説明

洗浄水供給システム及び洗浄方法

【課題】逆浸透膜により製造される濃縮水を被洗浄物の洗浄水として利用する場合において、被洗浄物へのシリカの析出を抑制することができる洗浄水供給システムを提供すること。
【解決手段】洗浄水供給システム1は、原水W1に含まれる硬度成分を除去して軟水W2を製造する軟水化装置2と、軟水化装置2により製造される軟水W2を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水W3及び濃縮水W4を製造する逆浸透膜装置3と、逆浸透膜装置3により製造される濃縮水W4を被洗浄物の洗浄水W5として供給する濃縮水供給ラインL3と、逆浸透膜装置3により製造される透過水W3を被洗浄物の濯ぎ水W3として供給する透過水供給ラインL4と、濃縮水W4のpH値を8以上に調整するpH値調整装置7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜により製造される濃縮水を被洗浄物の洗浄水として利用可能な洗浄水供給システム及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原水から逆浸透膜による膜分離処理により製造される透過水及び濃縮水を、被洗浄物の洗浄水として利用する技術が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、逆浸透膜法によってシリカ等の不純物を除去した洗車用純水を製造して貯留するシリカ除去システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術によれば、原水を軟水化装置のイオン交換樹脂により軟水化処理して硬度成分を除去し、逆浸透膜装置の逆浸透膜によりシリカを除去して洗浄水を製造している。つまり、特許文献1に記載の技術によれば、逆浸透膜装置により製造される透過水を使用して被洗浄物の洗浄及び濯ぎを行っている。その際、濃縮水は廃棄される。また、特許文献1に記載の技術には、濃縮水により被洗浄物を洗浄し、透過水により被洗浄物を濯ぐ手段も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−226537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術によれば、濃縮水には、原水に含まれていたシリカが濃縮されている。そのため、この濃縮水を使用して被洗浄物を洗浄すると、被洗浄物上にシリカが析出するおそれがある。
【0006】
また、原水にシリカが含まれている場合、逆浸透膜表面でのシリカの析出も問題となる。逆浸透膜表面でのシリカの析出を抑制するためには、洗浄水の製造過程において濃縮水を廃棄し、原水の回収率を抑制(例えば、原水の回収率を50%から70%程度とする)するようにシステムを運転しなければならない。そのため、洗浄水を製造するためのコスト(造水コスト)も高くなる。従って、造水コストを抑制しつつ、被洗浄物へのシリカの析出を抑制することができる手段が望まれていた。
【0007】
本発明は、逆浸透膜により製造される濃縮水を被洗浄物の洗浄水として利用する場合において、被洗浄物へのシリカの析出を抑制することができる洗浄水供給システム及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原水に含まれる硬度成分を除去して軟水を製造する軟水化装置と、前記軟水化装置により製造される軟水を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水及び濃縮水を製造する逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置により製造される濃縮水を被洗浄物の洗浄水として供給する濃縮水供給ラインと、前記逆浸透膜装置により製造される透過水を前記被洗浄物の洗浄水又は濯ぎ水として供給する透過水供給ラインと、濃縮水のpH値を8以上に調整するpH値調整装置とを備える洗浄水供給システムに関する。
【0009】
また、前記pH値調整装置は、濃縮水を加熱する加熱装置であることが好ましい。
【0010】
また、前記pH値調整装置は、濃縮水又は軟水にアルカリ性薬剤を添加するアルカリ性薬剤添加装置であることが好ましい。
【0011】
また、前記軟水化装置により製造される軟水を前記逆浸透膜装置に供給する軟水供給ラインと、前記濃縮水供給ラインに設けられ濃縮水の流量を調整する流量調整弁と、前記濃縮水供給ラインにおける前記流量調整弁の上流側に一端が接続されると共に、前記軟水供給ラインにおける前記逆浸透膜装置の上流側に他端が接続され、前記濃縮水供給ラインを流通する濃縮水の一部を前記逆浸透膜装置の上流側に還流する還流ラインと、濃縮水の流量と透過水の流量との比率を調整するように前記流量調整弁を制御する流量調整弁制御部とを更に備えることが好ましい。
【0012】
また、前記濃縮水供給ラインに設けられ濃縮水を貯留する濃縮水貯留タンクと、前記濃縮水貯留タンクの下流側に設けられ該濃縮水貯留タンク内の濃縮水を洗浄水として送出する第1送出装置と、前記透過水供給ラインに設けられ透過水を貯留する透過水貯留タンクと、前記透過水貯留タンクの下流側に設けられ該透過水貯留タンク内の透過水を洗浄水又は濯ぎ水として送出する第2送出装置とを更に備えることが好ましい。
【0013】
更に、本発明は、原水に含まれる硬度成分を除去して軟水を製造する軟水化工程と、前記軟水化工程により製造される軟水を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水及び濃縮水を製造する膜分離工程と、前記膜分離工程により製造される濃縮水のpH値を8以上に調整するpH値調整工程と、前記pH値調整工程によりpH値が調整される濃縮水を使用して被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、前記膜分離工程により製造される透過水を使用して、前記洗浄工程を経た前記被洗浄物を濯ぐ濯ぎ工程とを含む洗浄方法に関する。
