説明

洗浄装置及び洗浄方法

【課題】被洗浄物から剥離して洗浄水の液面に浮遊した油分を効果的に除去することができる洗浄装置及び洗浄方法を得る。
【解決手段】ガラスリング18の内周面18Aと接触する洗浄水Wの液面の縁部Eが、液面の一般部Gに比べて鉛直方向で高くなっている。このため、洗浄槽12に供給された洗浄水Wによって溢れ出た洗浄水W及び洗浄水Wの液面に浮遊した油分Aは、回収筒34に流れ込む。このように、液面に浮遊する油分Aが効果的に、回収筒34に流れ込んで回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置、及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗浄槽から洗浄水をオーバーフローさせながら、洗浄槽に浸漬された円筒状基材(被洗浄物)の表面から油分等を洗浄する洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−290724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、被洗浄物から剥離して洗浄水の液面に浮遊した油分を効果的に除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に洗浄装置は、油分が表面に付着した被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、前記洗浄槽の下側から前記洗浄槽の内部に洗浄水を供給する洗浄水供給装置と、前記洗浄水供給装置によって前記洗浄槽に供給された洗浄水の液面より低い位置に上端の開口部が設けられると共に、前記洗浄水供給装置によって前記洗浄槽に供給された洗浄水によって溢れ出た洗浄水及び前記洗浄水の液面に浮遊した油分を前記開口部から回収する回収装置と、前記洗浄槽に供給された前記洗浄水の液面の縁部が接するように配置され、前記洗浄水の液面の縁部と接する部分がガラスとされた接触部材と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る洗浄装置は、請求項1に記載において、前記回収装置は、前記開口部から回収された洗浄水及び油分から油分を除去する除去部材を備え、前記洗浄水供給装置は、前記除去部材によって油分が除去された洗浄水を前記洗浄槽に供給することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る洗浄装置は、請求項1又は2に記載の洗浄装置において、前記洗浄槽に浸漬された被洗浄物を保持する保持部材が設けられ、前記保持部材は、ガラス製とされるか、又はガラスで表面が被覆されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る洗浄装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の洗浄装置において、前記回収装置の前記開口部は、上方から見て、前記洗浄槽の中央部に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る洗浄装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の洗浄装置において、前記油分は灯油であって、前記洗浄水は、40°C以上の温水であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る洗浄方法は、請求項1〜5の何れか1項に記載された洗浄装置を用いて被洗浄物に付着した油分を洗浄する洗浄方法であって、洗浄水が供給された洗浄槽に油分が付着した被洗浄物を浸漬させる工程と、決められた時間が経過した後に、前記被洗浄物を前記洗浄槽から引き上げる工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の洗浄装置によれば、洗浄水の液面の縁部と接する部分がガラスとされた接触部材が設けられていない場合と比して、被洗浄物から剥離して洗浄水の液面に浮遊した油分を効果的に除去することができる。
【0012】
本発明の請求項2の洗浄装置によれば、洗浄水供給装置が、新たな洗浄水を洗浄槽に供給する場合と比して、洗浄コストを抑える(安価にする)ことができる。
【0013】
