説明

洗浄方法

【課題】電解質の希薄水溶液を被電解水とする電解にて生成される電解生成アルカリ性水を洗浄水として被洗浄物を洗浄する洗浄方法において、洗浄時の、被洗浄物の表面に対する油分等の切れ等を良好にする。
【解決手段】電解質の希薄水溶液を被電解水とする電解にて生成される電解生成アルカリ性水を洗浄水とする被洗浄物を洗浄する洗浄方法であり、洗浄水として、−1℃〜15℃の温度範囲にある電解生成アルカリ性水を採用して、乳化物を洗浄水中で凝縮して集合させ、乳化物の被洗浄物に対する再度の付着を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解生成アルカリ性水を洗浄水とする各種の被洗浄物を洗浄する洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食器や食品工業界で使用される食品容器等の食品用容器類を使用した状態では、食器や容器等食品用容器類の表面に脂肪、蛋白質、油、澱粉等の各種の汚染物質が付着している。このため、使用後の食品用容器類は、付着する各種の汚染物質を除去すべく洗浄して清浄化する必要があり、洗浄には、付着する汚染物質の性質から、界面活性作用のある洗剤を使用するのが一般である。また、機械部品にあっては、部品の表面に工作油、潤滑油、その他の油類が付着していることが多く、この場合にも、各種の油を除去すべく洗浄して清浄化する必要があり、洗浄には、油類の性質から、界面活性作用のある洗剤を使用するのが一般である。さらに、汚れた衣料を洗浄(洗濯)する場合、車両のフロントガラス、サイドガラス、リヤーガラス等を洗浄する場合も同様である。近年、電解生成水の機能が大いに注目されていて、強アルカリ性の電解生成水(電解生成アルカリ性水)の洗浄能を利用して、食品用容器類を洗浄する試みがなされている(特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、食品用容器類の洗浄に限らず、機械部品の洗浄や衣料の洗浄では、一般には常温の洗浄水が使用されるが、洗浄効果を高めるためには、常温より高い加温された洗浄水を使用するのがよいとされている。常温より高い加温された洗浄水では脂肪、油、蛋白質等の乳化を促進し、洗浄効果を向上させるものと認められている。
【特許文献1】特開2001−254096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、電解生成アルカリ性水を洗浄水とする食品用容器類の洗浄を試みたところ、洗浄水として常温またはそれ以上の温度の洗浄水を使用した場合には、容器類の表面を汚染している脂肪、油、蛋白質等の乳化は促進されるが、乳化物を洗い流す際には、容器類の表面から一旦脱落した乳化物が再び容器類の表面に付着し、容器類の洗浄にかなりの時間を要するとの知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、電解生成アルカリ性水を洗浄水として使用して、食品用容器類、機械部品等器機類、衣料、その他の被洗浄物を洗浄する場合に生じる、上記した問題に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、食器や食品容器等食品用容器類、機械部品等器機類、衣料、その他の被洗浄物を洗浄方法に関する。本発明に係る洗浄方法は、電解生成アルカリ性水を洗浄水として使用する洗浄方法である。
【0006】
本発明に係る第1の洗浄方法は、電解質の希薄水溶液を被電解水とする電解にて生成される電解生成アルカリ性水を洗浄水として被洗浄物を洗浄する洗浄方法であり、洗浄水として、−1℃〜15℃の温度範囲にある電解生成アルカリ性水を採用することを特徴とするものである。当該洗浄方法においては、前記洗浄水として、有隔膜電解槽の陰極側電解室にて生成される電解生成アルカリ性水を採用して、同電解生成アルカリ性水を温度調整して被洗浄物の洗浄に使用するようにすることができる。
【0007】
また、本発明に係る第2の洗浄方法は、電解質の希薄水溶液を被電解水とする電解にて生成される電解生成アルカリ性水を洗浄水として被洗浄物を洗浄方法であり、洗浄水として常温または常温より高い温度に加温された電解生成アルカリ性水を使用して第1の洗浄を行い、引き続き、洗浄水として−1℃〜15℃の温度範囲にある電解生成アルカリ性水を使用して第2の洗浄を行うことを特徴とするものである。
【0008】
