説明

油圧アクチュエータの駆動装置

【課題】閉回路の油圧回路において油圧アクチュエータに伝達される運動エネルギーを利用可能なエネルギーとして取り出すことが可能な油圧アクチュエータの駆動装置を提供する。
【解決手段】巻き下げ動作を行う際に下降する吊荷の重さでウインチ15を回転させ、回転するウインチ15によって駆動される油圧モータ21によって駆動回路25の作動油を流通させ、駆動回路25を流通する作動油の圧力によって発電するようにしている。これにより、下降する吊荷の重さがウインチ15に伝わることで生じる回転力を電気エネルギーとして利用することができるので、エネルギー効率を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプと油圧アクチュエータとが閉回路接続された油圧回路を備えた油圧アクチュエータの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧アクチュエータの駆動装置では、エンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、を閉回路接続した油圧アクチュエータの駆動装置が知られている(例えば、引用文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−203527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この油圧アクチュエータの駆動装置は、油圧アクチュエータの駆動速度の制御を、開回路の駆動装置のようにバルブの開度の変更によって行う必要がなく、油圧ポンプとして用いられる可変容量形の油圧ポンプによって行うことが可能である。このため、この閉回路の駆動装置は、開回路の駆動装置と比較して運転時におけるエネルギーの損失を低減することが可能である。
この駆動装置を例えばクレーンのウインチに適用した場合において、フックに吊り下げた荷物を下降させる操作を行うと、下降する荷物の重さがウインチに伝わることで生じる回転力が油圧モータに付与される。この回転力は、油圧モータの駆動の際に高い頻度で生じているが、利用可能なエネルギーとして取り出されておらず、十分な効率向上が図られていない。
【0005】
本発明は、閉回路の油圧回路において油圧アクチュエータに伝達されるエネルギーを利用可能なエネルギーとして取り出すことが可能な油圧アクチュエータの駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、油圧ポンプと油圧アクチュエータとを閉回路接続することによって構成された油圧回路を備え、エンジンの動力によって油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出された作動油によって油圧アクチュエータを駆動する油圧アクチュエータの駆動装置において、連結された部材から付与される外力で駆動される油圧アクチュエータによって油圧回路の作動油を流通させ、油圧回路を流通する作動油の圧力によって発電する発電手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記発電手段が、油圧回路を流通する作動油によって油圧モータとして駆動される油圧ポンプを動力として発電可能な発電機と、油圧ポンプに対してエンジンの動力を伝達させるか、または、作動油によって駆動させた油圧ポンプの動力を発電機に伝達させるかを切換える動力切換手段と、を有していることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の発明は、前記発電手段が、油圧ポンプと並列に油圧回路に接続された油圧モータと、油圧モータを動力として発電可能な発電機と、油圧回路の作動油流路を油圧ポンプ側または油圧モータ側に切換える流路切換手段と、を有していることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の発明は、前記発電機において発電された電力を蓄電可能なバッテリを備えたことを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の発明は、前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、油圧アクチュエータが外力を受けて駆動される状態において、蓄電量検出手段によって検出された蓄電量が所定の蓄電量未満の場合には、発電機による発電を行い、所定の蓄電量以上の場合には、発電機による発電を行うことなくエンジンの動力で油圧ポンプを駆動させる蓄電制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の発明は、前記油圧アクチュエータが外力を受けて駆動される状態において、アクチュエータが受ける外力が所定以上の場合には、発電機による発電を行い、外力が所定未満の場合には、発電機による発電を行うことなくエンジンの動力で油圧ポンプを駆動させる運転切換制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、連結された部材から付与される外力で駆動されるアクチュエータにおいて生じる運動エネルギーを電気エネルギーとして利用することができるので、エネルギー効率を向上させることが可能となる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明によれば、一台の油圧ポンプによってアクチュエータに伝わる運動エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能となるので、部品点数の低減によって製造コストの低減が可能となる。
