説明

油圧駆動装置

【課題】エネルギー効率の低下を抑えて複数の油圧アクチュエータに油を確実に分岐供給すること。
【解決手段】ブーム用切換弁120Bからボトム側油室BCaに至る油通路LBaに配設した油圧ポンプモータ30Bと、ブーム用切換弁120Bからヘッド側油室BCbに至る油通路LBbに配設した圧力補償弁130Bと、アーム用切換弁120Aからヘッド側油室ACbに至る油通路LAbに配設した油圧ポンプモータ30Aと、アーム用切換弁120Aからボトム側油室ACaに至る油通路LAaに配設した圧力補償弁130Aと、2つの油圧ポンプモータ30B,30Aにそれぞれ接続した個別の電動モータジェネレータ40B,40Aを制御することにより、油圧シリンダアクチュエータBC,ACへの流量の制御を行うコントローラ80とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動装置に関するもので、詳しくは、共通の油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給してそれぞれを駆動するようにした油圧駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の油圧アクチュエータに対して共通の油圧ポンプから油を分岐供給する場合には、それぞれの油圧アクチュエータに接続された分岐油通路に圧力補償弁を配設するようにしている。圧力補償弁は、それぞれの油圧アクチュエータの負荷圧力に応じて動作し、個々の油圧アクチュエータに至る分岐油通路を最高負荷圧力により絞るものである。
【0003】
従って、分岐油通路に圧力補償弁を設けた油圧駆動装置によれば、複数の油圧アクチュエータの負荷が互いに異なる場合にも低負荷圧力側の油圧アクチュエータにのみ油が供給される事態を防止してそれぞれに所望の圧力の油を供給することができ、複数の油圧アクチュエータを同時に動作させることが可能になる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−19409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように圧力補償弁を適用した油圧駆動装置にあっては、低負荷圧力側の分岐油通路に配設した圧力補償弁において常に圧力損失が発生することになり、エネルギー効率を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。尚、油圧ポンプの供給エネルギーは、(油の吐出流量)×(油の吐出圧力)であり、上述の圧力損失をΔPとすると、エネルギーロスは、(油の通過流量)×ΔPで表されたものとなる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、エネルギー効率の低下を抑えて複数の油圧アクチュエータに油を確実に分岐供給することのできる油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る油圧駆動装置は、共通の油圧ポンプから個別の方向切換弁を介して複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給するようにした油圧駆動装置において、一方の方向切換弁から一方の油圧アクチュエータのボトム側油室に至る分岐油通路に配設した第1の油圧モータと、一方の方向切換弁から前記一方の油圧アクチュエータのヘッド側油室に至る分岐油通路に配設した第1の圧力補償弁と、他方の方向切換弁から他方の油圧アクチュエータのヘッド側油室に至る分岐油通路に配設した第2の油圧モータと、他方の方向切換弁から前記他方の油圧アクチュエータのボトム側油室に至る分岐油通路に配設した第2の圧力補償弁と、前記第1の油圧モータ及び前記第2の油圧モータにそれぞれ接続した個別の電動モータジェネレータと、前記電動モータジェネレータを制御することにより、油圧アクチュエータへの流量の制御を行うコントローラとを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述した油圧駆動装置において、前記第1の油圧モータより上流となる位置の圧力を検出する第1の圧力計と、前記一方の方向切換弁において前記油圧ポンプから前記第1の油圧モータへ至る流路に設けた第1の絞りと、前記第1の絞りよりも下流となる位置の圧力を出力する第1の圧力出力通路と、前記他方の油圧アクチュエータより上流側となる位置の圧力を検出する第2の圧力計と、前記他方の方向切換弁において前記油圧ポンプから前記第2の圧力補償弁へ至る流路に設けた第2の絞りと、前記圧力補償弁よりも下流側となる位置の圧力を出力する第2の圧力出力通路と、前記油圧ポンプの吐出圧力を制御するリリーフ弁とを備え、前記圧力補償弁は、前記第1の圧力出力通路及び前記第2の圧力出力通路のいずれか高い方の圧力によって制御されるものであり、前記コントローラは、前記第2の圧力計の検出した圧力に基づいて前記第1の油圧モータより上流となる位置の目標圧力を設定し、この目標圧力に基づいて前記リリーフ弁のリリーフ圧力を制御し、前記第1の圧力計の検出した圧力で前記電動モータジェネレータを制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述した油圧駆動装置において、前記方向切換弁の動作を制御する操作弁と、前記第1の油圧モータより下流となる位置の圧力を出力する第1の圧力出力通路と、前記他方の方向切換弁において前記油圧ポンプから前記第2の圧力補償弁に至る流路に設けた絞りと、前記第2の圧力補償弁よりも下流となる位置の圧力を出力する第2の圧力出力通路と、前記油圧ポンプの吐出圧力を制御するリリーフ弁とを備え、前記コントローラは、前記第1の圧力出力通路及び前記第2の圧力出力通路のいずれか高い方の圧力で前記リリーフ弁のリリーフ圧力を制御し、前記操作弁の操作量に応じて前記電動モータジェネレータを制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、共通の油圧ポンプから個別の方向切換弁を介して複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給するようにした油圧駆動装置において、一方の方向切換弁から一方の油圧アクチュエータの油室に至る分岐油通路に配設した油圧モータと、他方の方向切換弁から他方の油圧アクチュエータの油室に至る分岐油通路に配設した圧力補償弁と、前記第1の油圧モータに接続した電動モータジェネレータと、前記電動モータジェネレータを制御することにより、油圧アクチュエータへの流量の制御を行うコントローラとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低負荷圧力側の分岐油通路に配設した電動モータジェネレータを制御することによって圧力補償機能を確保することができ、複数の油圧アクチュエータに対して所望圧力の油を供給することができる。しかも油圧モータにより電動モータジェネレータを駆動することによって電気エネルギーを回収することができるため、エネルギー効率が低下する事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である油圧駆動装置の油圧回路図である。
