説明

汚染検知装置、汚染浄化システム、および、洗濯機

【課題】汚染をより正確に非破壊的に迅速に検知すること。
【解決手段】汚染検知装置(1)は、汚染状態の検出箇所に光を照射する光源(3)と、光源から照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出する受光部(4)と、汚染状態と汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量線記憶部(10)と、受光部で検出された光のスペクトルと検量線記憶部に記憶された検量線データとに基づいて、汚染状態を見積もる演算部(7)とを備える。好ましくは、汚染検知装置は、演算部で見積もられた汚染状態に基づいて、汚染を浄化する浄化装置(15)を制御して汚染を浄化させるフィードバック制御部(11)をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染検知装置、汚染浄化システム、および、洗濯機に関し、特に、汚染に対応することに適した汚染検知装置、汚染浄化システム、および、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機および冷蔵庫などの家電製品、ならびに、住居、倉庫、美術館、博物館、および、遺跡などの様々な建物、ならびに、食品および商品などの人間を取り巻く環境において、不衛生、腐敗、および、汚損、ならびに、劣化の重大な原因となるカビ類および微生物類の発生による汚染に対して、様々な対策が行われてきた。
【0003】
たとえば、定期的な除湿によって、カビの発生を防止したり成長を抑制させたりする装置として、1日1回、カビに対して一定時間の低湿度ショックを与えてカビの成長を抑制する空調機器(たとえば、特許文献1参照)があった。
【0004】
また、紫外線によってカビを減少・死滅させる機能を有する除湿機、浴室乾燥機、エアコンがあった。また、光触媒をコーティングしておいて定期的に光照射して滅菌する機能を持たせた冷蔵庫があった。
【0005】
また、一定の使用回数ごとにユーザに槽洗いコースの実施を促す機能を持たせた洗濯機(たとえば、特許文献2参照)があった。このように、さまざまな汚染防止方法および汚染対処方法が提案されている。これらは、使用時間または使用状況に応じて、汚染の防止または汚染に対する対策のタイミングを決定するものである。
【0006】
一方、環境を監視することで、汚染状態を推測して対処するものも、従来から提案されている。具体的には、測定対象の環境の温度や湿度を測定したデータから、カビの発生や汚染の速度を推定する方法(たとえば、特許文献3参照)があった。また、空調運転時のカビ等の発生具合を推定して効率よく除菌する空気調和装置(たとえば、特許文献4参照)があった。
【0007】
また、汚染状態を非破壊的に検知する方法が提案されている。たとえば、特許文献5には、特定の周波数の信号(光素子など)の減衰で、カビを検出する洗濯機が提案されている。回転槽を回転させると、内部の形状に従って反射信号が振幅するが、カビなどが発生すると、反射率が変わることを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−235214号公報
【特許文献2】特開2002−263392号公報
【特許文献3】特開平6−113886号公報
【特許文献4】特開2008−202843号公報
【特許文献5】特開平7−155491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1や特許文献2のように、従来提案されている、使用時間または使用状況によって判定して汚染防止または汚染対策をとるものは、汚染の発生状況に関わらず行われる。よって、汚染が軽度であるのに不必要に浄化を行うことで、電力、浄化液または浄化の手間の無駄が生じたり、逆に汚染が発生していても、浄化が行われなかったりというように、適切な対処がなされない恐れがあるという問題がある。
【0010】
また、特許文献3や特許文献4のように、湿度や温度などの環境を測定したデータから汚染状態を推定して浄化を行うタイミングを得る方法では、使用時間または使用回数によって一律に浄化するよりは効果がある。しかし、この方法では推定と実際の汚染状態との間にずれが生じやすく、やはり効果的な浄化を行えずに無駄が生じる。
【0011】
特許文献5の方法については、カビを光によって検知しているが、回転槽の形状による電磁波の振幅の減衰または信号の受光量の変化を見ているだけである。こうした信号の変化を見るだけでは、カビ以外の糸くずやゴミなどによる誤差もあり、汚染状態を正確に検知して適切な汚染対策をとるには不十分である。
【0012】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的の1つは、汚染をより正確に非破壊的に迅速に検知することが可能な、汚染検知装置、汚染浄化システム、および、洗濯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、この発明のある局面によれば、汚染検知装置は、汚染状態の検出箇所に光を照射する光源と、光源から照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出する受光部と、汚染状態と汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量線記憶部と、受光部で検出された光のスペクトルと検量線記憶部に記憶された検量線データとに基づいて、汚染状態を見積もる演算部とを備える。
【0014】
好ましくは、汚染検知装置は、演算部で見積もられた汚染状態を出力する汚染状態出力部をさらに備える。
【0015】
好ましくは、検量線記憶部は、汚染状態を形成する第1の物質の基質が吸収する波長を含む範囲の吸光度スペクトルと第1の物質の濃度との関係を示す検量線データを予め記憶し、演算部は、受光部で検出された光のスペクトルから吸光度スペクトルを算出し、算出された吸光度スペクトルと、検量線記憶部に記憶された検量線データとに基づいて、汚染状態として物質の量または物質が存在する範囲を見積もる。
【0016】
好ましくは、汚染検知装置は、演算部で見積もられた汚染状態が所定レベル以上であるか判定する判定部をさらに備える。
【0017】
好ましくは、汚染検知装置は、演算部で見積もられた汚染状態を、測定時を特定可能に記憶する汚染状態記憶部をさらに備える。
【0018】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、汚染状態記憶部に記憶された汚染状態の経時変化を表示装置に表示させる制御を行なう表示制御部をさらに備える。
【0019】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、汚染状態記憶部に記憶された汚染状態の経時変化に基づいて、汚染状態の変化が所定レベル以上であるか判定する判定部をさらに備える。
【0020】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、判定部によって判定された判定結果を出力する汚染判定結果出力部とをさらに備える。
【0021】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、所定レベルを設定する設定部をさらに備え、判定部は、汚染状態が設定部によって設定された所定レベル以上であるか判定する。
【0022】
好ましくは、汚染検知装置は、演算部で見積もられた汚染状態に基づいて、汚染を浄化する浄化装置を制御して汚染を浄化させるフィードバック制御部をさらに備える。
【0023】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、浄化装置をさらに備える。
さらに好ましくは、演算部は、浄化装置によって浄化された後の汚染状態を再度見積もる。
【0024】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、浄化装置に汚染を浄化させるかユーザが汚染を浄化するかの選択をユーザから受付ける選択受付部をさらに備え、フィードバック制御部は、選択受付部によって浄化装置に汚染を浄化させる選択が受付けられた場合、浄化装置に、汚染を浄化させる制御を行なう。
【0025】
好ましくは、汚染検知装置は、受光部で検出される光が通過する雰囲気の状態として温度および湿度の少なくともいずれか一方を測定する雰囲気測定部をさらに備え、演算部は、雰囲気測定部で測定された雰囲気の状態に応じて受光部で検出された光のスペクトルを補正して、汚染状態を見積もる。
【0026】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、雰囲気測定部で測定された雰囲気の状態を、測定時を特定可能に記憶する雰囲気状態記憶部をさらに備える。
【0027】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、雰囲気測定部で測定された雰囲気の状態に基づいて、受光部で検出される光が通過する雰囲気の状態を制御する環境制御装置を制御して雰囲気の状態を制御させるフィードバック制御部をさらに備える。
【0028】