本発明の請求項3に記載の発明によれば、油圧ポンプに対して、油圧ポンプとして駆動する場合の動力源と、油圧モータとして駆動する場合の出力が伝達される発電機と、の切換えに用いられる複雑な機構を必要とすることなく、アクチュエータに伝わる運動エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能となるので、製造コストの低減が可能となる。
本発明の請求項4に記載の発明によれば、運動エネルギーから変換された電気エネルギーをバッテリに蓄えておくことで、エネルギーを他の時間帯および用途に用いることができるので、エネルギーを有効に利用することが可能となる。
本発明の請求項5に記載の発明によれば、バッテリが過充電の状態となることを防止することができるので、バッテリの故障の発生を低減するとともに、バッテリの長寿命化を図ることが可能となる。
本発明の請求項6に記載の発明によれば、アクチュエータが受ける外力が小さい場合には、エンジンの動力で油圧ポンプを駆動するようにしたので、求められるアクチュエータの動作に動作不良が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す移動式クレーンの側面図である。
【図2】油圧アクチュエータの駆動装置の概略構成図である。
【図3】制御系を示すブロック図である。
【図4】第1油圧ポンプによる巻き上げ動作時の作動油の流路を示す油圧アクチュエータの駆動装置の概略構成図である。
【図5】第2油圧ポンプによる巻き上げ動作時の作動油の流路を示す油圧アクチュエータの駆動装置の概略構成図である。
【図6】巻き下げ動作時における第2油圧ポンプによる運動エネルギーの回生時の作動油の流路を示す油圧アクチュエータの駆動装置の概略構成図である。
【図7】巻き上げ制御処理を示すフローチャートである。
【図8】巻き下げ制御処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の他の実施形態を示す油圧アクチュエータの駆動装置の概略構成図である。
【図10】制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図8は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態では、本発明の油圧アクチュエータの駆動装置を移動式クレーンに適用した場合について説明する。
【0012】
この移動式クレーン10は、図1に示すように、走行するための車両11と、車両11上に旋回可能に設けられた旋回台12と、旋回台12上に起伏可能に設けられた伸縮ブーム13と、旋回台12上の伸縮ブーム13の側方に設けられ、車両11の走行およびクレーンの操作に関する操作を行うためのキャビン14と、を備えている。
【0013】
旋回台12の後部にはウインチ15が設けられ、ウインチ15に巻き掛けられたワイヤロープ16が伸縮ブーム13の先端部を介して繰り出される。ワイヤロープ16の先端部にはフック17が設けられ、フック17に荷物が吊り下げられる。
【0014】
この移動式クレーン10は、ウインチ15の巻き上げおよび巻き下げを行うためのウインチ駆動装置20と、ウインチ駆動装置20の運転を制御するためのコントローラ30と、を備えている。
【0015】
ウインチ駆動装置20は、ウインチ15を正逆回転駆動させる油圧アクチュエータとしての油圧モータ21と、車両11を走行させるエンジン11aによって駆動する油圧ポンプとしての第1油圧ポンプ22と、車両11に設けられたバッテリ11bの電力によって駆動する電動機としての電動モータ23と、電動モータ23によって駆動する油圧モータとしての第2油圧ポンプ24と、油圧モータ21、第1油圧ポンプ22および第2油圧ポンプ24が閉回路接続された油圧回路としての駆動回路25と、駆動回路25に作動油を補充するための作動油補充回路26と、を備えている。
【0016】
油圧モータ21は、駆動回路25を流通する作動油の流通方向に応じて回転方向を変化させることが可能なものである。また、油圧モータ21は、ウインチ15を駆動させるときを除いて回転軸を固定するためのブレーキ21aを有している。さらに、油圧モータ21は、下降する荷物の重さで回転するウインチ15によって駆動可能であり、駆動回路25の作動油を流通させる油圧ポンプとしての機能も有する。
【0017】
