説明

流体供給方法、流体供給装置及びモールドの製造方法

【課題】流体の温度の影響を受けず、基体に対する流体処理を迅速且つ均一に行う。
【解決手段】基体1に対して流体による処理を行うために、前記基体1に前記流体を供給する方法において、実質的に前記流体と同じ温度であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体1と反応しない基体温度調節用の媒体Aを前記基体に対して供給し、前記基体1の温度を実質的に前記流体と同じ温度にする基体温度調節工程と、前記基体温度調節工程後、前記基体1に前記流体を供給する流体供給工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給方法、流体供給装置及びモールドの製造方法に関し、特に、基体に対して流体を供給する流体供給方法、流体供給装置及びモールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある物質に流体を供給するための装置は、これまでに数多く知られている。この流体供給装置の一例を挙げれば、フォトリソグラフィーを使用して感光膜を処理するための現像剤を供給する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、タンク等から現像剤輸送経路を経て現像剤を供給し、レジスト液が塗布された基板に対して現像剤輸送経路の先端から現像剤を吐出し、レジストを現像処理する枚葉処理式レジスト現像装置が記載されている。具体的には、装置内において、基板は室温にある現像装置のチャンバー内に静置され、これに冷却又は加温された現像剤を吐出する。その際、現像剤を輸送する経路途中に配置したバルブを開閉することで、現像剤の供給を開始・停止し、現像処理を行う。
【0004】
また、特許文献2には、現像後の純水洗浄による基板の温度ムラを解消するために、純水の温度を現像剤の温度と同じ温度とし、その純水によって基板を洗浄する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、レジスト塗布装置の上蓋及び下蓋に温度調節装置を設け、基板の温度を上昇又は低下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−154641号公報
【特許文献2】特開平11−121336号公報
【特許文献3】特開2002−313711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現像処理においては現像剤の温度が製品品質にとって重要である。そのため、通常、特許文献1や2のように現像剤は温度制御されている。その一方で、現像剤の温度を常温より高い(又は低い)温度にて設定している場合、基板そのものと現像剤との温度差が生じる可能性がある。この温度差により、現像の安定性、均一性を損なうおそれがある。
【0008】
確かに特許文献3のように、装置の上蓋及び下蓋に温度調節装置を設けるという手法もある。この場合、上蓋及び下蓋にクーラー又はヒータを設けることになる。しかし、クーラー又はヒータを用いると、基板が所定の温度になるまでに多くの時間を要する。その結果、基板への流体処理に時間がかかり、歩留まりが低下することも考えられる。さらに、クーラー又はヒータを別途設ける必要があり、装置コストの増大が懸念される。さらに、クーラー又はヒータによる温度調節を行う場合、装置内の気流の流れや基板が基板保持部などの他部材と接触する影響等により、基板の温度にムラが生じやすくなる。その結果、流体処理を充分均一に行えないおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、流体の温度の影響を受けず、基体に対する流体処理を迅速且つ均一に行うことができる流体供給方法、流体供給装置及びモールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、基体に対して流体による処理を行うために、前記基体に前記流体を供給する方法において、実質的に前記流体と同じ温度であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない基体温度調節用の媒体Aを前記基体に対して供給し、前記基体の温度を実質的に前記流体と同じ温度にする基体温度調節工程と、前記基体温度調節工程後、基体処理室内にて前記基体に前記流体を供給する流体供給工程と、を有することを特徴とする流体供給方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記温度調整部にて設定される温度は、前記基体処理室外の温度とは異なる温度であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の発明において、前記基体は、前記流体によって処理されるべき主表面と、前記主表面に対向する裏面とを有し、前記基体温度調節工程において、前記基体の主表面及び裏面に前記媒体Aを吐出し、前記流体供給工程において、前記基体に前記流体を吐出して供給することを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3のいずれかの態様に記載の発明において、前記基体温度調節工程においては、前記基体の主表面及び裏面に前記媒体Aを吐出する際に、前記基体を挟んで対向しない位置に前記媒体が吐出されることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1ないし第4のいずれかの態様に記載の発明において、前記基体温度調節工程前に、前記流体を所定の温度に調整する流体温度調整工程と、前記媒体Aをこの所定の温度と実質的に同じ温度にする媒体温度調整工程と、を行うことを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の発明において、前記流体温度調整工程の所定の温度を、前記流体供給工程が行われる前記基体処理室の露点温度以下とすることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第1ないし第6のいずれかの態様に記載の発明において、前記流体供給工程後、前記基体に結露が生じない温度の媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない結露防止用の媒体Bを前記基体に対して吐出し、前記基体の温度を、前記基体に結露が生じない温度にする第2の基体温度調節工程と、更に、前記第2の基体温度調節工程の後に、前記基体を乾燥させる乾燥工程と、を行うことを特徴とする。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の発明において、前記媒体Bは、前記流体供給工程が行われる基体処理室外と実質的に同じ温度であることを特徴とする。
本発明の第9の態様は、第7又は第8の態様に記載の発明において、第2の基体温度調節工程の際、又は、第2の基体温度調節工程と乾燥工程との間に、前記基体処理室内を、前記基体処理室外の露点温度を上回る温度にする工程を更に有することを特徴とする。
本発明の第10の態様は、第7ないし第9のいずれかの態様に記載の発明において、前記基体温度調節工程で用いられる媒体A及び前記第2の基体温度調節工程で用いられる媒体Bは、同一種類の液状媒体であることを特徴とする。
本発明の第11の態様は、第1ないし第10のいずれかの態様に記載の発明において、前記流体は現像剤であることを特徴とする。
