説明

油溶性ポリマー

本発明は、ポリマーの質量に対して、1種以上の式(I)[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位50〜100質量%を包含するポリマーに関し、この際、ポリマーは、3〜21個のアームを有するスターポリマーであり、かつアームの少なくとも3個は、アームの質量に対して、1種以上の式(I)[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位少なくとも40質量%を包含する。更に、本発明は、本発明によるポリマーを包含する油組成物に関する。高粘稠化作用の本発明によるポリマーは、殊に、粘性変性剤、流動点改善剤、分散剤及び/又は摩擦変性剤として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、油溶性ポリマー、その製法及びその使用に関する。
【0002】
ポリアルキル(メタ)アクリレート(PA(M)A)(一般に、様々なアルキル(メタ)アクリレート(A(M)A)の混合物の慣例的ラジカル共重合によって合成される)は、油添加剤として、分子量及び組成に依存して、他の粘度指数改善剤(粘度指数改善剤(viscosity index improver)VII)に比較して卓越した低温特性と対になった粘度指数(粘度指数(viscosity index)VI)の上昇に作用する(R.M. Mortier, S.T. Orszulik eds., Chemistry and Technology of Lubricants, Blackie Academic & Professional, 1st ed., London 1993, 124-159 & 165-167)。油添加剤としての使用可能性についての基本的前提は、通俗的には、ポリマーの油溶性であり、これは、PA(M)Aの場合には、典型的に7〜30個の炭素原子を有するアルキル側鎖が著しく大きな数で存在することに起因する。
【0003】
PA(M)AのVIの更なる上昇のために、しばしば、短鎖のアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート又はブチル(メタ)アクリレートを共重合させることが行われる(EP0637332、The Lubrizol Corporation)。この種類のPA(M)Aで達成可能なVIは、濃度、永久剪断安定性−指数(PSSI)及び基本的油型に依り、大抵、150〜250の範囲にある。
【0004】
煤及び汚れ粒子の分散作用に関する付加的な官能度は、窒素−及び/又は酸素−含有モノマー、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(US2737496、E.I. du Pont de Nemours and Company)又はジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(US4021357、Texaco Inc. )の共重合によって達成される。
【0005】
鉱物油又は合成油中のポリマー溶液の粘度は、分子量に高度に依存する。このことは、分子量が上昇すると共に、粘度の温度依存性が減少する又はVIが増加するということにもなる(J. Bartz, Additive fuer Schmierstoffe, Expert-Verlag, Renningen-Malmsheim 1994, 197-252)。温度上昇と関連して、破壊したもつれが解かれて伸長したウォーム状分子についても言及される。
【0006】
しかし分子量と平行して、剪断安定性は、断鎖によって高い剪断低下下に減少する。この逆行する作用の結果として、例えば、慣例のポリマー型、例えば、PA(M)Aをベースとする用手的操作−、自動操作−、油圧応用−又は内燃機関油に請われる剪断安定性VIIは、高い添加量でのみ実現可能である。従って、低温での低粘度寄与、40〜100℃のVI−範囲での通常の粘稠性、100℃以上の高い粘度寄与及び全温度範囲で同時に保証される良好な油溶性を有するVIIは、特に重要である。
【0007】
もう1群の商業的VIIは、水素添加スチロール−ジエン−コポリマーである。このコポリマーの特別な1実施は、水素添加ポリイソプレンアーム及びジビニルベンゾール−架橋結合ポリスチロールコアを含むスターポリマーである(US4116917、Shell Oil Company)。スター形のポリマーは、有利に、粘稠作用、VI及び剪断安定性の相互依存度の関係に影響を与える(SAE Technical Paper Series 982638, 14-30)。
【0008】
PA(M)Aをベースとするスターポリマーを製造するために、極めて様々な手段がある。即ち、慣例のラジカル重合の分子量調整に使用されるメルカプタンは、例えば、4個のチオール官能基を用いるペンタエリスリトール−誘導体の形で使用され得る。WO00/29495(Ineos Acrylics UK Ltd.)の例では、まさにこの方法により、ポリ(イソブチルメタクリレート)−スターの合成が記載されている。しかし、この種類のスターポリマーでは、アームはチオエーテル橋を介して結合していて、これは、周知のように、極めて酸化不安定であり、従って、例えば、油添加剤としての適用では使用することができない。また、この際使用される慣例のラジカル重合では、ブロック構造を有するスターポリマーを製造することはできない。
【0009】
PAMA−スターポリマーの製造のための殆どの手段は、"制御重合"を使用する。制御重合法は、所望の分子量を狭い分子量分布以下に合目的に調整する可能性を特徴とし、重合中のモノマー給源の交換によってブロックコポリマーの製造を可能にする。
【0010】
従って、1手段は、GTP(基転移重合(group transfer polymerization))を介する合成、制御重合法にある。即ち、US4794144(E.I. du Pont de Nemours and Company)の例は、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)をベースとするスターポリマーの合成を記載する。この際、先ずアームを単一官能のシリルケテンアセタールから合成し、次いでそれを二官能モノマーとその場で架橋結合させる合成法(アームファースト(arm first))も、逆の順序での合成法(コアファースト(core first))も等しく使用される。2つの場合において、不明確な数のアームを有する架橋結合コアを含むスターが生じる。
【0011】
陰イオン性重合も、制御重合法であり、スターの製造に使用することができる。この際、(GTPの場合と同様に)、始めに先ずアームを単官能リチウムオルガニルから出発して重合させ(アームファースト)、引き続いて、アームを二官能モノマーと架橋結合させてコアを生じさせる。即ち、WO96/23012(Texaco Development Corporation)は、C1〜C18−PA(M)A−スターの合成を記載し、それに対して、EP0936225(Ethyl Corporation)は、それと同様のC1〜C18−PA(M)A−スターの連続的製法を使用する。この際も、不明確な数のアームが生じる。2つの出願において、PA(M)A−スターは、潤滑油組成物のための添加剤として使用される。
【0012】
1990年代の中期から末期にかけて、制御ラジカル重合法、例えば、ATRP(原子転移ラジカル重合(atom transfer radical polymerization)、主出願WO96/30421、Carnegie-Mellon University))、RAFT(可逆付加断片化鎖転移重合(reversible addition fragmentation chain transfer polymerization)、主出願WO98/01478、E.I. de Pont de Nemours and Company))又はNMP(ニトロキシド媒介重合(nitroxide mediated polymerization)、主出願US4581429、Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization))が公知である。これらの方法についての特徴的な1概観は次にある:K. Matyjaszewski, T.P. Davis, Handbook of Radical Polymerization, Wiley Interscience, Hoboken 2002。この種類の制御ラジカル法は、コアファースト合成法を介して、ここで一定のアーム数を有するスターポリマーの製造を可能とし、それというのも、(GTP又は陰イオン法に反して)この際、簡単な合成法で多官能重合開始剤を製造することができ、これを(GTP又は陰イオン法に反して)無水系で重合させる必要はないからである。架橋結合の二官能モノマーからの合成コアを介する回り道は不必要である。
【0013】