【図2】図2は、図1に示した油圧駆動装置のコントローラが実施する処理のブロック線図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2である油圧駆動装置の油圧回路図である。
【図4】図4は、図3に示した油圧駆動装置のコントローラが実施する処理のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る油圧駆動装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である油圧駆動装置の油圧回路図を示したものである。ここで例示する油圧駆動装置は、例えばブーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)BC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)ACを備え、これらの油圧シリンダアクチュエータBC,ACに対して共通の油圧ポンプ10から油の供給制御を行うことにより所望の作業を行うようにした建設機械に適用されるものである。
【0015】
油圧ポンプ10は、建設機械に搭載されたエンジン(原動機)11によって駆動される可変容量型のもので、容量制御ユニット212を備えている。容量制御ユニット212は、油圧ポンプ10の斜板を駆動するポンプ容量制御シリンダ212aと、ポンプ容量制御シリンダ212aに対する油の供給制御を行うポンプ容量制御バルブ212bとを備えて構成したものである。この容量制御ユニット212では、後述するコントローラ80から圧力指令信号が与えられると、ポンプ容量制御バルブ212bが適宜駆動してポンプ容量制御シリンダ212aに油が供給されることになり、圧力指令信号に応じて油圧ポンプ10の容量を変更することで圧力を設定変更することが可能となる。
【0016】
油圧ポンプ10の吐出口に接続された主油通路1は、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油を分岐供給すべくブーム用分岐油通路2及びアーム用分岐油通路3に2分岐している。これら分岐油通路2,3には、それぞれ方向切換弁120B,120Aが設けてある。
【0017】
ブーム用分岐油通路2に設けた方向切換弁(以下、「ブーム用切換弁120B」という)は、図示せぬブーム用操作レバーが操作された場合に2つのアクチュエータポートPa,Pb及び2つのバイパスポートPc,Pdに対して、2つの供給ポートPe,Pf、2つのドレンポートPg,Ph、負荷圧出力ポートPiを切換接続するものである。
【0018】
具体的に説明すると、ブーム用切換弁120Bは、中立位置にある場合、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaに通じる第1アクチュエータポートPb、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのヘッド側油室BCbに通じる第1バイパスポートPc、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaに通じる第2バイパスポートPd、2つの供給ポートPe,Pf、負荷圧出力ポートPiをそれぞれ閉塞した状態に維持するとともに、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのヘッド側油室BCbに通じる第2アクチュエータポートPaをドレンポートPg,Phに接続する。
【0019】
この状態からブーム用操作レバー(図示せず)を操作して図1に示す第1位置となると、ブーム用切換弁120Bは、一方の供給ポートPf及び負荷圧出力ポートPiと第1アクチュエータポートPbとを接続する一方、第1バイパスポートPcと一方のドレンポートPgとを接続する。
【0020】
また、この第1位置においては、もう1つの供給ポートPe、もう1つのドレンポートPh、第2アクチュエータポートPa、第2バイパスポートPdをそれぞれ閉塞する。
【0021】
これに対してブーム用操作レバー(図示せず)を逆方向に操作して第2位置となると、ブーム用切換弁120Bは、一方の供給ポートPeと第2アクチュエータポートPaとを接続するとともに、第1アクチュエータポートPb及び第2バイパスポートPdと一方のドレンポートPhとを接続し、さらに負荷圧出力ポートPiと第1バイパスポートPcとを接続する。また、この第2位置においては、もう1つの供給ポートPf及びもう1つのドレンポートPgをそれぞれ閉塞する。
【0022】
ブーム用切換弁120Bの2つの供給ポートPe,Pfにはそれぞれブーム用分岐油通路2が接続してあり、2つのドレンポートPg,Phにはそれぞれ油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。第2バイパスポートPdには、後述する油圧ポンプモータ30Bとブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaとの間の油通路LBaから分岐した供給圧出力油路LhBが接続してある。負荷圧出力ポートPiには、ブーム側負荷圧出力通路(第1の圧力出力通路)15bが接続してある。負荷圧出力ポートPiは、供給ポートPe,Pfからブーム用油圧シリンダアクチュエータBCに油が供給された場合にその供給圧力を負荷圧力として出力するためのものである。
【0023】
図からも明らかなように、上記ブーム用切換弁120Bには、第1位置において供給ポートPfと第1アクチュエータポートPbとを接続する流路に絞り(第1の絞り)120Bs1が構成してあり、第2位置において供給ポートPeと第2アクチュエータポートPaとを接続する流路に絞り120Bs2が構成してあり、さらに第2位置において第2バイパスポートPdと一方のドレンポートPhとを接続する流路に絞り120Bs3が構成してある。
【0024】
一方、アーム用分岐油通路3に設けた方向切換弁(以下、「アーム用切換弁120A」という)は、図示せぬアーム用操作レバーが操作された場合に2つのアクチュエータポートPa,Pb及び2つのバイパスポートPc,Pdに対して、2つの供給ポートPe,Pf、2つのドレンポートPg,Ph、負荷圧出力ポートPiを切換接続するものである。
