説明

油圧制御装置

【課題】 使用状況や使用環境が変化しても制御特性が変化しない油圧制御装置を提供する。
【解決手段】 流量制御機構FはサブスプールSSが中立位置にあるとき、第1制御部aを開状態に維持し、第2制御部bを閉状態に維持する。パイロット通路6をパイロット圧力源に連通させると、第1圧力室22にはパイロット流れに対してオリフィス27の上流側の圧力が、第2圧力室23にはオリフィス27の下流側の圧力が作用し、この圧力差に応じて移動するサブスプールSSの位置によって、第2制御部bが第2連通路20を連通または遮断する。パイロット通路6をタンクに連通させると、第1圧力室22にはパイロット流れに対してオリフィス27よりも下流側の圧力が、第2圧力室23にはオリフィス27よりも上流側の圧力が作用し、この圧力差に応じて移動するサブスプールSSの位置によって、第1制御部aが第1連通路19の連通開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パイロット圧でスプールを切り換えることによってアクチュエータを作動する油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧制御装置として特許文献1に示すものが知られている。この装置によれは、スプールの端部を臨ませるパイロット室に、ダンピングオリフィスと、このパイロット室への流通のみを許容するチェックバルブとをそれぞれ設けている。
そして、上記パイロット室にパイロット圧を導く際には、パイロット流体がチェックバルブを押し開いてパイロット室に導かれるとともに、当該パイロット流体がスプール端部に作用して、スプールを速やかに切り換えることができる。
【0003】
一方、上記のようにスプールが所定量切り換わった状態から、スプールを中立位置に復帰させる場合には、パイロット室をタンクに連通させて、パイロット室内の流体を排出する。
このとき、チェックバルブは閉じた状態を保つので、パイロット室からの戻り流体は、ダンピングオリフィスを介してのみタンクに排出される。したがって、スプールを中立位置に復帰させる場合には、ダンピングオリフィスによる減衰機能が発揮されて、スプールの復帰速度を減速することができる。
上記のように、スプールが中立位置に復帰する際に、その移動速度を減速するので、スプールが逆側に切り換わってしまったり、あるいは一気にスプールが切り換わってしまったりすることがなく、確実にスプールを中立位置に復帰させて安全性を高めることができる。
【特許文献1】特開2001−193850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような油圧制御装置においては、使用状況や使用環境によって、バルブボディの温度が大きく変化することがある。このように、バルブボディの温度が大きく変化すると、バルブボディに一体に形成され、あるいはバルブボディに隣接して形成されるパイロット室内も、当然バルブボディの温度変化の影響を受ける。
そして、パイロット室内の温度が変化すると、当然パイロット室内の流体温度も変化する。パイロット室内の流体温度が変化すると、流体の粘性が変化するため、戻り流体がダンピングオリフィスを通過する速度が変化してしまい、スプールが中立位置に復帰する速度が変化してしまう。
【0005】
つまり、パイロット室内が高温になると、戻り流体の温度が上昇して粘性が低くなり、戻り流体がダンピングオリフィスを速やかに通過することができる。これに対して、パイロット室内が低温の場合には、戻り流体の温度が低下して粘性が高くなり、戻り流体がダンピングオリフィスを速やかに通過できなくなってしまう。
このように、パイロット室内の流体の温度が変化すると、スプールが中立位置に復帰する復帰速度に差が生じてしまい、制御特性が変化するおそれがあるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、使用状況や使用環境が変化しても制御特性が変化しない油圧制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ポンプ通路、タンク通路およびアクチュエータ通路を形成したバルブボディと、このバルブボディに摺動自在に組みこんだメインスプールと、このメインスプールの一端を臨ませるパイロット室と、このパイロット室にパイロット圧力源またはタンクを選択的に連通させるパイロット通路とを備え、上記パイロット通路をパイロット圧力源に連通させたとき、上記パイロット室にパイロット圧が導かれるとともに、当該パイロット圧によって上記メインスプールが摺動して、上記アクチュエータ通路をポンプ通路あるいはタンク通路に連通する油圧制御装置を前提とする。