【0014】
更に、本発明は、原水に含まれる硬度成分を除去して軟水を製造する軟水化工程と、前記軟水化工程により製造される軟水を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水及び濃縮水を製造する膜分離工程と、前記膜分離工程により製造される濃縮水のpH値を8以上に調整するpH値調整工程と、前記pH値調整工程によりpH値が調整される濃縮水を使用して被洗浄物を洗浄する前洗浄工程と、前記膜分離工程により製造される透過水を使用して、前記前洗浄工程を経た前記被洗浄物を洗浄する後洗浄工程と、前記膜分離工程により製造される透過水を使用して、前記後洗浄工程を経た前記被洗浄物を濯ぐ濯ぎ工程とを含む洗浄方法に関する。
【0015】
また、前記pH値調整工程は、濃縮水を加熱し、又は濃縮水若しくは軟水にアルカリ性薬剤を添加することによりpH値を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、逆浸透膜により製造される濃縮水を被洗浄物の洗浄水として利用する場合において、被洗浄物へのシリカの析出を抑制することができる洗浄水供給システム及び洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の洗浄水供給システム1を示す構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態の洗浄水供給システム1Bを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態の洗浄水供給システム1について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の洗浄水供給システム1を示す構成図である。
図1に示す第1実施形態の洗浄水供給システム1は、水道水や地下水等の原水W1をイオン交換処理し、得られた軟水を更に逆浸透膜処理することで、食器、医療用具、理科学機器等の被洗浄物を洗浄する洗浄水及び濯ぎ水を供給するものである。
【0019】
図1に示すように、洗浄水供給システム1は、原水W1を通水する通水ラインL1と、原水W1の硬度成分を除去して軟水W2を製造する軟水化装置2と、軟水W2を逆浸透膜装置3に供給する軟水供給ラインL2と、軟水W2から透過水W3及び濃縮水W4を製造する逆浸透膜装置3と、濃縮水W4を下流側に供給する濃縮水供給ラインL3と、透過水W3を被洗浄物に供給する透過水供給ラインL4と、濃縮水W4の一部を逆浸透膜装置3の上流側に還流する還流ラインL5と、濃縮水W4の流量を調整する流量調整弁4と、濃縮水W4を貯留する濃縮水貯留タンク5と、第1送出装置としての第1送出ポンプ6と、濃縮水W4を加熱するpH値調整装置としての加熱装置7と、洗浄水W5を被洗浄物に供給する濃縮水供給ラインとしての洗浄水供給ラインL6と、透過水W3を貯留する透過水貯留タンク8と、第2送出装置としての第2送出ポンプ9と、流量調整弁4を制御する流量調整弁制御部としての制御装置10とを主体に構成されている。
なお、本明細書でいう「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0020】
この洗浄水供給システム1によれば、原水W1は、軟水化装置2によって軟水とされ、この軟水は、逆浸透膜装置3によって透過水W3及び濃縮水W4とされる。濃縮水W4は、加熱装置7によってアルカリ性に調整され、被洗浄物を洗浄する洗浄水W5として供給される。透過水W3は、洗浄水W5によって洗浄された被洗浄物を濯ぐ濯ぎ水として供給される。この透過水W3のことを「濯ぎ水」ともいう。
以下、洗浄水供給システム1の各部について詳しく説明する。
【0021】
通水ラインL1は、原水W1を軟水化装置2に導入するものである。通水ラインL1の上流側は、原水W1の供給源(図示せず)に接続されている。通水ラインL1の下流側は、軟水化装置2に接続されている。
【0022】
軟水化装置2は、原水W1に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)をナトリウム型陽イオン交換樹脂(図示せず)により吸着して除去するものである。軟水化装置2は、例えば、樹脂筒(図示せず)と、コントロールバルブ(図示せず)と、塩水を製造し樹脂筒に供給する塩水供給装置(図示せず)とを主体に構成されている。
【0023】
樹脂筒は、陽イオン交換樹脂(図示せず)を収容する。樹脂筒は、陽イオン交換樹脂によって、原水W1に含まれる硬度成分をナトリウムイオンと置換し、軟水を製造する軟水化処理を行う。コントロールバルブは、軟水化装置2の軟水化処理と、陽イオン交換樹脂を再生するための再生処理とを切り換える。コントロールバルブは、制御装置10と電気的に接続(配線は図示せず)されており、制御装置10によって制御可能に構成されている。塩水供給装置は、陽イオン交換樹脂を再生するための塩水を製造し、樹脂筒に供給する。
【0024】
軟水化装置2の下流側には、軟水供給ラインL2が接続されている。軟水供給ラインL2は、軟水化装置2で製造された軟水W2を逆浸透膜装置3に供給するものである。軟水供給ラインL2の下流側の端部は、逆浸透膜装置3に接続されている。
【0025】
逆浸透膜装置3は、軟水化装置2で製造された軟水W2を逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)により、溶存塩類及びシリカの除去された高純度の透過水W3と、溶存塩類及びシリカの濃縮された濃縮水W4とに膜分離処理を行うものである。
