説明

油圧アクチュエータ作動速度制御回路

【課題】パイロット圧作動型の可変絞り弁の位置制御を行うことによって、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油供給量及び油圧アクチュエータからのドレン量を調整可能とされた油圧アクチュエータ作動速度制御回路において、前記油圧ポンプの負荷を軽減させ得ると共に、部品点数の削減によるコスト低廉化及び小型化を図る。
【解決手段】前記油圧アクチュエータ60とは異なる他の油圧アクチュエータ300及び該他の油圧アクチュエータ300を流体的に駆動する他の油圧ポンプ600を有する油圧機構に作動油を供給すべく所定圧に調圧された他の供給ライン790を、二次側が前記可変絞り弁740に対してパイロット圧を与える為のパイロットライン750に流体接続された電磁比例減圧弁760,765の一次側に流体接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ圧油を供給する際の圧油供給量及び前記油圧アクチュエータから圧油を排出する際のドレン量をパイロット圧作動型可変絞り弁の位置制御によって調整することで、前記油圧アクチュエータの作動速度を制御し得るように構成された油圧アクチュエータ作動速度制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプから油圧アクチュエータへ圧油を供給する際の圧油供給量及び前記油圧アクチュエータから圧油を排出する際のドレン量を調整することで前記油圧アクチュエータの作動速度を制御する油圧機構として、パイロット圧作動型の可変絞り弁を用いたものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記特許文献1に記載の油圧機構は、油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータへ供給する供給ラインと、前記供給ラインを選択的に連通又は遮断させる方向切換弁と、前記方向切換弁及び前記油圧アクチュエータの間において前記供給ラインに連通されたドレンラインと、前記ドレンラインに介挿されたパイロット圧作動型の可変絞り弁と、前記可変絞り弁に対してパイロット圧を与える為のパイロットラインと、前記パイロットラインへの圧油供給を調整する電磁比例減圧弁とを備えている。
前記従来の油圧機構は、前記電磁比例減圧弁を油圧アクチュエータの給排ラインに介挿させずに、前記アクチュエータへの圧油供給量及び前記アクチュエータからのドレン量を調整できる為、前記電磁比例減圧弁を大型化させることなく、前記油圧アクチュエータの作動速度を十分な範囲内で制御することができる点で有用である。
【0004】
しかしながら、前記従来の油圧機構においては、前記供給ライン中の圧油の一部を取り出して前記電磁比例減圧弁の一次側に供給するように構成されていた為、前記可変絞り弁を作動させるか否かに拘わらず、常時、前記油圧ポンプに対して負荷が掛かるという問題があった。
即ち、前記従来の油圧機構は、流量調整弁を介して前記供給ライン中の圧油の一部をパイロット圧取出ラインへ分岐させ、該パイロット圧取出ラインの圧油をリリーフ弁によって調圧した状態で前記電磁比例減圧弁の一次側へ供給するように構成されている。
斯かる構成においては、前記可変絞り弁を作動させない状態であっても、常に、前記パイロット圧取出ラインに一定量の圧油が流れることになり、前記油圧ポンプに不必要な負荷が常時掛かる。
【0005】
さらに、前記従来構成においては、前記パイロット圧取出ラインに圧油を取り出す為の前記流量調整弁や、該パイロット圧取出ラインの油圧を設定する為の前記リリーフ弁が必要となり、部品点数増加によるコスト高及び大型化を招くという問題もある。
【特許文献1】特開平6−280815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、パイロット圧作動型の可変絞り弁の位置制御を行うことによって、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油供給量及び油圧アクチュエータからのドレン量を調整可能とされた油圧アクチュエータ作動速度制御回路であって、前記油圧ポンプの負荷を軽減させ得ると共に、部品点数の削減によるコスト低廉化及び小型化を図り得る油圧アクチュエータ作動速度制御回路の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決する為に、エンジンによって作動的に駆動される