【0025】
具体的に説明すると、アーム用切換弁120Aは、中立位置にある場合、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbに通じる第2アクチュエータポートPa、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaに通じる第1バイパスポートPc、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbに通じる第2バイパスポートPd、2つの供給ポートPe,Pf、負荷圧出力ポートPiをそれぞれ閉塞した状態に維持するとともに、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaに通じる第1アクチュエータポートPbをドレンポートPg,Phに接続する。
【0026】
この状態からアーム用操作レバー(図示せず)を操作して図1に示す第1位置となると、アーム用切換弁120Aは、一方の供給ポートPfと第1アクチュエータポートPbとを接続するとともに、第2アクチュエータポートPa及び第2バイパスポートPdと一方のドレンポートPgとを接続し、さらに負荷圧出力ポートPiと第1バイパスポートPcとを接続する。また、この第1位置においては、もう1つの供給ポートPe、もう1つのドレンポートPhをそれぞれ閉塞する。
【0027】
これに対してアーム用操作レバー(図示せず)を逆方向に操作して第2位置となると、アーム用切換弁120Aは、一方の供給ポートPe及び負荷圧出力ポートPiと第2アクチュエータポートPaとを接続する一方、第1バイパスポートPcと一方のドレンポートPhとを接続する。また、この第2位置においては、第1アクチュエータポートPb、もう1つの供給ポートPf、もう1つのドレンポートPg、第2バイパスポートPdをそれぞれ閉塞する。
【0028】
アーム用切換弁120Aの2つの供給ポートPe,Pfにはそれぞれアーム用分岐油通路3が接続してあり、2つのドレンポートPg,Phにはそれぞれ油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。アーム用切換弁120Aの第2バイパスポートPdには、後述する油圧ポンプモータ30Aとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbとの間の油通路LAbから分岐した供給圧出力油路LhAが接続してある。負荷圧出力ポートPiには、アーム側負荷圧出力通路(第2の圧力出力通路)15aが接続してある。負荷圧出力ポートPiは、供給ポートPe,Pfからアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油が供給された場合にその供給圧力を負荷圧力として出力するためのものである。
【0029】
ブーム側負荷圧出力通路15b及びアーム側負荷圧出力通路15aは、高圧選択弁16を介して負荷圧出力通路15に接続してある。負荷圧出力通路15は、高圧選択弁16によって選択された圧力を負荷パイロット圧力として後述する2つの圧力補償弁130B,130Aにそれぞれ作用させるものである。高圧選択弁16は、ブーム用切換弁120Bからブーム用油圧シリンダアクチュエータBCに供給される油の負荷圧力及びアーム用切換弁120Aからアーム用油圧シリンダアクチュエータACに供給される油の負荷圧力のうちの高い方の圧力を負荷圧出力通路15に出力するものである。
【0030】
図からも明らかなように、アーム用切換弁120Aには、第1位置において供給ポートPfと第1アクチュエータポートPbとを接続する流路に絞り(第2の絞り)120As1が構成してあり、第1位置において第2バイパスポートPdとドレンポートPgとを接続する流路に絞り120As2が構成してあり、さらに第2位置において供給ポートPeと第2アクチュエータポートPaとを接続する流路に絞り120As3が構成してある。
【0031】
さらに、上記油圧駆動装置には、分岐油通路2,3において切換弁120B,120Aとそれぞれの油圧シリンダアクチュエータBC,ACとの間の一方の油通路LBa,LAbに油圧ポンプモータ(油圧モータ)30B,30Aを配設する一方、他方の油通路LBb,LAaに圧力補償弁130B,130Aを配設するようにしている。
【0032】
より具体的に説明すると、ブーム用分岐油通路2においてブーム用切換弁120Bの第2アクチュエータポートPaとブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのヘッド側油室BCbとの間の油通路LBbに圧力補償弁130Bを配設する一方、ブーム用分岐油通路2においてブーム用切換弁120Bの第1アクチュエータポートPbとブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaとの間の油通路LBaに油圧ポンプモータ30Bを配設している。
【0033】
これに対しアーム用分岐油通路3においてアーム用切換弁120Aの第2アクチュエータポートPaとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbとの間の油通路LAbに油圧ポンプモータ30Aを配設する一方、アーム用分岐油通路3においてアーム用切換弁120Aの第1アクチュエータポートPbとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaとの間の油通路LAaに圧力補償弁130Aを配設している。
【0034】
油圧ポンプモータ30B,30Aは、個々の入出力軸30aに電動モータジェネレータ40B,40Aを連結したものである。それぞれの油圧ポンプモータ30B,30Aは、油通路LBa,LAbに油が供給された場合にモータ動作することにより電動モータジェネレータ40B,40Aを駆動して発電動作させる一方、電動モータジェネレータ40B,40Aが電動動作した場合に駆動されてポンプ動作する機能を有している。尚、以下においては、ブーム用切換弁120Bによって油が供給制御される油圧ポンプモータをブーム用油圧ポンプモータ30Bと称し、アーム用切換弁120Aによって油が供給制御される油圧ポンプモータをアーム用油圧ポンプモータ30Aと称して両者を区別する場合がある。
【0035】
個々の電動モータジェネレータ40B,40Aには、それぞれ個別のインバータ50を介して共通の蓄電装置60が接続してある。この蓄電装置60は、電動モータジェネレータ40B,40Aが発電動作した場合に蓄電を行う一方、電動モータジェネレータ40B,40Aを電動動作させる際には電源となるものである。
【0036】
