説明

汚泥等回収装置

【課題】駆動系を構成する機構を水中に浸からせずかつ水中で機構同士を接触や摺動をさせないようにして、保守や管理、さらには点検や修理に手数を要さないようにする。
【解決手段】汚泥を端部Qの汚泥ピット11で回収し、スカムを中央部Cのスカムスキマ13で回収するのに、スカムスキマ13を挟む各領域に掻き寄せ機構10P,10Qを設ける。各掻き寄せ機構10P,10Qは、第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bと、沈殿池1の上方より各掻き寄せ板2A,2Bを吊持して移動させる移動機構3とを含む。第1の掻き寄せ機構10Pの移動機構3は、第1の掻き寄せ板2Aを池底aに沿って、第2の掻き寄せ板2Bを水面bに沿って、それぞれ端部Pから中央部Cへ移動させる。第2の掻き寄せ機構10Qの移動機構3は、第1の掻き寄せ板2Aを池底aに沿って中央部Cから端部Qへ、第2の掻き寄せ板2Bを水面bに沿って端部Qから中央部Cへ、それぞれ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水処理施設や汚泥処理施設などにおいて、沈殿池の池底に堆積した汚泥および水面に浮遊したスカム(以下、汚泥とスカムとを「汚泥等」と総称する。)を掻き寄せて回収する汚泥等回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水処理施設では、下水から固形物などが除去された後、汚泥等を含む処理前の水が沈殿池に導入される。沈殿池の池底には沈降した汚泥が堆積し、また、腐敗に伴うガスなどを含む汚泥はスカムとなって浮上して水面付近に浮遊する。汚泥は池底に沿って汚泥ピットまで掻き寄せられて回収される。スカムは水面に沿って「スカムスキマ」と呼ばれる樋状管まで掻き寄せられて回収される。
【0003】
図12は、従来の汚泥等回収装置の一例を示している。
図示例の汚泥等回収装置は、複数の掻き寄せ板100が一定間隔毎に左右のチェン101,101間に取り付けられたものである。前記掻き寄せ板100は沈殿池1の池底aに沈殿した汚泥Aを汚泥ピット111に掻き寄せ、水面bに浮遊したスカムBをスカムスキマ112に掻き寄せる。各チェン101は沈殿池1の内部適所に配置された駆動ホイール103や従動ホイール104に掛け渡されている。駆動ホイール103を駆動機構102により駆動して各チェン101を走行させると、各掻き寄せ板100は沈殿池1の全長にわたり池底aに沿って移行する。池底aに堆積した汚泥Aは掻き寄せ板100により掻き寄せられて汚泥ピット111に回収される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−31214号公報(図4)
【0005】
また、各掻き寄せ板100は、沈殿池1の水流入壁113に近い領域Sでは水面bに沿って移行するので、この領域S内のスカムBはスカムスキマ112に向けて掻き寄せられて回収される。このスカムスキマ112は沈殿池1のほぼ中央部に設置してあり、適時傾けることにより開口部114よりスカムBを導入する。なお、汚泥AやスカムBはその殆どが水流入壁113に近い領域Sで堆積または浮遊するもので、特にスカムBは、沈殿池1の水流入壁113に近い領域Sで掻き寄せれば十分であるとされている。各掻き寄せ板100はチェン101の走行とともに周回するもので、汚泥AやスカムBの掻き寄せが継続して行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した構成の汚泥等回収装置は、チェン101が沈殿池1の内部全域に設けられるため、駆動系が大掛かりとなる。また、チェン101の駆動系を構成する機構が水に浸かるうえ、水中で機構同士が接触したり摺動したりするので、腐食し易く、保守・管理に手数を要する。また、水中にある機構に故障や不具合が生じると、点検や修理のために沈殿池1の水を抜き取る必要があり、作業に手数がかかるという問題がある。
【0007】
ところで、近年、水質の悪化により沈殿池1に導入される水が多量の汚泥AとスカムBとを含むようになり、スカムBが浮遊する領域が沈殿池110のほぼ全域に広がっている。しかし、上記した構成の汚泥等回収装置では、限られた領域SでスカムBの掻き寄せを行っているため、スカムBの回収が不十分である。
