説明

洗浄装置

【課題】ツール交換、および精密な洗浄が可能な洗浄装置とする。
【解決手段】ツール移動装置(3)と、ツールTを保持するツールクランプ部4と、種々のツールを収容する格納部(5)と、ツール交換装置(6)と、を備え、ツールホルダ4には、ツールTの引き込み方向に幅が狭くなるテーパ部34aを有する溝部34が形成され、ツールクランプ部4は、凹部41eを有する筒状に形成されツールホルダ3を凹部41eに内装して着脱自在に保持するボディ41と、凹部41eから出没するようにボディ41に配設されツールホルダ3の溝部34に嵌入して係止するボール42と、ボール42に接合して出没させるピストン43と、ピストン43を往復移動させる圧力流体供給流路Lと、を備え、ピストン43によりボール42をテーパ部34aに押し込みツールホルダ3を引き込んでツールTの回転方向を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に係り、特に、ツール交換装置を備えツールの回転方向を精密に規制するツールクランプ部を有する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブボディのような油圧機器等には、切削加工により種々の精密な穿孔が形成されるが、穿孔の周囲に発生するバリや切粉を除去しないと重大な動作不良につながる恐れがある。
そこで、従来、このような切削加工時に発生する切粉やバリを除去するために、ワークのバリが発生する箇所に高圧の洗浄水を噴射して洗浄する高圧洗浄機が使用されている。
【0003】
高圧洗浄機において、洗浄後に切粉を確実に排出するためのエアブローや強固なバリを除去するためのブラシを使用する場合もあるので、種々の用途に適応するため、多関節ロボットによりツールが交換可能な洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−19466号公報(段落0021、図2〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多関節ロボットを使用して洗浄およびツール交換を行うと、装置が大型化し制御も複雑になるため、コスト負担が増大する可能性がある。
また、特許文献1に記載のツールのクランプ装置では、アダプタの回転方向の位置決めは、ガイド溝にクランプレバーを挿入してクランプする構成を採用している。このため、必然的に回転方向にクリアランスがあるので、洗浄水の噴射角度に微小な誤差が生ずる場合がある。この噴射角度の誤差が精密な洗浄に悪影響を及ぼすので、バリが発生する穿孔の周りを精度よく狙い撃ちして効率よく確実に除去したいような場合には、噴射角度のずれが障害となるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、省スペース化を図りながらツールを交換して多目的に適用でき、しかも精密な洗浄が可能な洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、ツールから洗浄水やエアを噴射してワークを洗浄する洗浄装置であって、前記ツールを自在に移動するツール移動装置と、このツール移動装置に配設されツールホルダを介して着脱自在に前記ツールを保持するツールクランプ部と、種々のツールをそれぞれ前記ツールホルダに装着して収容する格納部と、この格納部に収容されたツールを選択して前記ツールクランプ部に着脱するツール交換装置と、を備え、前記ツールホルダには、前記ツールの引き込み方向に幅が狭くなるテーパ部を有する溝部が形成され、前記ツールクランプ部は、凹部を有する筒状に形成され前記ツールホルダを当該凹部に内装して着脱自在に保持するボディと、出没自在に前記ボディに配設され当該凹部に装着された前記ツールホルダの前記溝部に嵌入して係止する球状部を有する係合体と、前記ボディの外周部に摺動自在に配設され前記係合体に接合して当該係合体を出没させるピストンと、このピストンを往復移動させる圧力流体供給流路と、を備え、前記ツール交換装置は、前記ツール移動装置により前記ツールクランプ部に装着されたツールを前記格納部に移動して収容し、前記格納部に収容されたツールを前記ツールクランプ部に装着するとともに、前記ピストンにより前記球状部を前記テーパ部に押し込み前記ツールホルダを前記引き込み方向に引き込んで前記ツールの回転方向を規制すること、を特徴とする。
【0008】
このように、本発明は、種々のツールを収容する格納部を設け、前記ツール移動装置によりツールを移動して前記格納部に収容し、前記ツールクランプ部に装着することで、小さなスペースでツールの交換が可能であるから、洗浄室を効率的に使用でき洗浄室の省スペース化を図りながら、多目的に適用可能な洗浄装置を実現することができる。
