説明

沸騰冷却器

【課題】バーンアウト現象を抑制することができる沸騰冷却器を提供すること。
【解決手段】受熱して沸騰気化する液冷媒が流れる流路20を備える沸騰冷却器10において、流路20の断面積Sを可変するよう移動可能な可動壁18を備える。可動壁18は、流路20内で発生する気体Gの量が多いとき、流路20の断面積Sを拡大する方向に移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受熱して沸騰気化する液冷媒が流れる流路を備える沸騰冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、受熱して沸騰気化する液冷媒が流れる流路を備える沸騰冷却器が知られている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1記載の沸騰冷却器は、液冷媒が受熱して沸騰気化するときに吸熱するので、冷却効率を高めることができる。
【0003】
また、液冷媒が流れる流路の断面積を可変する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。上記特許文献2記載の技術は、流路の断面積を可変するので、発熱体(被冷却体)の発熱量に応じた最適な流速を選択し冷却を行うことができる。
【特許文献1】特表2008−519241号公報
【特許文献2】特開平9−307040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の沸騰冷却器は、沸騰冷却器に接続される発熱体の発熱量が大きく流路内で発生する気体の量が多い場合、気泡が流路の内壁面を覆うことがある(即ち、核沸騰から膜沸騰へ遷移する所謂バーンアウト現象が生じることがある)。この場合、流路の内壁面と液冷媒とが直接に接触しないので、沸騰が阻害され、冷却効率が低下する。
【0005】
また、上記特許文献2記載の技術は、流路の断面積を可変することについて説明するが、液冷媒が受熱して沸騰気化することについて言及がなく、且つ、発熱体の発熱量が大きい場合には液冷媒の流速を高める必要があると説明している。仮に上記特許文献2記載の技術を上記特許文献1記載の沸騰冷却器に適用した場合、発熱体の発熱量が大きい場合には流路の断面積を縮小するので、気泡が流路の内壁面を覆い易くなり、却って冷却効率が低下する。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、バーンアウト現象を抑制することができる沸騰冷却器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、受熱して沸騰気化する液冷媒が流れる流路を備える沸騰冷却器において、
前記流路の断面積を可変するよう移動可能な可動壁を備え、
前記可動壁は、前記流路内で発生する気体の量が多いとき、前記流路の断面積を拡大する方向に移動される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バーンアウト現象を抑制することができる沸騰冷却器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、各図中、矢印方向UPは上方向を、矢印方向Fは液冷媒の流れる方向を示す。尚、以下の説明において、「断面積」とは、矢印方向Fと直交する断面積を意味する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1の沸騰冷却器の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図、(C)は(A)のC−C線に沿った断面図である。沸騰冷却器10は、半導体素子(例えば、IGBT)等の発熱体2と接続して、発熱体2を冷却する。沸騰冷却器10は、受熱して沸騰気化する液冷媒が流れる複数の流路20を備える。この沸騰冷却器10は、液冷媒が沸騰気化するときに吸熱することを利用して、効果的に冷却を行う。液冷媒は、周知のものであってよく、例えば純水やフッ素系液体が用いられる。流路20内において沸騰気化した液冷媒は、外部において冷却され、流路20へ還流される。
【0011】
沸騰冷却器10は、流路20の断面積Sが小さいミニチャンネル構造或いはマイクロチャンネル構造を有する。ミニチャンネル構造とは、流路20の断面の短辺(最小径)が10mm未満であることを意味する。また、マイクロチャンネル構造とは、流路20の断面の短辺(最小径)が2mm未満であることを意味する。
【0012】
ミニチャンネル構造、或いは、マイクロチャンネル構造においては、流路20の断面積Sが小さいため、複数の流路20を高密度に設置することができる。これにより、流路20の内壁面(熱伝達面)の面積を増やすことができ、効果的に冷却を行うことができる。
【0013】
沸騰冷却器10は、例えば、図1に示すように、伝熱基板12と、一対の固定壁14と、複数のフィン16と、複数の可動壁18とを備える。各流路20は、伝熱基板12、隣り合うフィン16、及び1つの可動壁18で四方を囲まれた空間として構成される。
