説明

水溶性黒色色素

【課題】安価に得ることができ、安全で臭気がなく、その他合成着色料や酸化防止剤を必要とせず、食品、嗜好品、石鹸やシャンプーなどのトイレタリー・サニタリー品、化粧品、医薬部外品などを黒色に着色できるすぐれた水溶性黒色色素の提供。
【解決手段】糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣であるさとうきび由来の糖蜜類より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物に含有される水溶性黒色色素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さとうきび由来の糖蜜類である糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物に含有される水溶性黒色色素に関する。
本発明は、この水溶性黒色色素を食品、嗜好品、トイレタリー・サニタリー品、化粧品、医薬部外品、可食性インキなどの用途に使用することに関する。
本明細書において、糖蜜とは、さとうきび搾汁から遠心分離によって砂糖を除去して残った残渣のことをいい、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣とは、前記糖蜜を酵母によってアルコール発酵させた後、蒸留して得られる残渣のことをいい、黒糖アルコール発酵蒸留残渣とは、黒糖焼酎の製造で得られる蒸留残渣及びラム酒の製造で得られる蒸留残渣などのことをいう。そして糖蜜類とは、これら糖蜜、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣及び黒糖アルコール発酵蒸留残渣などのことをいう。
【背景技術】
【0002】
さとうきびの砂糖製造の副産物である糖蜜は、その利用範囲は限られており、いまだに糖蜜の利用は、飼料、肥料などの他、かりんとう、加工黒糖などの製品に限られているのが現状である。更に糖蜜や黒糖のアルコール発酵蒸留残渣も、その利用範囲は飼料、肥料などに限られているのが現状である。
さとうきび由来の糖蜜、または黒糖や糖蜜のアルコール発酵蒸留残渣には、多くの有用成分が含まれていることが解明されてきており、食品やトイレタリー・サニタリー品分野への高付加価値の利用研究が盛んに行われ始めている。
しかしながら、これらの利用方法に関するものは、糖蜜、または黒糖や糖蜜のアルコール発酵蒸留残渣を精製処理して、比較的低分子量の有用成分を得ることが主に検討されており、高分子からなる黒色成分を利用する検討は全く行われていない。
有用成分を得る例としては、糖蜜をアルコールなどの有機溶媒などで抽出することにより、着色成分を除去して得られるエキスを美白トイレタリー・サニタリー品に応用する方法、または、糖蜜を合成吸着剤のカラムに通液して着色成分を除去して得られるエキスを美白トイレタリー・サニタリー品に応用する方法が知られている(特許文献1)。
糖蜜中から種々の美白成分が確認されている(特許文献2〜5)。
甘蔗(さとうきび)由来の蒸留物(特許文献6)や甘蔗汁や製糖蜜を合成吸着剤で処理しエタノール-水系の溶媒で溶出させて得られる消臭成分(特許文献7,8)などが知られている。
糖蜜アルコール発酵蒸留残渣は、有機汚染度が極めて高く糖蜜由来の難生分解性の黒色成分が含んでおり、直接廃水にすることはできないためにその処理方法が検討されている。その処理方法として限外ろ過膜で処理した後オゾン処理などで脱色する排水処理方法が提案されている。限外ろ過膜で分離した黒色色素は抗酸化作用や各種生理活性作用を有し、機能性材料として利用できる可能性が示されているが、具体的な用途開発には至っていない(非特許文献1)。
【0003】
人々の生活において、色は視覚的な刺激として重要な役割を果たしており、特に食品やトイレタリー・サニタリー品においては重要である。これらの応用分野においては、色は美味しさや高級感に影響し、購買の喚起にも大きな影響を与えている。特に黒色の着色は高級感のある製品や強烈な印象を与える製品を開発するために重要な課題である。
食品の着色や食品へ直接印刷する可食性インキにおいて黒色色素は重要である。これらの食品や可食性インキに用いられる黒色系食品着色料は安全性が確認されているものであり、これらの黒色系食品着色料としては、モンゴウイカなどのイカ墨色素、こんにゃく、黒ゴマ、黒パン、黒キクラゲ、海草、黒もち米色素、骨炭色素、木炭、竹炭などの食品素材の他、食品添加物からなる銅クロロフィリンナトリウム、クチナシ色素、食用赤色色素、食用青色色素、食用黄色色素などからなる配合黒色色素が挙げられる。
これらの黒色色素のうち、水不溶性の竹炭、木炭などは、粒径10μm以下に粉砕しなければならないという問題があり、且つ黒色系着色剤として十分な効果が得られないという問題があった。
水溶性の食用色素は、黒色に調製するために種々の赤色、青色、黄色の色素を配合しなければならないという問題があり、且つ使用する色素では合成着色料は好まれていないという問題、及び色調の安定化のために有機酸、無機塩、酸化防止剤などを配合しなければならないという問題があった。