殊に、ATRPは、容易に入手可能な多官能アルキルハロゲニドによる重合開始後に、3〜21個の範囲で一定のアーム数を有するビニル系モノマーをベースとするスターポリマーを製造することを可能にする。この種類のATRP−合成については、既に、トリス(ブロモメチル)メシチレン、テトラキス(ブロモエメチル)ベンゾール、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゾール、フェノール−、シクロテトラシロキサン−、シクロホスファゼン−、カリキサレン−及びシクロデキストリン誘導体が、好適な重合開始剤として記載された(K. Matyjaszewski, T.P. Davis, Handbook of Radical Polymerization, Wiley Interscience, Hoboken 2002, 820-825)。
【0014】
糖をベースとする、例えば、グルコース及びサッカロースをベースとする重合開始剤を介するATRP−スターも、既に記載された(M.H. Stenzel-Rosenbaum, T.P. Davis, V. Chen, A. Fane, Macromolecules 34 (2001), 5433)。
【0015】
更に、EP1244716(RohMax Additives GmbH)は、潤滑油添加剤として使用するための鉱物油が存在して、任意に窒素−又は酸素−官能モノマーと共重合されている狭分布のPA(M)AのATRP製法を記載している。
【0016】
WO01/40339(RohMax Additives GmbH)は、潤滑油としての使用のための、ATRPを介して、PA(M)A及び、例えば、窒素−又は酸素−官能モノマーを含む合目的のブロックコポリマーを請求している。更にもっと特別に、WO04/087850(RohMax Additives GmbH)は、特徴的な摩擦特性の潤滑油組成物を記載し、これは、例えば、ATRPによって製造された、窒素−又は酸素−官能コモノマーとのPA(M)A−ブロックコポリマーを摩擦変性剤(摩擦変性剤(friction modifier))として包含する。
【0017】
特に、WO03/095512(Ciba Specialty Chemicals Holding)は、潤滑油として使用するための、ATRPを介して、特に、PA(M)A及び窒素−又は酸素−官能モノマー及び末端位の抗酸化剤−、金属失活剤−、抗摩擦−、極圧−又は腐蝕防止−官能を含むコポリマーを示している。
【0018】
最後に、ポリマー添加剤の全く別の分野において、PA(M)AをベースとするATRP−スターポリマーを包含する水及び油をベースとする化粧品組成物が、EP1043343〜1043347(L'Oreal)で保護されることが注釈される。
【0019】
前記のポリマーは、たびたび商業的に使用される。従って、これらのポリマーの殆どは、満足する特性プロフィールを示す。勿論、潤滑油中にできるだけ少量の添加剤を使用して(ポリマーの早期剪断破壊の回避下に)広い温度範囲にわたり所望の粘度を達成するために、持続性効果、粘稠作用の相関、剪断安定性及びVIを改善することは存続する。
【0020】
更に、ポリマーは簡単で安価に製造され得るべきであり、この際、特に商業的に得られる成分を使用すべきである。この際、そのために新規又は構造的にロスの多い装置を必要とせずに、製造は大工業的に行なわれ得るべきである。
【0021】
これらの及び他の不明確に挙げられた、しかし、ここで冒頭に論じられた関連から容易に誘導可能又は推論可能である課題は、特許請求項1の全特徴を有するポリマーによって解明される。本発明によるポリマーの有利な変化は、請求項1に再参照される下位請求で保護される。ポリマーの製法に関して、請求項20は基礎にある課題を解明する一方で、請求項23は本発明のポリマーを含有する油組成物を保護する。
【0022】
スターポリマーが3〜21個のアームを有し、かつアームの少なくとも3個は、アームの質量に対して、1種以上の式(I):
【化1】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される単位少なくとも40質量%を包含することによって、簡単には予知され得ない方法で、ポリマーの質量に対して、1種以上の式(I):
【化2】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位50〜100質量%を包含する、少ない剪断感受性で高い粘稠化作用を有するポリマーを製造することが成功する。
【0023】
同時に、本発明によるポリマーによって、一連の更なる利点を達成することができる。それには、特に次のことが属する:
本発明のポリマーは、低温特性、例えば、−26℃又は−40℃での流動点及びブルックフィールド(Brookfield)−粘度の改善のための卓越した作用を有し得る。
【0024】
本発明の特別な1観点によるポリマーは、摩擦改善剤として特徴的な作用を有し得る。
【0025】
更に、有利なポリマーは、卓越した分散作用を示す。
【0026】
更に、本発明によるポリマーは、卓越した濾過性を有する。
【0027】
本ポリマーの粘度指数は、要求に適切に、極めて広い範囲にわたって調整され得る。即ち、本発明によるポリマーの1観点により、驚異的に高い粘度指数を有することができるが、もう1つの観点により、有利なポリマーは、特に少ない粘度指数を有する。
【0028】
本発明の有利なポリマーは、卓越した酸化安定性を有する。
【0029】
本発明のポリマーは、特に容易にかつ簡単に製造され得る。この際、通常の大工業的装置を使用することができる。
【0030】
本発明によるポリマーは、スターポリマーである。ここで使用されるスターポリマーという概念は自体公知であり、この際、このポリマーは、次降からアームと称される3個以上の鎖から由来する中心を有する。この中心は、単一の原子又は1個の原子団であってよい。
【0031】
本発明によるスターポリマーは、3〜21、有利に5〜15及び特に有利に7〜12個のアームを有する。この際、ポリマー鎖又はアームは、1個の原子団であってよい中心から由来する。中心を形成する原子団は、有利に高々100個の炭素原子、特に有利に高々50個の炭素原子及び極めて特に有利に高々25個の炭素原子を有する。
【0032】
アームの数及び中心の炭素原子の数は、有利に、使用される重合開始剤から明らかであり、この際、アームの数は、重合開始剤が有する中心の数に依存し、かつ炭素原子の数は重合開始剤の種類及び構造に依存する。重合開始剤の種類は、重合法に依存する。
【0033】
本発明によるスターポリマーのアームの少なくとも3、有利に少なくとも5及び極めて特に有利に少なくとも8個は、アームの質量に対して、1種以上の式(I):
【化3】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される単位少なくとも40質量%、有利に少なくとも50質量%及び極めて特に有利に少なくとも80質量%を包含する。
【0034】
繰返し単位と言う概念は、専門分野で周知である。本スターポリマーは、多官能コアファースト重合開始剤から出発し、有利に"制御重合"を介して得ることができ、それには、制御−ラジカルATRP−、RAFT−及びNMP−法及び陰イオン及び陽イオン重合及びGTPが挙げられるが、それらに限定されるべきものではない。この際、二重結合が共有結合の生成下に開裂される。それに応じて、使用モノマーから繰返し単位が生じる。
【0035】
本発明は、有利に高い油溶性を有するポリマーを記載する。油溶性という概念は、本発明によるポリマー少なくとも0.1質量%、有利に少なくとも0.5質量%を有する、ベースオイル及び本発明によるポリマーの混合物が、巨視的な相を形成せずに、製造可能であることを意味する。この混合物中で、ポリマーは分散及び/又は溶解して存在し得る。油溶性は、殊に、親油性及び疎油性モノマーの割合及びベースオイルに依存する。この特性は当業者に公知であり、かつ各ベースオイルについて、親油性及び疎油性モノマーの割合を介して容易に調整され得る。
【0036】
"親油性モノマー"という概念は、分子量100000g/モルを有するそのホモポリマーが、パラフィンをベースとする鉱物油中0℃で、少なくとも0.1質量%、有利に少なくとも0.5質量%及び極めて特に有利に少なくとも1質量%の油溶性を有するエチレン系不飽和化合物を示す。
【0037】
"疎油性モノマー"という概念は、分子量100000g/モルを有するそのホモポリマーが、パラフィンをベースとする鉱物油中0℃で、高々0.1質量%、有利に高々0.05質量%及び極めて特に有利に高々0.01質量%の油溶性を有するエチレン系不飽和化合物を示す。
【0038】
本発明によるポリマーは、ポリマーの質量に対して、1種以上の式(I):
【化4】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位50〜100質量%、有利に55〜95質量%を包含する。
