説明

洗浄ガン

【課題】 洗浄効果の高い簡易的な洗浄ガンを提供することである。
【解決手段】 加工装置に付設されて加工装置や被加工物を洗浄する洗浄ガンであって、作業者が把持する把持部を有し、液体を供給する液体供給源に第1開閉バルブを介して接続された液体供給路と、気体を供給する気体供給源に第2開閉バルブを介して接続された気体供給路と、該液体供給路と該気体供給路とが合流する合流点から該液体と該気体とからなる洗浄液を噴出する噴出口に連なる洗浄液供給路とが形成された洗浄ガン本体と、該液体供給路の開閉を選択的に切り替える該洗浄ガン本体に取り付けられたスイッチ手段とを具備し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を開いたときには該噴出口から該洗浄液を噴出し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を閉じたときには該噴出口から気体を噴出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に付設されて加工装置や被加工物を洗浄する洗浄ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造プロセスでは、表面にICやLSI等の回路素子が複数形成された半導体ウエーハは、研削装置や研磨装置で裏面が研削、研磨されて所定の厚みへと薄化される。その後、薄化された半導体ウエーハが切削装置で切削されて個片化されることで各種の半導体デバイスが製造されている。
【0003】
近年、半導体デバイスの軽薄短小化を実現するための技術として、デバイス表面にバンプと呼ばれる金属突起物を複数形成し、これらのバンプを配線基板に形成された電極に対向させて直接接合するフリップチップボンディングと呼ばれる実装方法が実用化されている。特開2010−36300号公報には、バンプを有する半導体ウエーハ表面を切削してバンプの高さを揃えるためのバイト切削装置が開示されている。
【0004】
これらの研削装置、研磨装置、バイト切削装置等の各種の加工装置は、搬送機構や洗浄機構を備えた所謂フルオートタイプと、搬送機構や洗浄機構を備えず、加工機構のみを備える所謂マニュアルタイプとに大別できる。
【0005】
通常マニュアルタイプの加工装置では、作業者が被加工物を加工機構へと搬入し、加工機構で所定の加工を施してから加工機構から搬出する。マニュアルタイプの加工装置では一般的に洗浄機構を備えていないため、加工が施された被加工物は作業者によって独立した洗浄装置へと搬送されて、加工によって被加工物に付着した加工屑が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−36300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにマニュアルタイプの加工装置では洗浄機構を備えていないため、作業者が加工終了後の被加工物を加工装置から搬出して、別に設けた洗浄装置へと搬送するのに相当時間が経過し、被加工物が乾燥してしまうことがある。
【0008】
加工によって被加工物に付着した加工屑は、一度乾燥してしまうとその後洗浄しても落とすことが難しいという問題がある。そこで、マニュアルタイプの加工装置に付設できる簡易的な洗浄ガン(洗浄ユニット)が要望されている。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、洗浄効果の高い簡易的な洗浄ガンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明によると、加工装置に付設されて加工装置や被加工物を洗浄する洗浄ガンであって、作業者が把持する把持部を有し、液体を供給する液体供給源に第1開閉バルブを介して接続された液体供給路と、気体を供給する気体供給源に第2開閉バルブを介して接続された気体供給路と、該液体供給路と該気体供給路とが合流する合流点から該液体と該気体とからなる洗浄液を噴出する噴出口に連なる洗浄液供給路とが形成された洗浄ガン本体と、該液体供給路の開閉を選択的に切り替える該洗浄ガン本体に取り付けられたスイッチ手段とを具備し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を開いたときには該噴出口から該洗浄液を噴出し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を閉じたときには該噴出口から気体を噴出することを特徴とする洗浄ガンが提供される。
【0011】