本発明の請求項3の洗浄装置によれば、保持部材の表面がガラス以外の金属等で成形(形成)されている場合と比して、被洗浄物に油分が再付着するのを抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項4の洗浄装置によれば、開口部が上方から見て洗浄槽の中央からずれて配置されている場合と比して、効果的に洗浄水の液面に浮遊する油分を回収することができる。
【0015】
本発明の請求項5の洗浄装置によれば、洗浄水が例えば40°Cより低い場合と比して、効果的に被洗浄物から油分である灯油を除去することができる。
【0016】
本発明の請求項6の洗浄方法によれば、請求項1〜5の何れか1項に記載の洗浄装置を用いない場合と比して、被洗浄物から剥離して洗浄水の液面に浮遊した油分を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置を示した構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る洗浄装置に用いられた洗浄槽を示した正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る洗浄装置に用いられた洗浄槽を示した正面図(部分拡大図)である。
【図4】本発明の実施形態に係る洗浄装置に用いられた洗浄槽を示した正面図(部分拡大図)である。
【図5】本発明の実施形態に係る洗浄装置に用いられた洗浄槽との比較のために示された洗浄槽を示した正面図(部分拡大図)である。
【図6】本発明の実施形態に係る洗浄装置に用いられた回収装置を示した正面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る洗浄方法で洗浄された被洗浄物に残留した油分量を表で示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る洗浄装置及び洗浄方法の一例について図1〜図7に従って説明する。なお図中に示す矢印UPは鉛直方向上方を示す。
【0019】
〔被洗浄物20〕
円筒状の被洗浄物20の材質としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄等の金属又はこれらの合金等が挙げられる。
【0020】
一例として、被洗浄物20には、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削等の前処理が行われ、被洗浄物20は通常、鏡面切削される。或いは、被洗浄物20の表面は、干渉縞防止等の目的で非鏡面としたり、又は、凹凸を付与する粗面化処理がなされる。この際に、被洗浄物20の表面には、油分や金属の切粉が付着することがある。
【0021】
〔洗浄装置(全体構成)〕
図1に示されるように、洗浄装置10は、内部に洗浄水Wが溜められると共に油分Aが表面に付着した円筒状の被洗浄物20が浸漬される円筒状の洗浄槽12と、この洗浄槽12の下側(下方)から洗浄槽12の内部に洗浄水Wを供給する洗浄水供給装置14と、洗浄水供給装置14によって洗浄槽12に供給された洗浄水Wによって洗浄槽12から溢れ出た洗浄水Wを回収する回収装置16と、を含んで構成されている。
【0022】
(洗浄槽)
洗浄槽12は、ステンレス等の金属で成形(形成)され、底板12Aを有する円筒状とされており、洗浄槽12の内部には、洗浄水Wが供給されて溜められている。
【0023】
さらに、洗浄槽12には、洗浄槽12の内周面に沿って、洗浄水Wの液面の縁部Eと接するように、ガラスで成形された接触部材の一例としてのガラスリング18が設けられている。つまり、洗浄水Wの液面の縁部Eとは、洗浄水Wの液面におけるガラスリング18の内周面と接する部分である。
【0024】
また、洗浄装置10には、円筒状の被洗浄物20を保持する保持部材の一例としてのチャック52が設けられ、チャック52を上下移動させることで、被洗浄物20を洗浄槽12の洗浄水Wに浸漬させ、又は洗浄槽12から引き上げることができるようになっている。なお、ガラスリング18及びチャック52等についての詳細は、後述する。
【0025】
(洗浄水供給装置)
この洗浄槽12に洗浄水Wを供給する洗浄水供給装置14は、洗浄槽12の底板12Aに取り付けられ、洗浄槽12の内部に供給される洗浄水Wが噴射されるノズル22と、ノズル22に洗浄水Wを送り出すポンプ24と、ノズル22とポンプ24との間に設けられて洗浄槽12に供給される洗浄水Wからゴミ等を取り除くフィルタ26と、を備えて構成されている。そして、ノズル22とフィルタ26とは、ホース28で接続され、フィルタ26とポンプ24とはホース30で接続されている。