そこで、スカムスキマ112の設置位置を中央部から一端部に変更するとともに、掻き寄せ板100の水面に沿う移行領域を全域に拡張することも可能であるが、これでは設備が一層大型化するだけでなく、スカムスキマ112の改修工事に多くの労力と費用とが必要となる。
【0008】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、駆動系が大掛かりとならず、駆動系を構成する機構を水中に浸からせずかつ水中で機構同士を接触や摺動をさせないようにして、保守や管理、さらには点検や修理に手数を要さない汚泥等回収装置を提供することを目的とする。
また、この発明が他に目的とするところは、スカムスキマの設置位置を変更することなく、沈殿池の全域にわたってスカムを掻き寄せることを可能とした汚泥等回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による汚泥等回収装置は、沈殿池の池底に堆積した汚泥を沈殿池の一端部に位置する汚泥ピットに向けて掻き寄せて回収するとともに、水面に浮遊したスカムを沈殿池のほぼ中央部に設置されたスカムスキマに向けて掻き寄せて回収するようにしたものであり、前記沈殿池のスカムスキマを挟む2つの各領域に掻き寄せ機構がそれぞれ設けられている。各掻き寄せ機構は、池底の汚泥を掻き寄せるための第1の掻き寄せ板と、水面のスカムを掻き寄せるための第2の掻き寄せ板と、沈殿池の上方より第1、第2の各掻き寄せ板を吊持して一体に移動させる移動機構とをそれぞれ含んでいる。一方の掻き寄せ機構の移動機構は、第1の掻き寄せ板を池底に沿って、第2の掻き寄せ板を水面に沿って、それぞれ汚泥ピットと反対側の端部から中央部へ移動可能に形成されている。他方の掻き寄せ機構の移動機構は、第1の掻き寄せ板を池底に沿って中央部から汚泥ピットの側の端部へ、第2の掻き寄せ板を水面に沿って汚泥ピットの側の端部から中央部へ、それぞれ移動可能に形成されている。
【0010】
この発明の上記した構成において、「第1の掻き寄せ板」や「第2の掻き寄せ板」は、例えば1枚の薄板材をもって構成してもよいが、特に、「第1の掻き寄せ板」は、汚泥の回収効率を高めるために、複数枚の薄板材を組み合わせて構成するのが望ましい。第1、第2の各掻き寄せ板は、望ましくは、沈殿池の全幅にわたって汚泥やスカムを掻き寄せることが可能な大きさに設定する。なお、第1の掻き寄せ板は、池底に接触させずに移行させるようにして摩耗が生じさせないようにするのが望ましい。
【0011】
「スカムスキマ」は、スカムを確実に回収するため、沈殿池の全幅にわたる長さに形成するのが望ましい。典型的なスカムスキマは、傾動可能に支持されており、ほぼ全長にわたって1個または複数個の開口部を備えている。開口部が上を向いているときは、スカムはスカムスキマでせき止められるが、スカムスキマを傾動させて開口部を水面近くに位置させれば、掻き寄せられてきたスカムが開口部よりスカムスキマに導入される。
【0012】
上記した汚泥等回収装置において、各掻き寄せ機構の移動機構は、沈殿池の上方より第1、第2の各掻き寄せ板を吊持して一体に移動させる。一方の掻き寄せ機構の移動機構は、第1の掻き寄せ板を池底に沿って、第2の掻き寄せ板を水面に沿って、それぞれ汚泥ピットと反対側の端部から中央部へ移動させるので、この移動範囲内に堆積した汚泥や浮遊したスカムは沈殿池の中央部まで掻き寄せられ、スカムはスカムスキマに回収される。
他方の掻き寄せ機構の移動機構は、第1の掻き寄せ板を池底に沿って中央部から汚泥ピットの側の端部へ移行させるので、この移動範囲内に堆積した汚泥と沈殿池の中央部まで掻き寄せられた汚泥とは沈殿池の汚泥ピットの側の端部まで掻き寄せられて汚泥ピットに回収される。また、第2の掻き寄せ板を水面に沿って汚泥ピットの側の端部から中央部へ移動させるので、この移動範囲内に浮遊するスカムは沈殿池の中央部まで掻き寄せられてスカムスキマに回収される。
【0013】
