説明

汲み上げポンプ及び汲み上げポンプの駆動方法

【課題】コスト的な無駄が非常に少なく、またエネルギの使用効率の高い(省エネ性の高い)運転のできる汲み上げポンプを得る。
【解決手段】駆動源Doと、該駆動源Doによって駆動されるインペラ軸16と、該インペラ軸16と共に回転することによって液状体をくみ上げるインペラ20と、を備えた汲み上げポンプ12において、前記駆動源Doとして、インペラ軸16と連結され起動時に先に起動される補助モータ(第1の駆動機)21と、インペラ軸16と連結され補助モータ21よりも後に起動される主モータ(第2の駆動機)22とを備え、起動後においても、補助モータ21と主モータ22の双方がインペラ軸16と連結されたまま該インペラ軸16を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汲み上げポンプ、特に、上下水道、あるいは海水や河川の水を汲み上げるために使用する大型の汲み上げポンプ及び該汲み上げポンプの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道、あるいは海水や河川の水を汲み上げるために使用する大型の汲み上げポンプ(立軸ポンプ)は、従来、駆動源として、例えば、ディーゼルエンジン、ガスタービン、あるいは大型のモータ等の駆動機が用いられている。特許文献1に、大型のモータを用いた汲み上げポンプの一例が開示されている。
【0003】
駆動源の駆動機として大型のモータを用いた汲み上げポンプは、メンテナンスが容易であり、制御性が良い等の多くの利点を有するものの、起動時に一時的に大電力が流れてしまうのが大きな問題とされていた。即ち、この種の汲み上げポンプの場合、定格出力が千〜数千kWに及ぶものもあり、起動時はその数倍から10倍程度の大電力が流れる。そのため、その電力ラインに接続されている他の制御機器の誤動作を誘引するだけでなく、場合によってはその地域全体の電圧が低下してしまう恐れもあった。
【0004】
この問題に対処するため、特許文献1では、主たる電動機をアシストする補助電動機を備えた汲み上げポンプが提案されている。この汲み上げポンプでは、主たる電動機をリアクトル型の起動器を介して起動した後、補助電動機を駆動するようにしている。そして、主たる電動機の回転速度が上昇して始動電流が許容範囲内に入った後に該補助電動機と主たる電動機とのトルクの合計値が汲み上げポンプの駆動に必要なトルクを上回っている状態で、起動器のリアクトルを短絡させ、起動電力を抑制している。補助電動機は、起動時にのみ使用され、起動後は停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−174409号公報(図17、段落[0059][0060])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この特許文献1にて開示された汲み上げポンプでは、主たる電動機をアシストする補助電動機は、起動時にのみ使用されるものであったため、汲み上げポンプを全体として見たときに、必ずしも有効に使われていない面があった。
【0007】
また、停止された補助電動機がインペラの駆動系に対して連結されたままとされている場合には、該補助電動機が連れ回ることによるエネルギのロスが発生すると考えられる。一方、この不具合を防止するためにクラッチ等の何らかの手段を介して起動後に当該補助電動機をインペラの駆動系から外すような構成を採用する場合には、当然に該クラッチ等の設備が別途必要になると考えられる。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に着目してなされたものであって、コスト的な無駄が非常に少なく、また、エネルギの使用効率の高い(省エネ性の高い)運転が可能な汲み上げポンプを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、駆動源と、該駆動源によって駆動されるインペラ軸と、該インペラ軸と共に回転することによって液状体をくみ上げるインペラと、を備えた汲み上げポンプにおいて、前記駆動源として、前記インペラ軸と連結され起動時に先に起動される第1の駆動機と、前記インペラ軸と連結され第1の駆動機よりも後に起動される第2の駆動機を備え、起動後においても、前記第1の駆動機と第2の駆動機との双方が、前記インペラ軸と連結されたまま該インペラ軸を駆動する構成とすることにより、上記課題を解決した。
【0010】