【0026】
以上の構成により、図2に示されるように、ノズル22から噴射された洗浄水Wによって生じる洗浄水Wの流れにより、洗浄槽12に浸漬された被洗浄物20の表面に付着した油分Aの被洗浄物20からの剥離が促進され、油分Aが洗浄水Wの液面に浮遊するようになっている。尚、油分Aの被洗浄物20からの剥離を促進させるためには、図1および図2に示すように、ノズル22を被洗浄物20の真下に設け、ノズル22から噴射された洗浄水Wによって生じる洗浄水Wの流れを直接被洗浄物に当てることが望ましい。
【0027】
(回収装置)
洗浄槽12に供給された洗浄水Wによって溢れ出た洗浄水W及び洗浄水Wの液面に浮遊した油分Aを回収する回収装置16には、洗浄槽12に供給された洗浄水Wの液面より低い位置に上端の開口部34Aが配置され、鉛直方向に延びるアクリル等で成形された円筒状の回収筒34が設けられている。ここで、開口部34Aは、上方からみて、洗浄槽12の中央部に配置されている。
【0028】
さらに、回収装置16には、図1、図6に示されるように、回収筒34によって回収した洗浄水W及び油分Aが溜められる回収槽36が設けられている。
【0029】
この回収槽36は、回収筒34から回収された洗浄水W等がホース32を通って流れ込む第一貯留部38と、第一貯留部38と壁部42で仕切られると共に、前述したポンプ24に吸い込まれる洗浄水Wを貯留する第二貯留部40とを備えている。そして、第一貯留部38と第二貯留部40とは、壁部42の下端部で繋がっている。
【0030】
また、第一貯留部38には、水よりも油が付着しやすい(親油性が高い)ポリエチレンテレフタレートで成形された筒状の除去部材44が複数個設けられ、夫々の除去部材44は鉛直方向に延びるように配置され、水平方向に並べられている。なお、本実施形態では、市販のペットボトルの底に孔を空け、これを除去部材44として用いている。
【0031】
さらに、除去部材44の上端より上方であって、第一貯留部38の壁面には、第一貯留部38に流れ込んだ洗浄水Wの液面に浮遊する油分Aを、回収槽36の外部へ排出する排出管48の基端部が固定されている。そして、排出管48の先端部から排出された油分が蓄積される蓄積タンク50が回収槽36と並んで設けられている。
【0032】
一方、第二貯留部40の壁面には、ホース46の基端部が固定される送出管45が固定され、基端部が送出管45に固定されたホース46の先端部は、ポンプ24に固定されている。
【0033】
以上の構成により、図3に示されるように、洗浄槽12に供給された洗浄水Wによって溢れ出た洗浄水W及び洗浄水Wの液面に浮遊した油分Aは、回収筒34の開口部34Aから回収筒34に流れ込む。そして、図6に示されるように、回収筒34を通って第一貯留部38に流れ込んだ油分Aは、第一貯留部38の上部から第一貯留部38の下部に向って流れる間に、除去部材44に一時的に付着する。除去部材44に一時的に付着した油分Aは、除去部材44から剥離して第一貯留部38の液面に浮遊し、排出管48を通して蓄積タンク50に蓄積されるようになっている。
【0034】
次に、洗浄槽12の内部に設けられたガラスリング18及び被洗浄物20を保持するチャック52等について説明する。
【0035】
(ガラスリング18)
図2に示されるように、ガラスリング18は、洗浄槽12の内周面に沿って設けられ、リング状とされており、図示せぬ固定具で洗浄槽12に固定されている。
【0036】
さらに、洗浄槽12に溜められた洗浄水Wの液面の縁部Eがガラスリング18の内周面に接するようになっている。つまり、ガラスリング18の上下端の間に、開口部34Aが配置されている。
【0037】
図4に示されるように、ガラスリング18と接触する洗浄水Wの液面の縁部Eは、ガラスリング18の内周面18Aと洗浄水Wとの表面張力と、ガラスリング18の内周面18Aと空気との表面張力との釣り合いにより、液面の一般部Gに比べて鉛直方向で高くなる。そして、矢印で示すように、洗浄水Wの液面に浮遊する油分Aは、ガラスリング18の内周面から離れるようになる。言換えれば、縁部Eを液面の一般部Gより鉛直方向で高くするために、ガラスで成形されたガラスリング18が用いられている。
【0038】