さらに好ましくは、汚染検知装置は、環境制御装置をさらに備える。さらに好ましくは、雰囲気測定部は、サーミスタを有する。
【0029】
好ましくは、汚染検知装置は、検量線記憶部に記憶された検量線データを校正するための校正データの入力を受付ける入力受付部と、入力受付部で受付けられた校正データに基づいて検量線記憶部に記憶された検量線データを校正する校正部とをさらに備える。
【0030】
好ましくは、光源は、LEDである。好ましくは、光源は、白色光源であり、分光器を含む。好ましくは、光源は、多波長光源である。好ましくは、光源は、近赤外域の波長の光を照射する。
【0031】
好ましくは、光源は、汚染状態を形成する第1の物質の基質が吸収する第1の波長に加えて第1の物質の基質が吸収しない第2の波長を含む光を照射し、演算部は、第2の波長に対する汚染状態を形成しない第2の物質による吸収に基づいて、第1の波長に対する第2の物質による吸収の寄与を除去して、第1の波長に対する第1の物質による吸収を算出することによって、汚染状態を見積もる。
【0032】
好ましくは、光源および受光部は、光源から照射された光が受光部に直接検出されないように設けられる。
【0033】
好ましくは、受光部を含む部分と演算部を含む部分との情報のやりとりが無線で行なわれる。
【0034】
この発明の他の局面によれば、汚染浄化システムは、汚染を検知する汚染検知装置と汚染を浄化する浄化装置とを備える。汚染検知装置は、汚染状態の検出箇所に光を照射する光源と、光源から照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出する受光部と、汚染状態と汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量線記憶部と、受光部で検出された光のスペクトルと検量線記憶部に記憶された検量線データとに基づいて、汚染状態を見積もる演算部と、演算部で見積もられた汚染状態に基づいて、浄化装置を制御して汚染を浄化させるフィードバック制御部とを含む。
【0035】
好ましくは、浄化装置は、紫外線光源で汚染を浄化する。さらに好ましくは、光源は、浄化装置の紫外線光源である。さらに好ましくは、汚染浄化システムは、受光部で検出される光が通過する雰囲気の状態を制御する環境制御装置をさらに備える。
【0036】
この発明のさらに他の局面によれば、洗濯機は、汚染を検知する汚染検知装置と汚染を浄化する浄化装置とを備える。汚染検知装置は、汚染状態の検出箇所に光を照射する光源と、光源から照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出する受光部と、汚染状態と汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量線記憶部と、受光部で検出された光のスペクトルと検量線記憶部に記憶された検量線データとに基づいて、汚染状態を見積もる演算部と、演算部で見積もられた汚染状態に基づいて、浄化装置を制御して汚染を浄化させるフィードバック制御部とを含む。
【0037】
好ましくは、汚染検知装置は、光源が、汚染しやすい1または複数の箇所に光を照射可能で、かつ、受光部が、照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出可能であるように設けられる。汚染しやすい箇所は、水槽および水槽の内側の回転槽の喫水線付近である。さらに好ましくは、汚染検知装置は、回転槽の外周、または、水槽の内周の壁面に設けられる。また、汚染しやすい箇所は、パルセータの駆動装置側の面である。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、汚染をより正確に非破壊的に迅速に検知することが可能な、汚染検知装置、汚染浄化システム、および、洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施の形態における汚染検知装置の概略的な構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における汚染検知装置の概略的な外観を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における汚染検知装置の使用例を説明するための図である。
【図4】第1の実施の形態における汚染検知装置で実行される汚染検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】吸光度スペクトルの波長と、対象物質の基質の濃度との関係を示すグラフである。
【図6】第2の実施の形態における汚染検知装置を備える洗濯機の概略的な構成を示す図である。
【図7】第2の実施の形態における洗濯機で実行される汚染検知処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0041】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の汚染検知装置1は、空気、食品、商品および美術品など、カビまたは微生物など望ましくない物質による汚染に晒される危険がある測定対象6に光照射して、その透過光または反射光から吸光度スペクトルを得て、汚染状態を見積もることで検知する装置である。
【0042】
なお、本実施の形態においては、汚染検知装置1が、測定対象6の汚染状態を形成する物質の反射光のスペクトルを検出することとして説明するが、これに限定されず、測定対象6の汚染状態を形成する物質の透過光のスペクトルを検出するようにしてもよい。
【0043】
まず、本実施の形態の汚染検知装置1を有する装置とその構成について説明する。図1は、第1の実施の形態における汚染検知装置1の概略的な構成を示す図である。
【0044】
図1を参照して、汚染検知装置1は、LED(Light Emitting Diode)を含む光源3と、光を受光するフォトダイオード(Photodiode、以下「PD」ともいう)を含む受光部4と、光源3および受光部4を駆動する光デバイス駆動部2と、汚染状態を見積もる演算回路7と、測定データおよび汚染状態の特定結果のデータを記憶する測定データ記憶装置8と、汚染状態と汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量データ記憶装置10とを備える。
【0045】
また、汚染検知装置1は、サーミスタを有し、測定対象6が存在する雰囲気中の温度および湿度を測定する温度湿度検知機構5と、汚染状態の特定結果を判定する判定部9と、汚染状態の検知および特定結果に基づいて浄化装置15または環境制御装置16を制御するフィードバック回路11を選択的に備える。なお、汚染検知装置1には、上述した構成に加えて、本発明の実施の形態に特に関係しない構成も含まれる。
【0046】
光デバイス駆動部2は、光源3のLEDおよび受光部4のPDのドライバであり、演算回路7からの制御信号に応じて、光源3を発光させるための駆動信号を光源3に出力するとともに、受光部4で光を検出するための駆動信号を受光部4に出力する。
【0047】
光源3は、光デバイス駆動部2からの駆動信号に応じて、LEDを発光させる。光源3から発光された光は、測定対象6に照射されて、測定対象6の汚染状態に応じて、測定対象6で反射することによって反射光を生じる。本実施の形態では、LEDは、カビまたは微生物に含まれる有機分子の基質に帰属する近赤外の波長に対応したものを用いるが、これに限定されず、測定対象によって異なる最適な波長範囲のものを用いるようにしてもよい。また、発光素子は、LEDに限定されず、他のものを用いてもよい。
【0048】
受光部4は、光デバイス駆動部2からの駆動信号で駆動されて、測定対象6からの反射光を受光して、受光した光に応じた検出信号をアンプで増幅して演算回路7に出力する。本実施の形態では、PDは、光源3のLEDと同様、カビまたは微生物に含まれる有機分子の基質に帰属する近赤外の波長に対応したものを用いるが、これに限定されず、測定対象によって異なる最適な波長範囲のものを用いるようにしてもよい。また、受光素子は、PDに限定されず、他のものを用いてもよい。
【0049】
検量データ記憶装置10は、汚染状態を形成する物質であるカビまたは微生物の基質が吸収する波長を含む範囲の吸光度スペクトルとその物質の濃度との関係を示す検量線データを予め記憶する。検量データ記憶装置10に記憶される検量線データは、予め実験によって定められる。
【0050】
演算回路7は、演算処理を行なうCPU(Central Processing Unit)、CPUによって実行されるプログラムおよび予め定められたデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびプログラムが実行されるときのワークエリアおよび一時的なデータを記憶する記憶領域として用いられるRAM(Random Access Memory)を含む。
【0051】
演算回路7は、受光部4からの検出信号に基づいて、反射光スペクトルを算出し、反射光スペクトルから吸光度スペクトルを算出する。そして、演算回路7は、算出された吸光度スペクトル、および、検量データ記憶装置10に記憶された検量線データとに基づいて、汚染状態として物質の量または物質が存在する範囲を見積もる。
【0052】
