説明

油圧駆動装置

【課題】旋回モータと他のアクチュエータの同時操作時にサチュレーション状態が生じても旋回モータに優先的に圧油を供給して旋回の速度変化を抑え、旋回単独操作においても旋回起動時のショックを抑え、良好な操作性を実現する。
【解決手段】旋回用の流量制御弁6aを旋回の最大要求流量を設定する固定絞り20とオープンセンタ型の方向切換弁40から構成し、圧力補償弁7aにエンジン回転数検出弁13からLS制御の目標差圧としてポンプ傾転制御部17に導かれた出力圧と同一の出力圧を導いて目標補償差圧を設定し、他の圧力補償弁7b,7c…には検出弁11からの出力圧であるポンプ吐出圧と最高負荷圧との差圧により設定する。シャトル弁9a…は旋回モータ3aの負荷圧として固定絞り20と方向切換弁40との間の圧力を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械に用いられる油圧駆動装置に係り、特に油圧ポンプの吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようにロードセンシング制御を行う油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧駆動装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載の油圧駆動装置においては、旋回以外のアクチュエータに係わる圧力補償弁の目標補償差圧として、油圧ポンプの吐出圧と最高負荷圧との差圧を導き、旋回に係わる圧力補償弁の目標補償差圧として、エンジン回転数検出回路からの出力圧を導くことにより、旋回モータと他のアクチュエータとの複合操作時において、油圧ポンプの吐出流量が同時操作される旋回モータと他のアクチュエータの要求流量に対して不足するサチュレーション状態が生じても、旋回モータに優先的に圧油を供給して、その速度変化を抑えることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3907040号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のロードセンシング制御を行う油圧駆動装置においては、旋回モータと他のアクチュエータとの同時操作時に、ポンプ吐出流量のサチュレーション状態が生じても、旋回モータに優先的に圧油を供給して、旋回モータの速度変化を抑えることができる。しかし、旋回モータの単独操作においては、旋回モータが回転駆動する旋回体が慣性体であるために、その動き始め(旋回起動時)に旋回モータの負荷圧が急激に上昇する。このため油圧ポンプの吐出圧と最高負荷圧(旋回モータの負荷圧)との差圧が小さくなり、油圧ポンプの傾転角が流量を増加させる方向に急激に切り換わり、油圧ポンプから圧油が急激に旋回モータへ流入し、旋回起動時のショックが大きいという問題があった。
【0005】
例えば、掘削・積込作業などで、バケットに掘削土や液状コンクリートなどを入れた状態で旋回起動した場合に、上記のようにショックが生じると、積荷の掘削土や液状コンクリートが荷こぼれしてしまうことがあった。
【0006】
本発明の目的は、旋回モータと他のアクチュエータの同時操作時には、油圧ポンプの吐出流量のサチュレーション状態が生じても、旋回モータに優先的に圧油を供給して旋回の速度変化を抑えることができるとともに、旋回モータの単独操作においては、旋回起動時のショックを抑え、良好な操作性を実現することができる建設機械の油圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される旋回モータを含む複数のアクチュエータと、前記油圧ポンプから複数のアクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、前記複数の流量制御弁の絞り部の前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁と、前記複数のアクチュエータの負荷圧のうちの最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出手段と、前記油圧ポンプの吐出圧が、前記最高負荷圧検出手段により検出された最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御するポンプ制御手段と、前記エンジンの回転数が低下するにしたがって低下するよう前記エンジンの回転数に依存する圧力を出力するエンジン回転数検出部とを備え、このエンジン回転数検出部の出力圧を前記ポンプ制御手段に導き、前記ロードセンシング制御の目標差圧を前記エンジンの回転数に依存する可変値として設定した油圧駆動装置において、前記旋回モータ以外のアクチュエータに係わる圧力補償弁のそれぞれの目標補償差圧を前記油圧ポンプの吐出圧と前記複数のアクチュエータの最高負荷圧との差圧により設定するとともに、前記旋回モータに係わる圧力補償弁に、前記エンジン回転数検出部からロードセンシング制御の目標差圧としてポンプ制御手段に導かれた出力圧と同一の出力圧を導いて、前記出力圧により目標補償差圧を設定するよう構成し、前記旋回モータに係わる流量制御弁を、前記旋回モータの最大要求流量を設定する固定絞りと、この固定絞りの下流に配置されたオープンセンタ型の方向切換弁とで構成し、前記旋回モータに係わる圧力補償弁を前記固定絞りの前後差圧を制御するように構成し、前記最高負荷圧検出手段を、前記旋回モータの負荷圧として、前記固定絞りと前記方向切換弁との間の圧力を検出するよう構成したものとする。
【0008】
このように旋回モータに係わる流量制御弁を固定絞りとオープンセンタ型の方向切換弁とで構成した場合に、旋回モータの負荷圧として固定絞りと方向切換弁との間の圧力を検出することにより、旋回モータを操作したとき、旋回モータの負荷圧として固定絞りと方向切換弁との間の圧力が検出されるため、ロードセンシング制御により油圧ポンプの吐出流量を増加させることができる。
【0009】