【0039】
式(I)のエチレン系不飽和エステル化合物には、特に、次のものが属する:
飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、フマレート及びマレエート、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;
不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えば、オレイル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;及び相応するフマレート及びマレエート。
【0040】
(メタ)アクリレートという表現は、メタクリレート及びアクリレート及びその2つを含む混合物を包含する。これらのモノマーは、広く公知である。この際、アルキル基は直鎖、環状又は分枝鎖であってよい。
【0041】
長鎖アルコール基を有するエステル化合物は、例えば、短鎖の(メタ)アクリレート、フマレート、マレエート及び/又は相応する酸と、長鎖の脂肪アルコールとの反応によって得られ、この際、一般にエステルの混合物、例えば、異なった長鎖のアルコール基を有する(メタ)アクリレートが生じる。
【0042】
この脂肪アルコールには、特に、オキソアルコール(Oxo Alcohol(登録商標))7911及びオキソアルコール(Oxo Alcohol(登録商標))7900、オキソアルコール(Oxo Alcohol(登録商標))1100;アルホール(Alfol(登録商標))610、アルホール(Alfol(登録商標))810、リアル(Lial(登録商標))125及びナホール(Nafol(登録商標))−型(Sasol Olefins & Sufactant GmbH);アルファノール(Alphanol(登録商標))79 (ICI);エパール(Epal(登録商標))610 及びエパール(Epal(登録商標))810(Ethyl Corporation);リネボール(Linevol(登録商標))79、リネボール(Linevol(登録商標))911及びネオドール(Neodol(登録商標))25E(Shell AG);デヒダッド(Dehydad(登録商標))−、ヒドレノール(Hydrenol(登録商標))−及びロロール(Lorol(登録商標))−型(Cognis);アクロポール(Acropol(登録商標))35及びエクサル(Exxal(登録商標))10(Exxon Chemicals GmbH);カルコール(Kalcol(登録商標))2465(Kao Chemicals)が属する。
【0043】
本発明の特別な1観点により、有利に、式(I)による長鎖のアルキル(メタ)アクリレートの混合物が使用される。アルコール基中に6〜15個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートの割合は、有利に、スターポリマーの製造のためのモノマー組成物の質量に対して、20〜95質量%の範囲にある。アルコール基中に16〜30個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートの割合は、有利に、スターポリマーの製造のためのモノマー組成物の質量に対して、0.5〜60質量%の範囲にある。
【0044】
更に、ポリマーは、他のモノマーから誘導される繰返し単位を有することができる。
【0045】
それには、殊に、C〜Cアルキル基を有する(メタ)アクリレート、フマレート及びマレエートが属する。
【0046】
ポリマーは、例えば、1種以上の式(II):
【化5】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’’ の基であり、ここで、R’’は、水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位0.1〜40質量%、有利に0.5〜30質量%及び特に有利に1〜20質量%を有することができる。
【0047】
式(II)のエチレン系不飽和エステル化合物の例は、特に、飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、フマレート及びマレエート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート及びヘキシル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート;不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えば、2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート及びビニル(メタ)アクリレートである。
【0048】
エチレン系不飽和エステル化合物のうちで、(メタ)アクリレートが、マレエート及びフマレートに比べて特に有利であり、即ち、特に有利な実施態様において、式(I)及び(II)のR、R、R及びRは水素である。一般に、メタクリレートはアクリレートより有利である。
【0049】
本発明によるポリマーは、分散性の酸素−及び/又は窒素−官能化モノマー(III)から誘導される繰返し単位30質量%まで、有利に20質量%まで、更に有利に10質量%までを任意に有することができる。
【0050】
特別な1観点により、分散性の酸素−及び/又は窒素−官能化モノマーは、アルコールR−OH又はアミンR−NR−Hから製造された、分散性の(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドであってよく、この際、Rは、独立して、少なくとも1個のヘテロ原子を有する、2〜200個の炭素原子、特に2〜20個の炭素原子、更に特に2〜10個の炭素原子を包含する基であり、かつRは、独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を有する基である。
【0051】
は、ヘテロ原子−含有の芳香族基及びヘテロ原子−含有の脂肪族アルキル−及びシクロアルキル基及びアルコキシー、シクロアルコキシ−、アルカノイル−、アルコキシカルボニル基を包含する。
【0052】
本発明により、芳香族基は、有利に6〜20個の、殊に6〜12個の炭素原子を有する1−又は多核の芳香族化合物の基を示す。有利な芳香族基は、ベンゾール、ナフタリン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、フラン、ピロール、オキサゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、カルバゾール、ピリジン、ビピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シノリン、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジン又はキノリジン、4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アシリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリン及びフェナントレンから誘導される。
【0053】
有利なアルキル基には、メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、1−ブチル−、2−ブチル−、2−メチルプロピル−、t−ブチル基、ペンチル−、2−メチルブチル−、1,1−ジメチルプロピル−、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、1,1,3,3−テトラメチルブチル−、ノニル−、1−デシル−、2−デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、ペンタデシル−及びエイコシル−基が属する。
【0054】
有利なシクロアルキル基には、シクロプロピル−、シクロブチル−、シクロペンチル−、シクロヘキシル−、シクロヘプチル−及びシクロオクチル−基が属する。
【0055】
有利なアルコキシ基には、その炭化水素基が前記の有利なアルキル基の1つであるアルコキシ基が属する。
【0056】
有利なシクロアルコキシ基には、その炭化水素基が前記の有利なシクロアルキル基の1つであるシクロアルコキシ基が属する。
【0057】
有利なアルカノイル基には、ホルミル−、アセチル−、プロピオニル−、2−メチルプロピオニル−、ブチリル−、バレロイル−、ピバロイル−、ヘキサノイル−、デカノイル−及びドデカノイル−基が属する。
【0058】
有利なアルコキシカルボニル基には、メトキシカルボニル−、エトキシカルボニル−、プロポキシカルボニル−、ブトキシカルボニル−、t−ブトキシカルボニル−基、ヘキシルオキシカルボニル−、2−メチルヘキシルオキシカルボニル−、デシルオキシカルボニル−又はドデシルオキシカルボニル−基が属する。
