説明

油圧駆動作業車両

【課題】油圧駆動作業車両において、低コスト化及び動力損失の低減を図れるとともに、旋回部を使用する作業を円滑かつ短時間に行える構造を実現することである。
【解決手段】油圧駆動作業車両であるバックホーは、走行装置の上側に旋回可能に設けた上部構造と、作業車両用油圧回路244とを含む。油圧回路244は、左側走行用モータ34aを含む第一アクチュエータ組246と、第一アクチュエータ組246を駆動する第1油圧ポンプ74と、右側走行用モータ34b及び旋回モータ16を含む第二アクチュエータ組248と、第二アクチュエータ組248を駆動する第2油圧ポンプ82とを有する。第2油圧ポンプ82を、第1油圧ポンプ74と比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、バケット等を用いたバックホー等の掘削作業車両として使用され、それぞれ独立して駆動可能な一方側走行部及び他方側走行部を含む走行装置と、走行装置の上側に旋回可能に設けられた旋回部と、旋回部に支持された掘削部等の作業部とを備える油圧駆動作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば対地作業車両であるバックホーでは、旋回部である上部構造に、アーム、ブーム、及びバケットやフォーク等を含む掘削部を設け、掘削部を油圧シリンダ等の油圧アクチュエータにより作動させることによって掘削作業を可能としている。例えば、特許文献1には、油圧駆動作業車両である掘削作業機が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の掘削作業機は、走行装置を含む走行部と、走行部の上側に軸支された軸受と、軸受上に配置された旋回台と、ブームやアーム等から構成する掘削部とを備える。ブームとブームブラケットとの間にブームシリンダを配置し、ブームブラケットと旋回台との間にスイングシリンダを配置している。走行装置には、左右の走行モータが配設されている。また、旋回台内部に旋回モータが配設され、旋回台を旋回可能に構成している。第一から第三の油圧ポンプがエンジンにより駆動され、このうち、可変容量形の第一、第二の油圧ポンプから吐出される圧力が、切換弁を介して、ブームシリンダ、スイングシリンダ、走行モータ等と接続され、駆動可能としている。固定容量形の第三の油圧ポンプからの圧油は切換弁を介して旋回モータと接続され、旋回駆動可能としている。なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1の他に特許文献2から4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−100317号公報
【特許文献2】特公平4−9922号公報
【特許文献3】特開2000−220566号公報
【特許文献4】特開平6−10827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された油圧駆動作業車両の場合、旋回モータ用として他のアクチュエータ用の油圧ポンプとは別の第三の油圧ポンプを使用している。このため、ポンプの数が多くなることにより、低コスト化及び動力損失の低減を図ることに対する妨げとなる可能性がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載されたパワーショベルでは、走行モータ、スイングシリンダ及びブームシリンダに共通の可変容量ポンプP1を使用して、吐出油を供給可能とし、旋回モータ、別の走行モータ及びアームシリンダに共通の可変容量ポンプP2を使用して、吐出油を供給可能としている。ただし、このような構成では、旋回部と別のアクチュエータであるアームの回動作業とを同時に行う場合に、可変容量ポンプP2からの吐出容量が不足して、それぞれのアクチュエータの作動速度が低下したり、動作の円滑性が損なわれる可能性がないとはいえない。このため、掘削作業の作業効率が低下する原因となる。すなわち、旋回部を備える作業車両では、掘削部等の作業部を上下や左右に回動しながら、旋回部を旋回することで、作業効率を高くできる場合がある。これに対して、特許文献2に記載の技術では、旋回部の旋回とアームの回動とを、効率よく同時に行うことができず、低コスト化及び動力損失の低減を図るとともに、旋回部を使用する作業を円滑かつ短時間に行えるようにする面から改良の余地がある。
【0007】
一方、特許文献3には、駆動ポンプ及び従動ポンプを有する油圧ポンプで、駆動ポンプに固定した駆動歯車と、従動ポンプに固定した駆動歯車とを噛合させ、回転力を伝達するとされている。また、このような油圧ポンプを、油圧ショベルの各アクチュエータの駆動のために使用するとされている。ただし、特許文献3には、旋回部を使用する作業を円滑かつ短時間に行えるようにするための構成は開示されていない。
【0008】
また、特許文献4には、一対のシリンダブロックを一対の回転軸に設けて、一対の回転軸に歯数の異なる一対の歯車を固定し、一対の歯車同士を噛合させた油圧ポンプが記載されている。このような油圧ポンプは、歯車の歯数の比率を変えることで、ポンプの最大流量を任意に増加または減少できるとされている。ただし、このような油圧ポンプは、斜軸式または斜板式であるが、内部の2のポンプの容量は一定である。また、このような油圧ポンプは、単に油圧シリンダ等のアクチュエータに接続するとされているだけである。特許文献4の場合も、旋回部を使用する作業を円滑かつ短時間に行えるようにするための構成は開示されていない。
【0009】
このように特許文献1から4に記載された技術の場合には、油圧駆動作業車両において、低コスト化及び動力損失の低減を図るとともに、旋回部を使用する作業を円滑かつ短時間に行えるようにする面から改良の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、油圧駆動作業車両において、低コスト化及び動力損失の低減を図れるとともに、旋回部を使用する作業を円滑かつ短時間に行える構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る油圧駆動作業車両は、それぞれ独立して駆動可能な一方側走行部及び他方側走行部を含む走行装置と、走行装置の上側に旋回可能に設けられた旋回部と、旋回部に支持された作業部と、一方側走行部を駆動するアクチュエータである一方側走行用モータと、他方側走行部を駆動するアクチュエータである他方側走行用モータと、旋回部旋回用のアクチュエータである旋回モータとを有する複数種類のアクチュエータを含む作業車両用油圧回路とを備え、複数種類のアクチュエータは、一方側走行用モータを含む第一アクチュエータ組と、旋回モータと他方側走行用モータとを含む第二アクチュエータ組との2組に分けられており、作業車両用油圧回路は、第一アクチュエータ組及び第一アクチュエータ組を駆動する第一可変容量ポンプを有する第一回路と、第二アクチュエータ組及び第二アクチュエータ組を駆動する第二可変容量ポンプを有する第二回路とを含み、旋回モータの駆動源となる第二可変容量ポンプは、第一可変容量ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されていることを特徴とする油圧駆動作業車両である。
【0012】
上記の油圧駆動作業車両によれば、旋回モータ及び他方側走行用モータを含む第二アクチュエータ組を駆動する第2可変容量ポンプが、一方側走行用モータを含む第一アクチュエータ組を駆動する第1可変容量ポンプと比べて、単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定している。このため、旋回部を使用する作業を円滑にかつ短時間で行える。例えば、第二アクチュエータ組が掘削作業機のアームシリンダ等、他のアクチュエータを含む場合に、旋回部の旋回作業と、他のアクチュエータにより作業部を使用する作業とを同時に行う場合でも、旋回部を円滑にかつ高速で旋回させることができる。しかも、このような効果を得るために、旋回モータの駆動のためのポンプを別に専用に設ける必要はなく、ポンプ装置全体のコンパクト化、低コスト化を図れるとともに、動力源の動力損失の低減を図れる。
【0013】
また、本発明に係る油圧駆動作業車両において、好ましくは、前記第一可変容量ポンプは、前記第二可変容量ポンプに対し、ポンプ駆動ギアにより動力の伝達可能に作動的に連結されており、前記ポンプ駆動ギヤは、前記第一可変容量ポンプの回転速度よりも前記第二可変容量ポンプの回転速度を増速させる増速ギアを含むことにより、前記第二可変容量ポンプは、前記第1可変容量ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されている。
【0014】
上記の構成によれば、第一可変容量ポンプ及び第二可変容量ポンプ同士で、シリンダブロック等のポンプ本体部品を多く共用化できるため、よりコストの低減を図れる。
【0015】