食品に使用される可食性インキの内、黒色色素は、他の色よりも使用される頻度が高く、文字の読みやすさやその色合いが求められており、黒色色素としては、耐熱性、耐光性に優れるイカスミ色素が知られている(特許文献9)。
しかしながら、ユーメラニンからなるイカスミ色素は耐熱性、耐光性に優れているが水に溶解しないという問題がある。魚臭の除去のためにアルコールなどで精製する必要があるが、精製しても長期保存においては特有の臭気が発生するためにトイレタリー・サニタリー品などには使用できないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−103012号公報
【特許文献2】特開平05−310547号公報
【特許文献3】特開平07−330574号公報
【特許文献4】特開2006−028077号公報
【特許文献5】特開2006−022070号公報
【特許文献6】特開2001-87365号公報
【特許文献7】特開平10−151182号公報
【特許文献8】特開2006−231080号公報
【特許文献9】特開2009−24065号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】黒色色素の膜分離等に関する研究開発、沖縄県工業技術センター研究報告書、第8号、25頁〜31頁、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、さとうきび由来の糖蜜類である糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物が、水溶性の黒色色素として非常に優れた特性を有しており、しかも経済的に安価に得られることを見出した。
【0007】
従って、本発明の目的は、食品、嗜好品、石鹸やシャンプーなどのトイレタリー・サニタリー品、化粧品、医薬部外品などを黒色に着色できるすぐれた水溶性黒色色素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、さとうきび由来の糖蜜類より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物に含有されることを特徴とする水溶性黒色色素に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記さとうきび由来の糖蜜類が、糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣であることを特徴とする請求項1記載の水溶性黒色色素に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の水溶性黒色色素を含有することを特徴とする可食性インキ、食品、化粧品、又はトイレタリー・サニタリー品に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記水溶性黒色色素を0.01〜20重量%含有することを特徴とする請求項3記載の可食性インキ、食品、化粧品、又はトイレタリー・サニタリー品に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、水溶性黒色色素がさとうきび由来の糖蜜類より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物に含有されていることにより、安全で、臭気がなく、合成着色料や酸化防止剤を必要とせずに黒色系着色剤として十分な効果がある水溶性黒色色素を容易に得ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、水溶性黒色色素がさとうきび由来の糖蜜類の糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣に含有されていることにより、安全で、臭気がなく、合成着色料や酸化防止剤を必要とせずに黒色系着色剤として十分な効果がある水溶性黒色色素を容易に得ることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2に記載の水溶性黒色色素を含有する可食性インキ、食品又はトイレタリー・サニタリー品であることにより、安全で、臭気がなく、合成着色料や酸化防止剤を必要とせずに黒色系着色剤として十分な効果がある水溶性黒色色素を含有する可食性インキ、食品、化粧品、又はトイレタリー・サニタリー品を得ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、前記水溶性黒色色素を0.01〜20重量%含有することにより、安全で、臭気がなく、合成着色料や酸化防止剤を必要とせずに黒色系着色剤としてより十分な効果がある水溶性黒色色素を含有する、経済的に優れた可食性インキ、食品、化粧品、又はトイレタリー・サニタリー品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に用いられるさとうきび由来の糖蜜類である糖蜜とは、さとうきびの搾汁から砂糖を製造する工程において、遠心分離によって砂糖を除去して残った残渣であり、例えば、原糖製造工場における一番白下、二番白下、製糖廃蜜、および精製糖製造工場における洗糖蜜、ブラウンリカー、製糖廃蜜などが挙げられる。