【0009】
また、前記ピストンにより前記球状部を前記テーパ部に押し込み前記ツールホルダを前記引き込み方向に引き込んで前記ツールの回転方向を規制することで、前記ボディと前記ツールホルダとの係合部における回転方向のクリアランスを排除し、ツールの回転方向のずれをなくして強固にクランプすることができる。
【0010】
このため、本発明に係る洗浄装置は、精密な洗浄が可能となり、バリが発生する箇所を精度よく狙い撃ちして確実に除去し、短時間で効率的な洗浄をすることが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の洗浄装置であって、前記ツール移動装置は、ワークを洗浄する洗浄室の上部に配設されたガイドレールから吊り下げられたガントリー式の3軸移動機構を備えていること、を特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、3軸移動機構を洗浄室の上部から吊り下げたことで、洗浄室内のスペースをより効率的に使用することができ、装置のコンパクト化を実現して多目的に適用することが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置であって、前記ワークを載置するテーブルを備え、前記テーブルは、前記ワークを垂直軸周りに旋回させる割り出し機構と、水平軸周りに反転させる反転機構と、を有することを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、ワークを旋回および反転することで、ワークの多面洗浄が可能となるから種々のワークに柔軟に対応することができ、多目的に適用することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る洗浄装置は、省スペース化を図りながらツールを交換して多目的に適用でき、しかも精密な洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置の洗浄室周りの構成を説明するための模式的斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るツールクランプ部とツールホルダとの関係を示す断面図であり、ピストンが前進してツールをアンクランプした状態を示す。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係るツールクランプ部とツールホルダとの関係を示す断面図であり、ピストンが後退してツールを引き込んでクランプした状態を示し、(b)は(a)のボールと溝部の関係を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る係合体が溝部に押し込まれるクランプ時の状態を示す図であり、(a)はそれぞれ(b)のA−A矢視断面図、(b)はそれぞれ要部拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るクランプ時の動作を説明するための要部断面図である。
【図6】本発明の溝部の変形例を示す図であり、(a)はツールホルダの斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る洗浄装置1の主要構成について、主として図1と図2を参照しながら詳細に説明する。
なお、参照する図1において、説明の便宜上、高圧の洗浄水を供給する洗浄ポンプ等の洗浄ユニットやエアを供給する空圧ユニット、制御装置、その他配管等の付属装置は図示を省略し説明も省略する。
【0018】
洗浄装置1は、図1に示すように、ワークWを載置するテーブル12と、ツールTを自在に移動するツール移動装置2と、ツール移動装置2に配設されツールTを着脱自在に保持するツールクランプ部4と、種々のツールTを収容する格納部5と、図示しない制御装置からなるツール交換装置6と、を備えている。
【0019】
洗浄室11は、図1に示すように、ワークWに噴射された洗浄水Sが飛散しないように設けられた箱状のカバーであり、洗浄室11内でツールクランプ部4に装着されたツールTがX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の3軸方向に自在に移動しながらワークWに付着した切粉やバリを除去するバリ取り洗浄が行われる。そして、ツールTから高圧の洗浄水Sがバリの発生している箇所に狙い撃ちして噴射されバリを除去する。
【0020】
なお、本実施形態では、図1においてX,Y,Zとして示すように、説明の便宜上、図示しない作業者から見て前後方向をX軸方向、上下方向をY軸方向、左右方向をZ軸方向として表記する。
【0021】