また、本発明に係る油圧駆動作業車両において、好ましくは、前記第二可変容量ポンプは、前記第一可変容量ポンプと比べてそれぞれの本体同士の間での容積差が設けられることにより、単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されている。
【0016】
また、本発明に係る油圧駆動作業車両において、好ましくは、前記第一可変容量ポンプは、第一ポンプ容量変更操作機構により吐出容量を変更可能としており、前記第二可変容量ポンプは、第二ポンプ容積変更操作機構により吐出容量を変更可能としており、前記第一ポンプ容積変更操作機構及び第二ポンプ容積変更操作機構は、互いの操作量範囲に差が設けられることにより、前記第二可変容量ポンプは、前記第一可変容量ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されている。
【0017】
また、本発明に係る油圧駆動作業車両において、好ましくは、前記複数種類のアクチュエータは、それぞれ前記第一アクチュエータ組と前記第二アクチュエータ組とのいずれかに属する、バケット用シリンダ、ブーム用シリンダ、スイング用シリンダ、アーム用シリンダ、及びブレード用シリンダを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る油圧駆動作業車両によれば、低コスト化及び動力損失の低減を図れるとともに、旋回部を使用する作業を円滑かつ短時間に行える構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態の1例の油圧駆動作業車両であるバックホーの略図である。
【図2】図1のバックホーを構成する機器収容部内部に設けた複数の装置を、一部を省略して示す平面図である。
【図3】図1のバックホーの油圧回路の全体図である。
【図4】図1のバックホーを構成するポンプユニットの油圧回路図である。
【図5】同じくポンプユニットの横断断面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図6からポートブロックを取り出して、図6の左側から右側に見た図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】一部を省略して示す、図6のC−C断面図である。
【図10】図6の左側から右側に見た図である。
【図11】図6の上側から下側に見た図である。
【図12】図6のD−D断面図である。
【図13】図6のE−E断面図である。
【図14】回転角度検出用レバーの取付状態を示す、図11から回転角度センサ及びセンサ支持部材を省略した状態を示す図である。
【図15】図5のポンプユニットにおいて、サーボ機構を駆動するバランスピストン機構の作動を説明するための図である。
【図16】別例のポンプユニットの油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図15は、本発明に係る実施の形態の1例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の油圧駆動作業車両である、バックホー10は、左右一対のクローラベルト240,242を含む走行装置12と、走行装置12の中央部に配置された回転台14と、回転台14の中心部に設けられた旋回モータ16と、走行装置12の上側に、回転台14により、上下方向の旋回軸O(図2)を中心に旋回可能に設けられた旋回部である上部構造18と、上部構造18に支持された作業部である掘削部40とを備える。
【0021】
また、左右一対のクローラベルト240,242は、それぞれ独立して駆動可能な一方側走行部である、左側クローラベルト240と、他方側走行部である右側クローラベルト242とである。なお、本発明の油圧駆動作業車両は、バックホーに限定するものではなく、走行装置と、旋回可能な旋回部と、旋回部に支持された作業部とを備え、旋回モータ及び走行用モータを有する種々の車両で実施できる。
【0022】
図1に示すように、上部構造18は、上側に設けられて、蓋部により開口部を塞ぐ機器収容部20を含む。機器収容部20の内部に、駆動源であるエンジン22、ポンプユニット24、複数の方向切り換え弁26a,26b、及び複数の切換用パイロット弁28a,28bが設けられている。また、機器収容部20の上部外側に運転席30が設けられている。運転席30の前側及び左右片側または両側に、切換用パイロット弁と連係する操作レバーやペダル等の操作子32が設けられている。
【0023】
上部構造18は、旋回モータ16により、走行装置12に対し上下方向の旋回軸O(図2)を中心に回動可能としている。すなわち、旋回モータ16は、上部構造を旋回させるためのアクチュエータである。また、走行装置12に備えられる左右のクローラベルト240,242は、それぞれに対応する2の走行用モータ34a、34b(図2)により車両の前進側または後進側に回転可能である。すなわち、左側クローラベルト240は、アクチュエータであり、一方側走行用モータである左側走行用モータ34aにより駆動される。これに対して、右側クローラベルト242は、アクチュエータであり、他方側走行用モータである右側走行用モータ34bにより駆動される。左右の走行用モータ34a,34bは、互いに独立して駆動される。また、走行装置12の後側(図1の右側)に排土板であるブレード36が取り付けられており、ブレード36は、ブレードシリンダ38(図2)の伸縮により上下に回動可能に、走行装置12に支持されている。
【0024】
上部構造18の前部(図1の左部)に掘削部40が取り付けられている。掘削部40の下端部は、揺動支持部42に支持されている。図2に示すように、揺動支持部42は、上部構造18の前部に、上下方向(図2の裏表方向)の軸44を中心に回動可能である。揺動支持部42と上部構造18との間にスイングシリンダ46が設けられている。図1に示すように、揺動支持部42に、掘削部40のブーム48が、水平方向の軸50を中心に揺動可能に支持されている。
【0025】
掘削部40は、ブーム48と、ブーム48の先端に上下回動可能に支持されたアーム52と、アーム52の先端に上下回動可能に支持されたバケット54とを含む。ブーム48の中間部と揺動支持部42との間にブームシリンダ56が取り付けられ、ブームシリンダ56の伸縮によりブーム48を上下回動可能としている。
【0026】
ブーム48の中間部とアーム52の端部との間に、アームシリンダ58が取り付けられ、アームシリンダ58の伸縮によりアーム52を、ブーム48に対し回動可能としている。また、アーム52の端部とバケット54に連結したリンクとの間にバケットシリンダ60が取り付けられ、バケットシリンダ60の伸縮によりバケット54をアーム52に対し回動可能としている。図2に示すように、スイングシリンダ46の伸縮により、掘削部40(図1)全体を左右にスイング可能としている。
【0027】
機器収容部20に、エンジン62と、エンジン冷却用のラジエータ64と、エンジン62に結合したポンプユニット24と、ポンプユニット24から作動流体である作動油を供給可能とする複数(本例の場合は8)の方向切換弁を含むバルブユニット66と、油タンク68と、エンジン用の燃料タンク(図示せず)とを配置している。ポンプユニット24は、エンジン62のフライホイール側に結合するギヤケース70と、切換用パイロット弁28a,28b(図1)に作動油を供給するためのパイロットポンプである、ギヤポンプ72とを含む。なお、上部構造18は、上記のような構成に限定するものではなく、例えば、上部構造の左右方向片側に運転席を設けるとともに、左右方向他側に油タンクやエンジン、ポンプユニット等を配置する機器収容部を設け、全体をボンネットにより被覆することもできる。
【0028】
図3は、上記のバックホー10(図1)の油圧回路の全体図である。すなわち、バックホー10は、図3に示す作業車両用油圧回路244を備える。作業車両用油圧回路244は、バケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46、左側走行用モータ34a、右側走行用モータ34b、アームシリンダ58、ブレードシリンダ38、及び旋回モータ16を有する複数種類のアクチュエータを含む。図3に示すように、エンジン22の出力軸に、ポンプユニット24を構成する第一可変容量ポンプに対応する第1油圧ポンプ74と、ギヤポンプ72とを連結しており、これら各ポンプ74,72をエンジン22により駆動可能としている。また、エンジン22の動力は、大径歯車76及び小径歯車78により構成する増速機構80により増速して、ポンプユニット24を構成する第二可変容量ポンプに対応する、第2油圧ポンプ82に伝達可能とし、第2油圧ポンプ82もエンジン22により駆動可能としている。すなわち、第1油圧ポンプ74は、第2油圧ポンプ82に対しポンプ駆動ギヤである増速機構80により動力の伝達可能に作動的に連結している。また、増速機構80は、第1油圧ポンプ74の回転速度よりも第2油圧ポンプ82の回転速度を増速させる増速ギヤである大径歯車76及び小径歯車78を含む。これにより、旋回モータ16を含むアクチュエータの駆動源である、第2油圧ポンプ82は、第1油圧ポンプ74と比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定している。
