説明

油圧制御装置及び油圧制御方法

【課題】油圧アクチュエータがクローズドセンター型の方向切換弁を介してポンプに接続される建設機械用の油圧回路において、仮想的にネガコンシステムを再現すること。
【解決手段】油圧アクチュエータ7,8,9がクローズドセンター型の方向切換弁20,22,24を介して油圧ポンプ11に接続されると共に操作部材40,42,43の操作量に応じて方向切換弁20,22,24の位置が可変される建設機械において、油圧ポンプ11を制御する油圧制御装置であって、操作部材40,42,43の操作量と油圧ポンプ11の吐出圧とに基づいて、ネガコンシステムを仮想した場合の仮想ネガコン圧を算出する仮想ネガコン圧算出手段と、仮想ネガコン圧に基づいて、油圧ポンプ11に対する制御指令値を算出する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータがクローズドセンター型の方向切換弁を介して油圧ポンプに接続されると共に操作部材の操作量に応じて方向切換弁の位置が可変される建設機械において、油圧ポンプを制御する油圧制御装置及び油圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コントロールバルブの操作量に応じてブリード流量を変化させることによって、油圧アクチュエータ速度を制御する一般的なブリード制御に代えて、クローズドセンター型のコントロールバルブを用いる一方、コントロールバルブに仮想のブリード開口を設定し、この仮想ブリード開口の面積(仮想ブリード開口面積)を操作量に応じて変化させる可変容量ポンプの制御方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この制御方法では、仮想ブリード開口面積と、これに基づく仮想ブリード量とを用いて必要なポンプ吐出圧力が計算され、当該ポンプ吐出圧力が実現されるようにポンプ制御が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−47306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術では、仮想のブリード開口を設定するだけであり、ネガコン絞りを仮想していないので、仮想的にネガコンシステムを再現するものではない。一般的に知られるように、ネガコンシステムは、負荷が高い場合に油圧アクチュエータの速度が低速となり、負荷が低い場合に油圧アクチュエータの速度が高速となる点で人間の慣性に相性が良いものである。
【0005】
そこで、本発明は、油圧アクチュエータがクローズドセンター型の方向切換弁を介してポンプに接続される建設機械用の油圧回路において、仮想的にネガコンシステムを再現することができる油圧制御装置及び油圧制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、油圧アクチュエータがクローズドセンター型の方向切換弁を介して油圧ポンプに接続されると共に操作部材の操作量に応じて前記方向切換弁の位置が可変される建設機械において、前記油圧ポンプを制御する油圧制御装置であって、
前記操作部材の操作量と前記油圧ポンプの吐出圧とに基づいて、ネガコンシステムを仮想した場合の仮想ネガコン圧を算出する仮想ネガコン圧算出手段と、
前記仮想ネガコン圧に基づいて、前記油圧ポンプに対する制御指令値を算出する手段とを備えることを特徴とする油圧制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、油圧アクチュエータがクローズドセンター型の方向切換弁を介してポンプに接続される建設機械用の油圧回路において、仮想的にネガコンシステムを再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る建設機械1の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による油圧制御システム60を示す回路図である。
【図3】オープンセンター型(ネガコン)システムで用いられる方向切換弁の概略図である。
【図4】本実施例のコントローラ10により実現される仮想ブリードシステムにおいて再現されるネガコンシステムのブロック図である。
【図5】仮想方向切換弁及び方向切換弁の特性の一例を示す図である。
【図6】本実施例のコントローラ10により実現される仮想ブリードシステムの一例を示す制御ブロック図である。
【図7】仮想ブリードシステムで再現されるネガコンシステムの一例の概要を示す図である。
【図8】仮想ネガコン圧−流量テーブル及び開口面積−流量テーブルの各一例を示す図である。
【図9】本実施例のコントローラ10により実現される仮想ブリードシステムの他の一例を示す制御ブロック図である。
【図10】本実施例のコントローラ10により実現されるポンプ吐出圧補正係数Kμの算出方法の一例を示すフローチャートである。
【図11】図10に関連したポンプ吐出圧補正係数Kμの算出ブロック図である。
【図12】本実施例のコントローラ10により実現されるポンプ吐出指令補正係数Kの算出方法の一例を示すフローチャートである。
