説明

油圧制御装置

【課題】リリーフ弁のオイルのリリーフ量が増加することに起因してオイル貯留部内の油面レベルの異常を検出してしまうことを防止する。
【解決手段】リリーフ弁によるオイルのリリーフ量を制御することによりオイルポンプの吐出側の油路内の油圧を第1油圧又はこの第1油圧より低圧の第2油圧に設定する油圧設定手段と、オイル貯留部内の油面レベルが所定値を超えた場合にこれを検出する油面レベル検出手段と、を備える。前記検出禁止手段は、前記油圧設定手段が前記オイルポンプの吐出側の油路内の油圧を第2油圧に設定している場合に(ST2:NO)、前記油面レベル検出手段による前記検出を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オイルポンプによって循環されるエンジン内のオイルの油圧を制御する装置が提案されている。このような装置では、電磁弁を用いて油路に設けられたリリーフ弁の開閉等を行うことによって当該油路内の油圧を制御する。例えば、リリーフ弁を低油圧でリリーフさせたり、高油圧(通常油圧)でリリーフさせたりすることで油圧が低油圧と高油圧の何れかに設定される。このようなシステムは、2ステージ油圧システムと称されることがある。このような2ステージ油圧システムでは、油圧を低油圧に設定することでオイルポンプの負荷を軽減したり、冷間時におけるピストンオイルジェットからのオイル噴射を停止させたりすることができる。これにより、オイルポンプを駆動するエンジンの負荷の低下や早期暖機完了による燃費向上の効果を得ることができる。この種の油圧制御装置(2ステージ油圧システム)は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−97390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような油圧制御装置では、低油圧時に、リリーフ弁のリリーフ量が増加することから、オイル貯留部(オイルパン)内の油面が上昇し、エンジン内の実際の総油量が増加していないにもかかわらず、油面レベルの異常が検出される場合がある。油面レベルの異常が検出されると、それを知らせる警告灯が点灯されてしまうなどの不都合が生じる。
【0005】
本発明はかかる問題に鑑みて創案されたものであり、リリーフ弁のオイルのリリーフ量が増加することに起因してオイル貯留部内の油面レベルの異常を検出してしまうことを防止する油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための手段として、本発明の油圧制御装置は、以下のように構成されている。
【0007】
すなわち、本発明の油圧制御装置は、リリーフ弁によるオイルのリリーフ量を制御することによりオイルポンプの吐出側の油路内の油圧を設定する油圧設定手段と、オイル貯留部内の油面レベルが所定値を超えた場合にこれを検出する油面レベル検出手段と、を備えるものを前提としており、前記油圧設定手段が前記オイルポンプの吐出側の油路内の油圧を所定値以下に設定している場合に、前記油面レベル検出手段による前記検出を禁止する検出禁止手段を備えることを特徴としている。
【0008】
また、前記油圧制御装置は、前記油圧設定手段が、リリーフ弁によるオイルのリリーフ量を制御することによりオイルポンプの吐出側の油路内の油圧を多段階に設定するものであり、前記検出禁止手段が、前記油圧設定手段が前記オイルポンプの吐出側の油路内の油圧を最高段階を除く所定の段階以下に設定している場合に、前記油面レベル検出手段による前記検出を禁止するものであってもよい。
【0009】
また、前記油圧制御装置は、前記油圧設定手段が、リリーフ弁によるオイルのリリーフ量を制御することによりオイルポンプの吐出側の油路内の油圧を第1油圧又はこの第1油圧より低圧の第2油圧に設定するものであり、前記検出禁止手段が、前記油圧制御手段が前記油圧を第2油圧に設定している場合に前記油面レベル検出手段による前記検出を禁止するものであってもよい。
【0010】
上記構成を備える油圧制御装置によれば、リリーフ弁のオイルのリリーフ量が増加することに起因して、エンジン内のオイルの総油量が増えていないにもかかわらず、オイル貯留部内の油面レベルの異常を検出してしまうことが抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油圧制御装置によれば、リリーフ弁のオイルのリリーフ量が増加することに起因して、オイル貯留部内の油面レベルの異常を検出してしまうことが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ディーゼルエンジンの概略構成を示す図である。
【図2】ECUの入出力を示すブロック図である。