なお、図5に示されるように、洗浄水Wの液面の縁部E’が、本実施形態のように、ガラス面ではなく、ステンレス面19に接触する場合は、縁部E’は、ステンレス面19と洗浄水Wとの表面張力と、ステンレス面19と空気との表面張力との釣り合いにより、液面の一般部Gに比べて鉛直方向で低くなる。そして、矢印で示すように、洗浄水Wの液面に浮遊する油分Aは、スレンレス面19に接近し、ステンレス面19付着するようになる。そうすると、当該ステンレス面19に付着した油分Aは、再度洗浄水Wの液面に戻るため、被洗浄物20を洗浄水Wから引き上げる際に、当該再度洗浄水Wの液面に戻った油分Aが被洗浄物20に再付着することになる。
【0039】
(チャック52)
一方、図2に示されるように、円筒状の被洗浄物20を保持するチャック52はガラスで成形(形成)されている。そして、チャック52は、鉛直方向に延びると共に図示せぬ駆動部から駆動力を受けて上下移動する鉛直部52Aと、鉛直部52Aの下端部に端部が固定されて被洗浄物20が載せられる載置部52Bと、載置部52Bから上方に突出して載せられた被洗浄物20の位置ずれを抑制する突出部52Cとを備えている。尚、油分Aの被洗浄物20からの剥離を促進させるためには、載置部52Bが網目である、または載置部52Bに複数の小穴があいていることが望ましい。載置部52Bがかかる構成であれば、ノズル22を被洗浄物20の真下に設けた場合に、ノズル22から噴射された洗浄水Wによって生じる洗浄水Wの流れを直接被洗浄物に当てることができるからである。
【0040】
〔洗浄方法(作用)〕
次に、洗浄装置10の作用を、洗浄装置10を用いて被洗浄物20を洗浄する洗浄方法と共に説明する。
【0041】
前述したように、被洗浄物20には、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削等の前処理が行われ、被洗浄物20は通常、鏡面切削される。或いは、被洗浄物20の表面は、干渉縞防止等の目的で非鏡面としたり、又は、凹凸を付与する粗面化処理がなされる。この際に、被洗浄物20の表面には、油分の一例としての灯油(切削油)や金属の切粉が付着する。
【0042】
図1、図2に示されるように、油分Aが表面に付着した被洗浄物20を、チャック52の載置部52Bに載せる。この状態で、チャック52を鉛直方向下方へ移動させ、洗浄水供給装置14により洗浄水Wが内部に供給された洗浄槽12に被洗浄物20を浸漬させる。
【0043】
そして、ポンプ24を可動させることでノズル22から噴射される洗浄水Wによって生じる洗浄水Wの流れにより、洗浄槽12に浸漬された被洗浄物20の表面に付着した油分Aが被洗浄物20から剥離して洗浄水Wの液面に浮遊する。ここで、洗浄水Wには、一例として40°Cに暖めた井水(井戸水)が用いられている。
【0044】
図4に示されるように、ガラスリング18の内周面18Aと接触する洗浄水Wの液面の縁部Eが、液面の一般部Gに比べて鉛直方向で高くなっている。このため、矢印で示すように、洗浄水Wの液面に浮遊する油分Aは、ガラスリング18に付着しない。しかも、ガラスリング18の表面は、平滑とされているため、何らかの理由により油分Aがガラスリング18に付着したとしてもすぐに剥離する。
【0045】
図3に示されるように、洗浄槽12に供給された洗浄水Wによって溢れ出た洗浄水W及び洗浄水Wの液面に浮遊した油分Aは、回収筒34の開口部34Aから回収筒34に流れ込む。ここで、前述したように、洗浄水Wの液面に浮遊する油分Aは、ガラスリング18の内周面に付着しないため、液面に浮遊する油分Aが効果的に、回収筒34に流れ込む。
【0046】
図1、図6に示されるように、回収筒34を通って回収装置16の第一貯留部38に流れ込んだ油分Aは、第一貯留部38の上部から第一貯留部38の下部に向って流れる。第一貯留部38の上部から第一貯留部38の下部に向って洗浄水Wと共に流れる油分Aは、油分が付着しやすいポリエチレンテレフタレートで成形された除去部材44に一時的に付着する。そして、除去部材44に一時的に付着した油分Aは、除去部材44から剥離して第一貯留部38の液面に浮遊し、排出管48を通して蓄積タンク50に蓄積される。
【0047】