一般に、非破壊検査において検量線法という光を用いた検査手法が知られている。ある物質に含まれる成分の濃度を知りたいときに、予めその物質の吸光度スペクトルと濃度との関係を示す検量線を作成しておいて、成分量が未知の試料の吸光度スペクトルと検量線とから、未知試料の濃度を見積もる方法である。
【0053】
図5は、吸光度スペクトルの波長と、対象物質の基質の濃度との関係を示すグラフである。図5を参照して、成分の分子振動に由来するピークが、固有の波長λ0付近に現れる。ピーク強度の変化は、その成分の濃度に比例して表れる。このため、いろいろな濃度の測定対象物のスペクトル形状を分析することで、スペクトル形状と成分量との関係を導出することができる。
【0054】
たとえば、カビまたは微生物などの汚染状態を形成する物質を測定したい場合は、その物質に固有の有機分子の基質が吸収を持つ波長を含む範囲の吸光度スペクトルとその物質の量との関係を示す検量線を前もって得ておく。これにより、その物質による汚染状態を知りたい測定対象の反射光スペクトルを検量線のデータと照らし合わせることで、その物質の量を見積もって、汚染状態を検知することができる。
【0055】
図5は、成分が1つのみの場合を示す。しかし、検出した光に多成分のスペクトルが含まれる場合は、ピークが重なり合うため、単純な計算ではそれぞれの物質の量を算出できない。このような計算をする場合に、従来から、多変量解析、重回帰分析、または、PLS(Partial Least Squares)回帰分析など、様々な工夫が凝らされている。本実施の形態では、統計的処理であるPLS回帰分析の手法を用いる。
【0056】
PLS回帰分析の手法は、予め、PLS回帰分析法で導出した検量線を作っておき、その検量線を用いて、測定対象から反射した光の吸光度スペクトルをPLS回帰分析すれば、測定対象物の知りたい特定成分の成分量や含有量を算出することができるものである。
【0057】
また、一般に、近赤外域の光には、水分の吸収が影響する。よって、温度および湿度から、水分または水蒸気の量を推測し、水分または水蒸気による光スペクトルへの寄与を考慮することで、より正確に、カビまたは微生物の汚染状態を算出することができる。
【0058】
測定した光スペクトルに、この検量線を適用すると、カビまたは微生物など、望ましくない物質が存在する量を算出できる。ユーザーがカビの汚染を知りたいなら、カビの検量線を、特定の微生物の汚染を知りたいなら、その微生物の検量線を用いるなど、測定する対象に応じた検量線を、予め、検量データ記憶装置10に入力しておき、それぞれの分量を算出することができる。
【0059】
検量線を入力する方法としては、工場出荷時にメーカー側で入力する方法、または、ユーザーが初めて汚染検知装置1を使用するときに、汚染検知装置1によって得た測定結果を反映させて、検量データ記憶装置10に入力する方法が挙げられる。
【0060】
判定部9は、演算回路7で見積もられた汚染状態または汚染状態の変化が、所定レベル以上であるか判定する。汚染検知装置1では、カビまたは微生物の存在する量または面積などを指標として、汚染状態が見積もられる。その指標である所定レベルについては、ユーザーまたはメーカーが測定対象6の種類に応じた許容値として定義する。
【0061】
フィードバック回路11は、演算回路7での汚染状態の特定結果に基づいて、浄化装置15をフィードバック制御する。つまり、フィードバック回路11は、浄化装置15を駆動させたり停止させたりすることによって、汚染状態が所定レベルになるように制御する。
【0062】
また、フィードバック回路11は、温度湿度検知機構5での温度および湿度の算出結果に基づいて、環境制御装置16をフィードバック制御する。つまり、フィードバック回路11は、環境制御装置16を制御して、温度および湿度が、カビまたは微生物が発生しにくい所定値になるように制御する。
【0063】
浄化装置15は、測定対象6に紫外線を照射する光源を含み、汚染検知装置1のフィードバック回路11によって制御されて、紫外線を測定対象6の汚染状態を構成する物質に照射することによって、汚染状態を構成する物質を減少させる。
【0064】
環境制御装置16は、汚染検知装置1のフィードバック回路11によって制御されて、測定対象6で反射して受光部4で検出される光が通過する雰囲気の状態である温度および湿度を制御することによって、汚染状態を構成する物質が発生しにくい環境にする。
【0065】
また、汚染検知装置1は、外部入力装置14から入力されたデータで、検量データ記憶装置10内のデータを更新し、補正できるように構成してもよい。本実施の形態において、外部入力装置14は、外部からデータを入力するためのUSB端子とするが、これに限定されず、通信回線を経由してデータをダウンロードできるような装置で構成したり、パソコンを用いたりすることができる。
【0066】
これにより、汚染検知装置1の使用状態によって工場出荷時に検量データ記憶装置10に記憶させたデータまたは初期使用時に検出した参照データもしくは検量線にズレが生じることで検知の精度が落ちたり、判定レベルが実情にそぐわなくなったりした場合、現在の使用状況などを反映したデータを入力して補正する。その結果、精度の高い検知機能を維持できる。
【0067】
吸光度スペクトルによる非破壊検査では、定期的な検量線のメンテナンスが有効であるので、定期的にデータを更新したり、校正したりすることは、精度の高い検知機能の維持に有効である。
【0068】
さらに、汚染検知装置1は、表示装置である出力装置12を制御して、汚染検知装置1からの情報を表示させることができる。これにより、汚染状態を測定した結果を、出力装置12で告知したり、汚染状態が高ければ警告したり、ユーザー自身で手動で浄化するタイミングを知らせたりすることが可能である。
【0069】
なお、本実施の形態においては、出力装置12は、表示装置であることとするが、出力装置12が、外部メディアに情報を記録する外部記憶装置であってもよいし、プリンタであってもよい。
【0070】
また、本実施の形態においては、汚染検知装置1の各要素の接続は有線で接続される。しかし、これに限定されず、少なくとも一部、たとえば、光源3、受光部4および光デバイス駆動部2で構成される部分を、データまたは制御信号を無線で伝送可能なように構成して、離れた場所または隔離された場所にある測定対象6の汚染状態を検知できるようにしていもよい。
【0071】
図2は、第1の実施の形態における汚染検知装置1の概略的な外観を示す図である。図2を参照して、汚染検知装置1の台座17の形状は、略円錐台の形状である。汚染検知装置1の各要素は、台座17の内部または外面に設けられる。汚染検知装置1は、台座17の下底が取付対象(たとえば、部屋または倉庫などの空間の天井または壁、洗濯機、冷蔵庫またはエアコンなどの内部の空間の汚染しやすい箇所に対向する面)に接するように取付けられる。
【0072】
汚染検知装置1の光源3のLEDは、周囲に光を照射可能なように、円錐台状の台座17の側面に、等間隔に複数設けられる。受光部4のPDは、測定対象6から拡散反射した光を検知可能なように、台座17の円錐台の上底に設けられる。
【0073】
このように、円錐台状の台座17の側面にLEDが取付けられ、上底にPDが取付けられるので、LEDからPDへの迷光を低減することができるが、本実施の形態においては、さらに、上底にくぼみをつけて、そのくぼみの底面にPDが取付けられるようにしたので、くぼみがない場合と比較して、LEDからPDへの迷光をより低減することができる。
【0074】
なお、汚染検知装置1の外形である台座17の高さは、取付けた際に他のものと干渉しないように、できるだけ低いほうがよい。このため、本実施の形態においては、汚染検知装置1の高さは、上底および下底に平行な側面上の円周に沿った1列にLEDが取付けられる最低限の高さとしている。
【0075】
図3は、第1の実施の形態における汚染検知装置1の使用例を説明するための図である。図3を参照して、汚染検知装置1は、建物内部または装置内部の空間の上面などの面に、空間内部の測定対象6に照射光を照射可能で、測定対象6からの反射光を検出可能なように取付けられる。
【0076】
また、浄化装置15および環境制御装置16は、汚染検知装置1と離れた箇所の空間内の面に取付けられる。本実施の形態においては、汚染検知装置1と、浄化装置15および環境制御装置16とは、無線で、制御信号をやりとりする。
【0077】
図4は、第1の実施の形態における汚染検知装置1で実行される汚染検知処理の流れを示すフローチャートである。この汚染検知処理は、汚染検知装置1の演算回路7によって実行される処理のサブルーチンの1つである。
【0078】
この汚染検知処理は、定期的(たとえば、24時間ごと)に実行される。なお、本実施の形態では、汚染検知処理が定期的に実行されるようにするが、常時繰返し実行されるようにしてもよいし、ユーザが実行間隔を設定可能なように構成してもよい。
【0079】
図4を参照して、ステップS101で、演算回路7のCPUは、汚染の検出に使用する機器が汚染状態を測定するために必要な準備を開始するように制御する。具体的には、必要な準備としては、光源3の立ち上げ、受光部4のゼロ点調整、検量データ記憶装置10から演算回路7へ汚染状態を算出するための計算式や情報を入力する工程が挙げられる。
【0080】