当該洗浄方法においては、洗浄水として、炭酸塩の希薄塩基性水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成アルカリ性水を採用することができ、前記第1の洗浄には、有隔膜電解槽の各電解室にて生成される電解生成アルカリ性水の一方を温度調整して使用し、かつ、前記第2の洗浄には、有隔膜電解槽の各電解室にて生成される電解生成アルカリ性水の他方を温度調整して使用するようにすることができる。また、当該洗浄方法では、前記被電解水として、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの希薄水溶液を採用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1の洗浄方法においては、被洗浄物を洗浄する洗浄水として、−1℃〜15℃の温度範囲にある電解生成アルカリ性水を採用している。電解生成アルカリ性水を洗浄水とする場合には、容器の表面に付着している脂肪、油、蛋白質等は乳化されて容器の表面から離脱するとともに、容器類の表面から離脱した乳化物は洗浄水中で凝縮して集合体を形成する。また、機械部品の表面に付着する油についても同様に、乳化されて表面から離脱し、離脱した乳化物は洗浄水中で凝縮して集合体を形成する。当該集合体は、容器類や部品の表面に対する付着が抑制されて洗い流される。さらにまた、衣料を洗濯する場合や、種々のガラスの洗浄においても同様である。このため、被洗浄物は十分に洗浄されて清浄化されることになる。乳化物が洗浄水中で集合体を形成するのは、洗浄水の水温が常温より低いことに起因するものと認められる。洗浄水の水温は、洗浄作業者に負担をかけない温度範囲において、できるだけ低いことが好ましい。乳化物の集合体の形成には、洗浄作業者の負担を考慮すれば、洗浄水の水温が−1℃〜15℃の温度範囲において、できりかぎり低温であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る第2の洗浄方法は、上記した第1の洗浄方法を基本としているが、当該第1の洗浄方法(第2の洗浄)を実施するに先だって、常温またはこれより高い温度に加温された電解生成アルカリ性水を洗浄水とする洗浄(第1の洗浄)を実施するものである。当該第1の洗浄にて採用している洗浄水は、常温またはこれより高い温度に加温された電解生成アルカリ性水であることから、被洗浄物に付着している汚染物質に対する乳化作用が高く、その後の第2の洗浄における乳化物に対する集合化作用と相乗して、被洗浄物に対する洗浄効果を一層向上させることができる。
【0011】
本発明に係る第2の洗浄方法を実施する場合、洗浄水として、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸塩の希薄塩基性水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成アルカリ性水を採用することができる。この場合、炭酸塩の希薄塩基性水溶液を被電解水とする有隔膜電解では、陰極側電解室では電解生成アルカリ性水が生成されることは勿論であるが、陽極側電解室でも電解生成アルカリ性水が生成される。例えば、被電解水として炭酸ナトリウムの希薄水溶液を採用した場合には、例えば、陰極側電解室ではpH12程度の電解生成アルカリ性水が生成され、また、陽極側電解室ではpH10程度の電解生成アルカリ性水が生成される。このため、有隔膜電解槽で生成される電解生成水を無駄なく利用することができるとともに、被洗浄物に対する洗浄水の給水機構を簡単でコンパクトなものとすることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、食品用容器類、機械部品類、衣料その他の被洗浄物を洗浄する洗浄方法に関する。本発明に係る各洗浄方法は、洗浄水として電解生成アルカリ性水を採用するものであって、基本的には、電解生成アルカリ性水の水温を−1℃〜15℃に範囲の任意の温度に調整して使用するものである。図1には、本発明に係る洗浄方法で採用する洗浄水を生成してこれを被洗浄物に供給する洗浄水生成給水機構の一例を示し、図2には、当該洗浄水生成給水機構の他の一例を示し、図3には、当該洗浄水生成給水機構のさらに他の一例を示している。
【0013】
図1に示す洗浄水生成給水機構は、電解水生成装置で生成した各電解生成水を各貯留タンクに供給する洗浄水生成給水機構である。当該洗浄水生成給水機構を構成する電解水生成装置は、本発明に係る洗浄方法で採用する電解生成アルカリ性水を生成するもので、有隔膜電解槽を有する電解水生成機構を主体とするものである。当該電解水生成装置は、電解質の希薄水溶液を被電解水として、強アルカリ性の電解生成アルカリ性水、および、強酸性の電解生成酸性水を生成するものである。電解質は、電解生成水の使用目的に応じて、食塩(塩化ナトリウム)、塩化カリウム、炭酸ナトリウム等、適宜選択される。当該洗浄水生成給水機構は、電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水を生成する電解水生成装置と、電解生成アルカリ性水を収容する第1の貯留タンクと、電解生成酸性水を収容する第2の貯留タンクと、電解水生成装置と各貯留タンクを連結する給水系路にて構成されている。