この発明の好ましい一実施態様においては、各掻き寄せ機構の移動機構は、第1、第2の掻き寄せ板を上方より吊持するフレームと、前記フレームを沈殿池の長さ方向に往復動させる駆動機構部とを含んでいる。前記駆動機構部は、第1の掻き寄せ板を池底沿いに移動させる往路に対して復路が往路より高位置となる周回軌道に沿ってフレームを移動させる。
この実施態様によると、各掻き寄せ機構の移動機構は、往路では第1の掻き寄せ板は沈殿池の池底近くを移動して池底に堆積した汚泥を一方向へ掻き寄せる。復路は往路に対して高位置にあるので、復路では第1の掻き寄せ板は上方へ持ち上げられて池底から離れ、池底の汚泥をかき混ぜることなく水中を移動する。
【0014】
前記駆動機構部は、種々の態様のものが考えられるが、その一は、沈殿池の両側に沈殿池の長さ方向に沿って張設される左右一対のチェンと、各チェンを一方向へ走行させてチェンが周回する周回軌道に沿って前記フレームをチェンと一体に移動させる駆動装置とを含んだものである。
この実施態様によると、フレームがチェンと一体に下側の軌道を移動するとき、第1の掻き寄せ板は池底に沿って移動し、池底に堆積した汚泥を掻き寄せる。フレームがチェンと一体に上側の軌道を移動するとき、第1の掻き寄せ板は池底より持ち上げられた状態で水中を移動する。
【0015】
前記駆動機構部の他の態様は、沈殿池の両側に沈殿池の長さ方向に沿って敷設される左右一対のピンラックと、前記フレームの両端部に各ピンラックと噛み合うように設けられた左右一対のピニオンと、各ピニオンを一方向へ回転させてピンラックを周回する周回軌道に沿って移動させる駆動装置とを含んだものである。
この実施態様によると、ピニオンがピンラックの下面と噛み合ってフレームを一体移動させるとき、第1の掻き寄せ板は池底に沿って移動し、池底に堆積した汚泥を掻き寄せる。ピニオンがピンラックの上面と噛み合ってフレームを一体移動させるとき、第1の掻き寄せ板は池底より持ち上げられた状態で水中を移動する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、各掻き寄せ機構の移動機構は沈殿池の上方に設けられるので、駆動系が大掛かりとなることがない。また、駆動系を構成する機構は水に浸からず、水中での機構同士の接触や摺動がないので、腐食が問題とならず、保守・管理に手数を要さない。さらに、移動機構に故障や不具合が発生しても、水面の上方で対処でき、沈殿池の水抜きを行う必要がないため、点検や修理に手数がかからない。
さらにまた、スカムスキマが沈殿池のほぼ中央部に位置していても、沈殿池の全域にわたってスカムの回収が可能であるから、特に、従来のものをこの発明による汚泥等回収装置に取り換えるような場合に、スカムスキマを移設せずにそのまま流用でき、改修に要する費用を節減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1および図2は、この発明の一実施例である汚泥等回収装置の構成を示す。
同図において、1は汚泥を含む水が導入される沈殿池であり、池底aには一方の端部Q(図1では左端部)の側に汚泥ピット11が形成されている。汚泥を含む水は端部Qの側の水流入壁18より沈殿池1に流入する。同図中、Aは池底aに堆積した汚泥、Bは水面bに浮遊するスカムである。池底aの幅中央部はほぼ水平で平坦であるが、池底aの両側縁は傾斜面12になっている。汚泥Aはまず沈殿池1の他方の端部P(同図では右端部)から中央部Cへ掻き寄せられ、次いで中央部Cから端部Qへ掻き寄せられて汚泥ピット11に回収される。汚泥ピット11に溜まった汚泥Aは吸込管14により沈殿池1の外部へ排出される。
【0018】
スカムBは両方の端部P,Qから中央部Cへ掻き寄せられ、中央部Cの水面b付近に位置するスカムスキマ13に回収される。スカムスキマ13は、沈殿池1の全幅にわたる長さを有しており、回動自由に両端が支持されるとともに、図6に示すように、シリンダ機構などで構成される傾動機構15に連繋されている。
