説明

洗剤組成物

本発明は、洗剤成分および臭気発生の低減の可能性および親リパーゼに対して良好な相対的パフォーマンスを有する特定のリパーゼ変異体を含む洗剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯洗剤組成物、特にリパーゼ酵素を含む洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脂性汚れの改善された除去は、特に洗濯の背景において洗剤製造業者の不変の目標である。多くの効果的な界面活性剤および界面活性剤の組み合わせの使用にもかかわらず、特に低い水温で使用した場合には、多くの界面活性剤ベースの製品は依然として脂性汚れ/油性汚れを完全に除去することはできない。脂肪性汚れをトリグリセリド類へ分解することによって脂肪性汚れを除去するために、1980年代後半から、リパーゼ酵素類が洗剤に使用されてきた。
【0003】
比較的最近まで、リポラーゼ(Lipolase)(商標名、ノボザイムズ(Novozymes))などの、主な市販のリパーゼ酵素類は、洗浄プロセスの乾燥工程でのより低い水分レベルにて、特に効果的に機能した。これら酵素は、乾燥工程中の洗濯された衣服に付着残留している汚れにのみ顕著である脂肪分解を伴う、2回目の洗浄工程においてのみ顕著なクリーニングを実現する傾向にあった、この分解された脂肪は続いて次の洗浄工程で除去される。しかし、最近になって、クリーニングプロセスの洗浄段階中においても効果的に機能する、高効率リパーゼ類が開発された。これによって第2回洗浄工程でのクリーニングと同様に、第1洗浄サイクルに、リパーゼ酵素に起因するクリーニング効果の顕著な改善を見出すことができる。かかる酵素の例が、米国特許第6,939,702B1号、国際公開特許WO00/60063、および研究の開示IP6553Dに記載されている。このような酵素類は、以下で一次洗浄リパーゼと呼ばれる。
【0004】
加えて、消費者は、衣類のような物品ができるだけきれいになることを好んでいる。こうした消費者は、典型的に、クリーニング済みまたは処理済み物品の臭気をかかる物品の清潔度と結び付けて考える。このため、クリーニングおよび/または処理用組成物の有効性は、消費者の観点から、典型的には当該組成物によってクリーニングされるまたは処理された物品に対し、当該組成物が与えるにおいと直接結び付けられる。本出願人らは、エステラーゼ類およびリパーゼ類のようなある種の物質が、不快な脂肪酸臭、特に短鎖脂肪酸臭(酪酸臭など)を発生させることを確認した。しかしながら、このような物質は、特に効果的な洗浄剤であり得る。残念ながら、消費者は典型的に、このような作用物質の使用から生じる臭気を清浄度不足と結び付けて考える。C末端伸長を有する低臭の変異体の例が、国際公開特許WO02/06297の中に共有されているが、これらリパーゼ変異体は、商品名リペック(Lipex)(登録商標)として販売されている変異体を含む、WO00/60063からの変異体のような一次洗浄リパーゼの強力な洗浄性能を示さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、脂性/油性汚れを見事に除去すると同時に、不快な脂肪酸臭を発生させない脂肪分解酵素を含む洗剤組成物の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、洗剤成分と、本明細書で与えられた試験条件で少なくとも0.8の平均相対的パフォーマンス(RPavg)および少なくとも1.1のベネフィットリスク(BR)を有するリパーゼ変異型とを含む洗剤組成物に関する。
【0007】
配列表
配列番号1は、サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼをコード化するDNA配列を示している。
【0008】
配列番号2は、サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼのアミノ酸配列を示している。
【0009】
配列番号3および配列番号4は、アラインメントの例に使用される配列を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義
リパーゼ活性:用語「リパーゼ活性」は、本明細書においてカルボン酸エステル加水分解酵素活性と定義され、当該活性は、ジアシルグリセロールおよびカルボキシレートの形成下で、トリアシルグリセロールの加水分解に触媒作用を及ぼす。本発明の目的上、リパーゼ活性は、「材料と方法(Materials and Methods)」の中の「リパーゼ活性」に記載されている手順によって決定される。リパーゼ活性の1単位は、30℃、pH7で1分間に1.0マイクロモルの酪酸を放出することの可能な酵素の量であると定義される。
【0011】
本発明のポリペプチドは、置換基T231R+N233Rを有する、配列番号2の成熟ポリペプチドとして示されるアミノ酸配列から成るポリペプチドの、相対的パフォーマンスとして測定したリパーゼ活性の、少なくとも50%、少なくとも75%、80%、85%、または90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは96%または97%、最も好ましくは98%または99%、およびより最も好ましくは少なくとも100%を有する。
【0012】
単離されたポリペプチド:本明細書で使用する時、用語「単離されたポリペプチド」とは、SDS−PAGEによって測定されたとき、少なくとも20%純度、好ましくは少なくとも40%純度、より好ましくは少なくとも60%純度、より好ましくは少なくとも80%純度、最も好ましくは少なくとも90%純度、およびさらに最も好ましくは少なくとも95%純度であるポリペプチドを言う。
【0013】
実質的に純粋なポリペプチド:本明細書において、用語「実質的に純粋なポリペプチド」とは、自然に付随しているその他のポリペプチドの最大限でも10重量%、好ましくは最大限でも8重量%、より好ましくは最大限でも6重量%、より好ましくは最大限でも5重量%、より好ましくは最大限でも4重量%、最大限でも3重量%、さらにより好ましくは最大限でも2重量%、最も好ましくは最大限でも1重量%、およびさらに最も好ましくは最大限でも0.5重量%含有するポリペプチド製剤を言う。したがって、実質的に純粋なポリペプチドが、製剤に存在する全ポリペプチド材料の、少なくとも92重量%純度、好ましくは少なくとも94重量%純度、より好ましくは少なくとも95重量%純度、より好ましくは少なくとも96重量%純度、より好ましくは少なくとも96重量%純度、より好ましくは少なくとも97重量%純度、より好ましくは少なくとも98重量%純度、さらにより好ましくは少なくとも99重量%純度、最も好ましくは少なくとも99.5重量%純度、およびさらに最も好ましくは100重量%純度であるのが好ましい。
【0014】
本発明のポリペプチドは、好ましくは実質的に純粋な形である。特に、ポリペプチドが「本質的に純粋な形」即ち、ポリペプチド製剤が、自然に付随しているその他のポリペプチド材料を実質的に含まないことが好ましい。これは、ポリペプチドを、例えば、よく知られた組換え方法を使って、または古典的な精製法によって調製することにより達成することが可能である。
【0015】
本明細書中、用語「実質的に純粋なポリペプチド」は、用語「単離」および「単離形のポリペプチド」と同義である。
【0016】
同一性:2つのアミノ酸配列間、または2つのヌクレオチド配列間の関連性は、パラメータ「同一性」によって表される。
【0017】
本発明の目的のため、2つのアミノ酸配列のアラインメントは、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)のニードルプログラム(Needle program)、バージョン2.8.0.を用いて判定した。ニードルプログラムは、ニードルマンS.B.(Needleman, S. B.)とバンシュC.D.(Wunsch, C. D.)(1970)の分子生物学の機関紙( J. Mol. Biol.)、48、443〜453に記載のグローバルアラインメントアルゴリズムを実行する。使用される置換マトリクスはBLOSUM62、ギャップオープニングペナルティーは10、およびギャップ伸張ペナルティーは0.5である。
【0018】
本発明のアミノ酸配列(「発明の配列」;例えば、配列番号2のアミノ酸1〜269)と別のアミノ酸配列(「外来配列」)との間の同一性の程度は、「発明の配列」の長さまたは「外来配列」の長さのどちらか短い方で除された、2つの配列のアラインメントの完全な一致の数として計算される。結果は一致率(percent identity)で表される。
【0019】
「発明の配列」と「外来配列」が、重複部分の同じ場所に(以下のアラインメントの例では「|」で示されている)同一のアミノ酸残基を有している場合には完全な一致が起こる。配列の長さは配列の中のアミノ酸残基の数である(例えば、配列番号2の長さは269)
以下のアラインメントの例において、重複部分は配列Aのアミノ酸配列「HTWGER−NL」;または配列Bのアミノ酸配列「HGWGEDANL」である。例において、ギャップは「−」で示されている。
【0020】
アラインメントの例
【数1】

