説明

水滅菌装置及び水滅菌方法

【課題】装置構成が簡易で、水が流通している場合にのみプラズマによる滅菌作用を発現して流水中の雑菌を死滅させることができると共に、高いエネルギー効率を実現することができる水滅菌装置を提供する。
【解決手段】水の流路21内に配置され、水流によって回転する水車22の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置23と、該発電装置23によって発電された電力を用いてプラズマを生成するプラズマ発生装置24とを有し、プラズマ発生装置24で生成したOラジカル及びOHラジカル又はその一方を用いて被処理水25に含まれている雑菌を死滅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて流水中の雑菌を死滅させる水滅菌装置及び水滅菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場・FPD製造工場をはじめ、各種製造工場、事業所、集合住宅等から排出される排水は、通常、下水処理場に送られ、例えば、沈殿槽で汚物等の固形物を沈殿除去し(物理的処理)、次いで、活性汚泥処理(生物的処理)等を行って水中の汚染物質を浄化した後、河川又は海洋に放流される。この場合、環境保護を図るために、通常、殺菌又は滅菌(以下、単に「滅菌」という。)用の薬剤、例えば塩素等は添加されていない。
【0003】
また、特定の用途に使用される水においては、滅菌用の薬剤を使用できない場合があり、例えば、半導体製造工場や食品工場で使用される純水及び超純水をはじめ、温泉施設における温泉水、病院等で使用される上水には、その用途又は嗜好に応じて滅菌剤が使用されないものがある。
【0004】
このように、使用目的によって滅菌処理が施されていない水が多岐にわたって使用されており、これらの水においては、貯留中に、又は貯水池から目的地まで送給する配管内で雑菌が繁殖することがあり、貯留時間が長い程、また貯水池から目的地までの送給距離が長い程、その傾向は大きくなる。
【0005】
一方、飲料水としての水道水は通常塩素等を用いて滅菌されるが、何らかの理由で塩素が添加されないか又は添加されてもその濃度が低下することによって雑菌が発生することがあり、特に、上水設備が十分でない国又は地方においては、水道水に雑菌が含まれているために飲料水として適さない場合もある。なお、雑菌とは、意に反して発生し増殖した微生物全般を指す。
【0006】
雑菌が発生、繁殖した水は、飲料水としての適格性に欠ける他、半導体やFPDの製造時における基板洗浄工程に適用されると残留異物の原因となることがある。また、冷却水として使用される場合には、配管の詰まりを生じる虞があり、河川、海洋等に放流される場合は、環境汚染の原因となることがある。また、雑菌が含まれた水を野菜や稲、樹木等の植物に与えると植物の育成が抑制される場合もある。従って、水中に含まれる雑菌を効率よく滅菌するための技術の開発が望まれている。
【0007】
そこで、従来から、雑菌を含む水に対してオゾン(O)や紫外線(UV)を照射して滅菌する滅菌処理が適用されていたが、オゾンや紫外線の滅菌作用はそれほど強くなく、大腸菌類は死滅させることができるものの、カビやウィルス等を死滅させることができないことが分かってきた。
【0008】
また、上水、純水等で繁殖した雑菌の分離に濾過フィルタを用いることも考えられる。濾過フィルタとしては、例えば、酢酸メチルの高分子からなる逆浸透膜が知られている。逆浸透膜は径が数nmの無数の貫通孔を有し、被処理水に圧力をかけて逆浸透膜を通過させる際、例えば、1個の差し渡しが約0.38nmの水分子は貫通孔を通過するものの、大きさが数十nmの汚染物質の分子や水和によって周囲に水分子が配位したイオンは通過させないので、水分子と雑菌等の汚染物質や塩分とを分離するのに有効である。しかしながら、濾過速度を上げることが難しく処理時間が長くかかる上に、高分子膜であるためにバクテリアによって腐食することがあり、また、目詰まりを生じやすいので寿命が短いという問題がある。
【0009】
このような現状に鑑み、近年、プラズマを利用した水滅菌技術が開発されるようになり、例えば、水中に円筒状の外側電極と、該外側電極と同軸状にその内部に設けられた芯状の内側電極とを有するプラズマ滅菌装置であって、外側電極と内側電極との間に電源を接続して、外側電極と内側電極との間で放電を誘発し、発生したプラズマを用いて水中の雑菌を死滅させるプラズマ滅菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−340454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来技術は、滅菌装置とは別途独立に構成された電力供給源が必要になって装置全体が大型化又は複雑になるという問題がある。また、一時的又は偶発的に水の供給を停止させる場合、その度に、電源を切断して滅菌作用を停止させる必要があり操作が煩雑になるばかりか、電源を切らない限りプラズマによる滅菌作用が発現され続けるので、電力の無駄が発生し易いという問題がある。