【0029】
第1油圧ポンプ74に、それぞれに対応するセンタークローズ型のアクチュエータ切換弁である方向切換弁26aを介して、それぞれアクチュエータであるバケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46、及び左側走行用モータ34aを並列接続している。また、第2油圧ポンプ82に、それぞれに対応するセンタークローズ型のアクチュエータ切換弁である方向切換弁26bを介して、それぞれアクチュエータであるアームシリンダ58、ブレードシリンダ38、旋回モータ16、及び右側走行用モータ34bを並列接続している。すなわち、上記の複数種類のアクチュエータであるシリンダ及びモータは、バケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46及び左側走行用モータ34aとを含む第一アクチュエータ組246と、右側走行用モータ34b、アームシリンダ58、ブレードシリンダ38及び旋回モータ16とを含む第二アクチュエータ組248との2組に分けられている。そして、作業車両用油圧回路244は、第一アクチュエータ組246及び第一アクチュエータ組246を駆動する第1油圧ポンプ74を有する第一回路250と、第二アクチュエータ組248及び第二アクチュエータ組248を駆動する第2油圧ポンプ82を有する第二回路252とを含む。このように上記のアクチュエータは、第一アクチュエータ組246と第二アクチュエータ組248とのいずれかに属する、各シリンダ60,56,46,58,38を含む。
【0030】
各方向切替弁26a,26bの左右端に設けた切換油室には、それぞれ切換用パイロット弁28a,28bの出力ポートが接続されている。また、各切換用パイロット弁28a,28bもセンタークローズ型であり各々の入力ポートは、ギヤポンプ72の吐出口に並列接続されている。ギヤポンプ72の吸入口は、油タンク68に接続されている。各切換用パイロット弁28a,28bは、運転席30(図1)の周辺部にそれぞれに対応して設けられる操作子32により機械的に切換可能としている。各切換用パイロット弁28a,28bの切換により、対応する方向切換弁26a,26bが油圧的に中立位置から作用位置へ切り換えられると、対応するシリンダ60,56,46,58,38の伸長・収縮及び走行用モータ34a、34bや旋回モータ16の回転方向が切り換えられる。また、旋回モータ16に対応する方向切換弁26bの切換により、旋回モータ16の回転方向が切り換えられる。例えば、旋回モータ16に方向切換弁26bを介して第2油圧ポンプ82の吐出口が接続されることで、上部構造18(図1)を所望の方向へ左右旋回させることができる。なお、操作子32は、十字方向にレバーを揺動操作可能とし、それぞれの方向の操作量で、異なる2つのアクチュエータの操作量の指示に対応させることもできる。方向切換弁26a、26bの作用位置にはアクチュエータへの吐出流量を徐々に増やす可変絞り弁が設けられる。したがって各切換用パイロット弁28a、28bの操作量に応じて方向切換弁26a、26bの開度が任意に調整される。
【0031】
また、左右の走行用モータ34a,34bの可動斜板の、モータ軸に対する傾きである、傾転角度を同時に変えるために、1の増速切換弁84を設け、増速切換弁84を、ギヤポンプ72の吐出口に接続している。増速切換弁84は、各走行用モータ34a,34bの可動斜板の傾転角度を2段階で変化可能とする。例えば、増速切換弁84は、走行用モータ34a,34bの可動斜板に連結された容積変更アクチュエータ86の各々にギヤポンプ72から同時給排されるように切り替えることで、走行用モータ34a,34bの容積が大きくなる。一方、容積変更アクチュエータ86内の油を油タンク68へ排出するように切り換えることで、走行用モータ34a,34bの容積が小さくなる。このため、各走行用モータ34a,34bの速度変更が可能となる。増速切換弁84は、各走行用モータ34a,34bで共通に設けている。増速切換弁84は、運転席30(図1)周辺部に設けた操作子32のうち、2速切換レバーである操作子32により切換可能としている。
【0032】
各走行用モータ34a,34bは、対応する油圧ポンプ74,82の吐出口に、方向切換弁26a、26bを介して接続している。方向切換弁26a,26bを油圧的に切り換える各切換用パイロット弁28a、28bは、運転席30(図1)の周辺部に設けた操作子32のうち、変速レバーとしての操作子32により、対応する油圧ポンプ74,82の吐出口を走行用モータ34a,34bの2つのポートのいずれに接続するかを切換可能とするとともに、走行用モータ34a,34bへの供給油量を変更可能としている。このため、対応する操作子32の操作によって、前進と後進とにそれぞれ対応する、各走行用モータ34a,34bの正転と逆転とが変更可能となるとともに、速度調節が可能となる。
【0033】
左右の走行用モータ34a,34bに対応する切換用パイロット弁28a、28b切換用の操作子32によって給油量・給油方向を同じとすることで、作業車両が直進走行する。また、操作子32を独立に操作して給油量・給油方向を異ならせることで、各走行用モータ34a,34bの出力が異なり、バックホー10(図1)の旋回が可能となる。
【0034】
本実施の形態では、バケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46、及び左側走行用モータ34aに、第1油圧ポンプ74から作動油を供給可能とし、アームシリンダ58、ブレードシリンダ38、旋回モータ16、及び右側走行用モータ34bに、第2油圧ポンプ82から作動油を供給可能としている。このように構成する理由は、基本的に同時使用する頻度が高いアクチュエータが同じ油圧ポンプにより駆動されるのを避けるようにして、同じアクチュエータが同じ油圧ポンプにより駆動された場合の圧力の干渉が生じることを少なくするためである。すなわち、バケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46、及び左側走行用モータ34aは同時使用される頻度が少ない。また、アームシリンダ58、ブレードシリンダ38、及び右側走行用モータ34bは同時使用される頻度が少ない。一方、旋回モータ16は、アームシリンダ58等の他のアクチュエータと同時に使用される頻度が高く、この場合の圧力干渉を少なくして、このアクチュエータ及び旋回モータ16を高い速度で作動させる必要があるとともに、円滑な動作が損なわれることを防止する必要がある。この目的のため、上記のように増速機構80を用いて、第2油圧ポンプ82の単位時間当たり吐出容量の最大値が、第1油圧ポンプ74の単位時間当たり吐出容量の最大値よりも多くなるようにしている。また、この構成により、旋回モータ16のみを専用に駆動させるための別のポンプを設ける必要がなくなる。
【0035】
図4は、ポンプユニット24の油圧回路を示す図である。ポンプユニット24は、第一可変容量ポンプである第1油圧ポンプ74と、第1油圧ポンプ74の容量を変化させるための可動斜板90と、第1斜板操作部であり第1サーボピストンユニットである第1サーボ機構92と、第1サーボ機構92に対し動力の伝達可能に接続される第1バランスピストン機構94とを含む。
【0036】
また、ポンプユニット24は、第二可変容量ポンプである第2油圧ポンプ82と、第2油圧ポンプ82の容量を変化させるための可動斜板90と、第2斜板操作部であり第2サーボピストンユニットである第2サーボ機構96と、第2サーボ機構96に対し動力の伝達可能に接続される第2バランスピストン機構98とを含む。
【0037】
各サーボ機構92,96は、後述するポンプケース108(図5、6、8参照)の本体の内壁に形成されるシリンダの内側に軸方向の摺動可能に設けられるサーボピストン100と、サーボピストン100の内側に相対的に軸方向の摺動可能に設けられる方向切り換え弁を構成するスプール102とを含む。スプール102とサーボピストン100との間に、スプール102を軸方向の一方向へ付勢する付勢部材であるバネ104を設けている。サーボピストン100に可動斜板90に連結した操作ピン106を係合させ、サーボピストン100の移動により可動斜板90の傾転角度の変更を可能としている。
【0038】
スプール102が一方向に移動すると、サーボピストン100片側の受圧室から作動油がポンプケース108(図5)内の油溜め110に排出されるとともに、ギヤポンプ72から圧力PPLで吐出され、圧力Pchに調整された作動油がサーボピストン100他側の受圧室に導入される。このため、サーボピストン100は、他側の受圧室内の圧力により押圧され、スプール102に追従して一方向に移動する。逆に、スプール102が他方向に移動すると、サーボピストン100他側の受圧室から作動油が油溜め110に排出されるとともに、ギヤポンプ72から圧力Pchで調整された作動油がサーボピストン100片側の受圧室に導入される。このため、サーボピストン100は、スプール102に追従して他方向に移動する。