スカムスキマ13は、ほぼ全長にわたって1個または複数個の開口部16を備えており、図7(1)に示すように、開口部16が上方を向くとき、スカムBがスカムスキマ13でせき止められるが、図7(2)に示すように、スカムスキマ13が端部Qの側へ傾いて開口部16が水面bに接すると、端部Qから中央部Cへ掻き寄せられたスカムBが開口部16より回収される。また、図7(3)に示すように、スカムスキマ13が端部Pの側へ傾いて開口部16が水面bに接すると、端部Pから中央部Cへ掻き寄せられたスカムBが開口部16より回収される。スカムスキマ13で回収されたスカムBも沈殿池1の外部へ排出される。
【0019】
この実施例では、後述する第2の掻き寄せ板2Bがスカムスキマ13に近い所定の位置に達したことをリミットスイッチで検出したとき、スカムスキマ13を傾動させ、その後、一定時間が経過したとき、復帰動作させている。
なお、図1において、17は上澄み水を導入して外部へ送り出す溢水路である。
【0020】
図示例の汚泥等回収装置は、沈殿池1のスカムスキマ13を挟む2つの各領域、すなわち、端部Pと中央部Cとの間の領域S1と端部Qと中央部Cとの間の領域S2とに第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qがそれぞれ設けられている。
各掻き寄せ機構10P,10Qは、池底aに堆積した汚泥Aを掻き寄せるための第1の掻き寄せ板2Aと、水面bに浮遊するスカムBを掻き寄せるための第2の掻き寄せ板2Bと、沈殿池1の上方より第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bを吊持して一体に移動させる移動機構3とをそれぞれ含んでいる。
【0021】
第1の掻き寄せ機構10Pの移動機構3は、第1の掻き寄せ板2Aを池底aに沿って、第2の掻き寄せ板2Bを水面bに沿って、それぞれ端部Pから中央部Cへ移動させる。第2の掻き寄せ機構10Qの移動機構3は、第1の掻き寄せ板2Aを池底aに沿って中央部Cから端部Qへ移動させた後、次いで第2の掻き寄せ板2Bを水面bに沿って端部Qから中央部Cへ移動させる。
第1の掻き寄せ機構10Pでは、第1の掻き寄せ板2Aが池底aに位置するときに第2の掻き寄せ板2Bが水面bに位置するように第2の掻き寄せ板2Bの設置位置が定められている。また、第2の掻き寄せ機構10Qでは、第1の掻き寄せ板2Aが池底aに位置するときに第2の掻き寄せ板2Bが水面下に位置し、第2の掻き寄せ板2Bが水面bに位置するときに第1の掻き寄せ板2Aが池底aより上方に位置するように第2の掻き寄せ板2Bの設置位置が定められている。
【0022】
第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける第1の掻き寄せ板2Aは、水平基板20の下面に3枚の薄板材21〜23が等間隔で垂直に取り付けられたものである。各薄板材21〜23は池底aの幅と一致する長さを有し、下端部は池底aの形状に対応した形状に形成されている。なお、第1の掻き寄せ板2Aは必ずしも複数枚の薄板材をもって構成する必要はなく、1枚の薄板材をもって構成してもよく、また、その1枚の薄板材を複数に分割したような構成であってもよい。
また、第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける第2の掻き寄せ板2Bは、水平な腕部材24の先端に薄板材25が下向きに取り付けられたものである。
【0023】
第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける移動機構3は、フレーム4、支持機構部5、および駆動機構部6によりそれぞれ構成されており、沈殿池1の上方に設けられている。
前記フレーム4は、図3および図4に示すように、全長が沈殿池1の幅にほぼ一致する長さを有する断面形状が矩形の金属パイプである。フレーム4の両端には連結パイプ45を介して支持プレート40がそれぞれ取り付けられ、各支持プレート40が駆動機構部6に回動自由に支持されている。
前記フレーム4の両端部の左右対称位置には吊下棒41,41が吊持され、吊下棒41,41の下端間に第1の掻き寄せ板2Aが、中間部間に第2の掻き寄せ板2Bが、それぞれ取り付けられている。前記支持プレート40は駆動機構部6に対して回動自由であるから、吊下棒41はその荷重によって常に下方に垂下する。
【0024】