【0012】
本発明の課題は、装置構成が簡易で、水が流通している場合にのみプラズマによる滅菌作用を発現して流水中の雑菌を死滅させることができると共に、高いエネルギー効率を実現することができる水滅菌装置及び水滅菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1記載の水滅菌装置は、水の流路内に配置され、水流によって電力を発生する発電装置と、該発電装置で発電された電力を用いてプラズマを生成し、該生成したプラズマによって前記流路内を流れる水に含まれている雑菌を死滅させるプラズマ発生装置と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の水滅菌装置は、請求項1記載の水滅菌装置において、前記発電装置は、前記水流によって回転する水車を有し、該水車の運動エネルギーを電気エネルギーに変換することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の水滅菌装置は、請求項1又は2記載の水滅菌装置において、前記プラズマ発生装置は、2枚の電極から構成される平行平板電極を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の水滅菌装置は、請求項3記載の水滅菌装置において、前記平行平板電極を構成する前記電極の表面に、複数の突起部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の水滅菌装置は、請求項3又は4記載の水滅菌装置において、前記平行平板電極を構成する前記電極の表面は、ブラスト処理が施されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の水滅菌装置は、請求項3又は4記載の水滅菌装置において、前記平行平板電極を構成する前記電極の表面は、酸化タンタル若しくは酸化タンタルと白金の合金による溶射被膜が形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の水滅菌装置は、請求項6記載の水滅菌装置において、前記酸化タンタル若しくは酸化タンタルと白金との合金の溶射によって前記突起部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の水滅菌装置は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水滅菌装置において、前記プラズマ発生装置のプラズマ発生領域にプラズマ生成ガスを導入する気体導入部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項9記載の水滅菌装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水滅菌装置において、前記発電装置で発電された電力を蓄える蓄電装置を有することを特徴とする。
【0022】
請求項10記載の水滅菌装置は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水滅菌装置において、前記水の流路は、水を供給又は排出する配管であることを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するために、請求項11記載の容器型の水滅菌装置は、水を収容する容器と、該容器内に設けられた発電装置と、該発電装置で発電された電力を用いてプラズマを生成し、生成したプラズマによって前記容器内の水に含まれている雑菌を死滅させるプラズマ発生装置と、を備え、前記容器が振とうされる際に前記容器内において発生する水流を利用して前記発電装置が、前記プラズマ発生装置に供給するための電力を発生することを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決するために、請求項12記載の水滅菌方法は、流路内を流れる水流によって電力を発生させる発電ステップと、前記発電ステップで発電した電力を用いてプラズマを生成するプラズマ生成ステップと、前記プラズマ生成ステップで生成したプラズマを用いて前記流路内を流れる水に含まれている雑菌を死滅させる滅菌ステップと、を有することを特徴とする。
【0025】
請求項13記載の水滅菌方法は、請求項12記載の水滅菌方法において、前記滅菌ステップは、前記プラズマ生成ステップにおいて前記流路内を流れる水を解離して生成したOラジカル及びOHラジカル又はその一方を用いて前記流路内を流れる水に含まれている雑菌を死滅させることを特徴とする。