テーブル12は、図1に示すように、洗浄室11内に配設され、ワークWを保持するクランプ装置(不図示)とワークWを垂直軸C1周りに旋回させる割り出し機構12aと、水平軸C2周りに反転させる反転機構12bと、を備えている。
かかる構成により、ワークWを旋回および反転することで、ワークWの多面洗浄が可能となるから種々のワークWに柔軟に対応することができ、多目的に適用することが可能となる。
【0022】
格納部5は、洗浄ノズルやエアブロー等の種々のツールTをホルダベース51に形成されたU溝51aに挿入して収容できるように構成され、一例として洗浄室11内に配設されている。
【0023】
ツール移動装置2は、洗浄室11の上部に配設されたいわゆるガントリー式の3軸移動機構で構成されている。
ガントリー式の3軸移動機構は、洗浄室11の上部のZ軸方向に沿って配設されたZ軸ガイドレール21,21と、Z軸ガイドレール21,21に沿ってZ軸方向に移動するZ軸ホルダ22,22と、Z軸ホルダ22,22に支持されX軸方向に沿って配設されたX軸ガイドレール23と、X軸ガイドレール23に沿ってX軸方向に移動するX軸ホルダ24と、X軸ホルダ24に支持されY軸方向に配設されたY軸ガイドレール25と、Y軸ガイドレール25に沿ってY軸方向に移動するY軸ホルダ26と、モータおよびボールねじ等からなる図示しない駆動装置と、を備えている。
【0024】
かかる構成により、図示しない制御装置を介して、ツール移動装置2の先端部に配設されたY軸ホルダ26をX軸(前後方向)、Y軸(上下方向)、およびZ軸(左右方向)の3軸方向に自在に移動することができる。
そして、Y軸ホルダ26にツールクランプ部4が配設され、ツールクランプ部4にツールTが着脱自在に装着される。
【0025】
なお、本実施形態においては、Y軸ホルダ26にツールクランプ部4を1箇所配設したが、これに限定されるものではなく、Y軸ホルダ26にツールクランプ部4を隣接して2箇所以上に配設して、ツールTを2本以上備えることもできる。例えば、直線噴射用と回転噴射用の2種類のツールTを配設したり、洗浄用ノズルとエアブロー用ノズルの2種類のツールTを配設したりすることで、ツール交換作業を簡略化することができる。
【0026】
ツールホルダ3は、図2に示すように、円柱形状をなした胴部31と、ツールクランプ部4に嵌入して着脱自在に固定されるクランプ部32と、からなり、胴部31の先端部31aにツールTが固定されてツールホルダ3にツールTを装着する。ツールホルダ3には、クランプ部32から胴部31まで貫通する洗浄水流路33が形成されている。洗浄水流路33は押接部35を介してボディ41に形成された洗浄水流路46と導通されて、高圧の洗浄水やエアがツールTまで供給される。
【0027】
胴部31には、対面して平行にカットされた形状の溝31bが形成され、この溝31bを格納部5に配設されたホルダベース51のU溝51aに挿入して、ツールTが同じ向きになるように収容される(図1参照)。
クランプ部32は、ツールTの引き込み方向(図2の矢印参照)に向かうにつれて縮径されたテーパ形状をなすテーパ当接部32aと、底面が三角形の三角柱の空間からなる凹形状の溝部34(図4(a)参照)と、を備えている。この溝部34には、ツールTの引き込み方向に幅が狭くなるように対向して形成された側壁面からなるテーパ部34aが形成されている。
【0028】
ツールクランプ部4は、図2に示すように、回転自在に支持されたクイル4aと、クイル4aに固定されたフランジ4bと、フランジ4bに固定されツールホルダ3を着脱自在に保持するボディ41と、溝部34に嵌入して係止する係合体であるボール42と、このボール42を出没させるピストン43と、このピストン43を往復移動させる圧力流体供給流路L(L1〜L3,L11〜L14)と、を備えている。
【0029】
なお、図2と図3において、便宜上ピストンの往復移動との関係で適宜、ツールTの引き込み方向である本図上の上側を後退側(後部)、本図上の下側を前進側(前部ないし先端部)と表記する。
【0030】
ボディ41は、図2に示すように、拡径部41aと縮径部41bからなる筒状に形成されている。ボディ41には、拡径部41aの外周面41cに合わせてリング状のシリンダ部材44が固定されている。そして、シリンダ部材44には、ピストン43の縮径部43bに当接するようにしてリング状のカバー45が固定されている。
【0031】
かかる構成により、ボディ41とシリンダ部材44とカバー45とピストン43の縮径部43bで閉塞された空間内にシリンダ室P(P1,P2)が形成され、ボディ41の縮径部41bの外周面41dとシリンダ部材44およびカバー45との間でピストン43が摺動自在にガイドされている。
【0032】
また、ボディ41は、内周部に洗浄水や高圧のエアが流通する洗浄水流路46と、縮径部41bの先端部に形成されツールホルダ3が着脱自在に内挿される凹部41eと、を備えている。