第1の掻き寄せ機構10Pにおける支持機構部5は、フレーム4を沈殿池1の端部Pから中央部Cまで移動させる往路および中央部Cから端部Pまで移動させる復路においてフレーム4を移動可能に支持するためのもので、両端の支持プレート40の前後位置にアーム53,53を介して回転自由に支持されたローラ50,50と、往路において前後の各ローラ50を転動自由に支持する下段のガイドレール51と、復路において前後の各ローラ50を転動自由に支持する上段のガイドレール52とで構成されている。
【0025】
第2の掻き寄せ機構10Qにおける支持機構部5は、フレーム4を沈殿池1の中央部Cから端部Qまで移動させる往路および端部Qから中央部Cまで移動させる復路においてフレーム4を移動可能に支持するためのもので、上記と同様の構成のローラ50,50、下段のガイドレール51、および上段のガイドレール52で構成されている。
各ガイドレール51,52は沈殿池1の両側に設けられ、各ガイドレール51,52と各ローラ50,50とでフレーム4の姿勢を保持して第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bが傾くのを規制する傾き規制機構を構成している。
【0026】
第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける駆動機構部6は、図5に示すように、沈殿池1の両側に張設される左右一対のチェン7P,7Qを用いて構成されている。
各チェン7P,7Qは、図3に示されるように、対向する連結板70,70のそれぞれを次々に連ねて構成されたもので、各連結板70,70の連結部分が枢軸71により連結され、各枢軸71上にローラ72が回動自由に配備されている。
各チェン7P,7Qの端部Pの側から端部Qの側に向かって走行する下側の軌道に沿って下部レール73が、また、端部Qの側から端部Pの側に向かって走行する上側の軌道に沿って上部レール74が、それぞれ設けられており、下部および上部の各レール73,74によってローラ72が回動自由に支持されている。
【0027】
第1の掻き寄せ機構10Pにおいては両側のチェン7P,7Pの対向位置に、また、第2の掻き寄せ機構10Qにおいては両側のチェン7Q,7Qの対向位置に、それぞれ前記フレーム4の両端に設けられた支持プレート40が回動自由に支持されており、第1の掻き寄せ機構10Pにおいてはチェン7Pが周回する周回軌道に沿って、第2の掻き寄せ機構10Qにおいてはチェン7Qが周回する周回軌道に沿って、前記フレーム4がチェン7P,7Qの走行と一体にそれぞれ移動する。
【0028】
第1の掻き寄せ機構10Pにおける両側の各チェン7P,7Pは、それぞれホイール75P,76P間に張設されている。また、第2の掻き寄せ機構10Qにおける両側の各チェン7Q,7Qは、それぞれホイール75Q,76Q間に張設されている。前記ホイール76Q,76Qは駆動装置8によって駆動され、これにより第2の掻き寄せ機構10Qの駆動機構部6が駆動する。図示例の駆動装置8は、モータ81の回転をチェンやギヤにより回転軸83に伝え、回転軸83の回転を左右のチェン84,84を介して各チェン7Q,7Qのホイール76Q,76Qに伝えるものである。
第2の掻き寄せ機構10Qのホイール75Qと第1の掻き寄せ機構10Pのホイール76Pとの間はチェン伝動機構80により接続されている。前記駆動装置8の駆動力は第2の掻き寄せ機構10Qの駆動機構部6から第1の掻き寄せ機構10Pの駆動機構部6へ前記チェン伝動機構80を経て伝達される。
【0029】
この実施例では、スカムスキマ13が沈殿池1の中央位置に設置されているので、第1の掻き寄せ機構10Pのチェン7Pと第2の掻き寄せ機構10Qのチェン7Qとは同じ長さとし、各チェン7P,7Qの走行速度も同じに設定しているが、スカムスキマ13の設置位置が端部Pの側に片寄っている場合は第2の掻き寄せ機構10Qのチェン7Qを第1の掻き寄せ機構10Pのチェン7より長くし、各チェン7P,7Qの周回時間を一致させる場合はチェン7Qの走行速度がチェン7Pの走行速度より速くなるように駆動機構部6を構成する。
一方、スカムスキマ13の設置位置が端部Qの側に片寄っている場合は第1の掻き寄せ機構10Pのチェン7Pを第2の掻き寄せ機構10Qのチェン7Qより長くし、各チェン7P,7Qの周回時間を一致させる場合はチェン7Pの走行速度がチェン7Qの走行速度より速くなるように駆動機構部6を構成する。