逆浸透膜装置3は、軟水供給ラインL2を介して軟水化装置2の下流側に接続されている。
【0026】
逆浸透膜装置3は、上流側に設けられる加圧ポンプ3aと、下流側に設けられるRO膜モジュール3bとを備える。加圧ポンプ3aは、軟水化装置2から供給される軟水W2を加圧し、RO膜モジュール3bに送出する。加圧ポンプ3aは、制御装置10と電気的に接続(配線は図示せず)されており、制御装置10によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0027】
RO膜モジュール3bは、単一又は複数のRO膜エレメント(図示せず)を備えており、これらのRO膜エレメントにより軟水W2を膜分離処理し、透過水W3及び濃縮水W4を製造する。RO膜は、分子量が数十程度の物質の透過を阻止可能な膜である。このRO膜には、ナノ濾過膜も含まれる。ナノ濾過膜は、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度の物質)の透過を阻止可能な液体分離膜である。なお、ナノ濾過膜は、ルーズRO膜と呼ばれることもある。
【0028】
このようなRO膜を有する逆浸透膜装置3は、軟水W2をRO膜に供給しながら、透過水W2を製造すると共に、軟水W2中の溶存塩類及びシリカが濃縮された濃縮水W4を製造する。逆浸透膜装置3には、濃縮水供給ラインL3と、透過水供給ラインL4と、が接続されている。
【0029】
濃縮水供給ラインL3には、上流側から下流側に向けて流量調整弁4、濃縮水貯留タンク5、第1送出ポンプ6及び加熱装置7が設けられている。
濃縮水供給ラインL3は、RO膜モジュール3bからの濃縮水W4の一部を被洗浄物の洗浄水として、濃縮水貯留タンク5を介して加熱装置7へと供給するものである。濃縮水供給ラインL3は、上流側の端部がRO膜モジュール3bに接続され、RO膜モジュール3bからの濃縮水W4を逆浸透膜装置3の外部へ導出する。濃縮水供給ラインL3には、濃縮水の流通を制御する開閉弁(図示せず)が必要に応じて適宜設けられる。
【0030】
流量調整弁4は、濃縮水供給ラインL3における逆浸透膜装置3と濃縮水貯留タンク5との間に設けられている。流量調整弁4は、濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4の流量を調整するものである。流量調整弁4は、例えば、比例制御弁により流量を無段階に調整可能に構成されている。流量調整弁4は、制御装置10と電気的に接続されており、制御装置10によって制御可能に構成されている。
【0031】
濃縮水貯留タンク5は、濃縮水供給ラインL3における流量調整弁4と第1送出ポンプ6との間に設けられている。濃縮水貯留タンク5は、濃縮水W4を貯留するものである。濃縮水貯留タンク5は、濃縮水W4の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0032】
第1送出ポンプ6は、濃縮水貯留タンク5に貯留された濃縮水W4を加熱装置7に向けて送出するものである。第1送出ポンプ6は、濃縮水供給ラインL3における濃縮水貯留タンク5と加熱装置7との間に設けられている。第1送出ポンプ6は、制御装置10と電気的に接続(配線は図示せず)されており、制御装置10によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0033】
加熱装置7は、濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4を加熱することにより、濃縮水W4をアルカリ性に調整するものである。具体的には、加熱装置7は、濃縮水W4のpH値を8以上に調整する。加熱装置7には、例えば、通電量を制御することにより加熱可能な電気ヒータを用いることができる。加熱装置7は、制御装置10と電気的に接続されており、制御装置10によって通電量を制御し、加熱温度を調整可能に構成されている。加熱装置7の下流側には、洗浄水供給ラインL6が接続されている。
【0034】
洗浄水供給ラインL6は、加熱装置7によってpH値を8以上に調整された濃縮水W4を洗浄水W5として被洗浄物へ供給するものである。洗浄水供給システム1のユーザーは、洗浄水供給ラインL6から供給される洗浄水W5を用いて被洗浄物を洗浄することができる。
【0035】
濃縮水供給ラインL3における逆浸透膜装置3と流量調整弁4との間には、分岐部J1が設けられている。この分岐部J1からは、還流ラインL5が分岐している。
還流ラインL5は、濃縮水供給ラインL3から分岐部J1において分岐し、RO膜モジュール3bからの濃縮水W4の残部を、逆浸透膜装置3の上流側の軟水供給ラインL2へ還流する。
【0036】
次に、透過水供給ラインL4側の構成について説明する。
透過水供給ラインL4は、逆浸透膜装置3により製造された透過水W3を被洗浄物の濯ぎ水W3として下流側に供給するものである。透過水供給ラインL4は、上流側の端部をRO膜モジュール3bに接続され、RO膜モジュール3bからの透過水W3を逆浸透膜装置3の外部へ導出する。透過水供給ラインL4には、透過水の流通を制御する開閉弁(図示せず)が必要に応じて適宜設けられる。
【0037】
透過水供給ラインL4には、上流側から下流側に向けて透過水貯留タンク8及び第2送出ポンプ9が設けられている。
透過水貯留タンク8は、透過水W3を貯留するものである。透過水貯留タンク8は、透過水供給ラインL4における逆浸透膜装置3と第2送出ポンプ9との間に設けられている。透過水貯留タンク8は、透過水W3の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0038】