続くステップS102では、CPUは、温度湿度検知機構5を制御して、測定対象6が存在する雰囲気中の温度と湿度とを測定させ、測定された温度および湿度のデータを温度湿度検知機構5から取得する。取得された温度および湿度のデータは、後のステップで、汚染状態を算出する際の参考データとして利用される。具体的には、測定対象6の環境における水分または水蒸気のスペクトルへの影響が測定スペクトルから除去されることによって、より精度の高い検知が行えるようになる。
【0081】
ステップS103では、CPUは、光デバイス駆動部2を制御して、光源3により光照射を行わせる。これにより、光源3から測定対象6に光が照射されて、測定対象6からの反射光が受光部4で検出される。
【0082】
続くステップS104では、CPUは、受光部4のアンプで増幅された反射光に関する検出信号が、演算回路7のA/D(Analog-to-Digital)変換回路で変換された反射光に関する取得データを受信する。
【0083】
ステップS105では、CPUは、光デバイス駆動部2を制御して、光源3により照射されている光を停止させる。
【0084】
次に、ステップS111で、CPUは、ステップS104で受信した取得データに基づいて、反射光の波長ごとの光強度としての反射スペクトルを算出する。
【0085】
次いで、ステップS112で、CPUは、後のステップで行う汚染状態の算出の妨げとなる不正なデータを排除するため、ステップ111で算出された反射スペクトルの精度が適当か否かを判断することによって、反射スペクトルの信頼性が信頼可能な程度であるか否かを判断する。反射スペクトルと照らし合わせるデータは、予め検量データ記憶装置10に記録されている。判断は、反射スペクトルと照らし合わせるデータとの、強さやスペクトル形状に基づいて行なわれる。
【0086】
ステップS113では、CPUは、ステップS112での判断の結果が信頼可能であるか否かを判断する。信頼可能でないと判断した場合(ステップS113でNOと判断した場合)、CPUは、実行する処理をステップS103の処理に戻す。一方、信頼可能であると判断した場合(ステップS113でYESと判断した場合)、CPUは、実行する処理をステップS114の処理に進める。
【0087】
ステップS114では、CPUは、続くステップにおける演算を円滑にするために、反射スペクトルを変換して、吸光度スペクトルを算出するとともに、吸光度スペクトルに前処理を施す。つまり、反射スペクトルのままでは、汚染状態を算出できないので、吸光度スペクトルに変換する。その際、標準物質のスペクトルを利用した方が、より正確な吸光度スペクトルが得られる。通常は、市販の反射板などの標準物質を用いるが、汚染の無い状態、または、汚染状態が問題ないレベルの状態の光スペクトルを、標準スペクトルとして測定し記憶させておいたり、ユーザーが初めて汚染検知装置1を設置する際に測定した、未使用状態時に得られた光スペクトルを標準スペクトルとして予め記憶させておいたりしてもよい。
【0088】
前処理にはスペクトルの減算、平滑化または微分など、様々な手法があるが、本実施の形態では、Savitzky-Golay法を施した後に、2次微分することによって、平滑化およびベースラインを補正する処理を行なう。
【0089】
続くステップS115において、CPUは、ステップS102で取得された温度および湿度のデータと、ステップS114で算出された吸光度スペクトルと、検量データ記憶装置10に記憶されている検量線のデータとに基づき、汚染状態と測定対象6が存在する雰囲気中の水分が吸光度スペクトルに寄与する影響とを考慮したうえで、PLS回帰分析法により、汚染状態を見積もる。
【0090】
なお、前述したように、PLS回帰分析法では、予めPLS回帰分析法で導出した検量線を用いて、測定対象6からの反射光の反射スペクトルに基づいて、測定対象の汚染状態を形成する物質のうち特定成分の成分量または含有量を算出する。
【0091】
また、本実施の形態では、未使用状態または汚染がユーザーにとって問題ないレベルの状態の測定対象6における、水蒸気または水分の温度ごとの光スペクトルの情報が、検量データ記憶装置10に予め記録されている。そして、これらのデータと吸光度スペクトルとを比較することによって、より正確に汚染状態を算出する。
【0092】
次に、ステップS116で、CPUは、ステップS115で見積もられた汚染状態が信頼できる値であるか否かを判定する。なお、図1においては、判定部9が演算回路7から独立して判断するように記載されているが、判定部9の機能は、演算回路7のCPUが実行することにより実現される。
【0093】
判定基準は、少なくとも、汚染度の数値、および、回帰分析において計算の確からしさを判定する指標などが挙げられる。判定の基準となる数値やレベルは、予め検量データ記憶装置10に記録されている。
【0094】
ステップS117では、CPUは、ステップS116での判断の結果が信頼可能であるか否かを判断する。信頼可能でないと判断した場合(ステップS117でNOと判断した場合)、CPUは、実行する処理をステップS103の処理に戻す。一方、信頼可能であると判断した場合(ステップS117でYESと判断した場合)、CPUは、実行する処理をステップS121の処理に進める。
【0095】
次に、ステップS121で、CPUは、検量データ記憶装置10に記憶されている汚染状態の適正レベルを示す参照データに基づいて、ステップS115で見積もられた汚染状態を、適正レベルと比較する。また、CPUは、測定データ記憶装置8に記憶されている汚染状態の蓄積データに基づいて、最近の経時変化と、適正変化レベルとを比較する。
【0096】
比較用のデータとしては、工場出荷時にメーカー側で設定して記憶させておいたデータ、ユーザーが初めて使用する際にユーザー自身で測定した、未使用状態の汚染の無いデータもしくは汚染状態が問題ないレベルの測定データ、または、メーカーもしくはユーザーが設定した許容値のデータのうち、少なくとも1つを用いることができる。
【0097】
ユーザーは、予め記憶された機器ごとの判定用データを用いた場合、手間を省くこともできる。また、ユーザーごとに汚れの許容値を設定または選択することで、ユーザーごとの環境の違いを考慮した検知機能に最適化することができる。
【0098】
また、前回測定までに蓄積した汚染状態のデータと照らし合わせて適正変化レベル以上の変化があるかどうかを判断することで、一時の汚染状態は適正レベル以下であっても、長期的に見ると不適正な変動が現れている状態も検出することができる。
【0099】
日々の使用形態も合わせて判断することにより、例えば汚染状態は適正レベル以下だが、汚染状態の変化が前回と比べて不自然に高めもしくは低めに検出された場合に、使用頻度または使用形態が偏った期間であれば、それらを原因のひとつと判断し、偏りの少ない期間であれば、何らかの排除すべき要因があると推定して各々の警告を表示することも可能である。
【0100】
次いで、ステップS122で、CPUは、出力装置12を制御して、ステップS115で見積もられた汚染状態を示すデータを表示させる。汚染状態の表示は、たとえば、数レベルの段階表示であってもよいし、数値での表示であってもよい。これにより、ユーザは、汚染状態を知ることができる。
【0101】
また、CPUは、ステップS121での汚染状態と適正レベルとの比較結果を表示するようにしてもよい。また、ステップS121での汚染状態の変化と適正変化レベルとの比較結果を表示するようにしてもよい。比較結果の表示は、たとえば、適正であるか不適正であるかを判別可能な表示であってもよいし、適正または不適正の度合いがどの程度であるかを判別可能な表示であってもよい。
【0102】
また、CPUは、ステップS1115で見積もられた汚染状態の現状のデータと合わせて、測定データ記憶装置8に記憶されている汚染状態の蓄積データを表示するようにしてもよい。汚染状態の現状のデータと蓄積データとの表示は、たとえば、経時変化が判別可能なグラフの表示であってもよいし、数値の羅列の表示であってもよい。
【0103】
次に、ステップS123で、ステップS121での比較の結果が、汚染状態が適正レベル以下、かつ、汚染状態の変化が適正変化レベル以下であるか否かを判断する。汚染状態が適正レベル以下でない、または、汚染状態の変化が適正変化レベル以下でないと判断した場合(ステップS123でNOと判断した場合)、CPUは、実行する処理をステップS124の処理に進める。一方、、汚染状態が適正レベル以下、かつ、汚染状態の変化が適正変化レベル以下であると判断した場合(ステップS123でYESと判断した場合)、CPUは、実行する処理をステップS127の処理に進める。
【0104】
処理がステップS124に進められた場合、CPUは、フィードバック回路11に次のような制御を実行させる。フィードバック回路11は、演算回路7によって見積もられた結果として汚染状態が検知されたことへのフィードバックとして汚染の浄化を行なうために、浄化装置15を制御して、紫外線を照射させる。これにより、浄化装置15は、測定対象6の汚染状態を構成する物質に、紫外線を照射し、汚染状態を減少させる。
【0105】
次のステップS125では、CPUは、浄化装置15による紫外線の照射を開始させてから所定時間(たとえば、10分)経過したか否かを判断する。所定時間経過していないと判断した場合(ステップS125でNOと判断した場合)、CPUは、ステップS125の処理を繰返す。一方、所定時間経過したと判断した場合(ステップS125でYESと判断した場合)、ステップS126で、CPUは、浄化装置15を制御して、紫外線の照射を停止させる。