【0030】
なお、この実施例では、第1の掻き寄せ機構10Pの第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bが中央部Cに達して汚泥AおよびスカムBの掻き寄せ動作を終えた後、暫くして第2の掻き寄せ機構10Qの第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bが中央部Cに達してスカムBの掻き寄せ動作を終えかつ汚泥Aの掻き寄せ動作が始まるように、各掻き寄せ機構10P,10Qにおけるフレーム4の取り付け位置を調整しているが、必ずしも、そのようなタイミングで第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qを動作させる必要はない。
【0031】
第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける駆動機構部6は、上記したチェン7P,7Qを用いたものに限らず、図8以降に示す実施例のように、ピンラック61とピニオン63とを用いたものであってもよい。
【0032】
図8および図9に示す実施例も、上記した実施例と同様、第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qより成るもので、それぞれの移動機構3は、フレーム4、支持機構部5、および駆動機構部6を含んでいる。なお、図中、9は駆動機構部6のモータ65(後述する。)に電源を供給するためのケーブルであって電源装置に接続されている。
【0033】
この実施例では、第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bは、図10および図11に示すように、管状をなす主フレーム42の両端部に一体に設けられた吊下棒41,41によって上方より吊持されている。主フレーム42の一端には箱状をなす中間フレーム43および管状をなす端フレーム44が連結され、この三者によって前記フレーム4が構成されている。フレーム4の全長は沈殿池1の幅にほぼ一致し、主フレーム42、中間フレーム43、および端フレーム44の中空内部を駆動機構部6の駆動軸60が貫通している。駆動軸60は図示しない軸受を介してフレーム4の内部に支持されており、その結果、フレーム4は駆動軸60に対して回動自由であり、吊下棒41はその荷重によって常に下方に垂下する。
【0034】
前記支持機構部5は、前記フレーム4を移動可能に支持するもので、この実施例では、第1〜第3の支持機構5A〜5Cにより構成されている。
第1の掻き寄せ機構10Pにおける第1の支持機構5Aはフレーム4を沈殿池1の端部Pから中央部Cまで移動させる往路においてフレーム4を支持する。また、第2の掻き寄せ機構10Qにおける第1の支持機構5Aはフレーム4を沈殿池1の中央部Cから端部Qまで移動させる往路においてフレーム4を支持する。各掻き寄せ機構10P,10Qの第1の支持機構部5Aは、フレーム4の両端部にそれぞれ前後端にローラ50,50が設けられた左右一対のアーム53と、往路において各アーム53の各ローラ50を転動自由に支持するガイドレール51とで構成されている。ガイドレール51は沈殿池1の両側に設けられ、往路において各ガイドレール51とアーム53とローラ50とでフレーム4の姿勢を保持して第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bが傾くのを規制する傾き規制機構を構成している。
【0035】
つぎに、第1の掻き寄せ機構10Pにおける第2の支持機構5Bはフレーム4を往路と反対方向へ移動させて端部Pに戻す復路においてフレーム4を支持する。また、第2の掻き寄せ機構10Qにおける第2の支持機構5Bはフレーム4を往路と反対方向へ移動させて中央部Cに戻す復路においてフレーム4を支持する。各掻き寄せ機構10P,10Qの第2の支持機構部5Bは、フレーム4の両端より突出した前記駆動軸60の両端部にそれぞれ軸受を介して回動自由に支持された左右のローラ54と、復路において各ローラ54,54をそれぞれ転動自由に支持するガイド部材55とで構成されている。このガイド部材55は後述するピンラック61のピン62を支持するベース部材を兼ねており、前記した往路ではローラ54はガイド部材55の水平な下面に少し間隙をもって移動し、復路ではローラ54はガイド部材55の水平な上面に支持されて移動する。