【図3】油圧制御回路の概略構成を示した図である。
【図4】油圧制御回路の概略構成を示した図である。
【図5】油圧制御の手順の具体例を示すフローチャートである。
【図6】エンジン始動後のECU等の動作例を示すフローチャートである。
【図7】DPF再生制御時のECU等の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
−エンジン−
本発明の実施形態に係る油圧制御装置によって油圧が制御されるディーゼルエンジンの概略構成を図1を参照して説明する。
【0015】
本実施形態におけるディーゼルエンジン1(以下、「エンジン1」という。)は、例えばコモンレール式筒内直噴4気筒エンジンであって、エンジン1の各気筒の燃焼室1aには、同燃焼室1a内での燃焼に供される燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)2がそれぞれ配置されている。各気筒のインジェクタ2はコモンレール11に接続されている。コモンレール11にはサプライポンプ10が接続されている。
【0016】
サプライポンプ10は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後に燃料通路10aを介してコモンレール11に供給する。コモンレール11は、サプライポンプ10から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)しつつ、燃料を各インジェクタ2に分配する。インジェクタ2は、燃焼室1a内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタ2の開閉(燃料噴射量・噴射時期)はECU(Electronic Control Unit)100によって制御される。
【0017】
エンジン1には吸気通路3及び排気通路4が接続されている。吸気通路3には、上流側から下流側に向けて順に、エアクリーナ9、エアフローメータ33、後述するターボチャージャ6のコンプレッサインペラ63、インタークーラ8及びスロットルバルブ5が配置されている。スロットルバルブ5はスロットルモータ51によってスロットル開度が調整される。スロットルバルブ5のスロットル開度はスロットル開度センサ41によって検出される。なお、吸気通路3は、スロットルバルブ5の下流側に配置の吸気マニホールド3aにて各気筒に対応して分岐している。
【0018】
排気通路4は、エンジン1の各気筒の燃焼室1aと繋がる排気マニホールド4aによって各気筒毎に分岐した状態から1つに集合するように構成されている。
【0019】
排気通路4には、排気ガス中に含まれるHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を酸化して浄化するCCO(酸化触媒コンバータ)21とPM(粒子状物質)を捕集するDPF22とが順に配置され、燃焼室1aでの燃焼により生じた排気が送り込まれる。
【0020】
CCO21の上流側の排気通路4にA/Fセンサ36及び第1排気温センサ37が配置されており、この第1排気温センサ37の出力信号からCCO21に入る排気ガスの温度を検出することができる。また、CCO21とDPF22との間に第2排気温センサ38が配置されており、この第2排気温センサ38の出力信号からDPF22に入る排気ガスの温度を検出することができる。さらに、DPF22の上流側圧力と下流側圧力との差圧を検出する差圧センサ39が設けられている。
【0021】
これらA/Fセンサ36、第1排気温センサ37、第2排気温センサ38及び差圧センサ39の各出力信号はECU100に入力される。
【0022】
エンジン1にはターボチャージャ6が装備されている。ターボチャージャ6は、ロータシャフト61を介して連結されたタービンホイール62とコンプレッサインペラ63とを備えている。
【0023】
コンプレッサインペラ63は吸気通路3内部に臨んで配置され、タービンホイール62は排気通路4内部に臨んで配置されている。このようなターボチャージャ6は、タービンホイール62が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサインペラ63を回転させることにより吸入空気を過給する。ターボチャージャ6での過給によって昇温した吸入空気は、吸気通路3に配置したインタークーラ8によって強制冷却される。
【0024】