本発明は、ただ単に起動時の大電力消費を抑制するという視点だけからではなく、汲み上げポンプの運転そのものをより効率的に行うという視点に立ち、2つの駆動機を合理的に駆動することに着目している。
【0011】
本発明によれば、第1の駆動機が先ず起動され、その後に第2の駆動機が駆動される。そして起動後は、第1の駆動機及び第2の駆動機ともそのまま運転が継続される。即ち、起動後においても、第1の駆動機と第2の駆動機との双方が、前記インペラ軸と連結されたまま該インペラ軸を駆動する。なお、この「インペラ軸を駆動する」という概念には、インペラ軸に対してブレーキを掛けるという概念も含まれている。
【0012】
この構成により、汲み上げポンプの(起動時以外の)大半の運転中において、第1の駆動機及び第2の駆動機の双方ともインペラ軸の駆動に寄与することができ、汲み上げポンプ全体として、第1の駆動機及び第2の駆動機の合計の駆動力を確保することができる。逆に言うならば、一方の駆動力は、汲み上げポンプ全体に要求される駆動力よりも他方の駆動力の分だけ小さな出力の駆動機を用いることができる。そのため、ポンプ設備構築に掛けたコスト(イニシャルコスト)に無駄が非常に少なく、且つ、省エネ性の高い使用(ランニングコストを抑えた使用)が可能である。
【0013】
なお、本発明は、駆動源と、該駆動源によって駆動されるインペラ軸と、該インペラ軸と共に回転することによって液状体をくみ上げるインペラと、を備えた汲み上げポンプの駆動方法において、前記駆動源として、第1の駆動機と第2の駆動機とを備えるとともに、前記第1の駆動機のみを先に起動して、前記インペラ軸の回転速度を上昇させる第1の工程と、該第1の駆動機の起動によって前記インペラ軸の回転速度が上昇した段階で、該第1の駆動機の運転を継続したまま、前記第2の駆動機を起動する第2の工程と、前記第1、第2の工程によって当該汲み上げポンプの起動が完了した後において、前記第1の駆動機及び第2の駆動機の双方の運転により前記インペラ軸の駆動を継続する第3の工程と、を含むことを特徴とする汲み上げポンプの駆動方法と捉えることも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、汲み上げポンプにおいて、コスト的な無駄が非常に少なく、またエネルギの使用効率の高い(省エネ性の高い)運転を行うことができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す汲み上げポンプの全体概略を示す模式図
【図2】上記汲み上げポンプが設置されている状態を示す全体概略図
【図3】上記汲み上げポンプの起動・運転の制御フローを示す流れ図
【図4】上記汲み上げポンプの起動時の電流特性を単一モータの起動時と比較して示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態の一例を示す汲み上げポンプの全体概略を示す模式図、図2は、当該汲み上げポンプが設置されている状態を示す全体概略図である。
【0018】
図2を参照して、この汲み上げポンプ12は、ケーシング26から水平方向に突出・形成されたフランジ部26Aを備え、該フランジ部26Aを介して給水槽18の構造体18Aに固定可能とされている。フランジ部26Aの下部には、汲み上げ管28が溶接等によって連結されている。該汲み上げ管28は、構造体18Aに形成された孔18A1から給水槽18内に垂下・挿入される。汲み上げ管28内にはインペラ軸16が回転自在に組み込まれており、給水槽18の水(液状体)Woは、該インペラ軸16の先端に設けられたインペラ(ポンプ翼)20の回転によって汲み上げ管28内に汲み上げられる。汲み上げられた水Woは、送水口25に連結されたパイプ27を介して所望の場所に送水される。
【0019】
図1を参照して、この汲み上げポンプ12は、駆動源Doと、該駆動源Doによって駆動される前記インペラ軸16と、該インペラ軸16と共に回転することによって給水槽18内の水Woを汲み上げる前記インペラ20とを備える。駆動源Doは、補助モータ(第1の駆動機)21と主モータ(第2の駆動機)22とから構成されている。補助モータ21と主モータ22の出力は、合成伝達機構24によって合成され、前記インペラ軸16に伝達される。該インペラ軸16の回転により、該インペラ軸16の先端に設けられた前記インペラ20が駆動される。
【0020】