第1油圧ポンプ22および第2油圧ポンプ24は、それぞれ二方向に作動油を流通させることが可能な可変容量形の油圧ポンプである。第1油圧ポンプ22は、図2に示すように、作動油補充回路26の作動油によって駆動する第1シリンダ22aと、第1シリンダ22aに対して作動油の流通方向を切換えるための第1方向切換え弁22bとを有している。第2油圧ポンプ24は、図2に示すように、作動油補充回路26の作動油によって駆動する第2シリンダ24aと、第2シリンダ24aに対して作動油の流通方向を切換えるための第2方向切換え弁24bとを有している。第1油圧ポンプ22および第2油圧ポンプ24は、それぞれ第1シリンダ22aおよび第2シリンダ24aを操作することによってポンプ容量を最大のポンプ容量に対して0%〜100%の間で変化させることが可能である。また、第2油圧ポンプ24は、駆動回路25を流通する作動油によっても駆動可能であり、駆動回路25を流通する作動油によって駆動する油圧モータとしての機能も有する。
【0018】
電動モータ23は、バッテリ11bの電力によって駆動可能であり、正逆回転可能に構成されている。また、電動モータ23は、油圧モータとして駆動する第2油圧ポンプ24によって発電可能であり、バッテリ11bに充電する電力を発電するための発電機としての機能も有する。
【0019】
駆動回路25は、第1油圧ポンプ22と第2油圧ポンプ24とが互いに並列に接続されている。駆動回路25には、第1油圧ポンプ22および第2油圧ポンプ24のそれぞれの一方のポートを油圧モータ21の一方のポートに接続することによって第1作動油流路25aが形成されている。また、駆動回路25には、第1油圧ポンプ22および第2油圧ポンプ24のそれぞれの他方のポートを油圧モータ21の他方のポートに接続することによって第2作動油流路25bが形成されている。また、駆動回路25の第1油圧ポンプ22の各ポートに接続された第1作動油流路25aと第2作動油流路25bとの間には、圧力検出回路25cが構成されている。圧力検出回路25cは、第1油圧ポンプ22の作動油の吐出圧力が検出可能となっている。
駆動回路25は、第1油圧ポンプ22のポンプ容量を0%に調整し、第2油圧ポンプ24のポンプ容量を0%よりも大きくなるように調整することによって、作動油の流路が第2油圧ポンプ24側に設定される。また、駆動回路25は、第1油圧ポンプ22のポンプ容量を0%よりも大きくなるように調整し、第2油圧ポンプ24のポンプ容量を0%に調整することによって、作動油の流路が第1油圧ポンプ22側に設定される。本実施形態では、第1油圧ポンプ22および第2油圧ポンプ24においてポンプ容量を0%とする切換えが本発明の流路切換手段に相当する。
【0020】
作動油補充回路26は、エンジン11aによって駆動するパイロットポンプ26aを有し、パイロットポンプ26aの吐出側に作動油流路26bが接続されている。作動油流路26bは、駆動回路25の第1作動油流路25aに接続された作動油流路26cと、第2作動油流路25bに接続された作動油流路26dと、第1油圧ポンプ22の第1方向切換え弁22bと、第2油圧ポンプ24の第2方向切換え弁24bと、に接続されている。作動油流路26c,26dには、それぞれ作動油の流通方向を作動油流路26b側から第1作動油流路25a側および第2作動油流路25b側に限定するための逆止弁26e,26fが設けられている。また、作動油流路26bには、作動油補充回路26内の圧力を所定の圧力に保持するためのリリーフ弁26gが設けられている。
【0021】
コントローラ30は、CPU、ROM、RAMを有している。コントローラ30は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0022】
コントローラ30の出力側には、バッテリ11b、油圧モータ21、方向切換え弁22b,24b、電動モータ23が接続されている。コントローラ30は、油圧モータ21に対して回転軸のブレーキの解除に関する信号を送信する。コントローラ30は、バッテリ11bに対して充電または放電の切換えに関する信号を送信する。また、コントローラ30は、油圧モータ21に対してブレーキ21aの解除に関する信号を送信する。またコントローラ30は、第1方向切換え弁22b及び第2方向切換え弁24bに対して第1油圧ポンプ22および第2油圧ポンプ24の作動油の吐出量に関する信号を送信する。さらに、コントローラ30は、電動モータ23に駆動または駆動の停止に関する信号を送信する。
【0023】
コントローラ30の入力側には、バッテリ11bと、電動モータ23と、オペレータによって操作されるレバーやフットペダル等からなる操作部31と、フック17に吊り下げられた荷物の荷重を検出し、検出された荷重が定格荷重を超える前に警告を発したりクレーン作業を中止したりするための過負荷防止装置32と、が接続されている。コントローラ30には、バッテリ11bの充電量に関する信号、電動モータ23の運転状態に関する信号、操作部31の操作方向や操作量に関する操作信号、過負荷防止装置のフック17に吊り下げられた荷物の荷重に関する負荷信号が入力される。
【0024】