【0026】
請求項14記載の水滅菌方法は、請求項13記載の水滅菌方法において、前記プラズマ生成ステップにおいて、前記流路内を流れる水にプラズマ生成ガスを導入して気体プラズマを発生させ、該気体プラズマを用いて前記流路内を流れる水を解離させることを特徴とする。
【0027】
請求項15記載の水滅菌方法は、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の水滅菌方法において、前記流路は、水が供給又は排出される配管であることを特徴とする。
【0028】
上記課題を解決するために、請求項16記載の水滅菌方法は、発電装置及びプラズマ発生装置を備えた容器に水を注入する注水ステップと、前記水が注入された前記容器を振とうする振とうステップと、該振とうステップで前記容器内において発生した水流を利用して前記発電装置で電力を発生させる発電ステップと、該発電ステップで発電された電力を用いて前記プラズマ発生装置でプラズマを生成するプラズマ生成ステップと、該プラズマ生成ステップで生成したプラズマを用いて前記容器内の水に含まれている雑菌を死滅させる滅菌ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、流路内を流れる水流を利用して発電した電力を用いてプラズマを生成し、生成したプラズマを用いて流路内を流れる水に含まれている雑菌を死滅させるので、装置構成が簡易で、水が流通している場合にのみプラズマによる滅菌作用を発現して流水中の雑菌を死滅させることができると共に、高いエネルギー効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の水滅菌装置が適用される下水処理場の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る水滅菌装置であって、平行平板電極を備えた容量結合型プラズマ発生装置を適用した水滅菌装置の構成を示す模式図である。
【図3】被処理水中の水分子を解離させて生成したOラジカル及びOHラジカルを用いて被処理水に含まれる雑菌を死滅させるメカニズムを示す概念図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の変形例の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る水滅菌装置であって、水の流路の外周部に巻回されたコイルを有する誘導結合型プラズマ発生装置を適用した水滅菌装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る水滅菌装置であって、水の流路に接続されたガス供給配管に巻回されたコイルを有する誘導結合型のプラズマ発生装置を備えた水滅菌装置の構成を示す模式図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る容器型の水滅菌装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
本発明に係る水滅菌装置は、水中に含まれる雑菌を死滅させるものであり、その適用施設は、特に限定されるものではないが、代表的な適用施設として下水処理場が挙げられる。
【0033】
図1は、本発明の水滅菌装置が適用される下水処理場の構成を示すブロック図である。
【0034】
図1において、この下水処理場10は、被処理水としての生活排水、工場排水、雨水等を受け入れる沈砂池11と、該沈砂池11の後流に順次設けられた最初沈殿池12、反応タンク(曝気槽)13及び処理後の水に含まれる汚泥等の固形物を分離する最終沈殿池14と、最終沈殿池14の出口水を河川等に放流する放流配管15とから主として構成されている。
【0035】
生活配水、工場排水、雨水等の被処理水は、先ず、沈砂池11に流入し、ここで、比重の大きい砂等の固形物が沈降分離されると共に、比較的大きなゴミがスクリーンや網によって分離、回収される。沈砂池11の出口液は、後流の最初沈殿池12に流入し、ここで、被処理水を穏やかに流通させて比較的小さいゴミを沈降分離させ、上澄み水のみを被処理水として後流の反応タンク13に流入させる。
【0036】
反応タンク13に流入した被処理水は、例えばエアレーションを伴う活性汚泥を用いた生物的処理が施されて汚染物質が浄化された後、後流の最終沈殿池14に送られる。最終沈殿池14に流入した被処理水は、ゆっくりと時間をかけて汚泥等の固形物が沈降分離され、その後、処理後の水として放流配管15を介して、例えば河川に放流される。反応タンク13で発生した余剰の汚泥及び最終沈殿池14で分離された汚泥は、図示省略した汚泥処理装置に搬送して処理される。
【0037】
このような下水処理場10の出口水を河川等に放流する放流配管15として本発明に係る水滅菌装置が適用される。