一方、除去部材44を通過した洗浄水Wは、壁部42の下側を通って第二貯留部40に流れ込む。また、第二貯留部40に流れ込んだ洗浄水Wは、ホース46を通ってポンプ24に吸い込まれ、さらに、ポンプ24に吸い込まれた洗浄水Wは、ホース30を通ってフィルタ26を通過する。フィルタ26を通過することで切粉等のゴミが除去された洗浄水Wは、ホース28を通ってノズル22から被洗浄物20に向けて噴射される。
【0048】
被洗浄物20を洗浄槽12に浸漬させた時間が、予め定められた時間(一例として30秒)に達すると、チャック52を鉛直方向上方へ移動させ、被洗浄物20を洗浄槽12から引き上げ、被洗浄物20の表面に付着した油分Aを洗浄する。
【0049】
このように、ガラスリング18を用いることで、洗浄水Wの液面の縁部Eが、液面の一般部Gに比べて鉛直方向で高くなり、液面に浮遊する油分Aは、ガラスリング18の内周面から離れる。このため、液面に浮遊する油分Aが効果的に、回収筒34に流れ込んで回収される。
【0050】
また、液面に浮遊する油分Aが効果的に回収されるため、被洗浄物20を引き上げる際に、油分Aが被洗浄物20に再付着するのが抑制される。
【0051】
また、油分Aが被洗浄物20に再付着するのが抑制されるため、被洗浄物20の洗浄回数が減らされる(洗浄槽の数が減らされる)。
【0052】
図7は油分Aを灯油とした場合の実験データである。図7に示されるように、洗浄槽12に浸漬する前(洗浄投入前)に被洗浄物20に付着していた70mg/cmの油分Aが、40°Cに暖めた井水(井戸水)を用いて被洗浄物20を洗浄(洗浄槽12に、1回、被洗浄物20を30秒間浸漬させる)することで、6.9mg/cmになるのが分かる。
【0053】
同様に、界面活性剤を含んだ洗浄水を使用した場合は、洗浄投入前に被洗浄物に付着していた70mg/cmの油分Aが、被洗浄物を洗浄(洗浄槽に、4〜6回、被洗浄物を30秒間浸漬させる)することで、6.4mg/cmになるのが分かる。
【0054】
また、20°Cの井水を用いて場合は、洗浄投入前に被洗浄物に付着していた70mg/cmの油分Aが、被洗浄物を洗浄(洗浄槽に、1回、被洗浄物を30秒間浸漬させる)することで21.5mg/cmになる。さらに、60°Cの井水を用いて場合は、洗浄投入前に被洗浄物に付着していた70mg/cmの油分Aが、被洗浄物を洗浄(洗浄槽に、1回、被洗浄物を30秒間浸漬させる)することで6.4mg/cmになるのが分かる。
【0055】
ここで、例えば、灯油が洗浄により無くたったと言えるために洗浄後の油分量を7mg/cm以下に抑えることを目標とする場合には、40°Cの井水及び60°Cの井水の評価が○となる。
【0056】
なお、油分の付着量の測定については、油分濃度計OCMA−220(堀場製作所)を用いて測定した。
【0057】
また、この濃度計の測定原理としては、測定対象物に付着している油分をH−997(試料水あるいは測定対象物から溶媒)に抽出(溶解)した後、抽出液の波長3.4〜3.5μm付近における赤外線の吸収量の変化から、試料に含まれる油分濃度・油分量を測定するものである。
【0058】
以上説明したように、40°C以上の井水を用いることで、界面活性剤を含んだ洗浄水を用いた場合と比して、同等の油分Aが被洗浄物20から除去される。また、このように、40°Cの井水を用いることで、界面活性剤を含んだ洗浄水を用いた場合と比して、界面活性剤が不要になるので、洗浄コストが低く(安価に)なる。
【0059】
また、チャック52がガラスで成形されていることで、チャック52に油分Aが付着するのが抑制される。このため、油分Aが被洗浄物20に再付着するのが効果的に抑制される。
【0060】
また、回収装置16によって回収された洗浄水W及び油分Aから除去部材44が油分Aを除去し、油分Aが除去された洗浄水Wを再度洗浄槽12に供給することで、洗浄水Wが循環し、さらに、洗浄コストが低くなる。
【0061】
また、洗浄水Wを循環させることで、廃液が減らされる。
【0062】
また、回収装置16の回収筒34の開口部34Aを、上方から見て、洗浄槽12の中央部に配置することで、開口部が中央からずれている場合と比して、効果的に液面に浮遊する油分Aが回収される(特に複数個の被洗浄物20を洗浄する場合)。
【0063】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0064】