圧力補償弁130B,130Aは、それぞれ通常状態においては油通路LBb,LAaを閉塞しており、上流側の油圧が負荷圧出力通路15から作用される負荷パイロット圧力以上となった場合にのみ油通路LBb,LAaの下流への油の通過を許容するものである。
【0037】
尚、図1中の符号13は、主油通路1において油圧ポンプ10の吐出口と分岐油通路2,3の分岐点との間に設けたリリーフ弁13である。このリリーフ弁13は、常時閉状態を維持する一方、主油通路1の油圧が後述するコントローラ80によって設定されたリリーフ圧力を超えた場合に主油通路1の油をリリーフするように構成してある。
【0038】
さらに、上記油圧駆動装置には、コントローラ80が設けてある。コントローラ80は、それぞれの油圧シリンダアクチュエータBC,ACの負荷圧力及び蓄電装置60の蓄電量を検出し、これらの検出結果に基づいてインバータ50を介した電動モータジェネレータ40B,40Aの動作制御を行うものである。
【0039】
以下、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACをそれぞれ伸長動作させる際の動作を例示しながら、上述したコントローラ80の具体的な制御内容について詳述する。
【0040】
まず、コントローラ80は、ブーム用切換弁120B及びアーム用切換弁120Aがそれぞれ中立位置に配置された状態にある場合、ブーム用分岐油通路2においてブーム用油圧ポンプモータ30Bとブーム用切換弁120Bとの間の油通路LBa1に介在させた第2圧力センサ(第1の圧力計)S2の検出結果からアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力を検出する。
【0041】
図1に示すように、ブーム用操作レバー(図示せず)の操作によってブーム用切換弁120Bが第1位置となり、かつアーム用操作レバー(図示せず)の操作によってアーム用切換弁120Aが第1位置となったことを検出したコントローラ80は、アーム側第1圧力センサS1Aaで検出した負荷圧力に対して第2圧力センサS2の目標圧力を設定し、さらに切換弁120B,120Aの絞り120Bs1,120As1での圧力損失に相当する分だけ高い圧力をポンプ目標吐出圧力として設定し、油圧ポンプ10の吐出圧力がポンプ目標吐出圧力となるように容量制御ユニット212のポンプ容量制御バルブ212bに圧力指令信号を与えるとともに、リリーフ弁13がリリーフ圧力となるように制御信号を出力する。コントローラ80が設定するリリーフ圧力は、ポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である。
【0042】
ポンプ目標吐出圧力を設定したコントローラ80は、第2圧力センサS2の検出結果が、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力に一致するように電動モータジェネレータ40Bのトルク制御を行う。
【0043】
いま、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が100kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が200kg/cmのとき、アーム側第1圧力センサS1Aaで検出したアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が200kg/cmであるとすると、コントローラ80は、第2圧力センサS2の目標圧力を、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力に一致した200kg/cmに設定する。またコントローラ80は、第2圧力センサS2の目標圧力に対して切換弁120B,120Aでの圧力損失分、例えば20kg/cmを加算した値220kg/cmをポンプ目標吐出圧力として設定し、さらにポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である230kg/cmをリリーフ弁13のリリーフ圧力として設定する。目標圧力を設定した後、コントローラ80は、図2に示すブロック線図に従い、油通路LBa1に介在させた第2圧力センサS2の検出結果が目標圧力である200kg/cmとなるように電動モータジェネレータ40Bのトルクを制御する。
【0044】
この状態においては、図1に示すように、ブーム用切換弁120Bの負荷圧出力ポートPiにブーム用油圧ポンプモータ30Bよりも上流側となる流路の圧力(ほぼ200kg/cm)が出力され、アーム用切換弁120Aの負荷圧出力ポートPiにアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力である200kg/cmが出力される。従って、負荷圧出力通路15には、200kg/cmが出力されることになる。
【0045】
油圧ポンプ10から主油通路1に吐出された油は、それぞれの切換弁120B,120Aを通過し、さらにブーム用油圧ポンプモータ30Bを通じてブーム用油圧シリンダアクチュエータBCに供給されるとともに、圧力補償弁130Aを通じてアーム用油圧シリンダアクチュエータACに供給される。
【0046】
この場合、アーム用分岐油通路3(油通路LAa)においては、アーム用切換弁120Aにおいて圧力損失20kg/cmが発生した後、圧力補償弁130Aを押し開いて油通路を絞ることなくアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油が供給される。
【0047】
一方、ブーム用分岐油通路2(油通路LBa1,LBa)においては、油圧が200kg/cmとなるまでブーム用油圧ポンプモータ30Bに油を通過させないように電動モータジェネレータ40Bがトルク制御されることになり、低負荷圧力側となるブーム用油圧シリンダアクチュエータBCにのみ油が供給される事態を防止することができるようになる。しかも、ブーム用分岐油通路2(油通路LBa1,LBa)では、ブーム用油圧ポンプモータ30Bにおいて油圧が200kg/cmから100kg/cmに降下(減圧)されることになり、ブーム用油圧ポンプモータ30Bがモータ動作し、電動モータジェネレータ40Bが発電動作する。これにより、油圧ポンプ10の駆動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができ、エネルギー効率が低下する事態を防止することができる。
【0048】