【0014】
電解水生成装置はそれ自体公知のもので、有隔膜電解槽10aと、有隔膜電解槽10aの各電解室R1,R2にて生成された各電解生成水を導出する導出機構部10bからなり、有隔膜電解槽10aの各電解室R1,R2の上流側には、被電解水を各電解室R1,R2に供給するための導入管路11が接続されている。また、各電解室R1,R2の下流側には、各電解室R1,R2にて生成された各電解生成水を導出するための第1導出管路12a1,12b1が接続されている。各第1導出管路12a1,12b1は、導出機構部10bを構成する導出管路である。
【0015】
当該電解水生成装置は、有隔膜電解槽10aの各電解室R1,R2の正負の極性を定期的に反転させて、陽極側電解室にて析出するスケールを定期的に除去するもので、各電解室R1,R2に配設されている各電極13a,13bに対する印加電圧の極性を正負反転させて、陽極側電解室を陰極側電解室に反転させ、かつ、陰極側電解室を陽極側電解室に反転させる。これにより、例えば、電解生成酸性水を生成していた陽極側電解室R2が陰極側電解室に反転して、電解生成アルカリ性水が生成される。同様に、電解生成アルカリ性水を生成していた陰極側電解室R1が陽極側電解室に反転して、電解生成酸性水が生成されることになる。このため、各第1導出管路12a1,12b1からは、各電解室R1,R2の極性が反転される毎に、異なる種類の電解生成水が導出されることになり、貯留タンク10c,10dは同一特性の電解生成水を収容し得ないことになる。
【0016】
導出機構部10bは、かかる問題に対処するためのもので、導出管路部を、第1導出管路12a1,12b1と第2導出管路12a2,12b2とにより構成して、これらの導出管路間に流路切替弁14を介在させている。流路切替弁14には、各電解室R1,R2に接続されている第1導出管路12a1,12b1と、各貯留タンク10c、10dに接続されている第2導出管路12a2,12b2が接続されていて、流路切替弁14の切替動作により、第1導出管路12a1,12b1と第2導出管路12a2,12b2の連通関係が選択されるようになっている。
【0017】
当該導出機構部10bにおいては、流路切替弁14の切替動作により、その弁体14aが図示実線の第1切替位置と2点鎖線の第2切替位置に選択的に位置する。弁体14aが第1切替位置に位置している場合には、第1導出管路12a1と第2導出管路12a2とが連通し、かつ、第1導出管路12b1と第2導出管路12b2とが連通する。また、弁体14aが第2切替位置に位置する場合には、第1導出管路12a1と第2導出管路12b2とが連通し、かつ、第1導出管路12b1と第2導出管路12a2とが連通する。流路切替弁14の切替動作は、各電解室R1,R2の極性の反転に同期してなされる。なお、図中の符号15は、各電解室R1,R2を区画形成する隔膜である。
【0018】
当該導出機構部10bは、第1貯留タンク10cおよび第2貯留タンク10dに対する給水系路を構成していて、例えば、各電解室R1,R2にて生成される電解生成アルカリ性水は常に第2導出管路12a2から導出されて第1の貯留タンク10cに収容され、また、各電解室R1,R2にて生成される電解生成酸性水は常に第2導出管路12b2から導出されて第2の貯留タンク10dに収容される。各貯留タンク10c、10dは、収容する電解生成水を加温・冷却する温度調整手段16を備えている。
【0019】
このため、第1貯留タンク10cおよび第2貯留タンク10dに収容されている各電解生成水は、使用時には、使用目的に応じて加温または冷却され、使用目的に応じた水温にて使用に供される。本発明に係る第1の洗浄方法を実施する場合には、第1貯留タンク10cに収容されている電解生成アルカリ性水を、−1℃〜15℃の温度範囲において所定の温度に冷却して、洗浄水として洗浄に供される。
【0020】