【図13】図12に関連したポンプ吐出指令補正係数Kの算出ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明に係る建設機械1の構成例を示す図である。建設機械1は、油圧ショベル、フォークリフト、クレーン等のような、人が操作を行う油圧システムを搭載した機械である。図1において、建設機械1は、クローラ式の下部走行体2の上に、旋回機構を介して、上部旋回体3をX軸周りに旋回自在に搭載している。また、上部旋回体3は、前方中央部に、ブーム4、アーム5及びバケット6、並びに、これらをそれぞれ駆動する油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9から構成される掘削アタッチメントを備える。掘削アタッチメントは、ブレーカや破砕機等のような他のアタッチメントであってもよい。
【0011】
図2は、本発明の一実施例による油圧制御システム60を示す回路図である。油圧制御システム60は、一回転当たりの吐出量(cc/rev)が可変である可変容量型の油圧ポンプ11を含む。油圧ポンプ11は、エンジン17に接続され、エンジン17により回転駆動される。油圧ポンプ11は、供給ライン13及びクローズドセンター型の方向切換弁(コントロールバルブ)20,22,24を介してブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9(油圧アクチュエータの一例)にパラレルに接続される。また、タンクTに繋がる戻りライン14には、方向切換弁20,22,24を介してブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9がパラレルに接続される。油圧ポンプ11は、レギュレータ装置12により制御される。尚、方向切換弁20,22,24は、油圧により位置制御されるタイプであってもよいし、図示のようなコントローラ10からの電気信号(駆動信号)により位置制御されるタイプであってもよい。
【0012】
尚、油圧制御システム60は、走行用油圧モータや旋回用油圧モータのような他の油圧アクチュエータを含んでもよい。また、油圧制御システム60に含まれる油圧アクチュエータの数は、図2の示す例では、3つであるが、1つを含む任意の数であってよい。
【0013】
油圧ポンプ11からの供給ライン13には、油圧ポンプ11の吐出圧(ポンプ吐出圧)を検出する油圧センサ30が設けられる。油圧センサ30は、ポンプ吐出圧に応じた電気信号をコントローラ10に入力してよい。
【0014】
供給ライン13には、アンロード弁18が設けられる。アンロード弁18は、タンクTに繋がる戻りライン14が接続される。このようにして、供給ライン13は、アンロード弁18を介してタンクTに連通する。アンロード弁18は、その位置に応じて、供給ライン13がタンクTに連通する状態と、供給ライン13がタンクTから遮断された状態とを切り替える。アンロード弁18は、各方向切換弁20,22,24における各油圧アクチュエータ(ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9)への流路(アクチュエータライン)の開閉状態に応じて、制御されてもよい。例えば、アンロード弁18は、各方向切換弁20,22,24における各アクチュエータラインのいずれか1つでも開かれている場合には、閉成され、油圧ポンプ11から吐出された油がタンクTへと排出されないようにする。他方、アンロード弁18は、各方向切換弁20,22,24における各アクチュエータラインの全てが閉じられている場合には、開成され、油圧ポンプ11から吐出された油がタンクTへと排出される状態を形成する。尚、アンロード弁18は、油圧により位置制御されるタイプであってもよいし、図示のような電気信号により位置制御されるタイプであってもよい。
【0015】
また、供給ライン13には、リリーフ弁19が設けられる。また、戻りライン14は、各対応するリリーフ弁21a,21b,23a,23b,25a,25bを介して、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の各ヘッド側及びロッド側にそれぞれ接続される。尚、図示の例では、リリーフ弁21a,21b,23a,23b,25a,25bは、補給逆止弁を含む。リリーフ弁19,21a,21b,23a,23b,25a,25bは、油圧により位置制御されるタイプであってもよいし、図示のような電気信号により位置制御されるタイプであってもよい。
【0016】
コントローラ10は、マイクロコンピュータを中心に構成されており、例えば、CPU、制御プログラム等を格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する。
【0017】
コントローラ10には、各種操作部材40,42,43が電気的に接続される。操作部材40,42は、ユーザが建設機械1を操作すべく各方向切換弁20,22,24の位置を可変操作するための部材である。操作部材40,42,43は、例えばレバーやペダルの形態であってよい。本例では、操作部材40,42,43は、それぞれ、アーム5を操作するためのアーム操作レバー、ブーム4を操作するためのブーム操作レバー、バケット6を操作するためのバケット操作レバーである。ユーザによる操作部材40,42,43の操作量(ストローク)は、電気信号としてコントローラ10に入力される。ユーザによる操作部材40,42,43の操作量の検知方法は、パイロット圧を圧力センサで検知する方法であってもよいし、レバー角度を検知する方法であってもよい。