尚、蓄電装置60の蓄電量が過小であると判断した場合、コントローラ80は、第2圧力センサS2の目標圧力、ポンプ目標吐出圧力及びリリーフ圧力をそれぞれ上記の例よりも高く設定する。例えば、第2圧力センサS2の目標圧力を230kg/cm、ポンプ目標吐出圧力を250kg/cm、リリーフ圧力を260kg/cmに設定すると、ブーム用分岐油通路2(油通路LBa1,LBa)では、ブーム用油圧ポンプモータ30Bにおいて油圧が230kg/cmから100kg/cmに降下(減圧)されることになり、電動モータジェネレータ40Bでの発電量を増大させることが可能となる。
【0049】
次に、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力がアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力よりも大きい場合について説明する。例えば、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が200kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が100kg/cmのとき、アーム側第1圧力センサS1Aaで検出したアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が100kg/cmであるとすると、コントローラ80は、第2圧力センサS2の目標圧力を、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力に一致した100kg/cmに設定する。またコントローラ80は、第2圧力センサS2の目標圧力に対して切換弁120B,120Aでの圧力損失分、例えば20kg/cmを加算した値120kg/cmをポンプ目標吐出圧力として設定し、さらにポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である130kg/cmをリリーフ弁13のリリーフ圧力として設定する。目標圧力を設定した後、コントローラ80は、図2に示すブロック線図に従い、油通路LBa1に介在させた第2圧力センサS2の検出結果が目標圧力である100kg/cmとなるように電動モータジェネレータ40Bのトルクを制御する。
【0050】
この状態においては、ブーム用切換弁120Bの負荷圧出力ポートPiにブーム用油圧ポンプモータ30Bよりも上流側となる流路の圧力(ほぼ100kg/cm)が出力される。アーム用切換弁120Aの負荷圧出力ポートPiには、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力である100kg/cmが出力される。従って、負荷圧出力通路15に100kg/cmが出力されることになる。
【0051】
油圧ポンプ10から主油通路1に吐出された油は、それぞれの切換弁120B,120Aを通過し、さらにブーム用油圧ポンプモータ30Bを通じてブーム用油圧シリンダアクチュエータBCに供給されるとともに、圧力補償弁130Aを通じて油通路を絞ることなくアーム用油圧シリンダアクチュエータACに供給される。
【0052】
一方、ブーム用分岐油通路2(油通路LBa1,LBa)においては、ブーム用油圧ポンプモータ30Bにおいて油圧を100kg/cmから200kg/cmに昇圧する必要があるため、コントローラ80によって電動モータジェネレータ40Bが電動動作するように制御され、ブーム用油圧ポンプモータ30Bがポンプ動作する。
【0053】
ここで、上述の状態においては、蓄電装置60が放電状態となる。従って、コントローラ80は、ブーム用油圧ポンプモータ30Bにおいて油圧を100kg/cmから200kg/cmに昇圧するほどの蓄電量が蓄電装置60に無いと判断した場合、第2圧力センサS2の目標圧力を、例えば100kg/cm→150kg/cm(+50kg/cm)、ポンプ目標吐出圧力を120kg/cm→170kg/cm(+50kg/cm)、さらにリリーフ弁13のリリーフ圧力を130kg/cm→180kg/cm(+50kg/cm)にそれぞれ設定する。この設定状態においては、ブーム用油圧ポンプモータ30Bにおいて油圧を150kg/cmから200kg/cmに昇圧すれば良いため、蓄電装置60の消費電力を抑制することができる。尚、圧力補償弁130Aにおいては、油圧が150kg/cmから100kg/cmに減圧してアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油が供給されることになる。
【0054】
尚、この実施の形態1の油圧駆動装置では、アーム用分岐油通路3においてアーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbとアーム用切換弁120Aとの間の油通路LAbにもアーム用油圧ポンプモータ30Aが配設してある。従って、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbから返却される油によってアーム用油圧ポンプモータ30Aをモータ動作させ、これに連結した電動モータジェネレータ40Aを駆動して発電動作させることができ、エネルギー効率をさらに向上させることが可能である。この場合、コントローラ80は、アーム用油圧ポンプモータ30Aとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbとの間の油通路LAbに介在させた第1圧力センサS1Abの検出圧力が、図示せぬアーム用操作レバーのレバー変位、アーム用油圧ポンプモータ30Aに対する油の流入流量によって決定される目標圧力となるように、電動モータジェネレータ40Aの駆動を制御する。
【0055】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2である油圧駆動装置の油圧回路図を示したものである。ここで例示する油圧駆動装置は、実施の形態1と同様に、ブーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)BC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータ(油圧アクチュエータ)ACを備え、これらの油圧シリンダアクチュエータBC,ACに対して共通の油圧ポンプ10から油の供給制御を行うことにより所望の作業を行うようにした建設機械に適用されるもので、実施の形態1とは、方向切換弁の詳細構成及びコントローラが実行する処理の詳細内容が異なっている。尚、実施の形態2において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0056】
実施の形態2の油圧駆動装置においてブーム用分岐油通路2に設けた方向切換弁(以下、「ブーム用切換弁120B′」という)は、ブーム用操作レバーBSが操作された場合にブーム用操作弁BSVから出力される操作パイロット圧によって動作し、2つのアクチュエータポートPa,Pb及び2つのバイパスポートPc,Pdに対して、2つの供給ポートPe,Pf、2つのドレンポートPg,Ph、負荷圧出力ポートPiを切換接続するものである。