例えば、上記実施形態では、40°Cの井水を用いて説明したが、40°Cと異なる水温の水道水等であってもよく、従来のように界面活性剤を含む洗浄水等であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ガラスリング18はガラスを成形して製造されたが、洗浄水Wの液面の縁部Eと接する部位がガラスであればよく、液面の縁部Eと接する部位にガラスコーティングを施したものであってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、ガラスリング18を用いることで、洗浄水Wの液面の縁部Eをガラスに接しさせたが、洗浄槽をガラスで成形することで、洗浄水Wの液面の縁部Eをガラスに接しさせてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、洗浄槽12の洗浄水Wを超音波等で振動させ、被洗浄物から油分を剥離させてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、電子写真感光体(画像形成装置の静電潜像保持体)を製造する際に、本実施形態に係る洗浄方法を用いてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、被洗浄物20およびノズル22等が1個の場合を示したが、被洗浄物20およびノズル22等は、複数であっても良い。
【0070】
また、上記実施形態では、円筒状の被洗浄物20を用いたものを示したが、これに限るものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
10 洗浄装置
12 洗浄槽
14 洗浄水供給装置
16 回収装置
18 ガラスリング(接触部材の一例)
20 被洗浄物
34A 開口部
44 除去部材
52 チャック(保持部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分が表面に付着した被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、
前記洗浄槽の下側から前記洗浄槽の内部に洗浄水を供給する洗浄水供給装置と、
前記洗浄水供給装置によって前記洗浄槽に供給された洗浄水の液面より低い位置に上端の開口部が設けられると共に、前記洗浄水供給装置によって前記洗浄槽に供給された洗浄水によって溢れ出た洗浄水及び前記洗浄水の液面に浮遊した油分を前記開口部から回収する回収装置と、
前記洗浄水の液面の縁部が接するように配置され、前記洗浄水の液面の縁部と接する部分がガラスとされた接触部材と、
を備える洗浄装置。
【請求項2】
前記回収装置は、前記開口部から回収された洗浄水及び油分から油分を除去する除去部材を備え、
前記洗浄水供給装置は、前記除去部材によって油分が除去された洗浄水を前記洗浄槽に供給する請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽に浸漬された被洗浄物を保持する保持部材が設けられ、
前記保持部材は、ガラス製とされるか、又はガラスで表面が被覆されている請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記回収装置の前記開口部は、上方から見て、前記洗浄槽の中央部に配置されている請求項1〜3の何れか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記油分は灯油であって、前記洗浄水は、40°C以上の温水である請求項1〜4の何れか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
洗浄水が供給された請求項1〜5の何れか1項に記載の洗浄装置の洗浄槽に油分が付着した被洗浄物を浸漬する工程と、
決められた時間が経過した後に、前記被洗浄物を前記洗浄槽から引き上げる工程と、
を備える洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−120964(P2012−120964A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272663(P2010−272663)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【特許番号】特許第4780247号(P4780247)
【特許公報発行日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】