第2送出ポンプ9は、透過水貯留タンク8に貯留された透過水W3を濯ぎ水W3として下流側に送出するものである。第2送出ポンプ9は、透過水供給ラインL4における透過水貯留タンク8の下流側に設けられている。第2送出ポンプ9は、制御装置10と電気的に接続(配線は図示せず)されており、制御装置10によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0039】
制御装置10は、流量調整弁4と電気的に接続されている。制御装置10は、濃縮水W4の流量と透過水W3の流量との比率を調整するように流量調整弁4を制御するものであり、流量調整弁制御部として機能する。つまり、洗浄水供給システム1は、制御装置10によって濃縮水W4の流量と透過水W3の流量との比率を調整することにより、濃縮水W4の濃縮倍率を調整することができるように構成されている。
【0040】
また、制御装置10は、加熱装置7と電気的に接続されている。制御装置10は、加熱装置7の通電量を制御し、加熱温度を調整可能に構成されている。また、図示を省略するが、制御装置10は、軟水化装置2、加圧ポンプ3a、第1送出ポンプ6及び第2送出ポンプ9と電気的に接続されている。制御装置10は、軟水化装置2のコントロールバルブを制御することにより、軟水化装置2の軟水化処理と再生処理とを切り換える。更に、制御装置10は、加圧ポンプ3a、第1送出ポンプ6及び第2送出ポンプ9の運転(駆動及び停止)を制御する。
【0041】
次に、第1実施形態の洗浄水供給システム1による洗浄方法(洗浄動作)について図1を参照しながら説明する。洗浄水供給システム1による洗浄方法は、原水W1に含まれる硬度成分を除去して軟水W2を製造する軟水化工程と、軟水化工程により製造される軟水W2を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水W3及び濃縮水W4を製造する膜分離工程と、膜分離工程により製造される濃縮水W4のpH値を8以上に調整するpH値調整工程と、pH値調整工程によりpH値が調整される濃縮水(洗浄水)W5を使用して被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、膜分離工程により製造される透過水W3を使用して、洗浄工程を経た被洗浄物を濯ぐ濯ぎ工程とを含む。
【0042】
先ず、軟水化工程について説明する。洗浄水供給システム1が運転されると、原水W1は、通水ラインL1を介して軟水化装置2に導入される。原水W1は、軟水化装置2によって原水W1に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を陽イオン交換樹脂(図示せず)により吸着され、除去される。これにより、原水W1は、軟水W2となる。また、原水W1として使用される水道水や地下水は、通常、20〜60mg/L(炭酸カルシウム換算の濃度)のMアルカリ成分(炭酸水素塩や炭酸塩等)を含んでいる。そのため、Mアルカリ成分は、陽イオン交換樹脂を使用した軟水化処理によって炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムとなる。
【0043】
次に、膜分離工程について説明する。軟水化装置2により製造された軟水W2は、軟水供給ラインL2を介して逆浸透膜装置3に供給される。逆浸透膜装置3において、加圧ポンプ3aの駆動によりRO膜の一次側からRO膜に浸透圧以上の圧力がかかると、溶存塩類及びシリカの除去された高純度の透過水W3が、RO膜の二次側に出力される。これにより、濯ぎ水W3が製造される。RO膜を透過しなかった濃縮水W4は、濃縮水供給ラインL3を介して逆浸透膜装置3の外部に排出される。
【0044】
濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4は、流量調整弁4によって流量を調整される。流量調整弁4は、制御装置10によって制御され、濃縮水W4の流量と透過水W3の流量との比率が調整される。つまり、流量調整弁4の弁開度を調整することによって、濃縮水供給ラインL3及び還流ラインL5に流通する濃縮水W4の流量が調整されるため、透過水W3の流量も調整される。その結果、RO膜モジュール3bにおいて、濃縮水W4の濃縮倍率が調整される。具体的には、例えば、毎分1000リットルの流量の原水W1が軟水化装置2に導入された場合、毎分800リットルの流量の透過水W3と、毎分200リットルの流量の濃縮水W4とを製造できるように、流量調整弁4が制御される。これにより、濃縮水W4の濃縮倍率は、略5倍に調整される。
【0045】
なお、濃縮水W4の濃縮倍率は、RO膜表面でのシリカ析出を回避し、且つ透過水W3及び濃縮水W4の各要求量に応じて、1.25〜5倍の範囲で調整される。すなわち、透過水W3及び濃縮水W4の製造水量の比率が2:8〜8:2の範囲で調整される。
このように、濃縮水W4の濃縮倍率を所定範囲に調整して洗浄水供給システム1を運転することにより、RO膜表面でのシリカ析出による透過流束の低下を回避することができる。また、濃縮水W4の濃縮倍率を下げて運転する場合には、被洗浄物の濯ぎに使用する透過水W3の純度が向上するメリットもある。
【0046】
濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4は、流量調整弁4によって流量を調整された後、濃縮水貯留タンク5に貯留される。濃縮水貯留タンク5に貯留された濃縮水W4は、第1送出ポンプ6の駆動により、加熱装置7に供給される。
【0047】
前述したように、原水W1は、Mアルカリ成分を含んでいるため、このMアルカリ成分は、軟水化処理によって炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムとなっている。そのため、濃縮水W4は、炭酸水素ナトリウム成分や炭酸ナトリウムが濃縮されることにより、原水W1よりもpH値が上昇する(Mアルカリ成分濃縮によるpH値上昇効果)。