【0014】
伝熱基板12は、半導体素子(例えば、IGBT)等の発熱体2と接続し、発熱体2からの熱を液冷媒へ伝熱する。伝熱基板12には、高熱伝導率の板状部材が好適に用いられ、例えば銅板等の金属基板や窒化アルミニウム等のセラミックス基板が用いられる。伝熱基板12の下面には、発熱体2の上面が密着される。一方、伝熱基板12の上面には、一対の固定壁14、及び複数のフィン16が突設される。
【0015】
一方の固定壁14は、液冷媒を複数の流路20へ供給する供給路14aを備える。他方の固定壁14は、液冷媒を複数の流路20から外部へ排出する排出路14bを備える。図1(B)に示すように、液冷媒は、矢印F方向に沿って、供給路14aから各流路20を通過して排出路14bへ送られる。
【0016】
複数のフィン16は、一対の固定壁14の間に、流路20と直交する方向に並設され、隣り合う流路20を画成している。複数のフィン16は、図1に示すように等ピッチで設けられてもよいし、不等ピッチで設けられてもよい。隣り合うフィン16の間には、1つの可動壁18が摺動可能に配置されている。
【0017】
可動壁18は、流路20毎に設置され、流路20の断面積Sを可変するよう移動可能とされる。言い換えると、可動壁18は、流路20毎に設置され、流路20の対向壁12に対して接近する接近位置と、流路20の対向壁12に対して離間する離間位置との間を移動可能とされる。例えば、可動壁18は、隣り合うフィン16の間に1つずつ設置され、隣り合うフィン16の間を上下方向に摺動することで、流路20毎に流路20の断面積Sを可変する。
【0018】
また、沸騰冷却器10は、図1(C)に示すように、複数の沸騰状態検出センサ32と、複数のアクチュエータ34と、制御装置36とを備えている。
【0019】
沸騰状態検出センサ32は、流路20毎に設置され、流路20内の液冷媒の沸騰状態を検出するセンサである。沸騰状態検出センサ32には、例えば、流路20内の圧力を検出する圧力センサ、流路20内の温度を検出する温度センサが用いられる。各沸騰状態検出センサ32は、検出結果を制御装置36へ出力する。
【0020】
アクチュエータ34は、可動壁18毎に設置され、可動壁18を流路20の断面積Sを可変する方向に移動させるものである。言い換えると、アクチュエータ34は、可動壁18毎に設置され、可動壁18を流路20の対向壁12に対して接離する方向に移動させるものである。
【0021】
アクチュエータ34は、周知の構成であってよく、例えば電圧に応じて伸縮(変位)する圧電素子を含み構成される。各アクチュエータ34は、制御装置36が出力する制御信号に基づいて、対応する可動壁18を上下方向に移動させる。
【0022】
制御装置36は、沸騰状態検出センサ32の検出結果に応じて、アクチュエータ34を駆動するものであって、例えば図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0023】
次に、制御装置36が実行する処理の一例について図2を参照して説明する。図2は、制御装置36が実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御装置36は、例えば液冷媒の循環が開始してから終了するまで、図2のS100以降の処理を所定時間毎に繰り返し行う。
【0024】
制御装置36は、最初に、各沸騰状態検出センサ32の検出結果を入力する(S100)。続いて、流路20毎に、流路20内の液冷媒が沸騰しているか否かを判定する(S102)。例えば、流路20毎に、流路20内の温度と閾値(例えば、液冷媒の沸点)とを比較し、温度が閾値以上の場合に沸騰していると判定し、温度が閾値未満の場合に沸騰していないと判定する。続いて、判定結果に基づいて、流路20毎に、後述の処理を行う。
【0025】
液冷媒が沸騰していない場合(S102、NO)、アクチュエータ34を駆動して、可動壁18を流路20の断面積Sを縮小する方向に(即ち、離間位置から接近位置に向けて)所定量移動させ(S104)、今回の処理を終了する。尚、可動壁18が既に接近位置にある場合、可動壁18を更に移動させることなく、今回の処理を終了する。
【0026】
一方、液冷媒が沸騰している場合(S102、YES)、流路20内で発生する気体Gの量が多いか否かを判定する(S106)。例えば、流路20内の圧力と閾値とを比較し、圧力が閾値以上の場合に気体Gの発生量が多いと判定し、圧力が閾値未満の場合に気体Gの発生量が少ないと判定する。
【0027】
気体Gの発生量が少ないとき(S106、NO)、気泡が流路20の内壁面を覆うことがないので、今回の処理を終了する。
【0028】
一方、気体Gの発生量が多いとき(S106、YES)、アクチュエータ34を駆動して、可動壁18を流路20の断面積Sを拡大する方向に(即ち、接近位置から離間位置に向けて)所定量移動させ(S108)、今回の処理を終了する。尚、可動壁18が既に離間位置にある場合、可動壁18を更に移動させることなく、今回の処理を終了する。