【0059】
前記の基Rは、他の置換基、例えば、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル又はヘキシル;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル及びシクロヘキシル;又はハロゲニドも有することができる。
【0060】
基R中の有利なヘテロ原子には、酸素及び窒素の他に、硫黄、硼素、珪素及び燐も属する。ヘテロ原子は、有利に、アルコール−、エーテル−、エステル−、アミノ−又はアミド基の形で存在し得る。
【0061】
本発明の特別な1実施態様により、基Rは、少なくとも1種の式 −OR 又は −NR の基を有し、この際、Rは、独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を有する基を包含する。
【0062】
基R中のヘテロ原子対炭素原子の数比率は広い範囲であってよい。この比率は、有利に、1:1〜1:10、殊に、1:1〜1:5及び特に有利に1:2〜1:4の範囲である。
【0063】
分散性の酸素−及び/又は窒素−官能化モノマー(III)から誘導される繰返し単位には、殊に、アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAE(M)A)、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレートから誘導される繰返し単位が属する。
【0064】
それには、殊に、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(DMAP(M)AAm)から誘導される繰返し単位も属する。
【0065】
それには、殊に、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HE(M)A)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレートから誘導される繰返し単位も属する。
【0066】
それには、殊に、複素環系(メタ)アクリレート、例えば、2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノンから誘導される繰返し単位も属する。
【0067】
それには、殊に、(メタ)アクリル酸のニトリル及び他の窒素含有メタクリレート、例えば、N−(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N−(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシルケチミン、メタクリロイルアミドアセトニトリル、2−メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチルメタクリレートから誘導される繰返し単位も属する。
【0068】
分散性の酸素−及び/又は窒素−官能化モノマー(III)から誘導される繰返し単位には、複素環系ビニル化合物、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾールから誘導される繰返し単位も属する。
【0069】
更に、ポリマーは、群(I)、(II)又は(III)に属さない他のコモノマー(IV)、殊に、スチロールモノマー、例えば、スチロール;側鎖中に1個のアルキル置換基を有する置換スチロール、例えば、α−メチルスチロール及びα−エチルスチロール;環にアルキル置換基を有する置換スチロール、例えば、ビニルトルオール及びp−メチルスチロール;ハロゲン化スチロール、例えば、モノクロルスチロール、ジクロルスチロール、トリブロムスチロール及びテトラブロムスチロール、ビニルエステル、例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート、又はビニルハロゲニド、例えば、ビニルクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンクロリド及びビニリデンフルオリドの繰返し単位を有することができる。
【0070】
前記の全エチレン系不飽和モノマーは、単一で又は混合物として使用され得る。更に、一定の構造、例えば、ブロックコポリマー又はグラジエントコポリマーを得るために、モノマー組成物をポリマーのアームの重合中に変化させることが可能である。
【0071】
本発明のスターポリマーは、有利に、質量平均分子量Mを10000g/モル〜450000g/モル、特に有利に25000g/モル〜150000g/モル及び極めて特に有利に30000g/モル〜90000g/モルの範囲で有する。
【0072】
本発明によるスターポリマーは、有利に、狭い分子量分布を示し、単一様相が特に有利である。多分散度M/Mは、有利に、1.0〜2、特に有利に1.0〜1.3の範囲にある。
【0073】
質量平均分子量M及び数平均分子量Mは、GPCによって測定され、この際、多分散度M/Mはこれらの値の商である。その測定が周知である見かけの値が重要である。
【0074】
測定は、例えば、35℃で、テトラフラン中で、そのMピークが対数的に5・10〜2・10g/モルの範囲に渡って一様に分配している≧25個の標準(Polymer Standards Service又はPolymer Laboratories)の一組からのポリメチルメタクリレート−検量線に対して行なうことができる。この際、6個のカラム(Polymer Standards Service SDV 100Å/2xSDV LXL/2xSDV 100Å/Shodex KF-800D)の組合せを使用することができる。
【0075】
本発明の有利なポリマーは、卓越した濾過性を示す。
【0076】
ポリマーは、ISO 13357−2(5μm−フィルター)の段階1下での投影濾過性に対して、有利に少なくとも80%、特に有利に少なくとも90%及び極めて特に有利に少なくとも95%の濾過性を有する。
【0077】
有利なポリマーは、ISO 13357−2(5μm−フィルター)の段階2下での濾過の全経過に対して、少なくとも60%、特に有利に少なくとも70%及び極めて特に有利に少なくとも80%の濾過性を有する。
【0078】
本発明の特別な1観点により、繰返し単位はブロック及び断片の形で存在し得る。
【0079】
スターポリマーは、少なくとも1個の、有利に数個の及び極めて特に有利に全部のアーム中に、少なくとも2個のブロックを有することが有利である。ブロックは、1種以上のモノマー構成要素を含む一定の組成を有する。
【0080】
群(I)のモノマーは、式(I)のエチレン系不飽和エステル化合物である。群(II)のモノマーは、式(II)のエチレン系不飽和エステル化合物である。群(III)のモノマーは、前記の分散性の酸素−及び/又は窒素−官能化モノマーに相応する。群(IV)のモノマーは、前記の更なるコモノマーに相応する。
【0081】
群(I)のモノマーは、有利に、親油性である。群(I)、(II)及び(III)のモノマーは、有利に、疎油性である。
【0082】
スターポリマーは、式(I)のモノマーから誘導される繰返し単位を高割合で包含する少なくとも1個の親油性ブロック、及び群(II)、(III)及び/又は(IV)のモノマーから誘導される繰返し単位を高割合で包含する少なくとも1個の疎油性ブロックを有することが有利である。
【0083】
特別な1観点により、群(II)、(III)及び/又は(IV)の疎油性モノマーを多く含むブロックは、1種以上の群(II)、(III)及び/又は(IV)のエチレン系不飽和モノマーから誘導される繰返し単位を、ブロックの質量に対して、少なくとも50質量%、特に有利に少なくとも70質量%有し得る。
【0084】
1種以上の群(II)、(III)及び/又は(IV)のモノマーから誘導される疎油性の繰返し単位を高割合で有する前記のブロックが、有利にスターポリマーの中心付近に配置されている場合には、この構造は粘度指数−上昇作用を伴う。この際、"中心付近"という表現は、ブロックが、有利に、相応するアームの最初の半分、特に有利に最初の三分の一に配置されていることを意味し、この際、中心が始まりを示す。
【0085】
1種以上の群(II)、(III)及び/又は(IV)のモノマーから誘導される疎油性の繰返し単位を高割合で有する前記のブロックが、スターポリマーのアームの末端付近に配置されている場合には、この構造は粘度指数−低下作用を伴う。この際、"アームの末端付近"という表現は、ブロックが、有利に、相応するアームの第二半分、特に有利に、最後の三分の一に配置されていることを意味し、この際、中心が始まりを示す。
【0086】
少なくとも1個のアームの末端に群(III)の分散性モノマーを高割合で有するポリマーは、しばしば、摩擦改善剤として驚異的に高い作用を有し得る。
【0087】
