注意喚起装置
【課題】 運転者にとって対処することが困難な範囲を路面に実際に描画することによって、その範囲をリアルタイムで実際に表示する技術を提供する。
【解決手段】 運転者の死角範囲と運転者が避けきれない範囲と運転者の視野外範囲等は運転者が対処することが困難な範囲である。そこで、運転者が対処することが困難な路面上の範囲を特定する特定手段と、その特定手段で特定された範囲の路面を車両から照射してその範囲を実際に描画する車載式描画手段を車載する。すると、車両の運転者にとって対処することが困難な範囲を路面に実際に描画して表示することができ、周囲に居る歩行者等の注意喚起対象に対して、対処することが困難な範囲に居ることを直接的に知らせることができる。あるいは注意喚起対象に対して対処することが困難な範囲に侵入しようとしていることを直接的に知らせることができる。
【解決手段】 運転者の死角範囲と運転者が避けきれない範囲と運転者の視野外範囲等は運転者が対処することが困難な範囲である。そこで、運転者が対処することが困難な路面上の範囲を特定する特定手段と、その特定手段で特定された範囲の路面を車両から照射してその範囲を実際に描画する車載式描画手段を車載する。すると、車両の運転者にとって対処することが困難な範囲を路面に実際に描画して表示することができ、周囲に居る歩行者等の注意喚起対象に対して、対処することが困難な範囲に居ることを直接的に知らせることができる。あるいは注意喚起対象に対して対処することが困難な範囲に侵入しようとしていることを直接的に知らせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両の周囲には、各種の理由によって運転者が対処することが困難な範囲が存在する。例えば、運転者の死角内に避けるべき対象が存在していても、死角内にあるために運転者がその対象を認識できていなければ、運転者は的確に対処することが難しい。あるいは、走行している車両は制動距離を必要とすることから、制動距離の範囲内に突然に避けるべき対象が移動してくることがあれば、運転者は的確に対処することが難しい。あるいは、運転者の視野外の範囲に避けるべき対象が存在していても、運転者は的確に対処することが難しい。
本発明では、上記の理由等によって運転者が的確に対処することが困難な範囲を、路面に実際に描画する。本発明では、車載式描画手段によって路面を照射して前記した範囲を実際に描画する。以下では、車載式描画手段を備えている車両を自車両という。
自車両の周囲には、歩行者、自転車、オートバイ、自動車等が存在する。周囲に存在している歩行者や運転者等に、自車両では対処することが困難な範囲を知ってもらうことができれば、その範囲を知った者の注意を喚起することができる。
本発明は、自車両では対処することが困難な範囲を路面に実際に描画し、自車両の周囲に居る歩行者や運転者等にその範囲を知ってもらい、その範囲に居る歩行者や運転者等の注意を喚起する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が安全に走行できるようにするさまざまな技術が開発されている。
例えば、SmartEye Pro & AntiSleepシステムが、株式会社東陽テクニカから販売されており、運転者の視線方位を±1度の精度で計測することが可能となっている。
非特許文献1にも、視線方位の検出技術が記載されている。
非特許文献2には、撮影した映像データから、歩行者、自転車、オートバイ、自動車等を抽出する技術が開示されている。
非特許文献3には、レーザーレーダで得られたデータから、歩行者を抽出し、抽出された歩行者が存在する方位と歩行者までの距離を特定する技術が開示されている。
非特許文献4にも、障害物の存在領域を特定する技術が開示されている。
特許文献1には、車両に運転者が着座したときの死角範囲を計算する技術が開示されている。
特許文献2には、死角範囲をディスプレイに表示したり、あるいは印刷したりすることによって、運転者の死角範囲を表示する技術を開示している。
このように、車両の安全性を向上させるためのさまざまな技術が開発されている。
【0003】
【非特許文献1】信学技報 PRMU2005-200, pp13-18 (2005) 「アイモデルを用いたCondensationによる黒目追跡」
【非特許文献2】第12回画像センシングシンポジウム予稿集、pp277−283 (June, 2006) 「屋外環境下における移動体識別に用いる入力特徴のAdaBoostによる評価」
【非特許文献3】デンソーテクニカルレビュー Vol.12, No.1, p35-39 (2007)「レーザーレーダによる歩行者認識技術」
【非特許文献4】第12回ロボット学会学術講演会 pp 323-324 (1994) 「ステレオン視による障害物の検知」
【特許文献1】特開平9−197950号公報
【特許文献2】特開平10−49041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を用いれば、自車両の死角範囲を知ることができる。死角範囲がどこにあるのかを知りたいのは、その車両の周囲に居る歩行者や運転者である。歩行者等が、周囲に存在している車両の死角範囲内に居ることを知ることができれば、歩行者等は危険を避けるための行動をとることができる。特許文献1の技術では、自車両の死角範囲を知ることはできても、それを周囲に居る歩行者等に知らせることができない。特許文献2の技術では、死角範囲を表示する。しかしながら、特許文献2の技術では、死角範囲を運転者が見る表示装置に表示する。あるいは、印刷して車体に貼る。運転者が見る表示装置に死角範囲を表示しても、その車両の死角範囲に居る歩行者等に、死角範囲内に居ることを知らせることができない。印刷したグラフを車体に貼ることによって歩行者等に死角範囲を知らせることも実際的でない。
現状の技術によって、死角範囲を計算することはできても、現状の技術では、死角範囲内に居ることを知らせる必要がある人に、死角範囲内に居ることを知らせる方法がない。
【0005】
同種のことが、制動距離の範囲内にあるために、突然に進入してきても避けきれない範囲についてもいえる。車線変更する車両に対して自車には避けきれない範囲に侵入しようとしているのか、あるいは避けきれない範囲を超えて進路変更するのかを知らせたいとする要求が存在する。車線変更する車両の側にも、後続する車両には避けきれない範囲内に侵入しようとしているのか、あるいは避けきれない範囲を超えてから進路変更するのかを知りたいと要求が存在している。
車速と操舵角と運転者の反応時間と制動距離等がわかれば、避けきれない範囲を計算することができる。非特許文献2の技術を用いれば、周囲に自動車が走行しているか否かを検知することができ、非特許文献3や非特許文献4の技術を用いれば、その自動車の位置まで計算することができる。それらの技術によって、周囲を走行している自動車が自車両には避けきれない範囲を走行しているのか、あるいは自車両には避けきれない範囲に侵入する動きをしているのか等を判断することができる。
しかしながら、現在の技術では、計算した結果を実際に知らせることが難しい。並走する車両に対して自車両には避けきれない範囲を知らせる技術が必要とされている。
【0006】
同種のことが、運転者の視野の外側の範囲についてもいえる。運転者がわき見運転をするようなことがあれば、周囲に居る者には「見てくれているだろう」と思われる範囲が、実際には視野外範囲となっていることがある。このような場合に備えて、運転者が道路前方を注視しながら走行する場合の正常な視野内であっても、実際の視野からすると視野外になっている範囲が存在するような場合には、それを知りたいとする要求が存在する。それを知ることができれば、自己を避けるための予防的行動をとることができる。
非特許文献1の技術や、前記した視線方位の計測装置(SmartEye Pro & AntiSleepシステム)を利用すれば、運転者の実際の視線範囲を推定することができ、運転者が道路前方を注視しながら走行する場合の正常な視野内でありながらも、実際の視野の外側になっている範囲が存在するような場合には、その範囲を計算することができる。
しかしながら、現在の技術では、計算した視野外範囲を、周囲に居る者に知らせることが難しい。横断歩道を横断している歩行者が、走行してくる車両の運転者の実際の視野の外側に居るという重大な事態が生じていても、歩行者にはそれを知るすべがない。
【0007】
本発明では、運転者にとって対処することが困難な範囲を路面に実際に描画することによって、その範囲をリアルタイムで実際に表示する技術を提供する。
本明細書では、運転者の死角範囲(単に死角範囲ということがある)と、運転者が避けきれない範囲(単に避けきれない範囲ということがある)と、運転者の視野外範囲(単に視野外範囲ということがある)のいずれかを運転者が対処することが困難な範囲という。死角範囲と避けきれない範囲と視野外範囲のいずれか1種を表示することによって有用な結果が得られる。システムを統合することによって、2種類の範囲を統合した範囲を表示することもできれば、3種類の範囲を統合した範囲を表示することもできる。例えば、死角範囲と避けきれない範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできれば、避けきれない範囲と視野外範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできれば、視野外範囲と死角範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできれば、死角範囲と避けきれない範囲と視野外範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできる。これらも、運転者が対処することが困難な範囲という。
本明細書でいう運転者の視野外範囲は、運転者が道路前方を注視しながら走行する場合の正常な視野内でありながらも、運転者のわき見運転等に起因して実際の視野からすると視野外になっている範囲をいう。
本明細書でいう死角は、運転者が視線方位を向けても視認できない範囲をいう。