【0038】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る水滅菌装置であって、平行平板電極を備えた容量結合型プラズマ発生装置を適用した水滅菌装置の構成を示す模式図である。この水滅菌装置は、被処理水の水流を利用して発電した電力を用いてプラズマを生成し、生成したプラズマによって被処理水に含まれる雑菌を死滅させる自己完結型の水滅菌装置である。
【0039】
図2において、水滅菌装置20は、下水処理場10の最終沈殿池14から流出した被処理水が流通する水供給配管21と、該水供給配管21内に配置されたプロペラ状の水車22を備え、該水車22の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置23と、水車22における被処理水25の流通方向に関する後流に配置されたプラズマ発生装置24とから主として構成されている。
【0040】
発電装置23の一部としての水車22は、水供給配管21における被処理水25の流通方向に沿った中心軸を回転の中心として水流によって回転する。水車22の運動エネルギーは発電装置23において電気エネルギーに変換される。発電装置23は、例えば直流発電装置であり、水車22の運動エネルギーを直流電力に変換してプラズマ発生装置24に供給する。
【0041】
プラズマ発生装置24は、容量結合プラズマ(CCP)装置であり、水供給配管21の対向する内壁面近傍に、被処理水25の流路を挟んで対向配置された2つの電極板(平行平板電極)24aを備えている。プラズマ発生装置24は、2つの電極板の間の水中に存在するバブル中の気体をプラズマ化させたり、あるいは水そのものに対し水中プラズマを発生させたりして、気体分子あるいは水分子を解離し、滅菌に必要なラジカルを発生させる。
【0042】
このような構成の水滅菌装置において、図1の下水処理場10の最終沈殿池14から流出した被処理水25は、水供給配管21内を流通して河川等に放流されるが、その水流によって水車22が回転する。水車22の回転エネルギーは発電装置23で電気エネルギーに変換されて、例えば直流電力が発生する。発生した直流電力はプラズマ発生装置24の平行平板型の電極板24aに印加される。電力が印加されたプラズマ発生装置24において、電極板24a相互間に放電が生じ、これによって水供給配管21内を流通する被処理水25の水分子を解離させてOラジカル及びOHラジカルを生成する。生成したOラジカル及びOHラジカルは、被処理水25に含まれる雑菌と接触、反応して該雑菌の細胞膜を破壊して死滅させる。
【0043】
本実施の形態によれば、被処理水25自身の水流を利用して発生した電力を用いてプラズマを生成し、生成したプラズマによって被処理水25中の雑菌を死滅させるので、プラズマ発生用の電源を別途準備する必要がなく、装置構成が簡易で、且つ自己完結型の水滅菌装置を実現することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、被処理水25の水流を発電源として利用しているので、滅菌処理が不要な非通水時には、電力が発電及び消費されない一方、滅菌処理が必要な通水時には、水流を利用して発電した電力を用いてプラズマを生成し、このプラズマを用いて被処理水25中の雑菌を効率よく死滅させることができる。従って、エネルギーの無駄をなくしてエネルギーの有効利用を図ることができる。
【0045】
本実施の形態において、プラズマによる被処理水25に含まれる雑菌を死滅させるメカニズムは、以下のように考えられる。
【0046】
図3は、被処理水中の水分子を解離させて生成したOラジカル及びOHラジカルを用いて被処理水に含まれる雑菌を死滅させるメカニズムを示す概念図である。
【0047】
水は放電という観点から考えた場合、導体という側面を持っているため、いわゆる絶縁破壊を伴っての放電が起きにくい。そこで、パルス状に高電圧を印加して一気に水分子を電離してプラズマを発生させるか、若しくは水中の気体をまずは電離し、これをトリガーとして放電を発展させてプラズマを発生する必要がある。図3において、いずれかの方法により水中にプラズマを発生すれば、プラズマ発生装置で生じる放電によって発生した電子は非常に高いエネルギーを有し、被処理水中の水分子と衝突してこれを解離させてOラジカルとOHラジカルを生成する。生成したOラジカル及びOHラジカルが被処理水に含まれる雑菌と接触し、化学反応によって雑菌を死滅させる。すなわち、例えば、酸化又は還元反応によって雑菌を有機物に分解する。このとき雑菌の分解によって生成したCOが放出される。
【0048】