【0018】
コントローラ10は、操作部材40,42,43の操作量等に基づいて、方向切換弁20,22,24、アンロード弁18を制御する。尚、方向切換弁20,22,24が油圧により位置制御されるタイプである場合は、方向切換弁20,22,24は、操作部材40,42,43の操作に応じて変化されるパイロット圧によりダイレクトに制御される。例えば、アーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3のそれぞれが、それぞれ対応する所定の閾値LSth1,LSth2,LSth3以下である場合に、アンロード弁18を開き、アーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3のいずれかが、それぞれ対応する所定の閾値LSth1,LSth2,LSth3より大きい場合に、アンロード弁18を閉じることとしてよい。所定の閾値LSth1,LSth2,LSth3は、各方向切換弁20,22,24のアクチュエータラインの開口が開き始める際の操作量に対応してよい。
【0019】
また、コントローラ10は、操作部材40,42,43の操作量等に基づいて、レギュレータ装置12を介して油圧ポンプ11を制御する。尚、この油圧ポンプ11の制御方法については、後に詳説する。
【0020】
次に、本実施例のコントローラ10による特徴的な制御方法について説明する。
【0021】
本実施例のコントローラ10は、図2に示したクローズドセンター型の方向切換弁20,22,24を備える油圧回路において、オープンセンター型(ネガコンシステム)の制御特性をポンプ制御によって再現する。以下、このようなシステムを、「仮想ブリードシステム」という。
【0022】
図3は、オープンセンター型(ネガコン)システムで用いられる方向切換弁の概略図である。ネガコンシステムでは、方向切換弁が中立状態にあるとき、図3(A)に示すように、油圧ポンプの吐出流量は、センターバイパスラインを通って全てタンクへとアンロードされる。例えば操作部材の操作によって、方向切換弁が右側へ動いたとき、図3(B)に示すように、油圧アクチュエータへの流路が開かれると同時にセンターバイパスラインが絞られる。フル操作状態になると、図3(C)に示すように、センターバイパスラインは完全に閉じられ、油圧ポンプの吐出流量は、全て油圧アクチュエータへ供給される。これらの関係は、次のように表すことができる。
【0023】
【数1】

ここで、ρは密度であり、Q,pは、油圧ポンプの吐出流量及び吐出圧であり、c、Aは、方向切換弁におけるセンターバイパスラインに関する流量係数及び開口面積(ブリード開口面積)であり、c、Aは、方向切換弁におけるアクチュエータラインに関する流量係数及び開口面積であり、pactは、アクチュエータライン圧である。ネガコンシステムでは、センターバイパスラインは、方向切換弁の後段にネガコン絞りが設けられ、ネガコン絞りを介してタンクへと連通される(図7参照)。
【0024】
数1の式から分かるように、負荷によりアクチュエータライン圧が上昇すると差圧(p−pact)が減少し、油圧アクチュエータへ流入する流量が減少する。油圧ポンプからの吐出流量Qが同じであれば、この減少分がセンターバイパスラインを通って流れることになる。これは、油圧アクチュエータの負荷により、同じ操作量であっても油圧アクチュエータの速度が異なることを意味している。
【0025】
図4は、本実施例のコントローラ10により実現される仮想ブリードシステムにおいて再現されるネガコンシステムのブロック図である。尚、図4において、Qはアンロード弁通過流量、Kは体積弾性率、Vはポンプ−コントロールバルブ容量、Vはコントロールバルブ−シリンダ容量、Aはシリンダ受圧面積、Mはシリンダ容量、Fは外乱を表す。
【0026】
本実施例では、仮想ブリードシステムにおいてネガコンシステムを再現するために、図4のブロック70に示すように、オープンセンター型の方向切換弁(図3参照)を仮想し、この仮想方向切換弁におけるブリード部分を演算して仮想ブリード量Qを算出し、ネガコンシステムの制御則に基づく油圧ポンプの吐出流量の目標値Qdtから仮想ブリード量Qを減算した量を指令値として、油圧ポンプ11を制御する。
【0027】
仮想ブリード量Qは、実際のネガコンシステムではセンターバイパスラインにおいてネガコン絞りにより背圧が生じていることを考慮して、以下のように算出されてもよい。即ち、仮想ブリードシステムにおいては、実際のネガコンシステムをモデル化すべく、仮想方向切換弁からのセンターバイパスラインに、タンクに連通するネガコン絞りが設けられることを仮想して、この仮想ネガコン絞りによる背圧が考慮されてもよい。
【0028】
【数2】

ここで、pは、仮想ネガコン絞りによる背圧(以下、「仮想ネガコン圧」という)である。
【0029】
一方、仮想ネガコン絞りでは、以下の式が成り立つ。
【0030】
【数3】

ここで、pは、タンク圧であり、ここではゼロとする。仮想ネガコン圧pに対しては、所定の上限値pnmaxが設定される。上限値pnmaxは、仮想したネガコンシステムにおけるリリーフ弁の設定圧に対応してよい。
【0031】