【0021】
ポリペプチド断片:本明細書において用語「ポリペプチド断片」は、配列番号2のアミノおよび/またはカルボキシル末端、或いはその相同配列から欠失された1種以上のアミノ酸を封するポリペプチドとして定義され、当該断片はリパーゼ活性を有する。
【0022】
配列:本明細書において用語「配列」は、配列番号1の5’末端および/または3’末端、或いはその相同配列から欠失された1種以上のヌクレオチドを有するヌクレオチド配列として定義され、当該配列はリパーゼ活性を有するポリペプチドをコード化する。
【0023】
対立遺伝子変異型:本明細書において用語「対立遺伝子変異型」とは、同じ染色体座を占める遺伝子の2つ以上の代替形態いずれかを意味する。対立遺伝子変異は、突然変異によって自然発生し、個体群内の多形性となり得る。遺伝子の突然変異はサイレント(コード化されたポリペプチドにおいて変化しない)であり得、代替アミノ酸配列を有するポリペプチドをコード化することもできる。ポリペプチドの対立遺伝子変異型は、遺伝子の対立遺伝子変異型によってコード化されたポリペプチドである。
【0024】
実質的に純粋なポリヌクレオチド:本明細書で使用される時、「実質的に純粋なポリヌクレオチド」は、他の外来性のまたは不必要なヌクレオチドのない、および遺伝子手術されたタンパク質生産システム内での使用に好適な形体のポリヌクレオチド製剤を言う。したがって、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、自然に付随しているその他のポリヌクレオチドを、最大限でも10重量%、好ましくは最大限でも8重量%、より好ましくは最大限でも6重量%、より好ましくは最大限でも5重量%、より好ましくは最大限でも4重量%、最大限でも3重量%、さらにより好ましくは最大限でも2重量%、最も好ましくは最大限でも1重量%、およびさらに最も好ましくは最大限でも0.5%含有している。しかしながら、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、プロモーターおよびターミネーターのような自然発生する5’および3’非翻訳領域を含んでいてもよい。実質的に純粋なポリヌクレオチドが、少なくとも90重量%純度、好ましくは少なくとも92重量%純度、より好ましくは少なくとも94重量%純度、より好ましくは少なくとも95重量%純度、より好ましくは少なくとも96重量%純度、より好ましくは少なくとも96重量%純度、より好ましくは少なくとも97重量%純度、より好ましくは少なくとも98重量%純度、さらにより好ましくは少なくとも99重量%純度、最も好ましくは少なくとも99.5重量%純度、およびさらに最も好ましくは100重量%純度であるのが好ましい。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは実質的に純粋な形である。特に、本明細書で開示されているポリヌクレオチドが「本質的に純粋な形」即ち、ポリヌクレオチド製剤が、自然に付随しているその他のポリヌクレオチド材料を実質的に含まないことが好ましい。本明細書中、用語「実質的に純粋なポリヌクレオチド」は、用語「単離されたポリヌクレオチド」および「単離形のポリヌクレオチド」と同義である。ポリヌクレオチドはゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成起源、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
cDNA:本明細書で使用される時、「cDNA」は、真核細胞から得る成熟し、スプライシングされたmRNA分子から逆転写によって生成され得るDNA分子であると定義される。cDNAは、対応するゲノムDNAに通常存在するイントロン配列を欠損している。初期の、一次RNA転写物は、成熟し、スプライシングされたmRNAとして出現する前に一連の工程を介して処理されたmRNAの前駆体である。これらの工程にはスプライシングと呼ばれるプロセスによるイントロン配列の除去が含まれる。したがって、mRNA由来のcDNAはいかなるイントロン配列も欠損している。
【0026】
核酸作成物:本明細書で使用される時、「核酸作成物」は、自然発生する遺伝子から単離される、またはその他自然界に存在しない方法で核酸のセグメントを包含するように変性された、一本または二本鎖のいずれかの核酸分子を言う。用語核酸作成物は、核酸作成物が本発明のコード配列の発現に必要な制御配列を有している場合、用語「発現カセット」と同義である。
【0027】
制御配列:用語「制御配列」は、本明細書において、本発明のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの発現に必要なまたは有利な全ての成分を含むと定義される。各制御配列は、ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列に固有または異質であってもよい。かかる制御配列には、リーダー、ポリアデニル化配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、および転写ターミネーターが挙げられるがこれらに限定されない。少なくとも、制御配列にはプロモーター、並びに転写および翻訳停止シグナルが含まれる。制御配列は、制御配列のライゲーションを容易にする、ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列のコード領域を有する、特定の制限酵素認識部位を導入する目的で、リンカーを有してもよい。
【0028】
作動可能に連結される:本明細書において、用語「作動可能に連結される」は、制御配列がポリペプチドのコード配列の発現を指示するように、ポリヌクレオチド配列のコード配列に対して適切な位置に制御配列を配置する構成を意味する。
【0029】
コード配列:本明細書において使用される時、用語「コード配列」は、ヌクレオチド配列を意味し、ヌクレオチド配列は、そのタンパク質産物のアミノ酸配列を直接特定する。コード配列の境界は、一般に、通常ATG開始コドン、またはGTGおよびTTGのような代替的な開始コドンで始まるオープン・リーディング・フレームによって決定される。コード配列は、DNA、cDNA、組み換えヌクレオチド配列であってもよい。
【0030】
発現:用語「発現」は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、および分泌を含むがこれらに限定されない、ポリペプチドの生成に関与するあらゆる工程を包含する。
【0031】
発現ベクター:本明細書において、用語「発現ベクター」とは、本発明のポリペプチドをコード化し、それを発現させるさらなるヌクレオチドに作動可能に連結されるポリヌクレオチドを含む、直鎖または環状DNA分子として定義される。
【0032】
宿主細胞:本明細書で使用するとき、用語「宿主細胞」とは、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸作成物で形質転換、トランスフェクション、形質導入などの影響を受けやすい任意の細胞を包含する。
【0033】
修飾:本明細書において、用語「修飾」とは、配列番号2の成熟したポリペプチドから成るポリペプチドの化学的修飾、並びにそのポリペプチドをコード化するDNAの遺伝子操作を意味する。修飾(単数または複数種類)は、アミノ酸(単数または複数種類)の置換(単数または複数種類)、欠失(単数または複数種類)および/または挿入(単数または複数種類)、並びにアミノ酸側鎖(単数または複数種類)の置換(replacement)(単数または複数種類)であり得る。
【0034】
人工変異型:本明細書で使用するとき、用語「人工変異型」とは、配列番号1の修飾されたヌクレオチド配列を発現する生物によって生成されたリパーゼ活性を有するポリペプチドを意味する。修飾されたヌクレオチド配列は、ヒトが介入し、配列番号1に開示されたヌクレオチド配列を修飾することによって得られる。
【0035】
相対的パフォーマンス(Relative performance(RP)):用語「相対的パフォーマンス」とは、本明細書の実施例2に記載の特定の酵素変異型で洗浄した繊維製品のサンプルの色の白色度を測定したときの、参照酵素と比較した酵素変異型の性能を反映している。
【0036】
リスク(R):用語「リスク」およびリスク係数は、本明細書において同じ意味で使用され、リパーゼ変異型で洗浄した材料見本から放出される酪酸の量と、配列番号2のリパーゼの成熟した部位で洗浄した材料見本から放出される酪酸の量との割合である。両方の値は、リパーゼで洗浄していない材料見本から放出された酪酸の量に対して補正されている。
【0037】
ベネフィットリスク係数(Benefit-Risk factor(BR)):ベネフィットリスク係数は、臭気のリスクと比較した洗浄性能を説明する。したがって、BR=RP平均/Rとなる。
【0038】
変異型指定の取り決め:
本明細書によるリパーゼ変異体の説明において、参照しやすいように以下の専門用語を使用する:オリジナルのアミノ酸:位置:置換されたアミノ酸
この専門用語にしたがって、例えば、位置195のグリシンのグルタミン酸の置換はG195Eとして示されている。同じ位置のグリシンの削除は、G195*として、およびリシンのような追加的アミノ酸残基の挿入はG195GKとして示される。
【0039】
特定のリパーゼはその他のリパーゼと比較して「欠失」を有し、かかる位置に挿入が行なわれ、これは、所定位置へのアスパラギン酸の挿入として*36Dとして示される。
【0040】
複数の変異がプラスによって分離される、即ち:R170Y+195Eは、170および195の位置での変異であり、アルギニンとグリシンをチロシンとグルタミン酸でそれぞれ置換していることを示している。
【0041】
記載のアラインメントの手順を適用する場合、X231は、位置231に対応する親ポリペプチド中のアミノ酸を示す。X231Rは、アミノ酸がRで置換されたことを示す。配列番号2ではXはTであり、したがってT231Rは、位置231においてTがRで置換されたことを示す。ある位置(例えば、231)のアミノ酸が、アミノ酸の群、例えば、R、PおよびYから成る群から選択された別のアミノ酸で置換される場合、これはX231R/P/Yで表される。
【0042】
全ての場合において、IUPACの一文字または三文字のアミノ酸略号を使用している。
【0043】
リパーゼ活性を有するポリペプチド
本発明のリパーゼ活性を有する単離されたポリペプチドは、本明細書で与えられる試験条件で、少なくとも0.8のRPおよび少なくとも1.1のBRを有するリパーゼから成る群から選択される。
【0044】
好ましい実施形態において、リパーゼは、少なくとも0.9、例えば、1.0または1.1などのRPを有する。より好ましい実施形態において、リパーゼは、少なくとも1.2、例えば、1.3またはさらに1.4などのRPを有する。
【0045】
別の好ましい実施形態において、リパーゼは、少なくとも1.2、例えば、1.3またはさらに1.4などのBRを有する。より好ましい実施形態において、リパーゼは、少なくとも1.5、例えば、1.6またはさらに1.7などのBRを有する。
【0046】
さらなる態様において、本発明のポリペプチドは、さらに、本明細書で与えられる試験条件で1未満、例えば、0.95未満の相対LU/A280(relative LU/A280)を有する。好ましい実施形態において、相対LU/A280は0.90未満、例えば、0.85未満または0.80未満である。
【0047】
さらなる態様において、本発明の単離されたポリペプチドは、配列番号2に含まれるまたは配列番号2を含むアミノ酸配列、或いはそれらの対立遺伝子変異型を有し、さらに少なくとも1.1のBRおよび少なくとも0.8のRPを有する。別の態様において、本発明の単離されたポリペプチドは、配列番号2の成熟した部位に含まれるまたは配列番号2の成熟した部位を含むアミノ酸配列、或いはそれらの対立遺伝子変異型を有し、さらに少なくとも1.1のBRおよび少なくとも0.8のRPを有する。
【0048】
さらに別の態様において、本発明の単離されたポリペプチドは、配列番号2の成熟した部位(即ち、成熟したポリペプチド)との同一性の程度が少なくとも80%、例えば、少なくとも85%または90%、或いは少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%、およびより最も好ましくは少なくとも99%であり、リパーゼ活性を有するアミノ酸配列(以下「相同性のあるポリペプチド」とう言)、を有する。好ましい態様において、相同性のあるポリペプチドは、配列番号2の成熟したポリペプチドと、10のアミノ酸がなる、好ましくは5つのアミノ酸が異なる、より好ましくは4つのアミノ酸が異なる、よりさらに好ましくは3つのアミノ酸が異なる、最も好ましくは2つのアミノ酸が異なる、およびさらに最も好ましくは1つのアミノ酸が異なる、アミノ酸配列を有する。
【0049】
さらなる態様において、本発明のリパーゼ活性を有する単離されたポリペプチドは、非常に低ストリンジェンシー条件下で、好ましくは低ストリンジェンシー条件下で、より好ましくは中間のストリンジェンシー条件下で、より好ましくは中の上のストリンジェンシー条件下で、さらにより好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、および最も好ましくは非常に高いストリンジェンシー条件下で、(i)配列番号1のヌクレオチド644〜732と、(ii)配列番号1のヌクレオチド644〜732に含まれるcDNA配列と、(iii)(i)または(ii)のサブシーケンスと、或いは(iv)(i)、(ii)、または(iii)の相補鎖と、ハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコード化される(J.サンブロック(J. Sambrook)、E.F.フリッチ(E.F. Fritsch)、およびT.マニアタス(T. Maniatus)、1989、分子のクローニング(Molecular Cloning)、研究室マニュアル(A Laboratory Manual)、第2版、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor, New York))。配列番号1のサブシーケンスは、少なくとも100の隣接するヌクレオチド、または好ましくは少なくとも200の隣接するヌクレオチドを包含している。さらに、サブシーケンスは、リパーゼ活性を有するポリペプチドフラグメントをコード化し得る。
【0050】
異なる属または種の株から、当該技術分野において周知の方法によって、リパーゼ活性を有するポリペプチドをコード化するDNAを同定およびクローンするために、配列番号1のヌクレオチド配列またはそのサブシーケンス、並びに配列番号2のアミノ酸配列またはそのフラグメントを、核酸プローブの設計に使用することが可能である。特に、かかるプローブは、所望の属または種のゲノムまたはcDNAをハイブリダイズするために使用可能であり、その中の対応する遺伝子を同定および単離するために、続いて通常のサザンブロット法の手順が行なわれる。かかるプローブは全配列より大幅に短くてよいが、少なくとも14、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも35、および最も好ましくは少なくとも70ヌクレオチドの長さでなければならない。しかしながら、核酸プローブの長さが少なくとも100ヌクレオチドであるのが好ましい。例えば、核酸プローブの長さは、少なくとも200ヌクレオチド、好ましくは少なくとも300ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも400ヌクレオチド、または最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチドであってもよい。さらに長いプローブ、例えば、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも好ましくは少なくとも700ヌクレオチド、またはより好ましくは少なくとも800ヌクレオチドの長さの核酸プローブを使用することができる。DNAとRNAの両方を使用することができる。プローブは、対応する遺伝子(例えば、32P、H、35S、ビオチン、またはアビジンを有する)を検出するために、通常標識化される。かかるプローブは本発明に包含される。
【0051】
したがって、かかるその他の生物から生成されるゲノムDNAまたはRNAライブラリは、上記のプローブでハイブリダイズする、およびリパーゼ活性を有するポリペプチドをコード化するDNAのためにスクリーンされてもよい。かかるその他の生物からのゲノムまたはその他のDNAは、アガロースまたはポリアクリルアミド電気泳動、或いはその他の分離技術によって分離され得る。ライブラリからのDNAまたは分離されたDNAは、ニトロセルロースまたはその他の好適な担体物質上に移動および不動化されてもよい。配列番号1またはそのサブシーケンスと相同のクローンまたはDNAを同定するために、サザンブロット法において担体物質を用いる。
【0052】
本発明の目的のため、ハイブリダイゼーションは、非常に低〜非常に高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1に示されるヌクレオチド配列、その相補鎖、またはそのサブシーケンスに対応する、標識化された核酸プローブとハイブリッド形成するヌクレオチド配列を表す。これらの条件下で核酸プローブがハイブリッド形成する分子は、X線フィルムを使用して検出することが可能である。
【0053】
さらなる態様において、本発明の変異型は、配列番号2の1種以上のアミノ酸、またはそれらの成熟したポリペプチドの、同類置換、欠失、および/または挿入を含む人工変異型であることができ、前記変異型は、少なくとも1.1のBRおよび少なくとも0.8のRPを有する。好ましくは、アミノ酸変化は軽度のものである、即ち、タンパク質の折り畳みおよび/または活性に有意な影響を与えない保守的なアミノ酸の置換または挿入;典型的には1〜30のアミノ酸の微小な欠失;アミノ末端メチオニン残基のような微細なアミノ末端またはカルボキシル末端の延伸;約20〜20残基までの微細なリンカーペプチド;または正味の電荷またはその他の機能を変化させることによって精製を容易にする、例えば、ポリヒスチジン配列(poly-histidine tract)、抗原エピトープ、または結合ドメインなどの、微細な延伸である。
【0054】
同類置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミンおよびアスパラギン)、疎水性のアミノ酸(ロイシン、イソロイシンおよびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、および微小アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニンおよびメチオニン)内のものである。一般に比活性度を変化させないアミノ酸の置換は当該技術分野において既知であり、例えば、H.ノイラート(H. Neurath)およびR.L.ヒル(R.L. Hill)によってタンパク質(The Proteins)(アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク州、1979)に記載されている。最も普通に起こる交換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、およびAsp/Glyである。
【0055】
20の標準的なアミノ酸に加え、非標準的アミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン、6−N−メチルリジン、2−アミノイソ酪酸、イソバリン、およびα−メチルセリン)を野生型ポリペプチドのアミノ酸残基と置換してもよい。遺伝子コードによってコード化されていない非保守的なアミノ酸の限られた数、および非天然アミノ酸は、アミノ酸残基と置換されてもよい。「非天然アミノ酸」はタンパク質合成後に修飾されている、および/または標準アミノ酸の化学構造と異なる化学構造をそれらの側鎖に有している。非天然アミノ酸は化学的に合成することが可能であり、好ましくは市販されており、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3−および4−メチルプロリン、および3,3−ジメチルプロリンを包含する。
【0056】
あるいは、アミノ酸変化は、ポリペプチドの物理化学的特長を変えるというような性質のものである。例えば、アミノ酸変化はポリペプチドの熱的安定性を向上させ、基質特異性を変化させ、pHを最適に変えることができる。
【0057】
元になるポリペプチド中の必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発(alanine-scanning mutagenesis)(カニングハム(Cunningham)およびウエルズ(Wells)、1989、サイエンス(Science)244:1081〜1085)などの当該技術分野において既知の手順によって同定することが可能である。後者の技術においては、一つのアラニン突然変異が分子のあらゆる残基で導入され、その結果得られた突然変異した分子の生物活性(即ち、リパーゼ活性)を試験して分子の活性に不可欠なアミノ酸残基を同定する。ヒルトン(Hilton)ら、1996、J.バイオロジカル・ケミカル(J. Biol. Chem.)271:4699〜4708もまた参照のこと。酵素またはその他の生物相互作用の活性部位は、推定接触部位のアミノ酸の突然変異と併せて、核磁気共鳴、結晶学、電子線回折、または光親和性標識などの技術によって決定されるように、構造の物理分析によっても決定することが可能である。例えば、デボス(de Vos)ら、1992、サイエンス(Science)255:306〜312;スミス(Smith)ら、1992、J.バイオロジカル・ケミカル(J. Biol. Chem.)224:899〜904;ウロダバー(Wlodaver)ら、1992、FEBS Lett.309:59〜64を参照のこと。本発明によるポリペプチドに関連するポリペプチドとの同一性の分析から、必須アミノ酸の同一性を推論することもまた可能である。
【0058】
一つまたは複数のアミノ酸の置換は、突然変異生成、組み換え、および/またはシャッフリングなどの既知の方法に続いて、関連するスクリーニング方法、例えば、レイダッハ(Reidhaar)−オルソン(Olson)およびザウエル(Sauer)、1988、サイエンス(Science)241:53〜57;ボウイ(Bowie)およびザウエル(Sauer)、1989、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci.)米国86:2152〜2156;国際公開特許WO95/17413;または国際公開特許WO95/22625を用いて行なうおよび試験することが可能である。用いることのできるその他の方法には、エラープローンPCR(error-prone PCR)、ファージ提示法(例えば、ロウマン(Lowman)ら、1991、バイオケム(Biochem)30:10832〜10837;米国特許第5,223,409号;国際公開特許WO92/06204)、および領域ダイレクト突然変異生成(ダービーシャー(Derbyshire)ら、1986、遺伝子(Gene)46:145;ネル(Ner)ら、1988、DNA7:127)が挙げられる。
【0059】
突然変異生成/シャッフリングの方法を、ハイスループット、自動化スクリーニング方法と組み合わせて、宿主細胞によって発現される、クローン、突然変異したポリペプチドの活性を検出することもできる。活性ポリペプチドをコード化する活性突然変異したDNA分子を宿主細胞から回収して当該技術分野で標準の方法を用いて迅速にシーケンスすることが可能である。これらの方法により、対象ポリペプチド中の個々のアミノ酸残基の重要性を迅速に決定することが可能となり、未知構造のポリペプチドに適用することが可能である。
【0060】
一態様において、配列番号2のアミノ酸1〜291の、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入の総数は、10、好ましくは9、より好ましくは8、より好ましくは7、より好ましくは最大でも6、より好ましくは最大でも5、より好ましくは4、さらにより好ましくは3、最も好ましくは2、さらに最も好ましくは1である。
【0061】
領域および置換の同定
以下の領域I〜領域IVで言及される位置は、配列番号2のアミノ酸残基の位置である。異なるリパーゼ中の対応する(または相同の)位置を見い出すために、「相同性とアラインメント」に記載の手順を用いる。
【0062】
領域Iの置換
領域Iは、N末端残基EIを囲むアミノ酸残基から成る。この領域では、親リパーゼをより陽性のアミノ酸と置換するのが好ましい。以下の位置に対応するアミノ酸残基は、領域I:1〜11および223〜239に含まれている。以下の位置は特に対象となる:1、2、4、8、11、223、227、229、231、233、234および236。特に、以下の置換が同定された:X1N/*、X4V、X227G、X231RおよびX233R。
【0063】
好ましい実施形態では、本リパーゼは配列番号2と、少なくとも80%、例えば、85%または90%、例えば、少なくとも95%または96%または97%または98%または99%同一である。最も好ましい実施形態において、親リパーゼは配列番号2と同一である。
【0064】
領域IIの置換
領域IIは、アシル鎖の片側およびアルコール部位の片側の基質と接触しているアミノ酸残基から成る。この領域において、親リパーゼのアミノ酸を、より陽性のアミノ酸または疎水性の少ないアミノ酸と置換することが好ましい。以下の位置に対応するアミノ酸残基は、領域II:202〜211および249〜269に含まれている。以下の位置は特に対象となる:202、210、211、253、254、255、256、259。特に、以下の置換が同定された:X202G、X210K/W/A、X255Y/V/A、X256K/RおよびX259G/M/Q/V。
【0065】
好ましい実施形態では、本リパーゼは配列番号2と、少なくとも80%、例えば、85%または90%、例えば、少なくとも95%または96%または97%または98%または99%同一である。最も好ましい実施形態において、親リパーゼは配列番号2と同一である。
【0066】
領域IIIの置換
領域IIIは、柔軟な構造を形成し、したがって基質が活性部位に入り込むことを可能とするアミノ酸残基から成る。この領域において、親リパーゼのアミノ酸を、より陽性のアミノ酸または疎水性の少ないアミノ酸と置換することが好ましい。以下の位置に対応するアミノ酸残基は、領域III:80〜102に含まれている。以下の位置は特に対象となる:83、86、87、90、91、95、96、99。特に、以下の置換が同定された:X83T、X86VおよびX90A/R。
【0067】
好ましい実施形態では、本リパーゼは、配列番号2と、少なくとも80%、例えば、85%または90%、例えば、少なくとも95%または96%または97%または98%または99%同一である。最も好ましい実施形態において、親リパーゼは配列番号2と同一である。
【0068】
領域IVの置換
領域IVは、静電的に表面に結合するアミノ酸残基から成る。この領域において、親リパーゼのアミノ酸を、より陽性のアミノ酸と置換することが好ましい。以下の位置に対応するアミノ酸残基は、領域IV:27および54〜62に含まれている。以下の位置は特に対象となる:27、56、57、58、60。特に、以下の置換が同定された:X27R、X58N/AG/T/PおよびX60V/S/G/N/R/K/A/L。
【0069】
好ましい実施形態では、本リパーゼは、配列番号2と、少なくとも80%、例えば、85%または90%、例えば、少なくとも95%または96%または97%または98%または99%同一である。最も好ましい実施形態において、親リパーゼは配列番号2と同一である。
【0070】
その他の位置のアミノ酸
親リパーゼは、任意でその他のアミノ酸の置換、特に、10未満または5未満のかかる置換を含む。親リパーゼの次の位置の1以上に対応する置換が例として挙げられる:24、37、38、46、74、81、83、115、127、131、137、143、147、150、199、200、203、206、211、263、264、265、267および269。特定の実施形態では、次の位置に対応する少なくとも1つの置換が存在する:81、143、147、150および249。好ましい実施形態において、少なくとも1つの置換が、X81Q/E、X143S/C/N/D/A、X147M/Y、X150G/KおよびX249R/I/Lから成る群から選択される。
【0071】
変異型は規定された領域I〜IVの外側に置換を含んでもよく、領域I〜IVの外側の置換の数は、好ましくは6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、または2個未満、例えば、5個、4個、3個、2個、または1個であってもよい。或いは、変異型は規定された領域I〜IVの外側に置換を1つも含まない。
【0072】
さらに、置換は、例えば、当該技術分野において既知の原理にしたがって、例えば、国際公開特許WO92/05249、WO94/25577、WO95/22615、WO97/04079およびWO97/07202に記載されている置換が行われてもよい。
【0073】
親リパーゼ変異型
一態様において、前記親と比べたとき、前記変異型は全部で少なくとも3つの置換を含んでおり、前記置換は次の置換の群の1つ以上から選択される:
a)領域Iの、少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個の置換、
b)領域IIの、少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個の置換、
c)領域IIIの、少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個の置換、
d)および/または領域IVの、少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個の置換。
【0074】
変異型は、変異型の親と比べ、次の表1に記載された置換に対応する置換を含んでもよい。
【表1】