本発明の第12の態様は、レジスト層が形成された主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体に対して、基体処理室にて現像剤を吐出することにより現像を行うための流体供給方法であって、前記現像剤を、前記基体処理室内の露点温度以下且つ前記基体処理室外の温度とは異なる温度に調整する現像剤温度調整工程と、実質的には基体を溶解しない又は前記基体と反応しない基体温度調節用の媒体Aを前記現像剤温度調整工程での調整温度と実質的に同じ温度にする媒体温度調整工程と、前記現像剤温度調整工程及び媒体温度調整工程後、前記媒体Aを前記基体の主表面及び裏面に対して吐出し、前記基体の温度を実質的に前記現像剤と同じ温度にする基体温度調節工程と、前記基体温度調節工程後、前記基体に前記現像剤を吐出する現像剤吐出工程と、前記現像剤吐出工程後、前記基体処理室内の露点温度を上回る温度且つ且つ前記流体供給工程が行われる基体処理室外と実質的に同じ温度の媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない結露防止用の媒体Bを前記基体に対して吐出し、前記基体の温度を実質的に前記媒体Bと同じ温度にする第2の基体温度調節工程と、前記第2の基体温度調節工程の際又はその後に、前記基体処理室内を、前記基体処理室外の露点温度を上回る温度にし、その後、前記基体を乾燥させる工程と、を有することを特徴とする流体供給方法である。
本発明の第13の態様は、基体に対して流体による処理を行うために、前記基体に前記流体を基体処理室にて供給する装置において、前記基体に流体を供給する流体供給部と、 前記流体を供給する前の基体温度調節用の媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Aを前記基体に供給する媒体供給部と、
前記媒体供給部の少なくとも一部に設けられ、実質的に前記流体と同じ温度となるように前記媒体Aの温度を調整する媒体温度調整部と、を有することを特徴とする流体供給装置である。
本発明の第14の態様は、第13の態様に記載の発明において、前記流体の温度を調整するために前記流体供給部に流体温度調整部が設けられ、前記流体温度調整部にて設定される温度は、前記基体処理室外の温度とは異なる温度であることを特徴とする。
本発明の第15の態様は、第13又は第14の態様に記載の発明において、前記基体は、前記流体によって処理されるべき主表面と、前記主表面に対向する裏面とを有し、前記流体供給装置は更に、前記媒体供給部に設けられる媒体吐出部を有し、前記媒体供給部は前記基体の主表面及び裏面に対して前記媒体Aを吐出することを特徴とする。
本発明の第16の態様は、第15の態様に記載の発明において、前記媒体吐出部のうち少なくとも1つずつが前記基体の主表面及び裏面各々に対向することを特徴とする。
本発明の第17の態様は、第13ないし16のいずれかの態様に記載の発明において、前記媒体供給部は、前記媒体Aを貯留する媒体貯留部と、前記媒体貯留部と連通した媒体供給用の第1輸送部と、前記第1輸送部に設けられる媒体吐出部と、を有し、前記媒体温度調整部は前記第1輸送部に設けられることを特徴とする。
本発明の第18の態様は、第13ないし17のいずれかの態様に記載の発明において、前記流体供給装置は更に、前記基体の裏面から基体を保持する基体保持部を有し、前記基体保持部に前記基体が保持される際、前記前記基体の主表面側を上方、前記基体の裏面側を下方とすると、前記媒体吐出部は、前記基体よりも上方に配置され、かつ前記基体の主表面に向けて媒体Aを吐出する主表面用吐出口と、前記基体よりも下方に配置され、かつ前記基体の裏面に向けて媒体Aを吐出する裏面用吐出口と、を有することを特徴とする。
本発明の第19の態様は、第18の態様に記載の発明において、前記主表面用吐出口及び裏面用吐出口は、前記基体を挟んで対向しない位置に設けられていることを特徴とする。
本発明の第20の態様は、第13ないし19のいずれかの態様に記載の発明において、前記基体の結露を防止するための結露防止媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Bを供給する結露防止媒体供給部を更に有することを特徴とする。
本発明の第21の態様は、第20の態様に記載の発明において、前記結露防止媒体供給部は、前記媒体Bを貯留する媒体貯留部と、前記媒体Bのための媒体貯留部と連通した媒体B供給用の第2輸送部と、前記第2輸送部に設けられる前記媒体Bのための媒体吐出部と、を有することを特徴とする。
本発明の第22の態様は、第20又は第21の態様に記載の発明において、前記結露防止媒体供給部は更に、前記第2輸送部に設けられ、前記基体処理室外と実質的に同じ温度となるように前記媒体Bの温度を調整する、前記媒体Bのための媒体温度調整部を有することを特徴とする。
本発明の第23の態様は、レジスト層が形成されている主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体に対して基体処理室にて現像剤を吐出することにより現像を行うための流体供給装置において、前記基体の裏面から前記基体を保持する基体保持部と、前記基体保持部により保持された前記基体に現像剤を供給する現像剤供給部と、前記現像剤の温度を、前記基体処理室外の温度とは異なる温度調整するために前記現像剤供給部に設けられた現像剤温度調整部と、前記現像剤を供給する前の基体温度調節媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Aを貯留する媒体貯留部と、前記媒体貯留部と連通した基体温度調節媒体供給用の第1輸送部と、前記第1輸送部に設けられる媒体吐出部と、前記第1輸送部に設けられ、実質的に前記現像剤と同じ温度となるように前記媒体温度を調整する媒体温度調整部と、前記基体の結露を防止するための結露防止媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Bを供給する結露防止媒体供給部と、を有し、前記基体保持部に前記基体が保持される際、前記前記基体の主表面側を上方、前記基体の裏面側を下方とすると、前記媒体吐出部は、前記基体よりも上方に配置され、かつ前記基体の主表面に向けて媒体を吐出する主表面用媒体吐出口と、前記基体よりも下方に配置され、かつ前記基体の裏面に向けて媒体を吐出する裏面用媒体吐出口と、を有し、前記主表面用媒体吐出口及び裏面用媒体吐出口は、前記基体を挟んで対向しない位置に設けられることを特徴とする流体供給装置である。
本発明の第24の態様は、所定のパターンが形成されるべき主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体に対して所定のパターンを形成し、モールドを製造する方法において、レジスト層が設けられた前記基体主表面にエネルギビームを照射することにより、所定のパターン形状の露光を行う工程と、前記露光工程の後、実質的に現像剤と同じ温度であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない基体温度調節用の媒体Aを前記基体に対して吐出し、前記基体の温度を実質的に前記現像剤と同じ温度にする基体温度調節工程と、前記基体温度調節工程の後、基体処理室において前記現像剤により現像を行う工程と、を有することを特徴とするモールドの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、流体の温度の影響を受けず、基体に対する流体処理を迅速且つ均一に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る現像装置の断面概略図である。
【図2】図1のA−A’における、現像剤供給用配管の断面概略図である。
【図3】別の本実施形態に係る現像装置の断面概略図である。
【図4】別の実施形態に係る現像装置における現像液供給部の断面概略図である。
【図5】比較例に係る現像装置の断面概略図である。
【図6】別の実施形態に係る現像装置における、吐出方向変更部が設けられている部分を拡大した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、流体の温度を任意に変更させながら流体を供給する手段について種々検討した。そして、流体温度に関わらず、基体に対して迅速且つ均一に流体処理を行うための手段について種々検討した。
その結果、本発明者らは、殆ど基体を溶解しない又は前記基体に対して殆ど化学反応を起こさない媒体を予め選択しておいて、基体に対する流体処理の前に、前記流体と実質的に同一の温度に調整した媒体を基体に供給するという手段に思い至った。そして、媒体供給によって、流体と実質的に同一の温度になるように基体の温度を迅速に調整した後、互いの温度差が解消された基体と流体との処理を行うことを見出した。