【0029】
仮に、流路20の断面積Sを固定すると、流路20の断面積Sが小さいため、気体Gの発生量が多いとき、気泡が流路20の内壁面を覆うことがある(即ち、核沸騰から膜沸騰へ遷移する所謂バーンアウト現象が生じることがある)。この場合、流路20の内壁面と液冷媒とが直接に接触しないので、沸騰が阻害され、冷却効率が低下する。
【0030】
一方で、実施例1の沸騰冷却器10は、流路20内で発生する気体Gの量が多いとき、流路20の断面積Sを拡大するので、液体が流路20の内壁面を膜状に覆うようになり、所謂バーンアウト現象を抑制することができ、冷却効率を高めることができる。
【0031】
また、実施例1の沸騰冷却器10は、複数の流路20を備え、流路20毎に流路20の断面積Sを可変するので、流路20毎に液冷媒の流量を最適化することができる。従って、流路20毎に冷却効率を最適化することができ、全体としての冷却効率を高めることができる。例えば、一の流路20内で液冷媒が沸騰しておらず、且つ、他の流路20内で液冷媒が沸騰している場合、一の流路20の断面積Sが比較的小さくなるので、一の流路20における液冷媒の流量が減り、一の流路20内において液冷媒が沸騰し易くなるので、冷却効率を高めることができる。
【実施例2】
【0032】
図3は、本発明の実施例2の沸騰冷却器の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図、(C)は(A)のC−C線に沿った断面図である。以下、図3の沸騰冷却器10Aの構成について説明するが、図1の沸騰冷却器10と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
沸騰冷却器10Aは、図1の沸騰冷却器10と異なり、連通路40を更に備える。連通路40は、一の流路20と他の流路20とを連通するものであって、例えば複数の流路20の上面を連通している。連通路40内には、後述の1つの可動壁18Aが摺動可能に配置されている。
【0034】
沸騰冷却器10Aは、図1の可動壁18の代わりに、可動壁18Aを備える。可動壁18Aは、連通路40を開閉するよう移動可能とされる。即ち、可動壁18Aは、連通路40を閉じる閉位置と、連通路40を開く開位置との間で移動可能とされる。例えば、可動壁18Aは、連通路40内を上下方向に摺動し、複数の流路20の開放面(上面)を開閉することで、連通路40を開閉する。
【0035】
沸騰冷却器10Aは、図1のアクチュエータ34及び制御装置36の代わりに、アクチュエータ34A、及び制御装置36Aを備える。
【0036】
アクチュエータ34Aは、可動壁18Aを連通路40を開閉する方向に移動させるものである。言い換えると、アクチュエータ34Aは、可動壁18Aを流路20に対して接離する方向に移動させるものである。アクチュエータ34Aは、制御装置36Aが出力する制御信号に基づいて、可動壁18Aを上下方向に移動させる。
【0037】
制御装置36Aは、沸騰状態検出センサ32の検出結果に応じて、アクチュエータ34Aを駆動する。
【0038】
次に、制御装置36Aが実行する処理の一例について図4を参照して説明する。図4は、制御装置36Aが実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御装置36Aは、例えば液冷媒の循環が開始してから終了するまで、図4のS200以降の処理を所定時間毎に繰り返し行う。
【0039】
制御装置36Aは、最初に、各沸騰状態検出センサ32の検出結果を入力する(S200)。続いて、流路20毎に、流路20内の液冷媒が沸騰しているか否かを判定する(S202)。例えば、流路20毎に、流路20内の温度と閾値(例えば、液冷媒の沸点)とを比較し、温度が閾値以上の場合に沸騰していると判定し、温度が閾値未満の場合に沸騰していないと判定する。
【0040】
全ての流路20内において液冷媒が沸騰していない場合(S202、NO)、アクチュエータ34Aを駆動して、可動壁18Aを閉位置に移動させ(S204)、今回の処理を終了する。
【0041】
これにより、連通路40が閉じられるので、各流路20内における液冷媒の流量を増やすことができる。従って、発熱体2に近い高温領域における液冷媒の流量を増やすことができ、冷却効率を高めることができる。
【0042】
一方、いずれか1つの流路20内において液冷媒が沸騰している場合(S202、YES)、各流路20内で発生する気体Gの量が多いか否かを判定する(S206)。例えば、各流路20内の圧力と閾値とを比較し、圧力が閾値以上の場合に気体Gの発生量が多いと判定し、圧力が閾値未満の場合に気体Gの発生量が少ないと判定する。
【0043】
全ての流路20内において気体Gの発生量が少ないとき(S206、NO)、気泡が流路20の内壁面を覆うことがないので、今回の処理を終了する。
【0044】