【0039】
また、各バランスピストン機構94,98は、後述するピストンケース180(図6,8参照)内に軸方向の摺動可能に設けられたピストン本体112を含む。また、各ピストン本体112の軸方向一端側の小径部に対向する部分に、対応する油圧ポンプ74,82の吐出圧である、各方向切換弁26a,26b(図3)の通過前の一次側圧力PP1(=P1),PP2(=P2)を導入している。また、各ピストン本体112の軸方向一端側の大径部に対向する部分に、ギヤポンプ72の吐出側に接続され、電気信号の入力により減圧量を調節可能な可変減圧弁114から、調節された圧力PCON1、PCON2を導入可能としている。
【0040】
また、各ピストン本体112の軸方向他端側の小径部に対向する部分に、各方向切換弁26a,26b(図3)の通過後の二次側圧力、すなわち負荷側圧力(負荷圧)のうち、最高負荷圧PL1,PL2を導入している。例えば、複数のシャトル弁を含む回路部により、最高負荷圧を各バランスピストン機構94,98に導入可能とする。また、ピストン本体112の軸方向他端側の大径部に対向する部分に、ギヤポンプ72から圧力PPLで吐出され、固定減圧弁116で所望圧に調整された圧力ΔPLSを導入している。固定減圧弁116は、減圧量を予め設定した状態で一定に維持、すなわち固定されている。
【0041】
そして、各バランスピストン機構94,98により、対応する方向切換弁26a,26bの通過前の一次側圧力PP1、PP2と最高負荷圧PL1、PL2との差圧である、ロードセンシング差圧(LS差圧)が予め設定した所望圧となるように、対応する油圧ポンプ74,82の可動斜板90のポンプ軸に対する傾きである、傾転角度を制御している。すなわち、ロードセンシング差圧の変化に応じて、対応するバランスピストン機構94,98によりサーボ機構92,96を操作し、対応する油圧ポンプ74,82の可動斜板90の傾転角度を変化させている。これについては、後で詳しく説明する。
【0042】
図3に戻って、各油圧ポンプ74,82は、初期位置において、可動斜板90(図4)をポンプ軸に対し直交する平面に対しわずかに(例えば2度程度)傾けた状態が維持されるようにしてスタンバイしている。このため、エンジン22駆動時には、対応するすべてのシリンダ等のアクチュエータを作動させず、対応する方向切換弁26a,26b及び走行切換弁88が中立位置で閉鎖状態(クローズ)にある場合でも、わずかに油圧ポンプ74,82から作動油が吐出される。これに伴って、油圧ポンプ74,82吐出側の油路にアンロード弁118をそれぞれ設けて、対応するすべての方向切換弁26a(または26b)及び走行切換弁88が中立位置にある場合に、アンロード弁118を開放して油タンク68に作動油が排出されるようにしている。なお、このアンロード弁118は、方向切換弁26a,26bを作用位置にしたときにその出力油圧を切換信号として閉鎖側に導入して、油タンク68への作動油排出を停止させるべく構成されている。
【0043】
次に、図5から図14を用いて、本実施の形態のポンプユニット24の具体的構造を説明する。ポンプユニット24は、上記の図4に示した回路構成を有する。以下の説明では、図1から図4に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。
【0044】
図5は、ポンプユニット24の横断断面図である。図6は、図5のA−A断面図であり、図7は、図6からポートブロックを取り出して、図6の左側から右側に見た図である。図8は、図6のB−B断面図であり、図9は、一部を省略して示す図6のC−C断面図である。図10は、図6の左側から右側に見た図であり、図11は、図6の上側から下側に見た図である。図12は、図6のD−D断面図であり、図13は、図6のE−E断面図である。図14は、回転角度検出用レバーの取付状態を示す、図11から回転角度センサ及びセンサ支持部材を省略した状態を示す図である。
【0045】
図5に示すように、ポンプユニット24は、2のアキシャルピストン型の可変容量ポンプを有するもので、ポンプケース108と、ポンプケース108に収容する可変容量ポンプである、第1油圧ポンプ74及び第2油圧ポンプ82と、第1ポンプ軸120及び第2ポンプ軸122と、2の可動斜板90とを備える。また、図8に示すように、ポンプユニット24は、第1サーボ機構92及び第2サーボ機構96と、第1バランスピストン機構94及び第2バランスピストン機構98と、ギヤポンプ72(図5)とを備える。
【0046】
図5に示すように、ポンプケース108は、一端(図5の右端)に開口部を有するケース本体124と、ケース本体124の開口部を塞ぐとともに第1油圧ポンプ74及び第2油圧ポンプ82に対する油給排を行うポートを形成したブロックである、ポートブロック126と、ポートブロック126のケース本体124と反対側に結合してフライホイールを包み込むラッパ(ホルン)形状のフライホイールハウジングを備えたギヤケース128とを含む。図6、図7に示すように、ポートブロック126の上面及び下面に、後述するキドニーポートに通じる複数のポートT1,T2,T3,T4を開口させている。また、図5に示すように、ケース本体124及びポートブロック126に第1ポンプ軸120及び第2ポンプ軸122の両端部を軸受により両持ち支持状態で、回転可能に支持している。図10に示すように、ギヤケース128のフライホイールハウジングにおいては、エンジン側端部の外周部周方向複数個所に孔部130を形成しており、各孔部130に挿通したボルト(図示せず)により、エンジン22(図2)のマウンティング・フランジに結合可能としている。なお、ギヤケース128とフライホイールハウジングとは本実施の形態においては一体的に形成したが、両部材を分離自在に結合したものであっても構わない。
【0047】
また、図5に示すように、ギヤケース128に、エンジン22の出力軸に連結可能とする入力軸132を軸受により回転可能に支持してフライホイールハウジングの径方向略中央に位置させている。第1ポンプ軸120及び入力軸132は、同軸上に配置し、増速機構80を構成する大径歯車76の中心筒軸の内側にそれぞれスプライン係合させている。このため、第1ポンプ軸120及び入力軸132は、大径歯車76を介して、互いに同期した回転可能に結合される。
【0048】
また、増速機構80を構成する小径歯車78の中心筒軸の内側に第2ポンプ軸122をスプライン係合させ、大径歯車76及び小径歯車78を噛合させている。このため、第2油圧ポンプ82は、第1油圧ポンプ74に対し増速機構80のギヤ比により増速される。各歯車76,78の中心筒軸の両端部は、ポートブロック126及びギヤケース128に、それぞれ軸受により回転可能に支持されている。このため、ポンプ軸120,122及び歯車76,78の強度及び耐久性の向上を図れ、油圧ポンプ74,82のメンテナンス作業が容易になる。
【0049】
ポンプケース108内側にポンプ側空間である油溜め110を設けるとともに、増速機構80を配置したギヤケース128内側に歯車側空間134を設けて、油溜め110及び歯車側空間134を互いに独立させている。このため、各ポンプ74,82を駆動する動力の損失低減を図れる。油溜め110に油を充填させる一方、歯車側空間134に封入する油の量は少なくしている。例えば、図5で歯車側空間134に封入する油は、各歯車76,78の下端部が浸る程度としている。
【0050】
また、図6、図9に示すように、ギヤケース128の歯車側空間134に面する支持壁内にはその軸受支持凹部128aを上下に貫く油孔136を形成している。各油孔136において、ギヤケース128の外面に開口する上下端部は、着脱可能なプラグ138により塞いでいる。各油孔136は、各歯車76,78の上下位置歯先周辺部と対向するように形成した横穴136aを介して歯車側空間134に通じさせている。このため、上側のプラグ138を取り外した状態で、各油孔136及び横穴136aを通じて歯車側空間134に対する油の給排が可能となる。
【0051】
図5に示すように、エンジン22(図2)に連結するための入力軸132に、第1ポンプ軸120の一端面(図5の右端面)側に開口する軸方向孔140と、軸方向孔140に連通する、放射状に形成した径方向孔142とを設けている。径方向孔142の外端部は、軸受支持凹部128aに開口させている。このため、図9に示すように、歯車側空間134内の油は各歯車76,78が回転したときにギヤポンプの作用で横穴136aから油孔136を通じて軸受支持凹部128aに到達し、入力軸132の各孔140,142を通じて、第1ポンプ軸120の一端部外周面と大径歯車76内周面との間のスプライン部に供給することが可能となる。このため、スプライン部の耐久性をより有効に向上できる。なお、第2ポンプ軸122の小径歯車78側の一端面(図5の右端面)も同様に軸受支持凹部128aに開いているため、横穴136aと油孔136とを経て軸受支持凹部128a内に放出される油によって、第2ポンプ軸122の一端部外周面と小径歯車78内周面との間のスプライン部に十分に潤滑を施すことが可能となる。
【0052】