この実施形態では、補助モータ(第1の駆動機)21は、制御性を重視してインバータ回路23によって駆動されるインバータモータ(インバータ回路23によって制御されるインダクションモータ)によって構成されている。定格出力は355kWである。補助モータ21は、その速度及びトルクが制御可能である。主モータ(第2の駆動機)22は、低コスト性を重視して3相のインダクションモータによって構成されている。定格出力は、2650kWである。主モータ22は、電源のオン−オフ制御以外は、特に高度な制御がなされる構成とはなっていない。
【0021】
補助モータ21と主モータ22の出力を合成する前記合成伝達機構24は、この実施形態では、補助モータ21の出力軸30に固定された第1ピニオン32、主モータ22の出力軸34に固定された第2ピニオン36、及び第1ピニオン32と第2ピニオン36が同時に噛合するメインギヤ38とで主に構成されている。第1ピニオン32と第2ピニオン36は歯数が異なっており、第1ピニオン32の方が歯数が少ない。このため、補助モータ21によって出力されるトルクが、主モータ22によって出力されるトルクに対して相対的により増強された状態でメインギヤ38に伝達される。メインギヤ38の歯数は、第1、第2ピニオン32、36よりも多いため、補助モータ21、主モータ22の回転は、それぞれ減速された状態で該合成伝達機構24によって合成され、合成された出力(定格出力355kW+定格出力2650kW=3005kWに相当する出力)がインペラ軸16に伝達されるようになっている。
【0022】
なお、図1における符号60は制御盤である。制御盤60は、インバータ回路23等を制御するコントローラ29を有し、補助モータ21と主モータ22に実際に供給する電力を制御する。
【0023】
次に、図3、図4を合わせて参照しながら、この汲み上げポンプ12の作用を説明する。
【0024】
汲み上げポンプ12の起動は、補助モータ21の電源ONと共に、コントローラ29からインバータ回路23を介して該補助モータ21に所定の速度指令を与えることによって行われる(ステップS2)。補助モータ21の起動により、第1ピニオン32、メインギヤ38を介してインペラ軸16が駆動され、インペラ20が回転して汲み上げが開始される。このとき、主モータ22には電流を流さない(未だ起動しない)。このため、主モータ22は、補助モータ21によって駆動されるメインギヤ38の回転により、第2ピニオン36を介して「連れ回る」ことになる(出力側から回転させられる状態となる)。主モータ22はインダクションモータであるため、電源がオフ(流される電流が零)とされているときには、特に電磁的なブレーキは発生しない。そのため、本来の汲み上げ負荷に対して、主モータ22の回転系のイナーシャが加わった状態で、補助モータ21によるインペラ軸16の駆動が開始される。
【0025】
補助モータ21に対して所定の速度指令が与えられると、当該速度を実現しようとして該補助モータ21の電流Iaが立ち上がる(図4、制御区間K1)。しかしながら、補助モータ21の出力には限界があるため、やがて該補助モータ21の電流Iaの上昇率ΔIaが緩やかとなり、該上昇率ΔIaが所定値ΔIa1より小さくなるときが来る(図4、時点T1)。
【0026】
ステップS4では、この時点T1、即ち、ΔIa<ΔIa1となったときを検知し、これをトリガとしてステップS6に進む。ステップS6では、主モータ22の電源がオンとされ、且つ、補助モータ21が、所定の回転速度となるように制御する速度制御から、所定のトルクが出力されるように制御するトルク制御に切り換えられる(図4、制御区間K2)。なお、変形例として、インペラ軸16や補助モータ21の回転速度を検出し、これらの回転速度が所定速度以上に達したときに主モータ22を起動する(主モータ22の電源をオンとする)ようにしてもよい。
【0027】
この切り換えの時点T1では、既に補助モータ21の駆動によってインペラ軸16の回転速度が上昇しており、且つ、当該回転速度に見合う回転速度にまで主モータ22の回転系の回転速度も上昇している。そのため、主モータ22に掛かる電流Ibは、それまで補助モータによって回転されていたトルクを引き継ぐ程度の大きさで済み(インペラ軸16の回転を零から立ち上げるときに比べて格段に小さくて済み)、切り換え時T1以降の合計電流(Ia+Ib)の上昇を小さく抑えることができる。したがって、本実施形態では特に起動器等を有していないにも拘わらず、単一のモータを単独で駆動したとき(図4、想像線参照)と比較して、起動電力の抑えられた「ソフト起動」を効果的に実現することができる。
【0028】