本実施の形態は、塩素による滅菌処理を行うことのできない水に対して好適に適用することができるが、塩素処理を行っている水であっても、その効果が十分に発揮されていないような場合には、本実施の形態を適用することで滅菌効果を向上させることができる。例えば、本実施の形態において、滅菌作用を有する塩素ガスが添加された水、例えば、水道水を被処理水として適用する場合は、塩素による滅菌作用を促進してより効果的に雑菌を死滅させることができる。その理由として、例えば、塩素分子が放電により解離されてより反応性の高い塩素ラジカルが発生し、滅菌作用が向上するものと考えられる。
【0049】
本実施の形態において、発電装置23の水車22の形態は、特に限定されるものではなく、プロペラ型、平車型、玉車型等いずれの形状であってもよい。また、水車の回転軸は、水供給配管21の水流通方向に沿った中心軸と重なる軸であってもよく、また、水供給配管21の水流通方向に沿った中心軸に垂直な軸を回転軸として回転する水車であってもよい。
【0050】
本実施の形態において、プラズマ発生装置24の一対の電極板24aとして、それぞれ電極板の面上に複数の突起部を有し、各突起部がそれぞれ対向するように配置された電極板を用いてもよい。これによって、放電効率が向上し、プラズマを効率よく生成させることができる。この場合、櫛歯状の電極を用いてそれぞれの突起部を対向させてもよいが、対向面積が小さくなるため、処理面積の観点から、櫛歯状の電極を複数列並べておくことが好ましい。
【0051】
本実施の形態において、電極表面にサンドブラスト処理を施してもよく、また、酸化タンタルと白金をたとえばTaOx:Pt=95:5の混合比で混合したもの若しくは酸化タンタルのみを溶射してもよい。酸化タンタルや、酸化タンタルと白金との混合物を用いることにより、表面での滅菌効果を高めることができ、さらに、サンドブラストで電極表面の粗度を高めたり、溶射などにより電極表面を多孔質状にすることにより、表面積を高めて、水との接触を増加させることで処理効率を高めることができる。また、前述の電極面の複数の突起部を、上述の、酸化タンタルや、酸化タンタルと白金との混合物を溶射することにより形成してもよい。
【0052】
本実施の形態において、発電装置23で発電された電力を蓄える蓄電装置を設けてもよい。これによって、例えば、発電装置23(水車22を含む)を複数台設置し、プラズマ発生装置24で使用しきれない余剰の電力が発生した場合には、これを蓄電しておき、電力が不足した際に不足分を補充することができる。
【0053】
本実施の形態において、補助電源を設けてもよい。補助電源を設けることによって、プラズマ発生装置24で必要となる電力量が発電装置23から得られる電力だけでは不足する場合に、補助電源の電力を補充することができる。
【0054】
本実施の形態において、被処理水25が下水処理場からの放流水である場合について説明したが、被処理水25は特に限定されるものではなく、下水処理場からの放流水の他、ビル用水又はビルの排出水、温泉水、造水された上水、水道水、純水、超純水、イオン交換水、蒸留水、中水等であって、例えば長時間貯留されることによって又は遠い目的地まで給水されることによって雑菌が繁殖した水であってもよい。
【0055】
また、本実施の形態において、水滅菌装置を配管に適用する場合について説明したが、本発明に係る水滅菌装置が適用される水の流路は、配管に限定されるものではなく、上部が開放された溝若しくはこれに類するもの、又はそれ以外のものであっても水が流通して水流が発生するものであればよい。
【0056】
本実施の形態において、雑菌を死滅させるOラジカル及びOHラジカルは水分子が解離し、励起して生成したものであり、従来、一部の水の滅菌に用いられていた電子線や放射線等と比較して、人体及び自然環境に対して負荷が小さい。
【0057】
本実施の形態において、被処理水25中の雑菌を死滅させた処理後の水に対し、必要に応じて交流コロナ放電処理等を施し、雑菌を死滅させるためにプラズマを照射したことに起因して処理後の水に残留する電荷を除電することもできる。例えば、半導体製造工場やFPD製造工場などにおいてデバイスを製造する基板の洗浄処理を行う際、洗浄水が帯電している場合には、基板上のデバイスが絶縁破壊を起こし不良品を発生させることがある。従って洗浄水に用いる水が帯電していることは望ましくない。処理後の水に残留する電荷を除去することにより、このような悪影響を排除することができる。除電の方法は、特に限定されず、コロナ放電やその他の各種放電による電荷の除電に限らず、例えば接地された金属部材を接触させて電荷を除電する方法でもよい。
【0058】
本実施の形態においては、被処理水中でプラズマを生成させ、該プラズマによって被処理水自体を解離させてOラジカルやOHラジカルを発生させる方法について説明したが、プラズマ発生装置24のプラズマ生成領域である対向電極24a相互間にプラズマ生成ガスとして酸素、オゾン、あるいは目的によっては塩素又はこれらの混合ガスを供給して該混合ガスに起因するガス成分のプラズマを発生させ、該プラズマ中のOラジカルや塩素ラジカルによって被処理水中の雑菌を死滅させてもよく、該プラズマによって被処理水中の水分子を解離させてOラジカル及びOHラジカルを生成し、該Oラジカル及びOHラジカル又はその一方を用いて被処理水中の雑菌を死滅させるようにしてもよい。塩素ガスの使用においては、少量の塩素ガスは許容されるがそれだけでは滅菌をするには十分ではないような場合に、本実施の形態の適用が好ましい。