数2と数3の式から仮想ネガコン圧pは、以下のように表すことができる。
【0032】
【数4】

数4の式から、仮想方向切換弁におけるセンターバイパスラインに関する流量係数c及び開口面積A、及び、仮想ネガコン絞りにおける流量係数c及び開口面積Aに基づいて、油圧ポンプ11の吐出圧pから仮想ネガコン圧pを算出することができることが分かる。ここで、流量係数c及び開口面積A、及び、流量係数c及び開口面積Aについては、仮想の値として初期的に設定することができる(従って、これらは既知)。流量係数c及び開口面積Aについては、想定される仮想ネガコン絞りの特性に基づく。開口面積Aの特性の一例については、後述する。
【0033】
このようにして、実際のブリード開口が無くても(即ち、センターバイパスラインやネガコン絞りが存在しなくても)、仮想したネガコンシステムの特性(流量係数c及び開口面積A、及び、流量係数c及び開口面積A)に基づいて、油圧ポンプ11の吐出圧p(例えば油圧センサ30の検出値)から仮想ネガコン圧pを算出することができ、仮想ネガコン圧pに基づいて、油圧ポンプ11の吐出流量を制御することができる。即ち、仮想ネガコン圧pを、ネガコンシステムで得られるネガコン圧と同様に扱って油圧ポンプ11の吐出流量を制御することで、ネガコンシステムを再現することができる。
【0034】
図5は、仮想方向切換弁及び方向切換弁の特性の一例を示す図である。具体的には、特性C1は、仮想方向切換弁における操作量(ストローク)と開口面積(仮想ブリード開口面積)Aとの関係を表す曲線である。特性C2は、方向切換弁におけるメータイン側の開口特性を示し、特性C3は、方向切換弁におけるメータイン側の開口特性を示す。特性C1を表すテーブルは、ブリード開口データテーブルとして、方向切換弁20,22,24のそれぞれに対して用意される。
【0035】
図6は、本実施例のコントローラ10により実現される仮想ブリードシステムの一例を示す制御ブロック図である。尚、以下の説明では、ネガコンシステムとポジコンシステムとが選択的に実現される構成について説明するが、ネガコンシステムのみが仮想ブリードシステムにおいて再現されてもよい。尚、ネガコンシステムは、図5のブロック90に対応し、ポジコンシステムは、図5のブロック92に対応する。ポジコンシステムの制御ブロックは、通常のポジコンシステムと同様であるので、ここでは、特にネガコンシステムの制御ブロックについて説明する。尚、図6に示すブロック90は、図4に示したブロック70の部分に対応する。
【0036】
この仮想ブリードシステムでは、一例として、図7に示すようなネガコンシステムが再現される。このネガコンシステムでは、クローズドセンター型の方向切換弁20,22,24のそれぞれに対応するオープンセンター型の方向切換弁V1,V2,V3(仮想ブリードシステムでの仮想方向切換弁に対応)が直列に接続され、センターバイパスライン100の後段にはネガコン絞り104(仮想ブリードシステムでの仮想ネガコン絞りに対応)が配置されている。尚、図7では、各方向切換弁V1,V2,V3に対して設けられる各油圧アクチュエータ(ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9)については図示が省略されている。
【0037】
図6に示すように、ネガコンシステム及びポジコンシステムのブロック90,92には、操作部材40,42,43の操作量、即ちアーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3を表す信号が入力される。また、ネガコンシステム及びポジコンシステムのブロック90,92には、油圧ポンプ11の吐出圧p(以下、単に「ポンプ吐出圧p」という)を表す信号が入力される。尚、ポンプ吐出圧pは、油圧センサ30の検出値であってよい。
【0038】
アーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3は、それぞれ、対応するブリード開口データテーブル(図5参照)90−1にて、開口面積Abに変換され、ブロック90−2にて、対応する流量係数cが乗算され、ブロック90−5に入力される。ブロック90−5は、直列に接続された絞りの等価開口面積Aを以下の式で表すことができることに基づいて、各仮想方向切換弁の全体としてのパラメータcを算出する。
【0039】
【数5】

ここで、Aは、各仮想方向切換弁(方向切換弁20,22,24のそれぞれに対応する各仮想方向切換弁)の仮想ブリード開口面積である。この考えに流量係数を加えると、以下の通りとなる。
【0040】
【数6】

ここで、cは、各仮想方向切換弁(方向切換弁20,22,24のそれぞれに対応する各仮想方向切換弁)の流量係数である。尚、iは、方向切換弁の数(ひいては油圧アクチュエータの数)に対応し、例えば方向切換弁20しか存在しない構成では、シグマを取らない計算式となる(即ち、単に方向切換弁20に係る流量係数c及び開口面積Aの積が算出されることになる)。
【0041】
このようにして得られたcは、ブロック90−6に入力される。ブロック90−6には、その他、A及びポンプ吐出圧pが入力される。Aは、仮想ネガコン絞りにおける開口面積Aに仮想ネガコン絞りにおける流量係数cを乗じたものであり、ブロック90−3及び90−4から入力される。ブロック90−6では、上述の数4の式に基づいて、仮想ネガコン圧pが算出される。このようにして算出された仮想ネガコン圧pは、ブロック90−7及び90−8に入力される。