【0106】
ステップS126の後、CPUは、実行する処理をステップS103の処理に戻し、再度、ステップS103からステップS123までの処理で汚染状態が適正になったか否かを判断する。
【0107】
なお、図4の汚染検知処理では、汚染状態が適正レベル以下となり、かつ、汚染状態の変化が適正変化レベル以下とならない限り、汚染状態の浄化を続けるようになっている。しかし、これに限定されず、予め設定した一定回数以上、浄化しても汚染状態が適正レベル以下となり、かつ、汚染状態の変化が適正変化レベル以下とならない場合、CPUは、出力装置12を制御してその旨を表示させ、汚染検知処理を中断してもよい。
【0108】
処理がステップS127に進められた場合、CPUは、浄化前にステップS115で見積もられた汚染状態、ならびに、浄化前にステップS114で算出された吸光度スペクトル、ならびに、ステップS102で測定された温度および湿度、ならびに、浄化前の汚染状態の測定時を、測定データ記憶装置8に記憶させる。これにより、測定データ記憶装置8には、これらのデータの経時変化が蓄積データとして蓄積されることとなる。
【0109】
これらのデータを記録する際、すべての蓄積データを記憶すると、データの記憶領域が大きくなり、データ処理および記憶装置の負担が大きくなる。このため、一定期間以前の蓄積データを順次消去したり、一定期間以前の蓄積データは平均データとして記憶したりすることが考えられる。
【0110】
次に、ステップS128で、CPUは、フィードバック回路11に次のような制御を実行させる。フィードバック回路11は、温度湿度検知機構5による測定結果が検知されたことへのフィードバックとして温度および湿度がカビまたは微生物が発生しにくい所定値となるようにするために、環境制御装置16を制御して、温度および湿度を制御する。その後、CPUは、実行する処理をこの汚染検知処理の呼出元の処理に戻す。
【0111】
以上説明したように、本実施の形態に係る汚染検知装置1は、光源3から近赤外域の光を照射し、測定対象から反射してくる光を検出して、カビまたは微生物などの発生を検知し、汚染状態を判定することができる。このため、適切な浄化措置をとったり、浄化時期をユーザーに知らせることができる。よって、浄化する適切なタイミングを知ることができ、測定対象を汚染状態の少ない状態に維持できるので、電力を節約できたり、ユーザーの手間を省いたりすることができる。
【0112】
また、カビまたは微生物など汚染の光吸収の帰属を考慮した波長の選択によって汚染を検知するので、従来の温度または湿度からの一律な予測よりも、精度良くカビまたは微生物の発生を見積もることができる。よって、測定対象を汚染度の低い状態に維持でき、また、汚染状態の誤検知による汚染の浄化の無駄を省くことができる。
【0113】
また、ユーザーごとの使い方にあわせた判定レベルを設定したり、ユーザー自身によって汚染状態の問題ない状態での測定スペクトルを設定したりすることができるように構成することもできる。
【0114】
また、温度および湿度の環境データを記録しておくので、汚染状態の判定に利用できる。また、本実施の形態においては、浄化は、汚染状態に応じて自動で行なうようにしたが、警告のみを発してユーザー自身で汚染に対処するよう選択するように構成してもよい。
【0115】
これにより、ユーザーの使用状況による違いに左右されずに汚染状態を検知できる。また、測定対象を汚染状態の少ない状態に維持できる。さらに、浄化の必要が無いのに無駄に浄化する、といった電力や浄化の手間の無駄を省くことができる。
【0116】
その結果、ユーザーごとの使用状況の違いまたは実情を反映した、ユーザーに合った精度の良い検知と効率のよい浄化ができる。
【0117】
また、浄化の前後に汚染状態を見積もってさらに浄化を行なったり環境を制御したりしているので、浄化した結果、汚染状態が問題ないレベルまで低減されたか確認できる。
【0118】
また、光を用いた計測であるので、非破壊的に、迅速かつ簡単に汚染を検知できる。また、LEDおよびPDなどのデバイスを用いるので、小型かつ安価で省電力な構成にできる。
【0119】
なお、光源は、多波長レーザーまたはハロゲンランプなどの多波長光源を用いてもよい。この場合、分光器が必要になるなど構成が大掛かりになるため、製造コストおよび消費電力も増大するが、検出する波長を変更して検知の精度を補正することができる。
【0120】
また、本実施の形態では、温度および湿度を測定し、水分が吸光度スペクトルに与える影響を考慮するので、測定対象の環境を考慮して、より精度の良い検知を行うことができる。
【0121】
汚染状態をユーザーの要求を満たす精度で検知できるものであれば、温度あるいは湿度のいずれかを測定するように構成したり、温度および湿度のいずれも測定しないように構成したりしてもよいが、温度および湿度の両方を測定して、水分が近赤外スペクトルに与える影響を考慮した方が、より正確に汚染状態を検知できる。
【0122】
なお、本実施の形態では、Savitzky-Golay法を施した後に2次微分する前処理を行ったが、前処理の方法はこれに限るものではなく、汚染状態をユーザーの要求を満たす精度で検知できるものであれば、他の方法を用いてもかまわない。
【0123】
また、本実施の形態では、汚染検知装置1を1つのみ用いたが、1箇所だけでなく、カビまたは微生物が発生しやすい2箇所以上に設置し、まんべんなく光照射を行ったり、検知範囲を広げたりしても良い。この場合、製造コストがかさむが、多くの汚染検知装置と検知場所とを組み合わせた方が、検出精度が向上する。
【0124】
また、汚染検知装置1によって紫外線照射などで浄化を行う際に、ユーザーが紫外線を浴びないよう、紫外線照射中はユーザーが紫外線照射範囲を覗き込めないようなロック機構、たとえば、紫外線照射中に紫外線照射範囲の扉を開かないようにする仕組を設けたり、紫外線を遮断するフィルムまたはガラスなどを用いるように構成したりしたり、ユーザが紫外線照射範囲を覗き込む動作、たとえば、紫外線照射範囲の扉を開ける動作をしたときに、紫外線照射を中断する制御をしたりしてもよい。
【0125】
その場合、製造コストがかさんだり、構成が複雑になったりするが、ユーザーに対して安全に浄化を行うことができる。
【0126】
また、本実施の形態では、紫外線光源などを用いて汚染を浄化する浄化装置を設置して浄化するようにした。しかし、これに限定されず、浄化装置を設置せずに、ユーザーが洗剤などを用いて手動で浄化を行なうように構成しても良い。この場合、浄化を自動で行なわないので、ユーザーにとって手間となるが、手動で浄化したほうが効率が良い場合などに有効である。
【0127】
また、本実施の形態では、浄化装置15と汚染検知装置1とを分離している。しかし、これに限定されず、浄化装置15と汚染検知装置1とを一体化させてもよい。この場合、検知機能を妨害せずに浄化を行なえる構成をとる必要があるが、構成をコンパクトにできる。
【0128】
また、本実施の形態では、環境制御装置16と汚染検知装置1とを分離している。しかし、これに限定されず、環境制御装置16と汚染検知装置1とを一体化させてもよい。この場合、検知機能を妨害せずに環境制御を行える構成をとる必要があるが、構成をコンパクトにできる。
【0129】
また、本実施の形態では、温度湿度検知機構5によって温度と湿度とを計測して汚染状態を見積もっている。しかし、ユーザーが必要とする汚染状態の検知の精度の範囲内の結果が得られるのであれば、必ずしも温度湿度検知機構5を備えなくとも良い。その場合、汚染状態の見積もりの精度は落ちるが、構成がコンパクトになる。
【0130】
また、本実施の形態では、温度湿度検知機構5にサーミスタを使用している。しかし、これに限定されず、温度と湿度とを精度良く検知できる装置であれば、必ずしも、サーミスタを使用せずとも良い。
【0131】
なお、ユーザーに汚染度を表示ディスプレイにて知らせる場合、汚染度を数値で表示する形式、汚染度を「安全・注意・危険」などのゾーンで見せる形式、または、汚染度の測定データを蓄積して経時変化をグラフ表示にする形式を採用することができる。いずれの形式を用いても、わかりやすくユーザーに汚染の状態を知らせることができる。
【0132】
また、本実施の形態では、近赤外の波長を用いた。しかし、これに限定されず、測定対象に合わせて、測定対象の吸収があり、精度良く検知できる波長の可視光または紫外線を用いても良い。
【0133】
特に、紫外線光源を用いる場合、汚染を浄化できる紫外線の波長と重なる波長の光源を用いることができれば、汚染検知のための光源と浄化装置とを兼ねて用いることができ、構成がコンパクトになる。
【0134】
また、カビまたは微生物などの汚染を形成する物質の吸収がある波長に加えて吸収がない波長を測定してもよい。その場合、汚染状態の算出に不要な物質の光吸収の寄与の除去に用いて、検知したい成分を精度良く検出することができる。
【0135】
また、図2で示したように、LEDは汚染検知装置1の台座17の円錐台の側面に配置されているが、汚染状態を検知するに充分な面積に光照射できるのであれば、他の形態のLEDの配置をとってもよい。
【0136】