【0036】
つぎに、第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける第3の支持機構5Cは、フレーム4が往路から復路へ、または復路から往路へ、それぞれ移行する各移行路においてフレーム4を支持するためのもので、前記ローラ54と、ガイド部材55の周囲を囲むように設けられたガイド板56とで構成されている。このガイド板56は、ガイド部材55の上方に位置する直線部56cとガイド部材55の両端に位置する湾曲部56a,56bとから成り、往路から復路への移行路および復路から往路への移行路ではローラ54はガイド板56の湾曲部56a,56bによって支持されつつ移動する。
【0037】
第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける前記駆動機構部6は、それぞれのフレーム4を沈殿池1の長さ方向に往復動させるもので、沈殿池1の両側に水平に敷設される左右一対のピンラック61,61と、前記フレーム4の両端部に各ピンラック61と噛み合うように設けられた左右一対のピニオン63とを含むものである。各ピンラック61は複数本のピン62がベース部材を兼ねる前記ガイド部材55に一定間隔で一列に配列されたもので、ピンラック61の上方および下方よりピニオン63が噛み合って移動することが可能になっている。
【0038】
ピニオン63は往路ではピンラック61の下面に噛み合って移動し、復路ではピンラック61の上面に噛み合って移動する。ピンラック61の両端部では、ピニオン63は下面から上面、または上面から下面へ移るもので、ピニオン63を一定方向へ回転させることにより、ピニオン63はピンラック61を周回する周回軌道を移動してフレーム4を一体に移動させる。
【0039】
前記ピニオン63は駆動装置64によって一定方向に回転駆動される。駆動装置64は前記箱状フレーム43の内部に収納され、減速機構付きのモータ65と、モータ65の出力軸に連繋された駆動ギヤ66と、フレーム4の内部を貫通する前記駆動軸60に装着された従動ギヤ67とから成る。駆動ギヤ66と従動ギヤ67とは互いに噛み合い、モータ65を駆動することにより駆動軸60が一方向へ回転する。
【0040】
上記した汚泥等回収装置において、第1、第2の各掻き寄せ機構10P,10Qにおける移動機構3は、沈殿池1の上方より第1、第2の各掻き寄せ板2A,2Bを吊持して一体に移動させる。第1の掻き寄せ機構10Pの移動機構3は、往路において、第1の掻き寄せ板2Aは池底aに沿って、第2の掻き寄せ板2Bは水面bに沿って、それぞれ端部Pから中央部Cへ移動させるので、この領域S1の池底aに堆積した汚泥Aや水面bに浮遊したスカムBは沈殿池1の中央部Cまで掻き寄せられ、スカムBはスカムスキマ13に回収される。
復路は往路より高位置であるので、第1の掻き寄せ板2Aは池底aの上方へ持ち上げられて池底aから離れ、また、第2の掻き寄せ板2Bは水面bの上方へ持ち上げられて水面bから離れ、池底aの汚泥Aや水面bのスカムBをかき混ぜることなく移動し、沈殿池1の端部Pに戻る。
【0041】
第2の掻き寄せ機構10Qの移動機構3は、往路において、第1の掻き寄せ板2Aを池底aに沿って中央部Cから端部Qへ移行させるので、この領域S2に堆積した汚泥Aと第1の掻き寄せ機構10Pによって掻き寄せられた領域S1の汚泥Aとは沈殿池1の端部Qまで掻き寄せられて汚泥ピット11に回収される。第2の掻き寄せ板2Bは、往路においては水面下を移動するので、水面bのスカムBをかき混ぜることはない。