本明細書でいう注意喚起対象は、自車両の運転者が対処することが困難な範囲に居ることを伝えることによって、自車両に注意を払うように促す対象、例えば、歩行者や、自転車・オートバイ・他車両の運転者という。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は車載式の注意喚起装置に係り、運転者が対処することが困難な路面上の範囲を特定する特定手段と、その特定手段で特定された範囲の路面を車両から照射してその範囲を実際に描画する車載式描画手段を備えている。
本発明の注意喚起装置によると、自車両の運転者にとって対処することが困難な範囲を路面に実際に描画して表示することができ、注意喚起対象に対して対処することが困難な範囲に居ることを直接的に知らせることができる。あるいは注意喚起対象に対して対処することが困難な範囲に侵入しようとしていることを直接的に知らせることができる。
【0009】
特許文献1の技術を利用すると、運転者の死角範囲を特定することができる。この技術を利用して、運転者の死角範囲を特定する特定出段を構築することができる。
車速や操舵角や運転者の反応時間と制動距離等がわかれば、運転者が避けきれない範囲を計算することができる。その技術を使用して避けきれない範囲を特定する特定出段を構築することができる。
前記したSmartEye Pro & AntiSleepシステムという製品や、非特許文献1の技術を用いれば、運転者の視野外範囲を計算することができる。この技術を利用して、運転者の視野外範囲を特定する特定出段を構築することができる。
これらの特定手段を統合することによって、死角範囲と避けきれない範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできれば、避けきれない範囲と視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできれば、視野外範囲と死角範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできれば、死角範囲と避けきれない範囲と視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできる。
【0010】
路面に描画する処理を必要なときにのみ実行するようにしてもよい。
非特許文献2や非特許文献3や非特許文献4の技術によって、歩行者や自転車やオートバイや他車両が存在するか否かを判別し、存在する場合にはその位置を特定することができる。それらの技術によって、注意喚起対象が存在するか否かを判別する判別手段を構築することができる。
本発明では、判別手段によって注意喚起対象が存在すると判別されたときに、描画手段が前記範囲を描画することが好ましい。
【0011】
その判別手段は、車両周囲に注意喚起対象が存在するか否かを判別するものであってよい。あるいは、特定手段で特定した範囲内に注意喚起対象が存在するか否かを判別するものであってもよい。あるいは、特定手段で特定した範囲内に侵入しようしている注意喚起対象が存在するか否かを判別するものであってもよい。
【0012】
本発明の装置は、描画するだけでなく、自車両の運転者に対する警告装置、あるいは、注意喚起対象の注意をさらに喚起するための警告装置を併せ持っていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、運転者が対処することが困難な範囲を路面に実際に描画することができ、その範囲をリアルタイムで実際に表示することができる。従って、その範囲に居る者、あるいはその範囲に侵入しようとしている者の注意を直接的に喚起することができる。その範囲に居る者、あるいはその範囲に侵入しようとしている者は、事故の発生を防止するのに必要な予防措置を講じることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
最初に、本発明の好適な実施形態を列記する。
(特徴1) 特定出段が、運転者が避けきれない範囲を特定する。
(特徴2) 特定手段が、運転者の視野外範囲を特定する。
(特徴3) 特定出段が、運転者の死角範囲と視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する。
(特徴4) 特定出段が、運転者が避けきれない範囲と運転者の視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
実施例1は、図2に示すように、運転者の死角範囲を路面に実際に描画して周囲に居る歩行者等の注意を喚起する装置に関する。
図1に示すように、この装置100は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図2に示すように、実際の路面126に死角範囲128〜138を描画する。ここでいう死角は、バックミラー等を利用しても運転者が視認できない範囲をいう。128は車両後方の死角であり、129は同乗者による死角であり、130は左サイドミラーによる死角であり、132は左ピラーによる死角であり、134は車両前方の死角であり、136は右ピラーによるによる死角であり、138は右サイドミラーによる死角である。
路面における死角範囲を計算するために、図1に示すように、装置100は、運転者の瞳位置を計測する装置102(この装置102は、前記したSmartEye Pro & AntiSleepシステムという製品や、非特許文献1の技術を用いて構築する)と、車内撮影カメラ104と、サイドミラー等の角度を検出する装置106と、車外を撮影するカメラ108(レーザーレーダ等であってもよいし、遠赤外線カメラであってもよい)と、投射型表示装置110と、警告装置112を備えている。また装置100は、演算装置114と、車両形状データ記憶装置116と、車内撮影カメラ104の映像情報から同乗者の外形形状を計算する処理を実行するプログラム118と、路面における死角範囲128〜138を計算する処理を実行するプログラム120と、車外撮影カメラ108の映像情報から歩行者等の注意喚起対象を抽出する処理を実行するプログラム122と、投射型表示装置110と警告装置112を制御する処理を実行するプログラム124を備えている。
【0016】
図2は、路面126に描画された死角範囲の一例を示しており、死角範囲128〜138内にゼブラゾーンに類似する明暗のコントラストがはっきりしている縞模様を描画する。これに代えて、死角範囲内を死角範囲外よりも明るく照射してもよいし、死角範囲を示す輪郭線とともに死角であることを示す文字等をも表示してもよい。
【0017】
図3の(a)から(i)は、投射型表示装置110の搭載位置を例示しており、複数台の投射型表示装置110を車体の周囲に配置することによって、車両の前方と後方と側方に死角範囲を表示することができる。図3の(j)は投射型表示装置110の搭載高さを例示しており、床下、ドアガラスの下側の高さ、あるいは天井高さに配置する。
投射型表示装置110は、プロジェクタなような結像方式であってもよいし、レーザービームをラスタースキャンするものあってもよいし、レーザービームをベクトルスキャンするものあってもよい。光源も限定されず、レーザーでもよいし、超高圧水銀ランプや、ハロゲンランプ等あってもよい。投射型表示装置110によって車載式の描画手段を構築することができる。上記はあくまで例示であり、任意の描画手段を採用することができる。
【0018】
図4と図5は、装置100で実行する処理手順を示している。ステップS102では、運転者の瞳位置を計測する装置102によって運転者の瞳位置を計測して演算装置114に入力する。ステップS104では、車内撮影カメラ104の映像情報をプログラム118で処理して同乗者の外形形状を計算して演算装置114に入力する。ステップS106では、ミラー角度検出装置106から演算装置114にサイドミラー等の角度を入力する。ステップS108では、車両形状データ記憶装置116から自車両の形状データを演算装置114に入力する。ステップS102からS108までで、路面における死角範囲128〜138を計算するのに必要なデータが入力される。
ステップS110では、入力されたデータによって路面における死角範囲128〜138を計算する。死角範囲128〜138の計算には、特許文献1の技術を活用することができる。
【0019】
図5は、計算した死角範囲を描画するまでの処理手順に関する4つの実施例を示している。
(1)のステップS112では、車外撮影カメラ108の映像情報をプログラム122で処理して、歩行者等の注意喚起対象を抽出し、歩行者等の注意喚起対象が存在すれば、その存在位置を特定する処理を実行する。この処理には、非特許文献2〜4の技術を活用することができる。ステップS114では、特定された注意喚起対象が自車両の周辺に存在しているか否かを判別する。ここでいう周辺は、図2に示されているように、予め自車両の回りに定められている範囲140を意味し、自車両が安全に走行することに影響を与える事象が生じるかも知れない範囲をいう。ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS116を実行し、図2に示すように、実際の路面126に実際の死角範囲128〜138を実際に描画する。これによって、自車両の周辺に居る注意喚起対象は死角範囲128〜138を認識し、事故の発生を防ぐのに必要な予防措置を講ずることができる。ステップS118では、特定された注意喚起対象が死角範囲128〜138内に存在しているか否かを判別する。ステップS118で死角範囲128〜138に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS120で警告する。ステップS120で実施する警告は、自車両の運転者に向けた警告でもよいし、死角範囲128〜138に居る注意喚起対象に向けた警告でもよいし、両者に向けた警告でもよい。運転者に向けた警告では、例えば「前方死角に注意」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。注意喚起対象に向けた警告では、例えば「死角に入っています」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。
【0020】