油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータへ供給する供給ラインと、前記供給ラインを選択的に連通又は遮断させる方向切換弁と、前記方向切換弁及び前記油圧アクチュエータの間において前記供給ラインに連通されたドレンラインと、前記ドレンラインに介挿されたパイロット圧作動型の可変絞り弁と、前記可変絞り弁に対してパイロット圧を与える為のパイロットラインと、前記パイロットラインへの圧油供給を調整する電磁比例減圧弁とを備え、前記電磁比例減圧弁の二次側から出力され、前記パイロットラインを流れる圧油の油圧を調整することによって前記可変絞り弁の絞り度を変更して前記油圧アクチュエータの作動速度を制御するように構成された油圧アクチュエータ作動速度制御回路であって、前記油圧アクチュエータとは異なる他の油圧アクチュエータ及び該他の油圧アクチュエータを流体的に駆動する他の油圧ポンプを有する油圧機構に作動油を供給すべく所定圧に調圧された他の供給ラインを前記電磁比例減圧弁の一次側に流体接続させた油圧アクチュエータ作動速度制御回路を提供する。
【0008】
又、本発明は、左右一対の駆動輪をそれぞれ駆動し得るように走行系伝動経路に介挿された一対のHSTと、前記一対のHSTにおけるポンプ軸によってそれぞれ作動的に駆動される第1及び第2油圧ポンプと、前記第2油圧ポンプからの圧油を所定圧に調圧された状態で前記一対のHSTへ供給するチャージラインと、作業機と、前記作業機を昇降させる油圧アクチュエータと、前記第1油圧ポンプからの圧油を前記油圧アクチュエータへ供給する供給ラインとを備えた作業車輌に適用される油圧アクチュエータ作動速度制御回路であって、前記供給ラインを選択的に連通又は遮断させる方向切換弁と、前記方向切換弁及び前記油圧アクチュエータの間において前記供給ラインに連通されたドレンラインと、前記ドレンラインに介挿されたパイロット圧作動型の可変絞り弁と、前記可変絞り弁に対してパイロット圧を与える為のパイロットラインと、前記パイロットラインへの圧油供給を調整する電磁比例減圧弁とを備え、前記チャージラインを前記電磁比例減圧弁の一次側に流体接続させた油圧アクチュエータ作動速度制御回路を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油圧アクチュエータの作動速度制御を司るパイロット圧作動型可変絞り弁に対してパイロット圧を与えるパイロットラインに、HSTに対して作動油を補給する為に所定圧に調圧されたチャージラインから圧油を供給するように構成したので、前記油圧アクチュエータの油圧源となる油圧ポンプの負荷を軽減させることができる。
又、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへ圧油を供給する為の供給ラインから前記パイロットラインへ流す為の圧油を取り出していた従来構成に比して、流量制御弁やパイロット圧設定用リリーフ弁の不要化を図ることができる。従って、部品点数の削減による低コスト化及び小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、それぞれ、本発明に係る油圧アクチュエータ作動速度制御回路の一実施形態が適用されたトラクタ1の側面図及び油圧回路図である。
【0011】
まず、前記トラクタ1について説明する。
前記トラクタ1は、図1及び図2に示すように、機体フレーム10と、前記機体フレーム10に支持されたエンジン20と、車輌前後方向一方側に配設された左右一対の第1及び第2駆動輪30a,30b(本実施の形態においては前輪)と、前記エンジン20から前記駆動輪30a,30bへ至る走行系伝動経路に介挿されたHST100と、車輌前後方向他方側に配設された非駆動輪40(本実施の形態においては後輪を形成するキャスタ輪)と、前記エンジン20によって作動的に駆動される作業機50と、前記作業機50を昇降させる油圧昇降装置60と、前記油圧昇降装置60の油圧源として作用する第1油圧ポンプ500とを備えている。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態においては、前記トラクタ1は胴体屈折式(articulate)とされている。
具体的には、前記機体フレーム10は、車輌前後方向一方側(本実施の形態においては前方)に配設された第1フレーム11と、車輌前後方向他方側(本実施の形態においては後方)に配設された第2フレーム12であって、前記第1フレーム11に対して略垂直方向に沿った枢支軸15回り揺動自在に連結された第2フレーム12とを有している。