次に、各油圧ポンプ74,82を説明する。各油圧ポンプ74,82は、ポンプ軸120,122にスプライン係合させることによりポンプ軸120,122と一体的に回転可能としたシリンダブロック154と、シリンダブロック154のシリンダに往復動可能に収容された複数のピストン156と、シリンダブロック154の内周面とポンプ軸120,122の外周面との間に設けたバネとを備える。バネは、ピンを介して、外周面が球面状のワッシャにより、各ピストン156の一端に支持したシューを可動斜板90側に押圧する機能を有する。
【0053】
また、各油圧ポンプ74,82は、ポートブロック126の片面側(図5の左側)に面方向の位置ずれを防止するように支持した弁板144を備える。弁板144は、上下方向の両側でそれぞれポンプ軸120,122と平行方向に貫通した、それぞれ略円弧形の吸入ポート及び吐出ポートを有する。吸入ポートは、図7に示す車両搭載状態でポートブロック126の下側に形成した吸入油路U1,U2に通じさせ、吐出ポートは、図7に示すポートブロック126に上側に形成した吐出油路U3,U4に通じさせている。各油路U1,U2,U3,U4の一端には、ポートブロック126の片面(図7の表面)に開口するキドニーポートが設けられており、それぞれ弁板144の吸入ポートまたは吐出ポートに通じさせている。ポートブロック126の下面及び上面の幅方向(図7の左右方向)両側に、それぞれ第1油圧ポンプ74(図5)用または第2油圧ポンプ82(図5)用である、入口ポートT1,T2と出口ポートT3,T4とを、それぞれ開口させている。このような構成では、ポンプユニット24(図6)に対し、下側から作動油が吸入され、上側から作動油が排出される。このように、2以上のポンプ74,82を同時駆動するポンプユニット24において、それぞれの入口ポートT1,T2を下向きに、出口ポートT3,T4を上向きに配置するように、作業車両に取り付けて使用するので、ポンプユニット24に対するバルブ配管の取付作業が容易に行える。
【0054】
また、各入口ポートT1,T2に油を供給するために、図10に示すように、ポンプユニット24に供給配管146を接続可能としている。供給配管146のポンプユニット24接続側とは反対側の端部は、外部の油タンク68(図2)に接続される。また、供給配管146は、ポンプユニット24接続側で、本体部148と、本体部148の直径よりも小さくなった小径部150とに分岐させている。本体部148は、少なくともポンプユニット24接続側で略直線状に設けられている。小径部150の上端部は、第1油圧ポンプ74側の入口ポートT1に接続され、本体部148の上端部は、第2油圧ポンプ82側の入口ポートT2に接続されている。このように直径が大きい配管を第2油圧ポンプ82側に接続し、直径が小さい配管を第1油圧ポンプ74側に接続しているのは、増速機構80(図5)により、第2油圧ポンプ82の回転が第1油圧ポンプ74よりも増速され、第2油圧ポンプ82で第1油圧ポンプ74よりも単位時間当たりの吐出容量が大きくなり、必要な吸い込み油量に対応するようにするためである。なお、供給配管として、このように分岐型の構成を用いず、各入口ポートT1,T2に、互いに独立した内径寸法の異なる2の供給配管を接続することもできる。
【0055】
このように、2以上の吐出容量が異なるポンプ74,82を同時駆動するポンプユニット24において、吐出容量が大きい油圧ポンプ82の供給配管である本体部148は略直線状に設けられ、本体部148から、吐出容量が小さい油圧ポンプ74の供給配管である小径部150を分岐させる構成を採用できる。このため、吐出容量大の油圧ポンプ82での吸い込み流量が、吐出容量小の油圧ポンプ74よりも大きくなるのにもかかわらず、供給配管146内でキャビテーションが発生するのを有効に防止できる。
【0056】
また、図6、図7に示すように、吸入油路U1,U2のポートブロック126の弁板144側に開口する弓形開口部であるキドニーポートの中間部に、弁板144の下側に外れる位置まで伸ばした延長部152を設けている。延長部152の下端部は、ケース本体124の一端開口を通じて、油溜め110に通じさせる。このため、各油圧ポンプ74,82等のケース本体124内の要素から漏れ出して、油溜め110に溜まるとしても延長部152を通じて、弁板144の吸入ポートから直ぐ吸入されるようにしている。このため、ポンプケース108内の余剰油を配管等を介してリザーバタンクに戻す必要がなくなり、配管を省略または少なくでき、部品点数の削減によるコスト低減を図れる。
【0057】
また、ケース本体124の外面に、外接式ギヤポンプ72のケース158を固定し、ギヤポンプ72のギヤポンプ軸を、ポンプケース108の内側で第1ポンプ軸120と結合固定している。また、ギヤポンプ軸に、駆動歯車(またはインナーロータ)を固定している。ギヤポンプ72は、駆動歯車に従動歯車を噛合させるか、または、アウターロータをインナーロータに対し偏心させつつ回転させるトロコイドポンプ等とすることができる。なお、図示は省略するが、ギヤポンプ72のケース158の外面からギヤポンプ軸を突出させ、その突出させた部分に、他の装置に連結するための動力伝達部を設けることもできる。例えば、動力伝達部は、ギヤポンプ軸の端部に雄スプライン部または雌スプライン部を形成することにより構成できる。例えば、この動力伝達部に図示しない冷却ファンの回転軸を、スプライン結合することができる。
【0058】
また、図5、図6、図8に示すように、各可動斜板90は、斜板操作部である対応するサーボ機構92,96により傾転角度を変更可能としている。各可動斜板90は、各ピストン156と反対側面である、断面円弧形の凸状面部160と、上側に向く上面部162とを有する。ケース本体124に固定の部材に凸状面部160と合致する断面円弧形の凹状面部を設けており、凹状面部に沿って凸状面部160を摺動可能としている。図8に示すように、上面部162に上下方向に操作ピン106を結合しており、操作ピン106を、サーボ機構92,96を構成するサーボピストン100に係合させている。
【0059】
各サーボ機構92,96は、各ポンプ軸120,122に対し直交する方向に対し平行なシリンダ164内に軸方向の摺動可能に設けられた中空状のサーボピストン100と、サーボピストン100の内側に軸方向の摺動可能に設けられた方向切換弁である、スプール102と、スプール102にサーボピストン100に対し軸方向の一方向へ付勢する付勢部材であるバネ104とを備える。各サーボピストン100は、その外表面に、対応する可動斜板90に結合された操作ピン106と係合する係止部である係止溝166と、複数の内部油路とを含む。係止溝166は、シリンダ164の軸方向と直交する方向に設けられている。
【0060】
図15は、ポンプユニット24において、サーボ機構92(96)を駆動するバランスピストン機構94(98)の作動を説明するための図である。図15に示すように、サーボピストン100に、第1油路168、第2油路170及び第3油路172を設けている。第1油路168は、ギヤポンプ72の吐出口に接続された油路に接続されるもので、所定の調整圧をピストン100外周面側からピストン100内周面側に導入する機能を有する。また、第2油路170は、ピストン100の内周面において、第1油路168のピストン100側開口端に対し、ピストン100の軸方向一側(図15の左側)にずれた位置に一端を開口させ、ピストン100の軸方向他端面(図15の右端面)に他端を開口させている。また、第3油路172は、ピストン100の内周面において、第1油路168のピストン100側開口端に対し、ピストンの軸方向他側(図15の右側)にずれた位置に一端を開口させ、ピストン100の軸方向一端面(図15の左端面)に他端を開口させている。
【0061】
スプール102は、外周面に設けられ、第1油路168のピストン100内周面側開口端と、第2油路170または第3油路172の一端開口とに同時対向可能とする円環状の溝部174を含む。溝部174は、第1油路168及び第2油路170を連通させる状態と、第1油路168及び第3油路172を連通させる状態とを切り換える機能を有する。また、サーボ機構92,96は、対応するバランスピストン機構94,98を構成するピストン本体112との間に設けられ、スプール102をピストン本体112の軸方向の移動に同期させて移動させる中間係止部材であるアーム部材176を備える。
【0062】
また、スプール102は内側に油路238を設けており、油路238は、図6のケース本体124内の油溜め110に常に連通させている。油路238は、第1油路168及び第2油路170が溝部174を介して連通した状態で、第3油路172と連通し、第1油路168及び第3油路172が溝部174を介して連通した状態で、第2油路170と連通する。
【0063】