図5(2)では、ステップS118に代えてステップS118aを実行する。ここでは、死角範囲128〜138に注意喚起対象が存在しているか、あるいは死角範囲128〜138に注意喚起対象が侵入するか否かを判別する。ステップS112で実行する注意喚起対象の存在位置を特定する処理を時間を変えて2度以上実行すると、注意喚起対象の移動速度と移動方向を特定することができ、死角範囲128〜138に侵入する可能性の有無を判別することができ、侵入する場合は侵入するまでに要する時間を計算することができる。図5(2)では、注意喚起対象が死角範囲128〜138に侵入する可能性がある場合に警告する。ステップS120の警告では、侵入までの時間によって警告強度を変えてもよい。
【0021】
図5(3)では、ステップS118で、死角範囲128〜138内に注意喚起対象が存在しているか否かを判別する。図5(1)のステップS118と同じ処理を実行する。ステップS118で死角範囲128〜138内に注意喚起対象が存在していると判別されると、図2に示すように、実際の路面126に実際の死角範囲128〜138を実際に描画し、かつ警告する。その他の点は、図5(1)に同じである。
図5の(4)では、ステップS118に代えてステップS118aを実行する。その他の点は、図5(3)または図5(2)に同じである。
上記では、正確な死角範囲を計算して求めるが、これに代えて、死角範囲を事前に計測あるいは計算しておいてもよい。計測あるいは計算しておいた死角範囲を記憶しておき、記憶しておいた死角範囲を路面に描画してもよい。
【0022】
(実施例2)
実施例2では、図7に示すように、運転者が避けることが困難な範囲(避けきれない範囲という)を路面に実際に描画して、自車両の前方に進路変更する車両の注意を喚起する装置に関する。
図6に示すように、この装置200は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図7に示すように、実際の路面126に避けきれない範囲214を描画する。
路面における避けきれない範囲214を計算するために、図6に示すように、装置200は、車速センサ202と、操舵角センサ204と、車外を撮影するカメラ108(レーザーレーダ等であってもよいし、遠赤外線カメラであってもよい)と、投射型表示装置110と、警告装置112を備えている。また装置200は、演算装置114と、反応時間データベース206と、制動距離データベース208と、路面における避けきれない範囲214を計算する処理を実行するプログラム210と、歩行者等の注意喚起対象を抽出する処理を実行するプログラム122と、投射型表示装置110と警告装置112を制御する処理を実行するプログラム212を備えている。制動距離データベース208は、車速と制動距離の関係を記憶している。
なお、第1実施例の説明と同一の参照番号で示す部材は第1実施例のものと同一であることを示し、重複する説明を省略する。
【0023】
図7は、路面126に描画された避けきれない範囲214の一例を示しており、避けきれない範囲214内にゼブラゾーンに類似する明暗のコントラストがはっきりしている縞模様を描画する。これに代えて、避けきれない範囲214内のみを明るく照射してもよいし、避けきれない範囲214を示す輪郭線とともに避けきれない範囲であることを示す文字等をも表示してもよい。
【0024】
図8と図9は、装置200で実行する処理手順を示している。
図8のステップS202では、車速センサ202で計測される車速を演算装置114に入力する。ステップS204では、操舵角センサ204で計測される操舵角を演算装置114に入力する。ステップS206では、反応時間データベース206から運転者が反応するのに要する時間を入力する。近似的には、全部の運転者に対して一定の反応時間を仮定してもよい。ステップS208では、制動距離データベース208から制動距離を読み出して演算装置114に入力する。ステップS202からS208までで、路面における避けきれない範囲214を計算するのに必要なデータが入力される。
ステップS210では、入力されたデータによって路面における避けきれない範囲214を計算する。
【0025】
図9は、路面に避けきれない範囲214を描画する処理手順に関する4つの実施例を示している。図9において図5と同一番号で示す処理は、図5の処理と同一内容の処理を示す。
(1)のステップS112では、車外撮影カメラ108の映像情報をプログラム122で処理して、歩行者等の注意喚起対象を抽出し、歩行者等の注意喚起対象が存在すれば、その存在位置を特定する処理を実行する。ステップS114では、特定された注意喚起対象が自車両の周辺に存在しているか否かを判別する。ここでいう周辺は、図7に示されているように、予め自車両の回りに定められている範囲140を意味し、自車両が安全に走行することに影響を与える事象が生じるかも知れない範囲をいう。特に、自車両の前方に存在している避けきれない範囲214に車線変更して侵入する可能性のある車両の存在範囲を含んでいる。
ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS116bを実行し、図7に示すように、実際の路面126に避けきれない範囲214を実際に描画する。これによって、隣接車線を走行している自動車は避けきれない範囲214を認識し、避けきれない範囲214に侵入しないコースで進路変更を行うことができる。ステップS118bでは、特定された注意喚起対象が避けきれない範囲214内に存在しているか否かを判別する。ステップS118bで避けきれない範囲214に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS120bで警告する。ステップS120bで実施する警告は、自車両の運転者に向けた警告でもよいし、避けきれない範囲214に存在する他車両に向けた警告でもよいし、両者に向けた警告でもよい。運転者に向けた警告では、例えば「直前に注意」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。注意喚起対象に向けた警告では、音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。
【0026】
図9(2)では、ステップS118bに代えてステップS118cを実行する。ここでは、避けきれない範囲214に注意喚起対象が存在しているか、あるいは避けきれない範囲214に注意喚起対象が侵入するか否かを判別する。ステップS112で実行する注意喚起対象の存在位置を特定する処理を時間を変えて2度以上実行すると、注意喚起対象の移動速度と移動方向を特定することができ、避けきれない範囲214に侵入する可能性の有無を判別することができ、侵入する場合は侵入するまでに要する時間を計算することができる。図9(2)では、注意喚起対象が避けきれない範囲214に侵入する可能性がある場合に警告する。ステップS120bの警告では、侵入までの時間によって警告強度を変えてもよい。
【0027】
図9(3)では、ステップS118bで、避けきれない範囲214内に注意喚起対象が存在しているか否かを判別する。図9(1)のステップS118bと同じ処理を実行する。ステップS118bで避けきれない範囲214内に注意喚起対象が存在しているかと判別されると、図7に示すように、実際の路面126に避けきれない範囲214を実際に描画し、かつ警告する。その他の点は、図9(1)に同じである。
図9の(4)では、ステップS118bに代えてステップS118cを実行する。その他の点は、図9(3)または図9(2)に同じである。
【0028】
(実施例3)
実施例3では、図11に示すように、運転者の視野外範囲308を路面126に実際に描画して、前方を横断している歩行者等の注意を喚起する。
図11において、範囲cは、運転者が車両の前方を注視しているときの正常な視野範囲を示し、周囲の居る人たちが予想している視野範囲を示している。bは実際の視線方向を示し、実際の視線方向bが車両前方方向aからずれると、矢印に示すように視野範囲が移動する。範囲308は正常視野範囲c内にあっても実際の視野内にはない範囲を示す。ここではそれを視野外範囲という。視野外範囲308があると、車両の周囲に居る人たちに重大な影響を与える恐れがある。第3実施例の装置は、視野外範囲308が生じた場合に、生じた視野外範囲308を路面に描画することによって、車両の周囲に居る人たちに視野外範囲308の存在を知らせる。
図10に示すように、この装置300は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図11に示すように、実際の路面126に視野外範囲308を描画する。
路面における視野外範囲308を計算するために、図10に示すように、装置300は、運転者の視線の方位を計測する装置302と、車外を撮影するカメラ108と、投射型表示装置110と、警告装置112を備えている。また装置300は、演算装置114と、車両形状データ記憶装置116と、路面における視野外範囲308を計算する処理を実行するプログラム304と、歩行者等の注意喚起対象を抽出する処理を実行するプログラム122と、投射型表示装置110と警告装置112を制御する処理を実行するプログラム306を備えている。
なお、第1実施例の説明と同一の参照番号で示す部材は第1実施例のものと同一であることを示し、重複する説明を省略する。運転者の視線の方位を計測する装置302は、市販の製品(例えば株式会社東陽テクニカから入手できるSmartEye Pro & AntiSleepシステム)を利用してもよいし、非特許文献1の技術を利用してもよい。路面における視野外範囲308を計算する処理では、計測された運転者の視線方位と、車両形状から、路面における視野外範囲308を計算する
【0029】
図11は、路面126に描画された視野外範囲308の一例を示しており、視野外範囲308内にゼブラゾーンに類似する明暗のコントラストがはっきりしている縞模様を描画する。これに代えて、視野外範囲308内のみを明るく照射してもよいし、視野外範囲308を示す輪郭線ととともに視野外範囲を示す文字等をも表示してもよい。
【0030】
図12と図13は、装置300で実行する処理手順を示している。