従って、特別な1観点により、ポリマーは、中心付近に、1種以上の式(II)及び/又は他の群(IV)によるコモノマーのエチレン系不飽和エステル化合物を高割合で包含するブロック、及び分散性モノマー(III)から誘導されるブロックを、アームの末端付近で有し得る。
【0088】
純粋な疎油性断片の長さは、少なくとも3、有利に少なくとも5及び特に有利に少なくとも10個のモノマー単位を有する。疎油性断片は、有利に、10〜100の範囲で質量平均重合度を有する。
【0089】
本発明によるポリマーは、様々な方法で製造することができる。
【0090】
即ち、これらのポリマーは、多官能コアファースト重合開始剤から出発して、殊に、制御ラジカル重合法、例えば、ATRP、RAFT又はNMPによって製造され得る。
【0091】
ATRP−法は自体公知である。この際、"リビング"ラジカル重合が重要であることが想定されるが、機構の説明によって限定が行われるべきではない。この方法で、遷移金属化合物を、移動可能な原子団を有する化合物と反応させる。この際、移動可能な原子団は、遷移金属化合物上に移転し、それによって金属は酸化される。この反応で、エチレン基に付加するラジカルが生じる。しかし、遷移金属化合物上への原子団の移動は可逆性であり、従って、原子団は生長するポリマー鎖上で逆移動され、それによって制御重合系が生成される。従って、ポリマーの構築、分子量及び分子量分布が制御される。更に、特許出願、WO96/30421、WO97/47661、WO97/18247、WO98/40415及びWO99/10387は、前記のATRPの変法を明らかにしている。
【0092】
更に、本発明によるポリマーは、例えば、RAFT−法を介しても得ることができる。この方法は、例えば、WO98/01478及びWO2004/083169に詳説されていて、公開の目的のために、それに対して明確に参照が行われる。
【0093】
更に、本発明によるポリマーは、特にUS4581429に記載されているNMP−法によって得られる。
【0094】
これらの方法は、包括的に、殊に更なる参照で、K. Matyjaszewski, T. P. Davis, ラジカル重合の手引書(Handbook of Radical Polymerization), Wily Interscience, Hoboken 2002 に記載されていて、公開の目的のために、それに対して明確に参照が行われる。
【0095】
本発明によるスターポリマーは、多官能コアファースト重合開始剤から出発して、他の公知の"制御"重合法を介して、例えば、陰イオン重合法、陽イオン重合法又はGTPを介して製造することもできる。後者の方法は自体公知であり、G. Odian, 重合の原則(Principles of Polymerization), John Wiley & Sons, 4th ed., New York 2004 に記載されている。
本発明によるスターポリマーを得るために、この際、有利に、3〜21、特に有利に5〜15及び極めて特に有利に7〜12個の移動可能基を有する重合開始剤を使用する。この重合開始剤は多種自体公知であり、前記の文献に記載されている。
【0096】
これには、特に、トリス(ブロモメチル)メシチレン、テトラキス(ブロモエメチル)ベンゾール、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゾール及びフェノール−、シクロテトラシロキサン−、シクロホスファゼン−、カリキサレン−及びシクロデキストリン誘導体が属する。
【0097】
更に、糖をベースとする、例えば、グルコース及びサッカロースをベースとする好適な重合開始剤を包含する。これには、特に、ATRP−重合開始剤、ペンタ(α−ブロモイソブチリル)グルコース及びオクタ(α−ブロモイソブチリル)サッカロースが属する。
【0098】
制御ラジカル重合は、標準圧、減圧又は超過圧で実施され得る。重合温度も絶対的ではない。しかし、それは一般に−20°〜200℃、有利に0°〜150℃及び特に有利に50°〜120℃の範囲にある。
【0099】
制御ラジカル重合は、溶剤と共に又は溶剤無しに実施され得る。この際、溶剤の概念は、広く解されるべきである。溶剤の選択は、使用されるモノマーの極性によって行われ、この際、100N−油、より軽いガス油及び/又は芳香族炭化水素、例えば、トルオール又はキシロールを有利に使用することができる。
【0100】
本発明によるスターポリマーを、油組成物中で、殊に、潤滑油組成物及び化粧品組成物中で有利に使用することができる。
【0101】
潤滑油組成物は、有利に、API群I、II、III、IV及び/又は群Vのベースオイルを包含する。潤滑油組成物は、少なくとも1種の潤滑油を包含する。
【0102】
潤滑油には、殊に、鉱物油、合成油及び天然油が属する。
【0103】
鉱物油は自体公知であり、商業的に得られる。これは、一般に、鉱油又は原油から、蒸留及び/又は精製及び場合により他の精製−及び仕上げ法によって得られ、この際、鉱物油の概念は、殊に、原油又は鉱油の高沸成分のことである。一般に、鉱物油の沸点は、5000Paで、200℃以上、有利に300℃以上である。頁岩油の低温炭化法、石炭のコークス化、褐炭の空気遮断下での蒸留及び石炭又は褐炭の水素化による製造が同様に可能である。鉱物油は、植物由来の原料から(例えば、ホホバ、菜種から)又は動物由来の原料から(ヒズメ油)少量製造される。従って、鉱物油は、由来に応じて、芳香族系、環状、分枝鎖及び直鎖の炭化水素を異なった割合で有する。
【0104】
一般に、原油又は鉱物油中で、パラフィンベースの、ナフテン系の、及び芳香族系の成分を区別し、この際、パラフィンベースの成分の概念は、長鎖又は強分枝鎖のイソ−アルカンのことであり、ナフテン系の成分はシクロアルカンのことである。更に、鉱物油は、由来及び精製に応じて、n−アルカン、僅少な分枝鎖度を有するイソ−アルカン、いわゆるモノメチル分枝鎖パラフィン、及び極性が限定的に認められるヘテロ原子、殊に、O、N及び/又はSを有する化合物を異なった割合で有する。しかし、割当は困難であり、それというのも、単一のアルカン分子は、長鎖で分枝鎖の基も、シクロアルカン基及び芳香族成分も有し得るからである。本発明の目的のために、割当は、例えば、DIN 51378により行なうことができる。極性成分は、ASTM D 2007により決定することもできる。
【0105】
n−アルカンの割合は、有利な鉱物油中で3質量%以下であり、O、N及び/又はS−含有化合物の割合は、6質量%以下である。芳香族体及びモノメチル分枝鎖パラフィンの割合は、一般に、各々0〜40質量%の範囲にある。重要な1観点により、鉱物油は主にナフテン系及びパラフィンベースのアルカンを包含し、これは、一般に13以上、有利に18以上及び極めて特に有利に20個以上の炭素原子を有する。これらの化合物の割合は、一般に≧60質量%、有利に≧80質量%であるが、これによって限定されるべきものではない。有利な鉱物油は、各々鉱物油の総質量に対して、芳香族成分0.5〜30質量%、ナフテン系成分15〜40質量%、パラフィンベース成分35〜80質量%、n−アルカン3質量%まで及び極性化合物0.05〜5質量%を含有する。
【0106】
慣例法、例えば、尿素分離及び珪酸ゲルでの液体クロマトグラフィーによって行われる特に有利な鉱物油の分析は、例えば、次の成分を示し、この際、%表示は各々使用される鉱物油の総質量に関連する:
約18〜31個のC−原子を有するn−アルカン:0.7〜1.0%、
18〜31個のC−原子を有する低分枝鎖のアルカン:1.0〜8.0%、
14〜32個のC−原子を有する芳香族体:0.4〜10.7%、
20〜32個のC−原子を有するイソ−及びシクロ−アルカン:60.7〜82.4%、
極性化合物:0.1〜0.8%、
ロス:6.9〜19.4%。
【0107】
鉱物油の分析及び偏差組成を有する鉱物油の列挙に関する重要な指摘は、例えば、ウルマンス工業的化学辞典(Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry), 第5版(5th Edition) CD-ROM, 1997, 標語"潤滑油及び関連製品(lubricants and related products)"にある。
【0108】
合成油は、特に、有機エステル、例えば、ジエステル及びポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、殊に、その内でポリアルファオレフィン(PAO)が有利であるポリオレフィン、シリコン油及びペルフルオルアルキルエーテルを包含する。これらは、大抵、鉱物油よりもやや高価であるが、その効率に関して利点を有する。
【0109】
天然油は、動物性又は植物性油、例えば、ヒズメ油又はホホバ油である。
【0110】
これらの油は、混合物として使用することもでき、かつ様々に商業的に得られる。
【0111】
油組成物中のスターポリマーの濃度は、組成物の総質量に対して、有利に0.1〜40質量%の範囲、特に有利に1〜25質量%の範囲にある。
【0112】