一方、いずれか1つの流路20内において気体Gの発生量が多いとき(S206、YES)、アクチュエータ34Aを駆動して、可動壁18Aを連通路40を開く方向(即ち、流路20と離間する方向)に所定量移動させ(S208)、今回の処理を終了する。尚、可動壁18Aが既に開位置に位置する場合、可動壁18Aを更に移動させることなく、今回の処理を終了する。
【0045】
仮に、連通路40を常に閉じると、流路20の断面積Sが小さいため、気体Gの発生量が多いとき、気泡が流路20の内壁面を覆うことがある(即ち、核沸騰から膜沸騰へ遷移する所謂バーンアウト現象が生じることがある)。この場合、流路20の内壁面と液冷媒とが直接に接触しないので、沸騰が阻害され、冷却効率が低下する。
【0046】
一方で、実施例2の沸騰冷却器10Aは、流路20内で発生する気体Gの量が多いとき、連通路40を開き、各流路20と連通路40との間を開放するので、液体が流路20の内壁面を覆うようになり、所謂バーンアウト現象を抑制することができ、冷却効率を高めることができる。
【0047】
また、実施例2の沸騰冷却器10Aは、流路20内で発生する気体Gの量が多いとき、連通路40を開くので、一の流路20内で発生した気泡を他の流路20に移動させることができる。例えば、一の流路20内で液冷媒が沸騰しており、且つ、他の流路20内で液冷媒が沸騰してない場合、圧力差によって、一の流路20内で発生した気泡を他の流路20に移動させることができる。これに伴い、他の流路20内において液冷媒が沸騰し易くなるので、冷却効率を高めることができる。従って、全体としての冷却効率を高めることができる。
【実施例3】
【0048】
図5は、本発明の実施例3の沸騰冷却器の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図、(C)は(A)のC−C線に沿った断面図である。以下、図5の沸騰冷却器10Bの構成について説明するが、図1の沸騰冷却器10と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
沸騰冷却器10Bは、図1の沸騰状態検出センサ32、アクチュエータ34、及び制御装置36等の電子部品の代わりに、複数の付勢手段50を備える。
【0050】
付勢手段50は、可動壁18毎に設置され、可動壁18を流路20の断面積Sを縮小する方向(即ち、流路20の対向壁12に対して接近する方向)へ付勢する。付勢手段50は、例えばコイルバネやゴム等の弾性部材が用いられ、弾性係数を考慮して選定される。
【0051】
次に、可動壁18の動作について説明する。流路20内の液冷媒が沸騰し始めると、気体Gが発生するので、可動壁18が押圧される。この押圧力によって、可動壁18が付勢手段50の付勢力に抗して、流路20の断面積Sを拡大する方向(即ち、流路20の対向壁12に対して離間する方向)に移動され始める。気体Gの発生量が多くなるほど、押圧力が増すので、可動壁18が流路20の断面積Sを拡大する方向に移動される。
【0052】
一方、流路20内の液冷媒が沸騰していないとき、可動壁18に対して押圧がかからないので、付勢手段50の付勢力によって可動壁18が接近位置へ復帰する。
【0053】
このように、実施例3の沸騰冷却器10Bは、図1の沸騰冷却器10と同様に、流路20内で発生する気体Gの量が多いとき、流路20の断面積Sを拡大するので、液体が流路20の内壁面を膜状に覆うようになり、所謂バーンアウト現象を抑制することができ、冷却効率を高めることができる。
【0054】
また、実施例3の沸騰冷却器10Bは、図1の沸騰冷却器10と同様に、複数の流路20を備え、流路20毎に流路20の断面積Sを可変するので、流路20毎に液冷媒の流量を最適化することができる。従って、流路20毎に冷却効率を最適化することができ、全体としての冷却効率を高めることができる。
【0055】
更に、実施例3の沸騰冷却器10Bは、図1の沸騰状態検出センサ32、複数のアクチュエータ34、及び制御装置36等の電子部品の代わりに、複数の付勢手段50を用いるので、可動壁18を移動させるための電源が不要となる。これにより、沸騰冷却器10Bのランニングコストを低減できると共に、沸騰冷却器10Bの設置場所に制約がなくなる。また、高価な制御装置36等の代わりに、安価な付勢手段50を用いるので、沸騰冷却器10Bの製造コストを低減できる。
【実施例4】
【0056】
図6は、本発明の実施例4の沸騰冷却器の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図、(C)は(A)のC−C線に沿った断面図である。以下、図6の沸騰冷却器10Cの構成について説明するが、図3の沸騰冷却器10Aと同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
沸騰冷却器10Cは、図3の沸騰状態検出センサ32、アクチュエータ34A、及び制御装置36A等の電子部品の代わりに、付勢手段50Cを備える。
【0058】