【0008】
上記の構成を前提として、第1の発明は、上記パイロット室とパイロット通路との連通過程には流量制御機構を設け、この流量制御機構は、上記パイロット室に接続するとともに互いにパラレルにした第1連通路および第2連通路と、両端にスプリングの弾性力を作用させるとともに、一端を第1圧力室に臨ませ、他端を第2圧力室に臨ませたサブスプールと、このサブスプールに形成するとともに上記パイロット通路と第1連通路とを連通するオリフィスと、上記サブスプールの位置に応じて上記パイロット通路とオリフィスとの連通開度を制御する第1制御部と、サブスプールの位置に応じて上記パイロット通路と第2連通路との連通開度を制御する第2制御部とを備え、上記サブスプールが中立位置にあるとき、第1制御部は開状態を維持するとともに、第2制御部は閉状態を維持してなり、上記パイロット通路をパイロット圧力源に連通させたとき、パイロット圧が上記オリフィスおよび第1連通路を介してパイロット室に導かれる一方、上記第1圧力室には、パイロット圧力源からパイロット室への流れに対して上記オリフィスよりも上流側の圧力が作用するとともに、上記第2圧力室には、上記流れに対して上記オリフィスよりも下流側の圧力が作用し、これら両圧力室の圧力差に応じて上記サブスプールが移動して、上記第2制御部がパイロット通路と第2連通路とを連通したり遮断したりし、かつ、上記パイロット通路をタンクに連通させたとき、パイロット室内のパイロット流体が上記第1連通路およびオリフィスを介してパイロット通路に導かれる一方、上記第1圧力室には、パイロット室からタンクへの流れに対して上記オリフィスよりも下流側の圧力が作用するとともに、上記第2圧力室には、上記流れに対して上記オリフィスよりも上流側の圧力が作用し、これら両圧力室の圧力差に応じて上記サブスプールが移動して、上記第1制御部がパイロット通路と第1連通路との連通開度を制御する点に特徴を有する。
【0009】
第2の発明は、上記第1制御部は、サブスプールが中立位置にあるとき最大開口を維持してなり、上記第1圧力室の圧力が第2圧力室の圧力よりも高くなったとき、上記サブスプールは、第1制御部を最大開口に維持しながら、第2制御部の連通開度を徐々に大きくする一方、上記第1圧力室の圧力が第2圧力室の圧力よりも低くなったとき、上記サブスプールは、第2制御部を閉状態に維持しながら、第1制御部の連通開度を小さくする点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
第1,2の発明によれば、パイロット室からパイロット流体を排出する際に、オリフィス前後の差圧に応じてサブスプールが移動するとともに、このサブスプールの移動に伴って、パイロット通路とパイロット室との連通開度を制御する。
したがって、例えば、流体の粘性に変化が生じても、この粘性変化に応じて変化する圧力に基づいて連通開度が制御されるので、パイロット室からの戻り流量を一定に保つことができ、メインスプールの所定方向への切り換え速度をほぼ一定にすることができる。
つまり、使用状況や使用環境によって、流体温度が変化したとしても、当該流体温度の変化によって生じる制御特性の変化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1,2を用いて、この発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態の油圧制御装置は、例えばパワーショベルのアーム用あるいはブーム用のシリンダに用いられる。
図1に示すように、バルブボディ1にはメインスプール2を摺動自在に組み込むとともに、上記バルブボディ1の両端面にキャップ3,4を固定している。このキャップ3,4にはパイロット室5,6を設けるとともに、このパイロット室5,6に、上記メインスプール2の両端部が臨むようにしている。そして、上記キャップ3,4にはセンタリングスプリングSをそれぞれ設けるとともに、このセンタリングスプリングSを上記メインスプール2の両端部に作用させて、メインスプール2を中立位置に保つようにしている。
【0012】
また、上記バルブボディ1には、ポンプ通路7、タンク通路8、および一対のアクチュエータ通路9,10を形成している。
そして、上記アクチュエータ通路9,10には、ブーム用シリンダ11からなるアクチュエータを接続するが、アクチュエータ通路9はブーム用シリンダ11のピストン側室11aに接続し、アクチュエータ通路10はブーム用シリンダ11のロッド側室11bに接続している。
なお、図中符号12はポンプ通路7とポンプとを連通するタンデム通路、符号13は上記タンデム通路12とは別の経路でポンプ通路7とポンプとを連通するパラレル通路、符号14,15はチェック弁であり、タンデム通路12またはパラレル通路13からポンプ通路7への流通のみを許容するものである。