また、エンジン1にはEGR装置7が装備されている。EGR装置7は、排気通路4を流れる排気ガスの一部を吸気通路3に還流させて、各気筒の燃焼室1aへ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させる。EGR装置7は、吸気マニホールド3aと排気マニホールド4aとを接続するEGR通路71を備えている。このEGR通路71には、EGRガス流れの上流側から順に、EGR通路71を通過(還流)するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ73及びEGRバルブ72が設けられており、このEGRバルブ72の開度を調整することによって、排気通路4(排気マニホールド4a)から吸気通路3(吸気マニホールド3a)に導入されるEGRガス量(排気還流量)が調整される。
【0025】
−ECU−
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、バックアップRAM104などを備えている。
【0026】
ROM102には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0027】
これらCPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104はバス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
【0028】
入力インターフェース105には、エンジン1の出力軸であるクランクシャフトの回転数を検出するエンジン回転数センサ31、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ32、エアフローメータ33、吸気マニホールド3aに配置され、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ34、吸気マニホールド3aに配置され、吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサ35、A/Fセンサ36、第1排気温センサ37、第2排気温センサ38、差圧センサ39、コモンレール11内の高圧燃料の圧力を検出するレール圧センサ40、スロットル開度センサ41、アクセル開度センサ42、エンジン1の油圧を検出する油圧センサ43、オイルパン内の油面レベルを検出するオイルレベルセンサ44等が接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
【0029】
出力インターフェース106には、インジェクタ2、サプライポンプ10、スロットルバルブ5のスロットルモータ51、EGRバルブ72、エンジン1のオイルの油面レベルの異常を運転者に知らせるための警告灯81などが接続されている。
【0030】
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ5の開度制御及び燃料噴射量・噴射時期制御(インジェクタ2の開閉制御)などを含むエンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、後述するDPF再生制御を実行する。
【0031】
−DPF再生制御−
まず、ECU100は、DPF22に設けた差圧センサ39の出力信号に基づいて、DPF22に捕集されたPMの堆積量を推定し、そのPM推定量が再生開始判定値(許容限界値)以上となったときにDPF22の再生時期であると判定して、エンジン1への主燃料噴射の後にポスト噴射を行って、DPF22に堆積したPMを燃焼・除去してDPF22を再生する。
【0032】
例えば、エンジン運転のための燃料噴射(インジェクタ2から燃焼室1aへの燃料噴射)である主燃料噴射(メイン噴射)を行った後に、CCO昇温燃料噴射(第1ポスト噴射)を実行する。このCCO昇温燃料噴射によってインジェクタ2から噴射された燃料は、排気通路4に送出されてCCO21に達する。CCO21に燃料成分が到達すると、HCやCO等の成分が排気ガス中や触媒上で酸化反応され、その酸化反応に伴う発熱でCCO21(排気ガス)の温度が上昇し、この温度上昇によってDPF22の温度が上昇する。そして、このようなCCO昇温燃料噴射を行った後に、所定のタイミング(例えば排気行程)でDPF再生燃料噴射(第2ポスト噴射)を実行することにより、DPF22に堆積したPMが燃焼・除去される。
【0033】
こうしたDPF再生制御を実行することにより、DPF22のPM堆積量が減少し、そのPMの減少量が再生完了判定値よりも小さくなった時点でDPF再生制御を終了する。なお、PMの減少量は、例えば、エンジン回転数センサ31の出力信号から得られるエンジン回転数Ne、第2排気温センサ38の出力信号から得られる排気温度(DPF22に入る排気ガスの温度)などに基づいてマップ等を参照して推定することができる。
【0034】
−油圧制御回路−