補助モータ21は、時点T1から、所定のトルクを出力するトルク制御に切り換わっているため、この実施形態に係る基本構成によれば、このまま特別な制御を行わなくても(ステップS6迄の制御だけで)特に支障なく運転を継続することができる。即ち、補助モータ21は、インバータモータであり、所定のトルクが出力されるようにトルク制御される。一方、主モータ22は、(低コスト化を意図して)電源のオン−オフのみの制御しかなされないが、インダクションモータであるため、汲み上げ負荷が一定ならば、前記補助モータ21によってトルクが一定に制御されていることから、基本的には回転速度は一定である。このため、汲み上げ負荷があまり変わらない用途では、インペラ軸16は、主モータ22と補助モータ21の合計の出力にて、ほぼ一定の回転速度で回転することができ、汲み上げ量もほぼ一定に維持することができる。
【0029】
しかしながら、汲み上げ負荷が変化する場合は、主モータ22は、単体では該汲み上げ負荷の変化に対応する制御機能を有していないため、補助モータ21の出力トルクを汲み上げ負荷の増減に応じて変化させないと、インペラ軸16の回転速度も変化してしまい、一定の汲み上げ量を維持することができない。そのため、この実施形態では、補助モータ21がインバータモータであることを利用して、さらに、汲み上げ負荷が多少増減しても汲み上げ量が変化しないように(インペラ軸16が一定の速度で回転できるように)、ステップS8以下のような制御を実施している。
【0030】
即ち、ステップS8では、主モータ22の回転速度Sbが所定の下限値Sb1、上限値Sb2の間に収まっているか否か(Sb1≦Sb≦Sb2)が判断される。主モータ22は、インダクションモータであるため、基本的には回転速度は一定であるが、負荷の増減により若干遅くなったり速くなったりする。主モータ22の回転速度Sbが下限値Sb1、上限値Sb2の間に収まっているときには、ステップS10に進み、そのときの補助モータ21の発生トルクを維持するべく、該補助モータ21の電流値Iaがそのまま維持される。
【0031】
しかしながら、ステップS8において主モータ22の回転速度Sbが下限値Sb1、上限値Sb2の間に収まっていないと判断されると、ステップS12に進む。
【0032】
ステップS12では、主モータ22の回転速度Sbが下限値Sb1を下回っているか否か判断される。この判断が「Yes」であったときは、汲み上げ負荷が大きいため主モータ22の回転速度Sbが遅くなり過ぎている状況であると判断されるため、ステップS14に進んで補助モータ21の指令トルク(補助モータ21にて発生するべきトルク)を高めるべく、該補助モータ21の電流値Iaが増大される。増大の仕方は、一律でもよいし、回転速度Sbが下限値Sb1よりどの程度下回っているかに応じて変化させてもよい。電流値Iaが増大されると、補助モータ21にて発生するトルクが増強され、主モータ22の回転速度Sbも速まる傾向となる。なお、ステップ12での判断が、「No」であったときは、直接ステップS16へと進む。
【0033】
ステップS16では、同様に、主モータ22の回転速度Sbが上限値Sb2を上回っているか否か判断される。この判断が「Yes」であったときは、汲み上げ負荷が軽いため主モータ22の回転速度Sbが速くなり過ぎている状況であると判断されるため、ステップS18に進んで補助モータ21の指令トルクを低くするための指令が出される。この指令の仕方(対処方法)は、2通りある。
【0034】
第1の対処方法は、補助モータ21の電流値Iaを減少させることである。減少のさせ方は、一律でもよいし、回転速度Sbが上限値Sb2よりどの程度上回っているかに応じて変化させてもよい。これにより、多くの場合、第1ピニオン32とメインギヤ38とのバックラッシを反転させることなく(ガタ打ち音を発生させることなく)、主モータ22の回転速度Sbを遅くすることができる。この種の汲み上げポンプは、その出力が巨大であることから、バックラッシの反転は大きな衝撃音を発生するだけでなく、歯面の損傷の原因ともなり兼ねないため、使用環境によっては避けたいという要請が強い。電流Iaの減少の程度を小さめに設定することにより、バックラッシの反転しない運転ができる。
【0035】
第2の対処方法は、補助モータ21を発電機能を有するジェネレータモータとして機能させ、この回生ブレーキを利用するように切り換えるという方法である。これにより、主モータ22の回転速度Sbはより速く減少し、且つ補助モータ21の回生エネルギを蓄積(蓄電)することができる。この方法によれば、負荷の変動に対して応答性よく(機敏に)反応することができ、且つ積極的にエネルギを回生することができるため、非常に効率的な運転ができるようになる。
【0036】