図2に示す洗浄水生成給水機構は、有隔膜電解槽で生成した電解生成水を洗浄槽に供給するための洗浄水生成給水機構である。当該洗浄水生成給水機構は、有隔膜電解槽20a、一対の貯留タンク20b,20c、ヒートポンプ式温度調整機構20dにて構成されている。有隔膜電解槽20aはそれ自体公知のもので、槽本体21内には、隔膜22にて区画形成された一対の電解室R1,R2を備え、各電解室R1,R2には導入管路23aを通して被電解水が供給され、各電解室R1,R2にて生成された各電解生成水は、各導出管路23b,23cを通して導出されて、各貯留タンク20b,20cに収容される。当該有隔膜電解槽20aにあっては、電解室R1が陰極側電解室に、電解室R2が陽極側電解室にそれぞれ設定されている。従って、電解室R1にて生成された電解生成アルカリ性水は、導出管路23bを通して第1貯留タンク20bに供給されて収容され、また、電解室R2にて生成された電解生成酸性水は、導出管路23cを通して第2貯留タンク20cに供給されて収容される。
【0021】
各貯留タンク20b,20cは、互いに共通する注出管路部を備えている。当該注出管路部は、第1貯留タンク20bに接続されている注出管路24aと、第2貯留タンク20cに接続されている注出管路24bと、これら両注出管路24a,24bが互いに接合する接合部に設けた三方切替弁25aから延びる主注出管路24cとからなり、主注出管路24cは洗浄槽20eの上方に臨んでいる。主注出管路24cの先端部には開閉弁25bが介装されていて、主注出管路24cの先端が蛇口になっている。また、各注出管路24a,24bには、供給ポンプ26a,26bが介装されている。当該注出管路部においては、三方切替弁25aを切替動作して開閉弁25bを開放させると、主注出管路24cに連通している側の注出管路に介装されている供給ポンプが駆動して、選択された電解生成水が主注出管路24cの先端の蛇口から注出される。例えば、第1貯留タンク20bに収容されている電解生成アルカリ性水を選択して注出させれば、洗浄槽20eでは、電解生成アルカリ性水を洗浄水とする洗浄を行うことができる。
【0022】
しかして、当該洗浄水生成給水機構においては、有隔膜電解槽20aと各貯留タンク20b,20cとを接続する導出管路部に、ヒートポンプ式の温度調整機構20dが介在している。当該温度調整機構20dは、熱交換媒体が循環する循環管路27と、循環管路27の途中に介装されている圧縮機28aと、循環管路27の途中に介装されている膨張弁28bを備える構成のもので、導出管路23bの途中に形成されているスパイラル部位23b1が第1熱交換部27aとなっており、また、導出管路23cの途中に形成されているスパイラル部位23c1が第2熱交換部27bとなっている。第1熱交換部27aは、スパイラル部位23b1内を流動する電解生成アルカリ性水を冷却すべく機能し、第2熱交換部27bは、スパイラル部位23c1内を流動する電解生成酸性水を加温すべく機能する。
【0023】
従って、当該温度調整機構20dを作動させれば、第1貯留タンク20bには冷却された電解生成アルカリ性水が供給され、かつ、第2貯留タンク20cには加温された電解生成酸性水が供給されることになり、洗浄槽20eでは、任意の温度に冷却した電解生成アルカリ性水を利用することができるとともに、任意の温度に加温した電解生成酸性水を利用することができる。本発明に係る第1の洗浄方法を実施する場合には、任意の温度に冷却した電解生成アルカリ性水を注出して洗浄水とする。
【0024】
当該洗浄水生成給水機構では、有隔膜電解槽20aの被電解水として、塩基性水溶液を形成する炭酸塩の希薄水溶液を採用することができる。例えば、炭酸ナトリウムの希薄水溶液を被電解水とした場合には、有隔膜電解槽20aの陰極側電解室R1ではpH12程度の電解生成アルカリ性水が生成され、また、有隔膜電解槽20aの陽極側電解室R2ではpH10程度の電解生成アルカリ性水が生成される。従って、第2貯留タンク20cからは加温された電解生成アルカリ性水を注出して洗浄槽20eに供給することができるとともに、第1貯留タンク20bからは冷却された電解生成アルカリ性水を注出して洗浄槽20eに供給することができる。このため、第1貯留タンク20bと第2貯留タンク20cに貯留する電解生成アルカリ性水を選択的に使用することにより、本発明に係る第2の洗浄方法を実施することができる。
【0025】
図3に示す洗浄水生成給水機構は、有隔膜電解槽で生成した電解生成水を、車両のフロントガラスのワイパー設置位置の近傍に設けた洗浄水噴出口部に供給するための洗浄水生成給水機構であって、車両に搭載されて使用されるものである。当該洗浄水生成給水機構は、有隔膜電解槽30a、ウォッシャータンク30bと、温度調整回路30cにて構成されている。有隔膜電解槽30aはそれ自体公知のもので、槽本体31内には、隔膜32にて区画形成された一対の電解室R1,R2を備え、各電解室R1,R2には導入管路33aを通して被電解水が供給され、各電解室R1,R2にて生成された各電解生成水は、各導出管路33b,33cを通して導出される。当該有隔膜電解槽30aにあっては、電解室R1が陰極側電解室に、電解室R2が陽極側電解室にそれぞれ設定されていていて、電解室R1にて生成された電解生成アルカリ性水は、導出管路23bを通してウォッシャータンク30bに供給されて収容され、また、電解室R2にて生成された電解生成酸性水は、導出管路33cを通して排水される。