【0057】
具体的に説明すると、ブーム用切換弁120B′は、中立位置にある場合、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaに通じる第1アクチュエータポートPb、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのヘッド側油室BCbに通じる第1バイパスポートPc、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaに通じる第2バイパスポートPd、2つの供給ポートPe,Pf、負荷圧出力ポートPiをそれぞれ閉塞した状態に維持するとともに、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのヘッド側油室BCbに通じる第2アクチュエータポートPaをドレンポートPg,Phに接続する。
【0058】
この状態からブーム用操作レバーBSを操作して図3に示す第1位置となると、ブーム用切換弁120B′は、一方の供給ポートPfと第1アクチュエータポートPbとを接続する一方、第1バイパスポートPcと一方のドレンポートPgとを接続し、さらに負荷圧出力ポートPiと第2バイパスポートPdとを接続する。また、この第1位置においては、もう1つの供給ポートPe、もう1つのドレンポートPh、第2アクチュエータポートPaをそれぞれ閉塞する。
【0059】
これに対してブーム用操作レバーBSを逆方向に操作して第2位置となると、ブーム用切換弁120B′は、一方の供給ポートPeと第2アクチュエータポートPaとを接続するとともに、第1アクチュエータポートPb及び第2バイパスポートPdと一方のドレンポートPhとを接続し、さらに負荷圧出力ポートPiと第1バイパスポートPcとを接続する。また、この第2位置においては、もう1つの供給ポートPf及びもう1つのドレンポートPgをそれぞれ閉塞する。
【0060】
ブーム用切換弁120B′の2つの供給ポートPe,Pfにはそれぞれブーム用分岐油通路2が接続してあり、2つのドレンポートPg,Phにはそれぞれ油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。第2バイパスポートPdには、ブーム用油圧ポンプモータ(油圧モータ)30Bとブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaとの間の油通路LBaから分岐した供給圧出力油路LhBが接続してある。負荷圧出力ポートPiには、ブーム側負荷圧出力通路(第1の圧力出力通路)15bが接続してある。
【0061】
図からも明らかなように、上記ブーム用切換弁120B′には、第2位置において供給ポートPeと第2アクチュエータポートPaとを接続する流路に絞り120Bs2′が構成してあり、第2位置において第2バイパスポートPdと一方のドレンポートPhとを接続する流路に絞り120Bs3′が構成してある。
【0062】
一方、アーム用分岐油通路3に設けた方向切換弁(以下、「アーム用切換弁120A′」という)は、アーム用操作レバーASが操作された場合にアーム用操作弁ASVから出力される操作パイロット圧によって動作し、2つのアクチュエータポートPa,Pb及び2つのバイパスポートPc,Pdに対して、2つの供給ポートPe,Pf、2つのドレンポートPg,Ph、負荷圧出力ポートPiを切換接続するものである。
【0063】
具体的に説明すると、アーム用切換弁120A′は、中立位置にある場合、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbに通じる第2アクチュエータポートPa、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaに通じる第1バイパスポートPc、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbに通じる第2バイパスポートPd、2つの供給ポートPe,Pf、負荷圧出力ポートPiをそれぞれ閉塞した状態に維持するとともに、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaに通じる第1アクチュエータポートPbをドレンポートPg,Phに接続する。
【0064】
この状態からアーム用操作レバーASを操作して図3に示す第1位置となると、アーム用切換弁120A′は、一方の供給ポートPfと第1アクチュエータポートPbとを接続するとともに、第2アクチュエータポートPa及び第2バイパスポートPdと一方のドレンポートPgとを接続し、さらに負荷圧出力ポートPiと第1バイパスポートPcとを接続する。また、この第1位置においては、もう1つの供給ポートPe、もう1つのドレンポートPhをそれぞれ閉塞する。
【0065】
これに対してアーム用操作レバーASを逆方向に操作して第2位置となると、アーム用切換弁120A′は、一方の供給ポートPeと第2アクチュエータポートPaとを接続する一方、第1バイパスポートPcと一方のドレンポートPhとを接続し、さらに第2バイパスポートPdと負荷圧出力ポートPiとを接続する。また、この第2位置においては、第1アクチュエータポートPb、もう1つの供給ポートPf、もう1つのドレンポートPgをそれぞれ閉塞する。
【0066】
アーム用切換弁120A′の2つの供給ポートPe,Pfにはそれぞれアーム用分岐油通路3が接続してあり、2つのドレンポートPg,Phにはそれぞれ油タンクTに至るドレン通路4が接続してある。アーム用切換弁120A′の第2バイパスポートPdには、後述するアーム用油圧ポンプモータ(油圧モータ)30Aとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbとの間の油通路LAbから分岐した供給圧出力油路LhAが接続してある。負荷圧出力ポートPiには、アーム側負荷圧出力通路(第2の圧力出力通路)15aが接続してある。負荷圧出力ポートPiは、供給ポートPe,Pfからアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油が供給された場合にその供給圧力を負荷圧力として出力するためのものである。
【0067】