特に製糖廃蜜とは、さとうきびの搾汁から砂糖の大部分を除去して残った糖蜜部分であり、製糖工場で最終的に得られるものであり、経済的に砂糖を回収できない粘稠な液体である。本発明に用いられる糖蜜の代表的なものは、一般に水分15〜25%、糖分35〜50%、塩類15〜25%、その他にポリフェノール、たんぱく質、有機酸などから構成されている。
【0017】
本発明に用いられるさとうきび由来の糖蜜類である糖蜜アルコール発酵蒸留残渣とは、前記の糖蜜を酵母によってアルコール発酵させた後、発酵液を蒸留して得られる残渣である。
本発明に用いられるさとうきび由来の糖蜜類である黒糖アルコール発酵蒸留残渣とは、黒糖焼酎の製造で得られる蒸留残渣、ラム酒の製造で得られる蒸留残渣などである。
本発明のさとうきび由来の黒糖アルコール発酵蒸留残渣に使用される黒糖とは、さとうきびの搾汁を水分約5%まで濃縮して得られる黒褐色の固体、ブロックまたは粉状の濃縮物であり、前記の糖蜜と白砂糖などの原料糖と加熱混合して得られる加工黒糖、再生糖などがある。
ラム酒の製造に用いられる原料には、前記記載の糖蜜、黒糖、加工黒糖、再生糖などが挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる糖蜜アルコール発酵蒸留残渣または黒糖アルコール発酵蒸留残渣は、アルコール発酵酵母を分離したもの、また分離せずに酵母を含有している固体または液体であってもよい。
本発明に用いられる糖蜜アルコール発酵蒸留残渣または黒糖アルコール発酵蒸留残渣で酵母を分離した代表的な液体のものは、一般に水分65〜75%、糖分15〜25%、塩類3〜10%、その他にポリフェノール、たんぱく質、有機酸などから構成されている。乾燥物のものは、糖分50〜65%、塩類15〜25%、その他にポリフェノール、たんぱく質、有機酸、水分などから構成されている。
【0019】
本発明の水溶性黒色色素は、さとうきび由来の糖蜜類である糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣より得られ、分子量は1000以上である。
本発明の水溶性黒色色素は、これに限定されるものではないが、さとうきび由来の糖蜜類である糖蜜、または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣、または黒糖アルコール発酵蒸留残渣を分離膜で処理した膜不透過液より得ることができる。
本発明で用いられる分離膜は、分画分子量1000以上のものが好ましく、より好ましくは分画分子量5000以上の限外ろ過膜のものが望ましい。更に好ましくは分画分子量1万以上のものが望ましく、分画分子量1万から10万のものを使用することが望ましい。分画分子量1000以下のナノろ過膜や逆浸透膜による処理で得られる膜不透過液は、黒色色素以外の物質を多く含むために黒色にするために添加量が多くなる問題があり、更に効率的に得られないために好ましくない。限外ろ過膜などの分離膜としては、金属、セラミック、プラスチックなどのフィルタ部材に装着した管状のろ過膜装置が通常使用される。膜構造や膜材質についてはいろいろなものがあるが特定するものではない。使用温度が40℃以上に耐えられる仕様の膜が、ろ過能力や雑菌による汚染を考慮すると好ましい。
【0020】
本発明で用いられる糖蜜、または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣、または黒糖アルコール発酵蒸留残渣は、分離膜で処理する前に異物除去の目的でろ過することが好ましい。ろ過の方法としては、特に限定されないが、食品工業で広く用いられているケイソウ土ろ過、スクリーンろ過、精密ろ過膜によるろ過、分画分子量50万以上の限外ろ過法などが挙げられる。又、ろ過による方法の他に遠心分離によって異物を除去する方法もある。
【0021】
本発明の分画分子量1000以上の分離膜で処理することによって得られる膜不透過液に含まれる黒色色素は、主に分子量2万から30万の水溶性物質で構成され、メイラード反応による糖-たんぱく質からなる高分子のアミノカルボニル化合物と糖-たんぱく質-ポリフェノールの高分子複合化合物などと推定される。
一方、分画分子量1000以下の分離膜で処理することによって得られる膜透過液は、主に着色していない分子量1000以下のポリフェノール、糖分、塩類、有機酸、アミノ酸などから構成されていると推定されるため好ましくない。
【0022】