【0075】
さらに特定の実施形態において、親リパーゼは配列番号2と同一であり、したがって表1の変異型は
【表2】

【0076】
さらに、置換は、例えば、当該技術分野において既知の原理にしたがって、例えば、国際公開特許WO92/05249、国際公開特許WO94/25577、国際公開特許WO95/22615、国際公開特許WO97/04079および国際公開特許WO97/07202に記載されている置換が行われてもよい。
【0077】
相同性とアラインメント
本発明の目的のため、相同性を当該技術分野において既知のコンピュータ・プログラム、例えば、GCGプログラム・パッケージ(ウイスコンシン・パッケージ(Wisconsin Package)のプログラムマニュアル、バージョン8、1994年8月、ジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)(ウイスコンシン州マジソン(575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711))のギャップ(GAP)によって好適に測定することが可能であり(ニードルマンS.B.(Needleman, S. B.)とバンシュC.D.(Wunsch, C. D.)(1970)の分子生物学の機関紙(Journal of Molecular Biology)48、443〜45)、ポリペプチド配列の比較のためにギャップを次の設定で使用する:ギャップ挿入ペナルティー(GAP creation penalty)3.0およびギャップ伸長ペナルティー(GAP extension penalty)0.1。
【0078】
本発明では、アブシディア・レフレクサ(Absidia reflexa)、アブシディア・コリンベフェラ(Absidia corymbefera)、リズムコル・ミエヘイ(Rhizmucor miehei)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・トゥービゲンシス(Aspergillus tubigensis)、フザリウム・オキスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzea)、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicilium camembertii)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、サーモマイセス・ラノギノサス(Thermomyces lanoginosus)(異名:フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginose))、およびランデリナ・ペニサポラ(Landerina penisapora)のリパーゼ配列の対応する(相同の)位置が、図1に示されるアラインメントによって規定されている。
【0079】
上記アラインメントに示されていないリパーゼ配列中の相同の位置を見い出すために、対象の配列を図1に示される配列とアラインする。GAPプログラムで見い出された最も相同の配列へのギャップアラインメントを使用して、新しい配列を、図1の現在の配列にアラインした。ギャップは、GCGプログラム・パッケージ(ウイスコンシン・パッケージ(Wisconsin Package)のプログラムマニュアル、バージョン8、1994年8月、ジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)(ウイスコンシン州マジソン(575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711))で提供される(ニードルマンS.B.(Needleman, S. B.)とバンシュC.D.(Wunsch, C. D.)(1970)の分子生物学の機関紙(Journal of Molecular Biology)48、443〜45)。ポリペプチド配列の比較のためにギャップを次の設定で使用する:ギャップ挿入ペナルティー(GAP creation penalty)3.0およびギャップ伸長ペナルティー(GAP extension penalty)0.1。
【0080】
親リパーゼは、サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ(配列番号2)と、少なくとも50%の相同性を有し、特に少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、95%超過または98%超過の相同性を有する。特定の実施形態において、親リパーゼはサーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ(配列番号2)と同一である。
【0081】
−損益
臭気のリスクの低下と比較したときのパフォーマンスを説明するベネフィットリスク係数は次のように定義される:BR=RP平均/R。本明細書に記載のリパーゼ変異型のBRは、1超過、1.1超過、さらには1超過〜約1000であってもよい。
【0082】
−平均相対的パフォーマンス
平均相対的パフォーマンス(RP平均)を計算する手順は、本明細書の実施例5に示されている。本明細書に記載のリパーゼ変異型は、少なくとも0.8、少なくとも1.1、少なくとも1.5、またはさらには少なくとも2〜約1000の(RP平均)を有し得る。
【0083】
−相対LU/A280
相対LU/A280は、本明細書の実施例4に示されるLU/A280分析により決定される。本明細書に記載のリパーゼ変異型は、1.00未満、0.9未満、0.8未満、またはさらに1.00未満〜約0.1のLU/A280を有してもよい。
【0084】
リパーゼ活性を有するポリペプチドの供給源
本発明のポリペプチドはあらゆる属の微生物から得ることが可能である。本発明の目的のため、本明細書で所与の供給源と関連して使用されるとき、用語「〜から得る」は、ヌクレオチド配列によってコード化されたポリペプチドが、供給源によって、または供給源のヌクレオチド配列が挿入された株によって作られることを意味する。好ましい態様において、所与の供給源から得るポリペプチドは細胞外に分泌される。
【0085】
本発明のポリペプチドは細菌性ポリペプチドであってもよい。例えば、当該ポリペプチドはバチルスポリペプチドのような細菌性ポリペプチド、例えば、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)、またはバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)ポリペプチド;或いは、ストレプトマイセスポリペプチド(Streptomyces polypeptide)、例えば、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)またはストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)ポリペプチド;或いはグラム陰性細菌性ポリペプチド、例えば、大腸菌(E. coli)またはシュードモナスSP(Pseudomonas sp)であってもよい。
【0086】
本発明のポリペプチドはまた、菌性ポリペプチドであってもよく、より好ましくは、酵母ポリペプチド(例えば、カンジダ(Candida)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、ピチア(Pichia)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、またはヤロウィア(Yarrowia)属ポリペプチド);またはより好ましくは繊維状菌性ポリペプチド(例えば、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、アオレオバシジウム(Aureobasidium)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、フィロバシジウム(Filobasidium)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコラ(Humicola)属、マグナポルテ(Magnaporthe)属、ケカビ(Mucor属、ミセリオフトーラ(Myceliophthora)属、ネオカリマスチクス(Neocallimastix)属、ノイロスポラ(Neurospora)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ピロマイセス(Piromyces)属、シゾフィラム(Schizophyllum)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、サーモアスカス(Thermoascus)属、チエラビア(Thielavia)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、またはトリコデルマ(Trichoderma)属のポリペプチド)である。
【0087】
好適な態様において、ポリペプチドは、リパーゼ活性を有する、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クリヴェリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、またはサッカロマイセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)のポリペプチドである。
【0088】
別の好適な態様において、ポリペプチドは、アスペルギルス・アクレアータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nige)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・タービジェンシス(Aspergillus turbigensis)、フザリウム・バクトリジオイデ(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レティキュラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・ザムブチヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・ザルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセキオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、サーモマイセス・ラノギノサス(Thermomyces lanoginosus)(異名:フミコラ・ラヌギノーゼ(Humicola lanuginose))、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・パルロゼラム(Penicillium purpurogenum)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)のポリペプチドである。
【0089】
別の好適な態様において、ポリペプチドはサーモマイセスポリペプチドである。
【0090】
より好ましい態様において、ポリペプチドはサーモマイセスポリペプチド、例えば、本出願に記載のような突然変異を有する配列番号2のポリペプチドである。
【0091】
上述の種に関して、本発明は、完全と不完全の状態の両方、およびそれによって知られている種の名称に関係なく、その他の分類上の同等物、例えば、アナモルフを包含することは理解されよう。当業者であれば対応する同等物の同一性を容易に認識するであろう。
【0092】
これらの種の株は、多くの菌株保存機関、例えば、米国微生物系統保存機関(American Type Culture Collection:ATCC)、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH:DSMZ)、オランダの微生物保存機関(Centraalbureau Voor Schimmelcultures:CBS)および、農業研究局特許培養物コレクション、北方リサーチセンター(Agricultural Research Service Patent Culture Collection, Northern Regional Research Center:NRRL)容易に一般に入手可能とされている。
【0093】
さらに、かかるポリペプチドは、先に述べたプローブを使用して、天然(例えば、土、たい肥、水等)から単離した微生物を含むその他の供給源から同定しかつ得ることができる。自然の生息地から微生物を単離する技術は当該技術分野において周知である。続いて、別の微生物のゲノムまたはcDNAライブラリを同様にスクリーニングしてポリヌクレオチドを得てもよい。ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列をプローブを用いて検出すれば、当業者に周知の技術(例えば、サンブロック(Sambrook)ら、1989、上掲)を使用してポリヌクレオチドを単離またはクローンすることが可能である。
【0094】
本発明のポリペプチドはまた、別のポリペプチドがポリペプチドまたはその断片のN末端またはC末端に融合している融合ポリペプチドまたは開裂融合ポリペプチドも包含する。融合ペプチドは、別のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列(またはその部分)を、本発明のヌクレオチド配列(またはその部分)に融合することにより産生する。融合ポリペプチドの生産技術は当該技術分野において既知であり、融合ポリペプチドがフレームに入り、融合ポリペプチドの発現が同一のプロモーター(単数または複数種類)およびターミネーターの制御下にあるように、ポリペプチドをコード化するコード配列をライゲートすることを包含する。
【0095】
ポリヌクレオチド
本発明のリパーゼは、好ましくは本発明のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチド由来であるのが好ましい。さらには、遺伝子コード化の縮重と言う理由でポリヌクレオチドをコード化するのとは異なる、配列番号2のアミノ酸配列の変異型またはその成熟したポリペプチドであるポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列から単離するのがより好ましい。ポリペプチドはまた、リパーゼ活性を有する配列番号2の断片をコード化する、配列番号1のサブシーケンス由来であることも可能であり、当該断片のBRは少なくとも1.1およびRPは少なくとも0.8である。
【0096】
ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離またはクローンするのに用いられる技術は、当該技術分野において既知であり、ゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、またはそれらの組み合わせを包含する。かかるゲノムDNAから本発明のポリヌクレオチドをクローニングすることは、例えば、周知のポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)によりまたは共有の構造的特徴を有するクローン化したDNAを検出するために発現ライブラリを抗体スクリーニングすること、により達成することが可能である。例えば、イニス(Innis)ら、1990、PCR:方法と適用のガイド(A Guide to Methods and Application)、アカデミック・プレス社、ニューヨークを参照のこと。リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction:LCR)のようなその他の核酸増幅方法、連結活性化転写(ligated activated transcription:LAT)および核酸配列に基礎をおいた増幅法(nucleotide sequence-based amplification:NASBA)を用いることも可能である。ポリヌクレオチドは、サーモマイセス(Thermomyces)の株、或いは別のまたは関連した生物からクローン化してもよく、したがって、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列のポリペプチドコード化領域の対立遺伝子または種変種であり得る。
【0097】
ポリペプチドは、配列番号1の成熟したポリペプチドコード配列との同一性の程度が、少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも97%の同一性であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドに由来してもよい。
【0098】
本発明のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の修飾は、当該ポリペプチドと実質的に同様のポリペプチドの合成には必須であり得る。ポリペプチドに「実質的に同様」と言う用語は、ポリペプチドの非自然発生型を言う。これらポリペプチドは、その自然発生源から単離されたポリペプチドとはいくつかの遺伝子工学的状態、例えば、特定の活性、熱的安定性、至適pH等、において異なる場合がある。変異型配列は、配列番号1のポリペプチドコード領域、例えば、そのサブシーケンスとして存在するヌクレオチド配列に基づき、および/またはヌクレオチド置換の導入によって構築することができる。当該ヌクレオチド置換は、ヌクレオチド配列によってコード化されたポリペプチドのその他のアミノ酸配列をを生じさせないが、酵素の生成を意図した宿主生物のコドン使用頻度に対応する。変異型配列はまた、異なるアミノ酸配列を生じ得るヌクレオチド置換の導入によって構築することができる。ヌクレオチド置換の一般的な説明に関しては、例えば、フォード(Ford)ら、タンパク質の発現および精製(Protein Expression and Purification)2、2:95〜107を参照のこと。
【0099】
かかる置換が、分子の機能に不可欠な領域の外側でなされ得ることおよびそれでも活性ポリペプチドを生じえることは、当業者には明白であろう。本発明の単離されたポリヌクレオチドによってコード化されるポリペプチドの活性に重要なアミノ酸残基、したがって、好ましくは置換されていないアミノ酸残基は、当該技術分野において既知の方法、例えば、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発により同定することができる(カンニングハム(Cunningham)およびウエルズ(Wells)、1989、サイエンス(Science)244:1081〜1085を参照のこと)。後者の技術では、突然変異は分子中の正に荷電された残基全てに導入され、得られた変異分子は、分子の活性に不可欠なアミノ酸残基を同定するためにリパーゼ活性の試験を受ける。基質−酵素相互作用部位は、核磁気共鳴分析、結晶学または光親和性標識などの技術によって測定された三次元構造体の分析によって決定することも可能である(例えば、デボス(de Vos)ら、1992、サイエンス(Science)255:306〜312;スミス(Smith)ら、1992、分子生物学機関紙(Journal of Molecular Biology)224:899〜904;ウロダバー(Wlodaver)ら、1992、FEBS Lett.309:59〜64を参照のこと)。
【0100】
ポリペプチドは本発明のポリペプチドをコード化する単離されたポリヌクレオチド由来であってもよく、当該ポリペプチドは、非常に低ストリンジェンシー条件下で、好ましくは低ストリンジェンシー条件下で、より好ましくは中間ストリンジェンシー条件下で、より好ましくは中の上のストリンジェンシー条件下で、さらにより好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、および最も好ましくは非常に高ストリンジェンシー条件下で、(i)配列番号1のヌクレオチドと、(ii)配列番号1に含まれるcDNA配列と、(iii)(i)または(ii)の相補鎖と;或いは対立遺伝子多型およびそのサブシーケンスと(サンブロック(Sambrook)ら、1989、上掲)、本明細書で規定されたようにハイブリダイズする。
【0101】
ポリペプチドは次によって得た単離されたポリヌクレオチド由来であってもよい:(a)DNA個体群を、非常に低い、低い、中間の、中の上の、高い、または非常に高ストリンジェンシー条件下で、(i)配列番号1のヌクレオチド、(ii)配列番号1のヌクレオチドに含まれるcDNA配列、または(iii)(i)または(ii)の相補鎖、とハイブリダイズする;(b)ハイブリダイズする、リパーゼ活性を有するポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する。
【0102】
核酸作成物
本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む核酸作成物は、制御配列と適合性のある条件下で、好適な宿主細胞でコード配列を発現を指示する1種類以上の制御配列に作動可能に連結されることが可能である。
【0103】
本発明のポリペプチドをコード化する単離されたポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現させるために様々な方法で操作されてもよい。ベクターに挿入される前にポリヌクレオチドの配列を操作することが、発現ベクターによっては望ましいまたは必要である場合がある。組換えDNA方法を使用してポリヌクレオチド配列を修飾する技術は、当該技術分野において周知である。
【0104】
制御配列は、適切なプロモーター配列、本発明のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞に認識されるヌクレオチド配列であってもよい。プロモーター配列は、ポリペプチドの発現を仲介する転写制御配列を包含する。プロモーターは、突然変異体、欠損した、およびハイブリッドプロモーターを含む最適な宿主細胞内で転写活性を示す任意のヌクレオチド配列であってもよく、宿主細胞と相同のまたは非相同の細胞外または細胞内ポリペプチドをコード化する遺伝子から得てもよい。
【0105】
本発明の核酸構造の転写生物を検出する、特に細菌宿主細胞中の、好適なプロモーターの例は、大腸菌オペロン、ストレプトマイセスアガラーゼ(Streptomyces coelicolor agarase gene)遺伝子(dagA)、バシラス・サチリスレバンスクラーゼ(Bacillus subtilis levansucrase)遺伝子(sacB)、バシラス・リケニフォルミスα−アミラーゼ(Bacillus licheniformis alpha-amylase)遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロサーモフィルス麦芽アミラーゼ(Bacillus stearothermophilus maltogenic amylase)遺伝子(amyM)、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ(Bacillus amyloliquefaciens alpha-amylase)遺伝子(amyQ)、バシラス・リケニフォルミスペニシリナーゼ(Bacillus licheniformis penicillinase)遺伝子(penP)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)xylAおよびxylB遺伝子、および原核生物β−ラクタマーゼ(prokaryotic beta-lactamase)遺伝子から得るプロモーター(ヴィラーカマロフ(Villa-Kamaroff)ら、1978、米国科学アカデミー紀要(National Academy of Sciences USA)、75:3727〜3731)並びにtacプロモーター(tac promoter)(デブール((DeBoer)ら、1983、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences USA)、80:21〜25)である。さらなるプロモーターが、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)の「組み換え細菌由来の有用なタンパク質(Useful proteins from recombinant bacteria)」(74〜94;およびサンブロック(Sambrook)ら、1989、上掲)に記載されている。
【0106】
糸状真菌宿主細胞中の、本発明の核酸構造の転写生物を検出する好適なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリザエ・TAKAアミラーゼ(Aspergillus oryzae TAKA amylase)、リゾムコール・ミーヘイアスパラギン酸プロテアーゼ(Rhizomucor miehei aspartic proteinase)、アスペルギルス・ニガー・ニュートラルα−アミラーゼ(Aspergillus niger neutral alpha-amylase)、アスペルギルス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガーまたはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミーヘイリパーゼ、アスペルギルス・オリザエ・アルカリ・プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ・トリオースリン酸イソメラーゼ(Aspergillus oryzae triose phosphate isomerase)、アスペルギルス・ニダランス・アセトアミダーゼ(Aspergillus nidulans acetamidase)、フザリウム・ベネナツム・アミログルコシダーゼ(Fusarium venenatum amyloglucosidase)(国際公開特許WO00/56900)、フザリウム・ベネナツム・ダリア(Fusarium venenatum Daria)(国際公開特許WO00/56900)、フザリウム・ベネナツム・クイン(Fusarium venenatum Quinn)(国際公開特許WO00/56900)、フザリウム・オキスポラム・トリプシン様プロテアーゼ(Fusarium oxysporum trypsin-like protease)(国際公開特許WO96/00787)、トリコデルマ・リーセイ・β−グルコシダーゼ(Trichoderma reesei beta-glucosidase)、トリコデルマ・リーセイ・セロビオヒドラーゼI(Trichoderma reesei cellobiohydrolase I)、トリコデルマ・リーセイ・セロビオヒドラーゼII、トリコデルマ・リーセイ・セロビオヒドラーゼIII、トリコデルマ・リーセイ・セロビオヒドラーゼIV、トリコデルマ・リーセイ・セロビオヒドラーゼV、トリコデルマ・リーセ
イ・キシラナーゼI(Trichoderma reesei xylanase I)、トリコデルマ・リーセイ・キシラナーゼII、トリコデルマ・リーセイ・β−キシロシダーゼ(Trichoderma reesei beta-xylosidase)、並びにNA2−tpiプロモーター(アスペルギルス・ニガー・ニュートラルα−アミラーゼおよびアスペルギルス・オリザエ・トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)の遺伝子から得るプロモーター;およびこれらの変異体、欠損型、およびハイブリッドのプロモーターである。
【0107】
酵母宿主において、有用ようなプロモーターは、サッカロマイセス・セレヴィシエ・エノラーゼ(Saccharomyces cerevisiae enolase)(ENO−1)、サッカロマイセス・ガラクトキナーゼ(GAL1)サッカロマイセス・アルコール・デヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロマイセス・セレヴィシエ・トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロマイセス・セレヴィシエ・メタロチオネイン(metallothionine)(CUP1)、およびサッカロマイセス・セレヴィシエ・ホスホグリセリン酸キナーゼ(Saccharomyces cerevisiae 3-phosphoglycerate kinase)の遺伝子から得る。酵母宿主のその他の有用なプロモーターが、ロマノス(Romanos)ら、1992、酵母(Yeast)8:423〜488に記載されている。
【0108】
制御配列はまた、転写を終了するために宿主細胞に認識される、好適な転写終結配列であってもよい。終結配列は、ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の3’末端に作動可能に連結される。最適な宿主細胞の中で有効な任意のターミネーターを本発明で使用することができる。
【0109】
糸状真菌宿主細胞の好ましいターミネーターは、アスペルギルス・オリザエ・TAKAアミラーゼ(Aspergillus oryzae TAKA amylase)、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニドランス・アントラニレートシンターゼ(Aspergillus nidulans anthranilate synthase)、アスペルギルス・ニガー・α−グルコシダーゼ((Aspergillus niger alpha-glucosidase)、およびフザリウム・オキスポラム・トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得る。
【0110】
酵母宿主の好適なターミネーターは、サッカロマイセス・セレヴィシエ・エノラーゼ(Saccharomyces cerevisiae enolase)、サッカロマイセス・セレヴィシエ・シトクロムC(CYC1)およびサッカロマイセス・セレヴィシエ・グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得る。酵母宿主のその他の有用なターミネーターがロマノス(Romanos)ら(1992、上掲)によって記載されている。
【0111】
制御配列はまた、好適なリーダー配列、宿主細胞による翻訳に重要なmRNAの非翻訳領域である。リーダー配列は、ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の5’端末に作動可能に結合される。最適な宿主細胞の中で有効な任意のリーダー配列を本発明で使用することができる。
【0112】
糸状真菌宿主細胞の好ましいリーダーは、アスペルギルス・オリザエ・TAKAアミラーゼ(Aspergillus oryzae TAKA amylase)およびアスペルギルス・ニダランス・トリオースリン酸イソメラーゼ(Aspergillus nidulans triose phosphate isomerase)の遺伝子から得る。
【0113】
酵母宿主細胞の好適なリーダーは、サッカロマイセス・セレヴィシエ・エノラーゼ(Saccharomyces cerevisiae enolase)(ENO−1)、サッカロマイセス・セレヴィシエ・ホスホグリセリン酸キナーゼ(Saccharomyces cerevisiae 3-phosphoglycerate kinase)、サッカロマイセス・セレヴィシエ・α−要因、およびサッカロマイセス・アルコール・デヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)から得る。
【0114】
制御配列はポリアデニル化配列であって、ヌクレオチド配列の3’末端に作動可能に結合し、転写されるとき、ポリアデノシン(polyadenosine)残基を転写されたmRNAに加えるための信号として宿主細胞に認識される配列である。最適な宿主細胞の中で有効な任意のポリアデニル化配列を本発明で使用することができる。
【0115】