図12のステップS302では、運転者の視線の方位を計測する装置302で計測される視線方位を演算装置114に入力する。ステップS108では、車両形状を演算装置114に入力する。ステップS304では、視線方位と車両形状から、路面における視野外範囲308を計算する。
【0031】
図13は、計算した視野外範囲308を描画するまでの処理手順に関する4つの実施例を示している。図13において図5と同一番号で示す処理は図5の処理と同一内容の処理を示す。
(1)のステップS112では、車外撮影カメラ108の映像情報をプログラム122で処理して、歩行者等の注意喚起対象を抽出し、歩行者等の注意喚起対象が存在すれば、その存在位置を特定する処理を実行する。ステップS114では、特定された注意喚起対象が自車両の周辺に存在しているか否かを判別する。ここでいう周辺は、図11に示されているように、予め自車両の回りに定められている範囲140を意味し、自車両が安全に走行することに影響を与える事象が生じるかも知れない範囲をいう。
ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS116dを実行し、図11に示すように、実際の路面126に視野外範囲308を実際に描画する。これによって、車両の前方に居る歩行者は視野外範囲308に居ることを知ることができ、事故を避けるための対処をすることが可能となる。ステップS118dでは、特定された注意喚起対象が視野外範囲308内に存在しているか否かを判別する。ステップS118dで視野外範囲308に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS120dで警告する。ステップS120dで実施する警告は、自車両の運転者に向けた警告でもよいし、視野外範囲308に存在する歩行者等に向けた警告でもよいし、両者に向けた警告でもよい。運転者に向けた警告では、例えば「前方注視」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。注意喚起対象に向けた警告では、音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。
【0032】
図13(2)では、ステップS118dに代えてステップS118eを実行する。ここでは、視野外範囲308に注意喚起対象が存在しているか、あるいは視野外範囲308に注意喚起対象が侵入するか否かを判別する。ステップS112で実行する注意喚起対象の存在位置を特定する処理を時間を変えて2度以上実行すると、注意喚起対象の移動速度と移動方向を特定することができ、視野外範囲308に侵入する可能性の有無を判別することができ、侵入する場合は侵入するまでに要する時間を計算することができる。図13(2)では、注意喚起対象が視野外範囲308に侵入する可能性がある場合に警告する。ステップS120dの警告では、侵入までの時間によって警告強度を変えてもよい。
【0033】
図13(3)では、ステップS118dで、視野外範囲308内に注意喚起対象が存在しているか否かを判別する。図13(1)のステップS118dと同じ処理を実行する。ステップS118dで視野外範囲308内に注意喚起対象が存在しているかと判別されると、図11に示すように、実際の路面126に視野外範囲308を実際に描画し、かつ警告する。その他の点は、図13(1)に同じである。
図13の(4)では、ステップS118dに代えてステップS118eを実行する。その他の点は、図13(3)または図13(2)に同じである。
【0034】
(実施例4)
実施例1と実施例2を組み合わせて実施することも可能であり、実施例2と実施例3を組み合わせて実施することも可能であり、実施例3と実施例1を組み合わせて実施することも可能である。実施例4は、実施例1と実施例2と実施例3を組み合わせた実施例である。
【0035】
実施例4は、図15に示すように、運転者の死角範囲と運転者には避けきれない範囲と運転者の視野外範囲を路面に実際に描画して周囲に居る歩行者等の注意を喚起する装置に関する。ここでは、運転者の死角範囲と運転者には避けきれない範囲と運転者の視野外範囲の少なくともいずれかに属しており、運転者が対処することが困難な範囲402を表示する。
図14に示すように、この装置400は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図15に示すように、実際の路面126に、死角範囲128〜138(図2参照)と、運転者が避けきれない範囲214(図7参照)と、視野外範囲308(図11参照)の、少なくともいずれかの範囲に属する対処困難範囲402を表示する。
図14のハードウエア構成は、図1のハードウエア構成と図6のハードウエア構成と図10のハードウエア構成を頭語したものであり、重複説明を省略する。図1、図6、図10の参照番号と同一の参照番号で示す部材は、実施例1〜3で説明したものと同一である。
【0036】
装置400が実施する処理手順を図16に示す。図16の処理は、図4と図5、図8と図9、図12と図13の処理手順を統合したものであり、重複説明を省略する。図4と図5、図8と図9、図12と図13の参照番号と同一の参照番号で示す処理は、実施例1〜3で説明したものと同一である。
【0037】
図16と図17の処理では、ステップS400で、死角範囲128〜138(図2参照)と、避けきれない範囲214(図7参照)と、視野外範囲308(図11参照)の、少なくともいずれかに属するために運転者が対処することが困難な範囲402を計算する。
ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS402を実行し、図15に示すように、実際の路面126に対処困難範囲402を実際に描画する。これによって、自車両の周辺に存在する注意喚起対象は、対処困難範囲402を認識し、事故の発生を防ぐのに必要な予防措置を講ずることができる。
図17の処理では、ステップS404で、対処困難範囲402に注意喚起対象が存在しているか、あるいは侵入するか否かを判別する。対処困難範囲402に注意喚起対象が存在しているか、あるいは侵入する場合には、ステップS404を実行して警告する。
対処困難範囲402の表示条件、あるいは警告条件は、図5の(1)から(4)に示す4形態のいずれを採用してもよい。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図2】第1実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図3】車載式描画手段(投射型表示装置)の搭載位置を例示する図。
【図4】第1実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図5】図4の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【図6】第2実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図7】第2実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図8】第2実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図9】図8の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【図10】第3実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図11】第3実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図12】第3実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図13】図12の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【図14】第4実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図15】第4実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図16】第4実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図17】図16の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【符号の説明】
【0040】
100,200,300,400・・・実施例の注意喚起装置
102・・・運転者の瞳位置計測装置
104・・・車内撮影カメラ
106・・・ミラー角度検出装置
108・・・車外撮影カメラ
110・・・投射型表示装置
112・・・警告装置
114・・・演算装置
116・・・車両形状データ記憶装置
118・・・同乗者の外形形状計算処理
120・・・路面の死角範囲の計算処理
122・・・注意喚起対象の抽出処理
124・・・表示・警告処理
202・・・車速センサ
204・・・操舵角センサ
206・・・反応時間データベース
208・・・制動距離データベース
210・・・避けられない範囲の計算処理
302・・・運転者の視線計測装置
304・・・視野外範囲の計算処理
【技術分野】
【0001】
車両の周囲には、各種の理由によって運転者が対処することが困難な範囲が存在する。例えば、運転者の死角内に避けるべき対象が存在していても、死角内にあるために運転者がその対象を認識できていなければ、運転者は的確に対処することが難しい。あるいは、走行している車両は制動距離を必要とすることから、制動距離の範囲内に突然に避けるべき対象が移動してくることがあれば、運転者は的確に対処することが難しい。あるいは、運転者の視野外の範囲に避けるべき対象が存在していても、運転者は的確に対処することが難しい。
本発明では、上記の理由等によって運転者が的確に対処することが困難な範囲を、路面に実際に描画する。本発明では、車載式描画手段によって路面を照射して前記した範囲を実際に描画する。以下では、車載式描画手段を備えている車両を自車両という。