以上のように構成された油圧アクチュエータの駆動装置において、通常のウインチ15を巻き上げる動作の場合には、電動モータ23を停止した状態で、第2油圧ポンプ24のポンプ容量が0%となるように第2シリンダ24aを調整するとともに、操作部31の操作量に応じた第1油圧ポンプ22のポンプ容量となるように第1シリンダ22aを調整し、ブレーキ21aを解除する。これにより、第1油圧ポンプ22から吐出された作動油は、図4に示すように、駆動回路25を流通して油圧モータ21を駆動させ、ウインチ15を巻き上げ方向に回転させる。
【0025】
また、エンジン11aが停止している場合等、バッテリ11bの電力によってウインチ15を巻き上げる動作の場合には、第1油圧ポンプ22のポンプ容量が0%となるように第1シリンダ22aを調整し、操作部31の操作量に応じた第2油圧ポンプ24のポンプ容量となるように第2シリンダ24aを調整し、ブレーキ21aを解除する。これにより、第2油圧ポンプ24から吐出された作動油は、図5に示すように、駆動回路25を流通して油圧モータ21を駆動させ、ウインチ15を巻き上げ方向に回転させる。
【0026】
さらに、フック17に吊り下げられた荷物を下降させるためにウインチ15を巻き下げる動作の場合には、第1油圧ポンプ22のポンプ容量が0%となるとなるように第1シリンダ22aを調整し、第2油圧ポンプ24のポンプ容量が所定量となるように第2シリンダ24aを調整し、ブレーキ21aを解除する。これにより、フック17に吊り下げられた荷物の重さでウインチ15を回転させて油圧モータ21を駆動させる。駆動された油圧モータ21から吐出された作動油は、図6に示すように、駆動回路25を流通して第2油圧ポンプ24を駆動させる。第2油圧ポンプ24の駆動によって回転する電動モータ23は発電機として機能して発電し、発電した電力はバッテリ11bに蓄えられる。
【0027】
コントローラ30は、ウインチ15を巻き上げる操作が操作部31に対して入力される場合に、図7の巻き上げ制御処理を行う。
【0028】
(ステップS1)
ステップS1において、CPUは、操作部31に対する操作入力が巻き上げ操作であるか否かを判定する。巻き上げ操作で有る場合にはステップS2に処理を移す。
【0029】
(ステップS2)
ステップS1において、操作部31に対する操作入力が巻き上げ操作でると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、バッテリ11bの充電量が所定充電量以上か否かを判定する。バッテリ11bの充電量が所定充電量以上の場合には、ステップS3に処理を移し、充電量が所定充電量よりも少ない場合には、ステップS5に処理を移す。
【0030】
(ステップS3)
ステップS2において、バッテリ11bの充電量が所定充電量以上であると判定した場合に、ステップ3においてCPUは、過負荷防止装置32によって検出された吊荷の重さが第2油圧ポンプ24の能力で対応可能な重さであるか否かを判定する。第2油圧ポンプ24で対応可能な吊荷の重さの場合にはステップS4に処理を移し、第2油圧ポンプ24で対応できない吊荷の重さの場合にはステップS5に処理を移す。
【0031】
(ステップS4)
ステップS3において、過負荷防止装置32によって検出された吊荷の重さが第2油圧ポンプ24の能力で対応可能であると判定した場合に、ステップS4においてCPUは、第2油圧ポンプ24を駆動し、ステップS1に処理を戻す。
【0032】
(ステップS5)
ステップ2において、バッテリ11bの充電量が所定充電量よりも少ないと判定した場合、または、ステップS3において、過負荷防止装置32によって検出された吊荷の重さが第2油圧ポンプ24の能力で対応できないと判定した場合に、ステップS5においてCPUは、第1油圧ポンプ22を駆動し、ステップS1に処理を戻す。
【0033】
また、コントローラ30は、ウインチ15を巻き下げる操作が操作部31に対して入力される場合に、図8の巻き下げ制御処理を行う。
【0034】
(ステップS11)
ステップS11において、CPUは、操作部31に対する操作入力が巻き下げ操作であるか否かを判定する。巻き下げ操作で有る場合にはステップS12に処理を移す。
【0035】
(ステップS12)
ステップS11において、操作部31に対する操作入力が巻き下げ操作でると判定した場合に、ステップS12においてCPUは、バッテリ11bの充電量が充電可能な所定充電量以下であるか否かを判定する。バッテリ11bの充電量が充電可能な所定充電量以下の場合には、ステップS13に処理を移し、充電量が所定充電量よりも多い場合には、ステップS15に処理を移す。
【0036】
(ステップS13)
ステップS12において、バッテリ11bの充電量が所定充電量以下であると判定した場合に、ステップ13においてCPUは、過負荷防止装置32によって検出された吊荷の重さが第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動可能な重さであるか否かを判定する。第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動可能な吊荷の重さであると判定した場合にはステップS14に処理を移し、第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動させることができない吊荷の重さと判定した場合にはステップS15に処理を移す。