【0013】
そして、上記メインスプール2を図中左側方向に摺動させると、メインスプール2に形成した切り欠きあるいはノッチを介して、ポンプ通路7とアクチュエータ通路9とが連通するとともに、タンク通路8とアクチュエータ通路10とが連通するようにしている。逆に上記メインスプール2を図中右側方向に摺動させると、メインスプール2に形成した切り欠きあるいはノッチを介して、ポンプ通路7とアクチュエータ通路10とが連通するとともに、タンク通路8とアクチュエータ通路9とが連通する。
【0014】
したがって、メインスプール2を図中左側方向に摺動させれば、ポンプからタンデム通路12またはパラレル通路13を介して導かれる作動油が、チェック弁14,15を開弁してポンプ通路7に導かれるとともに、ポンプ通路7からアクチュエータ通路9を介してブーム用シリンダ11のピストン側室11aに導かれる。このとき、ロッド側室11bは、アクチュエータ通路10を介してタンク通路8に戻されるので、ブーム用シリンダ11を伸長させることができる。
一方、メインスプール2を図中右側方向に摺動させれば、タンデム通路12またはパラレル通路13を介して導かれる作動油が、チェック弁14,15を開弁してポンプ通路7に導かれるとともに、ポンプ通路7からアクチュエータ通路10を介してブーム用シリンダ11のロッド側室11bに導かれる。このとき、ピストン側室11aは、アクチュエータ通路9を介してタンク通路8に戻されるので、ブーム用シリンダ11を収縮させることができる。
【0015】
そして、上記メインスプール2を切り換えるのが、パイロット室5,6に導かれるパイロット圧であるが、このパイロット圧は次のようにして導かれる。
すなわち、上記キャップ3,4には、パイロット室5,6に連通するパイロットポート16,17を形成するとともに、これらパイロットポート16,17を、図示しないパイロット圧力源に接続する。そして、オペレータが図示しない操作レバーを操作したとき、パイロット室5,6のいずれか一方を上記パイロット圧力源に連通させるとともに、いずれか他方をタンクに連通させる。
したがって、パイロット室5,6のいずれか一方には、パイロット圧力源からパイロット圧が導かれるとともに、パイロット室5,6のいずれか他方からは、パイロット室内のパイロット流体がタンクに戻されることとなる。
【0016】
ただし、パイロット圧力源とパイロット室6との連通過程には、流量制御機構Fを設けており、この流量制御機構Fを介してパイロット室6にパイロット圧が導かれたり、あるいはパイロット室6からタンクにパイロット流体が戻されたりするが、その具体的な構成は次の通りである。
すなわち、図2に示すように、キャップ4には組み込み孔18を形成している。この組み込み孔18には、第1連通路19および第2連通路20を所定の間隔を保って開口させるとともに、これら両連通路19,20をパイロット室6に対して互いにパラレルに接続している。したがって、組み込み孔18とパイロット室6とが、両連通路19,20を介して連通するようにしている。また、上記組み込み孔18であって、第1連通路19の開口部と第2連通路20の開口部との間には、他の部分よりも大径になる環状の凹部18aを形成している。
なお、上記凹部18aにはパイロット通路21を開口させているが、このパイロット通路21は、パイロットポート17を介してパイロット圧力源とタンクとに選択的に連通する。
【0017】
そして、上記の構成からなる組み込み孔18には、次の構成からなるサブスプールSSを組み込んでいる。
すなわち、このサブスプールSSは、組み込み孔18に組み込んだとき、その軸方向に摺動可能な寸法関係を維持している。具体的には、組み込み孔18にサブスプールSSを組み込んだとき、サブスプールSSの両端に第1圧力室22および第2圧力室23が形成されるようにしている。言い換えれば、サブスプールSSによって第1圧力室22および第2圧力室23を区画形成するとともに、当該サブスプールSSの一端を第1圧力室22に臨ませ、サブスプールSSの他端を第2圧力室23に臨ませている。
【0018】
そして、これら両圧力室22,23には、それぞれスプリングs,sを設けるとともに、このスプリングs,sの弾性力を上記サブスプールSSの端部に作用させて、当該サブスプールSSが図示の中立位置を保つようにしている。