請求項2記載の発明によると、加工装置に付設されて加工装置や被加工物を洗浄する洗浄ガンであって、作業者が把持する把持部を有し、液体を供給する液体供給源に第1開閉バルブを介して接続された液体供給路が形成された洗浄ガン本体と、該液体供給路の開閉を切り替える該洗浄ガン本体に取り付けられたスイッチ手段と、アダプタを介して該洗浄ガン本体の液体噴出口に接続された噴射ノズルと、第2開閉バルブを内蔵し一端が気体を供給する気体供給源に接続され、他端が該噴射ノズルに接続された継手とを具備し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を開いたときには該噴射ノズルから該液体と該気体とからなる洗浄液を噴出し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を閉じたときには該噴射ノズルから気体を噴出することを特徴とする洗浄ガンが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄ガンは、液体と気体とからなる洗浄液を気体圧によって噴出するため、洗浄効果が高い。洗浄時には、洗浄ガンへ液体と気体とを供給することで液体と気体とからなる洗浄液を洗浄ガンから噴出し、所謂2流体洗浄を行う。その後、液体の供給を停止して気体のみを噴出し、被洗浄物の乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明第1実施形態に係る洗浄ガンの一部断面側面図である。
【図2】洗浄液噴出時の第1実施形態の洗浄ガンの一部断面側面図である。
【図3】気体噴出時の第1実施形態の洗浄ガンの一部断面側面図である。
【図4】本発明第2実施形態の洗浄ガンの一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明第1実施形態に係る洗浄ガン2の一部断面側面図が示されている。洗浄ガン2の本体4は作業者が把持する把持部4aを有している。
【0015】
本体4内には、液体供給路6と気体供給路8が形成されている。液体供給路6は、第1開閉バルブ10を介して液体供給源12に接続されており、気体供給路8は第2開閉バルブ14を介して気体供給源16に接続されている。
【0016】
本実施形態では、液体供給源12は加圧された水を供給し、気体供給源16は加圧されたエアを供給する。しかし、液体は水に限定されるものではなく、気体もエアに限定されるものではない。
【0017】
洗浄ガン2の本体4内には液体供給路6を横切るようにガイド穴18が形成されており、このガイド穴18中に貫通孔22を有するスライドバー20が挿入されている。尚、気体供給路8はガイド穴20を迂回するように形成されている。
【0018】
引き金24が回動軸26周りに回動可能に本体4に取り付けられている。リターンスプリング28がスライドバー20の右端と本体4の壁部との間に介装されており、スライドバー20を左方向に付勢してその左端を引き金24に当接させている。29は引き金24のストッパーである。スライドバー20、貫通孔22、引き金24及びリターンスプリング28でスイッチ部(スイッチ手段)30を構成する。
【0019】
液体供給路6の先端にはノズル32が形成されており、ノズル32の先端部分の近傍に水とエアとが合流する合流点34が形成される。36は水とエアとからなる洗浄液を供給する洗浄液供給路であり、噴出口38に連通している。
【0020】
以下、図2及び図3を参照して、第1実施形態の洗浄ガン2の作用について説明する。洗浄ガン2で加工装置及び/又は被加工物を洗浄する際には、第1開閉バルブ10及び第2開閉バルブ14とも開いておく。
【0021】
図2に示すように、作業者が把持部4aを把持し引き金24を矢印A方向に引くと、引き金24に押されてスライドバー20が矢印A方向に移動されて貫通孔22がスライドバー20両側の液体供給路6を接続する。
【0022】
これにより、液体供給路6からの加圧水と気体供給路8からの加圧エアが合流点34で合流して水とエアとからなる加圧洗浄液を形成し、洗浄液供給路36を介して加圧された洗浄液40が噴出口38から噴出され、加工装置及び/又は被加工物を洗浄する。
【0023】
本実施形態の洗浄ガン2では、水とエアとの混合した2流体洗浄であるため、高い洗浄効果を得ることができる。2流体洗浄メカニズムについて以下に簡単に説明する。
【0024】
(1)気体と液体とを混合することによって生成される洗浄液は噴霧化した液滴となる。
【0025】
(2)液滴が被洗浄物表面に衝突した際、液滴内部には被洗浄物との接触点を中心として衝撃波、膨張波が発生する。
【0026】
(3)更に、液滴は被洗浄物表面を流れるジェット水流を発生させる。
【0027】
(4)液滴が微細粒子に直接衝突する場合には、液滴内部の圧力変動により被洗浄物表面から微細粒子が引き剥がされる。液滴が微細粒子に直接衝突しない場合でも、ジェット水流により微細粒子が洗い流される。
【0028】
洗浄終了後は、図3に示すように、作業者が引き金24を離すと、引き金24はストッパー29に当接するまで矢印B方向に移動される。これにより、引き金24に当接しているスライドバー20もリターンスプリング28の付勢力により矢印B方向に戻されて、スライドバー20が液体供給路6の連通を遮断する。その結果、噴出口38からは加圧エア41のみが噴出されるので、被洗浄物を乾燥させることができる。
【0029】