そして、旋回モータに係わる流量制御弁を固定絞りとオープンセンタ型の方向切換弁とで構成するとともに、旋回モータに係わる圧力補償弁を固定絞りの前後差圧を制御するように構成することにより、旋回モータと他のアクチュエータとの同時操作時に、固定絞りの前後差圧が圧力補償弁によって一定に制御されることで、その他のアクチュエータの挙動や油圧ポンプのサチュレーション状態によらず、旋回モータにはある一定の流量が優先的に供給され(優先性が維持され)、旋回の速度変化を抑えることができる。
【0010】
また、旋回モータを単独で操作する旋回起動時において、旋回モータの負荷圧が一時的に高くなり、油圧ポンプがロードセンシング制御によって吐出流量を増加させたとしても、固定絞りの下流に配置したオープンセンタ型の方向切換弁によって圧油の一部をタンクに逃がしながら旋回モータへの圧油の流量を制御できるので、急激な流量増加による起動時のショックを抑え、良好な操作性を実現することができる。
【0011】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記ポンプ制御手段は、前記油圧ポンプの最少吐出流量が前記固定絞りによって設定される前記旋回モータの最大要求流量より大きくなるよう、前記油圧ポンプの最小傾転を設定する。
【0012】
これにより旋回モータの操作時において、油圧ポンプのロードセンシング制御と圧力補償弁の制御との干渉によるシステムの不安定性を解消し、旋回操作性を更に良好なものとすることができる。
【0013】
(3)また、上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記旋回モータに係わる圧力補償弁は、前記旋回モータの負荷圧が高くなるにしたがって前記固定絞りの前後差圧を小さくして通過流量を減ずる負荷依存特性を有している。
【0014】
これにより旋回起動時において、旋回モータの負荷圧が一時的に高くなると、旋回モータへの供給流量が減少するため、旋回モータで消費される馬力を減少することができるとともに、旋回・ブーム上げ等の同時操作時にサチュレーション状態が生じても、その分、他のアクチュエータで使える流量が増加し、ブーム上げ量を確保できるなど良好な複合操作性を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、旋回モータと他のアクチュエータの同時操作時には、油圧ポンプの吐出流量のサチュレーション状態が生じても、旋回モータに優先的に圧油が供給されて旋回モータの高い優先性が維持され、旋回の速度変化を抑え、良好な複合操作性を得ることができる。
【0016】
また、旋回モータを単独操作した場合は、旋回起動時に旋回モータの負荷圧が一時的に高くなり、油圧ポンプがロードセンシング制御によって吐出流量を増加させたとしても、旋回モータに供給する圧油の流量制御をオープンセンタ型の方向切換弁によって行うことにより、急激な流量増加による起動時のショックを抑え、滑らかな旋回操作性を実現することができる。
【0017】
また、油圧ポンプの最少吐出流量が固定絞りによって設定される旋回モータの最大要求流量より小さくならないように、油圧ポンプの最小傾転を設定したため、油圧ポンプのロードセンシング制御と圧力補償弁の制御との干渉によるシステムの不安定性を解消し、旋回操作性を更に良好なものとすることができる。
【0018】
また、旋回モータに係わる圧力補償弁に負荷依存特性を持たせたため、旋回起動時における旋回モータの負荷圧上昇時に、旋回モータへの供給流量が減少し、旋回モータで消費される馬力を減少することができるとともに、旋回・ブーム上げ等の同時操作時にサチュレーション状態が生じても、その分、他のアクチュエータで使える流量が増加し、ブーム上げ量を確保できるなど良好な複合操作性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態における建設機械の油圧駆動装置のシステム構成を示す図である。
【図2】傾転角制御部によるメインポンプのPQ特性図である。
【図3】本発明の油圧駆動装置が搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
〜構成〜
図1に本発明の第1の実施の形態である油圧駆動装置のシステム構成を示す。本実施の形態は、本発明をフロントスイング式の油圧ショベルの油圧駆動装置に適用した場合のものである。
【0021】
図1において、本実施の形態に係わる油圧駆動装置は、エンジン1と、このエンジン1により駆動されるメインポンプとしての可変容量型の油圧ポンプ2及び固定容量型のパイロットポンプ30と、メインポンプ2から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ3a,3b,3c…と、メインポンプ2の供給油路5に接続されたアクチュエータ3a,3b,3c…に対応する油路8a,8b,8c…に接続され、メインポンプ2からアクチュエータ3a,3b,3c…に供給される圧油の流量と方向をそれぞれ制御する複数の流量制御弁6a,6b,6c…と、各流量制御弁6a,6b,6c…の上流側において油路8a,8b,8c…に接続され、各流量制御弁6a,6b,6c…の絞り部の前後差圧を制御する圧力補償弁7a,7b,7c…と、アクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧のうちの最高圧力を選択して出力するシャトル弁9a,9b,9c…(最高負荷圧検出手段)と、メインポンプ2の吐出圧と前記最高負荷圧との差圧を絶対圧として油路12dに出力する差圧減圧弁11と、メインポンプ2の供給油路5に接続され、メインポンプ2の最高吐出圧(最高回路圧力)を制限するためのメインリリーフ弁14と、メインポンプ2の吐出圧と前記最高負荷圧との差圧がバネ15aで設定されるある一定値を越えたときにメインポンプ2の吐出油をタンクに戻し、メインポンプ2の圧力上昇を制限するアンロード弁15とを備えている。
【0022】