【0048】
次に、pH値調整工程について説明する。pH値調整工程は、膜分離工程により製造される濃縮水W4を加熱装置7によって加熱することにより、濃縮水W4のpH値を8以上に調整する工程である。加熱装置7に供給された濃縮水W4は、加熱装置7によって加熱される。ここで、逆浸透膜装置3に供給される軟水W2には、原水W1に由来する炭酸が溶解している。この炭酸は、大気中の炭酸ガスと平衡状態にある溶存炭酸ガスが水と反応して生成したものである。そのため、濃縮水W4には、炭酸が濃縮されている。この炭酸の濃縮は、濃縮水W4のpH値を下げる方向に作用する。
【0049】
濃縮水W4を加熱装置7により加熱すると、濃縮水W4の温度上昇に伴って炭酸ガスの溶解度が下がり、炭酸ガスが大気中に放出されると共に、炭酸が炭酸ガスと水に、炭酸水素イオンが炭酸と水酸化物イオンに、炭酸イオンが炭酸水素イオンと水酸化物イオンにそれぞれ解離するので、濃縮水W4のpH値が上昇する(脱炭酸によるpH値上昇効果)。
【0050】
前述したように、濃縮水W4は、炭酸水素ナトリウム成分や炭酸ナトリウムの濃縮によってもpH値が上昇している。そのため、pH値調整工程では、Mアルカリ成分濃縮によるpH値上昇効果と脱炭酸によるpH値上昇効果とによって、濃縮水W4のpH値が8以上に増加し、シリカの溶解度が増加する。また、加熱装置7による加熱によって濃縮水W4の温度が上昇する。そのため、pH値の増加と温度上昇との相乗効果によって、濃縮水W4におけるシリカの溶解度が更に増加する。
【0051】
次に、洗浄工程について説明する。洗浄工程は、pH値調整工程によりpH値が調整された濃縮水W4(洗浄水W5)を使用して被洗浄物を洗浄する工程である。前述したように、pH値調整工程により濃縮水W4をpH値が8以上となるように調整することで、濃縮水W4におけるシリカの溶解度が増加する。そのため、洗浄工程において、濃縮水W4を洗浄水W5として使用しても、被洗浄物へのシリカの析出を抑制することができる。また、アルカリ性の洗浄水W5によって被洗浄物を洗浄することにより、被洗浄物に付着したタンパク質が効率的に溶解又は分解され、除去される。
なお、洗浄工程においては、被洗浄物に付着した油脂の洗浄効果を高めるため、洗浄水W5に界面活性剤等の補助薬剤を添加するように操作してもよい。
【0052】
次に、濯ぎ工程について説明する。濯ぎ工程は、膜分離工程により製造される透過水W3を使用して、洗浄工程を経た被洗浄物を濯ぐ工程である。透過水W3を使用して被洗浄物を濯ぐことにより、溶解又は分解された前記タンパク質が効率的に除去される。
【0053】
以上のように、第1実施形態の洗浄水供給システム1によれば、以下に示す各効果が奏される。
第1実施形態の洗浄水供給システム1は、原水W1から軟水W2を製造する軟水化装置2と、軟水W2から透過水W3及び濃縮水W4を製造する逆浸透膜装置3と、濃縮水W4を被洗浄物の洗浄水W5として供給する濃縮水供給ラインL3及び洗浄水供給ラインL6と、透過水W3を被洗浄物の濯ぎ水W3として供給する透過水供給ラインL4と、濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4のpH値を8以上に調整するように濃縮水W4を加熱する加熱装置7とを備える。
【0054】
そのため、濃縮水W4の加熱により、濃縮水W4のpH値を増加させることができると共に、このpH値の増加と温度上昇との相乗効果によって、シリカの溶解度を更に増加することができる。従って、濃縮水W4を洗浄水W5として使用しても、被洗浄物へのシリカの析出を抑制することができ、被洗浄物を良好に洗浄することができる。また、アルカリ性の洗浄水W5によって被洗浄物を洗浄することにより、被洗浄物に付着したタンパク質を効率的に溶解又は分解し、除去することができる。更に、透過水W3を使用して被洗浄物を濯ぐことにより、溶解又は分解された前記タンパク質を効率的に濯ぎ落とすことができ、被洗浄物を更に良好に洗浄することができる。
【0055】
また、第1実施形態の洗浄水供給システム1は、軟水W2を逆浸透膜装置3に供給する軟水供給ラインL2と、濃縮水W4の流量を調整する流量調整弁4と、濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4の一部を逆浸透膜装置3の上流側に還流する還流ラインL5と、濃縮水W4の流量と透過水W3の流量との比率を調整するように流量調整弁4を制御する制御装置10とを更に備える。
【0056】
そのため、濃縮水W4の流量と透過水W3の流量との比率を調整し、濃縮水W4の濃縮倍率を調整することができる。従って、濃縮水W4の濃縮倍率を所定範囲に調整して洗浄水供給システム1を運転することにより、RO膜表面でのシリカ析出による透過流束の低下を回避することができる。また、濃縮水W4の濃縮倍率を下げて運転することにより、被洗浄物の濯ぎに使用する透過水W3の純度を向上させることができる。
【0057】
また、第1実施形態の洗浄水供給システム1は、濃縮水W4を貯留する濃縮水貯留タンク5と、濃縮水W4を洗浄水W5として送出する第1送出ポンプ6と、透過水W3を貯留する透過水貯留タンク8と、透過水W3を濯ぎ水W3として送出する第2送出ポンプ9とを更に備える。そのため、所定量の濃縮水W4を濃縮水貯留タンク5に貯留することができ、洗浄水W5を安定して供給することができる。また、所定量の透過水W3を透過水貯留タンク8に貯留することができ、濯ぎ水W3を安定して供給することができる。
【0058】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。他の実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