【0014】
<実施の形態1>
以下、本発明を実施するための実施の形態を、本実施形態に係る流体供給装置の断面概略図である図1に基づいて説明する。
【0015】
(流体供給装置(現像装置)の概要)
本実施形態における流体供給装置として、レジスト層が形成された主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体1に対して現像剤を吐出することにより現像を行うための現像装置を例に挙げる。なお、本実施形態における流体とは、気体及び液体を含み、さらには噴霧状の物質も含む。
【0016】
なお、本実施形態における「基体1」とは、基板、基板上にレジスト層が設けられたもの、その基板の上にハードマスク層が設けられ、その上にレジスト層が設けられたものを含む。更に言えば、現像剤のみならず、温度制御がなされた流体を供給する必要のある物質そのものを指すものとする。基体1の形状については後述する基体保持部5にて保持できるものであればどのような形状でも良いが、本実施形態においては、円盤形状の基体1を用いる。
【0017】
本実施形態における現像装置は、少なくとも現像処理部2と基体温度調節用の媒体供給部3と現像剤供給部4とを有している。なお、現像剤供給部4は、公知の現像装置において現像剤が供給される構成を有していても良い。また、現像後にリンス処理を行う場合には、この現像装置にリンス液供給部(図示せず)を別途設けても良い。
【0018】
ここで挙げた現像処理部2には、基体1の主表面への現像剤の吐出が行われる基体処理室21(以降、単に処理室21ともいう)が設けられている。そして、前記処理室21内には、前記基体1を裏面にて保持するための基体保持部5が設けられている。
【0019】
そして、媒体供給部3には、媒体Aを貯留する媒体貯留部6と、媒体貯留部6に対して先端で連結して前記媒体貯留部6からの媒体Aの輸送部となる媒体供給用の第1輸送管(以降、単に第1輸送管ともいう)と、前記基体保持部5に保持された前記基体1に吐出される前記媒体Aを所定の温度に調整するために、少なくとも前記第1輸送管7の一部に設けられた媒体温度調整部8とが設けられている。
以下、現像処理部2及び媒体供給部3の各部について詳述する。
【0020】
(現像処理部)
本実施形態における現像処理部2には、前記基体1の主表面への現像剤の吐出が行われる処理室21が設けられている。さらに、処理室21内に設けられた基体保持部5に対して回転駆動制御を行う操作部22が、処理室21の下部に設けられている。
【0021】
処理室21についてであるが、先にも述べたように、その内部には基体保持部5が設けられている。この基体保持部5は、基板を保持するための基体1チャック13と、この基体1チャック13を支持及び回転させるためのシャフト14とからなる。
【0022】
この基体1チャック13は、真空吸着によって基体1を保持するものであっても良い。この場合、基体1チャック13の形状は、円盤状、矩形状、格子状等であってもよく、基体1の形状に合わせても良い。
また、この基体1チャック13を格子状に構成し、かつ基体1チャック13外周に止めピンを配置して基体1を保持しても良い。
【0023】
また、シャフト14は、その一端にて基体1チャック13を保持しながら処理室21を貫通し、操作部22の内部へと延在している。そしてシャフト14のもう一端を操作部22の内部の回転駆動機構(図示せず)と連結させ、シャフト14及び基体1チャック13の回転駆動を行う。なお、シャフト14が処理室21を貫通する際、シャフト14と処理室21との間にシール部材15を設けても良い。
【0024】
上記の基体保持部5以外にも、現像後の流体を回収するための流路等、公知の現像装置の構成を本実施形態の現像処理部2に設けても良い。
【0025】
さらに、処理室21は開放系であっても良いが、処理室21内を開閉自在、更に好ましくは密閉自在とするのが良い。後述するが、媒体吐出部9付近の媒体Aの温度の制御に役立つためである。
【0026】
なお、処理室21や操作部22の外装表面に、現像装置を制御するための操作用パネルを設置しても良い。そしてこのパネルにて、基体保持部5の回転制御のみならず、媒体Aやリンス液の供給制御、現像剤や処理室21内の温度制御、後述する弁部10の制御などを行っても良い。
【0027】
(基体温度調節用の媒体供給部)
本実施形態における媒体供給部3には、大きく分けて、媒体Aを貯留する媒体貯留部6と、前記媒体貯留部6に連結された媒体供給用の第1輸送管7とが設けられている。そしてこの第1輸送管7における媒体吐出部9が現像処理部2の処理室21内に配置され、基体1上に媒体Aが吐出されるようになっている。
【0028】
本実施形態において用いられる媒体Aは、基体1に対する熱媒又は冷媒となる物質であれば良い。ただし、前記基体1、さらには基体1の主表面上に設けられたレジスト層と実質的には反応しない、又はレジスト層を溶解しない媒体を選択する必要がある。こうすることにより、レジストパターンの幅が変化する等、媒体が現像処理に与える影響を抑えることができる。
具体的な物質名を挙げるとするならば、IPA(イソプロピルアルコール)やメタノール・エタノールなどのアルコール系化合物やフルオロカーボン等が挙げられる。
【0029】
なお、後述する媒体温度調整部8にて設定される媒体Aの温度は室温とは異なる温度、さらに詳しくいうと基体処理室外の温度とは異なる温度であるのが好ましい。ひいては、媒体Aによる基体温度調節が行われた後に吐出される現像剤も、基体処理室外の温度とは異なる温度であるのが好ましい。この温度に現像剤を調整するからこそ、現像処理前において室温と同程度の基体1の温度を、現像処理前に予め現像剤と実質的に同じ温度にする意味が大きくなるためである。
【0030】
また、この媒体の状態としては、気体でも液体でも良いが、液体であることが好ましい。液体媒体を基体1に吐出すると、液体媒体が基体1上を流れることにより、基体1の温度を迅速かつ均一に加熱又は冷却することができるためである。また、液体の方が容易に扱うことができるため有利である。
本実施形態においては、液体媒体を用いた場合について説明する。
【0031】
なお、本実施形態における「実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体A」とは、媒体の吐出に応じて化学反応や溶解等の現象が基体には起こらないような媒体、又は化学反応や溶解等が発生したとしても、現像の際のパターン精度に与える影響が微少な媒体のことを指すものとする。
【0032】
媒体供給部3における媒体貯留部6には、規定濃度に調整された媒体Aが貯留されている。この媒体貯留部6は、単に媒体Aを貯留しておく容器であれば良いが、温度制御という観点からは媒体貯留部6にて媒体Aを循環させながら温度制御を行うのが好ましく、具体的にはチラーを用いるのが好ましい。
【0033】
そして、媒体貯留部6と媒体供給用の第1輸送管7とを連結する部分に、媒体供給ポンプ16が設けられている。この媒体供給ポンプ16は現像処理部2における操作部22に電気的に接続されていてもよく、操作部22にて媒体A供給するか否かの操作を行っても良い。
【0034】
次に、媒体貯留部6からの媒体Aの輸送に用いられる第1輸送管7について説明する。この第1輸送管7の一端は、先にも述べたように媒体貯留部6と連結している。そして別の一端は媒体吐出部9となっており、処理室21外装を貫通する形で、媒体吐出部9が処理室21内に配置されている。
【0035】
なお、本実施形態においては、入口と出口が一つずつある第1輸送管7について説明するが、分岐した第1輸送管7を用いても構わない。そして、この分岐した第1輸送管に、例えば別途設けた媒体貯留部6を設けても構わない。ただ、後述する媒体温度調整部8を設ける面積が小さくなること、第1輸送管7のメンテナンスの容易さという点からは、分岐していない第1輸送管7の方がより好ましい。しかしながら、後で詳述するように、媒体吐出部9を複数設ける場合には、第1輸送管7を分岐させ、各々の分岐先に媒体吐出部9を設けても良い。
【0036】