有利な油組成物は、ASTM D 445により40℃で測定される10〜120mm/sの範囲、特に有利に22〜100mm/sの範囲の粘度を有する。
【0113】
本発明による油組成物は、殊に、永久剪断安定性指数(PSSI)として表示され得る、一般に高い剪断安定性を有する。ASTM D5621(超音波40分間)によるPSSIは、有利に高々30、特に有利に高々25及び極めて特に有利に高々20である。DIN 51350、6部(円錐ローラー軸受20時間(h))により測定したPSSIは、有利に高々70、特に有利に高々50及び極めて特に有利に高々30である。
【0114】
本発明の特別な1観点により、有利な油組成物は、ASTM D 2270により測定される合目的に調整可能な0〜300の範囲の粘度指数を有する。この際、本発明の特別な1観点により、ポリマーは、少なくとも150、有利に少なくとも200及び極めて特に有利に少なくとも250の粘度指数を有する。本発明の他の1観点により、ポリマーは高々100、特に有利に高々50の粘度指数を有する。
【0115】
高い粘度指数は、任意に存在する疎油性の繰返し単位がスターポリマーの中心付近に配置されていることを包含する。疎油性の繰返し単位には、殊に、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートが属する。
【0116】
他の使用のために、例えば、化粧品添加剤として、ゲル化を可能にするために、会合特性が所望され得る。従って、この種類のポリマーは、殊にゲル化剤として使用され得る。この種類の低粘度の会合ポリマーでは、スターポリマーのアームの末端付近で疎油性の会合繰返し単位を高割合で包含する、少なくとも1種のブロックが存在する。
【0117】
油組成物は、特別な潤滑油組成物の場合に、前記のスターポリマーのほかに、他の添加剤及び添加物質を含有することができる。
【0118】
この添加剤には、特に、抗酸化剤、腐蝕防止剤、抗泡剤、抗−摩擦(Wear)−成分、染料、色安定剤、清浄剤及び/又はDI−添加剤が属する。
【0119】
更に、この付加的な添加剤は、粘度指数改善剤、流動点改善剤、分散剤及び/又は、特に有利にアルコール基中に1〜30個の炭素原子を有する直鎖ポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとし得る摩擦変性剤を包含する。この直鎖ポリアルキル(メタ)アクリレートは、殊に、冒頭に記載した公知技術水準に記載されていて、この際、このポリマーは分散性モノマーを有することができる。
【0120】
本発明によるスターポリマーは、有利に、粘度変性剤(粘度変性剤(viscosity modifier))、流動点改善剤、分散剤及び/又は摩擦変性剤として使用される。粘度変性剤として、前記により、粘度指数改善剤も、ゲル化剤も解されるべきである。
【0121】
次に、本発明を実施例により詳説するが、これに限定されるべきものではない。
【0122】
A)ポリマーの製造
1.多官能重合開始剤の製造
5−アーム−重合開始剤ペンタ(α−ブロモイソブチリル)グルコース及び8−アーム−重合開始剤オクタ(α−ブロモイソブチリル)サッカロースの合成を、文献記載の方法により(M. H. Stenzel-Rosenbaum, T. P. Davis, V. Chen, A. Fane, Macromolecules 34 (2001), 5433)、収率73%又は72%で行なった。構造−確認は、各々H−NMRを介して行なわれ、これは文献−データ(M. H. Stenzel-Rosenbaum et. al)と一致した。
【0123】
更に、2種の重合開始剤を、MALDI−ToF−MSを介して特徴付けた。それには、加速電圧20kVで337nm−N−レーザーを用いるブルッカーダルトニクスリフレックス(Bruker Daltonics Reflex)3を使用した。試料を、各々質量比2,5−ジヒドロキシ安息香酸/LiCl/重合開始剤=10/1/1で混合させた。ペンタ(α−ブロモイソブチリル)グルコースの場合には、100モル%が5倍−官能化(M+MLi+=931g/モル)と同定され、かつオクタ(α−ブロモイソブチリル)サッカロースの場合には、87モル%が8倍−官能化(M+MLi+=1541g/モル)及び13モル%が7倍−官能化(M+MLi+=1393g/モル)と同定された。
【0124】
2.本発明によるスターポリマーの製造
滴下ロート、サーベル型攪拌器、冷却器、温度計及びN−供給口を備えた2L入り−反応フラスコから成る装置を使用した。先ず、表1によるモノマー500gをi−オクタン500gと一緒に反応フラスコ中に前以て装入させた。引き続き、CuCl0.6g、CuBr0.01g及び重合開始剤(ペンタ(α−ブロモイソブチリル)グルコース又はオクタ(α−ブロモイソブチリル)サッカロース25〜2.5g、所望のアーム数及び所望の分子量に応じて)を添加した。N−導入による不活化及び60℃への加熱後に、反応を開始させるために、ペンタメチレンジエチレントリアミン1.1gを添加したが、この際、錯化触媒が不完全にしか溶解していないので、不均一の混合物が生じた。検知可能な発熱反応後に、60°で6時間、次いで70℃で6時間、次いで80°で6時間及び更に90℃で40時間反応させた[スター(ブロック)−PAMAの場合には、90℃で、ブロックコポリマーを5分間以内に滴加し、更に90℃で40時間反応させた]。反応停止は、i−オクタン中CuBr10g/L、ペンタメチレンジエチレントリアミン10g/L及びイルガノックス1010(Irganox(登録商標))5g/Lを含む溶液5mlの添加によって行われた。反応溶液を、Al−カラムを介して、銅塩を除去するために、熱時加圧濾過させた。生成物を3倍容量のメタノールで数回浸出させ、メタノールをデカント除去した。最後に、メタノールを留去させた。溶剤不含で100%粘性〜ゴム状のポリマーを得た。
【0125】
3.狭分布の直鎖ポリマーの製造
全ての狭分布の直鎖(ブロック)−PAMA〜比較例7までを、ATRPを介して製造した。銅−錯化モノマーDMAPMAAmを含有する比較例7を、RAFTを介して製造した。
【0126】
3.1.比較例1〜6の製造(ATRP)
滴下ロート、サーベル型攪拌器、冷却器、温度計及びN−供給口を備えた2L入り−反応フラスコから成る装置を使用した。先ず、表1によるモノマー600g[直鎖ブロック−PAMA比較例6の場合には、C12/13/15MA564g]を、100N−油400gと一緒に、反応フラスコ中に前以て装入させ、ドライアイス添加及びNの導入によって不活化させた。引き続き、混合物を攪拌下に95℃に加熱した。加熱過程中、約70℃で、CuBr1,1g及びペンタメチレンジエチレントリアミン1.4gを添加させたが、この際、錯化触媒が不完全にしか溶解しなかったので、不均一の混合物が得られた。95℃の所定温度の達成後に、反応を開始させるために、エチルブロモイソブチレート(所望の分子量に応じて7.5g〜1.5g)を添加した。95℃で6時間反応させた[比較例6の場合には、95℃で2時間反応させ、DMAEMA36gを5分間以内に滴加して、更に4時間95℃で反応させた]。引き続き、銅塩の除去のために、混合物を熱時加圧濾過させた(ザイツ(Seitz)T100 10μmデプスフィルター)。60%の粘性溶液を得た。
【0127】
3.2.比較例7の製造(RAFT)
比較例7は、滴下ロート、サーベル型攪拌器、冷却器、温度計及びN−供給口を備えた2L入り−反応フラスコ中で、RAFTを介して製造した。そのために、C12/13/14/15MA540gを、クミルジチオベンゾエート2.71g、t−ブチルペルオクトエート1.14g及び100N−油400gと一緒に反応フラスコ中に前以て装入させ、ドライアイス添加及びNの導入によって不活化させた。引き続き、混合物を85℃に加熱した。5時間後に、DMAPMAAm60gを滴加した。更に2.5時間後に、t−ブチルペルオクトエート0.60gを添加し、反応混合物を85℃で1晩攪拌した。60%の帯赤色粘性溶液を得た。
【0128】
4.慣例の直鎖ポリマーの製造(比較例8〜13)
表1によるモノマー600g及びn−ドデシルメルカプタン(所望の分子量に応じて、20g〜2g)を混合する。このモノマー/調整剤−混合物44.4gを100N−油400gと一緒に、サーベル型攪拌器、冷却器、温度計、供給ポンプ及びN−供給口を備えた2L入り−反応フラスコ中に充填させる。この装置を不活化させ、油浴を併用して100℃に加熱する。総残量のモノマー/調整剤−混合物555.6gに、t−ブチルペルオクトエート1.4gを加える。反応フラスコ中の混合物が100℃の温度に達した時に、t−ブチルペルオクトエート0.25gを添加し、同時に、モノマー/調整剤/重合開始剤−混合物の供給をポンプにより開始する。供給は、100℃で210分間の時間に渡って一様に行われる。供給の2時間後に、再びt−ブチルペルオクトエート1.2gを添加し、100℃で更に2時間攪拌する。60%の澄明な溶液を得た。
【0129】
B)分子量の測定