また、上記サブスプールSSには、その中立位置において、上記凹部18aに対向する環状の溝部24を形成するとともに、この溝部24から僅かに第1連通路19側であって、上記凹部18aに対向する範囲内に第1通孔25を開口させている。そして、サブスプールSSの内部には流路26を形成するとともに、この流路26の一方の側を上記第1通孔25に連通させ、他方の側を上記第1圧力室22に開口させている。したがって、サブスプールSSが中立位置にあるとき、第1圧力室22とパイロット通路21とが、第1通孔25および流路26を介して連通することとなる。
【0019】
さらに、サブスプールSSには、上記第1連通路19に流路26を連通させるオリフィス27を形成するとともに、上記第2連通路20と第2圧力室23とを連通する第2通孔28を形成している。
したがって、第2圧力室23は、第2連通路20および第2通孔28を介してパイロット室6に連通するとともに、第1圧力室22は、第1連通路19、オリフィス27および流路26を介してパイロット室6に連通することとなる。
このように、サブスプールSSが中立位置にあるとき、両圧力室22,23にはパイロット室6の圧力すなわち同圧が作用することとなる。
そして、上記サブスプールSS、両圧力室22,23、および両連通路19,20によって、上記流量制御機構Fを構成している。
【0020】
また、上記第1通孔25によって、この発明の第1制御部aを構成するとともに、上記溝部24と、この溝部24に連続するランド部29とによって、この発明の第2制御部bを構成している。
上記第1制御部a(第1通孔25)は、パイロット通路21とオリフィス27との連通開度を制御し、第2制御部bは、パイロット通路21と第2連通路20との連通開度を制御する部分である。そして、サブスプールSSが中立位置にあるとき、第1制御部aは最大開口を維持する一方、第2制御部bは閉状態を維持している。
したがって、サブスプールSSの中立位置においては、パイロット室6は、第1連通路19→オリフィス27→流路26→第1通孔25を介してパイロット通路21に連通し、第2連通路20とパイロット通路21とは遮断状態に保たれることとなる。
【0021】
次に上記第1実施形態における油圧制御装置の作用について説明する。
ブーム用シリンダ11を伸長させる場合には、パイロット室6をパイロット圧力源に、パイロット室5をタンクに連通させるように、図示しない操作レバーを操作する。パイロット圧力源から供給されるパイロット圧は、パイロット通路21を介して組み込み孔18の凹部18aに導かれる。
上記凹部18aに導かれたパイロット圧は、最大開口を維持する第1制御部a(第1通孔25)→流路26→オリフィス27→第1連通路19を介してパイロット室6に導かれる。ただし、このとき、第2制御部bは閉状態に維持されているため、サブスプールSSのランド部29によって、第2連通路20と凹部18aとは遮断されている。
【0022】
そして、パイロット圧力源から凹部18aに導かれるパイロット圧は、パイロット室6に導かれると同時に、第1圧力室22にも導かれる。言い換えれば、第1圧力室22には、パイロット圧力源からパイロット室6への流れに対してオリフィス27の上流側の圧力が作用している。
一方、第2圧力室23には、第2連通路20を介してパイロット室6の圧力が作用している。つまり、第2圧力室23には、パイロット圧力源からパイロット室6への流れに対してオリフィス27の下流側の圧力が作用している。
したがって、パイロット圧力源からパイロット室6にパイロット圧を導くと、両圧力室22,23において差圧が生じる。つまり、パイロット圧が第1圧力室22に導かれることによって、第1圧力室22の圧力が第2圧力室23の圧力よりも高くなる。
このように、第1圧力室22の圧力が第2圧力室23の圧力よりも高くなると、この差圧に応じて、サブスプールSSが図中左側方向に摺動する。
【0023】
サブスプールSSが図中左側方向に摺動すると、当該サブスプールSSの第2制御部bによって、第2連通路20と凹部18aとが連通する。第2制御部bは、サブスプールSSの移動に伴って徐々に連通開度を大きくする一方で、第1制御部aは常時最大開口を維持しているので、パイロット圧力源から導かれるパイロット圧は、第1連通路19および第2連通路20を介してパイロット室6に導かれることとなる。
上記したように、サブスプールSSが、パイロット圧力源から導かれるパイロット圧に応じて第2連通路20を連通させるので、パイロット圧を速やかにパイロット室6に導くことができる。そして、パイロット室6にパイロット圧が導かれるとともに、パイロット室5内のパイロット流体はタンクに戻されるので、メインスプール2は速やかに図中左側方向に切り換わる。
メインスプール2が図中左側方向に切り換わると、ポンプ通路7とアクチュエータ通路9とが連通するとともに、アクチュエータ通路10とタンク通路8とが連通するので、ブーム用シリンダ11を伸長させることができる。
【0024】