また、図2で示したように、本実施の形態においては、フォトダイオードは測定対象6から反射した光を受光するようにした。しかし、これに限定されず、測定対象6が光源3から照射された光が透過可能な物質である場合、測定対象6を透過した光した透過光をフォトダイオードで検出して、汚染状態の検知に利用するようにしてもよい。
【0137】
以上説明したように、汚染検知装置1は、人間が着る服を洗う洗濯機もしくは人間が飲食する飲食物を保存する冷蔵庫などの家電製品の洗濯水もしくは飲食物に触れる筐体の内部、人間が居住する住居もしくは部屋などの空間の空気、または、倉庫,カーゴ,陳列ケース,美術館,博物館,遺跡,食料倉庫などに保管されている品物などの、汚染または劣化に繋がるカビまたは微生物などの発生が問題となるような対象に対して、光照射によって、非破壊的かつ迅速に、ユーザーの使用状況に合わせた適切な設定で、カビまたは微生物などの汚染を構成する物質に起因する望ましくない汚染を、その汚染の光吸収の帰属を考慮することによって、精度良く検知し、また、蓄積した過去のデータから経時変化を考慮して、異常な変動を検知することができる。
【0138】
そして、汚染検知装置1は、汚染の検知結果の情報を適宜記憶したり、自動的に汚染に対応する制御をしたり、ユーザーの選択によって手動で汚染に対応させるために、検知結果、汚染状況、および、適切な対応時期を、ユーザーに知らせたりすることができる。
【0139】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における汚染検知装置1は、図6で説明するように洗濯機30に設置されて、測定対象となるカビまたは微生物の波長に対応した光を照射して反射した光を受光するように構成される。また、第1の実施の形態においては、浄化装置15および環境制御装置16の両方が備えられるようにした。第2の実施の形態においては、環境制御装置16は、設けられず、浄化装置15は、設けられるようにする。
【0140】
図6は、第2の実施の形態における汚染検知装置を備える洗濯機30の概略的な構成を示す図である。図6を参照して、左側が洗濯機30の正面であり、右側が洗濯機30の背面である。図6は、洗濯機30の側面から見た縦断面を示す。
【0141】
洗濯機30の外箱31の内部には、水槽32と、脱水槽を兼ねる回転槽33とが配置されている。回転槽33が、繊維構造体を浄化する浄化槽に相当する。水槽32および回転槽33は、両者ともに、上面が開口した円筒形のカップの形状を呈している。水槽32および回転槽33の軸線は、それぞれ、鉛直方向に延びている。また、水槽32および回転槽33は、水槽32が外側、回転槽33が内側となるように、同心状に配置されている。
【0142】
蓋34は、洗濯機30の筐体にヒンジで回動可能に結合されるとともに、水槽32および回転槽33を上から覆う。
【0143】
回転槽33は、上部の開口部に向かうにつれて内壁面の径が大きくなるように形成されている。いいかえれば、回転槽33は、上方に向かうにつれて緩やかに広がるテーパー形状の傾斜した内周壁面を有し、より具体的には、逆円錐台の側面の形状の内周壁面を有する。
【0144】
回転槽33の槽壁(周壁)には、その最上部側に環状に配置した複数個の脱水孔35および上部の開口を除き、液体を回転槽33の外部に通過させるための開口部はない。すなわち、本実施の形態の回転槽33は、いわゆる「穴なし」タイプである。
【0145】
回転槽33の内部底面には、槽内で洗濯水およびすすぎ水の流動を生じさせるためのパルセータ36が配置されている。
【0146】
水槽32の下面の外側には、駆動ユニット37が装着されている。駆動ユニット37は、モータ、クラッチ機構およびブレーキ機構を含んでいる。駆動ユニット37の中心部から、パルセータ軸38が上向きに突出している。パルセータ軸38は、脱水軸を外側に持ち、二重軸構造となっている。
【0147】
パルセータ軸38は、下方から上方に向かって水槽32を貫いてさらに回転槽33の中に入り込み、パルセータ36に連結し、これを支えている。脱水軸は、水槽32を貫いて、回転槽33に連結されている。脱水軸と水槽32との間、および、脱水軸とパルセータ軸38の間には、各々、水もれを防ぐためのシール部材が配置されている。水槽32は、サスペンション部材によって外箱31内で吊り下げられている。
【0148】
洗濯機30の上部には、電磁的に開閉して回転槽30に水を供給する水供給部39が配置されている。水供給部39は、給水弁と、給水口と、水道水などの上水を供給する給水ホースを接続するための接続管を有する。
【0149】
図6に示すように、水槽32の底部には、水槽32および回転槽33の中の水を外箱31の外に排水する排水管40が取り付けられている。
【0150】
水槽32と回転槽33との間に独立した排水空間41が形成されており、排水空間41は回転槽33の内部に連通している。
【0151】
排水管40には、電磁的に開閉する排水弁42が設けられている。排水管40の排水弁42の上流側にあたる箇所から導圧管43が延び出ている。導圧管43の上端には、回転槽33または水槽32の水量検知手段である水位スイッチ44が接続されている。
【0152】
外箱31の正面側には、制御装置45が配置されている。制御装置45は、操作/表示部46を通じて、使用者からの操作指令を受け、駆動ユニット37、水供給部39および排水弁42などに動作指令を発する。また、制御装置45は、操作/表示部46に表示指令を発する。
【0153】
回転槽33は、テーパー状に上方に広がっているので、回転槽33が回転すると、回転槽33に貯留された水は遠心力によって回転槽33の内側の回転槽壁を流動して上昇する。回転槽壁を上昇した洗濯水は、回転槽33の上端にたどりついたところで脱水孔35から放出される。脱水孔35を離れた洗濯水は、水槽32の内面にたたきつけられ、水槽32の内面を伝って水槽32の底部に流れ落ちる。そして、流れ落ちた洗濯水は、排水管40を通って外箱31の外に排出される。
【0154】
汚染検知装置1の構成は、第1の実施の形態で説明したものと同様である。汚染検知装置1は、水槽32に設置されている。より具体的には、汚染検知装置1は、回転槽33および水槽32の、カビまたは微生物が発生しやすい脱水孔35付近に、光源3が光を照射することができるように設置されている。
【0155】
本実施の形態の洗濯機30のように縦型の構造の場合、喫水線は回転槽上部にあり、さらに回転槽内から水を排出する脱水孔35は回転槽上部にあるので、この脱水孔35付近の水槽32の内壁面および回転槽33の外壁面、ならびに、回転槽33の上部の樹脂部分に、カビが発生したり微生物が付着したりしやすい。そこで、本実施の形態では、この発生しやすい箇所に光を照射しやすいよう、汚染検知装置1は設置されている。
【0156】
また、汚染検知装置1は、光源3を水から保護するためにシーリングされている。汚染検知装置1は、耐熱性(熱絶縁性)および防水性を備えたシール材または接着剤等を用いて水槽32に固定されている。
【0157】
制御装置45は、汚染検知装置1と連動している。制御装置45は、洗濯工程時以外に光を照射するように光源3を制御する。この際、安全のためドアユニット34がロック状態になるように制御する。
【0158】
また、汚染検知装置1の筐体は金属製の防水ケースからなり、筐体の光源3からの光および受光部に入射する光が通過する箇所は、光透過板で覆われる。光透過板の材質は、測定波長に対して光透過性があり、耐水性、耐熱性および耐衝撃性など、洗濯機に取付けられる上で必要と考えられる性質を持つ材料であればよく、たとえば、結晶性ガラスまたは合成石英などを採用するのが好ましい。本実施の形態では、近赤外の光を透過できる耐熱ガラス板を用いている。
【0159】
防水ケースは錆びにくいものであれば、ステンレスまたは鋼板等の一般的な金属板を用いることができる。
【0160】
このようにして、汚染検知装置1は、洗濯の工程で飛散する水を遮蔽することができる防水性の仕様になっている。
【0161】
また、出力装置13は、操作/表示部46に構成される。なお、洗濯機30には、上述した構成に加えて、洗濯機30の構成として必要な他の構成も備えられる。
【0162】
図7は、第2の実施の形態における洗濯機30で実行される汚染検知処理の流れを示すフローチャートである。この汚染検知処理は、洗濯機30に備えられる汚染検知装置1の演算回路7によって実行される処理のサブルーチンの1つである。
【0163】
この汚染検知処理は、洗濯機能が実行されていないときに、定期的(たとえば、24時間ごと)に実行される。なお、本実施の形態では、汚染検知処理が定期的に実行されるようにするが、ユーザが実行間隔を設定可能なように構成してもよいし、ユーザによる汚染検知処理の実行指示に応じて実行するようにしてもよい。
【0164】
図4を参照して、第2の実施の形態における汚染検知処理のステップS201からステップS227までの処理は、第1の実施の形態における汚染検知処理のステップS101からステップS127までの処理と比較して、測定対象6が、水槽32および回転槽33とされたこと以外は、基本的に同じ処理である。このため、重複する説明は繰返さない。
【0165】
ステップS215においては、洗濯機30の場合、湿度が高い状態におかれることが多いため、特に、温度および湿度から水分の光スペクトルへの寄与を考慮することで、より精度良くカビや微生物などの汚染状態を算出する。
【0166】