さらに、本実施形態においては媒体貯留部6と第1輸送管7が別体のものであって両者を連結したものについて挙げたが、両者一体のものを用いても良い。さらに、例えば媒体貯留部6を処理室21よりも上方に配置して、自重により媒体Aを媒体吐出部9から吐出するようにし、媒体供給ポンプ16を不要としても良い。即ち、第1輸送管7の役割を果たす部分が媒体貯留部6と連通した輸送部であれば良い。
【0037】
さらに、この媒体吐出部9は、基体1に対して媒体Aを吐出し、基体1の回転等の操作により最終的に基体1に媒体Aを行き渡らせることができるのならば、基体1上に配置されても基体1の斜め上方に配置されても構わない。
【0038】
ただ、前記基体保持部5に前記基体1が保持される際、前記媒体供給部3が前記基体1の主表面及び裏面に対して前記媒体Aを供給するように配置するのが好ましい。基体1の主表面及び裏面の両方から媒体を吐出することにより、基体1の温度を非常に迅速に媒体Aの温度へと調節することができ、ひいては基体1の温度と現像剤との温度差を非常に迅速に解消することができる。なお、この際、主表面及び裏面以外の面(例えば側面や面取りされた端面)に媒体Aを供給するように媒体供給部3が配置されていても良い。こうすることにより、温度調節する面が増加し、さらに迅速に基体1の温度を調節することができる。
【0039】
なお、媒体吐出部9のうち少なくとも1つの媒体吐出部9が基体1の主表面又は裏面に対向し、且つ媒体吐出部9のうち少なくとも1つずつが基体1の主表面及び裏面各々に対向して媒体供給部3に設けられるのが好ましい。
【0040】
具体的に言えば、このように1つ以上の媒体吐出部9が主表面に向かって設けられ、且つ別の1つ以上の媒体吐出部9が裏面に向かって設けられているのが好ましい。
【0041】
このように1つ以上の媒体吐出部9が一つの面に必ず対向して設けられることにより、確実かつ均一に媒体Aを主表面及び両面に吐出することができ、その結果、効率よく基体1の温度を調整することができる。
【0042】
このとき、基体1の主表面及び裏面に媒体Aを吐出する際に、前記基体を挟んで対向しない位置に前記媒体が吐出されるよう、媒体吐出部9を設けるのが好ましい。こうすることにより、更に均一にしかも迅速に基体1の温度を変化させることができるためである。
【0043】
さらに好ましくは、前記基体保持部5に前記基体が保持される際、前記前記基体1の主表面側を上方、前記基体1の裏面側を下方とすると、媒体吐出部9が前記基体1よりも上方に配置され、かつ前記基体1の主表面に向けて媒体Aを吐出する主表面用吐出口9aを有し、さらに前記基体1よりも下方に配置され、かつ前記基体1の裏面に向けて媒体Aを吐出する裏面用吐出口9bも有する場合が挙げられる。先にも述べたように、この場合においては1本の第1輸送管を分岐させるのが好ましく、各々の分岐先にこのような媒体吐出部9を設けるのが好ましい。
【0044】
また、前記媒体吐出部9はただの開口であっても良いし、シャワーノズル形状となっていても良い。ただ、ただの開口である方が、吐出中に媒体Aの温度が変動しにくくなり好ましい。また、管理のしやすさの点から、媒体吐出部9の一部に吐出口を着脱自在に設けても良い。
【0045】
さらに第1輸送管7を通じて媒体Aを輸送する際、媒体Aを所定の温度に調整するために、前記第1輸送管7に媒体温度調整部8が設けられている。
【0046】
この媒体温度調整部8は、第1輸送管7内の媒体を基体1に吐出した際、基体1の温度を実質的に現像剤の温度と同じ温度に制御できるものであっても良い。
【0047】
また、この媒体温度調整部8が第1輸送管7に設けられている場合、図4に示すように、媒体温度調整部8は、媒体温度制御部81、及び前記媒体温度制御部81と弁部10との間に設けられた媒体温度保持部82とを有するのが好ましい。こうすることにより、媒体温度調整部8を媒体温度制御部81と媒体温度保持部82とで役割分担させることができる。即ち、媒体温度制御部81にて媒体Aの温度を処理室外の温度とは異なる所定の温度へと制御する。さらに、温度制御された媒体Aを吐出寸前までこの所定の温度に維持するため、弁部10に実質的に隣接するように媒体温度保持部82を設ける。その結果、温度制御を更に確実に行うことができる。具体例を挙げるとするならば、この媒体温度制御部81としてはチラーが挙げられる。また、媒体温度保持部82としては冷媒を用いたジャケットにて配管7を覆うことが挙げられる。
【0048】
なお、本実施形態における「基体1の温度を実質的に現像剤と同じ温度にする」とは、媒体による基体1の温度調整が終了した後、現像剤を基体1に吐出する際、基体1と現像剤との温度差に起因する現像ムラがパターン精度に影響を与えない程度に同じ温度であることを指す。具体的には、基体温度と現像剤温度が±2℃までの差を有することを指す。
【0049】
なお、媒体温度調整部8を設ける場所について第1輸送管7を挙げたが、媒体Aを吐出する段階の温度を制御できるのならば、前記第1輸送管7の少なくとも一部に設けても良い。また同じく、媒体Aを吐出する段階の温度を制御できるのならば、媒体貯留部6の少なくとも一部に媒体温度調整部8を設けても良い。
【0050】
また、媒体温度調整部8を第1輸送管7内に設けても良いが、操作やメンテナンスのしやすさから、前記基体処理室21外における前記第1輸送管7の外側に設けられているのが好ましい。
【0051】
ここで媒体温度調整部8の具体例を挙げるならば、図1のA−A’における第1輸送管の断面概略図である図2に示すように、熱媒又は冷媒をその内部に通液させたジャケット8を前記第1輸送管7の外側に設けても良い。ジャケット以外にも、前記第1輸送管7を螺旋状に巻き上げて、ヒータにより所定の温度に制御された流体に第1輸送管7を浸漬した恒温槽を用いても良い。なおこの媒体温度調整部8の温度制御は、現像処理部2における操作部22にて行っても良い。
【0052】
なお、先にも述べたが、媒体温度調整部8にて設定される媒体Aの温度は室温とは異なる温度、さらに詳しくいうと基体処理室外の温度とは異なる温度であるのが好ましい。
【0053】
また、媒体吐出部9とこの媒体温度調整部8との間の部分の第1輸送管7に、弁部10を設けても良い。先に述べたように自重にて媒体を供給する場合は、弁部10にて媒体供給を停止することができる。この弁部10は具体的には多方弁やバルブが挙げられる。ただ、実施の形態2(図3)にて詳述する結露防止媒体供給部50における第2輸送管18を媒体吐出部9と連通させるためにも、三方弁が好ましい。
【0054】
次に、基体温度の現像処理前における調整が行われた基体1に対し、現像処理を行うための現像剤供給部4について述べる。
この現像剤供給部4は、上述の媒体供給部3と同様の構成であっても良い。即ち、現像剤貯留部41から現像剤供給ポンプ416により現像剤が現像剤供給路42に輸送される。
【0055】
なお、この現像剤供給路42には温度調整部48が設けられることにより、現像剤が温度制御されているのが好ましい。そして、この温度調整部48により制御される温度は室温とは異なる温度、さらに詳しくいうと、基体処理室21外の温度とは異なる温度であるのが、媒体供給部3にて述べた理由で更に好ましい。
【0056】
その後、現像剤供給路42の一端に設けられた現像剤吐出部49から、基体1上に現像剤が吐出される。この現像剤吐出部49は、単なる開口でも良いし、シャワーノズル形状であっても良い。また、温度調整部48と現像剤吐出部49との間に、通常のバルブ又は弁43を用いても良い。
【0057】
(媒体供給方法)
次に、本実施形態に係る現像装置における機能、即ち媒体供給方法について説明する。
【0058】
まず、媒体貯留部6及び/又は媒体供給用の第1輸送管7内の媒体Aを、所定の温度に調整する媒体温度調整工程を行う。先にも述べたように、この媒体温度は、第1輸送管7内の媒体の温度を制御できれば、媒体貯留部6に対してであっても、媒体供給用の第1輸送管7に対してであっても、どちらに対して行っても良い。なお、現像剤の温度調整工程をこの時に行っても良い。
【0059】
そして、この媒体温度調整工程と前後して、処理室21内の基体保持部5に基体1をセットする。このとき、レジスト層が形成された主表面に媒体A及び現像剤が吐出されるように基体1をセットする。同時に、裏面が基体保持部5と接するように基体1をセットする。その後、現像処理部2における操作部22にて、所定の回転数で基体保持部5が回転するように操作する。なお、この回転操作は媒体吐出による基体温度調節処理、現像処理、リンス処理、乾燥処理を通して適宜行われる。