【0033】
そして、ボディ41の縮径部41bには、ボール42が凹部41eに向かって出没するように装着され、凹部41eに装着されたツールホルダ3の溝部34に嵌入して係止される。
凹部41eの開放端には、先端部側が拡径されたテーパ当接部41fが形成されている。このボディ41に形成されたテーパ当接部41fは、ツールホルダ3に形成されたテーパ当接部32aと適合する形状をなしている(図3(a)参照)。
【0034】
なお、「球状部を有する係合体」は、本実施形態では、出没方向の摩擦抵抗が小さいので球形のボール42としたが、これに限定されるものではなく、円柱形状のピンの端部が半球状になった球状部を有するピン形状をなしたものでもよい。
【0035】
ピストン43は、シリンダ室P内に配設される拡径部43aと、ボール42と接合して出没させるテーパ面43cを有する縮径部43bと、からなる筒状をなしボディ41の縮径部41bに摺動自在に外嵌されている。
そして、テーパ面43cは、ピストン43の縮径部43bの内周面43b1に形成され、後部(引き込み方向)に向かうにつれて拡径された形状をなしている。
【0036】
具体的には、ピストン43に形成されたテーパ面43cは、図2に示すように、アンクランプ状態では、ピストン43が前進するとボール42に係合して、ボール42がピストン43の縮径部43bに没入するように、テーパ角度や位置が設定されている。このため、アンクランプ状態では、ボール42は、ツールホルダ3に形成された溝部34に進入しない状態となる。
【0037】
そして、クランプ状態では、図3に示すように、ピストン43が後退すると、ピストン43に形成されたテーパ面43cとボール42の係合が解除され、ボール42を縮径部43bから押し出すように、テーパ角度や位置が設定されている。このため、クランプ状態では、ボール42は、ツールホルダ3に形成された溝部34に進入してボール42と溝部34とが係合する状態となる。
【0038】
シリンダ室Pには、後端側にアンクランプ用の第1シリンダ室P1が形成され、前端側にはクランプ用の第2シリンダ室P2(図3(a))が形成される。
第1シリンダ室P1に、圧力流体である高圧のエアが導入されるとピストン43を前進させ、ツールホルダ3をアンクランプすることができる。また、第2シリンダ室P2(図3)に高圧のエアが導入されるとピストン43を後退させ、ツールホルダ3をクランプすることができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、取り扱いが容易であるから「圧力流体」としてエアを使用したが、これに限定されるものではなく、油圧を利用してピストン43を移動させることもできる。
【0040】
圧力流体供給流路Lは図2に示すアンクランプ用流路(L1〜L3)と、図3(a)に示すクランプ用流路(L11〜L14)と、を備えている。
アンクランプ用流路(L1〜L3)は、図2に示すように、第1のエア導入流路L1から、流路L2を通って流路L3から第1シリンダ室P1に高圧のエアを供給する流路である。クランプ用流路(L11〜L14)は、図3(a)に示すように、第2のエア導入流路L11から、流路L12から流路L13を通って流路L14から第2シリンダ室P2に高圧のエアを供給する流路である。
【0041】
なお、本実施形態においては、図2に示すアンクランプ状態を確認するためのアンクランプ確認用流路(L1〜L5)と、図3(a)に示すクランプ状態を確認するためのクランプ確認用流路(L11〜L14)と、を備えている。
アンクランプ確認用流路(L1〜L5)は、図2に示すように、アンクランプ用流路(L1〜L3)から分岐して設けられ、第1のエア導入流路L1から、流路L12を通って流路L15まで導通し、流路L15から流出するエアを図示しない圧力センサで検出してピストン43がクランプ位置に存在することを確認する。
【0042】
同様に、クランプ確認用流路(L1〜L5)は、図3(a)に示すように、クランプ用流路(L11〜L14)から分岐して設けられ、第2のエア導入流路L11から、流路L2を通って流路L4から流路L5まで導通し、流路L5から流出するエアを図示しない圧力センサで検出してピストン43がクランプ位置に存在することを確認する。
【0043】
このように構成されたツールクランプ部4の動作について、主として図4を参照しながら説明する。ピストン43を前進させてアンクランプする場合には、図2に示すように、ピストン43に形成されたテーパ面43cにボール42が位置し、ボール42はボディ41に没入した状態になるため、ツールホルダ3に形成された溝部34に入り込まない状態となる。
【0044】