【0042】
ブロック90−7では、ポンプ吐出圧pと仮想ネガコン圧pから、上述の数2の式に基づいて、油圧ポンプ11の仮想ブリード量Qが算出される。ブロック90−8では、所与の仮想ネガコン圧−流量テーブル(図8(A)参照)に基づいて、仮想ネガコン圧pから油圧ポンプ11の吐出流量の目標値Qdtが算出される。油圧ポンプ11の吐出流量の目標値Qdtは、ネガコンシステムの制御則に基づいて決定される。即ち、仮想ネガコン圧−流量テーブルは、仮想ネガコン圧pと油圧ポンプ11の吐出流量の目標値Qdtとの関係を表視し、この関係は、仮想されるネガコンシステムの制御則に基づいて決定されてもよい。図8(A)に示す仮想ネガコン圧−流量テーブルは、仮想ネガコン圧pが高いときは、吐出流量の目標値Qdtが小さくなり、仮想ネガコン圧pが低下すると、吐出流量の目標値Qdtが大きくなる関係を有する。ここで、仮想ブリードシステムでは、実際のネガコンシステムと異なり、仮想ブリード量Qが余分であるので、油圧ポンプ11の吐出流量の目標値Qdtから、仮想ブリード量Qが減算され、油圧ポンプ11の吐出流量の指令値(仮想ネガコン制御目標値)が算出される。尚、図示していないが、エンジン回転数と設定トルクから馬力制御時の最大流量(馬力制御目標値)が算出され、仮想ネガコン制御目標値と馬力制御目標値のいずれか小さい方が最終目標値として選択される。
【0043】
尚、モードセレクタ94は、ポジコンシステムを実現するポジコンモードとネガコンシステムを実現するネガコンモードとを切り替える。モードセレクタ94は、ユーザの操作に応じてこれらのモードを切り替えてもよいし、所定の条件に従って自動的にモードを切り替えてもよい。尚、ポジコンモードでは、ブロック92−1で、アーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3に基づいて、アクチュエータラインの開口面積が算出され、ブロック92−2で、開口面積とアクチュエータ要求流量との関係を表す開口面積−流量テーブル(図8(B)参照)に基づいて、各油圧アクチュエータのアクチュエータ要求流量の指令値(ポジコン制御目標値)が算出される。尚、各油圧アクチュエータのアクチュエータ要求流量は、アーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3に基づいて、操作量−流量テーブルによりダイレクトに算出されてもよい。また、仮想ネガコン制御目標値の場合と同様、エンジン回転数と設定トルクから馬力制御時の最大流量(馬力制御目標値)が算出され、ポジコン制御目標値と馬力制御目標値のいずれか小さい方が最終目標値として選択される。
【0044】
このようにモードセレクタ94を設定することで、精密な操作を可能にできるポジコンシステムと、人間の感性と相性が良いとされるネガコンシステムとを適宜切り替えて使用することができる。
【0045】
以上説明した本実施例の油圧制御装置によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0046】
上述の如く、クローズドセンター型の方向切換弁20,22,24を使用するので、ネガコンシステムで必要となるブリードが不要となり、省エネ性を高めることができる。また、仮想方向切換弁の特性は、電子データに基づくものであり、容易に変更することができ、結果として、仮想方向切換弁の特性(特に仮想ブリード開口面積の特性、図5の特性C1参照)の調整を容易に実現することができる。これについては、仮想ネガコン絞りの特性についても同様である。また、クローズドセンター型の方向切換弁20,22,24を使用するので、方向切換弁のブリードラインが不要となり、方向切換弁のコストダウンを図ることができる。
【0047】
ところで、上述の仮想ブリードシステムにおいては、ポンプ吐出圧を検出する油圧センサ30は、その制御原理から、好ましくは、方向切換弁20,22,24の近傍(直前)に設けられる。しかしながら、機械的な取り合いやコスト等の観点から、かかる油圧センサ30の配置を実現できない場合もある。例えば、油圧センサ30は、油圧ポンプ11に設けられる場合がある。かかる場合、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧は、油圧センサ30から方向切換弁20,22,24までの配管抵抗による圧損分が上乗せされた圧力となる。そこで、好ましくは、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧に、油圧ポンプ11の吐出流量の指令値を参考としてゲインやバイアスを予め加えることにより、方向切換弁20,22,24に加わる真の圧力を予測する。これにより、油圧センサ30が方向切換弁20,22,24の近傍に配置されない場合でも、方向切換弁20,22,24に加わる真の圧力を予測することで、実際のネガコン圧に精度良く適合する仮想ネガコン圧を算出することができ、それに伴い、仮想ブリードシステムにおいてネガコンシステムの再現性を高めることができる。
【0048】