復路は往路より高位置にあるので、第2の掻き寄せ板10Bは水面bに沿って端部Qから中央部Cへ移動するもので、この領域S2内に浮遊するスカムBは沈殿池1の中央部Cまで掻き寄せられてスカムスキマ13に回収される。第1の掻き寄せ板10Aは池底aの上方へ持ち上げられて池底aから離れているので、池底aの汚泥Aをかき混ぜることなく移動し、沈殿池1の中央部Cに戻る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の一実施例である汚泥等回収装置の構成を示す側面図である。
【図2】図1の実施例の正面図である。
【図3】支持機構部および駆動機構部の構成を拡大して示す側面図である。
【図4】支持機構部および駆動機構部の構成を拡大して示す正面図である。
【図5】駆動機構部の構成を示す平面図である。
【図6】スカムスキマと傾動機構とを示す断面図である。
【図7】スカムスキマの動作を示す説明図である。
【図8】他の実施例である汚泥等回収装置の構成を示す側面図である。
【図9】図8の実施例の正面図である。
【図10】図8の実施例における支持機構部および駆動機構部の構成を拡大して示す側面図である。
【図11】図8の実施例における支持機構部および駆動機構部の構成を拡大して示す一部を破断した正面図である。
【図12】従来例の側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 沈殿池
2A 第1の掻き寄せ板
2B 第2の掻き寄せ板
3 移動機構
4 フレーム
5 支持機構部
6 駆動機構部
7P,7Q チェン
10P 第1の掻き寄せ機構
10Q 第2の掻き寄せ機構
61 ピンラック
63 ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池の池底に堆積した汚泥を沈殿池の一端部に位置する汚泥ピットに向けて掻き寄せて回収するとともに、水面に浮遊したスカムを沈殿池のほぼ中央部に設置されたスカムスキマに向けて掻き寄せて回収するようにした汚泥等回収装置において、前記沈殿池のスカムスキマを挟む2つの各領域に掻き寄せ機構がそれぞれ設けられ、各掻き寄せ機構は、池底の汚泥を掻き寄せるための第1の掻き寄せ板と、水面のスカムを掻き寄せるための第2の掻き寄せ板と、沈殿池の上方より第1、第2の各掻き寄せ板を吊持して一体に移動させる移動機構とをそれぞれ含んでおり、一方の掻き寄せ機構の移動機構は、第1の掻き寄せ板を池底に沿って、第2の掻き寄せ板を水面に沿って、それぞれ汚泥ピットと反対側の端部から中央部へ移動可能に形成され、他方の掻き寄せ機構の移動機構は、第1の掻き寄せ板を池底に沿って中央部から汚泥ピットの側の端部へ、第2の掻き寄せ板を水面に沿って汚泥ピットの側の端部から中央部へ、それぞれ移動可能に形成されて成る汚泥等回収装置。
【請求項2】
各掻き寄せ機構の移動機構は、第1、第2の掻き寄せ板を上方より吊持するフレームと、前記フレームを沈殿池の長さ方向に往復動させる駆動機構部とを含んでおり、前記駆動機構部は、第1の掻き寄せ板を池底沿いに移動させる往路に対して復路が往路より高位置となる周回軌道に沿ってフレームを移動させるようにした請求項1に記載された汚泥等回収装置。
【請求項3】
前記駆動機構部は、沈殿池の両側に沈殿池の長さ方向に沿って張設される左右一対のチェンと、各チェンを一方向へ走行させてチェンが周回する周回軌道に沿って前記フレームをチェンと一体に移動させる駆動装置とを含んでいる請求項2に記載された汚泥等回収装置。
【請求項4】
前記駆動機構部は、沈殿池の両側に沈殿池の長さ方向に沿って敷設される左右一対のピンラックと、前記フレームの両端部に各ピンラックと噛み合うように設けられた左右一対のピニオンと、各ピニオンを一方向へ回転させてピンラックを周回する周回軌道に沿って移動させる駆動装置とを含んでいる請求項2に記載された汚泥等回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−95415(P2006−95415A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284201(P2004−284201)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(592181082)間機設工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】