自車両の周囲には、歩行者、自転車、オートバイ、自動車等が存在する。周囲に存在している歩行者や運転者等に、自車両では対処することが困難な範囲を知ってもらうことができれば、その範囲を知った者の注意を喚起することができる。
本発明は、自車両では対処することが困難な範囲を路面に実際に描画し、自車両の周囲に居る歩行者や運転者等にその範囲を知ってもらい、その範囲に居る歩行者や運転者等の注意を喚起する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が安全に走行できるようにするさまざまな技術が開発されている。
例えば、SmartEye Pro & AntiSleepシステムが、株式会社東陽テクニカから販売されており、運転者の視線方位を±1度の精度で計測することが可能となっている。
非特許文献1にも、視線方位の検出技術が記載されている。
非特許文献2には、撮影した映像データから、歩行者、自転車、オートバイ、自動車等を抽出する技術が開示されている。
非特許文献3には、レーザーレーダで得られたデータから、歩行者を抽出し、抽出された歩行者が存在する方位と歩行者までの距離を特定する技術が開示されている。
非特許文献4にも、障害物の存在領域を特定する技術が開示されている。
特許文献1には、車両に運転者が着座したときの死角範囲を計算する技術が開示されている。
特許文献2には、死角範囲をディスプレイに表示したり、あるいは印刷したりすることによって、運転者の死角範囲を表示する技術を開示している。
このように、車両の安全性を向上させるためのさまざまな技術が開発されている。
【0003】
【非特許文献1】信学技報 PRMU2005-200, pp13-18 (2005) 「アイモデルを用いたCondensationによる黒目追跡」
【非特許文献2】第12回画像センシングシンポジウム予稿集、pp277−283 (June, 2006) 「屋外環境下における移動体識別に用いる入力特徴のAdaBoostによる評価」
【非特許文献3】デンソーテクニカルレビュー Vol.12, No.1, p35-39 (2007)「レーザーレーダによる歩行者認識技術」
【非特許文献4】第12回ロボット学会学術講演会 pp 323-324 (1994) 「ステレオン視による障害物の検知」
【特許文献1】特開平9−197950号公報
【特許文献2】特開平10−49041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を用いれば、自車両の死角範囲を知ることができる。死角範囲がどこにあるのかを知りたいのは、その車両の周囲に居る歩行者や運転者である。歩行者等が、周囲に存在している車両の死角範囲内に居ることを知ることができれば、歩行者等は危険を避けるための行動をとることができる。特許文献1の技術では、自車両の死角範囲を知ることはできても、それを周囲に居る歩行者等に知らせることができない。特許文献2の技術では、死角範囲を表示する。しかしながら、特許文献2の技術では、死角範囲を運転者が見る表示装置に表示する。あるいは、印刷して車体に貼る。運転者が見る表示装置に死角範囲を表示しても、その車両の死角範囲に居る歩行者等に、死角範囲内に居ることを知らせることができない。印刷したグラフを車体に貼ることによって歩行者等に死角範囲を知らせることも実際的でない。
現状の技術によって、死角範囲を計算することはできても、現状の技術では、死角範囲内に居ることを知らせる必要がある人に、死角範囲内に居ることを知らせる方法がない。
【0005】
同種のことが、制動距離の範囲内にあるために、突然に進入してきても避けきれない範囲についてもいえる。車線変更する車両に対して自車には避けきれない範囲に侵入しようとしているのか、あるいは避けきれない範囲を超えて進路変更するのかを知らせたいとする要求が存在する。車線変更する車両の側にも、後続する車両には避けきれない範囲内に侵入しようとしているのか、あるいは避けきれない範囲を超えてから進路変更するのかを知りたいと要求が存在している。
車速と操舵角と運転者の反応時間と制動距離等がわかれば、避けきれない範囲を計算することができる。非特許文献2の技術を用いれば、周囲に自動車が走行しているか否かを検知することができ、非特許文献3や非特許文献4の技術を用いれば、その自動車の位置まで計算することができる。それらの技術によって、周囲を走行している自動車が自車両には避けきれない範囲を走行しているのか、あるいは自車両には避けきれない範囲に侵入する動きをしているのか等を判断することができる。
しかしながら、現在の技術では、計算した結果を実際に知らせることが難しい。並走する車両に対して自車両には避けきれない範囲を知らせる技術が必要とされている。
【0006】
同種のことが、運転者の視野の外側の範囲についてもいえる。運転者がわき見運転をするようなことがあれば、周囲に居る者には「見てくれているだろう」と思われる範囲が、実際には視野外範囲となっていることがある。このような場合に備えて、運転者が道路前方を注視しながら走行する場合の正常な視野内であっても、実際の視野からすると視野外になっている範囲が存在するような場合には、それを知りたいとする要求が存在する。それを知ることができれば、自己を避けるための予防的行動をとることができる。
非特許文献1の技術や、前記した視線方位の計測装置(SmartEye Pro & AntiSleepシステム)を利用すれば、運転者の実際の視線範囲を推定することができ、運転者が道路前方を注視しながら走行する場合の正常な視野内でありながらも、実際の視野の外側になっている範囲が存在するような場合には、その範囲を計算することができる。
しかしながら、現在の技術では、計算した視野外範囲を、周囲に居る者に知らせることが難しい。横断歩道を横断している歩行者が、走行してくる車両の運転者の実際の視野の外側に居るという重大な事態が生じていても、歩行者にはそれを知るすべがない。
【0007】
本発明では、運転者にとって対処することが困難な範囲を路面に実際に描画することによって、その範囲をリアルタイムで実際に表示する技術を提供する。
本明細書では、運転者の死角範囲(単に死角範囲ということがある)と、運転者が避けきれない範囲(単に避けきれない範囲ということがある)と、運転者の視野外範囲(単に視野外範囲ということがある)のいずれかを運転者が対処することが困難な範囲という。死角範囲と避けきれない範囲と視野外範囲のいずれか1種を表示することによって有用な結果が得られる。システムを統合することによって、2種類の範囲を統合した範囲を表示することもできれば、3種類の範囲を統合した範囲を表示することもできる。例えば、死角範囲と避けきれない範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできれば、避けきれない範囲と視野外範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできれば、視野外範囲と死角範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできれば、死角範囲と避けきれない範囲と視野外範囲のいずれかに属する範囲を表示することもできる。これらも、運転者が対処することが困難な範囲という。
本明細書でいう運転者の視野外範囲は、運転者が道路前方を注視しながら走行する場合の正常な視野内でありながらも、運転者のわき見運転等に起因して実際の視野からすると視野外になっている範囲をいう。
本明細書でいう死角は、運転者が視線方位を向けても視認できない範囲をいう。
本明細書でいう注意喚起対象は、自車両の運転者が対処することが困難な範囲に居ることを伝えることによって、自車両に注意を払うように促す対象、例えば、歩行者や、自転車・オートバイ・他車両の運転者という。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は車載式の注意喚起装置に係り、運転者が対処することが困難な路面上の範囲を特定する特定手段と、その特定手段で特定された範囲の路面を車両から照射してその範囲を実際に描画する車載式描画手段を備えている。
本発明の注意喚起装置によると、自車両の運転者にとって対処することが困難な範囲を路面に実際に描画して表示することができ、注意喚起対象に対して対処することが困難な範囲に居ることを直接的に知らせることができる。あるいは注意喚起対象に対して対処することが困難な範囲に侵入しようとしていることを直接的に知らせることができる。
【0009】
特許文献1の技術を利用すると、運転者の死角範囲を特定することができる。この技術を利用して、運転者の死角範囲を特定する特定出段を構築することができる。
車速や操舵角や運転者の反応時間と制動距離等がわかれば、運転者が避けきれない範囲を計算することができる。その技術を使用して避けきれない範囲を特定する特定出段を構築することができる。
前記したSmartEye Pro & AntiSleepシステムという製品や、非特許文献1の技術を用いれば、運転者の視野外範囲を計算することができる。この技術を利用して、運転者の視野外範囲を特定する特定出段を構築することができる。
これらの特定手段を統合することによって、死角範囲と避けきれない範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできれば、避けきれない範囲と視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできれば、視野外範囲と死角範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできれば、死角範囲と避けきれない範囲と視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する特定出段を構築することもできる。
【0010】
路面に描画する処理を必要なときにのみ実行するようにしてもよい。
非特許文献2や非特許文献3や非特許文献4の技術によって、歩行者や自転車やオートバイや他車両が存在するか否かを判別し、存在する場合にはその位置を特定することができる。それらの技術によって、注意喚起対象が存在するか否かを判別する判別手段を構築することができる。