【0059】
図4は、図2の水滅菌装置の変形例の構成を示す図である。図4において、この水滅菌装置が図2の水滅菌装置と異なるところは、プラズマ発生装置24のプラズマ発生領域である平行平板電極24a相互間にプラズマ生成ガス27を供給する気体導入部26を設けた点である。本変形例において、プラズマ発生領域に導入するプラズマ生成ガスとしては、酸素ガス、塩素ガス、オゾンガス等が挙げられ、用途に基づいて決定される。
【0060】
プラズマ生成領域にガスを供給するガス供給部の構成は、特に限定されるものではないが、水供給配管21内を流通する被処理水25の水流による吸引力を利用して水供給配管21内にプラズマ生成ガスが導入され、被処理水25が流通しない停止時には、プラズマ生成ガスの導入及び被処理水25の漏洩を防止することができる一方向弁を適用することが好ましい。
【0061】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る水滅菌装置について説明する。
【0062】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る水滅菌装置であって、水の流路の外周部に巻回されたコイルを有する誘導結合型プラズマ発生装置を適用した水滅菌装置の構成を示す模式図である。この水滅菌装置は、配管内を流れる被処理水の水流を利用して電力を発生させ、発生した電力を用いて配管の表面に巻回したコイルによって配管内にプラズマを生成し、該プラズマによって配管内を流れる被処理水に含まれる雑菌を死滅させるものである。
【0063】
図5において、この水滅菌装置30は、円筒状の水供給配管31と、該水供給配管31内に設けられ、水の流通方向に沿った中心軸を中心に回転するプロペラ状の水車32を備え、該水車32の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置33と、該発電装置33から供給される電力によってプラズマを生成するコイルを備えたプラズマ発生装置34とから主として構成されている。
【0064】
このような構成の水滅菌装置30において、例えば下水処理場の放流水である被処理水35が流通して水供給配管31内に水流が発生すると、該水流によって水車32が回転する。水車32の回転エネルギーは発電装置33によって電気エネルギーに変換され、例えば交流電力が発生する。発生した交流電力はプラズマ発生装置34のコイルに印加され、誘導結合によって水供給配管31を流れる被処理水35中の水分子が解離し、Oラジカル及びOHラジカルを生成する。生成したOラジカル及びOHラジカル又はその一方が被処理水35に含まれる雑菌と反応してこれを死滅させる。雑菌が死滅した被処理水35は、処理後の水として水供給配管31を経て、例えば河川等に放流される。
【0065】
本実施の形態によれば、発電装置33から電力が印加されたプラズマ発生装置34が水供給配管31内を流通する被処理水35中の水分子を解離して効率よくOラジカル及びOHラジカルを生成し、該Oラジカル及びOHラジカル又はその一方によって被処理水35に含まれる雑菌をほぼ完全に死滅させることができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、水供給配管31を流れる被処理水35の水流によって発電した電力をプラズマ発生装置34に供給してプラズマを発生させるようにしたので、装置構成が簡素化され、且つエネルギーの有効利用を図ることができる。
【0067】
本実施の形態においても、プラズマ生成領域であるコイルが巻回された水供給配管31内に、プラズマ生成ガスとして酸素、オゾン、塩素などを供給して気体成分のプラズマを発生させ、発生した気体プラズマによって水分子を解離させてOラジカル及びOHラジカルを生成するようにしてもよい。
【0068】
なお、本実施の形態においては誘導結合プラズマ発生装置34のコイルを水供給配管31の外部表面に配置したが、コイルを水供給配管31の内部表面に配置させることもできる。
【0069】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0070】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る水滅菌装置であって、水供給配管に接続されたガス供給配管に巻回されたコイルを有する誘導結合型のプラズマ発生装置を備えた水滅菌装置の構成を示す模式図である。