このアンクランプ状態から、図3に示すように、ピストン43を後退させるとピストン43に形成されたテーパ面43cが後退するので、テーパ面43cにボール42が位置する状態でテーパ面43cの径が縮小するように作用する。テーパ面43cの径が縮小することで、ボール42を凹部41eの内周面からツールホルダ3の溝部34の方向に押し出すため、図4の<クランプ開始>に示すように、ボール42の一部が溝部34に入り込んだ状態になり(図3(b)参照)、ボール42が溝部34の側壁に形成されたテーパ部34aに当接しクランプが開始される。
【0045】
この状態からさらにピストン43(図3(a))を後退させると、図4の<クランプ途中>に示すように、クランプ途中では、ボール42が溝部34に進入するので、溝部34に押し込まれた部分のボール42の径が増大するように作用し、その径の増大分がツールホルダ3を引き込み方向に移動量δ1だけ後退させる。
【0046】
そして、図4の<クランプ終了>に示すように、ピストン43(図3(a))をさらに後退させると、ボール42が溝部34にさらに深く進入して、溝部34に押し込まれた部分のボール42の径がさらに増大し、ツールホルダ3を引き込み方向に移動量δ2だけ後退させた状態でクランプ終了となる。
【0047】
ここで、ツールホルダ3を引き込み方向に移動量δ2だけ引き込んだクランプ終了の状態(図4参照)では、ボール42と溝部34のテーパ面43cとが当接するとともに、ボディ41に形成されたテーパ当接部41fが、ツールホルダ3に形成されたテーパ当接部32aと接合して、ツールホルダ31の回転方向、および軸方向の移動が規制されて位置決めがされる(図3参照)。
【0048】
このようにして、ピストン43によりボール42を溝部34に形成されたテーパ部34aに押し込みながらツールホルダ3を引き込み方向に引き込んでツールTの回転方向を規制することで、ボディ41とツールホルダ3との係合部における回転方向のクリアランスを排除して、ツールTの回転方向のずれをなくして強固にクランプすることができる。
【0049】
このため、本発明の実施形態に係る洗浄装置1は、精密な洗浄が可能となり、バリが発生する箇所を精度よく狙い撃ちして確実に除去し、短時間で効率的な洗浄をすることが可能となる。
【0050】
ツール交換装置6は、図示しない制御装置を介して、ツール移動装置2によりツールクランプ部4に装着されたツールTを格納部5に移動して収容し、格納部5に収容された所定のツールTをツールクランプ部4に装着するように制御されている。
【0051】
ツール交換装置6は、格納部5に収容されたツールTをツールクランプ部4に装着する場合には、図5(a)に示すように、ツール移動装置2(図1)により、ツールクランプ部4を格納部5に収容された所定のツールTを選択して、ツールホルダ3をボディの凹部に嵌入して装着できるように位置合わせしながら接近させる。
【0052】
そして、図5(b)に示すように、アンクランプ状態では、ボディ41に形成されたテーパ当接部41fが、ツールホルダ3に形成されたテーパ当接部32aと若干のクリアランスをもって接合されている。そして、この若干のクリアランスをもって接合された状態からクランプ動作が開始される。
クランプ動作では、図5(b)に示すアンクランプ状態から、図5(c)に示すように、ピストン43を後退させて、前記したようにツールホルダ3を引き込み方向に引き込んでクランプする(図4参照)。
【0053】
一方、ツールクランプ部4に装着されたツールTを格納部5に収容する場合は、図1に示す状態から、ツール交換装置6(図1)により、ツールクランプ部4に装着されたツールTをホルダベース51に挿入して収容しアンクランプする。そして、目的の他のツールTを選択し、ツールホルダ3に装着しクランプして、ツール交換を終了する。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、図3に示すように、溝部34を三角柱の凹形状からなる空間で形成したが、これに限定されるものではなく、ツールTの引き込み方向に幅が狭くなるテーパ部34aを備えたものであれば、図6に示す本発明の変形例に係る溝部34′のように、底面34b′の三角形のコーナが丸くなったものでもよいし(図6(c))、底面34b′が平坦な面ではなく、ボール42(図3)を支持しながら押し込みために、引き込み方向に向かうにしたがって溝部34の深さが深くなるようにすることもできる(図6(b))。
【0055】