つぎに、エンジン1内のオイル(潤滑油)の油圧を制御するための油圧制御回路200について説明する。図3および図4は、油圧制御回路200の概略構成を示した図である。油圧制御回路200は、オイルのリリーフ圧が可変であるリリーフ弁210と、このリリーフ弁のリリーフ圧を制御する制御弁220(以下、「OSV220」ともいう。)とを備えている。OSV220は、ECU100の指令に応じて、リリーフ弁210のリリーフ圧を高油圧(通常油圧;第1油圧)または低油圧(第2油圧)に制御する(以下、リリーフ圧を「高油圧」にする制御を「高圧制御」、「低油圧」にする制御を「低圧制御」ともいう。)。図3は、リリーフ弁210が低油圧でオイルをリリーフするときの状態を示し、図4は、リリーフ弁210が高油圧でオイルをリリーフするときの状態を示している。
【0035】
オイルパン(オイル貯留部)231内のオイルをエンジン1の各部へ供給するオイル通路(油路)232には、オイルポンプ233が配置されている。オイル通路232は、オイルポンプ233の吐出側で第1分岐路234へ分岐し、さらにその下流側で第2分岐路235へ分岐している。第1分岐路234には、リリーフ弁210が組み込まれている。リリーフ弁210には、オイルポンプ233により吐出されたオイルを当該オイルポンプ233の上流側にリリーフさせるためのリリーフ経路236が接続されている。
【0036】
リリーフ弁210は、ケース211、スリーブ212、弁体213、スプリング214、リテーナ215等を備えている。
【0037】
ケース211は、スリーブ212を摺動可能に収容している。また、ケース211は、一端部が第1分岐路234に連通し、中間部の側面がリリーフ経路236に連通し、他端部の側面がパイロット経路237に連通している。また、ケース211は、小径部211aおよび大径部211bの2つの内径部を有しており、小径部211aに上記リリーフ経路236が連通し、大径部側に上記パイロット経路237が連通している。
【0038】
スリーブ212は、ケース211の小径部211aおよび大径部211bにそれぞれに対応した外径を有し、当該スリーブ212の中間部には、その内外空間を連通するリリーフ孔212aが形成されている。また、スリーブ212の内周面には、弁体213が摺動可能に嵌め込まれている。スリーブ212は第1分岐路234に対向する環状の第1受圧面S1とこの第1受圧面S1に対して摺動方向反対側(パイロット経路237側)に形成された環状の第2受圧面S2とを有し、第1受圧面S1の面積より第2受圧面S2の面積の方が大きくなっている。
【0039】
弁体213は、その背部とリテーナとの間に介装された圧縮コイルスプリング214(以下「スプリング214」という。)によって、第1分岐路234側に向かって付勢されている。
【0040】
リテーナ215は、スプリング214の端部を支持する有底筒部215aを有し、その有底筒部215aの外周にスリーブ212の大径側の端部が摺動可能に外嵌されている。
【0041】
OSV220は、例えば2位置ソレノイドバルブからなり、励磁状態で図3に示すように、パイロット経路237と第2分岐路235とを連通する一方、非励磁状態で図4に示すように、パイロット経路237とオイルパン231への排油経路238とを連通する。なお、排油経路238には、オイルパン231からのオイルの逆流を防止するためにチェック弁239が設けられている。
【0042】
図3に示すように、ECU100の指令によりOSV220が励磁状態とされ、第2分岐路235からパイロット経路237にオイルが供給されると、ケース211の内周面とリテーナ215の有底筒部215aの外周面との間に形成される第2油圧室R2に油圧が供給される。これにより、スリーブ212の両受圧面S1,S2に油圧が作用し、受圧面積差により、スリーブ212およびリリーフ孔212aが、第1分岐路234側(スプリング214が伸びる側)に移動する。その結果、スプリング214の付勢力が比較的小さくなり、第1分岐路234内の油圧が比較的低くても弁体213が開いて第1分岐路234とリリーフ経路121を連通させるようになる。これにより、オイルポンプ233の吐出側のオイル通路232内の油圧は低油圧に設定される。なお、低油圧としては、エンジン1が軽負荷運転状態で最低限必要とする油圧に設定されている。
【0043】
図4に示すように、ECU100の指令によりOSV220が非励磁状態とされ、パイロット経路237が排油経路238に接続されると、第2油圧室R2内の油圧がなくなり、スリーブ212の両受圧面S1,S2のうち、第1油圧面S1のみに油圧が作用することになって、スリーブ212およびリリーフ孔212aが、リテーナ215側(スプリング214が縮む側)に移動する。その結果、スプリング214の付勢力が比較的大きくなり、弁体213を開いて第1分岐路234とリリーフ経路121を連通させるのに必要な第1分岐路234内の油圧は比較的高くなる。これにより、オイル通路232内の油圧は高油圧に設定される。