糸状真菌宿主細胞の好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス・オリザエ・TAKAアミラーゼ(Aspergillus oryzae TAKA amylase)、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニドランス・アントラニレートシンターゼ(Aspergillus nidulans anthranilate synthase)、フザリウム・オキスポラム・リプシン様プロテアーゼ、およびアスペルギルス・ニガー・α−グルコシダーゼ(Aspergillus niger alpha-glucosidase)の遺伝子から得る。
【0116】
酵母宿主細胞に有用なポリアデニル化配列が、グオ(Guo)およびシャーマン(Sherman)、1995、分子細胞生物学(Molecular Cellular Biology)15:5983〜5990に記載されている。
【0117】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に結合したアミノ酸配列をコード化し、コード化されたポリペプチドを細胞の分泌経路に向かわせる、シグナルペプチドコード領域であってもよい。ヌクレオチド配列のコード配列の5’末端部は、分泌されたポリペプチドをコード化するコード領域の断片を有する翻訳リーディングフレームに自然に結合される、シグナルペプチドコード領域を本質的に含んでいてもよい。あるいは、コーディング領域の5’末端は、コード配列に異質なシグナルペプチドコード領域を含んでいてもよい。コード配列がシグナルペプチドコード領域を自然に含んでいない場合には、異質なシグナルペプチドコード領域が必要となる場合がある。或いは、異質なシグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの分泌を増強するために自然のシグナルペプチドコード領域を単に置換してもよい。しかしながら、発現されたポリペプチドを最適な宿主細胞の分泌経路に向かわせる任意のシグナルペプチドコード領域を、本発明において使用してもよい。
【0118】
細菌性宿主細胞の有効なシグナルペプチドコード領域は、バチルス・NCIB11837マルトジェニック・アミラーゼ(Bacillus NCIB 11837 maltogenic amylas)、バチルス・ステアロサーモフィラスα−アミラーゼ、(Bacillus stearothermophilus alpha-amylase)、バチルス・リケニフォルミス・サブチリシン(Bacillus licheniformis subtilisin)、バチルス・リケニフォルミス・β−ラクタマーゼ(Bacillus licheniformis beta-lactamase)、バチルス・ステアロテルモフィルス・中性プロテアーゼ(Bacillus stearothermophilus neutral proteases)(nprT、nprS、nprM)、およびバチルス・ズブチルスprsAの遺伝子から得る。さらなるシグナルペプチドが、サイモン(Simonen)およびパルバ(Palva)、1993、マイクロバイオロジカル・レビューズ(Microbiological Reviews)57:109〜137に記載されている。
【0119】
糸状真菌宿主細胞の有効なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギルス・オリザエ・TAKAアミラーゼ(Aspergillus oryzae TAKA amylase)、アスペルギルス・ニガー・ニュートラル・アミラーゼ(Aspergillus niger neutral amylase)、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ(Aspergillus niger glucoamylase)、リゾムコール・ミーヘイアスパラギン酸プロテアーゼ(Rhizomucor miehei aspartic proteinase)、フミコラ・インソレンス・セルラーゼ(Humicola insolens cellulase)、およびフミコラ・ラヌギノーサ・リパーゼ(Humicola lanuginosa lipas)の遺伝子から得るシグナルペプチドコード領域である。
【0120】
酵母宿主細胞に有用なシグナルペプチドは、サッカロマイセス・セレヴィシエ・α−要因(Saccharomyces cerevisiae alpha-factor)およびサッカロマイセス・セレヴィシエ・インベルターゼ(Saccharomyces cerevisiae invertase)の遺伝子から得る。その他の有用なシグナルペプチドコード領域が、ロマノス(Romanos)ら(1992、上掲)によって説明されている。
【0121】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸配列をコード化するプロペプチド(propeptid)コード領域であってもよい。結果として得られたポリペプチドは、酵素前駆体プロペプチドまたは(或いは、いくつかのケースではチモーゲ)として知られる。プロポリペプチドは一般に不活性であり、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒作用または自己触媒開裂によって成熟した活性ポリペプチドに転換される。プロペプチドコード領域は、バチルス・ズブチルス・アルカリ・プロテアーゼ(Bacillus subtilis alkaline protease)(aprE)、バチルス・ズブチルス・中性プロテアーゼ(nprT)、サッカロマイセス・セレヴィシエ・α−要因(Saccharomyces cerevisiae alpha-factor)、リゾムコール・ミーヘイアスパラギン酸プロテアーゼ(Rhizomucor miehei aspartic proteinase)、およびミセリオフトーラ・サーモフィラ・ラッカーゼ(Myceliophthora thermophila laccase)(国際公開特許95/33836)の遺伝子から得ることができる。
【0122】
シグナルペプチドとプロペプチド領域の両方がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合には、プロペプチド領域はポリペプチドのアミノ末端の次に配置し、シグナルペプチド領域はプロペプチド領域のアミノ末端の次に配置する。
【0123】
宿主細胞の成長に関連してポリペプチドの発現を制御することを可能とする、制御配列を加えることも望ましい場合がある。制御システムの例は、制御化合物の存在を含む化学的または物理的刺激に反応して、遺伝子の発現をオンにするまたはオフにするシステムである。原核細胞系の制御システムには、lac、tac、およびtrpオペレータシステムが挙げられる。酵母では、ADH2システムまたはGAL1システムが使用可能である。糸状真菌では、TAKA・α−アミラーゼプロモーター、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ(Aspergillus niger glucoamylase promoter)プロモーター、およびアスペルギルス・オリザエ・グルコアミラーゼ(Aspergillus oryzae glucoamylase)プロモーターが使用可能である。制御配列のその他の例は、遺伝子増幅を可能とする配列である。真核細胞系では、メトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸還元酵素、および重金属で増幅されるメタロチオネイン遺伝子を含むこれらのケースにおいて、ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列は、制御配列と作動可能に結合する。
【0124】
発現ベクター
組み換え発現ベクターは、通常、本発明のポリヌクレオチド、プロモーター、転写および翻訳停止シグナルを含む。上述の様々な核酸および制御配列は、共に結合し、組み換え発現ベクターを産生する。組み替え発現ベクターは、1以上の便利な制限酵素認識部位を含んでもよく、かかる部位のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の挿入または置換を可能にする。あるいは、本発明のヌクレオチド配列は、配列を含むヌクレオチド配列または発現のために適切なベクターへの配列を含む核酸作成物の挿入によって発現されてもよい。発現ベクターの生成では、コード配列が発現のために適切な制御配列と作動可能に結合するように、コード配列をベクター内に配置する。
【0125】
組み換え発現ベクターは、組み換えDNA製法を好都合に供することができ、ヌクレオチド配列の発現をもたらし得る任意のベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)であってよい。ベクターの選択は、典型的には、ベクターの、ベクターが導入される宿主細胞との適合性に依存する。ベクターは、線状または閉じたプラスミドであってもよい。
【0126】
ベクターは自己複製ベクター、即ち、染色体外エンティティとして存在し、その複製は染色体複製、例えば、プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、または人工染色体であるベクターであり得る。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を包含していてもよい。或いは、ベクターは、宿主細胞に導入されるときにゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるベクターであり得る。さらに、宿主細胞のゲノムに組み込まれる全てのDNAを共に含む1つのベクターまたはプラスミド、或いは2つ以上のベクターまたはプラスミド、或いはトランスポゾンを用いることが可能である。
【0127】
好ましくは、ベクターは、形質転換細胞の選択を容易にする、1つ以上の選択マーカーを包含する。選択マーカーは遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤またはウイルス抵抗性、重金属への耐性、栄養要求体への原栄養性等を提供する。
【0128】
条件つき必須遺伝子は、非抗生物質選択マーカーとして機能し得る。細菌性条件つき必須非抗生物質選択マーカーの非限定的な実施例は、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、またはその他のバチルスのdal遺伝子であり、細菌がD−アラニンなしに培養された場合にのみ必須である。UDP−ガラクトースのターンオーバーに関与する酵素タンパク質をコード化する遺伝子は、細胞がガラクトースの存在下で増殖する、またはガラクトースの存在を生じさせる培地で増殖するときに、細胞内の条件つき必須非マーカーとして機能する。かかる遺伝子の非限定的な実施例は、UTP−依存性ホスホリラーゼ(UTP-dependent phosphorylase)(EC2.7.7.10)、UDP−グルコース依存性ウリジリルトランスフェラーゼ(UDP-glucose-dependent uridylyltransferase)(EC2.7.7.12)、またはUDP−グルコースエピメラーゼ(UDP-galactose epimerase)(EC5.1.3.2)をコード化する、枯草菌またはB.リケニフォルミスである。バチルスのキシロース異性化酵素遺伝子、例えば、xylA、をキシロースを唯一の炭素源とする最少培地で増殖する細胞における選択マーカーとして使用することが可能である。グルコネート、gntK、およびgntPの利用に不可欠な遺伝子は、キシロースを唯一の炭素源とする最少培地で増殖する細胞における選択マーカーとして使用することもまた可能である。条件つき必須遺伝子のその他の例は当該技術分野において既知である。抗生物質選択マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの抗生物質に、抗生物質に対する抵抗を与える。
【0129】
酵母宿主細胞の好適なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、およびURA3である。糸状真菌宿主細胞で使用するのに好適なマーカーには、amdS(アセトアミダーゼ(acetamidase))、argB(オルニチンカルボモイルトランスフェラーゼ(ornithine carbamoyltransferase))、bar(ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(phosphinothricin acetyltransferase))、hph(ハイグロマイシンホスフォトランスフェラーゼ(hygromycin phosphotransferase))、niaD(硝酸還元酵素)、pyrG(オロチジン−5’−ホスフェートデカルボキシラーゼ(orotidine-5’-phosphate decarboxylase))、sC(スルフェートアデニルトランスフェラーゼ(sulfate adenyltransferase))、およびtrpC(アントラニレートシンターゼ(anthranilate synthase))、並びにそれらの同等物が挙げられるが、これらに限定されない。アスペルギルス細胞での使用に好適なのは、アスペルギルス・ニドランスまたはアスペルギルス・オリザエのamdSおよびpyrG遺伝子、並びにストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子である。
【0130】
ベクターは、ベクターを宿主細胞のゲノムに組み込むことを可能にし、またはゲノムと無関係の細胞中のベクターの自立複製に組み込むことを可能とする。
【0131】
宿主細胞のゲノムへの組み込みでは、ベクターは、ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの配列、または相同のまたは非相同の組み換えによってゲノムに組み込まれるベクターの任意のその他の要素に依存してもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞のゲノムの、染色体の正確な場所へ、相同のまたは非相同の組み換えによって組み込まれるように指示するさらなるヌクレオチド配列を包含してもよい。正確な場所に組み込まれる可能性を増加させるため、組み込み要素が、相同組換えの可能性を高めるために対応する標的の配列と高い同一性を有する、100〜10,000塩基対、好ましくは400〜10,000塩基対、最も好ましくは800〜10,000塩基対など、十分な数の核酸を包含するのが好ましい。組み込み要素は、宿主細胞のゲノムの中の標的配列と相同である任意の配列であってもよい。さらに、組み込み要素は、非コード化またはコード化ヌクレオチド配列であってもよい。一方、ベクターは、非相同組み換えによって宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。
【0132】
自立複製のために、ベクターは、ベクターが当該宿主細胞中で自律的に複製することを可能にする複製開始点をさらに含んでもよい。複製開始点は、自律複製を仲介し、細胞中で機能する任意のプラスミド複製開始点であってもよい。本明細書中で、用語「複製開始点」または「プラスミド複製開始点」は、インビボでプラスミドまたはベクターが複製するのを可能にするヌクレオチド配列として定義される。
【0133】
細菌の複製開始点の例は、大腸菌内での複製を可能にするプラスミドpBR322、pUC19、pACYC177、およびpACYC184、およびバチルス内での複製を可能にするpUB110、pE194、pTA1060、およびpAMβ1の複製開始点である。
【0134】
酵母宿主細胞で使用される複製開始点の例は、2μ複製開始点ARS1、ARS4、ARS1とCEN3の混合、およびARS4とCEN6の混合である。
【0135】
繊維状心筋細胞で有用な複製開始点の例は、AMA1およびANS1である(ジェムズ(Gems)ら、1991、遺伝子98:61〜67;カレン(Cullen)ら、1987、核酸の研究(Nucleic Acids Research)15:9163〜9175;国際公開特許WO00/24883)。AMA1遺伝子の単離およびかかる遺伝子を含むプラスミドまたはベクターの構築は、国際公開特許WO00/24883に開示されている方法によって達成可能である。
【0136】
遺伝子産物の生産を増加させるために、本発明のポリヌクレオチドの1超過のコピーを宿主細胞に挿入する。少なくとも1個の配列の追加コピーを宿主細胞のゲノムに組み込むことにより、または細胞が選択マーカーの増幅されたコピーを包含する場合、増幅可能な選択マーカー遺伝子にポリヌクレオチドを含ませ、これにより適切に選択可能な薬剤の存在下で細胞を培養することによりポリヌクレオチドのさらなるコピーを選択することができ、ポリヌクレオチドのコピー数を増加させることができる。
【0137】
本発明の組み換え発現ベクターを構築するための上記の要素をライゲートするために用いられる方法は、当業者には周知である(例えば、例えば、サンブロック(Sambrook)ら、1989、上掲、を参照のこと)。
【0138】
宿主細胞
組み換え宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドを通常含み、ポリペプチドの組み換え生産に有利に使用される。先に記載のように、ベクターが染色体要素としてまたは自己複製する追加的染色体ベクターとして保持されるように、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞に導入する。用語「宿主細胞」は、複製の際に発生する突然変異により親細胞と同一でない、親細胞のあらゆる子孫を包含する。宿主細胞の選択は、ポリペプチドをコード化する遺伝子およびその供給源に依存して多岐にわたる。
【0139】
宿主細胞は、単細胞微生物、例えば、原核生物、または非単細胞微生物、例えば、真核生物であることができる。
【0140】
有用な単細胞の細胞は細菌細胞、例えば、グラム陽性細菌であり、これらは下記のものを包含するが、これらに限定されない:バシラス(Bacillus)細胞、例えば、バシラス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バシラス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ブレビス(Bacillus brebis)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バシラス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バシラス・ロータス(Bacillus lautus)、バシラス・レンツス(Bacillus lentus)、バシラス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、およびバシラス・スリンジエンシス(Bacillus thuringiensis);またはストレプトマイセス(Streptomyces)細胞、例えば、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)およびストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)、またはグラム陰性細菌、例えば、大腸菌(E. coli)およびシュードモナス(Pseudomonas)種。好ましい態様において、細菌宿主細胞は、バシラス・レンツス(Bacillus lentus)、バシラス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)または枯草菌(Bacillus subtilis)である。別の好適な態様において、バシラス細胞は好アルカリ性バシラス(alkalophilic Bacillus)である。
【0141】
細菌宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、プロトプラスト形質変換(例えば、チャン(Chang)およびコーヘン(Cohen)、1979、分子総合遺伝学(Molecular General Genetics)168:111〜115を参照のこと)により、コンピテント細胞(例えば、ヤング(Young)およびスピッチジン(Spizizin)、1961、細菌学学術誌(Journal of Bacteriology)81:823〜828、またはドウナウ(Dubnau)およびダビドフ・アベルソン(Davidoff-Abelson)、1971、分子生物学学術誌(Journal of Molecular Biology)56:209〜221を参照のこと)、電気穿孔法(例えば、シゲカワ(Shigekawa)およびダウアー(Dower)、1988、バイオテクニークス(Biotechniques)6:742〜751を参照のこと)、または接合(例えば、ケーラー(Koehler)およびソーン(Thorne)、1987、細菌学学術誌(Journal of Bacteriology)169:5771〜5278を参照のこと)を使用して実行することができる。
【0142】
宿主細胞は、真核生物、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞または真菌細胞であることができる。
【0143】
好適な態様において、宿主細胞は真菌細胞である。「真菌」は、本明細書において使用するとき、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、および接合菌門(Zygomycota)(ホークワース(Hawksworth)ら、エーンズワース・アンド・ビスビーズ・ディクショナリー・オブ・ザ・ファンギ(Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi)第8版、1995、CABインターナショナル(CAB International)、ユニバーシイティー・プレス(University Press)、イギリス、ケンブリッジ(Cambridge, UK)において定義されている)ならびに卵菌門(Oomycota)(ホークワース(Hawksworth)ら、1995、上掲)およびすべての栄養胞子性菌類(ホークワース(Hawksworth)ら、1995、上掲)を包含する。
【0144】
より好ましい態様において、真菌宿主細胞は酵母細胞である。「酵母」は、本明細書において使用するとき、子嚢胞子発生酵母(エンドミセタレス(Endomycetales))、担子胞子発生酵母、および不完全菌類(Fungi Imperfecti)(ブラストミセテス(Blastomycetes))に属する酵母を包含する。酵母の分類は将来において変化することがあるので、本発明の目的のため、酵母は次の文献に記載されているように定義すべきである:スキナー,F.A.(Skinner, F.A.)、パスモア,S.M.(Passmore, S.M.)、およびダブンポート,R.R.(Davenport, R.R.)、eds、Soc.アップライド・バクテリオロジー(App. Bacteriol、シンポジウムシリーズNo.9、1980)。
【0145】
より好ましい態様において、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)種、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)種、サッカロマイセス(Saccharomyces)種、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)種、ピキア(Pichia)種、またはヤロウィア(Yarrowia)種の細胞である。
【0146】
最も好ましい態様において、酵母宿主細胞は、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クリヴェリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、またはサッカロマイセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)の細胞である。別の最も好ましい態様において、酵母宿主細胞は、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)の細胞である。別の最も好ましい態様において、酵母宿主細胞は、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)の細胞である。
【0147】
別のより好ましい態様において、真菌宿主細胞は糸状真菌の細胞である。「糸状真菌」は、再分割エウミコタ(Eumycota)および卵菌門(Oomycota)のすべての糸状形態を包含する(ホークワース(Hawksworth)ら、1995、上掲、に記載されているように)。糸状真菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、および他の複雑な多糖類から構成された栄養菌糸体により特徴づけられる。栄養成長は菌糸の伸長により、そして炭素異化は無条件的に好気性である。対照的に、酵母、例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)により栄養成長は単細胞の葉状体の出芽により、そして炭素異化は発酵的であることができる。
【0148】
より好ましい態様において、糸状真菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、アオレオバシジウム(Aureobasidium)属、ブジェルカンデラ(Bjerkandera)属、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)属、コプリナス(Coprinus)属、コリオラス(Coriolus)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、フィロバシジウム(Filobasidium)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコラ(Humicola)属、マグナポルテ属(Magnaporthe)、ケカビ(Mucor)属、ミセリオフトーラ(Myceliophthora)属、ネオカリマスチクス(Neocallimastix)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、(Paecilomyces)属、ペーシロマイセス(Paecilomyces)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ファネロケーテ(Phanerochaete)属、フレビア(Phlebia)属、ピロマイセス(Piromyces)属、プレオロータス(Pleurotus)属、シゾフィラン(Schizophyllum)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、サーモアスカス(Thermoascus)属、チエラビア(Thielavia)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、トラメテス(Trametes)属、またはトリコデルマ(Trichoderma)属の細胞であるが、これらに限定されない。
【0149】
最も好ましい態様において、糸状真菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nige)、またはアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)他の最も好ましい態様において、糸状真菌宿主細胞は、フザリウム・バクトリジオイデ(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)フザリウム・レティキュラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・ザムブチヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・ザルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセキオイデス(Fusarium trichothecioides)、またはフザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)の細胞である。別の好ましい態様において、糸状真菌宿主細胞は、ブジェルカンデラ・アダスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレジエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベッセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・サブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、またはセリポリオプシス・サブベルミスプラ(Ceriporiopsis subvermispora)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオルス・ハースタス(Coriolus hirsutus)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・パルロゼラム(Penicillium purpurogenum)、白色腐朽菌(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)、プレウロツス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシカラー(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の株細胞である。
【0150】
真菌細胞は、それ自体知られている方法において、プロトプラストの形成、プロトプラストの形質転換、および細胞壁の再生を包含する方法により形質転換することができる。アスペルギルス(Aspergillus)およびトリコデルマ(Trichoderma)宿主細胞を形質転換する好適な手順は、次の文献に記載されている:欧州特許第238023号、およびイエルトン(Yelton)ら、1984、米国科学アカデミー紀要(National Academy of Sciences USA)81:1470〜1474。フザリウム(Fusarium)種を形質転換する適切な方法は次の文献に記載されている:マラディー(Malardier)ら、1989、遺伝子(Gene)78:147〜156、および国際公開特許第96/00787号。酵母は次の文献に記載されている手順を使用して形質転換することができる:ベッカー( Becker)およびグアレンテ(Guarente)、編集者、エイブルソンJ.N.(Abelson, J.N.)およびサイモンM.I.(Simon, M.I.)、ガイド・トゥ・イースト・ジェネティクス・アンド・モレクラー・バイオロジー(Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology)、メソッド・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)第194巻、ページ182〜187、アカデミック・プレス社(Academic Press, Inc.)、ニューヨーク;イトウ(Ito)ら、1983、細菌学学術誌(Journal of Bacteriology)153:163;および、ヒンネン(Hinnen)ら、1978、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences USA)、75:1920。
【0151】
生産方法
本発明のポリペプチドは、(a)ポリペプチドの生産を助長する条件下において、その野生型がポリペプチドを産生する能力がある細胞を培養すること、および(b)ポリペプチドを回収すること、を含む方法により生産することができる。好ましくは、細胞はアスペルギルス属(genus Aspergillus)の細胞であり、より好ましくはアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)である。
【0152】
本発明のポリペプチドの生産方法は、(a)ポリペプチドの生産を助長する条件下において宿主細胞を培養すること、および(b)ポリペプチドを回収すること、をさらに含むことができる。
【0153】