図8に示すように、各サーボ機構92,96は、ケース本体124の上部の内部空間に収容しており、それぞれの内部空間の上部にアーム部材176の上端部を突出させるための開口部178を設けている。また、ケース本体124の上側にピストンケース180を、締結部材であるボルトにより結合固定している。そしてピストンケース180に、各サーボ機構92,96にそれぞれ対向する第1バランスピストン機構94及び第2バランスピストン機構98を収容している。各バランスピストン機構94,98は、対応するサーボ機構92,96のスプール102に対し、同期した移動可能に接続され、シリンダ182と、シリンダ182内での軸方向摺動可能に設けられたピストン本体112とを含む。各サーボ機構92,96のスプール102と、対応するピストン本体112との間にアーム部材176を設けている。
【0064】
図6に示すように、アーム部材176は、上下方向の同軸上に設けた上軸184及び下軸186と、両軸184,186の間に結合したフランジ188と、フランジ188の先端部上面に上下方向に立設した支持軸190とを含む。図8に示すように、上軸184は、スプール102の中間部全周に設けた係止溝192に係合させ、下軸186は、ピストン本体112の中間部全周に設けた係止溝194に係合させている。この構成により、サーボ機構92,96のスプール102は、対応するバランスピストン機構94,98のピストン本体112の軸方向の移動に同期した移動を可能としている。
【0065】
また、各バランスピストン機構94,98は、シリンダ182の軸方向一端側に設けられた第一受圧室196及び第四受圧室198と、シリンダ182の軸方向他端側に設けられた第二受圧室200及び第三受圧室202とを含む。第一受圧室196には、可変容量ポンプである第1、第2各油圧ポンプ74,82の吐出圧であって、アクチュエータ切換弁である方向切換弁26a、26b(図3)の通過前の一次側の作動油圧力PPが導入され、第二受圧室200には、方向切換弁26a,26bを通過後の最高負荷圧PL(以下、単に「負荷圧PL」という。)が導入される。また、第三受圧室202には、設定ロードセンシング圧ΔPLSが導入される。設定ロードセンシング圧ΔPLSは、方向切換弁26a、26bの作用位置での定常状態で、方向切換弁26a、26bの通過前後に生じる作動流体差圧に相当し、予め設定される設定圧力である。図15に示すように、ギヤポンプ72の吐出圧PPLを調整して得られた圧力Pchを固定減圧弁116により所望値に減圧して、設定ロードセンシング圧ΔPLSが得られるようにしている。
【0066】
また、図8に示すように、ピストンケース180の上面で、2のバランスピストン機構94,98同士の間に対応する幅方向中間部と対向する位置に、弁ケース204を固定している。図12に示すように、弁ケース204に、各バランスピストン機構94,98(図8)で共通の固定減圧弁116を設けている。固定減圧弁116は、シリンダと、シリンダに対し摺動可能に設けられた弁体206と、弁ケース204に固定のキャップ208と、キャップ208にねじ結合されたネジ軸210と、ネジ軸210により押圧される間座212と、弁体206と間座212との間に設けたバネ214とを備え、バネ214により弁体206を一方向に付勢している。弁ケース204の図示しない油路を通じてギヤポンプ72(図15)からの圧力Pchが弁体206を配置した空間に導入されている。圧力Pchは、バネ214の付勢力に応じて減圧され、油路を通じて各第三受圧室202(図8)に設定ロードセンシング圧ΔPLSが導入されている。図12に示すように、固定減圧弁116による減圧量は、ネジ軸210のキャップ208内側への進入量を調整してバネ214の付勢力を変更することにより調整可能である。
【0067】
図13に示すように、第四受圧室198は、対応する比例制御型の可変減圧弁114により、ギヤポンプ72(図15)の吐出圧が減圧された後の可変圧力を導入可能としている。すなわち、第四受圧室198は、任意に設定自在な可変圧力を導入される。通常時には、ギヤポンプ72から第四受圧室198に導入される作動油を遮断することができる。各可変減圧弁114は、比例ソレノイド216と、比例ソレノイド216により減圧量を制御される減圧弁本体218とを有し、比例ソレノイド216にエンジン22(図2)の負荷を表す信号が入力される。エンジン負荷が高い場合には、比例ソレノイド216は、減圧弁本体218に二次側の圧力PCONの減少量を低くし、圧力Pchに近い圧力が第四受圧室198に導入されるように減圧量を規制する。また、比例ソレノイド216は、ピストンケース180の水平方向に向いた側面から突出する状態で固定されている。また、比例ソレノイド216に、指令信号を入力するためのケーブル220が接続されている。
【0068】
このように、2以上の可変容量ポンプを同時駆動するポンプユニット24において、作業車両に搭載する場合に、可動斜板90のそれぞれに連動させるサーボ機構92,96は、ケース本体124の上部に設けられ、バランスピストン機構94,98を収容する部材であるピストンケース180は、サーボ機構92,96の上側に設けられている。このため、機器収容部20(図1)に通例のごとく備えられたボンネットを開放することでメンテナンス作業を容易に行える。
【0069】
また、図8に示すように、各可動斜板90の傾転角度を検知するために、各可動斜板90にそれぞれ対応する2のポテンショメータである回転角度センサ222を設けている。このために、ピストンケース180の上側で、各バランスピストン機構94,98の上側に対向する2個所位置に、センサ支持部材224を締結部材であるボルトにより結合固定している。各センサ支持部材224は、ピストンケース180と弁ケース204との上側に、それぞれ固定している。各センサ支持部材224の上側に回転角度センサ222を固定し、センサ軸226を上下方向に向けている。センサ軸226の下端部は、センサ支持部材224の下面から下側に突出させている。
【0070】
一方、上記で説明したように、各サーボ機構92,96と、対応するバランスピストン機構94,98との間に係合させたアーム部材176は、支持軸190(図6)を有する。支持軸190は、ピストンケース180に上下方向に貫通した孔部を通じてピストンケース180の上側に突出させ、その突出させた部分に回転角度検出用レバーである、第1レバー228の中間部を結合している。また、第1レバー228の先端部にピンにより、回転角度検出用レバーである第2レバー230の一端部を揺動可能に支持している。第2レバー230の他端部は、センサ軸226の下端部に結合固定されている。このため、可動斜板90の傾転角度が変化し、スプール102がサーボピストン100に追従して移動すると、アーム部材176の上軸184及び下軸186が、図6の裏表方向に移動し、これに伴って、支持軸190がピストンケース180の孔部中心に回転し、第1、第2各レバー228,230がそれぞれ揺動するので、回転角度センサ222のセンサ軸226が回転する。したがって、回転角度センサ222により、可動斜板90の傾転角度に対応する回転角度が検出可能となる。ピンにより連結した各レバー228,230と、回転角度センサ222とにより、回転角度検出ユニットを構成している。このように、2以上の可変容量ポンプを同時駆動するポンプユニット24において、ポンプケース108またはポンプケース108に固定の部材に回転可能に支持された2以上の支持軸190を備え、各支持軸190は、対応する回転角度センサ222に連結されるとともに、対応する可動斜板90の動きと連動する回転を検出可能とする構成を採用できる。
【0071】
また、図12、14に示すように、各第1レバー228の第2レバー230(図6)結合側とは反対側の端部(図12の左端部)に、水平方向に初期位置設定用のネジ軸232の端部を突き当てている。各ネジ軸232は、ストッパとして機能し、ピストンケース180の上面に固定の部材に立設した板部234に挿通させ、両側からナットを締め付けることで、板部234に対するネジ軸232の突出量を調整可能としている。このため、可動斜板90(図5)の初期位置である初期の傾転角度を任意に設定でき、操作レバーやペダル等の操作子32(図3)が中立位置にあってモータ等のアクチュエータ236(図15参照)の非作動時でも各油圧ポンプ74,82からわずかに作動油が吐出されるようにスタンバイしている。
【0072】
図11に示す回転角度センサ222の検出値は、図示しないコントローラに入力する。コントローラは、可動斜板90(図5)の傾転角度が予め設定した閾値以上に大きくなったと判定すると、比例ソレノイド216に、減圧弁本体218による減圧量を小さくするように制御するための指令信号を出力する。これにより、第四受圧室198(図13)に大きな圧力が導入され、可動斜板90の傾転角度が所望の範囲内に維持されるように規制される。
【0073】
また、コントローラには、エンジン22(図2)からエンジン回転数も入力され、エンジン22の負荷が予め設定した閾値以上に高くなったと判定すると、比例ソレノイド216に、減圧弁本体218による減圧量を小さくするように制御するための指令信号を出力する。この場合、可動斜板90の傾転角度を小さくし、エンジン22の負荷が小さくなるように、可動斜板90の傾転角度が規制される。
【0074】