【0044】
なお、図3および図4において、符号240はストレーナであり、符号241はオイルフィルタであり、符号43は、オイル通路232内の油圧を検出するための油圧センサである。また、符号44aはアッパーオイルレベルセンサであり、符号44bはロワオイルレベルセンサである。アッパーオイルレベルセンサ44aは、オイルパン231内の油面レベルの許容上限位置を検出するために設けられており、ロワオイルレベルセンサ44bは、オイルパン231内の油面レベルの許容下限位置を検出するために設けられている。
【0045】
ECU100は、後述の低圧制御禁止状態にある場合を除き、エンジン1を始動して所定短時間(例えば10秒間)経過した後からエンジン1の暖機が完了するまでの間低圧制御を実行する。また、エンジン1の暖機完了後も所定の低圧制御実行条件が成立していれば、低圧制御を実行する。上記所定の低圧制御実行条件としては、例えば、エンジン1の負荷(例えばアクセル開度等)およびエンジン回転数が所定値以下であり、且つ、エンジン1の冷却水の水温が所定範囲内(例えば約15℃〜約95℃)であることとされる。
【0046】
一方、ECU100は、低圧制御禁止状態にある場合は、低圧制御実行条件が成立していても、高圧制御を実行する。ここで、低圧制御禁止状態としては、DPF再生制御の実行中、および、後述のフローチャートに基づき説明する状態(図5ステップST5参照)が挙げられる。
【0047】
ECU100は、アッパーオイルレベルセンサ44aおよびロワオイルレベルセンサ44bの出力に基づいてオイルパン231内の油面レベルが許容上限位置を超えていないか、また、許容下限位置を下回っていないかを監視している。油面レベルが許容上限位置を超えたり、また、許容下限位置を下回っている場合は、これを検出して油面レベルの異常を運転者に知らせる警告灯81を点灯する。
【0048】
しかし、低圧制御時には、リリーフ弁210のリリーフ量が増大するため、エンジン内の実際の総油量が増加していないにもかかわらず、オイルパン231内の油面レベルが上昇する現象が発生するため、ECU100は、低圧制御時には、アッパーオイルレベルセンサ44aの出力に基づく油面レベルの異常検出を行わない。
【0049】
−油圧制御手順の具体例−
つぎに、ECU100の油圧制御の手順の具体例を図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、このフローに基づき説明するECU100の処理動作は所定時間ごとに繰返し実行される。また、ECU100は低圧制御時には圧力制御フラグを「1」とし、高圧制御時には圧力制御フラグを「0」とするようになっている。また、DPF再生制御時はDPF再生制御フラグを「1」とし、DPF再生制御時でない場合はDPF再生制御フラグを「0」とするようになっている。
【0050】
ステップST1において、オイルパン231内の油面レベルが許容上限位置を超えたか否かの判定要求(アッパーオイルレベルセンサ42aの出力に基づく油面レベルの異常判定の要求)があるか否かを判定する。ここで、肯定判定をした場合はステップST2に移り、否定判定をした場合は本ルーチンを抜ける。
【0051】
ステップST2において、低圧制御中であるか否かを圧力制御フラグを参照して判定する。ここで、肯定判定をした場合は本ルーチンを抜け、否定判定をした場合はステップST3に移る。
【0052】
ステップST3において、オイルパン231内の油面レベルが許容上限位置を超えたか否かの判定をアッパーオイルレベルセンサ42aの出力に基づいて行う。
【0053】
ステップST4において、アッパーオイルレベルセンサ44aの出力に基づく上記判定の結果が正常(OK)か異常(NG)かの判定を行い、正常判定である場合は、本ルーチンを抜け、異常判定である場合は、ステップST5へ移る。
【0054】
ステップST5において、低圧制御を禁止してオイルパン231内の油面レベルの更なる上昇を防止するために、低圧制御禁止フラグを立てる。このフラグが立った場合、ECU100は、その後、低圧制御実行条件が成立しても低圧制御を実行しない。
【0055】
ステップST6において、オイルパン231内の油面レベルの異常を運転者に知らせるため、警告灯81を点灯する。
【0056】
ステップST7において、DPF再生制御中であるか否かをDPF再生制御フラグの状態に基づいて判定をする。ここで、肯定判定をした場合は、ステップST8に移り、否定判定をした場合は本ルーチンを抜ける。
【0057】