一方、ブーム用シリンダ11が上記のようにして伸張した状態から、もとの収縮状態に戻す場合には、パイロット室5をパイロット圧力源に、パイロット室6をタンクに連通させるように、図示しない操作レバーを操作する。すると、パイロット圧力源から供給されるパイロット圧が、パイロット室5においてメインスプール2の端部に作用して、メインスプール2が図中右側方向に切り換わる。
メインスプール2が図中右側方向に切り換わると、パイロット室6内にメインスプール2が進入するので、パイロット室6内の流体が、オリフィス27→流路26→第1制御部a(第1通孔25)→凹部18a→パイロット通路21を介してタンクに戻される。
【0025】
このとき、パイロット室6内の圧力は、第2連通路20→第2通孔28を介して第2圧力室23に導かれるとともに、第1連通路19→オリフィス27→流路26を介して第1圧力室22に導かれる。つまり、パイロット室6からタンクへの流れに対してオリフィス27よりも上流側の圧力が第2圧力室23に作用するとともに、オリフィス27よりも下流側の圧力が第1圧力室22に作用する。
そして、パイロット流体が第1制御部aを介してタンクに導かれると、このパイロット流体の流れによって、第1圧力室22の圧力が第2圧力室23の圧力よりも低くなる。そして、両圧力室22,23に差圧が生じるとともに、この差圧に応じて、サブスプールSSが図中右側方向に摺動する。
【0026】
サブスプールSSが図中右側方向に摺動すると、第1制御部a(第1通孔25と凹部18a)との連通開度が小さくなる。そして、第1制御部aの連通開度が小さくなると、第1圧力室22と第2圧力室23との差圧が徐々に小さくなり、サブスプールSSが停止する。
このように、パイロット室6からパイロット通路21を介してタンクに導かれるパイロット流体の流量が多くなると、これに応じて第1圧力室22の圧力が低くなり、この第1圧力室22の圧力低下に伴って、第1制御部aの開度が絞られる。第1制御部aの開度が絞られると、パイロット流体の戻り流量が減少するとともに、このパイロット流体の流れの減少に応じて、第1圧力室22の圧力が上昇する。
したがって、パイロット室6内の圧力が変化して、パイロット流体の戻り流れが変化すると、この戻り流れに応じてパイロット室6とパイロット通路21との連通開度が変化するので、パイロット室6内の圧力変化に関わらず、パイロット流体の戻り流量をほぼ一定に制御することができる。
【0027】
このように、流量制御機構Fが、パイロット室6から常に一定量のパイロット流体を排出するので、例えば、メインスプール2が急激に切り換わろうとした場合にも、パイロット室6からは一定の流量しか排出されず、メインスプール2の移動速度を減速することができる。
したがって、ブーム用シリンダ11を収縮させる場合には、メインスプール2を常に一定の速度で切り換えることができ、ブーム用シリンダ11に作用する負荷を、一定の速度で降下させることができる。
そして、上記の構成によれば、パイロット室6内の流体温度が変化した場合でも、パイロット室6から排出される流体の流量を安定的に制御することができる。
【0028】
つまり、パイロット室6内の温度が高く流体の粘性が低い場合には、パイロット流体が第1制御部aから速やかに戻されるので、第1圧力室22の圧力が低下して、第1制御部aの連通開度が小さくなる。したがって、パイロット流体の粘性が低い場合には、パイロット流体がパイロット室6から勢いよく戻されるのを防ぐことができる。
一方、パイロット室6内の温度が低く流体の粘性が高い場合には、第1制御部aからパイロット流体が排出されにくくなるので、第1圧力室22の圧力が低下しにくくなり、第1制御部aの連通開度が大きく保たれる。したがって、パイロット流体の粘性が高い場合には、パイロット流体がパイロット室6から排出されやすくなる。
このように、温度変化が生じてパイロット流体の粘性が変化しても、その粘性に応じて流量制御機構Fが流量制御するので、温度変化が与える戻り流量の変化を小さくすることができる。したがって、温度変化によって生じる制御特性の変化を低減することができる。
【0029】
なお、上記実施形態においては、流量制御機構Fをパイロット室6にのみ連通させている。つまり、一対のアクチュエータ通路9,10のうち、負荷保持時の圧力が大きい方のアクチュエータ通路9を、タンク通路8に連通させるときに、戻り側となるパイロット室6に連通させている。
このように一方のパイロット室6にのみ流量制御機構Fを連通させたのは、ブーム用シリンダ11を伸張させるときには、その応答性を確保し、ブーム用シリンダ11を収縮させるときのみ、負荷が急降下しないようにしたためである。つまり、ブーム用シリンダ11の急降下という、もっとも急作動を防ぐ必要がある場合のみ、メインスプール2の移動速度を減速したのである。