アクチュエータ3aは油圧ショベルの旋回モータであり、アクチュエータ3b,3cはそれぞれ油圧ショベルのブームシリンダ及びアームシリンダであり、流量制御弁6aは旋回用、流量制御弁6bはブーム用、流量制御弁6cはアーム用である。図示の都合上、バケットシリンダ、ブームスイングシリンダ、走行モータ等の他のアクチュエータ及びこれらアクチュエータに係わる回路要素は省略して示している。
【0023】
旋回用の流量制御弁6aは、旋回モータ3aに圧油を供給する油路8aにおいて、圧力補償弁7aの下流側に配置され、旋回モータ3aの最大要求流量を設定する固定絞り20(絞り部)と、固定絞り20の下流側に配置され、旋回モータ3aに供給される圧油の流れ方向と流量を制御するオープンセンタ型の方向切換弁40とから構成されている。
【0024】
圧力補償弁7aは、その目標補償差圧として後述するエンジン回転数検出弁13の出力圧が油路12e及び油路12fを介して導かれる開方向作動の受圧部21aと、固定絞り20(絞り部)の前後差圧を検出する受圧部22a,23a…を有し、固定絞り20の前後差圧をエンジン回転数検出弁13の出力圧に基づいて制御する。後述するように、エンジン回転数検出弁13の出力圧はロードセンシング制御の目標差圧としてポンプ制御手段(傾転角制御部17)にも導かれている。すなわち、旋回モータ3aに係わる圧力補償弁7aの受圧部21aには、エンジン回転数検出弁13からロードセンシング制御の目標差圧としてポンプ制御手段の切換弁17bに導かれた出力圧と同一の出力圧が導かれ、その出力圧により目標補償差圧を設定している。また、後述するように、好ましくは圧力補償弁7aは負荷依存特性を有している。
【0025】
オープンセンタ型の方向切換弁40に対しては、中立位置40aにおいて、圧力補償弁7a及び固定絞り20を経由して供給される圧油をタンクに戻す中立回路41と、切換位置40bまたは40cにおいて、圧力補償弁7a及び固定絞り20を経由した圧油を供給するフィーダ回路42が設けられ、フィーダ回路42にはチェックバルブ60を設けてある。
【0026】
固定絞り20は旋回モータ3aの最大要求流量を設定するためのものであり、エンジン1が最高定格回転数にあり、圧力補償弁7aにより固定絞り20の前後差圧がエンジン回転数検出弁13の出力圧に等しく制御されるとき、固定絞り20の通過流量が旋回モータ3aの最大要求流量に一致するように開度が設定されている。
【0027】
流量制御弁6b,6c…は、従来の場合と同じようにクローズドタイプの1つのバルブで構成されている。圧力補償弁7b,7c…は、その目標補償差圧として差圧減圧弁11の出力圧が油路12dを介して導かれる開方向作動の受圧部21b,21c…と、流量制御弁6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧を検出する受圧部22b,23b…及び22c,23c…を有し、流量制御弁6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧が差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧)に等しくなるように制御する。すなわち、旋回モータ3a以外のアクチュエータ3b,3c…はそれぞれの目標補償差圧をメインポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧により設定している。
【0028】
また、旋回用の圧力補償弁7aは、固定絞り20の下流側の圧力を検出する受圧部22aの受圧面積が固定絞り20の上流側の圧力を検出する受圧部23aの受圧面積よりも大きく、その受圧面積の差分に固定絞り20の下流側の圧力が作用することにより生じる付勢力が受圧部21aに生じる付勢力に対向して閉弁方向に作用するように構成され、これにより旋回モータ3aの負荷圧が高くなるにしたがって固定絞り20の前後差圧を小さくして通過流量を減少させる特性(負荷依存特性)を持たせている。その具体的な構成は特開2000-227103号公報に詳しい。
【0029】
シャトル弁9aは旋回モータ3aの負荷圧とブームシリンダ3bの負荷圧との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9bはその出力圧とアームシリンダ3cの負荷圧との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9cはその出力圧と図示しない他の同様なシャトル弁の出力圧との高圧側を選択して出力する。このようにしてシャトル弁9cからアクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧のうちの最高負荷圧が出力され、シャトル弁9a,9b,9c…は当該最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出手段として機能する。
【0030】
旋回用の流量制御弁9aは固定絞り20と方向切換弁40との間に負荷圧取り出し部42aを有し、旋回モータ3aの負荷圧として、負荷圧取り出し部42aの圧力(固定絞り20と方向切換弁40との間の圧力)がシャトル弁9aに導かれる。すなわち、シャトル弁9a,9b,9c…からなる最高負荷圧検出手段は、旋回モータ3aの負荷圧として、固定絞り20と方向切換弁40との間の圧力を検出するよう構成されている。
【0031】
方向切換弁40が中立位置40aにあるとき、負荷圧取り出し部42は方向切換弁40及び中立回路41を介してタンクに連通するため、負荷圧取り出し部42から取り出される負荷圧はタンク圧となる。それ以外の流量制御弁6b,6c…は負荷圧検出ポート42b,42c…を有し、これらの負荷圧検出ポート42b,42c…から取り出された圧力がシャトル弁9a,9b,9c…に導かれる。負荷圧検出ポート42b,42c…は、流量制御弁6b,6c…が中立位置にあるときはタンクに連通するよう構成され、負荷圧としてタンク圧を出力する。
【0032】