ステップST8において、DPF再生制御を中止する。これにより、DPF再生制御による油面レベルの上昇を止める。
【0058】
−エンジン始動後の動作例−
つぎに、エンジン始動後のECU100等の動作例について図6のフロ−チャートに基づき説明する。
【0059】
ECU100は、エンジン1を始動すると同時に、所定短時間(例えば10秒間)高圧制御を実行する(ステップST11)。エンジン1の始動直後は、エンジン1内の潤滑対象の隅々にわたってオイルが行き届いていないことが想定されるため、エンジン1の始動直後に所定短時間高圧制御を行うことで、オイルを潤滑対象の隅々にまで行き渡らせる。
【0060】
上記所定短時間経過後、高圧制御から低圧制御に切換える(ステップST12)。この低圧制御は、エンジンの暖機完了まで、例えば、冷却水の水温が所定温度(例えば80℃)以上になるまで継続する(ステップST13:NO)。
【0061】
エンジンの暖機完了後(ステップST13:YES)、低圧制御実行条件が成立しているか否かにかかわらず、強制的に高圧制御を実行した上で(ステップST14)、油面レベルの異常判定要求を行う(ステップST15)。すなわち、図5に基づき説明したルーチンが起動し、オイルパン231内の油面レベルが許容上限位置を超えたか否かの判定を実行する。図5のルーチンを抜けた後、強制高圧制御が解除されて(ステップST16)、エンジン1の運転状態に応じて低圧制御または高圧制御が実行されるようになる。
【0062】
−DPF再生制御時の動作例−
つぎに、DPF再生制御時のECU100等の動作例について図7のフロ−チャートに基づき簡単に説明する。
【0063】
DPF再生制御時は、ポスト噴射燃料によるオイル希釈(エンジンオイルへの燃料混入)が増大するため油面レベルを監視する必要がある。このため、ECU100は、DPF再生要求があると、強制的に高圧制御を実行した上で(ステップST21)、DPF再生制御を実行し、そのDPF再生制御中に定期的に油面レベルの異常判定要求を行う(ステップST22)。つまり、図5に基づき説明したルーチンを定期的に起動する。図5のルーチンが起動すると(ステップST1:YES)、DPF再生制御中は強制的に高圧制御にされていることから(ステップST2:NO)、油面レベルが許容上限位置を超えたか否かを判定する(ステップST3)。仮に、判定結果が異常判定(NG)であれば、その後、低圧制御を禁止し(ステップST5)、警告灯81を点灯して(ステップST6)、DPF再生制御を中止する(ステップST7:YES、ステップST8)。一方、判定結果が正常判定(OK)であれば、上記DPF再生制御を継続する。
【0064】
PMの減少量が既述した再生完了判定値よりも小さくなることで、DPF再生制御を終了すると(ステップST23)、強制高圧制御を解除して(ステップST24)、エンジン1の運転状態に応じて低圧制御または高圧制御を実行するようになる。
【0065】
DPF再生制御が終了した後、更に所定時間(例えば、60〜120分)経過した後に(ステップST25)、再び強制高圧制御を実行し(ステップST26)、油面レベルの異常判定要求を行って(つまり、図5に基づき説明したルーチンにエントリーして)、オイルパン231内の油面レベルが許容上限位置を超えたか否かの判定を実行する(ステップST27)。図5のルーチンにエントリーすると(ステップST1:YES)、強制高圧制御中であることから(ステップST2:NO)、油面レベルが許容上限位置を超えたか否かの判定がなされる(ステップST3)。仮に、判定結果が異常判定(NG)であれば、その後、低圧制御を禁止し(ステップST5)、警告灯81を点灯する(ステップST6、ステップST7:NO)。図5のルーチンを抜けた後は、強制高圧制御を解除して(ステップST28)、エンジン1の運転状態に応じて低圧制御または高圧制御を実行するようになる。
【0066】
なお、上記ST25の所定時間は、燃料により希釈化されたオイル中の燃料蒸発が落ち着くまでに要する時間とされる。この時間は一定の時間であってもよいが、冷却水の水温に応じてオイル中の燃料蒸発速度が変化するので、オイル中の燃料蒸発が落ち着くまでに要する時間と冷却水の水温との関係を予め実験等により求めてマップ化しておき、ECU100がこのマップと、冷却水の水温とから上記時間を設定することが望ましい。
【0067】
ECU100は、DPF再生制御中にイグニッションオフされた場合(ステップST29)、エンジン再始動後(ステップST30)、処理をステップST21に戻して、強制高圧制御、DPF再生制御等を直ちに実行する。
【0068】