本発明では、判別手段によって注意喚起対象が存在すると判別されたときに、描画手段が前記範囲を描画することが好ましい。
【0011】
その判別手段は、車両周囲に注意喚起対象が存在するか否かを判別するものであってよい。あるいは、特定手段で特定した範囲内に注意喚起対象が存在するか否かを判別するものであってもよい。あるいは、特定手段で特定した範囲内に侵入しようしている注意喚起対象が存在するか否かを判別するものであってもよい。
【0012】
本発明の装置は、描画するだけでなく、自車両の運転者に対する警告装置、あるいは、注意喚起対象の注意をさらに喚起するための警告装置を併せ持っていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、運転者が対処することが困難な範囲を路面に実際に描画することができ、その範囲をリアルタイムで実際に表示することができる。従って、その範囲に居る者、あるいはその範囲に侵入しようとしている者の注意を直接的に喚起することができる。その範囲に居る者、あるいはその範囲に侵入しようとしている者は、事故の発生を防止するのに必要な予防措置を講じることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
最初に、本発明の好適な実施形態を列記する。
(特徴1) 特定出段が、運転者が避けきれない範囲を特定する。
(特徴2) 特定手段が、運転者の視野外範囲を特定する。
(特徴3) 特定出段が、運転者の死角範囲と視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する。
(特徴4) 特定出段が、運転者が避けきれない範囲と運転者の視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定する。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
実施例1は、図2に示すように、運転者の死角範囲を路面に実際に描画して周囲に居る歩行者等の注意を喚起する装置に関する。
図1に示すように、この装置100は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図2に示すように、実際の路面126に死角範囲128〜138を描画する。ここでいう死角は、バックミラー等を利用しても運転者が視認できない範囲をいう。128は車両後方の死角であり、129は同乗者による死角であり、130は左サイドミラーによる死角であり、132は左ピラーによる死角であり、134は車両前方の死角であり、136は右ピラーによるによる死角であり、138は右サイドミラーによる死角である。
路面における死角範囲を計算するために、図1に示すように、装置100は、運転者の瞳位置を計測する装置102(この装置102は、前記したSmartEye Pro & AntiSleepシステムという製品や、非特許文献1の技術を用いて構築する)と、車内撮影カメラ104と、サイドミラー等の角度を検出する装置106と、車外を撮影するカメラ108(レーザーレーダ等であってもよいし、遠赤外線カメラであってもよい)と、投射型表示装置110と、警告装置112を備えている。また装置100は、演算装置114と、車両形状データ記憶装置116と、車内撮影カメラ104の映像情報から同乗者の外形形状を計算する処理を実行するプログラム118と、路面における死角範囲128〜138を計算する処理を実行するプログラム120と、車外撮影カメラ108の映像情報から歩行者等の注意喚起対象を抽出する処理を実行するプログラム122と、投射型表示装置110と警告装置112を制御する処理を実行するプログラム124を備えている。
【0016】
図2は、路面126に描画された死角範囲の一例を示しており、死角範囲128〜138内にゼブラゾーンに類似する明暗のコントラストがはっきりしている縞模様を描画する。これに代えて、死角範囲内を死角範囲外よりも明るく照射してもよいし、死角範囲を示す輪郭線とともに死角であることを示す文字等をも表示してもよい。
【0017】
図3の(a)から(i)は、投射型表示装置110の搭載位置を例示しており、複数台の投射型表示装置110を車体の周囲に配置することによって、車両の前方と後方と側方に死角範囲を表示することができる。図3の(j)は投射型表示装置110の搭載高さを例示しており、床下、ドアガラスの下側の高さ、あるいは天井高さに配置する。
投射型表示装置110は、プロジェクタなような結像方式であってもよいし、レーザービームをラスタースキャンするものあってもよいし、レーザービームをベクトルスキャンするものあってもよい。光源も限定されず、レーザーでもよいし、超高圧水銀ランプや、ハロゲンランプ等あってもよい。投射型表示装置110によって車載式の描画手段を構築することができる。上記はあくまで例示であり、任意の描画手段を採用することができる。
【0018】
図4と図5は、装置100で実行する処理手順を示している。ステップS102では、運転者の瞳位置を計測する装置102によって運転者の瞳位置を計測して演算装置114に入力する。ステップS104では、車内撮影カメラ104の映像情報をプログラム118で処理して同乗者の外形形状を計算して演算装置114に入力する。ステップS106では、ミラー角度検出装置106から演算装置114にサイドミラー等の角度を入力する。ステップS108では、車両形状データ記憶装置116から自車両の形状データを演算装置114に入力する。ステップS102からS108までで、路面における死角範囲128〜138を計算するのに必要なデータが入力される。
ステップS110では、入力されたデータによって路面における死角範囲128〜138を計算する。死角範囲128〜138の計算には、特許文献1の技術を活用することができる。
【0019】
図5は、計算した死角範囲を描画するまでの処理手順に関する4つの実施例を示している。
(1)のステップS112では、車外撮影カメラ108の映像情報をプログラム122で処理して、歩行者等の注意喚起対象を抽出し、歩行者等の注意喚起対象が存在すれば、その存在位置を特定する処理を実行する。この処理には、非特許文献2〜4の技術を活用することができる。ステップS114では、特定された注意喚起対象が自車両の周辺に存在しているか否かを判別する。ここでいう周辺は、図2に示されているように、予め自車両の回りに定められている範囲140を意味し、自車両が安全に走行することに影響を与える事象が生じるかも知れない範囲をいう。ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS116を実行し、図2に示すように、実際の路面126に実際の死角範囲128〜138を実際に描画する。これによって、自車両の周辺に居る注意喚起対象は死角範囲128〜138を認識し、事故の発生を防ぐのに必要な予防措置を講ずることができる。ステップS118では、特定された注意喚起対象が死角範囲128〜138内に存在しているか否かを判別する。ステップS118で死角範囲128〜138に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS120で警告する。ステップS120で実施する警告は、自車両の運転者に向けた警告でもよいし、死角範囲128〜138に居る注意喚起対象に向けた警告でもよいし、両者に向けた警告でもよい。運転者に向けた警告では、例えば「前方死角に注意」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。注意喚起対象に向けた警告では、例えば「死角に入っています」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。
【0020】
図5(2)では、ステップS118に代えてステップS118aを実行する。ここでは、死角範囲128〜138に注意喚起対象が存在しているか、あるいは死角範囲128〜138に注意喚起対象が侵入するか否かを判別する。ステップS112で実行する注意喚起対象の存在位置を特定する処理を時間を変えて2度以上実行すると、注意喚起対象の移動速度と移動方向を特定することができ、死角範囲128〜138に侵入する可能性の有無を判別することができ、侵入する場合は侵入するまでに要する時間を計算することができる。図5(2)では、注意喚起対象が死角範囲128〜138に侵入する可能性がある場合に警告する。ステップS120の警告では、侵入までの時間によって警告強度を変えてもよい。
【0021】
図5(3)では、ステップS118で、死角範囲128〜138内に注意喚起対象が存在しているか否かを判別する。図5(1)のステップS118と同じ処理を実行する。ステップS118で死角範囲128〜138内に注意喚起対象が存在していると判別されると、図2に示すように、実際の路面126に実際の死角範囲128〜138を実際に描画し、かつ警告する。その他の点は、図5(1)に同じである。
図5の(4)では、ステップS118に代えてステップS118aを実行する。その他の点は、図5(3)または図5(2)に同じである。
上記では、正確な死角範囲を計算して求めるが、これに代えて、死角範囲を事前に計測あるいは計算しておいてもよい。計測あるいは計算しておいた死角範囲を記憶しておき、記憶しておいた死角範囲を路面に描画してもよい。
【0022】
(実施例2)
実施例2では、図7に示すように、運転者が避けることが困難な範囲(避けきれない範囲という)を路面に実際に描画して、自車両の前方に進路変更する車両の注意を喚起する装置に関する。
図6に示すように、この装置200は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図7に示すように、実際の路面126に避けきれない範囲214を描画する。
路面における避けきれない範囲214を計算するために、図6に示すように、装置200は、車速センサ202と、操舵角センサ204と、車外を撮影するカメラ108(レーザーレーダ等であってもよいし、遠赤外線カメラであってもよい)と、投射型表示装置110と、警告装置112を備えている。また装置200は、演算装置114と、反応時間データベース206と、制動距離データベース208と、路面における避けきれない範囲214を計算する処理を実行するプログラム210と、歩行者等の注意喚起対象を抽出する処理を実行するプログラム122と、投射型表示装置110と警告装置112を制御する処理を実行するプログラム212を備えている。制動距離データベース208は、車速と制動距離の関係を記憶している。