更に好ましくは、油の経年劣化により油の粘度が変化することや、機器の経年劣化によって油圧ポンプ11の漏れ損失が増加すること(これにより、指令値を実現できない場合があること)が考慮され、これらが補償される。
【0049】
具体的には、油の粘度の変化については、アンロード弁18が方向切換弁20,22,24の近傍(直前)に設けられることにより解決されてもよい。例えば、図2において、アンロード弁18は、供給ライン13の分岐点Pの直前に設けられてよい(この際、構造上可能な場合は、アンロード弁18は、最も油圧ポンプ11に近い方向切換弁20のブロックに取り付けられてもよい。)。この場合、アンロード弁18が作動中(開いている状態)で絞りが無い状態では、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧は、実質的に配管圧損そのものとなる。従って、予め設定しておいた圧損の値と、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧とを比較することで、動粘度の差又は比を求めることができる。尚、この算出には、例えば下記のハーゲン・ポアズイユの式が利用されてもよい。そして、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧に加えるゲインやバイアスは、この動粘度の差又は比に応じて設定されてもよい。
【0050】
【数7】

ここで、rは管内径であり、lは配管長であり、μは動粘度であり、Δpは差圧である。
【0051】
また、油圧ポンプ11の経年劣化については、アンロード弁18を比例弁により構成されることにより解決されてもよい。この場合、油圧ポンプ11に一定の吐出流量の指令値を与え、一定の流量を吐出させた上でアンロード弁18を絞るとポンプ吐出圧が増加する。アンロード弁18の絞り開度は既知とすることができるので、計測したポンプ吐出圧から下記の絞りの式(数8)によりアンロード弁18を通過する流量、即ち油圧ポンプ11の実流量を算出することができる。そして、油圧ポンプ11の吐出流量の指令値に対するゲインやバイアスは、このようにして算出された実流量と吐出流量の指令値との差異に基づいて設定されてもよい。
【0052】
【数8】

ここで、c、Aは、アンロード弁18における流量係数及び絞り開度である。
【0053】
以下、このような油の粘度の変化や機器の経年劣化を補償するための具体的な例について説明する。
【0054】
図9は、本実施例のコントローラ10により実現される仮想ブリードシステムの他の一例を示す制御ブロック図である。図9では、図6と異なり、ネガコンシステムの部分のみが示される。ポジコンシステムについて選択的に実現する構成を採用する場合は、図6と同様に、モードセレクタ94と共にポジコンシステムのブロック92が追加されればよい。
【0055】
図9に示すネガコンシステムのブロック90'は、図6に示した例によるブロック90に対して、ポンプ吐出圧pに吐出圧調整ゲインKμ(以下、ポンプ吐出圧補正係数Kμともいう)を乗じるブロック90−9と、油圧ポンプ11の吐出流量に吐出流量調整ゲインK(以下、ポンプ吐出指令補正係数Kともいう)を乗じて最終の指令値を生成するブロック90−10が追加された点が主に異なる。以下、主にこの相違点について詳説する。
【0056】
図10は、本実施例のコントローラ10により実現されるポンプ吐出圧補正係数Kμの算出方法の一例を示すフローチャートである。図11は、図10に関連したポンプ吐出圧補正係数Kμの算出ブロック図である。
【0057】
ステップ1000では、建設機械1の稼動状態が検出される。
【0058】
ステップ1002では、エンジン17がアイドリング中か否かが判定される。エンジン17がアイドリング中である場合は、ステップ1004に進み、エンジン17がアイドリング中で無い場合は、アイドリングが生じるまで待機する。尚、エンジン17がアイドリング中のとき、アーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3は全てゼロであり、アンロード弁18は開状態(最大開度)で維持される。
【0059】
ステップ1004では、所定の油圧ポンプ11の吐出流量の指令が出力される。ここで、指令される所定の油圧ポンプ11の吐出流量は、ステップ1006にてポンプ吐出圧pが適切に検出できる範囲内であれば、任意の量であってよい。また、指令される所定の油圧ポンプ11の吐出流量は、一定流量であってもよいし、時間と共に(例えば一定の変化率で)増減してもよい。
【0060】
ステップ1006では、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧pが取得される。
【0061】
ステップ1008では、上記ステップ1004で指令された所定の油圧ポンプ11の吐出流量と、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧pとに基づいて、油圧ポンプ11から吐出される油の粘度(実粘度)μが算出(推定)される。粘度μは、数7で示したハーゲン・ポアズイユの式を利用して算出されてもよい(図11のブロック90−9a参照)。尚、この際、数7の式において、差圧Δpとして、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧pが代入される。これは、アンロード弁18は開状態であるとき、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧pは、上述の如く、実質的に配管圧損そのものとなるためである。