一方、ECU100は、エンジン1の負荷が一定時間、所定レベル以下である場合などのように、十分な排気温度が得られない場合は、DPF再生制御中にDPF再生制御の中断要求を出し(ステップST31)、DPF再生制御を中断して(ステップST32)、強制高圧制御を実行し(ステップST26)、油面レベルの異常判定要求を行って(つまり、図5に基づき説明したルーチンにエントリーして)、オイルパン231内の油面レベルが許容上限位置を超えたか否かの判定を実行する(ステップST27)。図5のルーチンにエントリーすると(ステップST1:YES)、強制高圧制御中であることから(ステップST2:NO)、油面レベルが許容上限位置を超えたか否かの判定がなされる(ステップST3)。仮に、判定結果が異常判定(NG)であれば、その後、低圧制御を禁止し(ステップST5)、警告灯81を点灯する(ステップST6、ステップST7:NO)。図5のルーチンを抜けた後は、強制高圧制御を解除して(ステップST28)、エンジン1の運転状態に応じて低圧制御または高圧制御を実行するようになる。図5のルーチンを抜けた後は、強制高圧制御を解除して(ステップST28)、エンジン1の運転状態に応じて低圧制御または高圧制御を実行するようになる。
【0069】
以上に説明した本発明の実施形態に係る油圧制御装置によれば、リリーフ弁210のオイルのリリーフ量が増加することに起因して、エンジン1内のオイルの総油量が増えていないにもかかわらず、オイルパン231内の油面レベルの異常を検出してしまうこと、油面レベルの異常を知らせる警告灯82が点灯してしまうことなどが防止される。
【0070】
−他の実施形態−
既述の実施形態では、リリーフ弁210によるオイルのリリーフ量を2段階に設定することにより、オイルポンプ233の吐出側の油圧を2段階に設定できる2ステージ油圧システムを例に挙げて説明したが、リリーフ量を3段階以上(または無段階)に設定できるリリーフ弁等を採用してオイルポンプ233の吐出側の油圧を3段階以上(または無段階)に設定できるようにしてもよい。この場合、オイルポンプの吐出側の油圧を最高段階を除く所定の段階以下(または所定油圧値以下)に設定する場合に、アッパ−オイルレベルセンサ44aの出力に基づく油面レベルの判定を行わないようにすることで、既述と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、自動車のエンジンの2ステージ油圧システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
44a アッパーオイルレベルセンサ(油面レベル検出手段)
100 ECU
210 リリーフ弁
231 オイルパン(オイル貯留部)
232 オイル通路(オイルポンプの吐出側の油路)
233 オイルポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リリーフ弁によるオイルのリリーフ量を制御することによりオイルポンプの吐出側の油路内の油圧を設定する油圧設定手段と、オイル貯留部内の油面レベルが所定値を超えた場合にこれを検出する油面レベル検出手段と、を備える油圧制御装置において、
前記油圧設定手段が前記オイルポンプの吐出側の油路内の油圧を所定値以下に設定している場合に、前記油面レベル検出手段による前記検出を禁止する検出禁止手段を備えることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置において、
前記油圧設定手段は、リリーフ弁によるオイルのリリーフ量を制御することによりオイルポンプの吐出側の油路内の油圧を多段階に設定するものであり、
前記検出禁止手段は、前記油圧設定手段が前記オイルポンプの吐出側の油路内の油圧を最高段階を除く所定の段階以下に設定している場合に、前記油面レベル検出手段による前記検出を禁止するものである、ことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御装置において、
前記油圧設定手段は、リリーフ弁によるオイルのリリーフ量を制御することによりオイルポンプの吐出側の油路内の油圧を第1油圧又はこの第1油圧より低圧の第2油圧に設定するものであり、
前記検出禁止手段は、前記油圧制御手段が前記油圧を第2油圧に設定している場合に前記油面レベル検出手段による前記検出を禁止するものである、ことを特徴とする油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31781(P2012−31781A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171932(P2010−171932)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】