本発明のポリペプチドの生産方法は、(a)ポリペプチドの生産を助長する条件下において宿主細胞を培養することであって、当該宿主細胞は配列番号1の成熟したポリペプチドコード領域に少なくとも1つの突然変異を有する変異ヌクレオチド配列を含み、当該変異ヌクレオチド配列は配列番号2のポリペプチドに含まれるまたはポリペプチドを含むリパーゼであるポリペプチドをコード化する、および(b)ポリペプチドを回収すること、をさらに含むことができる。好ましい実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号2のポリペプチドの成熟部位に含まれるまたはポリペプチドを含むリパーゼであるポリペプチドをコード化し、および(b)ポリペプチドを回収する。
【0154】
当該生産方法におて、細胞は、当該技術分野において周知の方法を用いて、ポリペプチドの生産に好適な培養液中で培養される。例えば、細胞は、実験用発酵槽または工業用発酵層において、好適な培地およびポリペプチドを発現および/または単離することの可能な条件下で、撹拌フラスコ培養、および小規模または大規模発酵(連続発酵、バッチ発酵、フェッドバッチ発酵、またはソリッドステート発酵を含む)により培養される。培養は、当該技術分野において既知の手順を用いて、炭素源および窒素源並びに無機塩類を含む好適な培養液中で行なわれる。好適な培地は商業用供給元から入手可能であり、出版物(例えば、米国微生物系統保存機関(American Type Culture Collection)のカタログ内)によって準備してもよい。ポリペプチドが培養液に分泌された場合は、ポリペプチドを培地から直接回収することができる。ポリペプチドが分泌されない場合は、細胞可溶化物から回収することができる。
【0155】
ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的な当該技術分野において既知の方法を用いて検出されてもよい。これら検出方法には、特有の抗体の使用、酵素生成物の形成、または酵素基質の消失を挙げることができる。例えば、本明細書に記載のように、酵素分析を使用してポリペプチドの活性を測定してもよい
得られたポリペプチドは当該技術分野において既知の方法を用いて回収することが可能である。例えば、遠心分離、濾過、抽出、スプレー乾燥、蒸発、または沈殿を含むがこれらに限定されない従来の手順によって、培養液からポリペプチドを回収することができる。
【0156】
ポリペプチドは当該技術分野において既知の様々な手順によって生成することが可能であり、手順には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマト分画、およびサイズ排除)、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動)、示差溶解(differential solubility)(例えば、アンモニウムスルフェート沈殿)、SDS−PAGE、または抽出(例えば、プロテイン・ピュリフィケイション(Protein Purification)、J.−C.ジャンソン(J.-C.Janson)およびラーズ・ライデン(Lars Ryden)、編集、VCH出版、ニューヨーク、1989を参照のこと)が含まれるがこれらに限定されない。
【0157】
組成物
好ましくは、組成物は本発明のポリペプチドの中に濃縮される。用語「濃縮」とは、組成物のリパーゼ活性が増加して濃縮係数が1.1になることを指す。
【0158】
組成物は本発明のポリペプチドを主要酵素成分、例えば、1成分組成物として含むことができる。或いは、組成物は、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インバーターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペロキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、またはキシラナーゼ、などの複数の酵素活性を含むことができる。さらなる酵素を、例えば次の微生物によって生産してもよい:アスペルギルス(genus Aspergillus)属に属する微生物、好ましくは、アスペルギルス・アクレアータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nige)、またはアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae);フザリウム(Fusarium)属、好ましくはフザリウム・バクトリジオイデ(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レティキュラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・ザムブチヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・ザルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセキオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum);フミコラ(Humicola)属、好ましくは、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)またはサーモマイセス・ラノギノサス(Thermomyces lanoginosus);またはトリコデルマ(Trichoderma)属、好ましくはトリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)。
【0159】
ポリペプチド組成物は当該技術分野において既知の方法にしたがって調製することが可能であり、液体または乾燥組成物の形状であってもよい。例えば、ポリペプチド組成物は粒子または微粒子の形状であり得る。組成物に含まれるポリペプチドは当該技術分野において既知の方法にしたがって安定させる。
【0160】
洗剤成分
本明細書で使用する時、洗剤組成物としては、物品並びに洗浄および処理用組成物が挙げられる。本明細書で使用するとき、用語「クリーニングおよび/または処理組成物」は、指示がない限り、錠剤、粒状または粉末形状の汎用または「重質」洗浄剤、特に洗濯洗剤;液体、ジェルまたはペースト状の汎用洗浄剤、特にいわゆる重質液状タイプ;デリケートな衣類用洗剤;ハンド食器用洗剤または軽質食器用洗剤、特に高発泡タイプ;家庭用および工業用途の様々な錠剤、粒状液状およびすすぎ補助剤タイプの食器洗浄機専用洗剤を含む。組成物はまた、単位用量パッケージであってもよく、当該技術分野において既知のパッケージおよび水溶性、非水溶性および/または透水性のパッケージを含む。
【0161】
本発明の洗剤組成物は、1以上の本発明のリパーゼ変異体を含んでもよい。リパーゼ変異体に加え、洗剤組成物は洗剤成分をさらに含む。以下に例示される洗剤成分の非限定的なリストは、本組成物において使用するのに適しており、例えば、クリーニング性能を補助若しくは向上させるために、洗浄される基材の処理のために、または着色剤、染料などを用いる場合と同様に洗浄組成物の審美性を変化させるために、望ましくは本発明の特定の実施形態に組み込まれてよい。このような追加的成分の明確な性質、およびそれを組み込む濃度は、組成物の物理的形態および使用されるべき洗浄作業の性質による。好適な洗剤成分としては、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、染料移行防止剤、分散剤、酵素類および酵素安定剤、漂白活性化剤、過酸化水素、過酸化水素供給源、予備形成過酸類、ポリマー分散剤、増白剤、発泡抑制剤、染料、腐食防止剤、曇り防止剤、香料、柔軟仕上げ剤、キャリア、向水性物質、加工助剤、溶媒および/または顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
典型的な洗剤は、次の成分の任意の組み合わせを含む:5重量%〜30重量%の界面活性剤、好ましくは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルコールエトキシサルフェートなどの陰イオン性界面活性剤;0.005重量%〜30重量%のプロテアーゼ活性タンパク質であって、当該プロテアーゼは好ましくはコロナーゼ(Coronase)(商標)、FNA、FN4、またはサビナーゼ(Savinase)(商標)から選択される;0.001重量%〜0.19重量%のアミラーゼ活性タンパク質であって、当該アミラーゼは好ましくはターマミル(Termamyl)(商標)、ナタラーゼ(Natalase)(商標)、ステインザイム(Stainzyme)(商標)およびプラスター(Purastar)(商標);および0.1重量%〜3重量%のキレート剤、好ましくは、ジエチレントリアミン五酢酸。粒状および錠剤製品では、かかる典型的な洗剤はを追加的に含む:5重量%〜20重量%の漂白剤、好ましくは過炭酸ナトリウム;1重量%〜4重量%%の漂白活性化剤、好ましくはTEADおよび/または0〜30重量%、好ましくは5重量%〜30重量%、より好ましくは10重量%未満のビルダー。
【0163】
漂白剤−本発明の洗剤組成物は1種以上の漂白剤を含んでもよい。
【0164】
一般に、漂白剤を使用する場合、本発明の化合物は、対象となる洗浄組成物の、約0.1重量%〜約50重量%、またはさらには約0.1重量%〜約25%の漂白剤を含んでもよい。好適な漂白剤の例には:
(1)過酸化水素の供給源、例えば、過ホウ酸塩(通常モノ−または四水和物)のナトリウム塩などのアルカリ金属塩類、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩類、およびこれらの混合物を含む無機加水和物塩類。本発明の一態様において、無機加水和物塩類は過ホウ酸塩、過炭酸塩およびこれらの混合物から成る群から選択される、石鹸;および
(2)R−(C=O)−Lを有する漂白活性化剤、式中、Rは、漂白活性化剤が疎水性の場合、任意で6個〜14個の炭素原子または8個〜12個の炭素原子を有し、漂白活性化剤が親水性の場合、6未満の炭素原子またはさらに4未満の炭素原子を有する、任意で分枝状のアルカリ基;およびLは脱離基である。好適な脱離基の例は、安息香酸およびその誘導体(特に、ベンゼンスルホネート)である。好適な漂白活性化剤類としては、ドデカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシ安息香酸またはその塩類、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシベンゼンスルホネート、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)およびノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)が挙げられる。好適な漂白活性化剤類は、PCT国際公開特許WO98/17767にも開示される。いかなる好適な漂白活性化剤も使用してもよいが、発明の一態様では、標記洗浄組成物は、NOBS、TAEDまたはこれらの混合物を含んでよい。
(3)予め生成された過酸類
過酸および/または漂白活性化剤(存在する場合)は、一般に、組成物を参照にして、約0.1重量%〜約60重量%、約0.5重量%〜約40重量%または更に約0.6重量%〜約10重量%の量で、組成物中に存在する。1種以上のその疎水性その前駆体は、1種以上の親水性過酸またはその前駆体と組合せて使用してもよい。
過酸化水素供給源および過酸または漂白活性化剤の量は、有効酸素(過酸化物供給源より供給される)対過酸のモル比が、1:1〜35:1、または更に2:1〜10:1となるように選択してよい。
【0165】
界面活性剤−本発明による洗剤組成物は、界面活性剤または界面活性剤系を含んでよく、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、半極性非イオン性界面活性剤およびこれらの混合物から選択されることができる。存在する場合、界面活性剤は、典型的には、対象となる組成物の約0.1重量%〜約60重量%、約0.1重量%〜約40重量%、約0.1重量%〜約12重量%、約1重量%〜約50重量%、更には約5重量%〜約40重量%の濃度で存在する。
【0166】
含まれるとき、洗剤は通常、約1%〜約40%の、アルキルベンゼンスルホン酸塩直鎖、α−オレフィンスルホネート、アルキルサルフェート(脂肪族アルコールスルフェート)、アルコールエトキシサルフェート、第二級アルカンスルホネート、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、コハク酸アルキルまたはコハク酸アルケニル、または石鹸などの陰イオン性界面活性剤を含む。
【0167】
洗剤は通常、約0.2%〜約40%の、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシ化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、またはグルコサミンのN−アシルN−アルキル誘導体(「グルコアミド(glucamides)」)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0168】
ビルダー類−本発明の洗剤組成物は、1種以上の洗剤ビルダーまたはビルダー系を含んでよい。ビルダーを使用する場合、対象となる組成物は、典型的には、標記組成物の少なくとも約1重量%、約5重量%〜約60重量%、または更に約10重量%〜約40重量%のビルダーを含む。ビルダーには、ポリホスフェートのアルカリ金属、アンモニウムおよびアルカノールアンモニウム塩、アルカリ金属ケイ酸塩または層状ケイ酸塩、アルカリ土類およびアルカリ金属カーボネート、アルミノケイ酸塩ブイウダーおよび各種アルカリ金属、エチレンジアミン四酢酸およびニトリロ三酢酸等のポリ酢酸のアンモニウムおよび置換されたアンモニウム塩、並びにメリト酸、コハク酸、クエン酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン1,3,5−トリカルボン酸、カルボキシメチルオキシコハク酸などのポリカルボキシレート、および可溶性塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0169】
キレート剤−本明細書の洗剤組成物は、キレート剤を含有してもよい。好適なキレート剤としては、銅、鉄および/またはマンガンキレート剤およびこれらの混合物が挙げられる。キレート剤を使用する場合、標記組成物は、標記組成物の約0.005重量%〜約15重量%、または更に約3.0重量%〜約10重量%のキレート剤を含んでよい。
【0170】
増白剤−本発明の洗剤組成物は、洗浄される物品の外観を変えることのできる追加成分(蛍光光沢剤など)を含有することもできる。これら増白剤は紫外域に吸収されて可視となって放射される。好適な蛍光増白剤濃度としては、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、更には約0.2重量%の低い濃度から、0.5重量%または更に0.75重量%の高い濃度までが挙げられる。
【0171】
分散剤−本発明の組成物はまた、分散剤を含むことができる。好適な水溶性有機物質類としては、ホモポリマーまたはコポリマーの酸類またはそれらの塩類が挙げられ、それらのうちのポリカルボン酸は、互いに炭素原子2個を超えない程度に離れている少なくとも2個のカルボキシルラジカルを含む。
【0172】
酵素−本発明のリパーゼ変異体に加えて、洗剤組成物は、クリーニング性能および/または布地ケアベネフィットを提供する1種以上のさらなる酵素を含むことが可能である。かかる酵素には、プロテアーゼ、別のリパーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、例えば、ラッカーゼ、および/またはペルオキシダーゼが含まれる。
【0173】
一般に、選択された酵素の特徴は選択された洗剤と適合性がなければならず(即ち、至適pH、その他の酵素的成分および非酵素成分等)、酵素は有効量で存在する必要がある。
【0174】
好適なプロテアーゼには、動物、植物、または微生物起源のプロテアーゼが挙げられる。微生物起源が好ましい。化学的に修飾されたまたはタンパク質操作した変異体が含まれる。プロテアーゼはセリンプロテアーゼまたはメタロプロテアーゼであってもよく、好ましくは、アルカリ性微生物プロテアーゼまたはトリプシン様プロテアーゼである。アルカリ性プロテアーゼの例はサブチリシンであり、特にバチルス由来のサブチリシン、例えば、サブチリシンノボ(subtilisin Novo)、サブチリシンカールズベルグ(subtilisin Carlsberg)、サブチリシン(subtilisin)309、サブチリシン147およびサブチリシン168(国際公開特許WO89/06279に記載)、国際公開特許WO05/103244の配列番号4および配列番号7である。その他の好適なセリンプロテアーゼには、国際公開特許WO2005/052146に開示されているようなミクロコシニアエ類(Micrococcineae spp)およびその変異型のプロテアーゼが挙げられる。トリプシン様プロテアーゼの例は、トリプシン(例えば、ブタまたはウシ由来)および国際公開特許WO89/06270および国際公開特許WO94/2558に記載のフサリウムプロテアーゼである。
【0175】
有用なプロテアーゼの例は、国際公開特許WO92/19729、同WO98/20115、同WO98/20116、および同WO98/34946に記載の変異型であり、特に次の位置の1以上に置換を有する変異型である:27、36、57、68、76、87、97、101、104、106、120、123、167、170、194、206、218、222、224、235、245、252および274、および中でも次の突然変異を有する変異型である:(K27R、V104Y、N123S、T124A)、(N76D、S103A、V104I)、または(S101G、S103A、V104I、G159D、A232V、Q236H、Q245R、N248D、N252K)。有用なプロテアーゼのその他の例は、国際公開特許WO05/052146に記載の変異型、特に次の位置の1以上に置換を有する変異型である:14、16、35、65、75、76、79、123、127、159および179。
【0176】
好ましい市販のプロテアーゼ酵素には、アルカラーゼ(商標))、サビナーゼ(Savinase)(商標)、プリマーゼ(Primase)(商標)、デュラーゼ(Duralase)(商標)、エスペラーゼ(Esperase)(商標)、コロナーゼ(Coronase)(商標)、ポーラーザイム(Polarzyme)(商標)およびカンナーゼ(Kannase)(商標)(以上、ノボザイムズA/S社(Novozymes A/S))、マキサターゼ(商標)、マキサカル(Maxacal)(商標)、マキサペム(Maxapem)(商標)、プロペラーゼ(Properase)(商標)、プュラフェクト(Purafect)(商標)、ピュラフェクトプリム(Purafect Prime)(商標)、ピュラフェクトOxP(Purafect OxP)(商標)、FNA、FN2、FN3およびFN4(以上、ジェネンコア社(Genencor))が挙げられる。
【0177】
リパーゼは、細菌由来または真菌由来のリパーゼを含む。化学的に修飾されたまたはタンパク質操作した変異体が含まれる。有用なリパーゼの例には、フミコラ(Humicola)属(異名:サーモマイセス(Thermomyces)属)由来のリパーゼ、例えば、欧州特許第258068号および欧州特許第305216号に記載のようなH.ラヌギノーサ(lanuginosa)(異名:T.ラヌギノーサ)または国際公開特許WO96/13580に記載のようなH.インソレンス(insolens)由来のリパーゼ、シュードモナスリパーゼ、例えば、P.アルカリゲネス(alcaligenes)またはP.シュードモナス(pseudoalcaligenes)(欧州特許第218272号)、P.セパシア(cepacia)(欧州特許第331376号)、P.ツッゼリー(stutzeri)(GB1、372、034)、P.フルオレセンス(fluorescens)、シュードモナス属株SD705(国際公開特許WO95/06720および同WO96/27002)、P.ウィスコンシネンシス(wisconsinensis)(国際公開特許WO96/12012)由来のリパーゼ、バチルスリパーゼ、例えば、枯草菌(B. subtilis)(ダルトイス(Dartois)ら(1993)、Biochemica et Biophysica Acta、1131、253〜360)、B.ステアロサーモフィルス(stearothermophilus)(JP64/744992)またはB.プミルス(pumilus)(国際公開特許WO/91/16422)の由来のリパーゼが挙げられる。
【0178】
その他の例は、次に記載されているようなリパーゼ変異型である:国際公開特許WO92/05249、国際公開特許WO94/01541、欧州特許第407225号、欧州特許第260105号、国際公開特許WO95/35381、国際公開特許WO96/00292、国際公開特許WO95/30744、国際公開特許WO94/25578、国際公開特許WO95/14783、国際公開特許WO95/22615、国際公開特許WO97/04079および国際公開特許WO97/07202。
【0179】
その他の市販のリパーゼ酵素には、リポラーゼ(Lipolase)(商標)、リポラーゼ・ウルトラ(Lipolase Ultra)(商標)、およびリペックス(Lipex)(商標(ノボザイムズA/S社(Novozymes A/S)。
【0180】
好適なアミラーゼ(αおよび/またはβ)には細菌由来または真菌由来のアミラーゼが含まれる。化学的に修飾されたまたはタンパク質操作した変異体が含まれる。アミラーゼは、例えば、バチルス(Bacillus)属、例えばB.リケニフォルミス(licheniformis)の特別な株から得るα−アミラーゼを含む。詳細はGB1,296,839に記載されている。
【0181】
有用なアミラーゼの例は、国際公開特許WO94/02597、国際公開特許WO94/18314、国際公開特許WO96/23873、および国際公開特許WO97/43424に記載の変異型であり、特に次の位置の1以上に置換を有する変異型である:15、23、105、106、124、128、133、154、156、181、188、190、197、202、208、209、243、264、304、305、391、408、および444
市販のアミラーゼは、デュラミル(Duramyl)(商標)、ターマミル(Termamyl)(商標)、ステインザイム(Stainzyme)(商標)、ステインザイム・ウルトラ(Stainzyme Ultra)(商標)、ファンガミル(Fungamyl)(商標)、およびBAN(商標)(ノボザイムズA/S社(Novozymes A/S))より市販)、ラピダーゼ(Rapidase)(商標)、およびプラスター(Purastar)(商標)(ジェネンコア社(Genencor)より市販)。
【0182】
好適なセルラーゼには細菌由来または真菌由来のセルラーゼが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質操作した変異体が含まれる。好適なセルロースにはバチルス属(genera Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)属、フサリウム(Fusarium)属、チエラビア(Thielavia)属、アクレモニウム(Acremonium)属由来のセルロースを挙げることができ、例えば、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)から作成される真菌セルラーゼ、および米国特許第4,435,307号、米国特許第5,648,263号、米国特許第5,691,178号、米国特許第5,776,757号および国際公開特許WO89/09259に開示されているフザリウム・オキスポラム(Fusarium oxysporum)である。
【0183】
特に好適なセルラーゼは、色彩維持利点のある(colour care benefits)アルカリ性セルラーゼまたは中性セルラーゼである。かかるセルラーゼの例は、欧州特許第0495257号、欧州特許第0531372号、国際公開特許WO96/11262、国際公開特許WO96/29397、国際公開特許WO98/08940に記載のセルラーゼである。その他の例は、国際公開特許WO94/07998、欧州特許第0531315号、米国特許第5,457,046号、米国特許第5,686,593号、米国特許第5,763,254号、国際公開特許WO95/24471、国際公開特許WO98/12307および国際出願PCT/DK98/00299に記載のセルラーゼのようなセルラーゼ変異型である。
【0184】
市販のセルラーゼは、レノザイム(Renozyme)(商標)、セルクリーン(Celluclean)(商標)、エンドラーゼ(Endolase)(商標)、セルザイム(Celluzyme)(商標)、およびケアザイム(Carezyme)(商標)、(ノボザイムズA/S社(Novozymes A/S))、クラジナーゼ(Clazinase)(商標)、およびピュラダックス(Puradax)HA(商標)、ジェネンコア・インターナショナル社(Genencor International Inc.)およびKAC−500(B)(商標)(花王(Kao Corporation))を含む。
【0185】
ペルオキシダーゼ/オキシダーゼ:
好適なペルオキシダーゼ/オキシダーゼは、植物由来、細菌由来または真菌由来のものが挙げられる。化学的に修飾されたまたはタンパク質操作した変異体が含まれる。有用なペルオキシダーゼの例には、コプリナス(Coprinus)属のペルオキシダーゼ、例えば、国際公開特許WO93/24618、国際公開特許WO95/10602、および国際公開特許WO98/15257に記載のようなC.サイネレウス(cinereus)およびその変異型のペルオキシダーゼである。
【0186】
市販のペルオキシダーゼはグアードザイム(Guardzyme)(商標(ノボザイムズA/S社(Novozymes A/S))を含む。
【0187】
洗浄組成物中に存在する場合、上述した酵素類は、組成物の約0.00001重量%〜約2重量%、約0.0001重量%〜約1重量%、または更に約0.001重量%〜約0.5重量%の濃度の酵素タンパク質で存在してよい。
【0188】
酵素安定剤−種々の技法によって、洗剤に使用する酵素類を安定化させることができる。本明細書に用いられる酵素類は、カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンを酵素に供給する、最終組成物中のカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンの水溶性供給源の存在によって安定化させることができる。さらに従来の安定剤は、例えばポリオール、例えば、プロピレングリコールまたはグリセロール、糖類または糖アルコール、乳酸、ホウ酸、ホウ酸誘導体、例えば、芳香族ホウ酸エステル、またはフェニルボロン酸誘導体、例えば、4−ホルミルフェニル、を使用することができ、かかる組成物は、例えば国際公開特許WO92/19709および国際公開特許WO92/19708に記載のように配合することができる。
【0189】
溶媒−好適な溶媒としては、水および他の溶媒(例えば、親油性流体)が挙げられる。好適な親油性流体の例としては、シロキサン類、その他のシリコーン類、炭化水素類、グリコールエーテル類、例えばグリセリンエーテル類などのグリセリン誘導体類、ペルフルオロ化アミン類、ペルフルオロ化およびハイドロフルオロエーテル溶媒類、低揮発性の非フッ素化有機溶媒類、ジオール溶媒類、環境に優しいその他の溶媒類、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0190】
洗浄方法
本発明は、ある場所、とりわけ表面または織物をクリーニングおよび/または処理する方法を含む。これらの方法は、本出願人のクリーニング組成物の実施形態を、希釈していない形態で、または洗浄溶液中で希釈して、表面または布地の少なくとも一部分に接触させ、次いで、所望により、表面または布地をすすぐ工程を含む。表面または布地は前記すすぎ工程の前に洗浄工程を経てもよい。本発明の目的上、洗浄は、擦ることおよび機械的攪拌を含むが、これらに限定されない。当業者に理解されるように、本発明のクリーニング組成物は理想的には洗濯用途に用いるのに適している。それ故に、本発明は布地を洗濯するための方法を含む。この方法は、洗濯すべき布地を出願人のクリーニング組成物の少なくとも1つの実施形態、クリーニング添加物、またはこれらの混合物を含む前記クリーニング洗濯溶液と接触させる工程を含む。布地は、標準的な消費者の使用条件で洗濯され得る大部分の任意の布地を含んでもよい。溶液は、好ましくは、約8〜約15のpHを有する。組成物は、溶液中に約100ppmから、好ましくは500ppm〜約15,000ppmの濃度で使用する。水温は、典型的には約5℃〜約90℃の範囲である。本発明は、低い水温、例えば30℃未満または25℃若しくは20℃未満のような低い水温にて特に有益な場合がある。水対布地の比率は、典型的には約1:1〜約30:1である。
【0191】
リパーゼ変異型例
緩衝剤および基質として使用する化学物質は少なくとも試薬等級の市販の製品である。
【0192】
−培地および溶液:LAS(スーファクPS(Surfac PS)(商標)およびゼオライトA(ウエッサリスP(Wessalith P)(商標))。使用するその他の成分は標準的実験用試薬である。
【0193】
−材料:EMPAEMPA221ザンクトガレン(St. Gallen)、ラーチフェルドストラゼ(Lerchfeldstrasse)5、CH−9014ザンクトガレン(St. Gallen)、スイス
【0194】
(実施例1):酵素の生産
リパーゼをコード化する遺伝子を含むプラスミドを構築し、当該技術分野で標準的な方法を用いて好適な宿主細胞にトランスフォームする。
【0195】
34℃の一定の培地の温度および1.2リットルの開始容量でフェッドバッチ発酵として発酵を行う。培地の最初のpHを6.5に設定する。pHを7.0まで上げ、10%のH3PO4を加える間この値を維持する。攪拌速度を変え、1リットルの培地あたり1分間に1.0リットル空気に固定した通気速度を用いて、培地の溶存酸素の濃度を制御する。全フェッドバッチ段階の間供給速度を一定レベルに維持する。
【0196】
バッチの培地は炭素源としてマルトースシロップ剤、窒素源として尿素および酵母抽出物、および微量の金属および塩の混合物を含む。フェッドバッチ段階の間に連続的に添加される供給原料(feed)は炭素源としてマルトースシロップ剤を含み、酵母抽出物および尿素は窒素の十分な供給を確実とするために添加される。
【0197】
リパーゼの精製は当該技術分野において既知の標準的方法、例えば、発酵上澄のろ過および、欧州特許EP0851813の実施例3に記載のような、それに続く疎水性のクロマトグラフィーおよび陰イオン交換、によって行われてもよい。
【0198】
(実施例2):AMSA−自動機械的応力分析(Automated Mechanical Stress Assay)−RPの計算
本出願の酵素変異型を自動機械的応力分析(Automated Mechanical Stress Assay)(AMSA)を使用して試験した。AMSA試験で、大量の少容量酵素−洗剤溶液の洗浄性能を試験することが可能である。AMSAプレートは、試験溶液のための多くのスロットおよび洗浄される繊維製品の材料見本をスロットの全開口部にしっかりと締め付けるリッドを有している。洗浄時間中、プレート、試験溶液、繊維製品およびリッドを強く振り、試験溶液を繊維製品に接触させて機械的応力を印加する。さらなる説明に関しては次の文献を参照のこと:国際公開特許WO02/42740、特に23〜24ページのパラグラフ「特別な方法の実施形態(Special method embodiments)」。洗剤試験溶液を収容する容器は金属プレートの円筒形の穴(直径6mm、深さ10mm)から成る。しみのついた布地(試験材料)を金属プレートの上に置き、容器のリッドおよびシールとして使用する。各容器からの漏出を防ぐため、別の金属プレートをしみのついた布地の上に置く。しみのついた布地と2つの金属プレートを共に上下に振動させる(周波数30Hzおよび振幅点2mm)。
【0199】
以下定められた実験条件で分析を行なう:
【表3】