次に、図15を用いて本実施の形態により得られる効果を説明する。なお、図15は、ポンプ72,74に対するサーボ機構92(または96)、バランスピストン機構94(または98)、及びアクチュエータの接続関係を模式的に表したものである。また、モータのごときアクチュエータ236を1つ示しているが、これは説明の便宜上のためで、実際には、図3に示すように、ギヤポンプ72からはサーボ機構92(または96)及びバランスピストン機構94(または98)に対応するバケットシリンダ60等のシリンダ、走行用モータ34a等のモータ等の並列接続された複数のアクチュエータに、作動油が供給されるようにしている。また、以下の説明では、第1油圧ポンプ74の可動斜板90の傾転角度を制御する場合を代表して説明するが、第1油圧ポンプ82の場合も同様である。図15に示すように、可動斜板90の傾転角度は、サーボ機構92とバランスピストン機構94と可変減圧弁114と固定減圧弁116とにより制御されている。
【0075】
ギヤポンプ72の吐出圧PPLから調整された圧力Pchが、サーボピストン100の第1油路168に導入されている。また、バランスピストン機構94の第一受圧室196には、方向切換弁26aの通過前の一次側の作動油圧力PPが導入されている。また、第二受圧室200には、各方向切換弁26aを通過後の二次側の負荷圧PLが導入されている。また、第三受圧室202には、圧力Pchを固定減圧弁116により減圧して得られた設定ロードセンシング圧ΔPLSが導入されている。また、ピストン本体112の両側に加わる圧力が以下の条件で釣り合うようにしている。
(一次側圧力PP)=(設定ロードセンシング圧ΔPLS)+(負荷圧PL
【0076】
エンジン始動時に、可変減圧弁114による圧力PCONがゼロで、かつ、センタークローズ型の方向切換弁26aが中立位置にある場合にポンプ72,74が駆動されると、図15に示すように第一受圧室196には一次側圧力PP(アンロード圧)が作用し、第三受圧室202には設定ロードセンシング圧ΔPLSが、それぞれ作用する。第二受圧室200に作用する負荷圧PLはゼロであるため、PP>ΔPLS+PLとなり、ピストン本体112が図示位置に移動する。ピストン本体112がこの位置にあるとき前述のアーム部材176(図8)、支持軸190、ネジ軸232(図12)によるストッパによってそれ以上の図15の紙面右方向への移動は阻止され、ピストン本体112と連係するサーボ機構92のスプール102にサーボピストン100が追従し、可動斜板90は油圧ポンプ74から吐出される油量を規定した最小値に維持にするように傾転し待機する。
【0077】
次に、方向切換弁26aを中立位置から外れた作用位置に保持する場合には第二受圧室200への負荷圧力PLが生じるものの、方向切換弁26aの通過前後の差圧に変動がないので、PP=ΔPLS+PLの関係が保たれてピストン本体112がその位置に維持され、油圧ポンプ74から一定の油量が吐出される。これに対して、方向切換弁26aの中立位置から作用位置へ至る切換の過渡的な状態では、それまで堰き止められていた油がアクチュエータ236へ流れ始めた瞬間、一次側圧力PPは低くなり、負荷圧力PLの値に近づく方向に方向切換弁26aの通過前後の差圧が変化する。よって、PP<ΔPLS+PLの関係となる。よって、ピストン本体112に加わる図15の紙面右方向への推力と左方向への推力とのバランスが崩れて、ピストン本体112が、「吐出量大方向」である、図15の左方向へ移動する。これに伴って、サーボ機構92のスプール102及びサーボピストン100が図15の左方向へ移動する。そして、可動斜板90の傾転角度が大きくなり、第1油圧ポンプ74の吐出容量が増える。
【0078】
その後、第1油圧ポンプ74の吐出油量が上昇し、時間経過とともに前記の可変絞り弁の通過前後で差圧の変動が解消し、PP=ΔPLS+PLの関係が成立した時点で、ピストン本体112の図15の紙面右方向への推力が左方向への推力とバランスしてピストン本体112の左方向への移動は停止する。この場合、サーボ機構92を介して可動斜板90の傾転角度がその位置に維持され、第1油圧ポンプ74の吐出油量が一定に維持され、所望のアクチュエータ作動油量が得られる。切換用パイロット弁28a,28bを中立位置にすればアンロード弁118が開放作動しピストン本体112が図15の位置に戻る。
【0079】
このように、ロードセンシングにより、アクチュエータの作業負荷圧に応じて油圧ポンプ74,82の吐出油量を制御できるので、負荷に必要な油圧動力に対する流量を油圧ポンプ74,82から吐出させつつ、油圧ポンプ74,82から吐出される余剰流量の削減を図れる。このため、消費エネルギの低減を図れる。また、ポンプ吐出容量の制御を、バランスピストン機構94,98を構成する受圧室196,198,200,202の圧力変化のみにより行え、アクチュエータの制御をより安定して行える。
【0080】
さらに、斜板操作部である、サーボ機構を設けた従来品のポンプユニットの多くの部品の共通化を図れる。例えば、本実施の形態では、サーボ機構を備えるが、ロードセンシング機能を必要としないポンプユニットに対して、多くの部品を使用して、ポンプユニット24を構成できる。この結果、ポンプユニット24は、サーボ機構を備えるが、ロードセンシング機能を必要としないポンプユニットに対し、多くの部品を共通化できる構造で、消費エネルギの低減を安定して図れるとともに、油圧ポンプ74,82の吐出量をより安定して制御できる。
【0081】
特に、本実施の形態では、旋回モータ16及び右側走行用モータ34bを含む第二アクチュエータ組248を駆動する第2油圧ポンプ82が、左側走行用モータ34aを含む第一アクチュエータ組246を駆動する第1油圧ポンプ74と比べて、単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定している。このため、旋回部である上部構造18を使用する作業を円滑にかつ短時間で行える。例えば、本実施の形態のように、第二アクチュエータ組248がバックホー10のアームシリンダ58等、他のアクチュエータを含む場合に、上部構造18の旋回作業と、アームシリンダ58により掘削部40を使用する作業(例えばアーム52をブーム48に対し上下回動させる作業)とを同時に行う場合でも、上部構造18を円滑にかつ高速で旋回させることができる。これとともに、アーム52の回動動作を円滑にかつ高速で行える。しかも、このような効果を得るために、旋回モータ16の駆動のためのポンプを別に専用に設ける必要はなく、ポンプ装置全体のコンパクト化、低コスト化を図れるとともに、動力源であるエンジン22の動力損失の低減を図れる。この結果、バックホー10において、低コスト化及び動力損失の低減を図れるとともに、上部構造18を使用する作業を円滑かつ短時間に行える構造を実現できる。
【0082】
また、第1油圧ポンプ74は、第2油圧ポンプ82に対し、増速機構80により動力の伝達可能に作動的に連結されており、増速機構80は、第1油圧ポンプ74の回転速度よりも第2油圧ポンプ82の回転速度を増速させる大径歯車76及び小径歯車78を含むことにより、第2油圧ポンプ82は、第1油圧ポンプ74と比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されている。このため、各油圧ポンプ74,82同士で、シリンダブロック154等のポンプ本体部品を多く共用化できるため、よりコストの低減を図れる。なお、図15に示す例では、切換用パイロット弁28a(28b)の作動圧設定用のリリーフ弁243を設けているが、このリリーフ弁243は場合により省略することもできる。
【0083】
図16は、別例のポンプユニット24の油圧回路図である。図16に示す例では、上記の図4等に示した構成の場合と異なり、各バランスピストン機構94,98を構成する第四受圧室198は、油溜め110に通じさせている。また、各バランスピストン機構94,98を構成する第三受圧室202は、それぞれ対応する可変制御減圧弁である可変減圧弁114の二次側に接続している。通常時には、第三受圧室202は、アクチュエータ切換弁である方向切換弁26a,26b(図3参照)の作用位置での定常状態で、方向切換弁26a,26bの通過前後に生じる作動油差圧に相当し、予め設定される設定圧力ΔPLSが導入されるように、可変減圧弁114を制御している。そして、第三受圧室202に導入される作動油圧力を前記設定圧力ΔPLS以下に制御可能としている。例えば、エンジン負荷が所定の閾値以上となったり、可動斜板90の傾転角度が所定の閾値以上となった場合に、第三受圧室202に導入される作動油圧力を、設定圧力ΔPLSよりも小さくなるように、図示しないコントローラが可変減圧弁114の比例ソレノイドを制御し、各バランスピストン機構94,98のピストン本体112を、油圧ポンプ74,82の吐出容量が小さくなるように制御する。
【0084】
このような図16に示す別例のポンプユニット24では、上記の図4に示すポンプユニット24と同様のポンプ吐出油量の制御を行いつつ、その構造で使用していた減圧弁3個(固定減圧弁116と可変減圧弁114(図4))を減圧弁2個に低減できる。しかもエンジン負荷や可動斜板90の傾転角度等の任意の規制条件に応じて、可変圧力を制御する構成を採用することで、規制条件から外れることを有効に防止できる。したがって、ポンプユニット24を使用する装置の高性能化を有効に図れる。