【0037】
(ステップS14)
ステップS13において、吊荷の重さが第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動可能であると判定した場合に、ステップS14においてCPUは、第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動し、ステップS11に処理を戻す。
【0038】
(ステップS15)
ステップ12において、バッテリ11bの充電量が所定充電量よりも多いと判定した場合、または、ステップS13において、吊荷の重さが第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動させることができないと判定した場合に、ステップS15においてCPUは、第1油圧ポンプ22を駆動してウインチ15を巻き下げ、ステップS11に処理を戻す。
【0039】
このように、本実施形態の油圧アクチュエータの駆動装置によれば、巻き下げ動作を行う際に下降する吊荷の重さでウインチ15を回転させ、回転するウインチ15によって駆動される油圧モータ21によって駆動回路25の作動油を流通させ、駆動回路25を流通する作動油の圧力によって発電するようにしている。これにより、下降する吊荷の重さがウインチ15に伝わることで生じる回転力を電気エネルギーとして利用することができるので、エネルギー効率を向上させることが可能となる。
【0040】
また、第1油圧ポンプ22と並列に駆動回路25に接続された油圧モータとして駆動可能な第2油圧ポンプ24と、第2油圧ポンプ24に接続され、発電機として駆動可能な電動モータ23と、を備え、駆動回路25の作動油の流路を第2油圧ポンプ24側に切換えることによって巻き下げ動作を行う際の下降する吊荷の重さがウインチ15に伝わることで生じる回転力を電気エネルギーに変換している。これにより、第1油圧ポンプ22に対して、油圧ポンプとして駆動する場合の動力源としてのエンジン11aと、油圧モータとして駆動する場合の出力が伝達される電動モータ23と、の切換えに用いられる複雑な機構を必要とすることなく、下降する吊荷の重さがウインチ15に伝わることで生じる回転力を電気エネルギーに変換することが可能となるので、製造コストの低減が可能となる。
【0041】
また、電動モータ23が駆動されることによって発電された電力を蓄電することが可能なバッテリ11bを備えている。これにより、巻き下げ動作時に油圧モータ21に伝わる回転力から変換された電気エネルギーをバッテリ11bに蓄えておくことで、電気エネルギーを他の時間帯および用途に用いることができるので、エネルギーを有効に利用することが可能となる。
【0042】
また、巻き下げ動作を行う際に、バッテリ11bの蓄電量が所定の蓄電量未満の場合には、第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動させ、蓄電量が所定の蓄電量以上の場合には、第1油圧ポンプ22を駆動するようにしている。これにより、バッテリ11bが過充電の状態となることを防止することができるので、バッテリ11bの故障の発生を低減するとともに、バッテリ11bの長寿命化を図ることが可能となる。
【0043】
また、巻き下げ動作を行う際に、過負荷防止装置32によってフック17に吊り下げられた荷物の重さを検出し、検出された荷物の重さが所定の重さ以上の場合には、第2油圧ポンプ24を油圧モータとして駆動させ、荷物の重さが所定の重さ未満の場合には、第1油圧ポンプ22を駆動させるようにしている。これにより、ウインチ15に対する負荷が小さい場合には、第1油圧ポンプ22を駆動することによって巻き下げ動作を行うようにしたので、巻き下げ動作時にウインチ15が駆動されずに荷物を下降させることができない等、動作不良を防止することが可能となる。
【0044】
図9および図10は本発明の他の実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0045】
この油圧アクチュエータの駆動装置は、前記実施形態のエンジン11aによって駆動する第1油圧ポンプ22と電動モータ23によって駆動する第2油圧ポンプ24の代わりに、図9に示すように、エンジン11aまたは電動モータ23に動力を切換えて駆動する油圧ポンプ27と、作動油補充回路26の作動油によって駆動するピストン27aと、ピストン27aに対して作動油の流通方向を切換えるための方向切換え弁27bとを備えている。油圧ポンプ27は、ピストン27aを操作することによってポンプ容量を最大のポンプ容量に対して0%〜100%の間で変化させることが可能である。また、油圧ポンプ27は、エンジン11aまたは電動モータ23に動力を切換える電磁クラッチ等の動力切換え機構28を有し、図10に示すように、コントローラ30の出力側に接続されている。