【0062】
ステップ1010では、油温センサ(図示せず)により検出される油温が取得される。
【0063】
ステップ1012では、油温センサにより検出された油温と、油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧pとに基づいて、所与の油温・圧力−粘性特性テーブルから粘度μが算出される(図11のブロック90−9b参照)。油温・圧力−粘性特性テーブルは、油の劣化等の無いノミナルの状態で計測された値を利用して予め生成されてもよい。従って、ここで算出される粘度μは、所期のノミナル値(基準粘度)に対応する。
【0064】
ステップ1014では、上記ステップ1008で算出された粘度μと上記ステップ1012で算出された粘度μとの差の絶対値が所定閾値以上であるか否かが判定される。所定閾値は、これらの差が、後述のポンプ吐出圧補正係数Kμによる補正によって補償される必要があるほど大きいか否かを判断するための閾値であり、必要とされる制御の精度に応じて決定されてもよい。粘度μと粘度μとの差の絶対値が所定閾値以上である場合は、ステップ1016に進み、粘度μと粘度μとの差の絶対値が所定閾値未満の場合は、現段階では補正の必要性はないと判断して終了する。
【0065】
ステップ1016では、ポンプ吐出圧補正係数Kμが算出され、従前値が変更(更新)される。ポンプ吐出圧補正係数Kμは、粘度μと粘度μとの比(Kμ=μ/μ)として算出されてもよい(図11のブロック90−9c参照)。このようにして、ステップ1002とステップ1014の条件が満たされると、図11に示すブロック90−9a、9b、9cによりポンプ吐出圧補正係数Kμが算出される。このようにして算出されたポンプ吐出圧補正係数Kμは、図9に示したブロック90−9にてポンプ吐出圧pに乗じられ、ポンプ吐出圧pが補正される。
【0066】
このように図9乃至図11に示す構成によれば、油の経年劣化により油の粘度が変化した場合でも、かかる粘度変化を補償した仮想ブリードシステムを実現することができる。即ち、粘度変化を補償することで、方向切換弁20,22,24に加わる真の圧力を精度良く算出することができ、仮想ブリードシステムにおいてネガコンシステムの再現性を高めることができる。
【0067】
図12は、本実施例のコントローラ10により実現されるポンプ吐出指令補正係数Kの算出方法の一例を示すフローチャートである。図13は、図12に関連したポンプ吐出指令補正係数Kの算出ブロック図である。
【0068】
ステップ1200では、建設機械1の稼動状態が検出される。
【0069】
ステップ1202では、エンジン17がアイドリング中か否かが判定される。エンジン17がアイドリング中である場合は、ステップ1004に進み、エンジン17がアイドリング中で無い場合は、アイドリングが生じるまで待機する。尚、エンジン17がアイドリング中のとき、アーム操作量LS1,ブーム操作量LS2及びバケット操作量LS3は全てゼロであり、アンロード弁18は開状態(最大開度)で維持される。
【0070】
ステップ1204では、所定の油圧ポンプ11の吐出流量の指令が出力される。ここで、指令される所定の油圧ポンプ11の吐出流量Qは、ステップ1208にてポンプ吐出圧pが適切に検出できる範囲内であれば、任意の量であってよい。また、指令される所定の油圧ポンプ11の吐出流量Qは、一定流量であってもよいし、時間と共に(例えば一定の変化率で)増減してもよい。
【0071】
ステップ1206では、アンロード弁18の開口が任意の変化率で変更される。例えば、アンロード弁18の開口は、所定時間に亘って徐々に最大開度まで増加する態様で変更されてもよい(例えば図13のアンロード弁開口指令A参照)。或いは、アンロード弁18は、ゼロと最大値の間の任意の所定値に変更・維持されてもよい。
【0072】
ステップ1208では、アンロード弁18の開口が変更されている間に油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧pが取得される。或いは、任意の所定値で維持されている間のポンプ吐出圧pが取得されてもよい。
【0073】
ステップ1210では、アンロード弁18の開口の指令値(アンロード弁開口指令A)と、アンロード弁18の開口が変更されている間に油圧センサ30により検出されるポンプ吐出圧pと基づいて、アンロード弁18の開口が変更されている間における油圧ポンプ11の実吐出流量Qが算出される。油圧ポンプ11の実吐出流量Qは、上記の絞りの式(数8)を利用して算出されてもよい(図13のブロック90−10a参照)。図13のブロック90−10aでは、上記の絞りの式(数8)における差圧としては、ポンプ吐出圧pとタンク圧pとの差圧が使用される。タンク圧pはゼロと仮定されてもよい。
【0074】