【0060】
基体1のセットが終わると、媒体貯留部6に貯留される媒体Aを、処理室21内における第1輸送管7の媒体吐出部9から第1輸送管7を通じて前記基体1の主表面に吐出する基体温度調節工程を行う。
【0061】
基体温度調節工程を終了したい場合は、媒体供給ポンプ16を停止させる。なお、自重により媒体Aを通液する場合は、前記第1輸送管7に設けられた弁部10を操作することにより媒体Aの輸送経路を塞ぐ。
その後、基体1に対して現像剤を吐出する。
【0062】
現像が終了したら、現像剤の供給を停止する。必要に応じて、適宜、基体1に対してリンス処理を行っても良い。
【0063】
その後、一定の回転数で基体保持部5を回転させ、基体1の乾燥処理を行う。そして基体1の現像処理を終了する。
こうして、レジスト層付き基体1に対する一連の現像工程を終了する。
【0064】
以上のような本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
即ち、現像処理前に予め基体温度を現像剤と実質的に同一とすることにより、基体1と現像剤との温度差を相当解消することができる。その結果、均一に現像処理を行うことができる。
さらに、基体温度調節用の媒体を基体1に供給する媒体供給部を設け、雰囲気温度を変化させるのではなく熱媒又は冷媒を直接基体1に吐出していることから、迅速に基体1の温度を変化させることができる。更にこの際、実質的には前記基体1を溶解しない又は前記基体1と反応しない媒体を用いていることから、現像処理の精度も維持することができる。
【0065】
なお、本実施形態においては主表面と裏面を有する基体1を用いたが、基体1における複数存在する面の少なくとも一つの面に、媒体を吐出すれば良い。もちろん、主表面と裏面に限らず、側面に媒体を吐出しても良い。
【0066】
また、処理室21についての変形例であるが、処理室21が開放系ではなく、密閉自在であっても良い。この場合の処理室21においては、密閉して現像処理を行うことに加え、処理室21内の温度制御を行うのが好ましい。具体的に言えば、媒体温度調整部8における設定温度と処理室21内温度とを実質的に同一とする処理室21内温度制御部が処理室21内に設けられ、操作部22にてその温度を制御するのが好ましい。媒体Aの温度と基体1の温度との差を相当解消することができるためである。
【0067】
なお、上述のように処理室21において処理室21内を密閉した上で温度調節が行えるのならば、処理室21外の部分の第1輸送管7全体を媒体温度調整部8で覆うのが好ましい。処理室21外の部分の媒体Aの温度制御ができるのならば、処理室21外にて媒体Aの温度制御ができれば充分なためである。
【0068】
また、媒体供給部3の変形例であるが、上述のような弁部10が設けられた媒体供給部3を複数設けても良い。また、1つの媒体貯留部6から複数の第1輸送管7及び/又は媒体吐出部9を設けても良いし、複数の媒体貯留部6から複数の第1輸送管7及び/又は媒体吐出部9を設けても良い。
【0069】
また、媒体温度調整部8として恒温槽を用いた場合、現像剤用の配管40と媒体A用の第1輸送管7とを同じ恒温槽かつ二重管内に平行して配置しても良い。こうすれば、現像剤と媒体Aとが効率的に熱交換すると共に、規定温度の恒温槽の液体の温度となじみやすくなる。その結果、現像剤と媒体Aとの温度差を少なくすることになり、ひいてはこの媒体Aによって温度調整される基体1と現像剤との温度差も少なくすることができる。そして、温度ムラをさらに解消でき、均一に現像処理を行うことができる。
【0070】
<実施の形態2>
(結露防止媒体供給部)
先の実施の形態に加え本実施形態においては、図3に示すように、乾燥工程での基体1上の結露を防止するための媒体Bを供給する結露防止媒体供給部50を更に有する。
以降、媒体Aとは基体温度調節用媒体Aのことであり、媒体Bとは結露防止媒体Bのことを指すものとする。
【0071】
現像処理終了後、従来ならば、現像剤と実質的に同一の温度で純水などによるリンス処理が基体1に行われ、その後で基体1の乾燥工程が行われる。ところが、媒体A、現像剤及びリンス液が低温である場合、基体1の温度もまた低温となっており、リンス液供給停止後に基体1が触れる処理室21内の雰囲気との温度差が大きくなっている。その結果、乾燥工程において基体1に結露が生じてしまうおそれがある。例え最終的には乾燥工程で結露を乾燥させるとしても、結露の痕跡が基体1上に残存してしまい、パターン精度に影響を与えるおそれがある。
【0072】
そこで本実施形態においては、現像処理から乾燥工程までの間に、前記基体1に結露が生じない温度であって、実質的には前記基体1を溶解しない又は前記基体1と反応しない結露防止媒体Bを前記基体1に対して吐出するのが好ましい。そうして、前記基体1の温度を実質的に前記結露防止媒体Bと同じ温度にする、第2の基体温度調節工程を行うのが好ましい。
【0073】
なお、ここでいう「基体1に結露が生じない温度」とは、「流体供給工程から乾燥工程までの、基体1の周辺の雰囲気の露点温度を上回る温度」のことを指す。本実施形態は、媒体A及び現像剤が前記露点温度以下の低温に設定した場合に特に有用である。
【0074】
この露点温度は現像剤供給後の雰囲気に応じて変動するが、処理室21と実質的に同じ温度に設定されるのが好ましい。雰囲気温度と基体1の温度差を解消することにより、ほぼ確実に結露を防止できるためである。
【0075】
特に好ましいのは、基体処理室21を開放系としながら、「基体1に結露が生じない温度」を常温(室温つまり基体処理室外の温度)とすることである。こうすることにより、基体処理室21を密閉にする必要も温度制御する必要もなく、結露を生じさせずに容易に基体1の温度を変動させることができる。
【0076】
さらにこの場合、基体1の温度もまた低温となっていることに加え、基体処理室内の温度も低温となっている。そこで、第2の基体温度調節工程の際、又は、第2の基体温度調節工程と乾燥工程との間に、基体処理室21内を、基体処理室外の露点温度を上回る温度にする工程を更に行うのが好ましい。こうすることにより、基体1だけが常温に戻っても処理室21内が低温であるため起こってしまう結露をより確実に防止することができる。なお、基体処理室21が開放系である場合、「基体処理室内」とは、基体1を処理するための領域であり且つ上述した基体1の乾燥工程において結露の影響を及ぼす程度の範囲の領域のことを指す。また、「基体処理室外」とは、この領域より外の領域のことを指す。
【0077】
この媒体Bを供給するための結露防止媒体供給部50は、媒体Aの媒体供給部と同様の構成を有していても良い。つまり、結露防止媒体供給部50は、前記媒体Bを貯留する媒体貯留部と、前記媒体Bのための媒体貯留部と連通した媒体B供給用の第2輸送部と、前記第2輸送部に設けられる前記媒体Bのための媒体吐出部とを有していても良い。
【0078】
なお、この結露防止媒体供給部50は更に、前記第2輸送部に設けられ、前記基体処理室外と実質的に同じ温度となるように前記媒体Bの温度を調整する前記媒体Bのための媒体温度調整部を有していても良い。この媒体Bのための媒体温度調整部を設けることにより、媒体Bを室温よりも高めに変動させることができ、上述のように基体処理室内を常温に戻す工程を迅速に行うことができる。もちろん、媒体Bを室温よりも低め且つ露点温度を上回る温度に設定しても構わない。
【0079】
なお、この結露防止媒体Bが、先に述べた基体温度調節媒体Aと同一の種類の液状媒体ならば、この結露防止媒体供給部50は、前記媒体供給部と共通した前記媒体貯留部6と媒体吐出部9を用いても良い。それと共に、基体温度調節媒体供給用の第1輸送管7とは別に、前記媒体貯留部6と連通した結露防止媒体供給用の第2輸送管18を設けるのが好ましい。そして、前記第1輸送管7と前記第2輸送管18のいずれかと前記媒体吐出部9を連通させるように弁部10を第1輸送管7又は第2輸送管18に設けても良い。本実施形態においては、第1輸送管の経路途中に弁部10を設けている。そして、この弁部10に第2輸送管18を連結している。