【0059】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の洗浄水供給システム1Bについて図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の第2実施形態の洗浄水供給システム1Bを示す構成図である。
【0060】
第2実施形態の洗浄水供給システム1Bは、原水W1がMアルカリ成分を含まない場合や、原水W1がMアルカリ成分を僅かに含んでいる場合において、原水W1をイオン交換処理し、得られた軟水を更に逆浸透膜処理することで、食器、医療用具、理科学機器等の被洗浄物を洗浄する洗浄水及び濯ぎ水を供給するものである。第2実施形態の洗浄水供給システム1Bは、前記第1実施形態の洗浄水供給システム1の加熱装置7に替えてアルカリ性薬剤添加装置12を備える点が異なる。従って、第2実施形態においては、主としてアルカリ性薬剤添加装置12について説明する。
【0061】
図2に示すように、アルカリ性薬剤添加装置12は、アルカリ性薬剤貯留部12aと、アルカリ性薬剤添加ポンプ12bとを備えている。アルカリ性薬剤貯留部12aは、アルカリ性薬剤を貯留する。アルカリ性薬剤貯留部12aは、アルカリ性薬剤の貯留量を検出するレベルセンサを備えることが好ましい。
【0062】
アルカリ性薬剤添加ポンプ12bは、アルカリ性薬剤貯留部12aに貯留されたアルカリ性薬剤を、濃縮水供給ラインL3の添加部J2を介して濃縮水W4に送出し、添加する。アルカリ性薬剤添加ポンプ12bは、制御装置10と電気的に接続されている。アルカリ性薬剤添加ポンプ12bは、制御装置10によって運転(駆動及び停止)を制御される。濃縮水W4へのアルカリ性薬剤の添加量は、添加後の濃縮水W4のpH値が目標値に維持されるように、アルカリ性薬剤添加装置12の後段に設けたpH値測定装置(図示せず)により測定されたpH値に基づいて、制御装置10によって制御される(例えば、フィードバック制御)。
【0063】
アルカリ性薬剤は、濃縮水W4のpH値を8以上に調整するものである。アルカリ性薬剤としては、主成分としてアルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)を含むものが挙げられる。アルカリ性薬剤は、被洗浄物に付着した油脂の洗浄効果を高めるため、界面活性剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0064】
次に、第2実施形態の洗浄水供給システム1Bによる洗浄方法(洗浄動作)について図2を参照しながら説明する。第2実施形態の洗浄水供給システム1Bによる洗浄方法は、第1実施形態の洗浄水供給システム1による洗浄方法と略同様であり、アルカリ性薬剤添加装置12によるpH値調整工程の動作が異なる。そのため、第1実施形態の洗浄水供給システム1による洗浄方法と同様の部分については重複説明を省略し、アルカリ性薬剤添加装置12によるpH値調整工程の動作について説明する。
【0065】
pH値調整工程は、膜分離工程により製造され濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4に、アルカリ性薬剤添加装置12によってアルカリ性薬剤を添加し、濃縮水W4のpH値を8以上に調整する工程である。
【0066】
濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4は、添加点J2においてアルカリ性薬剤を所定量添加される。このアルカリ性薬剤の添加により、原水W1がMアルカリ成分を含まない場合や、原水W1がMアルカリ成分を僅かに含んでいる場合においても、濃縮水W4のpH値が確実に増加する。
【0067】
以上のように、第2実施形態の洗浄水供給システム1Bによれば、前記第1実施形態の洗浄水供給システム1と同様の効果が奏されると共に、以下に示す各効果が奏される。
第2実施形態の洗浄水供給システム1Bは、原水W1から軟水W2を製造する軟水化装置2と、軟水W2から透過水W3及び濃縮水W4を製造する逆浸透膜装置3と、濃縮水W4を被洗浄物の洗浄水5として供給する濃縮水供給ラインL3及び洗浄水供給ラインL6と、透過水W3を被洗浄物の濯ぎ水W3として供給する透過水供給ラインL4と、濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4のpH値を8以上に調整するように濃縮水W4にアルカリ性薬剤を添加するアルカリ性薬剤添加装置12とを備える。そのため、原水W1がMアルカリ成分を含まない場合や、原水W1がMアルカリ成分を僅かに含んでいる場合においても、濃縮水W4のpH値を確実に増加することができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記第1実施形態において、流量調整弁4は、比例制御弁により流量を無段階に調整可能に構成されるものとして説明したが、これに制限されない。流量調整弁4は、濃縮水供給ラインL3に並列に配置された開閉弁により流量を段階的に調整可能に構成されてもよい。
【0069】
また、前記第1実施形態において、加熱装置7には、電気ヒータを用いたが、濃縮水W4を所定温度まで加熱することができれば、これに制限されない。加熱装置7として熱交換器を用い、間接的に加熱することもできる。更に、加熱装置7は、濃縮水貯留タンク5に付属させることもでき、貯留された濃縮水W4を加熱するようにしてもよい。
【0070】