なお、第1実施例の説明と同一の参照番号で示す部材は第1実施例のものと同一であることを示し、重複する説明を省略する。
【0023】
図7は、路面126に描画された避けきれない範囲214の一例を示しており、避けきれない範囲214内にゼブラゾーンに類似する明暗のコントラストがはっきりしている縞模様を描画する。これに代えて、避けきれない範囲214内のみを明るく照射してもよいし、避けきれない範囲214を示す輪郭線とともに避けきれない範囲であることを示す文字等をも表示してもよい。
【0024】
図8と図9は、装置200で実行する処理手順を示している。
図8のステップS202では、車速センサ202で計測される車速を演算装置114に入力する。ステップS204では、操舵角センサ204で計測される操舵角を演算装置114に入力する。ステップS206では、反応時間データベース206から運転者が反応するのに要する時間を入力する。近似的には、全部の運転者に対して一定の反応時間を仮定してもよい。ステップS208では、制動距離データベース208から制動距離を読み出して演算装置114に入力する。ステップS202からS208までで、路面における避けきれない範囲214を計算するのに必要なデータが入力される。
ステップS210では、入力されたデータによって路面における避けきれない範囲214を計算する。
【0025】
図9は、路面に避けきれない範囲214を描画する処理手順に関する4つの実施例を示している。図9において図5と同一番号で示す処理は、図5の処理と同一内容の処理を示す。
(1)のステップS112では、車外撮影カメラ108の映像情報をプログラム122で処理して、歩行者等の注意喚起対象を抽出し、歩行者等の注意喚起対象が存在すれば、その存在位置を特定する処理を実行する。ステップS114では、特定された注意喚起対象が自車両の周辺に存在しているか否かを判別する。ここでいう周辺は、図7に示されているように、予め自車両の回りに定められている範囲140を意味し、自車両が安全に走行することに影響を与える事象が生じるかも知れない範囲をいう。特に、自車両の前方に存在している避けきれない範囲214に車線変更して侵入する可能性のある車両の存在範囲を含んでいる。
ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS116bを実行し、図7に示すように、実際の路面126に避けきれない範囲214を実際に描画する。これによって、隣接車線を走行している自動車は避けきれない範囲214を認識し、避けきれない範囲214に侵入しないコースで進路変更を行うことができる。ステップS118bでは、特定された注意喚起対象が避けきれない範囲214内に存在しているか否かを判別する。ステップS118bで避けきれない範囲214に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS120bで警告する。ステップS120bで実施する警告は、自車両の運転者に向けた警告でもよいし、避けきれない範囲214に存在する他車両に向けた警告でもよいし、両者に向けた警告でもよい。運転者に向けた警告では、例えば「直前に注意」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。注意喚起対象に向けた警告では、音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。
【0026】
図9(2)では、ステップS118bに代えてステップS118cを実行する。ここでは、避けきれない範囲214に注意喚起対象が存在しているか、あるいは避けきれない範囲214に注意喚起対象が侵入するか否かを判別する。ステップS112で実行する注意喚起対象の存在位置を特定する処理を時間を変えて2度以上実行すると、注意喚起対象の移動速度と移動方向を特定することができ、避けきれない範囲214に侵入する可能性の有無を判別することができ、侵入する場合は侵入するまでに要する時間を計算することができる。図9(2)では、注意喚起対象が避けきれない範囲214に侵入する可能性がある場合に警告する。ステップS120bの警告では、侵入までの時間によって警告強度を変えてもよい。
【0027】
図9(3)では、ステップS118bで、避けきれない範囲214内に注意喚起対象が存在しているか否かを判別する。図9(1)のステップS118bと同じ処理を実行する。ステップS118bで避けきれない範囲214内に注意喚起対象が存在しているかと判別されると、図7に示すように、実際の路面126に避けきれない範囲214を実際に描画し、かつ警告する。その他の点は、図9(1)に同じである。
図9の(4)では、ステップS118bに代えてステップS118cを実行する。その他の点は、図9(3)または図9(2)に同じである。
【0028】
(実施例3)
実施例3では、図11に示すように、運転者の視野外範囲308を路面126に実際に描画して、前方を横断している歩行者等の注意を喚起する。
図11において、範囲cは、運転者が車両の前方を注視しているときの正常な視野範囲を示し、周囲の居る人たちが予想している視野範囲を示している。bは実際の視線方向を示し、実際の視線方向bが車両前方方向aからずれると、矢印に示すように視野範囲が移動する。範囲308は正常視野範囲c内にあっても実際の視野内にはない範囲を示す。ここではそれを視野外範囲という。視野外範囲308があると、車両の周囲に居る人たちに重大な影響を与える恐れがある。第3実施例の装置は、視野外範囲308が生じた場合に、生じた視野外範囲308を路面に描画することによって、車両の周囲に居る人たちに視野外範囲308の存在を知らせる。
図10に示すように、この装置300は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図11に示すように、実際の路面126に視野外範囲308を描画する。
路面における視野外範囲308を計算するために、図10に示すように、装置300は、運転者の視線の方位を計測する装置302と、車外を撮影するカメラ108と、投射型表示装置110と、警告装置112を備えている。また装置300は、演算装置114と、車両形状データ記憶装置116と、路面における視野外範囲308を計算する処理を実行するプログラム304と、歩行者等の注意喚起対象を抽出する処理を実行するプログラム122と、投射型表示装置110と警告装置112を制御する処理を実行するプログラム306を備えている。
なお、第1実施例の説明と同一の参照番号で示す部材は第1実施例のものと同一であることを示し、重複する説明を省略する。運転者の視線の方位を計測する装置302は、市販の製品(例えば株式会社東陽テクニカから入手できるSmartEye Pro & AntiSleepシステム)を利用してもよいし、非特許文献1の技術を利用してもよい。路面における視野外範囲308を計算する処理では、計測された運転者の視線方位と、車両形状から、路面における視野外範囲308を計算する
【0029】
図11は、路面126に描画された視野外範囲308の一例を示しており、視野外範囲308内にゼブラゾーンに類似する明暗のコントラストがはっきりしている縞模様を描画する。これに代えて、視野外範囲308内のみを明るく照射してもよいし、視野外範囲308を示す輪郭線ととともに視野外範囲を示す文字等をも表示してもよい。
【0030】
図12と図13は、装置300で実行する処理手順を示している。
図12のステップS302では、運転者の視線の方位を計測する装置302で計測される視線方位を演算装置114に入力する。ステップS108では、車両形状を演算装置114に入力する。ステップS304では、視線方位と車両形状から、路面における視野外範囲308を計算する。
【0031】
図13は、計算した視野外範囲308を描画するまでの処理手順に関する4つの実施例を示している。図13において図5と同一番号で示す処理は図5の処理と同一内容の処理を示す。
(1)のステップS112では、車外撮影カメラ108の映像情報をプログラム122で処理して、歩行者等の注意喚起対象を抽出し、歩行者等の注意喚起対象が存在すれば、その存在位置を特定する処理を実行する。ステップS114では、特定された注意喚起対象が自車両の周辺に存在しているか否かを判別する。ここでいう周辺は、図11に示されているように、予め自車両の回りに定められている範囲140を意味し、自車両が安全に走行することに影響を与える事象が生じるかも知れない範囲をいう。
ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS116dを実行し、図11に示すように、実際の路面126に視野外範囲308を実際に描画する。これによって、車両の前方に居る歩行者は視野外範囲308に居ることを知ることができ、事故を避けるための対処をすることが可能となる。ステップS118dでは、特定された注意喚起対象が視野外範囲308内に存在しているか否かを判別する。ステップS118dで視野外範囲308に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS120dで警告する。ステップS120dで実施する警告は、自車両の運転者に向けた警告でもよいし、視野外範囲308に存在する歩行者等に向けた警告でもよいし、両者に向けた警告でもよい。運転者に向けた警告では、例えば「前方注視」といった音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。注意喚起対象に向けた警告では、音声警告であってもよいし、ブザー等で警告してもよい。
【0032】