【0080】
こうすることにより、上述の弁部10にて、媒体吐出部9と連通する対象を第1輸送管7か第2輸送管18かのいずれかに切り替えるだけで、基体温度調節媒体Aを吐出するか結露防止媒体Bを吐出するかを選択することができる。つまり、現像処理前に基体温度を調整するために媒体を吐出する際にも、現像処理後に基体1の結露を防止するために媒体を吐出する際にも、媒体貯留部及び媒体吐出部を共有して用いることができる。その結果、余分な装置コストを低減でき、装置に必要な大きさも減らすことができ、省スペース化が図れる。
なお、第1輸送管7を分岐させることにより第2輸送管18を設けても良いし、第1輸送管7に第2輸送管18を平行して設けても良い。
【0081】
もちろん先に述べたように、結露防止媒体供給部50を、媒体供給部3とは別個に設けても構わないし、複数設けても構わない。さらに、先に述べたように媒体供給部3の一部を共有して使用しても良いし、全部を共有しても良い。全部を共有する場合は、基体温度調節媒体Aを吐出する際に行っていた温度制御を中止又は別の温度に設定することにより、露点温度を上回る温度の結露防止媒体Bを吐出するようにしても良い。
【0082】
なお、第1輸送管7には媒体温度調整部8を設けると述べたが、第2輸送管18にも別途温度調整部を設けても良い。このときの設定温度は、上述の通り、前記基体1に結露が生じない温度にするのが好ましい。また、基体処理室21と実質的に同じ温度に設定するのが更に好ましい。また、処理室21が開放系であって室内が常温である場合は、第2輸送管18に温度調整部を設けなくとも良い。この場合、第2輸送管18に温度調整部を設けずとも、基体1に対して結露を防止できる常温媒体Bを吐出でき、装置コストの低減にも繋がるため好ましい。
【0083】
なお、現像処理後に行われるリンス処理においては、別途リンス液供給部を設けても良い。ただ、設備コストの低減という観点から、リンス液供給を兼ねて、先に述べた結露防止媒体Bの供給を行っても良い。
【0084】
以上の通り、第1の基体温度調節工程を行った上で、乾燥工程の前に結露防止工程(第2の基体温度調節工程)を行うことにより、媒体又は現像剤供給停止後、乾燥工程において基体1が触れる処理室内雰囲気との温度差を解消することができる。その結果、基体1に結露が発生するのを抑制することができる。その結果、現像剤の温度の影響を受けず、基体1に対する一連の現像処理を迅速且つ均一に行うことができる。
【0085】
なお、変形例についてであるが、基体1に対して媒体Aや媒体Bを吐出するのではなく、媒体Aや媒体Bに浸漬させる形態を用いてもよく、処理室21内を浸漬処理可能な構造としても良いし、浸漬処理可能な別の場所で現像処理を行っても構わない。
【0086】
<実施の形態3>
先に述べた実施の形態1では、基体1の主表面と裏面に媒体を吐出するために、複数の媒体吐出部9を設けた場合について述べた。本実施形態においては、図6に示すように、媒体吐出部9から吐出される媒体の吐出方向に、吐出方向変更部20を設ける場合について述べる。
【0087】
この吐出方向変更部20とは、前記基体1の主表面及び裏面に前記媒体が吐出されるように、媒体の吐出方向を変更するものである。
【0088】
これにより、媒体A,Bの吐出は二方向に分かれる。この二方向の内の一方向を、基体1裏面に媒体A,Bが直接吐出される方向とする。そしてもう一方向を、基体1主表面の上方とし、媒体A,Bの自重により基体1主表面に媒体A,Bが吐出されるように設定する。このように吐出遮蔽体を設けることにより、1つの媒体吐出部9から基体1主表面及び裏面に対して媒体A,Bを吐出できるようにすることができる。吐出方向変更部20を設けることにより、媒体吐出部9をわざわざ複数設ける必要がなくなり、ひいては第1輸送管7を分岐させる必要がなくなる。その結果、装置コストの低減に寄与することができる。
【0089】
なお、この吐出方向変更部20は、第1輸送管7の一部として設けられても良いし、処理室21内の一部として設けられても良い。また、1つの媒体吐出部9につき、複数の吐出方向変更部20を設け、媒体A,Bの吐出方向を3方向以上に変更しても良い。
【0090】
<実施の形態4>
最後に、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法について説明する。ここで特記しない内容については、実施の形態1〜3と同様である。
【0091】
まず、所定のパターンが形成されるべき主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体1に対し、レジスト層を設ける。
なお、このレジストとしては、エネルギビームを照射して露光したときに反応性を有するものであれば良い。具体的には現像処理を行う必要のあるレジストであればよく、具体的には電子線描画用レジストであっても良い。本実施形態においては電子線描画を行う場合について述べる。この際、レジスト層の上に、チャージアップ防止のための導電材を塗布しても良い。
【0092】
なお、レジスト層4がポジ型レジストであるならば、電子線描画した箇所が抜き部となり、ひいては基体1上の溝の位置に対応する。一方、レジスト層がネガ型レジストであるならば、電子線描画した箇所が残し部となり、ひいては基体1上の溝以外の位置に対応する。本実施形態においてはポジ型レジストを用いた場合、即ちレジスト層4の上に描画している部分が抜き部、即ち基体1における溝の位置に対応する場合について説明する。
【0093】
また、この時のレジスト層4の厚さは、基体1へのエッチングが完了するまで残存する程度の厚さであることが好ましい。描画パターン部分の基体1を除去する際、この部分の基体1のみならずレジスト層4も少なからず除去されていくためである。
【0094】
次に、電子線描画機を用いて、前記マスクブランクスのレジスト層4に所定のパターンを描画する。この微細パターンはミクロンオーダーであっても良いが、近年の電子機器の性能という観点からはナノオーダーであっても良いし、最終製品の性能を考えると、その方が好ましい。
【0095】
微細パターン描画後、レジスト層4を現像し、レジストにおける電子線描画した部分を除去し、所望の微細パターンに対応するレジストパターンを形成する。
【0096】
その後、先に述べたように、第1の基体温度調節工程を行った後、基体処理室21において前記現像剤により現像を行う工程を行う。そして、現像剤が処理室21の雰囲気の露点温度以下の場合、先に述べた第2の基体温度調節工程を行い、基体1に対する結露防止工程を行う。その後、前記基体1を乾燥させ、所定のレジストパターン付き基体を得る。
【0097】
以降、このレジストパターン付き基体1に対し、ハードマスク層や基体へのエッチング処理を適宜行うことによりモールドを作製する。
なお、本実施形態においてはインプリントモールドについて説明したが、インプリントモールド以外のモールドであっても良い。例えばフォトリソグラフィーを行う際に用いられるモールドであっても良い。
【0098】
以上、実施形態においては「現像装置」及び「媒体供給方法」、即ち「流体供給装置」及び「流体供給方法」について詳述した。なお、本実施形態における用語について補足すると、「基体温度調節用媒体」は「媒体A」のことを指し、「結露防止媒体B」は「媒体B」のことを指し、「結露防止工程」は「第2の基体温度調節工程」のことを指す。そして「第1輸送部7」は「基体温度調節用媒体である媒体Aを供給する第1輸送部」のことを指し、「第2輸送部」は「結露防止媒体Bである媒体Bを供給する第2輸送部」のことを指す。
【0099】
なお、本発明の技術的思想は、ここで挙げた現像装置以外でも、温度制御を失った流体を、流体供給の前に除去するのが好ましい装置に対して、本実施形態は適用できる。例えば、流体を液体として、具体的には水やアルコール等にした装置などにも本発明の技術的思想は適用しうる。さらには、流体をガスとした半導体製造装置などにも本発明の技術的思想は適用しうると考えられる。
【0100】
上述の通り、本発明に係る実施の形態を挙げたが、上記の開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。本発明の範囲は、上記の例示的な実施形態に限定されるものではない。本明細書中に明示的に記載されている又は示唆されているか否かに関わらず、当業者であれば、本明細書の開示内容に基づいて本発明の実施形態に種々の改変を加えて実施し得る。
