説明

油滴分散水性担体及びそれを構成要素とする複合乳化組成物

【課題】乳化組成物の分散滴に多様性をもたらす技術を提供する。
【解決手段】1)脂肪酸石鹸を含有する油相滴を分散すべき水性担体であって、2)水酸化レシチンを含有することを特徴とする、水性担体乃至は1)水酸化レシチンを含有する水性担体に、2)脂肪酸石鹸を含む油相滴を分散させてなる、水中油乳化物により課題が解決される。前記水中油乳化物の油滴は高級アルコールのモノグリセリルエーテルを含有することが好ましく、加えて、、燐脂質を含有することがより好ましく、N−アシル酸性アミノ酸のジエステルを含有するとさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に好適な乳化組成物に関し、更に詳細には、油滴と油中水滴とが水性担体に分散してなる、皮膚外用剤用の複合乳化剤形の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤に於いて、乳化剤形は水相と油相が存在するために、油溶性の有効成分も、水溶性の有効成分もともに担持出来る利点を有した優れた製剤形である。しかしながら、有効成分毎に配向分配性は異なり、それらを調整することが好ましいが、通常の乳化剤形では連続相に含有せしめるか、分散相に含有せしめるかの2種の手段しか存在せず、その調整は困難であった。この様な点に鑑みて、乳化状態を複合化し、配向・分配性をコントロールする試みが為されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。しかしながら、これらの複合乳化剤形は何れも連続相中に乳化滴が分散した形態であり、分散している乳化滴間には差異は存しない。従って、配向・分配性の観点に立てば2種の選択可能性が3種となり、1種増えたに過ぎないとも言える。種々の有効成分の配向・分配性のコントロールのために分散する滴の多様性を高める手段の開発が望まれていたと言える。又、分散滴の多様性を高めることは、皮膚状態が多様化し、使用するべき化粧料を個人毎に特性を変え対応するニーズが高まっている現代に於いては(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)、化粧料の個人特性対応にも優れた貢献をする技術であると期待される。
【0003】
一方、水酸化レシチンは、レシチンに水酸基を導入した形態の燐脂質であり、レシチンに比して水溶性が高い特徴を有し、分散剤、可溶化剤、乳化剤の目的で化粧料などの皮膚外用剤の成分として汎用されている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8を参照)が、脂肪酸石鹸を含む油相滴を分散させる目的で水性担体に分散させることは全く知られていないし、脂肪酸石鹸を含む油相滴を分散してなる水性担体が、油中水乳化滴を分散させた水性担体と混合しても、滴の合一は起こりにくく、安定な複合乳化系が創出できることも全く知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2008−208128号公報
【特許文献2】特開2007−45840号公報
【特許文献3】特開2003−48810号公報
【特許文献4】特開2001−233731号公報
【特許文献5】特開2005−270116号公報
【特許文献6】特開2008−88141号公報
【特許文献7】特開平07−304634号公報
【特許文献8】特開2008−184431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、乳化組成物の分散滴に多様性をもたらす技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、乳化組成物の分散滴に多様性をもたらす技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)水酸化レシチンを含有する水性担体に、2)脂肪酸石鹸を含む油相滴を分散させてなる、水中油乳化物を用いて油中水乳化滴の分散した水性担体と複合化させることにより、前記多様性が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
<1>1)脂肪酸石鹸を含有する油相滴を分散すべき水性担体であって、2)水酸化レシチンを含有することを特徴とする、水性担体。
<2>1)水酸化レシチンを含有する水性担体に、2)脂肪酸石鹸を含む油相滴を分散させてなる、水中油乳化物。
<3>前記油相滴は、高級アルコールのモノグリセリルエーテルを含有することを特徴とする、<2>に記載の水中油乳化物。
<4>前記油相滴は、燐脂質を含有することを特徴とする、<2>又は<3>に記載の水中油乳化物。
<5>前記油相滴は、N−アシル酸性アミノ酸のジエステルを含有することを特徴とする、<2>〜<4>何れか1項に記載の水中油乳化物。