旋回用の流量制御弁9aの負荷圧取り出し部42aの圧力(固定絞り20と方向切換弁40との間の圧力)は、方向切換弁40が中立位置40aにあるときはタンク圧であり、方向切換弁40がフルストロークで操作されて切換位置40bまたは40cに切り換えられると、旋回モータ3aの負荷圧に等しくなり、方向切換弁40が中立位置40aと切換位置40bまたは40cの中間位置にあるときは、方向切換弁40のメータイン絞り部の開口面積(開度)に応じてタンク圧と旋回モータ3aの負荷圧との中間の圧力となる。
【0033】
流量制御弁6a(固定絞り20、方向切換弁40、チェックバルブ60)及び各流量制御弁,6b,6c…、各圧力補償弁7a,7b,7c…、各シャトル弁9a,9b,9c…、差圧減圧弁11、メインリリーフ弁14、アンロード弁15は、コントロールバルブ4の内部にそれぞれ設置されている。
【0034】
本実施の形態に係わる油圧駆動装置は、更に、パイロットポンプ30の供給油路31aに接続され、パイロットポンプ30の吐出流量に応じた圧力を出力するエンジン回転数検出弁13と、このエンジン回転数検出弁13の下流側のパイロット油路31cに接続され、パイロット油路31cの圧力を一定に保つパイロットリリーフ弁32と、ゲートロックレバー24によって操作され、下流側のパイロット圧供給油路31bをパイロット油路31c及びタンクの一方に選択的に連通させるゲートロック弁100とを備えている。パイロット圧供給油路31bは、方向切換弁40及び流量制御弁6b,6cを操作するための操作レバー装置122,123(図2)に内蔵されるリモコン弁等の油圧機器の油圧源として使用される。ゲートロックレバー24は運転席121(図2)の出入り口側に配置され、オペレータにより上げ位置(ゲートロック解除位置)と下げ位置(ゲートロック位置)とに選択的に操作可能である。ゲートロックレバー24が上げ位置(ゲートロック解除位置)に操作されると、ゲートロック弁100は図示の位置に切り換えられ、パイロット圧供給油路31bをタンクに連通させ、操作レバー装置の操作による方向切換弁40及び流量制御弁6b,6c…の操作を不能とする。
【0035】
エンジン回転数検出弁13は、パイロットポンプ30からの供給流量に応じてその絞り量が可変となる特性を持つ可変絞り50と、その可変絞り50の前後差圧を絶対圧として出力する差圧減圧弁51とから構成される。後述するように、エンジン回転数検出弁13の出力圧(可変絞り50の前後差圧)はロードセンシング制御の目標差圧としてポンプ制御手段(傾転角制御部17)に導かれる。このように可変絞り50の前後差圧をロードセンシング制御の目標差圧として用いることにより、エンジン回転数に応じたサチュレーション現象の改善が図れ、エンジン回転数を低く設定した場合に良好な微操作性が得られる。なお、この点は特開平10−196604号公報に詳しい。エンジン回転数検出弁13は、エンジン1の回転数が低下するにしたがって低下するようエンジン1の回転数に依存する圧力を出力するエンジン回転数検出部を構成する。
【0036】
メインポンプ2は、斜板等のポンプ傾転変更部90と、このポンプ傾転変更部90に作用し、メインポンプ2の傾転角(容量或いは押しのけ容積)を制御する傾転角制御部17を有している。傾転角制御部17は、メインポンプ2の吐出圧が導入され、メインポンプ2の吐出圧が上昇したときに、メインポンプ2の吸収トルクがある一定値を超えないようにするため、メインポンプ2の吐出圧が上昇するにしたがってメインポンプ2の傾転角を小さくするように制御する傾転角制御ピストン17aと、ロードセンシング制御用の切換弁17bと、切換弁17bの出力圧が導かれ、切換弁17bの出力圧(各アクチュエータの要求流量)に応じてメインポンプ2の傾転角が変化するよう制御する傾転角制御ピストン17cとから構成されている。切換弁17bは、エンジン回転数検出弁13の出力圧と差圧減圧弁11の出力圧が油路12e,12gを介して対向して導かれる受圧部17d,17eを有し、差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13の出力圧と等しくなるように傾転角制御ピストン17cに出力する圧力(切換弁17bの出力圧)を制御する。具体的には、差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13の出力圧より高くなると、切換弁17bは出力圧を上昇させる。切換弁17bの出力圧が上昇すると、傾転角制御ピストン17cはメインポンプ2の傾転角を小さくしてメインポンプ2の吐出流量を減少させ、差圧減圧弁11の出力圧を小さくする。差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13の出力圧より低くなると、切換弁17bは出力圧を低下させる。切換弁17bの出力圧が低下すると、傾転角制御ピストン17cはメインポンプ2の傾転角を大きくしてメインポンプ2の吐出流量を増大させ、差圧減圧弁11の出力圧を大きくする。
【0037】
このように切換弁17bと傾転角制御ピストン17cは、メインポンプ2の吐出圧が最高負荷圧検出手段であるシャトル弁9a,9b,9c…により検出された最高負荷圧よりエンジン回転数検出弁13の出力圧(目標差圧)だけ高くなるようメインポンプ2の吐出流量をロードセンシング制御するポンプ制御手段として機能する。エンジン回転数検出弁13の出力圧はポンプ制御手段の切換弁17bに導かれており、ロードセンシング制御の目標差圧はエンジンの回転数に依存する可変値として設定される。
【0038】
傾転角制御部17は、更に、メインポンプ2のポンプ傾転変更部90に当たってメインポンプ2の最小傾転を制限し、メインポンプ2の最少吐出流量を規定するストッパ91を有している。ストッパ91は、例えばネジ機構によりポンプケースに対して出入りしてポンプ傾転変更部90に当たる位置を変え、メインポンプ2の最小傾転を調整できるようにしたものである。なお、ポンプケースの鋳物自体を最小傾転を制限できるような形状とし、ポンプの基本仕様として最小傾転を設定したものであってもよい。
【0039】
