成された放出孔205に対して、所定の角度だけ傾斜するように設定されている。これによれば、図中において破線の円内に複数の矢印で示すような分布を有するリニアソースの当該放出孔205からのガス状の有機EL材料の放出量を、所定の割合で、正確にモニタすることが可能となる。
【0034】
加えて、本発明の水晶発振式膜厚モニタ装置500では、そのモニタ動作に伴い、水晶振動子50の表面に付着する物質が一定膜厚に達すると(即ち、寿命の経過)、上記水晶振動子ホルダ10を回転して新たな水晶板水晶振動子50に交換する(即ち、上記カバー20の開口部21に移動する)必要がある。ところで、当該水晶振動子ホルダ10を回転するための回転機構として、この図5にも明らかなように、プーリ16が当該ホルダから伸びた筒部の端部に取り付けられ、また、上記チョッパ板40を回転駆動するための回転シャフト30の他端にも、同様に、プーリ32が取り付けられている。そして、駆動部550には、その回転軸の先端に、やはり、プーリ551、552がそれぞれ取り付けられた電動モータ553、554が設けられ、これら2組のプーリ16と551、31と552の間にはベルト555、556が掛け回され、もって、上記水晶振動子ホルダ10、そして、チョッパ板40を、それぞれ、回転駆動する。
【0035】
即ち、図5において矢印や破線のブロックなどで示すように、ベルトや真空使用の電動モータなどを含む回転機構(上記の駆動部550を含む)は、前記水晶振動子ホルダ10の回転軸に対して垂直な方向に、即ち、リニアソースである蒸発源装置200の筐体201の両端の側面、又は、上下の面上に沿った方向に設けられており、かかる回転機構の構成によれば、当該ヘッダ部の頂部(即ち、開口部21を含むカバー20)だけをその筐体201を構成するガス放出面206から僅かに突出されるだけで、当該蒸発源装置200に取り付けることが出来ることから、蒸発したガス状の有機EL材料を放出して表面に蒸着する対向基板110に対し、蒸発源装置200の位置、即ち、当該放出孔の形成面(ガス放出面)206を、極めて近接して配置することが可能となる。即ち、図の「W」を極めて小さく設定することができる。これにより、ガス状有機EL材料の基板110上への蒸着効率を向上することが可能となり、その製造速度(効率)を上昇させることが出来ることとなる。
【0036】
なお、上記の説明では、上記水晶振動子ホルダ10やチョッパ板40を回転駆動するための回転機構の一例として、上述したようにプーリとベルトや電動モータなどを含む機構について述べたが、しかしながら、本発明はこれに限定されることなく、例えば、傘歯歯車などを利用することによって、筐体201の両端の側面、又は、上下の面上に沿った方向に設けられる回転機構を実現することも可能である。
【0037】
加えて、上記の説明では、本発明の水晶発振式膜厚モニタ装置500は、リニアソースである蒸発源装置200を構成する横長の筐体201の一部に固定して設置されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されることない。例えば、上記図4において、破線で示すように、上記横長の筐体201の上面又は下面に、一対のレールのような誘導部材600を設けておき、この誘導部材600に水晶発振式膜厚モニタ装置500を取り付けることも可能である。なお、この場合、ここでは図示しないが、例えば、電動モータやラックアンドピニオン機構などの移動機構を利用することによれば、誘導部材600上に水晶発振式膜厚モニタ装置500が自在に移動可能にすることが可能となる(図の破線の矢印を参照)。このことによれば、横長な蒸発源装置200の放出孔形成面(ガス放出面)206からのガス状有機EL材料の放出を、当該モニタ装置を移動させながら、又は、所望の位置に移動して、適宜、必要な膜圧のモニタを行うことが可能となる。
【0038】
そして、以上の種々述べた水晶発振式膜厚モニタ装置により検知された検知信号(即ち、膜厚モニタ信号)は、上記の図4にも示すように、上述した薄膜形成装置、特に、その蒸発源装置200を構成する要素である、例えば、CPU等により構成される制御装置700へ転送される。そして、この制御装置の内部においては、メモリ内に予め格納したソフトウェアに従って演算処理が実行され、もって、その内部に収容されたEL材料を加熱・蒸発するヒータ204へ供給する電流(電力)を制御する。このことによれば、ガス状有機EL材料の基板110上への蒸着量を、所望の値に、正確に制御することが可能となり、もって、表示性能に優れた有機ELデバイスを、効率よく、製造することが可能となる。また、上記の移動機構を構成する電動モータの回転により、誘導部材600上の水晶発振式膜厚モニタ装置500の位置を制御することも可能である。なお、ここでは詳述はしないが、上記制御装置700を構成するCPUにより、上記図3にも示した水晶振動子50と高周波発信器55とを含む共振回路の共振数端数をモニタすることも可能であり、このことによれば、容易に、EL材料の蒸気が水晶板水晶振動子50に付着した量を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