【0030】
ただし、流量制御機構Fは、いずれのパイロット室に連通して設けても構わない。例えば、上記実施形態において、キャップ3側に流量制御機構Fを設けてもよい。
また、上記実施形態においては、キャップに流量制御機構Fを設けたが、流量制御機構Fはバルブボディ1に設けてもよいし、しかも、アクチュエータもブーム用シリンダに限らない。さらには、アクチュエータは、単動型のアクチュエータでもよく、当然のこととして、パワーショベル以外の油圧機器全般に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の油圧制御装置を示す図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0032】
1 バルブボディ
2 メインスプール
6 パイロット室
7 ポンプ通路
8 タンク通路
9,10 アクチュエータ通路
19 第1連通路
20 第2連通路
21 パイロット通路
22 第1圧力室
23 第2圧力室
27 オリフィス
F 流量制御機構
SS サブスプール
a 第1制御部
b 第2制御部
s スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ通路、タンク通路およびアクチュエータ通路を形成したバルブボディと、このバルブボディに摺動自在に組みこんだメインスプールと、このメインスプールの一端を臨ませるパイロット室と、このパイロット室にパイロット圧力源またはタンクを選択的に連通させるパイロット通路とを備え、上記パイロット通路をパイロット圧力源に連通させたとき、上記パイロット室にパイロット圧が導かれるとともに、当該パイロット圧によって上記メインスプールが摺動して、上記アクチュエータ通路をポンプ通路あるいはタンク通路に連通する油圧制御装置において、上記パイロット室とパイロット通路との連通過程には流量制御機構を設け、この流量制御機構は、上記パイロット室に接続するとともに互いにパラレルにした第1連通路および第2連通路と、両端にスプリングの弾性力を作用させるとともに、一端を第1圧力室に臨ませ、他端を第2圧力室に臨ませたサブスプールと、このサブスプールに形成するとともに上記パイロット通路と第1連通路とを連通するオリフィスと、上記サブスプールの位置に応じて上記パイロット通路とオリフィスとの連通開度を制御する第1制御部と、サブスプールの位置に応じて上記パイロット通路と第2連通路との連通開度を制御する第2制御部とを備え、上記サブスプールが中立位置にあるとき、第1制御部は開状態を維持するとともに、第2制御部は閉状態を維持してなり、上記パイロット通路をパイロット圧力源に連通させたとき、パイロット圧が上記オリフィスおよび第1連通路を介してパイロット室に導かれる一方、上記第1圧力室には、パイロット圧力源からパイロット室への流れに対して上記オリフィスよりも上流側の圧力が作用するとともに、上記第2圧力室には、上記流れに対して上記オリフィスよりも下流側の圧力が作用し、これら両圧力室の圧力差に応じて上記サブスプールが移動して、上記第2制御部がパイロット通路と第2連通路とを連通したり遮断したりし、かつ、上記パイロット通路をタンクに連通させたとき、パイロット室内のパイロット流体が上記第1連通路およびオリフィスを介してパイロット通路に導かれる一方、上記第1圧力室には、パイロット室からタンクへの流れに対して上記オリフィスよりも下流側の圧力が作用するとともに、上記第2圧力室には、上記流れに対して上記オリフィスよりも上流側の圧力が作用し、これら両圧力室の圧力差に応じて上記サブスプールが移動して、上記第1制御部がパイロット通路と第1連通路との連通開度を制御する構成にした油圧制御装置。
【請求項2】
上記第1制御部は、サブスプールが中立位置にあるとき最大開口を維持してなり、上記第1圧力室の圧力が第2圧力室の圧力よりも高くなったとき、上記サブスプールは、第1制御部を最大開口に維持しながら、第2制御部の連通開度を徐々に大きくする一方、上記第1圧力室の圧力が第2圧力室の圧力よりも低くなったとき、上記サブスプールは、第2制御部を閉状態に維持しながら、第1制御部の連通開度を小さくする構成にした上記請求項1記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−180332(P2008−180332A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15743(P2007−15743)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】