なお、第2の対処法を発展させた制御の変形例として、主モータ22によってインペラ軸16に対して通常要求される駆動力より常に大きめの駆動力を提供し、インバータモータである補助モータ21を常に発電機として機能させながら、その回生量の大小により(回生ブレーキの大小により)インペラ軸16の駆動トルクを調整するという制御方法も考えられる。この制御方法に依れば、回生エネルギを電力として確保しながら、バックラッシの反転しない駆動が可能となる。
【0037】
このステップS8−S18までのフローは、ステップS20にてポンプ停止指令(汲み上げポンプ12の電源オフ指令)が入ったことが確認されるまで繰り返される(ステップS20で「No」→ステップS8)。この結果、汲み上げ負荷が増大、あるいは減少したとしても、主モータ22は、下限値Sb1、上限値Sb2の間に収まるような回転速度Sbで運転され、常にほぼ一定の汲み上げ量を維持した運転を継続することができる。
【0038】
やがて、ステップS20にてポンプ停止指令が出されたと判定されると、フローはステップS22へと進み、主モータ22の電源がオフとされると共に、補助モータ21が発電機として機能し、回生ブレーキがインペラ軸16に対して付与されると共に、回生エネルギが蓄積(蓄電)される。そして、インペラ軸16が停止した(発電がなされなくなった)時点で、全ての電源がオフとされる。なお、この停止動作時の回生はしなくても良い。
【0039】
以上のような制御フローにより、起動電力の急峻な立ち上りを抑制しつつ、且つ起動時のみならず運転中の全ての期間において、補助モータ21及び主モータ22の双方の出力を最大限に活用した、いわゆる「省エネ運転」ができるようになる。特に、本実施形態では、補助モータ(第1の駆動機)21を発電機として機能させ(ジェネレータモータとして機能させ)、その回生電力を利用することで更なる省エネ運転が可能である。
【0040】
なお、上記実施形態においては、第1の駆動機としてインバータモータ(インバータ回路23で制御されるインダクションモータ)、第2の駆動機としてオン−オフ制御のみのインダクションモータを採用するようにしていたが、この実施形態の変形例として、例えば、主モータ22の制御用のインバータ回路を追加して、主モータ22を積極的に制御するようにしてもよい。また、制御の仕方についても、例えば、補助モータ21をトルク制御するとともに、主モータ22を補助モータ21の回転速度と同じになるように速度制御してもよい。
【0041】
本発明においては、第1の駆動機及び第2の駆動機の種類は特に限定されない。即ち、上述したようなインバータモータ、(オン−オフ制御のみの)インダクションモータのほか、例えば、同期モータや直流モータ等の各種モータを使用してもよい。更には、必ずしもモータである必要もない。例えば、駆動機として、エンジン、あるいはガスタービンを利用するものであってもよい。なお、エンジン、あるいはガスタービンを利用した場合には、そもそも起動電力の抑制という問題も生じないことになる。しかし、2つの駆動機が時間差をおいて起動され、且つ通常運転時において、その双方がインペラの駆動に寄与する構成を採用する限り、本発明の大きな課題である合理的かつ効率的な運転を行うという趣旨を相応に実現することが可能である。
【0042】
第1、第2駆動機の組み合せ方も任意である。例えば、第1の駆動機として「モータ」を採用し、第2の駆動機として「エンジン」を採用するような構成としてもよい。この組み合せに係る構成の場合、第1の駆動機であるモータを、第2の駆動機であるエンジンの「セルモータ」として機能させることができる。セルモータは、一般的には、起動時にしか使用しないが、当該実施形態では、エンジンの起動後も運転を継続する。具体的には、例えば、汲み上げポンプの大半の運転時には、第2の駆動機である当該エンジンにおいて燃料消費効率の最も高い回転速度(例えば2000rpm前後)の領域で運転を維持し、その上で、第1の駆動機であるモータによって、上述した制御フローと類似する制御フローにて汲み上げ負荷の増減に対する調整を行う、というような制御が可能である。これにより、インペラ駆動の大半を担うエンジンが、常に当該エンジンの燃料消費効率の最も高い回転速度付近で運転できるようになると共に、汲み上げ負荷に柔軟に対応した運転もできるようになる。即ち、ランニングコストを抑えた「省エネ運転」と「汲み出し量を一定に維持する運転」を両立させることが可能になる。
【0043】