本発明における色相は、JIS慣用色名(JIS Z 8102 : 2001 物体色の色名)に従って記載しており、本発明の水溶性黒色色素の黒色とは、JIS慣用色名で、焦茶、鉄色、濃藍、紺青、紺色、勝色、鉄紺、紫紺、すす(煤)竹色、黒茶、墨、黒、鉄黒、バーガンディー、チョコレート、セピア、ボトルグリーン、ミッドナイトブルー、ネービーブルー、チャコールグレイ、ランプブラック、ブラックに定められた色である。
【0023】
本発明の水溶性黒色色素は、従来から使用されている色素成分、例えば、イカ墨色素、こんにゃく、黒ゴマ、黒パン、黒キクラゲ、海草、黒もち米色素、骨炭色素、木炭、竹炭、銅クロロフィリンナトリウム、クチナシ色素、食用赤色色素、食用青色色素、食用黄色色素などを配合して黒色系色素として使用することができる。これらの色素成分の配合量は特に限定されるものではない。
【0024】
本発明の水溶性黒色色素は、種々の製品を黒色に着色する色素として使用でき、固体、液体、粉体などの種々の形態の製品化が可能であり、可食性インキ、食品、化粧品、又はトイレタリー・サニタリー品などに含有させることができる。
本発明の水溶性黒色色素を含有する可食性インキは、クッキー、餅、饅頭、煎餅、マシュマロ、ドラ焼き、ゴーフレット、卵殻などの食品に使用される可食性インキとして使用され、ボールペン、マーカーなどの筆記用インキとして使用することもできる。
本発明の可食性インキの調製には、従来から使用されているインキ粘度の調整剤、軟化剤、分散剤、呈味剤、香料などを配合することができる。これら調整剤、軟化剤、分散剤、呈味剤、香料などの配合量は特に限定されるものではない。
本発明の水溶性黒色色素を含有する食品としては、菓子類、清涼飲料、乳飲料、機能性食品、調味料などが挙げられ、本発明の水溶性黒色色素を含有するトイレタリー・サニタリー品としては、石鹸、洗顔クリーム、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアケアーシャンプ、洗剤、歯磨製品、入浴剤などが挙げられる。
本発明の水溶性黒色色素は、他に嗜好品、化粧品、ペットフードなどの飼料、口腔清涼剤、軟膏などの医薬品・医薬部外品にも含有させることができる。
これらの製品は、本発明品を添加する以外は通常と同様の方法で調製される。
【0025】
本発明の水溶性黒色色素は、可食性インキ、食品、トイレタリー・サニタリー品、嗜好品、化粧品、飼料、医薬品・医薬部外品などに対して0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%を配合する。0.01重量%未満では本発明の黒色の着色効果が得られず、20重量%を超える場合は黒色の着色効果の増加は望めず経済的にも適当でない。
【0026】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は当該実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1 水溶性黒色色素の調製−1
水分20重量%、糖分45重量%、塩類20重量%、その他(ポリフェノール、有機酸、蛋白質など)15重量%からなる黒色の種子島産糖蜜(新光糖業株式会社製)を用いて、下記の水溶性黒色色素を調製した。
種子島産糖蜜1kgに水4Lを加え、80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。その後、分画分子量2万の限界ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、NADIRスパイラル型モジュール、型番:UP020、膜材質:ポリエーテルサルホン)を用いて、水を補給しながら限外ろ過を実施して膜不透過液を2.1L得た。この膜不透過液を減圧濃縮して、臭気がなく黒色の粉末95gを得た。
【0028】
実施例2 水溶性黒色色素の調製−2
糖分18重量%、塩類6重量%、水分70重量%、その他(ポリフェノール、有機酸、蛋白質など)6重量%からなる黒色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣の液体品(日本アルコール産業株式会社製)を用いて、下記の膜不透過液からなる水溶性黒色色素を調製した。
糖蜜アルコール発酵蒸留残渣の液体品5Lを80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。その後、分画分子量1000に相当するナノろ過膜(コーク社製、スパイラル型モジュール、型番:MPS−36)で、水を補給しながらナノろ過膜処理を実施して膜不透過液を2.5L得た。この膜不透過液を減圧濃縮して、臭気がなく黒色の粉末450gを得た。
【0029】
実施例3 水溶性黒色色素の調製−3
黒糖アルコール発酵蒸留残渣の液体品(奄美大島産)を固形分30%になるように水を加えて5Lに調製し、80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。その後、分画分子量3万の限界ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、NADIRスパイラル型モジュール、型番:UP030、膜材質:ポリエーテルサルホン)で限外ろ過を実施して膜不透過液を1.8L得た。この膜不透過液を減圧濃縮して、臭気がなく黒色の粉末210gを得た。