ここで、メインポンプ2の最小傾転は、メインポンプ2の最少吐出流量が上述した固定絞り20によって設定される旋回モータ3aの最大要求流量(より厳密には固定絞り20の開度と圧力補償弁7aによって決まる旋回モータ3aの最大要求流量)より大きくなるように設定されている。
【0040】
図2は、傾転角制御部17によるメインポンプ2のPQ特性図である。横軸はメインポンプ2の吐出圧力(P)であり、縦軸はメインポンプ2の吐出流量(Q)である。特性線Hは傾転角制御ピストン17aにより設定されるポンプ馬力制御線図である。Qminはメインポンプ2の最少吐出流量であり、Qsmaxは固定絞り20の開度と圧力補償弁7aによって決まる旋回モータ3aの最大要求流量である。傾転角制御部17によるメインポンプ2の吐出流量の制御領域は斜線部分である。メインポンプ2の最小傾転はストッパ91により制限され、メインポンプ2の最少吐出流量Qminは旋回最大要求流量Qsmaxより大きくなるように設定されている。
【0041】
図3は、本実施の形態における油圧駆動装置が搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
【0042】
油圧ショベルは、下部走行体101と、この下部走行体101上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の先端部分にスイングポスト103を介して上下及び左右方向に回動可能に連結されたフロント作業機104とを備えている。下部走行体101はクローラ式であり、トラックフレーム105の前方側に上下動可能な排土用のブレード106が設けられている。上部旋回体102は基礎下部構造をなす旋回台107と、旋回台107上に設けられたキャノピタイプの運転室108とを備えている。フロント作業機104はブーム51と、アーム112と、バケット113とを備え、ブーム51の基端はスイングポスト103にピン結合され、ブーム51の先端はアーム112の基端にピン結合され、アーム112の先端はバケット113にピン結合されている。
【0043】
上部旋回体101は下部走行体100に対して旋回モータ3aにより旋回駆動され、ブーム51、アーム112、バケット113は、それぞれ、ブームシリンダ3b、アームシリンダ3c、バケットシリンダ3dを伸縮することにより回動する。下部走行体101は左右の走行モータ3f,3gにより駆動される。ブレード106はブレードシリンダ3hにより上下に駆動される。図1ではバケットシリンダ3d、左右の走行モータ3f,3g、ブレードシリンダ3hやそれらの回路要素の図示を省略している。
【0044】
運転室108には、運転席121、操作レバー装置122、123(図2では右側のみ図示)及びゲートロックレバー24が設けられている。
〜動作〜
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0045】
<全ての操作レバーが中立のとき>
全ての操作レバー装置の操作レバーが中立の場合、旋回モータ3a以外のアクチュエータ3b,3c…の流量制御弁6b,6c…はそれぞれ中立位置にあり、それらのアクチュエータの供給油路8b,8c…からの圧油は、流量制御弁6b,6c…でブロックされ、各アクチュエータ3b,3c…へは供給されない。
【0046】
一方、旋回モータ3aの供給油路8aについては、旋回用の操作レバー装置(例えば操作レバー装置122)の操作レバーが中立でも、圧油は圧力補償弁7a、固定絞り20、方向切換弁40(中立切換位置40a)、中立回路41を経てタンクへ戻る。このとき、固定絞り20の前後差圧が一定になるように圧力補償弁7aが通過する流量を制御するので、タンクへ戻る流量は一定となる。
【0047】
一方、メインポンプ2の最少流量は、傾転切換部90に設けられたストッパ91により、固定絞り20と圧力補償弁7aによって規定された供給油路8aを流れる流量よりも大きくなるように設定されているため、メインポンプ2の供給油路5からアクチュエータの供給油路8a,8b,8c…を通じて流れる流量は旋回モータ3aの供給油路8aを経由してタンクへ流出する流量のみであることから、供給油路5の圧力が上昇する。
【0048】
全ての操作レバーが中立の場合には、最高負荷圧としてタンク圧がシャトル弁9a,9b,9c…によって検出され、差圧減圧弁11に導かれる。差圧減圧弁11は、メインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)とタンク圧の差を絶対圧力として出力する。メィンポンプ2の流量制御部17の切換弁17bには、差圧減圧弁11からの出力圧と、エンジン回転数検出弁13の出力圧が導かれている。上記のように供給油路5の圧力が上昇すると、差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13からの出力圧よりも高くなり、切換弁17bの出力圧が上昇して、メインポンプ2の傾転角制御ピストン17cはメインポンプ2の傾転角を小さくするよう制御する。よって、メインポンプ2は最小傾転角位置、すなわち最少流量に維持される。
【0049】
また、メインポンプ2の供給油路5には、アンロード弁15が設けられており、アンロード弁15は、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧の差がバネ15aで規定される一定の値になるように制御する。シャトル弁9a,9b,9c…によって最高負荷圧として検出されたタンク圧がアンロード弁15にも導かれる。よって、供給油路5の圧力が上昇するとアンロード弁15が作動し、メインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)は、バネ15aで規定される一定の圧力になるよう保たれる。
【0050】
<旋回単独操作のとき>