また、本実施形態に係る溝部34においては、テーパ部34aを平坦な面として構成したが(図3(b))、これに限定されるものではなく、図6(a)に示す本発明の変形例に係る溝部34′におけるテーパ部34a′のように、平坦な面ではなくボール42(図3)の形状に適合するように球面とすることもできる。かかる構成によれば、本発明の変形例に係る溝部34′は、テーパ部34a′とボール42(図3)との接触面積をより広くすることができるため、ボール42でテーパ部34a′をより安定して保持することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、ボール42を出没させる手段としてピストン43に形成された平坦面からなるテーパ面43cとして構成したが、これに限定されるものではなく円弧状の曲面で構成することも可能である。
また、本実施形態においては、ピストン43は、ボール42の出没方向に対して直交する方向に往復移動させる構成としたが、これに限定されるものではなく、ボール42の出没方向に往復移動させ直接ボールを出没させる構成とすることもできる。
【0057】
本実施形態においては、洗浄室11の両側に配設された2本のZ軸ガイドレール21,21から吊り下げられたガントリー式の3軸移動機構として構成したが、Z軸ガイドレール21は2本に限定されるものではなく1本でもよく、ガントリー式に限定されるものではなく床置き式であってもよく、2軸以下であっても回転機構を備えた4軸以上の移動機構を備えたものでもよい。
【0058】
本実施形態においては、テーブル12は、ツール移動装置2との関係を考慮して割り出し機構12aと反転機構12bとを備えて構成したが、これに限定されるものではなく、旋回装置や反転装置を備えていないテーブルであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 洗浄装置
2 ツール移動装置
3 ツールホルダ
4 ツールクランプ部
5 格納部
6 ツール交換装置
11 洗浄室
12 テーブル
12a 割り出し機構
12b 反転機構
21 Z軸ガイドレール(ガイドレール)
23 X軸ガイドレール
25 Y軸ガイドレール
31 胴部
32 クランプ部
32a テーパ当接部
34,34′ 溝部
34a,34a′ テーパ部
41 ボディ
41e 凹部
41f テーパ当接部
42 ボール
43 ピストン
43c テーパ面
C1 垂直軸
C2 水平軸
S 洗浄水
L(L1〜L3) アンクランプ用流路(圧力流体供給流路)
L(L11〜L14) クランプ用流路(圧力流体供給流路)
T ツール
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールから洗浄水やエアを噴射してワークを洗浄する洗浄装置であって、
前記ツールを自在に移動するツール移動装置と、
このツール移動装置に配設されツールホルダを介して着脱自在に前記ツールを保持するツールクランプ部と、
種々のツールをそれぞれ前記ツールホルダに装着して収容する格納部と、
この格納部に収容されたツールを選択して前記ツールクランプ部に着脱するツール交換装置と、を備え、
前記ツールホルダには、前記ツールの引き込み方向に幅が狭くなるテーパ部を有する溝部が形成され、
前記ツールクランプ部は、
凹部を有する筒状に形成され前記ツールホルダを当該凹部に内装して着脱自在に保持するボディと、
出没自在に前記ボディに配設され当該凹部に装着された前記ツールホルダの前記溝部に嵌入して係止する球状部を有する係合体と、
前記ボディの外周部に摺動自在に配設され前記係合体に接合して当該係合体を出没させるピストンと、
このピストンを往復移動させる圧力流体供給流路と、を備え、
前記ツール交換装置は、
前記ツール移動装置により前記ツールクランプ部に装着されたツールを前記格納部に移動して収容し、前記格納部に収容されたツールを前記ツールクランプ部に装着するとともに、
前記ピストンにより前記球状部を前記テーパ部に押し込み前記ツールホルダを前記引き込み方向に引き込んで前記ツールの回転方向を規制すること、
を特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記ツール移動装置は、ワークを洗浄する洗浄室の上部に配設されたガイドレールから吊り下げられたガントリー式の3軸移動機構を備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記ワークを載置するテーブルを備え、
前記テーブルは、前記ワークを垂直軸周りに旋回させる割り出し機構と、水平軸周りに反転させる反転機構と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−120976(P2011−120976A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279088(P2009−279088)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(596101679)株式会社管製作所 (4)
【Fターム(参考)】