<6>前記N−アシル酸性アミノ酸のジエステルの含有量は、油相成分全量に対して、20質量%以上であることを特徴とする、<5>に記載の水中油乳化物。
<7><2>〜<6>何れか1項に記載の水中油乳化物と、1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物とを混合してなる複合乳化組成物。
<8>皮膚外用剤であることを特徴とする、<7>に記載の複合乳化組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乳化組成物の分散滴に多様性をもたらす技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<1>本発明の水性担体
本発明の水性担体は、1)脂肪酸石鹸を含有する油相滴を分散すべき水性担体であって、2)水酸化レシチンを含有することを特徴とする。本発明の水性担体の必須構成要素である水酸化レシチンは、前記油相滴の界面を強化し、合一を防ぎながら分散を補助する作用を有する。この様な作用を発現するためには、水性担体全量に対して、0.05〜5質量%含有されることが好ましく、0.1〜2質量%含有されることがより好ましい。又、水酸化レシチンがかかる効果を奏するためには、油相滴は次に示す構成を備えることが好ましい。
【0009】
<2>本発明の水性担体に分散されるべき油相滴
本発明の水性担体に分散されるべき油相滴には、次に示す構成を備えることが好ましい。油相滴を分散せしめ水中油乳化物と為すためには、界面活性剤が必要であり、通常この様な界面活性剤としては、親水性の界面活性剤と、親油性の界面活性剤とが組み合わされて使用されるが、前記油相滴としては、脂肪酸石鹸のみで、これを油相に含有せしめることが好ましい。かかる脂肪酸石鹸の含有量は、油相全量に対して2〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましい。又、最終的な複合乳化組成物全量に対しては0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。又、この様な脂肪酸石鹸に対して、補助的な界面活性成分として、高級アルコール乃至は高級アルコールのモノグリセリルエーテルを含有することが好ましく、特にバチルアルコールを油相全量に対して2〜10質量%含有することが好ましく、3〜8質量%がより好ましい。又、最終的な複合乳化組成物全量に対しては0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。この様な構成に加えて、油相成分は極性油剤を主とすることが好ましく、グルタミン酸等の酸性アミノ酸のN−アシル体のジエステルを含有することが、油相滴の分散安定性を向上せしめ好ましく、かかる成分の含有量は、油相に対して、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。前記N−アシル酸性アミノ酸ジエステルは、N−アシル(炭素数10〜30)化グルタミン酸のジアルキル(炭素数1〜30)エステルが好ましく、かかる成分を構成するアシル基としては、飽和でも、不飽和でも良く、例えば、2−エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、オレオイル基、イソステアロイル基、リノレノイル基などが好適に例示でき、特に好ましいものはラウロイル基である。又、ジアルキルエステルを構成するアルキル基としては、分岐でも、直鎖でも、環状構造を有するものでも良く、例えば、オクチル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘニル基、オクチルドデシル基、カンペステリル基やシトステリル基等のフィトステリル基、コレステリル基などが好適に例示できる。具体的な化合物例としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等が好適に例示でき、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)が特に好適に例示できる。かかるN−アシル化グルタミン酸ジエステルは、グルタミン酸とアシルクロリドをアルカリ存在下縮合させ、N−アシルグルタミン酸と為し、しかる後、塩基又は酸の存在下、所望により溶剤を存在させ、対応するアルコールと脱水縮合せしめ製造することが出来る。N−アシル化グルタミン酸のジエステルはこの様に合成したものを使用することも出来るが、既に化粧料原料などとして市販されているものも存し、この様な市販品を購入し利用することも出来る。特に好ましい市販品としては味の素株式会社より販売されている「エルデュウPS203」(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルデシル))、「エルデュウCL−301」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウCl−202」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウPS−304」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))などが例示でき、中でも、「エルデュウPS203」が特に好ましい。が例示できる。かかる成分は唯一種含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。