【0071】
この水滅菌装置40が図5の水滅菌装置30と異なるところは、水分子を解離するためのプラズマを別に発生させる点であり、プラズマ発生装置34に代えて、例えば、窒素(N)ガス46をプラズマ生成ガスとして供給するガス配管47を設け、該ガス配管47の外周面に巻回したコイルを有するプラズマ発生装置44を適用した点である。
【0072】
本実施の形態によれば、プラズマ発生装置44によって、ガス配管47を介して供給される窒素ガス46のプラズマを生成し、生成したプラズマを、水供給配管41内を流れる被処理水45に照射して該被処理水45中の水分子を解離してOラジカル及びOHラジカルを生成し、該Oラジカル及びOHラジカル又はその一方を用いて被処理水45に含まれる雑菌を死滅させることができる。
【0073】
本実施の形態においても、装置構成の簡素化及びエネルギーの有効利用を図ることができる。
【0074】
なお、本実施の形態において、ガス配管47を介して供給されるプラズマ生成ガスとして、窒素の外、酸素、オゾン、塩素又はこれらの混合ガスなどを添加することができる。プラズマ生成ガスのガス種は、目的に応じて適宜選択される。
【0075】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0076】
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る容器型の水滅菌装置の構成を示す模式図である。この水滅菌装置は、ハンディータイプであり、主として、屋外で、雨水、中水等に含まれている雑菌を死滅させて飲料水として利用するために適用される。
【0077】
図7において、この水滅菌装置50は、容器としてのボトル本体51と、該ボトル本体51の中心軸51aを中心として回転するプロペラ状の水車52を備え、該水車52の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置53と、該発電装置53から印加される電力によってプラズマを生成するプラズマ発生装置54とから主として構成されており、プラズマ発生装置54は、互いに対向配置された2つの平行な電極板54aを備えている。
【0078】
このような構成のボトル型水滅菌装置における水の滅菌は、以下のように行われる。
【0079】
すなわち、先ず、ボトル本体51のキャップ56を外してボトル本体51内に被処理水55として、例えば、回収した雨水等から固形物等を分離、除去した水を注水、充填する。次に、被処理水55が充填されたボトル本体51を、例えばその中心軸51aに沿った方向に平行移動するように激しく振とうすると、ボトル本体51内で被処理水55が流動して水流が形成され、該水流によって水車52が回動する。
【0080】
水車52の運動エネルギーを発電装置53で電気エネルギーに変換し、得られた電力をプラズマ発生装置54の対向する電極板54aに印加し、これによって電極板54a相互間で放電を生じさせ、該放電によって被処理水55中の水分子を解離させてOラジカル及びOHラジカルを生成し、生成したOラジカル及びOHラジカル又はその一方を用いてボトル本体51内の被処理水55に含まれている雑菌を死滅させる。
【0081】
本実施の形態によれば、被処理水55が充填されたボトル本体51を振とうさせる際にボトル本体51内において発生する水流を利用して電力を発生させ、発生した電力を用いてプラズマを生成し、生成したプラズマによって被処理水55に含まれる雑菌を死滅させることができるので、雨水又は中水を滅菌して、例えば飲料水を生成することができる。従って、飲料水の確保が難しい発展途上国や、震災後の混乱時であっても容易に飲料水を確保することができる。
【0082】
なお、発展途上国においては、水道水を安心して飲用することができない国が少なくなく、このような国へ旅行する旅行者にとって、本容器型水滅菌装置は、極めて有用である。また、水道水の蛇口に本容器型水滅菌装置と同様の構成を有する装置を取り付けて、飲料水の浄化装置として適用することもできる。
【0083】
本実施の形態において、水流を利用して電力を発生する発電装置53に代えて、又はこれと併用して振とうによる振動を利用して電力を発生する発電装置を適用することもできる。
【0084】
以上、本発明を実施の形態を用いて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
10 下水処理場
20、30、40 水滅菌装置
21、31、41 水供給配管
22、32、42、52 水車
23、33、43、53 発電装置
24、34、44、54 プラズマ発生装置
25、35、45、55 被処理水
50 ボトル型水滅菌装置
51 ボトル本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流路内に配置され、水流によって電力を発生する発電装置と、