また、前記第2実施形態において、アルカリ性薬剤は、濃縮水供給ラインL3を流通する濃縮水W4に添加するように構成しているが、軟水供給ラインL2を流通する軟水W2に添加するように構成してもよい。このように構成することにより、軟水W2のpH値の増加によりシリカの溶解度が増加するので、濃縮に伴うRO膜表面でのシリカの析出を確実に防止することができる。
【0071】
また、前記第1実施形態及び前記第2実施形態において、透過水W3は、濯ぎ工程における濯ぎ水としてのみ使用されているが、洗浄工程における洗浄水の一部として使用してもよい。すなわち、洗浄工程を前洗浄工程及び後洗浄工程の2工程とし、前洗浄工程で被洗浄物を濃縮水W2で洗浄し、更に後洗浄工程で被洗浄物を透過水W3で洗浄するようにしてもよい。本発明における逆浸透膜装置3は、透過水W3の流量及び濃縮水W4の流量の比率を調整可能な流量調整弁4を備えているので、ユーザーが使用する洗浄装置のプロセスの要求に応じて、水質の異なる透過水W3及び濃縮水W4の製造量を任意に変更することができる。
【実施例】
【0072】
次に、第1実施形態の洗浄水供給システム1により供給された濃縮水W4を用いて被洗浄物を洗浄した例について説明する。
【0073】
〔実施例1〕
被洗浄物
ヘパリン添加羊血液に硫酸プロタミンを混和した人工血液を鉗子に塗布し、凝血させたものを被洗浄物とした。
洗浄操作
逆浸透膜装置3により、pH値が7.9の濃縮水W4を製造し、この濃縮水W4を加熱装置7によって50℃に加熱してpH値が8.8の洗浄水W5を製造した。加熱装置7としては、減圧沸騰可能な加熱装置(減圧沸騰洗浄器)を用いた。そして、製造した洗浄水W5に被洗浄物を浸漬し、洗浄水W5を流動させながら、50℃の温度条件で15分間洗浄を行った。
シリカ析出の確認
洗浄後の被洗浄物を目視で観察し、シリカ析出の有無を確認した。結果を表1に示す。
残留血液量の定量
洗浄後の被洗浄物を水酸化ナトリウム水溶液中で加熱し、被洗浄物に残留している人工血液を溶解させた。この溶解液(試験液)1容量に対し、ナカライテスク社製「プロテインアッセイCCB溶液(5倍濃縮)」を0.25容量加えて撹拌し、10分間静置した後、波長595nmの吸光度を測定した。そして、予め作成しておいた検量線に基づいて、試験液中のタンパク質量を求め、残留血液量の指標とした。結果を表1に示す。なお、タンパク質量は、被洗浄物1個あたりの残留タンパク質量として示した。
【0074】
〔比較例1〕
被洗浄物
ヘパリン添加羊血液に硫酸プロタミンを混和した人工血液を鉗子に塗布し、凝血させたものを被洗浄物とした。
洗浄操作
逆浸透膜装置3を使用せず、pH値が7.5の原水W1を加熱装置7によって50℃に加熱してpH値が8.5の比較用洗浄水を製造した。加熱装置7としては、減圧沸騰可能な加熱装置(減圧沸騰洗浄器)を用いた。そして、製造した比較用洗浄水に被洗浄物を浸漬し、比較用洗浄水を流動させながら、50℃の温度条件で15分間洗浄を行った。
シリカ析出の確認
洗浄後の被洗浄物を目視で観察し、シリカ析出の有無を確認した。結果を表1に示す。
残留血液量の定量
洗浄後の被洗浄物を水酸化ナトリウム水溶液中で加熱し、被洗浄物に残留している人工血液を溶解させた。この溶解液(試験液)1容量に対し、ナカライテスク社製「プロテインアッセイCCB溶液(5倍濃縮)」を0.25容量加えて撹拌し、10分間静置した後、波長595nmの吸光度を測定した。そして、予め作成しておいた検量線に基づいて、試験液中のタンパク質量を求め、残留血液量の指標とした。結果を表1に示す。なお、タンパク質量は、被洗浄物1個あたりの残留タンパク質量として示した。
【0075】
【表1】

【0076】
〔実施例2〕
被洗浄物
PEREG社製の内腔洗浄評価用インジケータ(商品名:TOSI LumCheck)を専用デバイスに収容したものを被洗浄物とした。なお、当該インジケータは、人工血液として牛血精製物が塗布された状態で市販されている。
洗浄操作
逆浸透膜装置3により、pH値が7.9の濃縮水W4を製造し、この濃縮水W4を加熱装置7によって50℃に加熱してpH値が8.8の洗浄水W5を製造した。加熱装置7としては、減圧沸騰可能な加熱装置(減圧沸騰洗浄器)を用いた。そして、製造した洗浄水W5に被洗浄物を浸漬し、洗浄水W5を流動させながら、50℃の温度条件で15分間洗浄を行った。
シリカ析出の確認
洗浄後の被洗浄物を目視で観察し、シリカ析出の有無を確認した。結果を表2に示す。
残留血液量の定量
洗浄後の被洗浄物を水酸化ナトリウム水溶液中で加熱し、被洗浄物に残留している人工血液を溶解させた。この溶解液(試験液)1容量に対し、ナカライテスク社製「プロテインアッセイCCB溶液(5倍濃縮)」を0.25容量加えて撹拌し、10分間静置した後、波長595nmの吸光度を測定した。そして、予め作成しておいた検量線に基づいて、試験液中のタンパク質量を求め、残留血液量の指標とした。結果を表2に示す。なお、残留タンパク質量は、被洗浄物1個あたりのタンパク質量として示した。
【0077】
〔比較例2〕
被洗浄物
PEREG社製の内腔洗浄評価用インジケータ(商品名:TOSI LumCheck)を専用デバイスに収容したものを被洗浄物とした。なお、当該インジケータは、人工血液として牛血精製物が塗布された状態で市販されている。
洗浄操作
逆浸透膜装置3を使用せず、pH値が7.5の原水W1を加熱装置7によって50℃に加熱してpH値が8.5の比較用洗浄水を製造した。加熱装置7としては、減圧沸騰可能な加熱装置(減圧沸騰洗浄器)を用いた。そして、製造した比較用洗浄水に被洗浄物を浸漬し、比較用洗浄水を流動させながら、50℃の温度条件で15分間洗浄を行った。
シリカ析出の確認
洗浄後の被洗浄物を目視で観察し、シリカ析出の有無を確認した。結果を表2に示す。
残留血液量の定量