【0010】
<3>本発明の水中油乳化物
本発明の水中油乳化物は、前記水性担体に、前記油相滴を分散してなることを特徴とする。前記油相滴の分散方法は、前記水性担体と、油相滴構成成分とを70〜90℃に加温し、攪拌下徐々に水性担体を油相滴構成成分に加え、反転乳化して、しかる後に乳化粒子をホモジナイザーなどで均質化し、攪拌冷却することにより製造できる。この際に注意すべきは、脂肪酸石鹸を油相滴構成成分内に含有せしめることであり、具体的には、油相滴構成成分に脂肪酸石鹸の脂肪酸部分を予め含有せしめ、これに少量の水に溶解させた水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、アルギニンなどの塩基を加えて、他の油相滴構成成分と一様にならしめ、しかる後に水性担体と合わせる方法が好ましく例示できる。斯くして得られた本発明の水中油乳化物は、それ自体でも皮膚外用剤などにそのまま適用できるが、分散している乳化粒子、言い換えれば分散油相滴の界面が強固であり、他の水中油乳化物や、水性担体に分散した油中水乳化滴とが合一するのを抑制するので、この様な乳化物や複合乳化物と混合することが可能であり、この様な乳化物、複合乳化物と混合して利用することが、分散滴の多様性を極めて高められる等、多くの利点を有し好ましい。この様な他の乳化物や複合乳化物と混合し、複合乳化組成物となるべきものであることを本発明の水中油乳化物は特徴とする。この様な本発明の水中油乳化物と混合すべき、乳化物や複合乳化物の内、特に好ましいものは、有機変性粘土鉱物を含有する油中水乳化物を、ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含有する水性担体に分散せしめた、油中水乳化滴分散水性担体である。
【0011】
<4>本発明の複合乳化組成物
本発明の複合乳化組成物は、前記水中油乳化物と、1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物とを混合してなることを特徴とする。
【0012】
前記平均重合度100〜300のポリエチレングリコールの脂肪酸エステルにおいて、かかる成分を構成するポリエチレングリコール部分としては、ポリオキシエチレンの重合度に換算して100〜300が好ましく、120〜200がより好ましい。又、脂肪酸残基としては、特段の限定はないが、炭素数10〜30の飽和又は不飽和のものが好ましく、分岐を有することもできる。又、エステルとしてはポリエチレングリコールの片側に脂肪酸残基を有するものエステル、両側に脂肪酸残基を有するジエステルの何れでも良く、モノエステルであることが特に好ましい。具体的には、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレイン酸残基、イソステアリン酸残基、オクチルドデカン酸残基などが好適に例示できる。特に好ましいものはステアリン酸残基である。特に好ましい化合物としては、ポリエチレングリコール(150)モノステアリン酸エステル或いはポリエチレングリコール(150)ジステアリン酸エステルが例示できる。これらの成分に関しては既に市販されているものが存し、かかる市販品を購入して利用できる。市販品としては、ニッコールCMS6000(ポリエチレングリコール(150)モノステアリン酸エステル;日本サーファクタント株式会社製)、ニッコールCDS6000(ポリエチレングリコール(150)ジステアリン酸エステル;日本サーファクタント株式会社製)、エマレックス6300MST(ポリエチレングリコール(150)モノステアリン酸エステル;日本エマルション株式会社製)等が存する。かかる成分は、複合乳化組成物全量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。又、後記の油中水乳化組成物に対しては、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0013】