ステップS227においては、温度および湿度に加えて、洗濯機30で使用された水量または洗濯物の汚れ具合などの情報も記憶するようにしてもよい。なお、使用された水量の検知は、水位スイッチ44の検知した単位時間当たりの水量変化、単位水量の変化に要する時間、および、マイコンで選んだ洗濯コースの履歴などに基づいて、演算して求めることができる。
【0167】
ステップS224においては、紫外線を照射して汚染を浄化する。しかし、これに限定されず、洗濯機30内に予めユーザーによって投入された浄化液を用いて水槽32内を自動的に浄化しても良いし、また操作/表示部46に警告を発することで、ユーザーに注意を促して、ユーザー自身が市販の洗剤を用いて手動で浄化してもよいし、ユーザーにとって最適の手段をユーザー自身が選択できるよう、操作/表示部46を介してユーザーが設定できるように構成されてもよい。
【0168】
以上説明したように、本実施の形態に係る洗濯機30に備えられる汚染検知装置1によれば、第1の実施の形態で説明した効果に加えて次のような効果が奏される。
【0169】
また、カビまたは微生物など汚染の光吸収の帰属を考慮した波長の選択によって汚染を検知するので、従来の使用頻度または洗濯に用いた水量からの一律な予測よりも、精度良くカビまたは微生物の発生を見積もることができる。よって、測定対象を汚染度の低い状態に維持でき、また、汚染状態の誤検知による浄化の無駄を低減することができる。
【0170】
その結果、ユーザーごとの洗濯機30の使用頻度および洗濯量などの違いまたは実情を反映した、ユーザーに合った精度の良い検知と効率のよい浄化ができる。
【0171】
また、本実施の形態では、水槽32および回転槽33の汚染状態を検知する際に、回転槽33を駆動させないで検知するので、省電力に検知できる。
【0172】
回転槽33に供給される水量の調整は、一般的な給水水圧ではある範囲の流量しか流れない弁を用いて、水量をある範囲内に水量を調整する構成であってもよいし、周知の水位スイッチと流量計とを組み合わせて水量を調整する構成してもよい。
【0173】
本実施の形態では、洗濯機能のみの洗濯機30に汚染検知装置1が備えられる場合について説明したが、これに限定されず、乾燥機能を持つ洗濯乾燥機に汚染検知装置1が備えられるように構成してもよい。
【0174】
また、本実施の形態では、縦型の洗濯機30に汚染検知装置1が備えられる場合について説明したが、これに限定されず、水槽が斜めに設置されているドラム式の洗濯機または洗濯乾燥機に汚染検知装置1が備えられるように構成してもよい。この場合も、カビまたは微生物などの物質で構成される望ましくない汚染の発生する箇所に、汚染検知装置1の光源3から光を照射して検知できるよう、汚染検知装置1を設置することで、汚染状態を算出できる。
【0175】
また、パルセーター37の裏面に光を照射できるよう、汚染検知装置1を設置するのもよい。この場合も、パルセーター37の裏面はカビや微生物が発生しやすいので、汚染状態を検知できることで、汚染状態の浄化に役立てることができる。
【0176】
また、汚染検知装置1を1箇所だけでなく、パルセーター付近、または、水槽32および回転槽33の脱水孔35付近の対角線上の4箇所など、カビまたは微生物が発生しやすい2箇所以上に設置し、まんべんなく光照射を行ったり、検知範囲を広げたりしてもよい。この場合、製造コストがかさむが、多くの汚染検知装置と検出場所を組み合わせた方が、検出精度が向上する。
【0177】
また、光源3を含む汚染検知装置1の取り付け位置は、水槽32または回転槽33の壁面に限定されるものではなく、汚染しやすい箇所に向かって光線を照射可能な位置であれば他の位置であってもよく、たとえば、ドアユニット34の内側(回転槽33側)であっても良い。
【0178】
この場合、ドアユニット34を閉じたときに、ドアユニット34に取付けられる汚染検知装置1の光源3の照射方向が回転槽33の壁面に向くように光源3を配置して、光源3からの光が水槽32の壁面に照射されるように、光が照射される回転槽33の範囲に、回転槽33の壁面を貫通する小孔を設けるようにする。
【0179】
このように構成されることにより、制御装置45がドアユニット34のロック状態等を検知することと併せて、光源3および浄化装置15からの光の照射を制御することにより、使用者、洗濯機30の近くにいる人または近くにある物に、光が照射されるのを効果的に防止することができるという利点、および、故障したときに修理しやすいなどの利点がある。
【0180】
以上説明したように、汚染検知装置1を備えた洗濯機30は、人間が着る服を洗う洗濯機の洗濯水に触れる筐体の内部などの、汚染または劣化に繋がるカビまたは微生物などの発生が問題となるような対象に対して、光照射によって、非破壊的かつ迅速に、ユーザーの使用状況に合わせた適切な設定で、カビまたは微生物などの汚染を構成する物質に起因する望ましくない汚染を、その汚染の光吸収の帰属を考慮することによって、精度良く検知し、また、蓄積した過去のデータから経時変化を考慮して、異常な変動を検知することができる。
【0181】
そして、汚染検知装置1は、汚染の検知結果の情報を適宜記憶したり、自動的に汚染に対応する制御をしたり、ユーザーの選択によって手動で汚染に対応させるために、検知結果、汚染状況、および、適切な対応時期を、ユーザーに知らせたりすることができる。
【0182】
以上説明した実施の形態の変形例を以下で説明する。前述した実施の形態においては、受光部4が検出するのは、測定対象6の汚染状態を形成する物質の反射光のスペクトルであることとした。しかし、これに限定されず、測定対象6の汚染状態を形成する物質の透過光のスペクトルを検出可能なように、受光部4を構成してもよい。
【0183】
前述した実施の形態においては、温度湿度検知機構5は、温度および湿度の両方を検知するようにした。しかし、これに限定されず、温度湿度検知機構5は、温度または湿度のいずれかを検知するようにしてもよい。
【0184】
前述した実施の形態においては、浄化装置15は、汚染状態を構成する物質を浄化するために紫外線を用いるようにした。しかし、これに限定されず、浄化装置15は、プラズマ放電により作り出され空中に放出されるイオンを用いるようにしてもよい。
【0185】
前述した実施の形態においては、環境制御装置16は、温度および湿度を制御するようにした。しかし、これに限定されず、環境制御装置16は、雰囲気中に浮遊する汚染状態を構成する物質であるカビまたは微生物を、プラズマ放電により作り出され空中に放出されたイオンで、空中で分解して除去することによって、雰囲気中の汚染状態を構成する物質の数を減少させるように制御してもよい。これにより、測定対象6に付着して繁殖するカビおよび微生物の測定対象6への付着を減少させることができる。
【0186】
前述した実施の形態においては、光源3として、紫外線と異なる波長の光を照射するものを用いるが、これに限定されず、光源3として、紫外線を照射するものを用いてもよい。このようにすれば、浄化装置15の機能を、光源3で代用させることができるので、光源3および浄化装置15の両方を設ける必要がなくなり、製造コストを削減することができる。
【0187】
前述した実施の形態においては、出力装置12、外部入力装置14、浄化装置15、および、環境制御装置16は、汚染検知装置1と別体として構成されるようにした。しかし、これに限定されず、出力装置12、外部入力装置14、浄化装置15、および、環境制御装置16のうちのいずれかが、汚染検知装置1に含まれるように構成してもよい。
【0188】
前述した実施の形態においては、汚染検知装置1の発明、および、洗濯機30の発明として説明した。しかし、これに限定されず、汚染検知装置1に加えて、浄化装置15または環境制御装置16を含む汚染浄化システムの発明、汚染検知装置1もしくは洗濯機30もしくは汚染浄化システムで実行される汚染検知方法もしくは汚染浄化方法の発明、または、汚染検知装置1もしくは洗濯機30で実行される汚染検知プログラムもしくは汚染浄化プログラムの発明と捉えることができる。
【0189】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0190】
1 汚染検知装置、2 光デバイス駆動部、3 光源、4 受光部、5 温度湿度検知機構、6 測定対象、7 演算回路、8 測定データ記憶装置、9 判定部、10 検量データ記憶装置、11 フィードバック回路、12 出力装置、14 外部入力装置、15 浄化装置、16 環境制御装置、17 台座、30 洗濯機、31 外箱、32 水槽、33 回転槽、34 蓋、35 脱水孔、36 パルセータ、37 駆動ユニット、38 パルセータ軸、39 水供給部、40 配水管、41 排水空間、42 排水弁、43 導圧管、44 水位スイッチ、45 制御装置、46 操作/表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染状態の検出箇所に光を照射する光源と、
前記光源から照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出する受光部と、
前記汚染状態と前記汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量線記憶部と、