【実施例】
【0101】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろんこの発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
<実施例>
図1に示す本実施例の現像装置として、現像処理部2にはMTC社製M273を用いた。
そして、現像処理部2における処理室21内の基体チャック13にレジスト付き基板1をセットした。
【0103】
以下、「基体」を「基板」として説明する。
なお、基板チャック13にセットされたレジスト付き基板1の詳細は以下の通りである。本実施例の基板1として、円盤状合成石英基板(外径150mm、厚み0.7mm)を用いた。この基板1に対して、ZEP520A−7(ゼオン社製)をZEP−A(ゼオン社製)で希釈(ZEP520A−7:ZEP−A=1:2)したものを、基板1上に3ml程滴下し、4500rpmで45秒間基板1を回転させ、レジストを基板上の主表面に塗布した。なお、適宜基板1及びレジスト付き基板1に対してベーク処理を行っている。
【0104】
そして、100keVの電子線描画機を用い、電子線描画部(抜き部)と電子線未描画部(残し部)との幅比を1対2としたライン・アンド・スペース・パターンを描画した。このとき、抜き部の寸法が8〜30nmの範囲で3nmごとにライン幅を変化させて描画した。
【0105】
次に、媒体貯留部6として設けたチラーにより循環且つ0℃に温度管理された媒体AであるバートレルXF(登録商標 三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を、媒体供給ポンプ16により媒体供給用第1輸送管7へと輸送した。
【0106】
この第1輸送管7は、現像処理部2における処理室21を貫通するように配置された。その上で、媒体吐出部9となる開口を基板1主表面上に配置させた。
【0107】
そして、第1輸送管7における現像処理部2外の部分においては、0℃に温度制御した冷媒を内部に通液させたジャケット8を連続的に巻き付けた。また、このジャケット8と媒体吐出部9との間に、弁部10を設けた。
【0108】
そして、乾燥工程での基板1の結露を防止するため、本実施例に係る現像装置に、媒体BであるバートレルXFを供給する結露防止媒体供給部50を更に設けた。この結露防止媒体供給部50の構成は、媒体Aを供給するための構成とほぼ同じ構成とした。ただ、媒体Bのための第2輸送管18には温度を調整するための装置は設けず、媒体Bを常温のままにした。
【0109】
また、この第1輸送管7を処理室21内にて分岐させた。そして、第1輸送管7の媒体吐出部9として、基板1の上方に配置され且つ前記基体1の主表面に向けて媒体Aを吐出する主表面用吐出口9aと、前記基体1の下方に配置され且つ前記基体1の裏面に向けて媒体Aを吐出する裏面用吐出口9bとを設けた。なお、主表面用吐出口9a及び裏面用吐出口9bの形状は、単なる開口とした。
【0110】
以上の構成を有する現像装置を稼働させた後、本実施例においては、温度調整用媒体Aを基板1の主表面及び裏面に吐出した。その後、媒体Aの供給を停止した。そして、現像剤を基板1の主表面に吐出し、現像処理を行った。
【0111】
現像剤の供給を停止した後、リンス処理を行った。そして、結露防止媒体供給部50から供給された常温の媒体Bを、主表面用吐出口9a及び裏面用吐出口9bから基体1に吐出し、結露防止処理を行った。
【0112】
その後、200rpmで10秒、400rpmで10秒、1200rpmで10秒、基板チャック13を回転させ、乾燥処理を行った。
【0113】
この時、基板1上における、最も微細なパターンかつ正常に解像している抜き部の線幅を測定し、この線幅を限界となる解像度と定めた。
【0114】
<比較例>
実施例では基体温度調節用の媒体供給部3及び結露防止用媒体供給部50を設けたが、図5に示す比較例においてはこれらを設けなかった。これ以外は、実施例と同様の工程を行った。この比較例についても、実施例と同様にレジスト付き基板を現像した。
【0115】
<評価>
実施例及び比較例により得られた試料(レジスト付き基板)について、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、実施例においては11nmという高い限界解像度のレジストパターンが得られた。一方、比較例においては、実施例に比べて解像度は低かった。
【符号の説明】
【0116】
1 基体
2 現像処理部
21 基体処理室
22 操作部
3 媒体供給部
4 現像剤供給部
5 基体保持部
6 媒体貯留部
7 第1輸送管
8 基体温度調節媒体用温度調整部
9 媒体吐出部
9a 主表面吐出口
9b 裏面吐出口
10 弁部
13 基体チャック
14 シャフト
15 シール部材
16 基体温度調節媒体供給ポンプ
18 第2輸送管
19 結露防止媒体供給ポンプ
20 吐出方向変更部
A 媒体A
41 現像剤貯留部
42 現像剤供給路
43 バルブ又は弁
416 現像剤供給ポンプ
48 温度調整部
49 現像剤吐出部
50 結露防止媒体供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に対して流体による処理を行うために、前記基体に前記流体を供給する方法において、
実質的に前記流体と同じ温度であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない基体温度調節用の媒体Aを前記基体に対して供給し、前記基体の温度を実質的に前記流体と同じ温度にする基体温度調節工程と、
前記基体温度調節工程後、基体処理室にて前記基体に前記流体を供給する流体供給工程と、
を有することを特徴とする流体供給方法。
【請求項2】
前記温度調整部にて設定される温度は、前記基体処理室外の温度とは異なる温度であることを特徴とする請求項1に記載の流体供給方法。
【請求項3】
前記基体は、前記流体によって処理されるべき主表面と、前記主表面に対向する裏面とを有し、
前記基体温度調節工程において、前記基体の主表面及び裏面に前記媒体Aを吐出し、
前記流体供給工程において、前記基体に前記流体を吐出して供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体供給方法。
【請求項4】
前記基体温度調節工程においては、前記基体の主表面及び裏面に前記媒体Aを吐出する際に、前記基体を挟んで対向しない位置に前記媒体が吐出されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流体供給方法。
【請求項5】
前記基体温度調節工程前に、
前記流体を所定の温度に調整する流体温度調整工程と、
前記媒体Aをこの所定の温度と実質的に同じ温度にする媒体温度調整工程と、
を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の流体供給方法。
【請求項6】
前記流体温度調整工程の所定の温度を、前記流体供給工程が行われる前記基体処理室内の露点温度以下とすることを特徴とする請求項5に記載の流体供給方法。
【請求項7】
前記流体供給工程後、
前記基体に結露が生じない温度の媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない結露防止用の媒体Bを前記基体に対して吐出し、前記基体の温度を、前記基体に結露が生じない温度にする第2の基体温度調節工程と、
更に、前記第2の基体温度調節工程の後に、前記基体を乾燥させる乾燥工程と、
を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の流体供給方法。
【請求項8】
前記媒体Bは、前記流体供給工程が行われる基体処理室外と実質的に同じ温度であることを特徴とする請求項7に記載の流体供給方法。
【請求項9】
第2の基体温度調節工程の際、又は、第2の基体温度調節工程と乾燥工程との間に、