なお、前記トラクタ1には、さらに、ステアリングホイール等の人為操作可能な操舵部材5に連動して、前記第1フレーム11を前記第2フレーム12に対して前記枢支軸10回りに揺動させる油圧操舵機構(図示せず)が備えられる。
【0013】
前記HST100は、前記エンジン20によって作動的に駆動されるHSTポンプ本体220と、前記HSTポンプ本体220によって流体的に駆動され且つ前記駆動輪30を作動的に駆動するHSTモータ本体320とを有している。
前記HSTポンプ本体220及び前記HSTモータ本体320は少なくとも一方が可変容積型とされる。本実施の形態においては、図2に示すように、前記HSTポンプ本体220が可変容積型とされ、且つ、前記HSTモータ本体320は固定容積型とされている。
【0014】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記HST100は、前記一対の駆動輪30a,30bの一方(例えば左側駆動輪30a)に対応した第1HST100aと、前記一対の駆動輪30a,30bの他方(例えば右側駆動輪30b)に対応した第2HST100bとを含んでいる。
【0015】
前記第1HST100aは、前記エンジン20によって作動的に駆動される第1HSTポンプ本体220aと、前記第1HSTポンプ本体220aと一対の第1作動油ライン400aを介して流体接続された第1HSTモータ本体320aであって、対応する前記第1駆動輪30aを作動的に駆動する第1HSTモータ本体320aとを有している。
前記第2HST100bは、前記エンジン20によって作動的に駆動される第2HSTポンプ本体220bと、前記第2HSTポンプ本体220bと一対の第2作動油ライン400bを介して流体接続された第2HSTモータ本体320bであって、対応する前記第2駆動輪30bを作動的に駆動する第2HSTモータ本体320bとを有している。
【0016】
本実施の形態においては、前記第1及び第2HSTモータ本体320a,320bは、それぞれ、対応する駆動輪30a,30bに近接される一対のホイールモータ装置80a,80bの構成部材とされている。
即ち、前記作業車輌1は、前記第1及び第2HSTポンプ本体220a,220bを含む油圧ポンプユニット200と、対応する前記第1駆動輪30aに近接配置されるように前記油圧ポンプユニット200とは離間配置された第1ホイールモータ装置80aと、対応する前記第2駆動輪30bに近接配置されるように前記油圧ポンプユニット200とは離間配置された第2ホイールモータ装置80bとを備えている。
【0017】
前記油圧ポンプユニット200は、前記エンジン20の出力軸に作動的に連結された第1及び第2ポンプ軸210a,210bと、前記第1ポンプ軸210aに相対回転不能に支持された前記第1HSTポンプ本体220aと、前記第2ポンプ軸210bに相対回転不能に支持された前記第2HSTポンプ本体220bと、前記第1及び第2HSTポンプ本体220a,220bを収容するポンプケース250と、前記第1HSTポンプ本体220aの吸引/吐出量を変化させる第1出力調整部材230aと、前記第2HSTポンプ本体220bの吸引/吐出量を変化させる第2出力調整部材230bとを有している。
本実施の形態においては、図1に示すように、前記油圧ポンプユニット100は、装着部材150を介して前記エンジン20に一体的に連結されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施の形態においては、前記第1油圧ポンプ500は、前記油圧ポンプユニット200に付設されている。
詳しくは、前記第1油圧ポンプ500は、前記エンジン20によって作動的に回転駆動される第1油圧ポンプ本体510と、前記第1油圧ポンプ本体510を収容する第1ポンプケース520とを有している。
本実施の形態においては、前記第1油圧ポンプ本体510は、図2に示すように、前記第1及び第2ポンプ軸210a,210bの一方(例えば前記第1ポンプ軸210a)によって作動的に回転駆動されるようになっている。
【0019】
さらに、前記油圧ポンプユニット200には、第2油圧ポンプ600が付設されている。
前記第2油圧ポンプ600は、図2に示すように、前記第1及び第2HST100a,100bに対して作動油を補給する為のチャージポンプとして作用している。
詳しくは、前記第2油圧ポンプ600は、前記エンジン20によって作動的に回転駆動される第2油圧ポンプ本体610と、前記第2油圧ポンプ本体610を収容する第2ポンプケース620とを有している。