前記受光部で検出された光のスペクトルと前記検量線記憶部に記憶された前記検量線データとに基づいて、汚染状態を見積もる演算部とを備える、汚染検知装置。
【請求項2】
前記演算部で見積もられた前記汚染状態を出力する汚染状態出力部をさらに備える、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項3】
前記検量線記憶部は、汚染状態を形成する第1の物質の基質が吸収する波長を含む範囲の吸光度スペクトルと前記第1の物質の濃度との関係を示す検量線データを予め記憶し、
前記演算部は、前記受光部で検出された光のスペクトルから吸光度スペクトルを算出し、算出された前記吸光度スペクトルと、前記検量線記憶部に記憶された前記検量線データとに基づいて、前記汚染状態として前記物質の量または前記物質が存在する範囲を見積もる、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項4】
前記演算部で見積もられた前記汚染状態が所定レベル以上であるか判定する判定部をさらに備える、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項5】
前記演算部で見積もられた前記汚染状態を、測定時を特定可能に記憶する汚染状態記憶部をさらに備える、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項6】
前記汚染状態記憶部に記憶された前記汚染状態の経時変化を表示装置に表示させる制御を行なう表示制御部をさらに備える、請求項5に記載の汚染検知装置。
【請求項7】
前記汚染状態記憶部に記憶された前記汚染状態の経時変化に基づいて、汚染状態の変化が所定レベル以上であるか判定する判定部をさらに備える、請求項5に記載の汚染検知装置。
【請求項8】
前記判定部によって判定された判定結果を出力する汚染判定結果出力部とをさらに備える、請求項4または請求項7に記載の汚染検知装置。
【請求項9】
前記所定レベルを設定する設定部をさらに備え、
前記判定部は、前記汚染状態が前記設定部によって設定された前記所定レベル以上であるか判定する、請求項4または請求項7に記載の汚染検知装置。
【請求項10】
前記演算部で見積もられた前記汚染状態に基づいて、汚染を浄化する浄化装置を制御して汚染を浄化させるフィードバック制御部をさらに備える、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項11】
前記浄化装置をさらに備える、請求項10に記載の汚染検知装置。
【請求項12】
前記演算部は、前記浄化装置によって浄化された後の前記汚染状態を再度見積もる、請求項10に記載の汚染検知装置。
【請求項13】
前記浄化装置に汚染を浄化させるかユーザが汚染を浄化するかの選択をユーザから受付ける選択受付部をさらに備え、
前記フィードバック制御部は、前記選択受付部によって前記浄化装置に汚染を浄化させる選択が受付けられた場合、前記浄化装置に、汚染を浄化させる制御を行なう、請求項10から請求項12までのいずれかに記載の汚染検知装置。
【請求項14】
前記受光部で検出される光が通過する雰囲気の状態として温度および湿度の少なくともいずれか一方を測定する雰囲気測定部をさらに備え、
前記演算部は、前記雰囲気測定部で測定された前記雰囲気の状態に応じて前記受光部で検出された光のスペクトルを補正して、汚染状態を見積もる、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項15】
前記雰囲気測定部で測定された前記雰囲気の状態を、測定時を特定可能に記憶する雰囲気状態記憶部をさらに備える、請求項14に記載の汚染検知装置。
【請求項16】
前記雰囲気測定部で測定された前記雰囲気の状態に基づいて、前記受光部で検出される光が通過する雰囲気の状態を制御する環境制御装置を制御して前記雰囲気の状態を制御させるフィードバック制御部をさらに備える、請求項14または請求項15に記載の汚染検知装置。
【請求項17】
前記環境制御装置をさらに備える、請求項16に記載の汚染検知装置。
【請求項18】
前記雰囲気測定部は、サーミスタを有する、請求項14から請求項17までのいずれかに記載の汚染検知装置。
【請求項19】
前記検量線記憶部に記憶された前記検量線データを校正するための校正データの入力を受付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受付けられた前記校正データに基づいて前記検量線記憶部に記憶された前記検量線データを校正する校正部とをさらに備える、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項20】
前記光源は、LEDである、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項21】
前記光源は、白色光源であり、分光器を含む、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項22】
前記光源は、多波長光源である、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項23】
前記光源は、近赤外域の波長の光を照射する、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項24】
前記光源は、前記汚染状態を形成する第1の物質の基質が吸収する第1の波長に加えて前記第1の物質の基質が吸収しない第2の波長を含む光を照射し、
前記演算部は、前記第2の波長に対する前記汚染状態を形成しない第2の物質による吸収に基づいて、前記第1の波長に対する前記第2の物質による吸収の寄与を除去して、前記第1の波長に対する前記第1の物質による吸収を算出することによって、前記汚染状態を見積もる、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項25】
前記光源および前記受光部は、前記光源から照射された光が前記受光部に直接検出されないように設けられる、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項26】
前記受光部を含む部分と前記演算部を含む部分との情報のやりとりが無線で行なわれる、請求項1に記載の汚染検知装置。
【請求項27】
汚染を検知する汚染検知装置と汚染を浄化する浄化装置とを備え、
前記汚染検知装置は、
汚染状態の検出箇所に光を照射する光源と、
前記光源から照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出する受光部と、
前記汚染状態と前記汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量線記憶部と、
前記受光部で検出された光のスペクトルと前記検量線記憶部に記憶された前記検量線データとに基づいて、汚染状態を見積もる演算部と、
前記演算部で見積もられた前記汚染状態に基づいて、前記浄化装置を制御して汚染を浄化させるフィードバック制御部とを含む、汚染浄化システム。
【請求項28】
前記浄化装置は、紫外線光源で汚染を浄化する、請求項27に記載の汚染浄化システム。
【請求項29】
前記光源は、前記浄化装置の前記紫外線光源である、請求項28に記載の汚染浄化システム。
【請求項30】
前記受光部で検出される光が通過する雰囲気の状態を制御する環境制御装置をさらに備える、請求項27から請求項29までのいずれかに記載の汚染浄化システム。
【請求項31】
汚染を検知する汚染検知装置と汚染を浄化する浄化装置とを備え、
前記汚染検知装置は、
汚染状態の検出箇所に光を照射する光源と、
前記光源から照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出する受光部と、
前記汚染状態と前記汚染状態に対応するスペクトルとの関係を示す検量線データを予め記憶する検量線記憶部と、
前記受光部で検出された光のスペクトルと前記検量線記憶部に記憶された前記検量線データとに基づいて、汚染状態を見積もる演算部と、
前記演算部で見積もられた前記汚染状態に基づいて、前記浄化装置を制御して汚染を浄化させるフィードバック制御部とを含む、洗濯機。
【請求項32】
前記汚染検知装置は、前記光源が、汚染しやすい1または複数の箇所に光を照射可能で、かつ、前記受光部が、照射された光の反射光および透過光の少なくともいずれかの光のスペクトルを検出可能であるように設けられる、請求項31に記載の洗濯機。
【請求項33】
前記汚染しやすい箇所は、水槽および前記水槽の内側の回転槽の喫水線付近である、請求項32に記載の洗濯機。
【請求項34】
前記汚染検知装置は、前記回転槽の外周、または、前記水槽の内周の壁面に設けられる、請求項32または請求項33に記載の洗濯機。
【請求項35】
前記汚染しやすい箇所は、パルセータの駆動装置側の面である、請求項32に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−223871(P2010−223871A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73732(P2009−73732)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】