図4を参照すると、本発明第2実施形態の洗浄ガン42の一部断面側面図が示されている。洗浄ガン42の本体44には洗浄液供給路46が形成されており、この洗浄液供給路46は上述した第1実施形態の洗浄ガン2の第1開閉バルブ10と同様な開閉バルブを介して液体供給源に接続されている。
【0030】
引き金48が回動軸50周りに本体44に回動可能に取り付けられており、引き金48は第1実施形態の洗浄ガン2の貫通孔22を有するスライドバー20と同様なスライドバー20´の端部に当接している。スライドバー20´はリターンスプリングにより左方向に付勢されている。
【0031】
洗浄ガン42の本体44の先端にはアダプタ52を介して噴出口56を有する噴射ノズル54が接続されている。58は開閉弁を内蔵した継手であり、その一端部60は図示しない気体供給源に接続され、他端62は噴射ノズル54に接続されている。
【0032】
本実施形態の洗浄ガン42の作用も上述した第1実施形態の洗浄ガン2の作用と同様である。即ち、加工装置及び/又は被加工物の洗浄時には、コック64を回して継手58内に内蔵された開閉弁を開き、噴射ノズル54を気体供給源に接続するとともに、液体供給路46に接続された開閉バルブを開いて液体供給路46を液体供給源に接続しておく。
【0033】
作業者が把持部44aを把持して引き金48を引くと、スライドバー20´が右方向にスライドしてスライドバー20´両側の液体供給路46を接続するため、液体供給路46及びアダプタ52を介して噴射ノズル54内に加圧水が導入される。
【0034】
これと同時に、噴射ノズル54内には継手58を介して加圧エアが導入されているため、加圧水と加圧エアが混合して生成された洗浄液が噴射ノズル54内に形成された洗浄液供給路を介して噴出口56から噴出されて、加工装置及び/又は被加工物を洗浄する。
【0035】
洗浄終了後には、引き金48を離すと、洗浄液供給路46がスライドバー20´により遮断され、噴射ノズル54の噴出口56からは加圧エアのみが噴出されて、被洗浄物を強制的に乾燥する。
【0036】
上述した第1実施形態の洗浄ガン2及び第2実施形態の洗浄ガン42は、主にマニュアルタイプの加工装置及び被加工物の洗浄に使用するのに適しているが、フルオートタイプの加工装置に付設して、例えば装置内部の清掃用に洗浄ガン2,42を使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
2,42 洗浄ガン
4,44 本体
6,46 洗浄液供給路
8 気体供給路
10 第1開閉バルブ
12 液体供給源
14 第2開閉バルブ
16 気体供給源
20,20´ スライドバー
22 貫通孔
24,48 引き金
30 スイッチ部
34 合流点
36 洗浄液供給路
38 噴出口
52 アダプタ
54 噴射ノズル
56 噴出口
58 継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置に付設されて加工装置や被加工物を洗浄する洗浄ガンであって、
作業者が把持する把持部を有し、液体を供給する液体供給源に第1開閉バルブを介して接続された液体供給路と、気体を供給する気体供給源に第2開閉バルブを介して接続された気体供給路と、該液体供給路と該気体供給路とが合流する合流点から該液体と該気体とからなる洗浄液を噴出する噴出口に連なる洗浄液供給路とが形成された洗浄ガン本体と、
該液体供給路の開閉を選択的に切り替える該洗浄ガン本体に取り付けられたスイッチ手段とを具備し、
該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を開いたときには該噴出口から該洗浄液を噴出し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を閉じたときには該噴出口から気体を噴出することを特徴とする洗浄ガン。
【請求項2】
加工装置に付設されて加工装置や被加工物を洗浄する洗浄ガンであって、
作業者が把持する把持部を有し、液体を供給する液体供給源に第1開閉バルブを介して接続された液体供給路が形成された洗浄ガン本体と、
該液体供給路の開閉を切り替える該洗浄ガン本体に取り付けられたスイッチ手段と、
アダプタを介して該洗浄ガン本体の液体噴出口に接続された噴射ノズルと、
第2開閉バルブを内蔵し一端が気体を供給する気体供給源に接続され、他端が該噴射ノズルに接続された継手とを具備し、
該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を開いたときには該噴射ノズルから該液体と該気体とからなる洗浄液を噴出し、該スイッチ手段を作動させて該液体供給路を閉じたときには該噴射ノズルから気体を噴出することを特徴とする洗浄ガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−40453(P2012−40453A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180827(P2010−180827)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】