更には、この実施形態において第1の駆動機も「エンジン」とし、「小容量エンジン」−「大容量エンジン」の組み合せとしてもよい。この場合は、第1の駆動機であるエンジンを起動するためのセルモータが別途必要となるが、このセルモータは小容量のエンジンを駆動するだけで済むため、小型のモータでよい。第1の駆動機であるエンジンが、第2の駆動機である大容量エンジンの「セルモータ」として機能し得るのは、この実施形態でも同様である。大容量エンジンを当該エンジンの燃料消費効率の最も高い回転速度付近で運転させながら、小容量エンジンのスロットルを変化させることにより、同様な「省エネ運転」と「汲み出し量を一定に維持する運転」を両立させた制御を実現することができる。
【0044】
このように、第1、第2駆動機のうち一方の駆動機が比較的低コスト且つ大容量の駆動機であって、該大容量の駆動機にてエネルギ効率の高い運転を行い、他方の駆動機にて、当該汲み上げポンプの用途に応じたきめ細かな制御を行うという制御手法は、イニシャルコスト及びランニングコストを低く抑えながら、高い制御性を実現できる、という点でメリットの多い組み合せであると言える。更に具体的に言うならば、最初に駆動される第1の駆動機は、いわばポンプ駆動の助走用として用いられるものであるため、比較的小容量で済むが、起動特性をコントロールするために速度制御やトルク制御等ができることが要請されるケースが多いと考えられる。したがって、第1の駆動機に、負荷に応じたきめ細かな対応を実現するための制御性に優れた駆動機、あるいはエネルギの回生制御等の実現可能な駆動機を充て、一方、第2の駆動機に、大トルクを発生でき、低イニシャルコスト、低ランニングコストの駆動機を充てるという組み合わせは、極めて合理的な組み合わせである。
【0045】
但し、本発明では、第1の駆動機と第2の駆動機の容量の大小についても、特に限定されない。例えば、当該汲み上げポンプによって汲み上げようとする液状体が、汚泥、あるいは原油のような「粘度」の高いものであった場合には、起動時の必要トルクが大きく、一方、ある程度回転速度が上昇してくると、比較的小さなトルクで回転を維持することができるようになる。このような用途においては、第1の駆動機の容量と第2の駆動機の容量が、同程度であってもよく、場合によっては第1の駆動機の容量の方が第2の駆動機の容量よりも大きくても構わない。
【0046】
なお、第1、第2の双方の駆動機のトルクを無駄なくインペラ軸に伝えるには、
A)一方の駆動機は特別な制御はなされず、他方の駆動機も一定のトルクを出力するというトルク制御のみを行う(図3の実施形態のステップS6までの制御に相当する制御);
B)一方の駆動機は特別な制御はなされないが、他方の駆動機でこの一方の駆動機の速度が一定となるように発生トルクを増減するトルク制御を行う(図3の実施形態のステップS8以降をも実行した制御に相当する制御);
C)第1、第2駆動機とも、所定の「トルク」が出力されるようにトルク制御する;
D)第1、第2駆動機のうち、より強いトルクをインペラ軸に付与可能な駆動機がインペラ軸を駆動する速度に対して、より弱いトルクをインペラ軸に付与可能な駆動機がインペラ軸を駆動しようとする速度の方が、若干速くなるように速度制御される;
等、各駆動機の容量バランスや応答性に応じて種々の制御態様が構築可能である。
【0047】
この意味で、上述した実施形態のように、第1の駆動機の出力が取り出される軸と、第2の駆動機の出力が取り出される軸がインペラ軸に対して独立していると(一方の駆動機の出力が他方の出力系を介さずにインペラ軸に伝達され得るように構成してあると)、より設計が容易となる場合が多いと考えられる。それは、このように一方の駆動機の出力が他方の出力系を介さずにインペラ軸に伝達され得るように構成してあると、第1、第2駆動機のインペラ軸に対する相対的な回転速度を(減速比を変えることによって)調整した上で該インペラ軸に伝達することができるようになるためである。
【0048】
尤も、本発明では、要は、第1、第2の双方の駆動機のトルクを無駄なくインペラ軸に伝えることができるのであるならば、第1、第2駆動機の出力を合成する構成は特に限定されない。例えば、回転速度の伝達、或いは減速は、必ずしも歯車機構によってなされる必要はなく、べルト−プーリ機構や、摩擦プーリ同士の接触等によってなされるものであってもよい。また、電気的な制御や第1、第2駆動機の仕様の選定によって合理的な出力の合成が実現できるものであるならば、機械的な合成伝達機構はなくてもよい。例えば、第1、第2の駆動機が同軸で配置され、一方の駆動機の出力が他方の駆動機を介してインペラ軸にそのまま伝達されるような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
12…汲み上げポンプ
Do…駆動源
16…インペラ軸