【0026】
温度調整回路30cは、ウォッシャータンク30bに接続されている導入管路34と、ワイパー設置位置の近傍に設けた洗浄水噴出口部30dに接続されている主導出管路35との間に位置し、導入管路34に三方切替弁36aを介して接続されている導出管路37a,37bと、導出管路37aの途中に介装されている冷却手段36bと、導出管路37bの途中に介装されている加熱手段36cとにより構成されている。各導出管路37a,37bは末端にて主導出管路35に接続されている。
【0027】
当該洗浄水生成給水機構においては、導出管路37aを通して冷却された電解生成アルカリ性水を洗浄水噴出口部30dに供給することができ、かつ、導出管路37bを通して加温された電解生成アルカリ性水を洗浄水噴出口部30dに供給することができる。従って、導出管路37aを通して冷却された電解生成アルカリ性水を洗浄水噴出口部30dに供給することによって、本発明に係る第1の洗浄方法を実施することができるとともに、導出管路37bを通して加温された電解生成アルカリ性水を洗浄水噴出口部30dに供給する手段と、導出管路37aを通して冷却された電解生成アルカリ性水を洗浄水噴出口部30dに供給する手段とを選択的に使用すれば、本発明に係る第2の洗浄方法を実施することができる。
【0028】
本発明に係る第1の洗浄方法においては、被洗浄物を洗浄する洗浄水として、−1℃〜15℃の温度範囲にある電解生成アルカリ性水を採用している。当該電解生成アルカリ性水を洗浄水とする場合には、被洗浄物の表面に付着している脂肪、油、蛋白質等は乳化されて被洗浄物の表面から離脱するとともに、被洗浄物の表面から離脱した乳化物は洗浄水中で凝縮して集合体を形成する。当該集合体は、被洗浄物の表面に対する付着が抑制されて洗い流される。このため、被洗浄物は十分に洗浄されて清浄化されることになる。換言すれば、本発明に係る第1の洗浄方法を実施すれば、被洗浄物の表面に付着する油分等の切れが良好となる。
【0029】
また、乳化物が洗浄水中で集合体を形成するのは、洗浄水の水温が常温より低いことに起因するものであると認められる。洗浄水の水温は、洗浄作業者に負担をかけない温度範囲において、できるだけ低いことが好ましい。乳化物の集合体の形成には、洗浄作業者の負担を考慮すれば、洗浄水の水温が−1℃〜15℃の温度範囲において、できりかぎり低温であることが好ましい。
【0030】
本発明に係る第2の洗浄方法は、上記した第1の洗浄方法を基本としているが、当該第1の洗浄方法(第2の洗浄)を実施するに先だって、常温またはこれより高い温度に加温された電解生成アルカリ性水を洗浄水とする洗浄(第1の洗浄)を実施している。当該第1の洗浄にて採用している洗浄水は、常温またはこれより高い温度に加温された電解生成アルカリ性水であることから、被洗浄物に付着している汚染物質に対する乳化作用が高く、その後の第2の洗浄における乳化物に対する集合化作用と相乗して、被洗浄物に対する洗浄効果を一層向上させることができる。
【0031】
また、本発明に係る第2の洗浄方法を実施する場合、洗浄水として、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成アルカリ性水を採用することができる。この場合、陰極側電解室ではpH12程度の電解生成アルカリ性水が生成され、また、陽極側電解室ではpH10程度の電解生成アルカリ性水が生成される。このため、有隔膜電解槽で生成される電解生成水を無駄なく利用することができるとともに、被洗浄物に対する洗浄水の給水機構を簡単でコンパクトなものとすることができるという利点がある。
【実施例】
【0032】
本実施例においては、洗浄水(電解生成アルカリ性水)中で乳化している油の容器に対する付着状態について、付着度合いと洗浄水の温度との関係を明らかにするため、容器の擬似洗浄実験を行った。本実験では、洗浄水として、電解生成アルカリ性水(20℃でのpHが11.5)を採用して、当該電解生成アルカリ性水の温度を−1℃〜20℃の所定の温度に設定して実験に供した。
【0033】