前述したように、旋回用の操作レバー装置の操作レバーが中立の場合、旋回モータ3aの供給油路8aに設けられた方向切換弁40には固定絞り20と圧力補償弁7aで規定される、ある一定の流量が供給されている。旋回用の操作レバーを入力すると、方向切換弁40が切り換わる。仮に、方向切換弁40が、切換位置40bになるように切り換わった場合、中立回路41がブロックされ、チェックバルブ60を経由して、旋回モータ3aとコントロールバルブ4を接続する油路70aに圧油が供給され、旋回モータ3aが駆動される。旋回モータ3aからの戻りの油は、旋回モータ3aとコントロールバルブ4を接続する油路70bを経由し、方向切換弁40を通ってしてタンクへ戻る。このとき、旋回モータ3aの供給油路8aに設けられた圧力補償弁7aには、負荷圧が高いときに通過する流量を減少させる特性(負荷依存特性)が設けられているため、旋回操作の起動時など、旋回モータ3aの負荷圧が高い場合に、圧力補償弁7aが閉じる方向に切り換わり、方向切換弁40への供給流量が減少する。
【0051】
一方、旋回モータ3aの負荷圧(固定絞り20と方向切換弁40との間の圧力)が最高負荷圧としてシャトル弁9a,9b,9c…によって検出され、差圧減圧弁11及びアンロード弁15に導かれる。アンロード弁15に旋回モータ3aの負荷圧が導かれると、アンロード弁15は、メインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)がバネ15aで設定される圧力分だけ高くなるように、その圧力を制御する。
【0052】
一方、差圧減圧弁11は、メインポンプ2からの供給油路5の圧力(ポンプ吐出圧)とタンク圧の差を絶対圧力として出力する。メィンポンプ2の流量制御部17の切換弁17bには、差圧減圧弁11からの出力圧とエンジン回転数検出弁13の出力圧が導かれている。
【0053】
旋回の動き始めなどで、メインポンプ2の吐出圧が上昇すると、差圧減圧弁11からの出力圧がエンジン回転数検出弁13からの出力圧よりも高くなり、切換弁17bの出力圧が上昇して、メインポンプ2の傾転角制御ピストン17cはメインポンプ2の傾転角を小さくするよう制御する。
【0054】
以上により、旋回単独操作の場合にも、メインポンプ2は最小傾転角位置、すなわち最少流量に維持され、いわゆるロードセンシング制御を行わない。
【0055】
<旋回以外のアクチュエータを操作した場合>
旋回以外のアクチュエータを操作する操作レバー装置、例えばブーム用の操作レバー装置(例えば操作レバー装置123)の操作レバーを操作した場合には、流量制御弁6bが切り換わり、ブームシリンダ3bに圧油が供給される。
【0056】
流量制御弁6bを流れる流量は、圧力補償弁7bによって流量制御弁6bの前後差圧が差圧減圧弁11の出力圧と等しくなるように制御される。
【0057】
また、ブームシリンダ3bの負荷圧は、シャトル弁9a,9b,9c…により最高負荷圧として検出され、アンロード弁15に導かれるので、アンロード弁15は供給油路5の圧力が最高負荷圧(ブームシリンダ3bの負荷圧)よりもバネ15aで設定される圧力だけ高くなるよう調整する。
【0058】
ブームシリンダ3bが動き始めると、一時的にメインポンプ2の供給油路5からブームシリンダ3bの供給油路8bを介してブームシリンダ3bに圧油が供給されるので、メインポンプ2の吐出圧が低下する。
【0059】
一方、ブームシリンダ3bの負荷圧は、シャトル弁9a,9b,9c…により最高負荷圧として検出され、差圧減圧弁11に導かれる。差圧減圧弁11はメインポンプ2の供給油路5の圧力(メインポンプ2の吐出圧)とブームシりンダ3bの負荷圧の差を絶対圧力として出力する。メィンポンプ2の流量制御部17の切換弁17bには、差圧減圧弁11からの出力圧とエンジン回転数検出弁13の出力圧が導かれている。上述したようなブームシリンダ3bの動き始めなどで、メインポンプ2の吐出圧が低下し、差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13の出力圧よりも小さくなると、切換弁17bの出力圧が低下して、メインポンプ2の傾転角制御ピストン17cはメインポンプ2の傾転角を大きくするよう制御し、メインポンプ2の吐出流量が増加する。このメインポンプ2の吐出流量の増加は、差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13の出力圧と等しくなるまで継続する。これらの一連の働きにより、ブームシリンダ3bに流量制御弁6bの要求する流量が流れるように、メインポンプ2の吐出流量が制御される。
【0060】
このように、旋回以外のアクチュエータを操作した場合は、いわゆるロードセンシング制御が行われる。
【0061】
<旋回と他のアクチュエータを同時操作した場合>
旋回用の操作レバー装置の操作レバーと旋回以外のアクチュエータ、例えばブーム用の操作レバー装置の操作レバーを同時に操作した場合、旋回モータ3aの供給油路8aに設けられた方向切換弁40と、ブームシリンダ3bの供給油路8bに設けられた流量制御弁6bがそれぞれ切り換わる。
【0062】
旋回モータ3aの供給油路8aには、操作レバーの中立時に、固定絞り20と圧力補償弁7aの働きにより、ある一定の流量が方向切換弁40の中立回路41を経由してタンクに流れており、その流量が方向切換弁40が切り換わることによって旋回モータ3aに供給される。
【0063】
さらに、その状態でブーム用の操作レバー装置の操作レバーを操作すると、ブームシリンダ3bを制御する流量制御弁6bが切り換わり、供給油路8bを経由してブームシリンダ3bに圧油が供給される。このとき、旋回モータ3aとブームシリンダ3bの負荷圧の高い方の圧力がシャトル弁9a,9b,9c…により最高負荷圧として検出され、アンロード弁15に導かれるので、アンロード弁15は供給油路5の圧力が最高負荷圧(ブームシリンダ3bの負荷圧)よりもバネ15aで設定される圧力だけ高くなるよう調整する。
【0064】
また、旋回モータ3aとブームシリンダ3bの負荷圧の高い方の圧力がシャトル弁9a,9b,9c…によって最高負荷圧として検出され、差圧減圧弁11に導かれる。
【0065】