図13(2)では、ステップS118dに代えてステップS118eを実行する。ここでは、視野外範囲308に注意喚起対象が存在しているか、あるいは視野外範囲308に注意喚起対象が侵入するか否かを判別する。ステップS112で実行する注意喚起対象の存在位置を特定する処理を時間を変えて2度以上実行すると、注意喚起対象の移動速度と移動方向を特定することができ、視野外範囲308に侵入する可能性の有無を判別することができ、侵入する場合は侵入するまでに要する時間を計算することができる。図13(2)では、注意喚起対象が視野外範囲308に侵入する可能性がある場合に警告する。ステップS120dの警告では、侵入までの時間によって警告強度を変えてもよい。
【0033】
図13(3)では、ステップS118dで、視野外範囲308内に注意喚起対象が存在しているか否かを判別する。図13(1)のステップS118dと同じ処理を実行する。ステップS118dで視野外範囲308内に注意喚起対象が存在しているかと判別されると、図11に示すように、実際の路面126に視野外範囲308を実際に描画し、かつ警告する。その他の点は、図13(1)に同じである。
図13の(4)では、ステップS118dに代えてステップS118eを実行する。その他の点は、図13(3)または図13(2)に同じである。
【0034】
(実施例4)
実施例1と実施例2を組み合わせて実施することも可能であり、実施例2と実施例3を組み合わせて実施することも可能であり、実施例3と実施例1を組み合わせて実施することも可能である。実施例4は、実施例1と実施例2と実施例3を組み合わせた実施例である。
【0035】
実施例4は、図15に示すように、運転者の死角範囲と運転者には避けきれない範囲と運転者の視野外範囲を路面に実際に描画して周囲に居る歩行者等の注意を喚起する装置に関する。ここでは、運転者の死角範囲と運転者には避けきれない範囲と運転者の視野外範囲の少なくともいずれかに属しており、運転者が対処することが困難な範囲402を表示する。
図14に示すように、この装置400は、演算装置114によって投射型表示装置110を制御し、図15に示すように、実際の路面126に、死角範囲128〜138(図2参照)と、運転者が避けきれない範囲214(図7参照)と、視野外範囲308(図11参照)の、少なくともいずれかの範囲に属する対処困難範囲402を表示する。
図14のハードウエア構成は、図1のハードウエア構成と図6のハードウエア構成と図10のハードウエア構成を頭語したものであり、重複説明を省略する。図1、図6、図10の参照番号と同一の参照番号で示す部材は、実施例1〜3で説明したものと同一である。
【0036】
装置400が実施する処理手順を図16に示す。図16の処理は、図4と図5、図8と図9、図12と図13の処理手順を統合したものであり、重複説明を省略する。図4と図5、図8と図9、図12と図13の参照番号と同一の参照番号で示す処理は、実施例1〜3で説明したものと同一である。
【0037】
図16と図17の処理では、ステップS400で、死角範囲128〜138(図2参照)と、避けきれない範囲214(図7参照)と、視野外範囲308(図11参照)の、少なくともいずれかに属するために運転者が対処することが困難な範囲402を計算する。
ステップS114で自車両の周辺に注意喚起対象が存在していると判別されると、ステップS402を実行し、図15に示すように、実際の路面126に対処困難範囲402を実際に描画する。これによって、自車両の周辺に存在する注意喚起対象は、対処困難範囲402を認識し、事故の発生を防ぐのに必要な予防措置を講ずることができる。
図17の処理では、ステップS404で、対処困難範囲402に注意喚起対象が存在しているか、あるいは侵入するか否かを判別する。対処困難範囲402に注意喚起対象が存在しているか、あるいは侵入する場合には、ステップS404を実行して警告する。
対処困難範囲402の表示条件、あるいは警告条件は、図5の(1)から(4)に示す4形態のいずれを採用してもよい。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図2】第1実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図3】車載式描画手段(投射型表示装置)の搭載位置を例示する図。
【図4】第1実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図5】図4の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【図6】第2実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図7】第2実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図8】第2実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図9】図8の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【図10】第3実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図11】第3実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図12】第3実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図13】図12の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【図14】第4実施例の注意喚起装置のハードウエア構成を示す図。
【図15】第4実施例の注意喚起装置の描画パターンの一例を示す図。
【図16】第4実施例の注意喚起装置が実行する処理手順を示す図。
【図17】図16の処理手順に続けて実行する処理手順を示す図。
【符号の説明】
【0040】
100,200,300,400・・・実施例の注意喚起装置
102・・・運転者の瞳位置計測装置
104・・・車内撮影カメラ
106・・・ミラー角度検出装置
108・・・車外撮影カメラ
110・・・投射型表示装置
112・・・警告装置
114・・・演算装置
116・・・車両形状データ記憶装置
118・・・同乗者の外形形状計算処理
120・・・路面の死角範囲の計算処理
122・・・注意喚起対象の抽出処理
124・・・表示・警告処理
202・・・車速センサ
204・・・操舵角センサ
206・・・反応時間データベース
208・・・制動距離データベース
210・・・避けられない範囲の計算処理
302・・・運転者の視線計測装置
304・・・視野外範囲の計算処理
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が対処することが困難な路面上の範囲を特定する特定手段と、
その特定手段で特定された範囲の路面を車両から照射して路面に前記範囲を実際に描画する車載式描画手段、
を備えている注意喚起装置。
【請求項2】
前記特定出段が、運転者の死角範囲を特定することを特徴とする請求項1の注意喚起装置。
【請求項3】
前記特定出段が、運転者の死角範囲と運転者が避けきれない範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定することを特徴とする請求項1の注意喚起装置。
【請求項4】
前記特定出段が、運転者の死角範囲と運転者が避けきれない範囲と運転者の視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定することを特徴とする請求項1の注意喚起装置。
【請求項5】
注意喚起対象が存在するか否かを判別する判別手段が付加されており、
その判別手段が存在すると判別したときに、前記車載式描画手段が前記範囲を描画することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の注意喚起装置。
【請求項6】
前記判別手段が、車両周囲に注意喚起対象が存在するか否かを判別することを特徴する請求項5の注意喚起装置。
【請求項7】
前記判別手段が、前記特定手段で特定した範囲内に注意喚起対象が存在するか否かを判別することを特徴する請求項5の注意喚起装置。
【請求項8】
前記判別手段が、前記特定手段で特定した範囲内に侵入する注意喚起対象が存在するか否かを判別することを特徴する請求項5の注意喚起装置。
【請求項1】
運転者が対処することが困難な路面上の範囲を特定する特定手段と、
その特定手段で特定された範囲の路面を車両から照射して路面に前記範囲を実際に描画する車載式描画手段、
を備えている注意喚起装置。
【請求項2】
前記特定出段が、運転者の死角範囲を特定することを特徴とする請求項1の注意喚起装置。
【請求項3】
前記特定出段が、運転者の死角範囲と運転者が避けきれない範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定することを特徴とする請求項1の注意喚起装置。
【請求項4】
前記特定出段が、運転者の死角範囲と運転者が避けきれない範囲と運転者の視野外範囲の少なくとも1種に属する範囲を特定することを特徴とする請求項1の注意喚起装置。
【請求項5】
注意喚起対象が存在するか否かを判別する判別手段が付加されており、
その判別手段が存在すると判別したときに、前記車載式描画手段が前記範囲を描画することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の注意喚起装置。
【請求項6】
前記判別手段が、車両周囲に注意喚起対象が存在するか否かを判別することを特徴する請求項5の注意喚起装置。
【請求項7】
前記判別手段が、前記特定手段で特定した範囲内に注意喚起対象が存在するか否かを判別することを特徴する請求項5の注意喚起装置。
【請求項8】
前記判別手段が、前記特定手段で特定した範囲内に侵入する注意喚起対象が存在するか否かを判別することを特徴する請求項5の注意喚起装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−154775(P2009−154775A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336904(P2007−336904)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]