【0085】
なお、図示は省略するが、旋回モータ16の駆動源となる第2油圧ポンプを、第1油圧ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定する構成として、次の別例の2例の構成を採用することもできる。まず、別例の第1例の構成では、第2油圧ポンプは、第1油圧ポンプと比べてそれぞれの本体同士の間での容積差が設けられるように設定する。例えば、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプ同士で、シリンダブロックに形成したシリンダ及び対応するピストンの断面積を異ならせることで、容積差を設ける。そしてこれにより、第2油圧ポンプが、第1油圧ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定する。このような別例の第1例の場合も、上記の実施の形態と同様に、ポンプ装置全体のコンパクト化、低コスト化及び動力損失の低減を図れるとともに、旋回可能な上部構造18を使用する作業が円滑かつ短時間に行える構造を実現できる。
【0086】
また、別例の第2例の構成では、上記の実施の形態と同様に、第1油圧ポンプ74は、第一ポンプ容量変更操作機構として、対応する可動斜板90と、対応する操作ピン106と、対応する第1サーボ機構92及び第1バランスピストン機構94とを含む構成により吐出容量を変更可能とする。また、第2油圧ポンプ82は、対応する可動斜板90と、対応する操作ピン106と、対応する第2サーボ機構96及び第2バランスピストン機構98とを含む構成により吐出容量を変更可能とする。また、第一ポンプ容積変更操作機構及び第二ポンプ容積変更操作機構は、互いの操作量範囲に差が設けられるように設定する。例えば、第2油圧ポンプ82の可動斜板90の最大傾転角度を、第1油圧ポンプ74の可動斜板90の最大傾転角度よりも大きくなるようにする。例えば、ポンプケース108に、可動斜板90、90毎で傾転可能な範囲を異ならせるように規制するストッパを設ける。この構成により、第2油圧ポンプ82が、第1油圧ポンプ74と比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定する。このような別例の第2例の場合も、上記の実施の形態と同様に、ポンプ装置全体のコンパクト化、低コスト化及び動力損失の低減を図れるとともに、旋回可能な上部構造18を使用する作業が円滑かつ短時間に行える構造を実現できる。
【符号の説明】
【0087】
10 バックホー、12 走行装置、14 回転台、16 旋回モータ、18 上部構造、20 機器収容部、22 エンジン、24 ポンプユニット、26a,26b 方向切換弁、28a,28b 切換用パイロット弁、30 運転席、32 操作子、34a,34b 走行用モータ、36 ブレード、38 ブレードシリンダ、40 掘削部、42 揺動支持部、44 軸、46 スイングシリンダ、48 ブーム、50 軸、52 アーム、54 バケット、56 ブームシリンダ、58 アームシリンダ、60 バケットシリンダ、62 エンジン、64 ラジエータ、66 バルブユニット、68 油タンク、70 ギヤケース、72 ギヤポンプ、74 第1油圧ポンプ、76 大径歯車、78 小径歯車、80 増速機構、82 第2油圧ポンプ、84 増速切換弁、86 容積変更アクチュエータ、88 走行切換弁、90 可動斜板、92 第1サーボ機構、94 第1バランスピストン機構、96 第2サーボ機構、98 第2バランスピストン機構、100 サーボピストン、102 スプール、104 バネ、106 操作ピン、108 ポンプケース、108a カバー、110 油溜め、112 ピストン本体、114 可変減圧弁、116 固定減圧弁、118 アンロード弁、120 第1ポンプ軸、122 第2ポンプ軸、124 ケース本体、126 ポートブロック、128 ギヤケース、128a 軸受支持凹部、130 孔部、132 入力軸、134 歯車側空間、136 油孔、136a 横穴、138 プラグ、140 軸方向孔、142 径方向孔、144 弁板、146 供給配管、148 本体部、150 小径部、152 延長部、154 シリンダブロック、156 ピストン、158 ケース、160 凸状面部、162 上面部、164 シリンダ、166 係止溝、168 第1油路、170 第2油路、172 第3油路、174 溝部、176 アーム部材、178 開口部、180 ピストンケース、182 シリンダ、184 上軸、186 下軸、188 フランジ、190 支持軸、192,194 係止溝、196 第一受圧室、198 第四受圧室、200 第二受圧室、202 第三受圧室、204 弁ケース、206 弁体、208 キャップ、210 ネジ軸、212 間座、214 バネ、216 比例ソレノイド、218 減圧弁本体、220 ケーブル、222 回転角度センサ、224 センサ支持部材、226 センサ軸、228 第1レバー、230 第2レバー、232 ネジ軸、234 板部、236 アクチュエータ、238 油路、240,242 クローラベルト、243 リリーフ弁、244 作業車両用油圧回路、246 第一アクチュエータ組、248 第二アクチュエータ組、250 第一回路、252 第二回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ独立して駆動可能な一方側走行部及び他方側走行部を含む走行装置と、
走行装置の上側に旋回可能に設けられた旋回部と、
旋回部に支持された作業部と、
一方側走行部を駆動するアクチュエータである一方側走行用モータと、他方側走行部を駆動するアクチュエータである他方側走行用モータと、旋回部旋回用のアクチュエータである旋回モータとを有する複数種類のアクチュエータを含む作業車両用油圧回路とを備え、
複数種類のアクチュエータは、一方側走行用モータを含む第一アクチュエータ組と、旋回モータと他方側走行用モータとを含む第二アクチュエータ組との2組に分けられており、
作業車両用油圧回路は、第一アクチュエータ組及び第一アクチュエータ組を駆動する第一可変容量ポンプを有する第一回路と、第二アクチュエータ組及び第二アクチュエータ組を駆動する第二可変容量ポンプを有する第二回路とを含み、
旋回モータの駆動源となる第二可変容量ポンプは、第一可変容量ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されていることを特徴とする油圧駆動作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧駆動作業車両において、
前記第一可変容量ポンプは、前記第二可変容量ポンプに対し、ポンプ駆動ギアにより動力の伝達可能に作動的に連結されており、
前記ポンプ駆動ギヤは、前記第一可変容量ポンプの回転速度よりも前記第二可変容量ポンプの回転速度を増速させる増速ギアを含むことにより、前記第二可変容量ポンプは、前記第一可変容量ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されていることを特徴とする油圧駆動作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の油圧駆動作業車両において、
前記第二可変容量ポンプは、前記第一可変容量ポンプと比べてそれぞれの本体同士の間での容積差が設けられることにより、単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されていることを特徴とする油圧駆動作業車両。
【請求項4】
請求項1に記載の油圧駆動作業車両において、
前記第一可変容量ポンプは、第一ポンプ容量変更操作機構により吐出容量を変更可能としており、
前記第二可変容量ポンプは、第二ポンプ容積変更操作機構により吐出容量を変更可能としており、
前記第一ポンプ容積変更操作機構及び第二ポンプ容積変更操作機構は、互いの操作量範囲に差が設けられることにより、前記第二可変容量ポンプは、前記第一可変容量ポンプと比べて単位時間当たり吐出容量の最大値が大きくなるように設定されていることを特徴とする油圧駆動作業車両。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の油圧駆動作業車両において、
前記複数種類のアクチュエータは、それぞれ前記第一アクチュエータ組と前記第二アクチュエータ組とのいずれかに属する、バケット用シリンダ、ブーム用シリンダ、スイング用シリンダ、アーム用シリンダ、及びブレード用シリンダを含むことを特徴とする油圧駆動作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−92864(P2012−92864A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238426(P2010−238426)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】