一方、メインポンプ2の供給油路5に発生する圧力(メインポンプ2の吐出圧)は、供給油路5より圧油が供給油路8a,8bへ流出することにより、一時的に減少する。上記のように最高負荷圧が増加し、メインポンプ2の吐出圧が減少することにより、一時的に差圧減圧弁11の出力圧は低下する。メィンポンプ2の流量制御部17の切換弁17bには、差圧減圧弁11からの出力圧とエンジン回転数検出弁13の出力圧が導かれている。差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13の出力庄よりも小さくなると、切換弁17bの出力圧が低下して、メインポンプ2の傾転角制御ピストン17cはメインポンプ2の傾転角を大きくするよう制御し、メインポンプ2の吐出流量が増加する。このメインポンプ2の吐出流量の増加は、差圧減圧弁11の出力圧がエンジン回転数検出弁13の出力圧と等しくなるまで継続する。
【0066】
このように旋回モータ3aと他アクチュエータを同時操作した場合にも、旋回モータ3aにはある一定の流量が供給され、他アクチュエータに対しては、そのアクチュエータが必要とする流量を供給する、いわゆるロードセンシング制御が行われる。
【0067】
<旋回と他のアクチュエータを同時操作し、サチュレーション状態になった場合>
仮に、旋回モータ3aの供給油路8aへ流出する流量と、ブームシリンダ3bなど他のアクチュエータの供給油路8b,8c…へ流出する流量とを合計した流量が、メインポンプ2の吐出可能な最大流量よりも大きかった場合、つまりサチュレーション状態となった場合においては、旋回モータ3aの供給油路8aへは、固定絞り20の前後差圧を一定に保つように制御する圧力補償弁7aの働きにより、ある一定の流量が流れる。旋回以外のアクチュエータの供給油路8b,8c…へは、メインポンプ2の吐出可能な最大流量から旋回モータ3aの供給油路8aへ供給される流量を引いた、残りの流量が供給される。
【0068】
サチュレーション状態においては、メインポンプ2から供給される圧油が旋回モータ3a以外のアクチュエータで要求されている流量に対して不足することになるので、結果的にメインポンプ2の供給油路5に発生する圧力(メインポンプ2の吐出圧)が低下し、差圧減圧弁11の出力圧も低下する。これによりメインポンプ2は傾転角制御部17の切換弁17b及び傾転角制御ピストン17cの働きにより、吐出可能な範囲内で最大の流量を吐出するように制御される。
【0069】
旋回モータ3a以外の各アクチュエータの供給油路8b,8c…に設けられたそれぞれの圧力補償弁7b,7c…には、差圧減圧弁11の出力圧がそれぞれの目標補償差圧として導かれているので、圧力補償弁7b,7c…は、それぞれの流量制御弁6b,6c…の開ロ面積によって決まる要求流量の比でそれぞれ通過する流量を絞るように制御する。
【0070】
一方、旋回モータ3aの供給油路8aに設けられた圧力補償弁7aには、目標補償差圧として、エンジン回転数検出弁13の出力圧が作用しているので、サチュレーション状態においても、圧力補償弁7aが通過する流量を絞ることはない。
【0071】
このように、サチュレーション状態においても旋回モータ3aへ優先的に圧油が供給される。
【0072】
また、旋回モータ3aの圧力補償弁7aは、負荷依存特性(負荷圧高い場合に流量が減少する特性)を有しているため、旋回モータ3aの動き出しなど、負荷圧が一時的に高いときには、旋回モータ3aの供給油路8aに流れる流量が減少させるので、その分、旋回モータ3a以外のアクチュエータ(ブームシリンダ3bなど)で使える流量が増加する。
【0073】
<エンジン回転数を下げた場合>
以上の動作はエンジン1が最高定格回転数にあるときのものである。エンジン1の回転数を低速に下げた場合は、差圧減圧弁51の出力圧がそれに応じて減少するため、傾転角制御部17のロードセンシング制御の目標差圧及び圧力補償弁7aの目標補償差圧も同様に減少する。このためエンジン回転数を低速にしたときの旋回複合操作でサチュレーション状態でないときは、圧力補償弁7aの目標補償差圧Pc1と圧力補償弁7b,7c…の目標補償差圧が共に減少するため、旋回が速くなりすぎるというようなことが起こらない。また、旋回複合操作でサチュレーション状態になると、圧力補償弁7b,7c…の目標補償差圧のみが低下するため、旋回の優先性が維持される。このようにエンジン回転数の設定によらず、適切な旋回の優先性を維持することができる。
〜効果〜
以上のように構成した本実施の形態によれば、旋回モータ3aと他のアクチュエータ3b,3c…の同時操作時には、メインポンプ2の吐出流量のサチュレーション状態が生じても、旋回モータ3aに優先的に圧油が供給されて旋回モータ3aの高い優先性が維持され、旋回の速度変化を抑え、良好な複合操作性を得ることができる。
【0074】
また、旋回モータ3aを単独操作した場合は、旋回起動時に旋回モータ3aの負荷圧が一時的に高くなり、メインポンプ2がロードセンシング制御によって吐出流量を増加させたとしても、旋回モータ3aに供給する圧油の流量制御をオープンセンタ型の方向切換弁40によって行うことにより、急激な流量増加による起動時のショックを抑え、滑らかな旋回操作性を実現することができる。
【0075】
また、メインポンプ2の最少吐出流量が固定絞り20によって設定される旋回モータ3aの最大要求流量より小さくならないように、メインポンプ2の最小傾転を設定したため、メインポンプ2のロードセンシング制御と圧力補償弁7aの制御との干渉によるシステムの不安定性を解消し、旋回操作性を更に良好なものとすることができる。
【0076】
また、旋回モータ3aに係わる圧力補償弁7aに負荷依存特性を持たせたため、旋回起動時における旋回モータ3aの負荷圧上昇時に、旋回モータ3aへの供給流量が減少し、旋回モータ3aで消費される馬力を減少することができるとともに、旋回・ブーム上げ等の同時操作時にサチュレーション状態が生じても、その分、他のアクチュエータで使える流量が増加し、ブーム上げ量を確保できるなど良好な複合操作性を実現することができる。
【0077】