【0200】
クレーム−ウコン材料見本を次のように用意した:5gのウコン(デンマーク、サンタマリア(Santa Maria, Denmark))を100gのクリーム(38%脂質、デンマーク、アーラ(Arla, Denmark))と50℃で混合し、混合物をこの温度で約20分間放置し、ろ過(50℃)して溶解していない粒子を除去する。混合物を20℃に冷却し、織綿見本、EMPA221、をクリーム−ウコン混合物に浸す。その後室温で一晩乾燥し、使用まで冷凍する。クレーム−ウコン材料見本は、特許出願PA200500775(2005年5月出願)に開示されている。
【0201】
酵素変異型の性能を、特定の酵素変異型で洗浄した繊維製品の色の白色度として測定する。白色度はまた、サンプルを白色光で照らしたときの繊維製品サンプルから反射する光の強度として表すこともできる。しみのついた繊維製品の反射光の強度が弱いと繊維製品はクリーンである。したがって、反射光の強度を酵素変異型の洗浄性能を測定するために使用することができる。
【0202】
色測定を、洗浄済み繊維製品サンプルの画像をとらえるのに用いる、プロ仕様のフラットベッドスキャナー(PFU DL2400pro)で行う。スキャンは解像度200dpi、出力色深度24bitで行なう。正確な結果を得るために、コダック・レフレクティブIT8ターゲットで頻繁にスキャナーをキャリブレートする。
【0203】
スキャン画像の光強度値を抽出するため、特別に設計されたアプリケーション・ソフトウェアを使用する(ノボザイム・カラーベクター分析器)。プログラムは画像から24ビットピクセル値を読み出し、それらを赤、緑および青(RGB)値へと変換する。ベクターと共にRGB値を加えることで強度値(Int)を計算し、次に得られたベクターの長さを計算する:
【数2】