洗浄後の被洗浄物を水酸化ナトリウム水溶液中で加熱し、被洗浄物に残留している人工血液を溶解させた。この溶解液(試験液)1容量に対し、ナカライテスク社製「プロテインアッセイCCB溶液(5倍濃縮)」を0.25容量加えて撹拌し、10分間静置した後、波長595nmの吸光度を測定した。そして、予め作成しておいた検量線に基づいて、試験液中のタンパク質量を求め、残留血液量の指標とした。結果を表2に示す。なお、残留タンパク質量は、被洗浄物1個あたりのタンパク質量として示した。
【0078】
【表2】

【0079】
〔評価〕
表1及び表2に示すように、実施例1及び実施例2は、シリカが濃縮された濃縮水W4を洗浄に使用しているにもかかわらず、シリカが濃縮されていない原水W1を洗浄に使用した比較例1及び比較例2と同様に、被洗浄物上にシリカの析出が見られなかった。また、実施例1は、比較例1に対して残留タンパク質量が63%程度に抑制されており、被洗浄物に付着した血液の洗浄効果が高いことが分かる。更に、実施例2においても、比較例2に対して残留タンパク質量が71%程度に抑制されており、被洗浄物に付着した血液の洗浄効果が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0080】
1,1B 洗浄水供給システム
2 軟水化装置
3 逆浸透膜装置
4 流量調整弁
5 濃縮水貯留タンク
6 第1送出ポンプ(第1送出装置)
7 加熱装置(pH値調整装置)
8 透過水貯留タンク
9 第2送出ポンプ(第2送出装置)
10 制御装置(流量調整弁制御部)
12 アルカリ性薬剤添加装置(pH値調整装置)
L2 軟水供給ライン
L3 濃縮水供給ライン
L4 透過水供給ライン
L5 還流ライン
L6 洗浄水供給ライン(濃縮水供給ライン)
W1 原水
W2 軟水
W3 透過水(濯ぎ水)
W4 濃縮水
W5 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に含まれる硬度成分を除去して軟水を製造する軟水化装置と、
前記軟水化装置により製造される軟水を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水及び濃縮水を製造する逆浸透膜装置と、
前記逆浸透膜装置により製造される濃縮水を被洗浄物の洗浄水として供給する濃縮水供給ラインと、
前記逆浸透膜装置により製造される透過水を前記被洗浄物の洗浄水又は濯ぎ水として供給する透過水供給ラインと、
濃縮水のpH値を8以上に調整するpH値調整装置と、
を備える洗浄水供給システム。
【請求項2】
前記pH値調整装置は、濃縮水を加熱する加熱装置である請求項1に記載の洗浄水供給システム。
【請求項3】
前記pH値調整装置は、濃縮水又は軟水にアルカリ性薬剤を添加するアルカリ性薬剤添加装置である請求項1に記載の洗浄水供給システム。
【請求項4】
前記軟水化装置により製造される軟水を前記逆浸透膜装置に供給する軟水供給ラインと、
前記濃縮水供給ラインに設けられ濃縮水の流量を調整する流量調整弁と、
前記濃縮水供給ラインにおける前記流量調整弁の上流側に一端が接続されると共に、前記軟水供給ラインにおける前記逆浸透膜装置の上流側に他端が接続され、前記濃縮水供給ラインを流通する濃縮水の一部を前記逆浸透膜装置の上流側に還流する還流ラインと、
濃縮水の流量と透過水の流量との比率を調整するように前記流量調整弁を制御する流量調整弁制御部と、
を更に備える請求項1から3のいずれかに記載の洗浄水供給システム。
【請求項5】
前記濃縮水供給ラインに設けられ濃縮水を貯留する濃縮水貯留タンクと、
前記濃縮水貯留タンクの下流側に設けられ該濃縮水貯留タンク内の濃縮水を洗浄水として送出する第1送出装置と、
前記透過水供給ラインに設けられ透過水を貯留する透過水貯留タンクと、
前記透過水貯留タンクの下流側に設けられ該透過水貯留タンク内の透過水を洗浄水又は濯ぎ水として送出する第2送出装置と、
を更に備える請求項1から4のいずれかに記載の洗浄水供給システム。
【請求項6】
原水に含まれる硬度成分を除去して軟水を製造する軟水化工程と、
前記軟水化工程により製造される軟水を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水及び濃縮水を製造する膜分離工程と、
前記膜分離工程により製造される濃縮水のpH値を8以上に調整するpH値調整工程と、
前記pH値調整工程によりpH値が調整される濃縮水を使用して被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、
前記膜分離工程により製造される透過水を使用して、前記洗浄工程を経た前記被洗浄物を濯ぐ濯ぎ工程と、
を含む洗浄方法。
【請求項7】
原水に含まれる硬度成分を除去して軟水を製造する軟水化工程と、
前記軟水化工程により製造される軟水を逆浸透膜により膜分離処理し、透過水及び濃縮水を製造する膜分離工程と、
前記膜分離工程により製造される濃縮水のpH値を8以上に調整するpH値調整工程と、
前記pH値調整工程によりpH値が調整される濃縮水を使用して被洗浄物を洗浄する前洗浄工程と、
前記膜分離工程により製造される透過水を使用して、前記前洗浄工程を経た前記被洗浄物を洗浄する後洗浄工程と、
前記膜分離工程により製造される透過水を使用して、前記後洗浄工程を経た前記被洗浄物を濯ぐ濯ぎ工程と、
を含む洗浄方法。
【請求項8】
前記pH値調整工程は、濃縮水を加熱し、又は濃縮水若しくは軟水にアルカリ性薬剤を添加することによりpH値を調整する請求項6又は7に記載の洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−83683(P2011−83683A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237552(P2009−237552)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】