本実施の形態においては、前記第2油圧ポンプ本体610は、図2に示すように、前記第1及び第2ポンプ軸210a,210bの他方(例えば第2ポンプ軸210b)によって作動的に回転駆動されるようになっている。
【0020】
前記第1及び第2ホイールモータ装置80a,80bは実質的に同一構成を有している。従って、前記第2ホイールモータ装置80bの構成部材については、前記第1ホイールモータ装置80aにおける構成部材と同一符号又は符号の末尾をbに変更した同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0021】
前記第1ホイールモータ装置80aは、前記第1HSTモータ本体320bを含む油圧モータユニット300を備えている。
前記油圧モータユニット300は、前記第1HSTモータ本体320aと、前記第1HSTモータ本体320aを相対回転不能に支持するモータ軸310と、前記第1HSTモータ本体310を収容するモータケース350と、前記第1油圧HST本体320aの給排油量を画する固定斜板(図示せず)とを有している。
【0022】
斯かる構成において、前記第1HSTモータ本体320aは、一対の第1作動油ライン400aを介して前記第1HSTポンプ本体220aに流体接続されており、前記第1HSTポンプ本体220aによって流体的に駆動されるようになっている。
同様に、前記第2HSTモータ本体320bは、一対の第2作動油ライン400bを介して前記第2HSTポンプ本体220bに流体接続されており、前記第2HSTポンプ本体220bによって流体的に駆動されるようになっている。
【0023】
次に、前記HST100における油圧ラインについて説明する。
前記HST100は、前記第1HSTポンプ本体220a及び前記第1HSTモータ本体320aを流体接続する前記一対の第1作動油ライン400aと、前記第2HSTポンプ本体220b及び前記第2HSTモータ本体320bを流体接続する前記一対の第2作動油ライン400bと、前記第1及び第2油圧ポンプ本体510,610の吸引側を油溜め90に流体接続させる吸引ライン450と、前記第2油圧ポンプ本体610からの圧油を前記第1作動油ライン400a及び前記第2作動油ライン400bへ供給するチャージライン410とを有している。
【0024】
前記チャージライン410は、前記第2油圧ポンプ本体610からの圧油を所定のチャージ圧に調圧した状態で前記第1及び第2作動油ライン400a,400bへ供給するように構成されている。
具体的には、前記チャージライン410には、チャージ圧を設定するチャージ用リリーフ弁415が介挿されている。
さらに、前記チャージライン410には、前記第2油圧ポンプ本体610から前記第1及び第2作動油ライン400a,400bへの圧油の流入を許容し、且つ、逆向きの流れを防止するチェック弁416が介挿されている。
【0025】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記第1及び第2HST100a,100bには、それぞれ、一対の第1作動油ライン400aの一方、及び、一対の第2作動油ライン400bの一方が異常高圧となった際に、該一方の作動油ラインの作動油を他方の作動油ラインへ流入させるリリーフライン420が設けられている。
【0026】
さらに、本実施の形態においては、図2に示すように、前記HST100には、前記ポンプケース250内の貯留油を油溜め90に排出する為のドレンライン430が設けられている。好ましくは、前記ドレンライン430にはオイルクーラー435が介挿される。なお、図2中の符号440は、前記オイルクーラー435の目詰まり時に前記ポンプケース250内が異常高圧となることを防止する為のバイパスラインである。
【0027】
ここで、本実施の形態に係る油圧アクチュエータ作動速度制御回路について説明する。
前記油圧アクチュエータ作動速度制御回路は、油圧アクチュエータの作動速度を制御する為にトラクタ等の作業車輌に適用されるものである。
本実施の形態においては、前記作動速度制御回路は、前記油圧昇降装置60の作動速度を制御するように構成されている。
【0028】