付勢手段50Cは、可動壁18Aを連通路40を閉じる方向(即ち、流路20と接近する方向)へ付勢する。言い換えると、付勢手段50Cは、可動壁18Aを開位置から閉位置へ付勢する。付勢手段50Cは、例えばコイルバネやゴム等の弾性部材が用いられ、弾性係数を考慮して選定される。
【0059】
次に、可動壁18Aの動作について説明する。少なくとも1つの流路20内において液冷媒が沸騰し始めると、気体Gが発生するので、可動壁18Aが押圧される。この押圧力によって、可動壁18Aが付勢手段50Cの付勢力に抗して、連通路40を開く方向(即ち、流路20と離間する方向)に移動され始める。気体Gの発生量が多くなるほど、押圧力が増すので、可動壁18Aが連通路40を開く方向に移動される。
【0060】
一方、全ての流路20内において液冷媒が沸騰していないとき、可動壁18Aに対して押圧がかからないので、付勢手段50Cの付勢力によって可動壁18Aが閉位置へ復帰する。これにより、連通路40が閉じられるので、各流路20内における液冷媒の流量を増やすことができる。従って、発熱体2に近い高温領域における液冷媒の流量を増やすことができ、冷却効率を高めることができる。
【0061】
このように、実施例4の沸騰冷却器10Cは、図3の沸騰冷却器10Aと同様に、流路20内で発生する気体Gの量が多いとき、連通路40を開き、流路20と連通路40とを開放するので、液体が流路20の内壁面を膜状に覆うようになり、所謂バーンアウト現象を抑制することができ、冷却効率を高めることができる。
【0062】
また、実施例4の沸騰冷却器10Cは、図3の沸騰冷却器10Aと同様に、流路20内で発生する気体Gの量が多いとき、図6(C)に示すように、連通路40を開くので、一の流路20内で発生した気泡を他の流路20に移動させることができる。例えば、一の流路20内で液冷媒が沸騰しており、且つ、他の流路20内で液冷媒が沸騰してない場合、圧力差によって、一の流路20内で発生した気泡を他の流路20に移動させることができる。これに伴い、他の流路20内において液冷媒が沸騰し易くなるので、冷却効率を高めることができる。従って、全体としての冷却効率を高めることができる。
【0063】
更に、実施例4の沸騰冷却器10Cは、図3の沸騰状態検出センサ32、アクチュエータ34A、及び制御装置36A等の電子部品の代わりに、付勢手段50Cを用いるので、可動壁18Aを移動させるための電源が不要となる。これにより、沸騰冷却器10Cのランニングコストを低減できると共に、沸騰冷却器10Cの設置場所に制約がなくなる。また、高価な制御装置36A等の代わりに、安価な付勢手段50Cを用いるので、沸騰冷却器10Cの製造コストを低減できる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0065】
例えば、上述した実施例1及び3において、流路20は複数であるとしたが、単数であってもよく、この場合も、液体が流路20の内壁面を膜状に覆うようになり、所謂バーンアウト現象を抑制することができ、冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施例1の沸騰冷却器の構成を示す図である。
【図2】制御装置36が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2の沸騰冷却器の構成を示す図である。
【図4】制御装置36Aが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例3の沸騰冷却器の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例4の沸騰冷却器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
10 沸騰冷却器
18 可動壁
20 流路
40 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受熱して沸騰気化する液冷媒が流れる流路を備える沸騰冷却器において、
前記流路の断面積を可変するよう移動可能な可動壁を備え、
前記可動壁は、前記流路内で発生する気体の量が多いとき、前記流路の断面積を拡大する方向に移動される沸騰冷却器。
【請求項2】
受熱して沸騰気化する液冷媒が流れる複数の流路を備える沸騰冷却器において、
一の流路と他の流路とを連通する連通路と、
前記連通路を開閉するよう移動可能な可動壁とを備え、
前記可動壁は、前記流路内で発生する気体の量が多いとき、前記連通路を開く方向に移動される沸騰冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−139169(P2010−139169A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316258(P2008−316258)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】