【0030】
実施例4 化粧品の調製
本発明の黒色粉末を含有する化粧品の処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
(処方1:パック)
ポリビニルアルコール 15.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0
プロピレングリコール 3.0
エタノール 10.0
実施例1の黒色粉末 0.01
香料・防腐剤 適量
精製水 全量 100
実施例1の黒色粉末は精製水に溶解した。定法にて調製したパックは黒色であった。
【0031】
(処方2:化粧石鹸)
脂肪酸Na石鹸生地 60
砂糖 10
グリセリン 10
実施例2の黒色粉末 20
実施例2の黒色粉末は精製水に溶解した。定法にて調製した化粧石鹸は黒色であった。
【0032】
(処方3:ボディシャンプー)
脂肪酸K石鹸 20
ラウロイルジエタノールアミド 5
グリセリン 10
精製水 62
実施例3の黒色の粉末 3
実施例3の黒色粉末は精製水に溶解した。定法にて調製したボディシャンプーは黒色であった。
【0033】
(処方4:ボディシャンプー)
脂肪酸K石鹸 20
ラウロイルジエタノールアミド 5
グリセリン 10
精製水 62
実施例1の黒色の粉末 2
実施例2の黒色の粉末 1
実施例1および2の黒色粉末は精製水に溶解した。定法にて調製したボディシャンプーは黒色であった。
【0034】
(処方5:ボディシャンプー)
脂肪酸K石鹸 20
ラウロイルジエタノールアミド 5
グリセリン 10
精製水 62
実施例1の黒色の粉末 1
実施例3の黒色の粉末 2
実施例1および3の黒色粉末は精製水に溶解した。定法にて調製したボディシャンプーは黒色であった。
【0035】
(処方6:ボディシャンプー)
脂肪酸K石鹸 20
ラウロイルジエタノールアミド 5
グリセリン 10
精製水 62
実施例1の黒色の粉末 1
実施例2の黒色の粉末 1
実施例3の黒色の粉末 1
実施例1、2および3の黒色粉末は精製水に溶解した。定法にて調製したボディシャンプーは黒色であった。
【0036】
実施例5 食品の調製
本発明の黒色粉末を含有する食品の処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
(処方7:キャンディー)
砂糖 49.5
水飴 40.0
酸味料 0.5
実施例1の黒色粉末 5.0
水 5.0
実施例1の黒色粉末は水に溶解した。定法にて調製したキャンディーは黒色であった。
【0037】
(処方8:飲料)
果糖ぶどう糖液 12.0
クエン酸 0.2
実施例2の黒色粉末 1.0
水 86.8
実施例2の黒色粉末は水に溶解した。定法にて調製した飲料は黒色透明液であった。
【0038】
実施例6 可食性インキの調製
本発明の黒色粉末を含有する可食性インキの処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
(処方9:可食性インキ)
蒸留水 50
エチルアルコール 20
グリセリン 10
ポリグリセリン脂肪酸エステル 10
実施例3の黒色粉末 10
各材料を混合した後、ディスパーで見かけ上均一になるまで撹拌した。実施例3の黒色粉末は蒸留水に溶解した。更にスーパーミキサーで均一に分散混合させた。ポアサイズ1ミクロンの濾紙でろ過して黒色の印刷用の可食性インキを得た。
【0039】
比較例1 膜透過液の粉末の調製−1
実施例1において、種子島産糖蜜水溶液の分画分子量2万の限界ろ過膜の処理で得られた膜透過液を減圧濃縮して褐色の粉末701gを得た。この発明で定義する黒色の粉末を得ることはできなかった。
【0040】
比較例2 膜透過液の粉末の調製−2
実施例2において、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣水溶液のナノろ過膜の処理で得られた膜透過液を減圧濃縮して黄色の粉末1045gを得た。黒色の粉末を得ることはできなかった。
【0041】
比較例3 膜透過液の粉末の調製−3
実施例3において、黒糖アルコール発酵蒸留残渣水溶液の分画分子量3万の限界ろ過膜処理で得られた膜透過液を減圧濃縮して褐色の粉末1285gを得た。黒色の粉末を得ることはできなかった。
【0042】
比較例4 化粧品の調製
比較例で得られた粉末を含有する化粧品の処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
(比較処方1:パック)
ポリビニルアルコール 15.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0
プロピレングリコール 3.0