前記ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含有する水性担体に分散されるべき油中水乳化物は、化粧料などの皮膚外用剤分野において、通常の技術で調整された油中水乳化物を用いることが出来るが、ジステアリルジモニウムクロリド変性ヘクトライト(例えば、「ベントン38V」エレメンティス社製など)などのような有機変性粘土鉱物を用いた油中水乳化組成物が好ましい。これはこの様な構成の乳化組成物では、油相界面が強固で、併存する油滴と合一が、より回避できるので好ましい。かかる油中水乳化物では、油中水乳化物全量に対し、0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の有機変性粘土鉱物を含有し、所望により、ポリエチレンオキシド或いはポリプロピレンオキシド等で変性したジメチコンのような、ポリエーテル変性シリコーンを、油中水乳化物全量に対し、0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%含有する。かかる油中水乳化物に於いては、内水相に、有効成分、取り分け、水性担体で抽出或いは希釈された生薬抽出物や水溶性高分子、配糖体などの水性有効成分を含有することが好ましい。かかる水性有効成分は、通常は皮膚バリア機能に阻害されて経皮吸収することが難しいが、この様な油中水乳化滴の内水相に抱含されることにより、経皮吸収性が向上し、その効果発現が顕著になる。この様な有効成分としては、生薬抽出物であれば、例えば、クジン抽出物、ノコギリソウ抽出物、ヤグルマソウ抽出物、オトギリソウ抽出物、ヨモギ抽出物、センブリ抽出物、ローズマリー抽出物、シラカバ抽出物、コウキ抽出物、ツボクサ抽出物、マージョラム抽出物、スイートマージョラム抽出物、オレガノ抽出物、バクモンドウ抽出物、チョウジ抽出物、コウライニンジン抽出物、オウレン抽出物、アルニカ抽出物、クワ抽出物、カモミール抽出物、コメなどの穀物の発酵物からの抽出物、大豆蛋白抽出物等が好ましく例示でき、水溶性高分子であれば、ポリメタクリロイルリジン、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチルコポリマー、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマー、ポリグリコシルエチルメタクリレート等の生体類似構造を有する(メタ)アクリル酸系高分子が好ましく例示でき、配糖体であれば、アスコルビン酸グルコシド及び/又は塩、グリチルリチン酸及び/又は塩、アルブチン及び/又は塩、ダイズイソフラボン配糖体等が好適に例示できる。かかる成分は、再修正剤に於ける濃度で有効量含有させることが好ましく、油中水乳化物に於いては、それぞれを油中水乳化物全量に対して、0.001〜10質量%含有させることが好ましく、0.01〜5質量%含有させることが好ましい。
【0014】
前記必須の構成要件以外に、本発明の複合乳化組成物は、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ−テル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤;ヘクトライト等の粘土鉱物などが好ましく例示できる。
また、任意成分の中でも、不飽和脂肪酸を2量化して得られる脂肪族2塩基酸であるダイマー酸及び/又はその誘導体を含有することが好ましく、誘導体としてはジエステルが特に好ましい。前記2量化させる不飽和脂肪酸としては、大豆等の植物から得られるオレイン酸、リノール酸を主体とするものが好ましく、ダイマー酸の構造としては、ダイマージオレイン酸、ダイマージリノール酸であることが好ましい。前記ダイマー酸のジエステルを含有させる場合は、N−アシル酸性アミノ酸ジエステルとダイマー酸ジエステルの質量比は1:2〜2:1の範囲で含有させることが好ましい。
【0015】
斯くして得られた、本発明の複合乳化組成物は、皮膚外用剤として適用することが出来る。皮膚外用剤としては、化粧料(医薬部外品を包含する)、皮膚外用医薬組成物、皮膚外用雑貨等が好適に例示でき、中でも化粧料に適用することが好ましく、個々の肌性に合わせて個人別に調合するような化粧料には、内容成分を簡便に変えて調整できるので特に好ましい。
【0016】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加える。
【実施例1】
【0017】
下記に示す処方に従って、本発明の複合乳化組成物である、化粧料を製造した。即ち、イ、ロ、ハ、ニの成分をそれぞれ80℃に加温し、イにロを加え均一化し、しかる後に、攪拌下徐々にハを加えて、一次乳化して水中油乳化物を形成させ、これに更にニの成分を攪拌下加えて、二次乳化をして水中油中水・水中油混在の分散滴多様化タイプの複合乳化剤形とした。これを攪拌冷却し、本発明の化粧料である化粧料1を得た。同様にして、化粧料1の水酸化レシチンを通常のレシチンに置換した比較例1、リゾレシチンに置換した比較例2、水に置換した比較例3も同様に作成した。
【0018】
【表1】