ポリマーの質量平均分子量M及び多分散度指数PDIを、GPCによって測定した(表1)。測定は、テトラヒドロフラン中で、35℃で、≧25個の標準(Polymer Standards Service 又はPolymer Laboratories)の1組からのポリメチルメタクリレート−検量線に対して行われ、そのMピークは対数的に一様に5・10〜2・10g/モルの範囲にわたって分布されていた。6個のカラム(Polymer Standards Service SDV 100Å/2xSDV LXL/2xSDV 100Å/Shodex KF-800D)を含む組合せを使用した。シグナル受信のために、RI−検出器(Agilent 1100 Series)を使用した。
【0130】
スター(ブロック)−PAMAの分子量Mとは、スター構造−条件で変化される関係、流体力学的容量及び分子量Mに基づく単に見かけの値のことである。典型的には、スターポリマーについて測定された値は、類似のPSSIの慣例的な又は狭分布の直鎖PAMAのそれよりもやや高い。
【0131】
ATRPを介して製造されたスターポリマーの全ての分子量分布は、存在するとすれば、二重の数平均Mで少し検出可能であるラジカルスター−スター−カップリング又はより高い分子量への突起で検出可能である架橋結合への全く指摘のない、厳正に単一様相であった。
【0132】
【表1】

【0133】
相応するアルコール混合物から誘導されたメタクリレート混合物のC12/14MA、C12/13/14/15MA、C12/13/14/15/16/18MA、メチルメタクリレートのMMA、ジメチルアミノエチルメタクリレートのDMAEMA及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドのDMAPMAAmがある。コポリマーに関する数表示は、モノマーの質量割合に関する。指数は、使用された重合開始剤から生じるアームの数を表わす。
【0134】
C)ポリマーの評価
100N−キャリヤーオイル中の溶液としてのみ存在する慣例の直鎖PAMA及び狭分布の直鎖(ブロック)−PAMAの場合には、組成の際に、100N−キャリヤーオイルは無視され、各々、組成油−秤量に付加された。
【0135】
1.PSSI及びVIに関するポリマーの粘稠化作用
表2は、類似のPSSI(DIN 51350により(部6、円錐ローラー軸受20時間)、ASTM D5621により(超音波40分間)又はDIN 51382により(ボッシュ−ポンプ(Bosch-Pumpe)30サイクル)及び類似VI(ASTM D2270)で、慣例的に製造された直鎖PAMA(1.6≦PDI≦2.7)及び狭分布の直鎖PAMA(1.3≦PDI≦1.5)に比較して、本発明によるPAMA−スターの場合には、100℃KV100=14.0mm/s(ASTM D445)での運動粘度に必要なポリマー濃度が、100N−油で著しく減少していることを実証する。
【0136】
150N−油は、KV100=5.42mm/s、KV40=31.68mm/s及びVI=105を粘度計測データとして有した。各々0.6%シェブロン−オロナイト−オロア(Chevron-Oronite Oloa)4992摩擦保護添加剤を添加した。
【0137】
【表2】

【0138】
更に、表3は、明らかにより良好な長時間−PSSI(DIN 51350、部6、円錐ローラー軸受192時間)及び類似VIで、慣例的に製造された直鎖PAMA比較例9に比べて、本発明によるPAMA−スター例1の場合に、VII−不含でPPD−及びD/I−パケット−含有のAPI−群−III GO−組成中の、KV100=13.15mm/sに必要なポリマー濃度が著しく減少していることを示す。この際、殊に、PAMA−スター例1は、慣例的に製造した直鎖PAMA比較例9と同様に、類似の低温特性(DIN 51398によってブルックフィールド(Brookfield)−粘度計で測定した−40℃での動力学粘度BF−40、ASTMによる−10℃での運動粘度KV−10、ASTM D97による流動点(流動点(pour point)PP)も有することが注目に値する。
【0139】
水素添加分解油及びポリアルファオレフィンをベースとする、VII−不含でPPD−含有(流動点低下剤(pour point depressant))及びD/I−パケット−含有(分散剤&抑制剤(dispersant & inhibitor)のAPI−群−III GO−組成物(ギアオイル(gear oil))は、PP=−45℃を有する粘度計測データとして、KV100=5.15mm/s、KV40=25.30mm/s、及びVI=137を有した。
【0140】
【表3】

【0141】
2.摩擦特性の評価
摩擦変性剤としての本発明によるPAMA−ブロックスターの特性も検査した(表4)。そのために、ポリマーを、150N−ベースオイル(BP Enerpar 11)で、KV120=9.2mm/sに調整した。引き続き、組成物を、摩擦計(Mini Traction Machine 3, PCS Instruments)により、0.005〜2.5m/sの範囲の速度で摩擦測定をした。この際、30Nの負荷(0.93GPa最高ヘルツ接触圧に相応する)及び滑り/ロール−率50%で、温度は120℃で一定であった。ディスクは、Typ AISI 52100の鋼鉄製(直径40.0mm、粗面度rms(平均平方根(root mean square))25〜30nm、ロックウエル−C−硬度63、弾性係数207GPa)であり、ボール(直径19.0mm、粗面度rms10〜13nm、ロックウエル−C−硬度58〜65、弾性係数207Gpa)も同様であった。摩擦試験の結果として、ストライベック(Stribeck)−曲線が得られ、これから摩擦係数fを10mm/sで調べた。
【0142】
本発明による、外へ回転するDMAEMA−ブロックを有するPAMA−ブロックスター例6は、最少の固体含量にも拘らず、ATRPを介して製造された直鎖PAMA−ブロックコポリマー比較例6及び比較例7よりも、著しく良好な摩擦係数fを有することが判明する。
【0143】
【表4】

【0144】
3.濾過性の評価
PAMA−スターの、例えば、粒子不含の油圧応用組成物中での使用可能性の試験のために、無水の濾過性を、ISO 13357−2により、1バール圧で5μm−フィルターによって試験した(表6)。この試験で、段階1は、濾過の早期データからの投影濾過性F≦100%を示し、かつ段階2は濾過の全経過に渡る濾過性F≦100%を示す。
【0145】
この際、150N−油中のPAMA−スター例2は、慣例的に製造された直鎖の比較例13に対して比較された。例2については、使用された組成物中のポリマー含量はより高く、従って、流動性KV40及びKV100はより低いが、濾過性に関して驚異的な利点を示す。
【0146】
【表5】

【0147】
4.酸化安定性の評価
酸化安定性の試験(表7)のために、酸化試験を、CEC L−48−A−00(B)により(160℃、192時間、通気5L/h)VII−不含の、PPD−及びD/I−パケット−含有のAPI−群I GO−組成物中5.3%のポリマー溶液で実施し、相対的変化△KV100relを測定した。酸化を行った後に、付加的に、n−ヘキサン−不溶性成分Is(不溶物(insolubles))を懸濁液から重量計測法で測定した。慣例的に製造された直鎖PAMA(比較例11)との比較は、PAMA−スター例2の驚異的な利点を示した。
【0148】
前記のAPI−群−I GO−組成物は、パラフィン系鉱物油に基づいていて、粘度計測データKV40=21.96mm/s、KV100=4.33mm/s及びVI=107を有する。
【0149】
【表6】

【0150】
D)ゲル化剤としての使用
表8は、類似PSSIのポリマー試料(DIN 51350(部6、円錐ローラー軸受20時間)により又はASTM D5621(超音波40分間)により)について、例えば、本発明によるPAMA−ブロックスター例8及び例9の場合には、ATRPを介して製造された直鎖PAMA比較例3及び比較例5に比較して、KV100=14.0mm/sに必要な150N−油中のポリマー濃度を著しく減少させることを新たに実証する。この際、付加的に、外へ回転したMMA−ブロックを有するPAMA−ブロックスターのブロック状構造は、粘度を、低下された温度(40℃)での可逆的会合粘稠化を介して非常に高く上昇させようとすることが殊に注目に値する(表8)。このことは、例7及び8の場合に、比較例3及び比較例5と比較して、合目的に僅少なVIに反映する。しかし、剪断は、PSSI40℃>PSSI100℃≡PSSIという観察で検知可能な、40℃で所与の会合効果を再び破壊する。しかし、典型的には、直鎖PAMAについては、PSSI40℃=PSSI100℃〜PSSI40℃≦PSSI100℃が当てはまる。
【0151】
150N−油は、粘度計測データとして、KV100=5.42mm/s、KV40=31.68mm/s及びVI=105を有した。各々0.6%シェブロン−オロナイト−オロア4992摩擦保護添加剤を添加した。