また、エンジン1の回転数を低速に下げた場合は、差圧減圧弁51の出力圧がそれに応じて減少し、傾転角制御部17のロードセンシング制御の目標差圧及び圧力補償弁7aの目標補償差圧も同様に減少するため、エンジン回転数の設定によらず、適切な旋回の優先性を維持することができる。
〜他の実施の形態〜
なお、上記実施の形態では、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧を差圧減圧弁11の出力圧により絶対圧として出力し、圧力補償弁7b,7c…の受圧部21b、21c…及び切換弁17bの受圧部17eに導いたが、圧力補償弁7b,7c…及び切換弁17bにそれぞれ受圧部21b、21c…及び受圧部17eに代えて対向する受圧部を設け、油圧ポンプ2の吐出圧と最高負荷圧を別々にそれらの受圧部に導くようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、旋回モータ3aに係わる圧力補償弁7aに負荷依存特性を持たせたが、旋回モータ3aの負荷圧が一時的に高くなったときに旋回モータ3aへの供給流量を減少させなくてもよい場合、或いは他の手段により同様の機能を持たせた場合は、圧力補償弁7aは負荷依存特性のない通常の圧力補償弁であってもよい。
【0079】
更に、上記実施の形態では、ポンプ傾転変更部90にストッパ91を設け、メインポンプ2の最少吐出流量が固定絞り20によって設定される旋回モータ3aの最大要求流量より大きくなるようにメインポンプ2の最小傾転を制限したが、油圧ポンプのロードセンシング制御と圧力補償弁の制御との干渉によるシステムの不安定性を別の手段で解消できるようにする場合は、メインポンプ2の最少吐出流量を旋回モータ3aの最大要求流量より小さい通常の値に設定してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 エンジン
2 油圧ポンプ(メインポンプ)
3a 旋回モータ
3b,3c… アクチュエータ
4 コントロールバルブ
5 供給油路
6a,6b,6c 流量制御弁
7a,7b,7c 圧力補償弁
8a,8b,8c 油路
9a,9b,9c シャトル弁
11 差圧減圧弁
12d,12e,12g 油路
13 エンジン回転数検出弁
14 メインリリーフ弁
15 アンロード弁
15a バネ
17 傾転角制御部
17a 傾転角制御ピストン
17b 切換弁
17c 傾転角制御ピストン
17d,17e 受圧部
20 固定絞り
21a,21b,21c 受圧部
22a,23a 受圧部
22b,23b 受圧部
22c,23c 受圧部
24 ゲートロックレバー
30 パイロットポンプ
31a 供給油路
31b パイロット圧供給油路
31c パイロット油路

32 パイロットリリーフ弁
40 方向切換弁
41 中立回路
42 フィーダ回路
42a 負荷圧取り出し部
50 可変絞り部
51 差圧減圧弁
60 チェックバルブ
90 ポンプ傾転変更部
91 ストッパ
100 ゲートロック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される旋回モータを含む複数のアクチュエータと、前記油圧ポンプから複数のアクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、前記複数の流量制御弁の絞り部の前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁と、前記複数のアクチュエータの負荷圧のうちの最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出手段と、前記油圧ポンプの吐出圧が、前記最高負荷圧検出手段により検出された最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御するポンプ制御手段と、前記エンジンの回転数が低下するにしたがって低下するよう前記エンジンの回転数に依存する圧力を出力するエンジン回転数検出部とを備え、このエンジン回転数検出部の出力圧を前記ポンプ制御手段に導き、前記ロードセンシング制御の目標差圧を前記エンジンの回転数に依存する可変値として設定した油圧駆動装置において、
前記旋回モータ以外のアクチュエータに係わる圧力補償弁のそれぞれの目標補償差圧を前記油圧ポンプの吐出圧と前記複数のアクチュエータの最高負荷圧との差圧により設定するとともに、前記旋回モータに係わる圧力補償弁に、前記エンジン回転数検出部からロードセンシング制御の目標差圧としてポンプ制御手段に導かれた出力圧と同一の出力圧を導いて、前記出力圧により目標補償差圧を設定するよう構成し、
前記旋回モータに係わる流量制御弁を、前記旋回モータの最大要求流量を設定する固定絞りと、この固定絞りの下流に配置されたオープンセンタ型の方向切換弁とで構成し、
前記旋回モータに係わる圧力補償弁を前記固定絞りの前後差圧を制御するように構成し、
前記最高負荷圧検出手段を、前記旋回モータの負荷圧として、前記固定絞りと前記方向切換弁との間の圧力を検出するよう構成したことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記ポンプ制御手段は、前記油圧ポンプの最少吐出流量が前記固定絞りによって設定される前記旋回モータの最大要求流量より大きくなるよう、前記油圧ポンプの最小傾転を設定したことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記旋回モータに係わる圧力補償弁は、前記旋回モータの負荷圧が高くなるにしたがって前記固定絞りの前後差圧を小さくして通過流量を減ずる負荷依存特性を有していることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−21688(P2011−21688A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167100(P2009−167100)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】