前記基体処理室内を、前記基体処理室外の露点温度を上回る温度にする工程を更に有することを特徴とする請求項7又は8に記載の流体供給方法。
【請求項10】
前記基体温度調節工程で用いられる媒体A及び前記第2の基体温度調節工程で用いられる媒体Bは、同一種類の液状媒体であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の流体供給方法。
【請求項11】
前記流体は現像剤であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の流体供給方法。
【請求項12】
レジスト層が形成された主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体に対して、基体処理室にて現像剤を吐出することにより現像を行うための流体供給方法であって、
前記現像剤を、前記基体処理室内の露点温度以下且つ前記基体処理室外の温度とは異なる温度に調整する現像剤温度調整工程と、
実質的には基体を溶解しない又は前記基体と反応しない基体温度調節用の媒体Aを前記現像剤温度調整工程での調整温度と実質的に同じ温度にする媒体温度調整工程と、
前記現像剤温度調整工程及び媒体温度調整工程後、前記媒体Aを前記基体の主表面及び裏面に対して吐出し、前記基体の温度を実質的に前記現像剤と同じ温度にする基体温度調節工程と、
前記基体温度調節工程後、前記基体に前記現像剤を吐出する現像剤吐出工程と、
前記現像剤吐出工程後、前記基体処理室内の露点温度を上回る温度且つ前記流体供給工程が行われる基体処理室外と実質的に同じ温度の媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない結露防止用の媒体Bを前記基体に対して吐出し、前記基体の温度を実質的に前記媒体Bと同じ温度にする第2の基体温度調節工程と、
前記第2の基体温度調節工程の際又はその後に、前記基体処理室内を、前記基体処理室外の露点温度を上回る温度にし、その後、前記基体を乾燥させる工程と、
を有することを特徴とする流体供給方法。
【請求項13】
基体に対して流体による処理を行うために、前記基体に前記流体を基体処理室にて供給する装置において、
前記基体に流体を供給する流体供給部と、
前記流体を供給する前の基体温度調節用の媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Aを前記基体に供給する媒体供給部と、
前記媒体供給部の少なくとも一部に設けられ、実質的に前記流体と同じ温度となるように前記媒体Aの温度を調整する媒体温度調整部と、
を有することを特徴とする流体供給装置。
【請求項14】
前記流体の温度を調整するために前記流体供給部に流体温度調整部が設けられ、前記流体温度調整部にて設定される温度は、前記基体処理室外の温度とは異なる温度であることを特徴とする請求項13に記載の流体供給装置。
【請求項15】
前記基体は、前記流体によって処理されるべき主表面と、前記主表面に対向する裏面とを有し、
前記流体供給装置は更に、前記媒体供給部に設けられる媒体吐出部を有し、
前記媒体供給部は前記基体の主表面及び裏面に対して前記媒体Aを吐出することを特徴とする請求項13又は14に記載の流体供給装置。
【請求項16】
前記媒体吐出部のうち少なくとも1つずつが前記基体の主表面及び裏面各々に対向することを特徴とする請求項15に記載の流体供給装置。
【請求項17】
前記媒体供給部は、
前記媒体Aを貯留する媒体貯留部と、
前記媒体貯留部と連通した媒体供給用の第1輸送部と、
前記第1輸送部に設けられる媒体吐出部と、
を有し、
前記媒体温度調整部は前記第1輸送部に設けられることを特徴とする請求項13ないし16のいずれかに記載の流体供給装置。
【請求項18】
前記流体供給装置は更に、前記基体の裏面から基体を保持する基体保持部を有し、前記基体保持部に前記基体が保持される際、前記前記基体の主表面側を上方、前記基体の裏面側を下方とすると、前記媒体吐出部は、
前記基体よりも上方に配置され、かつ前記基体の主表面に向けて媒体Aを吐出する主表面用吐出口と、
前記基体よりも下方に配置され、かつ前記基体の裏面に向けて媒体Aを吐出する裏面用吐出口と、
を有することを特徴とする請求項13ないし17のいずれかに記載の流体供給装置。
【請求項19】
前記主表面用吐出口及び裏面用吐出口は、前記基体を挟んで対向しない位置に設けられていることを特徴とする請求項18に記載の流体供給装置。
【請求項20】
前記基体の結露を防止するための結露防止媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Bを供給する結露防止媒体供給部を更に有することを特徴とする請求項13ないし19のいずれかに記載の流体供給装置。
【請求項21】
前記結露防止媒体供給部は、
前記媒体Bを貯留する媒体貯留部と、
前記媒体Bのための媒体貯留部と連通した媒体B供給用の第2輸送部と、
前記第2輸送部に設けられる前記媒体Bのための媒体吐出部と、
を有することを特徴とする請求項20に記載の流体供給装置。
【請求項22】
前記結露防止媒体供給部は更に、
前記第2輸送部に設けられ、前記基体処理室外と実質的に同じ温度となるように前記媒体Bの温度を調整する、前記媒体Bのための媒体温度調整部を有することを特徴とする請求項20又は21に記載の流体供給装置。
【請求項23】
レジスト層が形成されている主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体に対して基体処理室にて現像剤を吐出することにより現像を行うための流体供給装置において、
前記基体の裏面から前記基体を保持する基体保持部と、
前記基体保持部により保持された前記基体に現像剤を供給する現像剤供給部と、
前記現像剤の温度を、前記基体処理室外の温度とは異なる温度調整するために前記現像剤供給部に設けられた現像剤温度調整部と、
前記現像剤を供給する前の基体温度調節媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Aを貯留する媒体貯留部と、
前記媒体貯留部と連通した基体温度調節媒体供給用の第1輸送部と、
前記第1輸送部に設けられる媒体吐出部と、
前記第1輸送部に設けられ、実質的に前記現像剤と同じ温度となるように前記媒体温度を調整する媒体温度調整部と、
前記基体の結露を防止するための結露防止媒体であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない媒体Bを供給する結露防止媒体供給部と、
を有し、
前記基体保持部に前記基体が保持される際、前記前記基体の主表面側を上方、前記基体の裏面側を下方とすると、前記媒体吐出部は、
前記基体よりも上方に配置され、かつ前記基体の主表面に向けて媒体を吐出する主表面用媒体吐出口と、
前記基体よりも下方に配置され、かつ前記基体の裏面に向けて媒体を吐出する裏面用媒体吐出口と、
を有し、
前記主表面用媒体吐出口及び裏面用媒体吐出口は、前記基体を挟んで対向しない位置に設けられることを特徴とする流体供給装置。
【請求項24】
所定のパターンが形成されるべき主表面と前記主表面に対向する裏面とを有する基体に対して所定のパターンを形成し、モールドを製造する方法において、
レジスト層が設けられた前記基体主表面にエネルギビームを照射することにより、所定のパターン形状の露光を行う工程と、
前記露光工程の後、実質的に現像剤と同じ温度であって、実質的には前記基体を溶解しない又は前記基体と反応しない基体温度調節用の媒体Aを前記基体に対して吐出し、前記基体の温度を実質的に前記現像剤と同じ温度にする基体温度調節工程と、
前記基体温度調節工程の後、基体処理室において前記現像剤により現像を行う工程と、
を有することを特徴とするモールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96148(P2012−96148A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244986(P2010−244986)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】