【0204】
変異型の洗浄性能(P)を次の式にしたがって計算する:P=Int(v)−Int(r)、式中
Int(v)は試験酵素で洗浄した繊維製品の表面の光強度値であり、
Int(r)は試験酵素で洗浄していない繊維製品の表面の光強度値、である。
【0205】
相対的パフォーマンスのスコアが定義にしたがってAMSA洗浄の結果として与えられる:相対的パフォーマンスのスコア(RP)は試験変異型の参照酵素に対するパフォーマンス(P)の合計である:
RP=P(試験酵素)/P(参照酵素)
RPavgは4種類(0.125、0.25、0.5、1.0mg ep/L)全ての酵素濃度の参照酵素と比較した平均相対的パフォーマンスを示している。
【0206】
RPavg=平均(RP(0.125)、RP(0.25)、RP(0.5)、RP(1.0))
参照サンプルより良好に行なわれた場合、変異型は改善された洗浄性能を示すと考えられる。
【0207】
本発明の文脈の中で、参照酵素は、置換T231R+N233Rを有する配列番号2のリパーゼである。
【0208】
(実施例3):リスク係数の計算のためのGC−ガスクロマトグラフ
リパーゼで洗浄した材料見本から放出された酢酸を、以下の方法を用いて固相マイクロ抽出ガスクロマトグラフィー(Solid Phase Micro Extraction Gas Chromatography:SPME−GC)で測定する。1mg/Lのリパーゼを含有する表1の特定溶液で洗浄した、4つの繊維製品片(直径5mm)をガスクロマトグラフィー(GC)バイアルに移す。サンプルを、スタビルワックス−DA w/インテグラーガードカラム(Stabilwax-DA w/Integra-Guard column)(30m、0.32mmIDおよび0.25micro−df)およびカルボキセン(Carboxen)PDMS SPMEファイバ(75micro−m)を備えたバリアン(Varian)3800GC上で分析する。各サンプルを40℃で10分間プレインキュベートし、続いてSPME ファイバを用いて繊維製品の上側のヘッドスペースで20分間サンプリングする。サンプルをカラムの上に順番に注入する(インジェクター温度=250℃)。カラム流用=2mLヘリウム/分。カラムオーブン温度勾配:0分=40℃、22分=240℃、32分=240℃。酪酸をFID検出によって検出し、酪酸の量を酪酸の標準曲線(butyric acid standard curve)を元に計算した。
【0209】
リパーゼ変異型のリスク・パフォーマンス臭気(R)はリパーゼ変異体で洗浄した材料見本から放出される酪酸の量と、配列番号2のリパーゼの成熟部位で洗浄した材料見本から放出される酪酸の量との割合であり、両方の値をリパーゼで洗浄していない材料見本から放出される酪酸の量に対して補正した後の割合である。変異型のリスク(R)を次の式にしたがって計算する:
臭気=酵素タンパク質1mgで顕色した酪酸をμgで測定/ブランクに対する補正1
α試験酵素=臭気試験酵素−ブランク
α参照酵素=臭気参照酵素−ブランク
R=α試験酵素/α参照酵素
R係数が1未満の場合、変異型は参照と比較して少ない臭気を呈すると考えられる。
【0210】
(実施例4):280nmでの吸光度に対する活性(LU)
280nmでの吸光度に対するリパーゼの活性を以下の分析LU/A280によって測定した:
リパーゼ用の基質を、アラビアゴムを乳化剤として用いてトリブチリン(グリセリントリブチリン(glycerin tributyrate))を乳化して準備した。30℃、pH7〜9でのトリブチリンの加水分解をpH−stat滴定実験に適用する。リパーゼ活性1単位(1LU)は、1分間にpH7の1マイクロモルの酪酸を放出可能な酵素の量と等しい。
【0211】
280nmでの精製リパーゼの吸光度を測定し(A280)、比LU/A280を計算する。変異型LU/A280を参照酵素LU/A280で除して相対的LU/A280を計算する。本発明の背景において、参照酵素は、突然変異T231R+N233Rを有する配列番号2の成熟部位である。
【0212】
(実施例5):BR−ベネフィットリスク
臭気のリスクの低下と比較したときのパフォーマンスを説明するベネフィットリスク係数は次のように定義される:BR=RP平均/R
BR係数が1より大きい場合、変異型は改善された洗浄性能および減少した臭気を呈すると考えられる。
【0213】
上記の方法を適用し、次の結果が得られる:
【表4】