ステップ1212では、指令される油圧ポンプ11の吐出流量Qと上記ステップ1210で算出された実吐出流量Qとの差の絶対値が所定閾値以上であるか否かが判定される。所定閾値は、これらの差が、後述のポンプ吐出指令補正係数Kによる補正によって補償される必要があるほど大きいか否かを判断するための閾値であり、必要とされる制御の精度に応じて決定されてもよい。指令される油圧ポンプ11の吐出流量Qと実吐出流量Qとの差の絶対値が所定閾値以上である場合は、ステップ1214に進み、指令される油圧ポンプ11の吐出流量Qと実吐出流量Qとの差の絶対値が所定閾値未満の場合は、現段階では補正の必要性はないと判断して終了する。
【0075】
ステップ1214では、ポンプ吐出指令補正係数Kが算出され、従前値が変更(更新)される。ポンプ吐出指令補正係数Kは、指令される油圧ポンプ11の吐出流量Qと実吐出流量Qとの比(K=Q/Q)として算出されてもよい(図13のブロック90−10b参照)。このようにして、ステップ1202とステップ1212の条件が満たされると、図13に示すブロック90−10a、10bによりポンプ吐出指令補正係数Kが算出される。このようにして算出されたポンプ吐出指令補正係数Kは、図9に示したブロック90−10にて油圧ポンプ11の吐出流量の指令値に乗じられ、吐出流量の指令値が補正される。
【0076】
このように図9、図12、図13に示す構成によれば、経年劣化により油圧ポンプ11の吐出流量の指令値と実吐出流量との間に乖離が生じた場合でも、かかる乖離を補償した仮想ブリードシステムを実現することができる。即ち、粘度変化を補償することで、方向切換弁20,22,24に加わる真の圧力を精度良く算出することができ、仮想ブリードシステムにおいてネガコンシステムの再現性を高めることができる。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 建設機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 コントローラ
11 油圧ポンプ
12 レギュレータ装置
13 供給ライン
14 戻りライン
17 エンジン
18 アンロード弁
19 リリーフ弁
20 方向切換弁
21a、21b リリーフ弁
22 方向切換弁
23a、23b リリーフ弁
24 方向切換弁
25a、25b リリーフ弁
30 油圧センサ
40、42、43 操作部材
60 油圧制御システム
100 センターバイパスライン
104 ネガコン絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータがクローズドセンター型の方向切換弁を介して油圧ポンプに接続されると共に操作部材の操作量に応じて前記方向切換弁の位置が可変される建設機械において、前記油圧ポンプを制御する油圧制御装置であって、
前記操作部材の操作量と前記油圧ポンプの吐出圧とに基づいて、ネガコンシステムを仮想した場合の仮想ネガコン圧を算出する仮想ネガコン圧算出手段と、
前記仮想ネガコン圧に基づいて、前記油圧ポンプに対する制御指令値を算出する手段とを備えることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
前記仮想ネガコン圧算出手段は、前記操作部材の操作量に基づいて、所与の仮想ブリード開口面積特性から仮想ブリード開口面積を算出し、算出した仮想ブリード開口面積と、前記油圧ポンプの吐出圧とに基づいて、前記仮想ネガコン圧を算出する、請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項3】
前記建設機械は、前記方向切換弁と前記油圧ポンプの間に、タンクに繋がるアンロード弁が設けられ、
アイドリング中に所定の吐出流量の指令値を前記油圧ポンプに与え、その際に得られる前記油圧ポンプの吐出圧から推定される実粘度と、その際に得られる油温から推定される基準粘度とに基づいて、前記油圧ポンプに対する制御指令値を補正する補正手段を備える、請求項1又は2に記載の油圧制御装置。
【請求項4】
前記建設機械は、前記方向切換弁と前記油圧ポンプの間に、タンクに繋がる比例弁タイプのアンロード弁が設けられ、
アイドリング中に所定の吐出流量の指令値を前記油圧ポンプに与えると共に、前記アンロード弁の開度をゼロと最大値の間の所定の開度に維持し、その際に得られる前記油圧ポンプの吐出圧から推定される実吐出流量と、前記所定の吐出流量の指令値とに基づいて、前記油圧ポンプに対する制御指令値を補正する補正手段を備える、請求項1又は2に記載の油圧制御装置。
【請求項5】
油圧アクチュエータがクローズドセンター型の方向切換弁を介して油圧ポンプに接続されると共に操作部材の操作量に応じて前記方向切換弁の位置が可変される建設機械において、前記油圧ポンプを制御する油圧制御方法であって、
前記操作部材の操作量と前記油圧ポンプの吐出圧とに基づいて、ネガコンシステムを仮想した場合の仮想ネガコン圧を算出する仮想ネガコン圧算出ステップと、
前記仮想ネガコン圧に基づいて、前記油圧ポンプに対する制御指令値を算出するステップとを備えることを特徴とする油圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−68256(P2013−68256A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206441(P2011−206441)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】