該発電装置で発電された電力を用いてプラズマを生成し、該生成したプラズマによって前記流路内を流れる水に含まれている雑菌を死滅させるプラズマ発生装置と、
を有することを特徴とする水滅菌装置。
【請求項2】
前記発電装置は、前記水流によって回転する水車を有し、該水車の運動エネルギーを電気エネルギーに変換することを特徴とする請求項1記載の水滅菌装置。
【請求項3】
前記プラズマ発生装置は、2枚の電極から構成される平行平板電極を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の水滅菌装置。
【請求項4】
前記平行平板電極を構成する前記電極の表面に、複数の突起部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の水滅菌装置。
【請求項5】
前記平行平板電極を構成する前記電極の表面は、ブラスト処理が施されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の水滅菌装置。
【請求項6】
前記平行平板電極を構成する前記電極の表面は、酸化タンタル若しくは酸化タンタルと白金の合金による溶射被膜が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の水滅菌装置。
【請求項7】
前記酸化タンタル若しくは酸化タンタルと白金との合金の溶射によって前記突起部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の水滅菌装置。
【請求項8】
前記プラズマ発生装置のプラズマ発生領域にプラズマ生成ガスを導入する気体導入部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水滅菌装置。
【請求項9】
前記発電装置で発電された電力を蓄える蓄電装置を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水滅菌装置。
【請求項10】
前記水の流路は、水を供給又は排出する配管であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水滅菌装置。
【請求項11】
水を収容する容器と、
該容器内に配置された発電装置と、
該発電装置で発電された電力を用いてプラズマを生成し、生成したプラズマによって前記容器内の水に含まれている雑菌を死滅させるプラズマ発生装置と、を備え、
前記容器が振とうされる際に前記容器内において発生する水流を利用して前記発電装置が、前記プラズマ発生装置に供給するための電力を発生することを特徴とする容器型水滅菌装置。
【請求項12】
流路内を流れる水流によって電力を発生させる発電ステップと、
前記発電ステップで発電した電力を用いてプラズマを生成するプラズマ生成ステップと、
前記プラズマ生成ステップで生成したプラズマを用いて前記流路内を流れる水に含まれている雑菌を死滅させる滅菌ステップと、
を有することを特徴とする水滅菌方法。
【請求項13】
前記滅菌ステップは、前記プラズマ生成ステップにおいて前記流路内を流れる水を解離して生成したOラジカル及びOHラジカル又はその一方を用いて前記流路内を流れる水に含まれている雑菌を死滅させることを特徴とする請求項12記載の水滅菌方法。
【請求項14】
前記プラズマ生成ステップにおいて、前記流路内を流れる水にプラズマ生成ガスを導入して気体プラズマを発生させ、該気体プラズマを用いて前記流路内を流れる水を解離させることを特徴とする請求項13記載の水滅菌方法。
【請求項15】
前記流路は、水が供給又は排出される配管であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の水滅菌方法。
【請求項16】
発電装置及びプラズマ発生装置を備えた容器に水を注入する注水ステップと、
前記水が注入された前記容器を振とうする振とうステップと、
該振とうステップで前記容器内において発生した水流を利用して前記発電装置で電力を発生させる発電ステップと、
該発電ステップで発電された電力を利用して前記プラズマ発生装置でプラズマを生成するプラズマ生成ステップと、
該プラズマ生成ステップで生成したプラズマを用いて前記容器内の水に含まれている雑菌を死滅させる滅菌ステップと、
を有することを特徴とする水滅菌方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−196621(P2012−196621A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62300(P2011−62300)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】