表4の参照リパーゼと変異型7および8は国際公開特許WO2000/060063に記載されている。
【0214】
(実施例6)
BR−ベネフィットリスク
ベネフィットリスクを表5の変異型について測定した。ベネフィットリスク係数を実施例5と同じ方法で測定し、記載されている全ての変異型について1を上回ることが見い出された。
【表5−1】

【表5−2】

【表5−3】

参照リパーゼは国際公開特許WO2000/060063に記載されている。
【0215】
洗剤例
例の短縮された成分の定義は以下のとおりである:
【表6】

【0216】
(実施例A)
顆粒洗濯洗剤の形態を有する漂白洗剤組成物は、以下の配合によって例示される。
【表7】

【0217】
実施例Aの組成物のいずれかを用いて、2500ppm、25℃の典型的な中心値条件(median conditions)で布地を濃度600〜10000ppmの水中で洗濯し、水と布の割合は25:1である。典型的なpHは約10であるが、酸とアルキルベンゼンスルホネートのNa塩形態との比率を変えることによって調整することができる。
【0218】
(実施例B)
顆粒洗濯洗剤の形態を有する漂白洗剤組成物は、以下の配合によって例示される。
【表8】

【0219】
実施例Bの組成物のいずれかが、20〜90℃、水中で濃度1000ppmにおいて、および水と布の割合は5:1で布地を洗濯するのに使用される。典型的なpHは約10であるが、酸とアルキルベンゼンスルホネートのNa塩形態との比率を変えることによって調整することができる。
【0220】
(実施例C)
【表9】

* 引用数字は100gあたりの酵素量(mg)
米国特許第4,597,898号に記載のとおり。
BASFから商品名ルーテンシト(LUTENSIT)(登録商標)で販売、およびWO01/05874に記載されているようなもの。
【0221】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、その関連部分において参考として本明細書に組み込まれ、いずれの文献の引用も、それが本発明に関する従来技術であることを認めるものとして解釈すべきではない。本書における用語のいずれかの意味または定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味または定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた定義または意味が適用されるものとする。
【0222】
本発明の特定の実施形態を説明記述してきたが、本発明の精神範囲から逸脱することなく他の様々な変更修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤成分と、リパーゼ活性を有し、本明細書で与えられた試験条件で少なくとも0.8の平均相対的パフォーマンスおよび少なくとも1.1のベネフィットリスク(Benefit Risk)をさらに有するポリペプチドとを含む、洗剤組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、本明細書で与えられた試験条件で1.00未満の相対的なLU/A280を有する、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、細菌性ポリペプチドである、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、真菌ポリペプチドである、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、サーモマイセス(Thermomyces)属のポリペプチドである、請求項4に記載の洗剤組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosus)のポリペプチドである、請求項5に記載の洗剤組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号2の前記ポリペプチドからなるリパーゼの変異型である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、配列番号2の前記ポリペプチドの成熟した部位からなるリパーゼの変異型である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、配列番号2の前記ポリペプチドを含むリパーゼの変異型である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、配列番号2の前記ポリペプチドの成熟した部位を含むリパーゼの変異型である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、少なくとも高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1のヌクレオチド644〜732またはこれに対する相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項12】
前記洗剤成分が、0.1%〜40%、好ましくは0.1%〜12%の陰イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項13】
前記陰イオン性界面活性剤が、アルコキシル化アルキルスルフェートである、請求項12に記載の洗剤組成物。
【請求項14】
前記洗剤成分が、5%〜30%のアルミノケイ酸塩および/またはホスフェートビルダーである、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項15】
前記洗剤成分が、過酸化物および漂白活性化剤の供給源であり、好ましくはテトラアセチルエチレンジアミンである、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項16】
前記洗剤が、液体洗剤組成物または固体洗剤組成物である、請求項1に記載の洗剤。
【請求項17】
前記洗剤が、粒状洗剤組成物である、請求項16に記載の洗剤。
【請求項18】
前記洗剤が、固体の錠剤または可溶性フィルム単位用量組成物(a soluble film unit dose composition)に封入された液体である、請求項1に記載の洗剤。
【請求項19】
請求項1に記載の洗剤組成物を含む水溶液で繊維物品を洗濯する工程を含む洗浄方法。
【請求項20】
前記方法が、
(a)所望により請求項1の前記組成物で汚れやしみを前処理して、所望により前処理された表面を形成する工程、
(b)請求項1の前記組成物の有効量を水に添加して、前記組成物を約500〜約10000ppm含む水性洗浄溶液を形成する工程、
(c)前記水性洗浄溶液を所望により前記前処理された表面と接触させる工程、および
(d)前記水性洗浄溶液および所望により前記前処理された表面に対して所望により攪拌を提供する工程
を含む、請求項19に記載の洗浄方法。
【請求項21】
前記水溶液が、30℃より低い温度である、請求項19に記載の洗浄方法。

【公表番号】特表2009−523425(P2009−523425A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550470(P2008−550470)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/001803
【国際公開番号】WO2007/087319
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】