本実施形態において、油圧ポンプ27に対して動力をエンジン11aまたは電動モータ23に切換えるための動力切換え機構28が本発明の動力切換手段に相当する。
【0046】
以上のように構成された油圧アクチュエータの駆動装置において、前記実施形態と同様に運転することが可能となる。
【0047】
このように、本実施形態の油圧アクチュエータの駆動装置によれば、油圧ポンプ27に対してエンジン11aの動力を伝達させるか、または、電動モータ23の動力を伝達させるかを切換える動力切換え機構28を備え、動力を電動モータ23側に切換えることによって巻き下げ動作を行う際の下降する吊荷の重さがウインチ15に伝わることで生じる回転力を回生可能としている。これにより、一台の油圧ポンプ27によって下降する吊荷の重さがウインチ15に伝わることで生じる回転力を電気エネルギーに変換することが可能となるので、部品点数の低減によって製造コストの低減が可能となる。
【0048】
尚、前記実施形態では、油圧アクチュエータの駆動装置を移動式クレーン10のウインチ15を駆動させるウインチ駆動装置20に適用したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、クレーンや高所作業車等の旋回台の旋回動作における旋回速度の減速時の慣性力を電気エネルギーに変換して利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
11a エンジン
11b バッテリ
20 ウインチ駆動装置
21 油圧モータ
22 第1油圧ポンプ
23 電動モータ
24 第2油圧ポンプ
25 駆動回路
27 油圧ポンプ
28 動力切換え機構
30 コントローラ
31 操作部
32 過負荷防止装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと油圧アクチュエータとを閉回路接続することによって構成された油圧回路を備え、エンジンの動力によって油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出された作動油によって油圧アクチュエータを駆動する油圧アクチュエータの駆動装置において、
連結された部材から付与される外力で駆動される油圧アクチュエータによって油圧回路の作動油を流通させ、油圧回路を流通する作動油の圧力によって発電する発電手段を備えた
ことを特徴とする油圧アクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
前記発電手段は、油圧回路を流通する作動油によって油圧モータとして駆動される油圧ポンプを動力として発電可能な発電機と、油圧ポンプに対してエンジンの動力を伝達させるか、または、作動油によって駆動させた油圧ポンプの動力を発電機に伝達させるかを切換える動力切換手段と、を有している
ことを特徴とする請求項1記載の油圧アクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
前記発電手段は、油圧ポンプと並列に油圧回路に接続された油圧モータと、油圧モータを動力として発電可能な発電機と、油圧回路の作動油流路を油圧ポンプ側または油圧モータ側に切換える流路切換手段と、を有している
ことを特徴とする請求項1記載の油圧アクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
前記発電機において発電された電力を蓄電可能なバッテリを備えた
ことを特徴とする請求項2または3記載の油圧アクチュエータの駆動装置。
【請求項5】
前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、
油圧アクチュエータが外力を受けて駆動される状態において、蓄電量検出手段によって検出された蓄電量が所定の蓄電量未満の場合には、発電機による発電を行い、所定の蓄電量以上の場合には、発電機による発電を行うことなくエンジンの動力で油圧ポンプを駆動させる蓄電制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項4記載の油圧アクチュエータの駆動装置。
【請求項6】
前記油圧アクチュエータが外力を受けて駆動される状態において、アクチュエータが受ける外力が所定以上の場合には、発電機による発電を行い、外力が所定未満の場合には、発電機による発電を行うことなくエンジンの動力で油圧ポンプを駆動させる運転切換制御手段を備えた
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項記載の油圧アクチュエータの駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−127478(P2012−127478A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281966(P2010−281966)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】