説明

注入発泡品の製造方法

【課題】本発明は、製造設備の小型化や簡易化を可能にした注入発泡品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂からなる芯材3と、前記芯材3の上面30Bに固着されたパッド材2と、を備えた自動車用シートSC(注入発泡品)の製造方法であって、
前記芯材3の裏面30A側から前記芯材3の前記上面30B側に渡って貫通する発泡液注入孔30を有する前記芯材3をコアとして 、金型Uのキャビティー内に配置させ、その後、前記発泡液注入孔30から発泡液を、前記芯材3と前記金型Uとの間に設けられたパッド成形空間20内に注入して、前記パッド材2を前記芯材3と一体に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型によって、特に自動車用シート等の注入発泡品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開平8−224384号公報がある。この公報に記載された自動車用シートは、表面材と、その表面材の裏面に貼着された合成樹脂発泡体と、合成樹脂発泡体に裏打ちされている不織布とからなる表皮材と裏打ち材とで袋状に形成されたインサート品を、上型と下型とからなる成形金型のキャビティー内にセットし、そのインサート品内にウレタン発泡液を注入することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−224384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動車用シートの製造方法として具現化された注入発泡品の製造方法は、上型と下型とでキャビティを形成しているので、金型を開いたり閉じたりする必要があり、製造設備の大型化や複雑化を招来していた。
【0005】
本発明は、製造設備の小型化や簡易化を可能にした注入発泡品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂からなる芯材と、前記芯材の上面に固着されたパッド材と、を備えた注入発泡品の製造方法であって、
前記芯材の裏面側から前記芯材の前記上面側に渡って貫通する発泡液注入孔を有する前記芯材をコアとして 、金型のキャビティー内に配置させ、その後、前記発泡液注入孔から発泡液を、前記芯材と前記金型との間に設けられたパッド成形空間内に注入して、前記パッド材を芯材と一体に成形することを特徴とする。
【0007】
この自動車用シートの製造方法においては、金型のキャビティー内に樹脂製の芯材を配置させることで、芯材を、キャビティーと対をなす凸状のコアとして機能させることができる。これによって、金型は、上型と下型からなる金型構成にする必要が無く、製造設備の小型化や簡易化が可能になる。芯材には、裏面側から芯材の上面側に渡って貫通する発泡液注入孔が設けられているので、発泡液注入孔から発泡液を、芯材と金型との間に設けられたパッド成形空間内に注入することで、パッド材が成形され、金型に発泡液注入孔を設ける必要がなく、金型の構造が複雑にならない。そして、芯材は樹脂からなるので、金型内で芯材とパッド材は一体化し易く、従来のような型開きを行うことなく、芯材とパッド材とが一体化された状態で、金型からシート成形品を取り出すことができる。
【0008】
また、前記パッド材を覆うための表皮が前記金型のキャビティー面に沿って配置され、前記表皮材の端部を、前記芯材に形成されたスリット内に挿入し保持した後に、前記発泡液を注入すると好適である。
このような方法を採用すると、芯材周りでの表皮一体発泡が容易に可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造設備の小型化や簡易化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る注入発泡品の製造方法に適用する芯材を示す断面図である。
【図2】金型に芯材をセットした状態を示す断面図であり、製造時にあっては、図示とは上下が逆で、金型が下で芯材が上の状態になっている。
【図3】金型内でパッド材が成形された状態を示す断面図であり、製造時にあっては、図示とは上下が逆で、金型が下で芯材が上の状態になっている。
【図4】注入発泡品としての自動車用シートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る注入発泡品の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図4に示すように、例えば、自動車に利用されるシートクッションSCは、座面を左右に有する二人掛けであり、発泡ポリプロプレン、特にビーズ法発泡ポリプロピレン(EPP)からなる芯材3を備え、この芯材3は、シートクッションSCのフレームの役目を成し、骨が無く、軽量で保形性や剛性を有し、載置台又は直接車床等に取り付けられる。
【0013】
芯材3の上面側の左右には、発泡ウレタンからなりクッション性を有するパッド材2が固着され、各パッド材2を覆うように表皮材1が芯材3に固定されている。芯材3には、左右のパッド材2を囲むように芯材3の上面から裏面30Aに掛けて延在するスリット30C(図1参照)が形成され、左右のパッド材2の間にはカップホルダ等のための凹部31が設けられている。
【0014】
パッド材2の左右別々に、表皮材1の端部11は、芯材3に形成されたスリット30C内に挿入され、木目込みによって、表皮材1は、芯材3に固定、保持されている。そして、表皮材1は、芯材3の裏面30A及び凹部31を覆うことなく芯材3を露出させている。この木目込みは、表皮材1を芯材3に容易に固定、保持させるのに適している。
【0015】
次に、シートクッションSCの製造方法について説明する。