18…給水槽
20…インペラ
21…補助モータ(第1の駆動機)
22…主モータ(第2の駆動機)
23…インバータ回路
24…合成伝達機構
25…送水口
27…パイプ
28…汲み上げ管
29…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、該駆動源によって駆動されるインペラ軸と、該インペラ軸と共に回転することによって液状体をくみ上げるインペラと、を備えた汲み上げポンプにおいて、
前記駆動源として、前記インペラ軸と連結され起動時に先に起動される第1の駆動機と、前記インペラ軸と連結され第1の駆動機よりも後に起動される第2の駆動機を備え、
起動後においても、前記第1の駆動機と第2の駆動機との双方が、前記インペラ軸と連結されたまま該インペラ軸を駆動する
ことを特徴とする汲み上げポンプ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の駆動機がインバータモータで、前記第2の駆動機がインダクションモータである
ことを特徴とする汲み上げポンプ。
【請求項3】
請求項2において、
前記汲み上げポンプの起動後において、前記第1の駆動機がトルク制御される
ことを特徴とする汲み上げポンプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記第1の駆動機または第2の駆動機のうち、少なくとも一方の駆動機が発電機能を有するジェネレータモータで構成され、前記インペラ軸の駆動力の調整のために該ジェネレータモータによる回生ブレーキが利用される
ことを特徴とする汲み上げポンプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
第1の駆動機または第2の駆動機のうち、少なくとも一方の駆動機が発電機能を有するジェネレータモータで構成され、発電を行う
ことを特徴とする汲み上げポンプ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記第1の駆動機の出力が、他方の駆動機の出力系を介さずにインペラ軸に伝達される
ことを特徴とする汲み上げポンプ。
【請求項7】
駆動源と、該駆動源によって駆動されるインペラ軸と、該インペラ軸と共に回転することによって液状体をくみ上げるインペラと、を備えた汲み上げポンプの駆動方法において、
前記駆動源として、第1の駆動機と第2の駆動機とを備えるとともに、
前記第1の駆動機のみを先に起動して、前記インペラ軸の回転速度を上昇させる第1の工程と、
該第1の駆動機の起動によって前記インペラ軸の回転速度が上昇した段階で、該第1の駆動機の運転を継続したまま、前記第2の駆動機を起動する第2の工程と、
前記第1、第2の工程によって当該汲み上げポンプの起動が完了した後において、前記第1の駆動機及び第2の駆動機の双方の運転により前記インペラ軸の駆動を継続する第3の工程と、
を含むことを特徴とする汲み上げポンプの駆動方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1の工程を実施する際に、前記第1の駆動機の駆動力によって、前記インペラ軸の回転速度を上昇させるとともに、該第2の駆動機の出力軸回転速度を上昇させる
ことを特徴とする汲み上げポンプの駆動方法。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記第1の駆動機または第2の駆動機のうち、少なくとも一方がモータであり、前記第3の工程における前記インペラ軸の駆動における駆動力の調整を、該モータでの発生トルクの調整によって行う
ことを特徴とする汲み上げポンプの駆動方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記モータが、発電機能を有するジェネレータモータで構成され、
前記第3の工程における前記インペラ軸の駆動における駆動力の調整を、該ジェネレータモータでの発生トルクまたは回生ブレーキトルクの調整によって行う
ことを特徴とする汲み上げポンプの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2142(P2012−2142A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138247(P2010−138247)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000205579)株式会社 セイサ (22)
【Fターム(参考)】