【0152】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの質量に対して、1種以上の式(I):
【化1】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位50〜100質量%を包含するポリマーにおいて、ポリマーは、3〜21個のアームを有するスターポリマーであり、かつアームの少なくとも3個は、アームの質量に対して、1種以上の式(I):
【化2】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、7〜30個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’ の基であり、ここで、R’は、水素又は7〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位少なくとも40質量%を包含することを特徴とする油溶性ポリマー。
【請求項2】
ポリマーは、ISO 13357−2による投影濾過性(段階1)に対して、少なくとも90%の濾過性を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
ポリマーは、ISO 13357−2による濾過の全経過(段階2)に対して、少なくとも70%の濾過性を有する、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
スターポリマーの中心は、高々50個の炭素原子を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
スターポリマーは5〜12個のアームを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
スターポリマーは、質量平均分子量Mを25000〜150000g/モルの範囲で有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
スターポリマーは、多分散度M/Mを1.0〜1.3の範囲で有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
ポリマーは、1種以上の式(II):
【化3】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を表わし、R及びRは、独立して、水素又は式 −COOR’’ の基であり、ここで、R’’は、水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]のエチレン系不飽和エステル化合物から誘導される繰返し単位0.1〜40質量%を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
ポリマーは、分散性モノマー(III)から誘導される繰返し単位30質量%までを有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
分散性モノマーは、アルコールR−OHをベースとする分散性(メタ)アクリレート又はアミンR−NR−Hをベースとする(メタ)アクリルアミドであり、Rは、独立して、少なくとも1個のヘテロ原子を有する2〜200個の炭素原子を包含する基であり、かつRは、独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を有する基である、請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
基Rは、少なくとも1個の式 −OR又は−NRの基を包含し、ここで、基Rは、独立して、水素又は1〜20個の炭素原子を有する基である、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
基R7は、高々10個の炭素原子を包含する、請求項10又は11に記載のポリマー。
【請求項13】
スターポリマーは、少なくとも2個のブロックを有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項14】
スターポリマーは、少なくとも1個の親油性及び1個の疎油性ブロックを有する、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
少なくとも1個の疎油性ブロックは、ブロックの質量に対して、1種以上の式(II)のエチレン系不飽和エステル化合物、分散性モノマー(III)及び/又は群(IV)による他のコモノマーから誘導される繰返し単位少なくとも50質量%を有する、請求項14に記載のポリマー。
【請求項16】
ポリマーは、疎油性ブロック内に、3個以上の整数の断片長さを有する疎油性断片を有する、請求項14又は15に記載のポリマー。
【請求項17】
疎油性ブロックは、粘度指数−上昇性スターポリマーの中心付近に配置されている、請求項14から16までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項18】
疎油性ブロックは、粘度指数−低下性スターポリマーのアームの末端付近に配置されている、請求項14から16までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項19】
ポリマーは、中心付近に、1種以上の式(II)のエチレン系不飽和エステル化合物の高含量及び/又は他の式(IV)のコモノマーを包含する疎油性ブロック、及び分散性モノマー(III)から誘導される疎油性ブロックをアームの末端付近に有する、請求項17又は18に記載のポリマー。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項に記載のポリマーを製造する方法において、ポリマーを、制御重合によって、多官能重合開始剤から出発して製造することを特徴とする方法。
【請求項21】
ポリマーを、制御ラジカル重合によって、多官能重合開始剤から出発して製造する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
重合は、油及び/又は非極性溶剤の存在下で行なわれる、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から19までのいずれか1項に記載のスターポリマーを含有する油組成物。
【請求項24】
油組成物は、請求項1から19までのいずれか1項に記載のスターポリマー1〜25質量%を包含する、請求項23に記載の油組成物。
【請求項25】
ASTM D5621(超音波40分間)によるPSSIは、25以下である、請求項23又は24に記載の油組成物。
【請求項26】
DIN D51350 6部(円錐ローラー軸受20時間)によるPSSIは、50以下である、請求項23又は24に記載の油組成物。
【請求項27】
粘度指数は0〜300の範囲で合目的に調整可能である、請求項23から26までのいずれか1項に記載の油組成物。
【請求項28】
油組成物は、潤滑油組成物である、請求項23から27までのいずれか1項に記載の油組成物。
【請求項29】
API群I、II、III、IV及び/又は群Vのベースオイルを包含する、請求項28に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
潤滑油組成物は、請求項1から19までのいずれか1項に記載のスターポリマーではない少なくとも1種の付加的な添加剤を包含する、請求項29に記載の潤滑油組成物。
【請求項31】
付加的な添加剤は、粘度指数改善剤、流動点改善剤、分散剤及び/又は摩擦変性剤である、請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項32】
添加剤は、アルコール基中に1〜30個の炭素原子を有する直鎖ポリアルキル(メタ)アクリレートに基づいている、請求項30又は31に記載の潤滑油組成物。
【請求項33】
請求項1から19までのいずれか1項に記載のスターポリマーの、粘性変性剤、流動点改善剤、分散剤及び/又は摩擦変性剤としての使用。

【公表番号】特表2009−506179(P2009−506179A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528452(P2008−528452)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065060
【国際公開番号】WO2007/025837
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(399020957)エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】Evonik RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】