詳しくは、前記作動速度制御回路は、図2に示すように、前記第1油圧ポンプ500からの圧油を前記油圧アクチュエータとして作用する前記油圧昇降装置60へ供給する供給ライン710と、前記供給ライン710を選択的に連通又は遮断させる方向切換弁720と、前記方向切換弁720及び前記油圧アクチュエータの間において前記供給ライン710に連通されたドレンライン730と、前記ドレンライン730に介挿されたパイロット圧作動型の可変絞り弁740と、前記可変絞り弁740に対してパイロット圧を与える為のパイロットライン750と、前記パイロットライン750への圧油供給を調整する電磁比例減圧弁760とを備えており、前記電磁比例減圧弁760の二次側から出力され、前記パイロットライン750を流れる圧油の油圧を調整することによって前記可変絞り弁740の絞り度を変更して前記油圧昇降装置60の作動速度を制御するように構成されている。
【0029】
前記可変絞り弁740は、図2に示すように、前記ドレンライン730を遮断する遮断状態と前記パイロット圧に応じて前記ドレンライン730の連通幅を変化させる可変絞り状態とをとり得るようになっている。
【0030】
斯かる構成の前記作動速度制御回路は、前記電磁比例減圧弁760が前記油圧昇降装置60の給排ラインに介挿されていない為、該電磁比例減圧弁760を大型化させることなく、前記油圧昇降装置60の作動速度を十分な範囲内で制御することができる。
【0031】
なお、前記作動速度制御回路は、前記構成に加えて、前記供給ライン710の油圧を設定するリリーフ弁715と、前記第1油圧ポンプ500から前記油圧アクチュエータへの作動油の流れを許容し且つ逆向きの流れを防止するように前記方向切換弁720及び前記油圧アクチュエータの間において前記供給ライン710に介挿されたチェック弁770と、前記供給ライン710が異常高圧となった際に該供給ライン710中の圧油を油溜め90へ排出するアンロード弁780とを備えている。
【0032】
又、本実施の形態においては、図2に示すように、前記方向切換弁720もパイロット圧作動型の可変絞り機能を有している。
即ち、前記方向切換弁720は、前記第1油圧ポンプ500から前記油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断する遮断状態と、パイロット圧に応じて前記供給ライン710の連通幅を変化させる可変絞り状態とをとり得るようになっている。
従って、前記作動速度制御回路は、前記構成に加えて、可変絞り型の前記方向切換弁720に対してパイロット圧を与える為の第2パイロットライン755と、前記第2パイロットライン755への圧油供給を調整する第2電磁比例減圧弁765とを備えている。
【0033】
本実施の形態に係る作動速度制御回路は、前記構成に加えて、前記油圧昇降装置60とは異なる他の油圧アクチュエータと該他の油圧アクチュエータを油圧的に駆動する油圧ポンプとを有する油圧機構における作動油を利用して、前記パイロットライン750(及び前記第2パイロットライン755)へ作動油を供給するように構成されている。
【0034】
具体的には、前記作動速度制御回路は、図2に示すように、前記HST100に対して作動油を補給する為の前記チャージライン410を接続ライン790を介して前記電磁比例減圧弁760(及び前記第2電磁比例減圧弁765)の一次側に流体接続させており、これにより、前記第1油圧ポンプ500に対する負荷の軽減化を図ると共に、従来必要であった流量調整弁や前記パイロットライン用のリリーフ弁の不要化を図っている。
【0035】
即ち、電磁比例減圧弁が油圧アクチュエータの給排ラインに介挿されていないタイプの従来の作動速度制御回路は、油圧アクチュエータへ作動油を供給する為の供給ラインの圧油の一部を取り出して前記電磁比例減圧弁の一次側に供給するように構成されている。従って、前記可変絞り弁を作動させるか否かに拘わらず、常時、前記油圧アクチュエータの油圧源となる油圧ポンプに対して負荷が掛かるという問題があった。
【0036】
詳しくは、前記従来の作動速度制御回路は、前記供給ライン中の圧油の一部を流量調整弁を介してパイロット圧取出ラインに分岐させ、該パイロット取出ラインの圧油をリリーフ弁によって調圧した状態で前記電磁比例減圧弁の一次側へ供給するように構成されている。
斯かる構成においては、前記可変絞り弁を作動させない状態であっても、常に、前記パイロット圧取出ラインに一定量の圧油が流れることになり、油圧アクチュエータの油圧源となる油圧ポンプに不必要な負荷が常時掛かる。
さらに、前記従来構成においては、前記パイロット圧取出ラインへ圧油を取り出す為の前記流量調整弁や、該パイロット圧取出ラインの油圧を設定する為の前記リリーフ弁が必要となり、部品点数増加によるコスト高及び大型化を招くという問題もある。
【0037】
これに対し、本実施の形態においては、前述の通り、前記チャージ用リリーフ弁415によって所定圧に調圧された前記チャージライン410から前記パイロットライン750(及び前記第2パイロットライン755)の作動油を取り出すように構成されている(図2等参照)。