ブーム側負荷圧出力通路15b及びアーム側負荷圧出力通路15aは、高圧選択弁16を介して負荷圧出力通路15に接続してある。負荷圧出力通路15は、高圧選択弁16によって選択された圧力を負荷パイロット圧力として後述する2つの圧力補償弁130B,130Aにそれぞれ作用させるものである。高圧選択弁16は、ブーム用切換弁120B′からブーム用油圧シリンダアクチュエータBCに供給される油の供給圧力及びアーム用切換弁120A′からアーム用油圧シリンダアクチュエータACに供給される油の供給圧力のうちの高い方の圧力を負荷圧出力通路15に出力するものである。
【0068】
図からも明らかなように、アーム用切換弁120A′には、第1位置において供給ポートPfと第1アクチュエータポートPbとを接続する流路に絞り(絞り)120As1′が構成してあり、第1位置において第2バイパスポートPdとドレンポートPgとを接続する流路に絞り120As2′が構成してある。
【0069】
以下、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBC及びアーム用油圧シリンダアクチュエータACをそれぞれ伸張動作させる際の動作を例示しながら、コントローラ80′の具体的な制御内容について詳述する。尚、初期状態においては、ブーム用切換弁120B′及びアーム用切換弁120A′のそれぞれが中立位置にあり、油圧ポンプモータ30B,30Aが停止した状態にあるものとする。
【0070】
図3に示すように、ブーム用操作レバーBSの操作によってブーム用切換弁120B′が第1位置となり、かつアーム用操作レバーASの操作によってアーム用切換弁120A′が第1位置となると、油圧ポンプ10から主油通路1に吐出された油がそれぞれの分岐油通路2,3に分岐され、ブーム用油圧ポンプモータ30Bを介してブーム用油圧シリンダアクチュエータBCのボトム側油室BCaに供給されるとともに、圧力補償弁130Aを介してアーム用油圧シリンダアクチュエータACのボトム側油室ACaに供給されることになる。
【0071】
この間、コントローラ80′は、図4に示すように、ブーム用操作レバーBSのレバー変位を読み取り、そのレバー変位からブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの目標流量を算出する。次いで、コントローラ80′は、算出した目標流量から油圧ポンプモータ30Bの目標回転数を設定し、油圧ポンプモータ30Bの回転数がこの目標回転数となるように電動モータジェネレータ40Bの動作制御を行う。
【0072】
またコントローラ80′は、負荷圧出力通路15に介在させた第3圧力センサS3の検出結果に応じてポンプ目標吐出圧力及びリリーフ圧力を設定し、このポンプ目標吐出圧力となるように容量制御ユニット212のポンプ容量制御バルブ212bに圧力指令信号を与えるとともに、リリーフ弁13がリリーフ圧力となるように制御信号を出力する。コントローラ80′が設定するリリーフ圧力は、ポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である。
【0073】
いま、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が100kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が200kg/cmであるものとすると、ブーム用切換弁120B′の負荷圧出力ポートPiから100kg/cmが出力されるとともに、アーム用切換弁120A′の負荷圧出力ポートPiから200kg/cmが出力されるため、第3圧力センサS3の検出圧力が200kg/cmとなる。このため、コントローラ80′は、第3圧力センサS3の検出した圧力に対して切換弁120A′での圧力損失分、例えば20kg/cmを加算した値220kg/cmをポンプ目標吐出圧力として設定し、さらにポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である230kg/cmをリリーフ弁13のリリーフ圧力として設定する。
【0074】
油圧ポンプ10から主油通路1に吐出された油は、それぞれの切換弁120B′,120A′を通過し、さらにブーム用油圧ポンプモータ30Bを通じてブーム用油圧シリンダアクチュエータBCに供給されるとともに、圧力補償弁130Aを通じてアーム用油圧シリンダアクチュエータACに供給される。
【0075】
この場合、アーム用分岐油通路3においては、アーム用切換弁120A′において圧力損失20kg/cmが発生した後、圧力補償弁130Aを押し開いてアーム用油圧シリンダアクチュエータACに油が供給される。
【0076】
一方、ブーム用切換弁120B′では圧力損失がほとんど発生しないため、油通路LBa1まで220kg/cmとなり、ブーム用油圧ポンプモータ30Bにおいて油圧が220kg/cmから100kg/cmに降下(減圧)する。このため、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに油が供給された場合にこれがモータ動作し、電動モータジェネレータ40Bがブーム用油圧ポンプモータ30Bにより駆動されて発電動作することになる。これにより、油圧ポンプ10の駆動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができ、エネルギー効率が低下する事態を防止することができる。
【0077】
次に、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力がアーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力よりも大きい場合について説明する。例えば、ブーム用油圧シリンダアクチュエータBCの負荷圧力が200kg/cm、アーム用油圧シリンダアクチュエータACの負荷圧力が100kg/cmであるとすると、ブーム用切換弁120B′の負荷圧出力ポートPiから200kg/cmが出力されるとともに、アーム用切換弁120A′の負荷圧出力ポートPiから100kg/cmが出力されるため、第3圧力センサS3の検出圧力が200kg/cmとなる。このため、コントローラ80′は、第3圧力センサS3の検出した圧力に対してアーム用切換弁120A′での圧力損失分、例えば20kg/cmを加算した値220kg/cmをポンプ目標吐出圧力として設定し、さらにポンプ目標吐出圧力よりも高い圧力である230kg/cmをリリーフ弁13のリリーフ圧力として設定する。
【0078】
油圧ポンプ10から主油通路1に吐出された油は、それぞれの切換弁120B′,120A′を通過し、さらにブーム用油圧ポンプモータ30Bを通じてブーム用油圧シリンダアクチュエータBCに供給されるとともに、圧力補償弁130Aを通じてアーム用油圧シリンダアクチュエータACに供給される。
【0079】