* 中間油中水乳液1


(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液1を得た。
アルニカ抽出物は、ヨーロッパを原産とするキク科アルニカ属アルニカの抽出物であり、この植物は現代では世界各国で栽培され、本願発明では日本での栽培品を購入し用いて抽出物を作成した。
オウレン抽出物は、中国中南部原産であり、古くより日本でも栽培されている、キンポウゲ科オウレン属の植物の内、日本で栽培されているものを購入し抽出物を作成した。
クジン抽出物は、中国原産のクジン(S. flavescens)の日本での変種クララ(S. flavescens var. angustifolia)を購入し、作成した。
セイヨウノコギリソウ抽出物は、ヨーロッパ原産のキク科セイヨウノコギリソウ(Achillea millefolium L)の乾燥物を購入し、作成した。
オトギリソウ抽出物は、日本、韓国、中国を原産とするオトギリソウ科オトギリソウ属の植物(Hypericum erectum Thunb.)の抽出物であり、抽出物作成には日本に自生するものを購入し用いて作成した。
シラカバ抽出物は、ロシアを原産とするカバノキ科シラカンバ(Betula platyphylla Sukatchev var. japonica Hara)の日本へ移植され、定着した植物を購入し用いて作成した。
ローズマリー抽出物は、南欧原産のシソ科ローズマリー(Rosmarinus officinalis L)の日本へ移植され、繁殖したものを購入し用いて作成した。
ツボクサ抽出物は、インド原産のセリ科ツボクサ属の植物(Centella asiatica (L.))の日本への渡来、繁殖したものを用いて作成した。
チョウジ抽出物は、モルッカ諸島原産のフトモモ科チョウジの花蕾の乾燥物の抽出物であり、フトモモ科チョウジの花蕾の乾燥物はニューギニア産のものを購入し用いて、作成した。
【0019】
<試験例1>
化粧料1、比較例1〜3について、その安定性を調べた。即ち、調製直後及び一日後に顕微鏡下乳化粒子の状態を顕微鏡観察し、表2の基準で判定した。結果を表3に示す。また、各評価基準の顕微鏡観察写真を図1に示す。この表より、本発明の複合乳化組成物である化粧料1の粒子の安定性が優れていることが判る。
【0020】
【表2】


【0021】
【表3】

【実施例2】
【0022】
化粧料1と同様に下記処方に従って、本発明の複合乳化組成物である、化粧料2を作成した。このものの試験例1の方法での判定を行ったところ、製造直後の外観観察がスコア4、顕微鏡観察がスコア5であり、製造1日後の外観観察がスコア4、顕微鏡観察がスコア4であった。
【0023】
【表4】

*中間油中水乳液1


(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液1を得た。
【実施例3】
【0024】
化粧料1と同様に下記処方に従って、本発明の複合乳化組成物である、化粧料3を作成した。このものの試験例1の方法での判定を行ったところ、製造直後の外観観察がスコア4,顕微鏡観察がスコア5であり、製造1日後の外観観察がスコア4、顕微鏡観察がスコア4であった。
【0025】
【表5】

*中間油中水乳液1

(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液1を得た。
【実施例4】
【0026】
化粧料1と同様に下記処方に従って、本発明の複合乳化組成物である、化粧料4を作成した。同様にして、化粧料4の水酸化レシチンを通常のレシチンに置換した比較例4、リゾレシチンに置換した比較例5、水に置換した比較例6も同様に作成した。試験例1の方法での評価判定結果を表6に示す。化粧料4に於いても本発明の効果は認められたが、N−アシル酸性アミノ酸ジエステルやダイマー酸ジエステルを含有した方が効果かが著しいことが判る。
【0027】
【表6】

* 中間油中水乳液1


(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液1を得た。
【0028】
【表7】

表7
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】エマルションの分散・合一の程度に対する各評価基準に対応する顕微鏡観察像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)脂肪酸石鹸を含有する油相滴を分散すべき水性担体であって、2)水酸化レシチンを含有することを特徴とする、水性担体。
【請求項2】
1)水酸化レシチンを含有する水性担体に、2)脂肪酸石鹸を含む油相滴を分散させてなる、水中油乳化物。
【請求項3】
前記油相滴は、高級アルコールのモノグリセリルエーテルを含有することを特徴とする、請求項2に記載の水中油乳化物。
【請求項4】
前記油相滴は、燐脂質を含有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の水中油乳化物。
【請求項5】
前記油相滴は、N−アシル酸性アミノ酸のジエステルを含有することを特徴とする、請求項2〜4何れか1項に記載の水中油乳化物。
【請求項6】
前記N−アシル酸性アミノ酸のジエステルの含有量は、油相成分全量に対して、20質量%以上であることを特徴とする、請求項5に記載の水中油乳化物。
【請求項7】
請求項2〜6何れか1項に記載の水中油乳化物と、1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物とを混合してなる複合乳化組成物。
【請求項8】
皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項7に記載の複合乳化組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138151(P2010−138151A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318852(P2008−318852)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】