10…水晶振動子ホルダ、12…凹部、20…カバー(覆い部)、21…開口部、30…回転シャフト、40…チョッパ板、41…開口部(穴や切欠き)、50…水晶振動子、100…薄膜形成装置の真空室、110…被蒸着基板、200…EL材料の蒸発源装置、201…筐体、205…放出孔、206…ガス放出面…、500…水晶発振式膜厚モニタ装置、550…回転機構の駆動部、700…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水晶振動子と、前記複数の水晶振動子をその外周端に沿って保持する円盤状の水晶振動子ホルダと、前記水晶振動子ホルダの表面を覆い、かつ、当該ホルダに保持された複数の水晶振動子の一つに対応した位置に開口部を設けたカバー部とを備えたヘッダ部と、
前記ヘッダ部の水晶振動子ホルダの裏面側に設けられ、前記水晶振動子を当該ホルダを一体に回転する回転機構と、
前記回転機構による前記水晶振動子ホルダの回転に伴って前記開口部からその表面の一部を外部に露出した一の水晶振動子の共振周波数を検出するための共振周波数検出手段とを備えた水晶発振式膜厚モニタ装置において、
前記ヘッダ部を構成する円盤状の水晶振動子ホルダの外周部を円錐状に窪ませ、もって、当該ホルダに保持された水晶振動子の表面から延長した垂線が、当該円盤状のホルダの回転軸に対して所定の角度だけ傾斜するようにすると共に、前記ホルダを回転する回転機構を、前記水晶振動子ホルダの回転軸に対して垂直に伸びた方向に設けたことを特徴とする水晶発振式膜厚モニタ装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載した水晶発振式膜厚モニタ装置において、前記カバー部も、その外周部を円錐状に窪ませたことを特徴とする水晶発振式膜厚モニタ装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載した水晶発振式膜厚モニタ装置であって、前記ヘッダ部は、更に、上記水晶振動子ホルダの表面側に同心上に設けられた円盤状の部材の一部に開口部を設けたチョッパ部を備えると共に、
前記回転機構は、前記チョッパ部を回転するための回転機構を更に備えていることを特徴とする水晶発振式膜厚モニタ装置。
【請求項4】
水平な一方向に向かって長く伸びた筐体の内部に、EL材料を収容した坩堝と、当該坩堝を所定の温度で加熱するための加熱手段とを備えると共に、その上面又はその一側面に、当該水平な一方向に沿って蒸発したEL材料を放出する孔を設けたEL材料の蒸発源装置であって、
更に、前記請求項1又は2に記載した水晶発振式膜厚モニタ装置を備えており、
当該水晶発振式膜厚モニタ装置は、前記筐体を構成する面のうち、前記蒸発したEL材料を放出する孔が形成された面に隣接する少なくとも一の面に、そのマスク部の開口部が当該放出孔が形成された面に対して所定の角度で対向するように突出して配置されると共に、その回転機構を前記隣接する面に取り付けて配置たことを特徴とする蒸発源装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載した蒸発源装置において、
前記水晶発振式膜厚モニタ装置は、当該モニタ装置が取り付けられた前記筐体の面上において、前記放出孔が形成された面に沿って移動可能であることを特徴とする蒸発源装置。
【請求項6】
前記請求項4に記載した蒸発源装置において、更に、
前記水晶発振式膜厚モニタ装置からの検出信号に基づいて前記坩堝を加熱する前記加熱手段へ供給する電力を制御する制御手段を備えたことを特徴とする蒸発源装置。
【請求項7】
真空室内において、水平な一方向に向かって長く伸びた筐体の内部に、EL材料を収容した坩堝と、当該坩堝を所定の温度で加熱するための加熱手段とを備えると共に、その上面又はその一側面に、当該水平な一方向に沿って蒸発したEL材料を放出する孔を設けたEL材料の蒸発源装置を備え、
前記真空室内に導入した基板の蒸着面を、前記筐体を構成する面のうち、前記蒸発したEL材料を放出する孔が形成された面に近接し、その位置を相対的に移動させながら、蒸発したEL材料の薄膜を当該基板の蒸着面に形成する薄膜形成装置において、
更に、前記請求項1又は2に記載した水晶発振式膜厚モニタ装置を備えており、
当該水晶発振式膜厚モニタ装置は、前記蒸発源装置の筐体を構成する面のうち、前記蒸発したEL材料を放出する孔が形成された面に隣接する少なくとも一の面に、そのマスク部の開口部が当該放出孔が形成された面に対して所定の角度で対向するように突出して配置されると共に、その回転機構を前記隣接する面に取り付けて配置ていことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載した薄膜形成装置において、更に、前記真空室内には、導入した前記基板の蒸着面を略垂直に保持する部材を備えると共に、前記蒸発源装置は、当該真空室内において上下方向に移動することを特徴とする薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169168(P2012−169168A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29730(P2011−29730)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】