エタノール 10.0
種子島産糖蜜 0.01
香料・防腐剤 適量
精製水 全量 100
定法にて調製したパックは黄褐色であり、黒色のパックを得ることはできなかった。
【0043】
(比較処方2:パック)
ポリビニルアルコール 15.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0
プロピレングリコール 3.0
エタノール 10.0
比較例1の褐色粉末 0.1
香料・防腐剤 適量
精製水 全量 100
定法にて調製したパックは淡黄色であり、黒色のパックを得ることはできなかった。
【0044】
(比較処方3:化粧石鹸)
脂肪酸Na石鹸生地 70
砂糖 10
グリセリン 10
比較例2の黄色粉末 10
定法にて調製した化粧石鹸は淡黄色であり、黒色の化粧石鹸を得ることはできなかった。
【0045】
(比較処方4:ボディシャンプー)
脂肪酸K石鹸 20
ラウロイルジエタノールアミド 5
グリセリン 10
精製水 62
比較例3の褐色粉末 3
定法にて調製したボディシャンプーは黄色であり、黒色のボディシャンプーを得ることはできなかった。
【0046】
比較例5 食品の調製
比較例で得られた粉末を含有する食品の処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
(比較処方5:キャンディー)
砂糖 49.5
水飴 40.0
酸味料 0.5
比較例2の粉末 5.0
水 5.0
得られたキャンディーは淡黄色であり、黒色のキャンディーを得ることはできなかった。
【0047】
(比較処方6:飲料)
果糖ぶどう糖液 12.0
クエン酸 0.2
比較例3の粉末 1.0
水 86.8
得られた飲料は黄色の透明液であり、黒色の飲料を得ることはできなかった。
【0048】
(比較処方7:飲料)
果糖ぶどう糖液 12.0
クエン酸 0.2
竹炭(粒径10μm) 1.0
水 86.8
定法にて調製した飲料は黒褐色の不透明液であり、翌日には竹炭の沈殿が見られ飲料として不適であった。
【0049】
比較例6 可食性インキの調製
比較例3の褐色粉末を含有する可食性インキの処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
(比較処方8:可食性インキ)
蒸留水 50
エチルアルコール 20
グリセリン 10
ポリグリセリン脂肪酸エステル 10
比較例3の褐色粉末 10
各材料を混合した後、ディスパーで見かけ上均一になるまで撹拌した。更にスーパーミキサーで均一に分散混合させた。ポアサイズ1ミクロンの濾紙でろ過して得られた印刷用の可食性インキは黄色であり、黒色の可食性インキを得ることはできなかった。
【0050】
本発明のさとうきび由来の糖蜜類である糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物は、水溶性の黒色色素としてすぐれた着色効果を有することが明らかである。本発明の黒色の糖蜜分画物を水溶性の黒色色素として、食品、嗜好品、化粧品、トイレタリー・サニタリー品、医薬部外品、可食性インキなどの用途に使用することによって、黒色の良好な着色効果を有する製品を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のさとうきび由来の糖類である糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物は、すぐれた着色効果を有する水溶性の黒色色素として黒色の製品に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
さとうきび由来の糖蜜類より得られる分子量1000以上の糖蜜分画物に含有されることを特徴とする水溶性黒色色素。
【請求項2】
前記さとうきび由来の糖蜜類が、糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣であることを特徴とする請求項1記載の水溶性黒色色素。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水溶性黒色色素を含有することを特徴とする可食性インキ、食品、化粧品又はトイレタリー・サニタリー品。
【請求項4】
前記水溶性黒色色素を0.01〜20重量%含有することを特徴とする請求項3記載の可食性インキ、食品、化粧品又はトイレタリー・サニタリー品。

【公開番号】特開2012−219228(P2012−219228A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88579(P2011−88579)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(511046265)
【出願人】(503186560)株式会社ベスビオ (9)
【出願人】(397019287)コスメテックスローランド株式会社 (13)
【Fターム(参考)】