【0016】
図1に示すように、パッド材2と一体化される前の芯材3の上面には、凹状のパッド成形面30Bが設けられ、左右のパッド材2の間には、カップホルダ等のための凹部31が設けられている。芯材3の左右それぞれにおいて、芯材3には、凹部31とパッド成形面30Bとの間から芯材3の裏面30Aの周縁に掛けて延在するスリット30Cが形成されている。スリット30Cには、木目込みのために、表皮材1の端部11が挿入される。
【0017】
更に、芯材3には、芯材3の平滑な裏面30A側から芯材3の凹状の上面(パッド成形面)30B側に渡って貫通する発泡液注入孔30が形成されている。発泡液注入孔30は、パッド成形面30Bに対応した位置に所定の本数だけ形成されている。
【0018】
図2に示すように、金型Uは、凹状のキャビティーを有し、キャビティー面は、シートクッションSCの上面形状及び側面形状に対応するような曲面や平面により形成されている。また、金型Uには、芯材3の裏面30Aと略同一形状の開口部が設けられ、この開口部は、キャビティーの開放側に位置して芯材3の着脱を可能にしている。
【0019】
金型UでシートクッションSCを製造するにあたって、図2とは逆に、金型Uのキャビティーの開口部が上に向いた状態で金型Uはセットされ、このとき、パッド材2を覆うための表皮材1が金型Uのキャビティー面に沿って配置される。
【0020】
この状態で、金型Uのキャビティーの開口部から図1に示された芯材3を上型のコアと見立ててキャビティー内に配置させる。このとき、キャビティー内で、芯材3のスリット30C内に表皮材1の端部11が挿入される。
【0021】
その後、芯材3の裏面30A側において、作業者によって、芯材3のスリット30C内に表皮材1の端部11が挿入され、この状態で、金型Uの開口部側の縁面と芯材3の裏面30Aの縁面とを掛け渡すように、枠形状の芯材押さえ部材Rを金型Uに固定する。この芯材押さえ部材Rによって、芯材3が金型Uから外れることを防止し、表皮材1の端部11が芯材3に押し受けられて、芯材3から表皮材1の端部11が抜けるのを防止している。
【0022】
この状態を維持して、芯材3の裏面30A側から発泡液注入孔30内に発泡液注入ノズル(不図示)を差し込み、ウレタン樹脂からなる発泡液を、この発泡液注入ノズルから発泡液注入孔30内に圧送する。そして、発泡液は、芯材3のパッド成形面30Bと金型U内の表皮材1との間に設けられたパッド成形空間20内に注入されて、パッド材2が成形される(図3参照)。
【0023】
発泡液硬化後、芯材押さえ部材Rを金型Uから外し、金型UからシートクッションSCを抜き出して、成形が完了する。
【0024】
この注入発泡品の製造方法においては、金型Uのキャビティー内に樹脂製の芯材3を配置させることで、芯材3を、キャビティーと対をなす凸状のコアとして機能させることができる。これによって、金型Uは、上型と下型からなる金型構成にする必要が無く、製造設備の小型化や簡易化が可能になる。
【0025】
芯材3には、裏面30A側から芯材3の上面(パッド成形面)30B側に渡って貫通する発泡液注入孔30が設けられているので、発泡液注入孔30から発泡液を、芯材3と金型Uとの間に設けられたパッド成形空間20内に注入することで、パッド材2が容易に成形され、金型Uに発泡液注入孔を設ける必要がなく、金型Uの構造が複雑にならない。しかも、表皮材1にも発泡液注入孔を形成する必要がない。
【0026】
そして、芯材3は樹脂からなるので、金型U内で芯材3とパッド材2は一体化し易く、従来のような型開きを行うことなく、芯材3とパッド材2とが一体化された状態で、金型Uからシート成形品(シートクッションSC)を取り出すことができる。
【0027】
ここで、上述した実施形態においては、表皮材1を金型Uのキャビティー面に沿って配置しているが、これに限定されず、たとえば、発泡液注入時には表皮材を省略し、パッド材2の成形後、表皮材を別途被せる構成としても良い。しかしながら、表皮材1を金型Uのキャビティー面に予め沿って配置しておけば、芯材周りでの表皮一体発泡が容易に可能になり、その作業性が確実に向上される。
【0028】
また、実施形態では注入発泡品として自動車用シートを例示しているが、これに限定されず、たとえば、アームレストのリッドやコンソール上面、あるいは各種内装品等に、この発明が応用できる。
【符号の説明】
【0029】
SC…シートクッション、U…金型、1…表皮材、2…パッド材2、3…芯材、20…パッド成形空間、30…発泡液注入孔、30C…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる芯材と、前記芯材の上面に固着されたパッド材と、を備えた注入発泡品のの製造方法であって、
前記芯材の裏面側から前記芯材の前記上面側に渡って貫通する発泡液注入孔を有する前記芯材をコアとして 、金型のキャビティー内に配置させ、その後、前記発泡液注入孔から発泡液を、前記芯材と前記金型との間に設けられたパッド成形空間内に注入して、前記パッド材を芯材と一体に成形することを特徴とする注入発泡品の製造方法。
【請求項2】
前記パッド材を覆うための表皮が前記金型のキャビティー面に沿って配置され、前記表皮材の端部を、前記芯材に形成されたスリット内に挿入し保持した後に、前記発泡液を注入することを特徴とする請求項1記載の注入発泡品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−245664(P2011−245664A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118998(P2010−118998)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】