従って、前記第1油圧ポンプ500に対する負荷を軽減できると共に、前記流量調整弁や前記パイロットライン用の前記リリーフ弁の不要化を図ることができる。
なお、チャージポンプとして作用する前記第2油圧ポンプ600から前記チャージライン410へは、前記HST100への作動油補給を十分に行える量の圧油が常時供給されており、余剰油が前記チャージ用リリーフ弁425を介してドレンされている。
従って、前記チャージライン410から前記パイロットライン750(及び前記第2パイロットライン755)用の作動油を取り出しても、前記第2油圧ポンプ600への負荷はそれ程大きくならない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明に係る油圧アクチュエータ作動速度制御回路の一実施の形態が適用されたトラクタの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すトラクタの油圧回路図である。
【符号の説明】
【0039】
1 トラクタ(作業車輌)
20 エンジン
60 油圧昇降装置(油圧アクチュエータ)
100a,100b 第1HST,第2HST
220a,220b 第1及び第2HSTポンプ(他の油圧ポンプ)
320a,320b 第1及び第2HSTモータ(他の油圧アクチュエータ)
410 チャージライン
500 第1油圧ポンプ
600 第2油圧ポンプ
710 供給ライン
720 方向切換弁
730 ドレンライン
740 可変絞り弁
750 パイロットライン
755 第2パイロットライン
760 電磁比例減圧弁
765 第2電磁比例減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって作動的に駆動される油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータへ供給する供給ラインと、前記供給ラインを選択的に連通又は遮断させる方向切換弁と、前記方向切換弁及び前記油圧アクチュエータの間において前記供給ラインに連通されたドレンラインと、前記ドレンラインに介挿されたパイロット圧作動型の可変絞り弁と、前記可変絞り弁に対してパイロット圧を与える為のパイロットラインと、前記パイロットラインへの圧油供給を調整する電磁比例減圧弁とを備え、前記電磁比例減圧弁の二次側から出力され、前記パイロットラインを流れる圧油の油圧を調整することによって前記可変絞り弁の絞り度を変更して前記油圧アクチュエータの作動速度を制御するように構成された油圧アクチュエータ作動速度制御回路であって、
前記油圧アクチュエータとは異なる他の油圧アクチュエータ及び該他の油圧アクチュエータを流体的に駆動する他の油圧ポンプを有する油圧機構に作動油を供給すべく所定圧に調圧された他の供給ラインを前記電磁比例減圧弁の一次側に流体接続させたことを特徴とする油圧アクチュエータ作動速度制御回路。
【請求項2】
左右一対の駆動輪をそれぞれ駆動し得るように走行系伝動経路に介挿された一対のHSTと、前記一対のHSTにおけるポンプ軸によってそれぞれ作動的に駆動される第1及び第2油圧ポンプと、前記第2油圧ポンプからの圧油を所定圧に調圧された状態で前記一対のHSTへ供給するチャージラインと、作業機と、前記作業機を昇降させる油圧アクチュエータと、前記第1油圧ポンプからの圧油を前記油圧アクチュエータへ供給する供給ラインとを備えた作業車輌に適用される油圧アクチュエータ作動速度制御回路であって、
前記供給ラインを選択的に連通又は遮断させる方向切換弁と、前記方向切換弁及び前記油圧アクチュエータの間において前記供給ラインに連通されたドレンラインと、前記ドレンラインに介挿されたパイロット圧作動型の可変絞り弁と、前記可変絞り弁に対してパイロット圧を与える為のパイロットラインと、前記パイロットラインへの圧油供給を調整する電磁比例減圧弁とを備え、
前記チャージラインを前記電磁比例減圧弁の一次側に流体接続させたことを特徴とする油圧アクチュエータ作動速度制御回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−116021(P2008−116021A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302293(P2006−302293)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】