この場合、アーム用分岐油通路3においては、アーム用切換弁120A′の第1アクチュエータポートPbから吐出される油の圧力が200kg/cmとなるように圧力補償弁130Aが作用することになり、低負荷圧力側となるアーム用油圧シリンダアクチュエータACにのみ油が供給される事態を防止することができるようになる。
【0080】
一方、ブーム用分岐油通路2においては、ブーム用切換弁120B′で圧力損失はほとんど発生せず、油通路LBa1まで220kg/cmとなり、ブーム用油圧ポンプモータ30Bにおいて油圧が220kg/cmから200kg/cmに降下(減圧)するため、ブーム用油圧ポンプモータ30Bに油が供給された場合にこれがモータ動作し、電動モータジェネレータ40Bがブーム用油圧ポンプモータ30Bにより駆動されて発電動作することになる。これにより、油圧ポンプ10の駆動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができ、エネルギー効率が低下する事態を防止することができる。
【0081】
尚、この実施の形態2の油圧駆動装置では、アーム用分岐油通路3においてアーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbとアーム用切換弁120A′との間の油通路LAbにもアーム用油圧ポンプモータ30Aが配設してある。従って、アーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbから返却される油によってアーム用油圧ポンプモータ30Aをモータ動作させ、これに連結した電動モータジェネレータ40Aを駆動して発電動作させることができ、エネルギー効率をさらに向上させることが可能である。この場合、コントローラ80′は、アーム用油圧ポンプモータ30Aとアーム用油圧シリンダアクチュエータACのヘッド側油室ACbとの間の油通路LAbに介在させた第1圧力センサS1Abの検出圧力が、アーム用操作レバーASのレバー変位、アーム用油圧ポンプモータ30Aに対する油の流入流量によって決定される目標圧力となるように、電動モータジェネレータ40Aの駆動を制御する。
【符号の説明】
【0082】
2,3 分岐油通路
15,15b,15a 負荷圧出力通路
30B,30A 油圧ポンプモータ
40B,40A 電動モータジェネレータ
60 蓄電装置
80,80′ コントローラ
120As1,120As1′ 絞り
120B,120A,120B′,120A′ 方向切換弁
120Bs1 絞り
130B,130A 圧力補償弁
BC,AC 油圧シリンダアクチュエータ
BCa,ACa ボトム側油室
BCb,ACb ヘッド側油室
S1Aa アーム側第1圧力センサ
S2 第2圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の油圧ポンプから個別の方向切換弁を介して複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給するようにした油圧駆動装置において、
一方の方向切換弁から一方の油圧アクチュエータのボトム側油室に至る分岐油通路に配設した第1の油圧モータと、
一方の方向切換弁から前記一方の油圧アクチュエータのヘッド側油室に至る分岐油通路に配設した第1の圧力補償弁と、
他方の方向切換弁から他方の油圧アクチュエータのヘッド側油室に至る分岐油通路に配設した第2の油圧モータと、
他方の方向切換弁から前記他方の油圧アクチュエータのボトム側油室に至る分岐油通路に配設した第2の圧力補償弁と、
前記第1の油圧モータ及び前記第2の油圧モータにそれぞれ接続した個別の電動モータジェネレータと、
前記電動モータジェネレータを制御することにより、油圧アクチュエータへの流量の制御を行うコントローラと
を備えたことを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
前記第1の油圧モータより上流となる位置の圧力を検出する第1の圧力計と、
前記一方の方向切換弁において前記油圧ポンプから前記第1の油圧モータへ至る流路に設けた第1の絞りと、
前記第1の絞りよりも下流となる位置の圧力を出力する第1の圧力出力通路と、
前記他方の油圧アクチュエータより上流側となる位置の圧力を検出する第2の圧力計と、
前記他方の方向切換弁において前記油圧ポンプから前記第2の圧力補償弁へ至る流路に設けた第2の絞りと、
前記圧力補償弁よりも下流側となる位置の圧力を出力する第2の圧力出力通路と、
前記油圧ポンプの吐出圧力を制御するリリーフ弁と
を備え、
前記圧力補償弁は、前記第1の圧力出力通路及び前記第2の圧力出力通路のいずれか高い方の圧力によって制御されるものであり、
前記コントローラは、前記第2の圧力計の検出した圧力に基づいて前記第1の油圧モータより上流となる位置の目標圧力を設定し、この目標圧力に基づいて前記リリーフ弁のリリーフ圧力を制御し、前記第1の圧力計の検出した圧力で前記電動モータジェネレータを制御することを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記方向切換弁の動作を制御する操作弁と、
前記第1の油圧モータより下流となる位置の圧力を出力する第1の圧力出力通路と、
前記他方の方向切換弁において前記油圧ポンプから前記第2の圧力補償弁に至る流路に設けた絞りと、
前記第2の圧力補償弁よりも下流となる位置の圧力を出力する第2の圧力出力通路と、
前記油圧ポンプの吐出圧力を制御するリリーフ弁と
を備え、前記コントローラは、前記第1の圧力出力通路及び前記第2の圧力出力通路のいずれか高い方の圧力で前記リリーフ弁のリリーフ圧力を制御し、前記操作弁の操作量に応じて前記電動モータジェネレータを制御することを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
共通の油圧ポンプから個別の方向切換弁を介して複数の油圧アクチュエータに油を分岐供給するようにした油圧駆動装置において、
一方の方向切換弁から一方の油圧アクチュエータの油室に至る分岐油通路に配設した油圧モータと、
他方の方向切換弁から他方の油圧アクチュエータの油室に至る分岐油通路に配設した圧力補償弁と、
前記第1の油圧モータに接続した電動モータジェネレータと、
前記電動モータジェネレータを制御することにより、油圧アクチュエータへの流量の制御を行うコントローラと
を備えたことを特徴とする油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−208744(P2011−208744A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77892(P2010−77892)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】