本実験では、容量100mLのガラスビーカを5個準備し、これらのガラスビーカのそれぞれに洗浄水を50mL注ぎ、1個のガラスビーカはそのまま常温(洗浄水温度20℃)に維持し、他のガラスビーカについては、氷でその外周から冷却し、洗浄水温度15℃、洗浄水温度10℃、洗浄水温度5℃、洗浄水温度−1℃の合計5種類の洗浄水を調製した。洗浄水温度を調製された各ガラスビーカには、ごま油をそれぞれ1mL滴下して撹拌し、撹拌後、各ガラスビーカ内の洗浄水を遅滞なく排水した。これらの一連の操作での各ガラスビーカの重量を測定するとともに、洗浄水を排水した後のガラスビーカの重量から、ガラスビーカに残存する油量(油付着量)を算出した。得られた結果を下記の表1に示す。
【0034】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る洗浄方法で採用する洗浄水を生成し供給するための洗浄水生成給水機構の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る洗浄方法で採用する洗浄水を生成し供給するための洗浄水生成給水機構の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る洗浄方法で採用する洗浄水を生成し供給するための洗浄水生成給水機構のさらに他の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
10a…有隔膜電解槽、10b…導出機構部、10c,10d…貯留タンク、11…導入管路、12a1,12b1…第1導出管路、12a2,12b2…第2導出管路、13a,13b…電極、14…流路切替弁、15…隔膜、R1,R2…電解室、20a…有隔膜電解槽、20b,20c…貯留タンク、20d…ヒートポンプ式の温度調整機構、20e…洗浄槽、21…槽本体、22…隔膜、23a…導入管路、23b,23c…導出管路、23b1,23c1…スパイラル部位、R1,R2…電解室、24a,24b…導入管路、24c…主注出管路、25a…三方切替弁、25b…開閉弁、26a,26b…供給ポンプ、27…循環管路、27a…第1熱交換部、27b…第2熱交換部、28a…圧縮機、28b…膨張弁、30a…有隔膜電解槽、30b…ウォッシャータンク、30c…温度調整機構、30d…洗浄水噴出口部、34…導入管路、35…主導出管路、36a…三方切替弁、36b…冷却手段、36c…加熱手段、37a,37b…導出管路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の希薄水溶液を被電解水とする電解にて生成される電解生成アルカリ性水を洗浄水として被洗浄物を洗浄する洗浄方法であり、洗浄水として、−1℃〜15℃の温度範囲にある電解生成アルカリ性水を採用することを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄方法であり、前記洗浄水として、有隔膜電解槽の陰極側電解室にて生成される電解生成アルカリ性水を採用して、同電解生成アルカリ性水を温度調整して被洗浄物の洗浄に使用することを特徴とする洗浄方法。
【請求項3】
電解質の希薄水溶液を被電解水とする電解にて生成される電解生成アルカリ性水を洗浄水として被洗浄物を洗浄方法であり、洗浄水として常温または常温より高い温度に加温された電解生成アルカリ性水を使用して第1の洗浄を行い、引き続き、洗浄水として−1℃〜15℃の温度範囲にある電解生成アルカリ性水を使用して第2の洗浄を行うことを特徴とする洗浄方法。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄方法であり、当該洗浄では洗浄水として、炭酸塩の希薄塩基性水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される電解生成アルカリ性水を採用するものであり、前記第1の洗浄には、有隔膜電解槽の各電解室にて生成される電解生成アルカリ性水の一方を温度調整して使用し、かつ、前記第2の洗浄には、有隔膜電解槽の各電解室にて生成される電解生成アルカリ性水の他方を温度調整して使用することを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
請求項4に記載の洗浄方法であり、前記被電解水として、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの希薄水溶液を採用することを特徴とする洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−117840(P2007−117840A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311327(P2005−311327)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】