説明

流体供給装置

【課題】直動モータを用いてパイプ材を直線動作させるにあたり、中間部材を介することなく、パイプ材を直接的に直線動作させることを可能にし、パイプ材を直線動作させるリニア位置決め機構をコンパクト化すると共に、中間部材による誤差の増加を排除し、位置決め精度を向上させる。
【解決手段】流体の吐出及び/又は吸入を行う流体供給装置1において、流体供給路に介在するパイプ材7をモータの駆動で直線動作させるにあたり、モータを、モータ本体11に対してモータ軸10を相対的に直線動作させる直動モータ8で構成すると共に、モータ軸10の軸心に沿って形成される軸孔10aにパイプ材7を挿通固定し、該挿通固定したパイプ材7を直動モータ8の駆動にもとづいて直線動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の吐出及び/又は吸入を行う分注機などの流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、検体の分析プロセス等においては、試薬の分注、容器の移動、容器内検体の反応、撹拌等に際し、精度の高い位置決めを行う必要があり、例えば、試薬等の液体を複数の容器に分配状に注入する分注機、試験管内の検体を撹拌棒の挿入により撹拌する攪拌機、各種センサーを近接停止して容器内検体の分析や、反応促進する分析機などが知られている。これらの多くの装置は、作動体を直線動作させるリニア位置決め駆動機構を備えており、例えば、分注機では、試液の吐出口や吸入口となるニードルを直線動作させるリニア位置決め駆動機構が設けられる。
【0003】
しかしながら、従来のリニア位置決め駆動機構は、モータ軸が回転する回転型モータを動力源とし、送りネジの一端をカップリングを介してモータ軸と連結し、中間を連結ナット部材を介して作動体に螺合させ、他端を基体に回転可能に軸支した構造のものであるため、駆動機構の部品点数や構造が複雑になり、コスト高の要因となる不都合がある。
【0004】
そこで、この様な複雑な機構を不要とし、安価なものとするために、直動モータを動力源としたリニア位置決め機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された直動モータは、ネジ軸からなるモータ軸と、該モータ軸に螺合する回転ナットが内装されたモータ本体とを備え、回転ナットの回転駆動によりモータ軸を相対的に直線動作させるリニアステッピングモータであるが、リニア位置決め機構では、いわゆるリニアシャフトモータの適用も可能である。このリニアシャフトモータは、N極とS極が交互に配列された棒状磁石からなるモータ軸と、コイル部材を内装したモータ本体とを備えており、コイル部材の励磁によりモータ軸を相対的に直線動作させるものである(例えば、特許文献2〜5参照)。
【0005】
特許文献1に記載されるリニア位置決め機構は、試薬の分注を行うシリンダユニットに適用され、直動モータの駆動力でピストンを直線動作させているが、このようなリニア位置決め機構をニードルなどのパイプ材の直線動作に適用することも提案される。例えば、特許文献6に示される分注装置(2)に直動モータを連結すれば、直動モータによるニードル(11)の直線動作が可能である。
【0006】
しかしながら、この様なリニア位置決め機構では、直動モータとニードル(11)の間に分注装置(2)が介在するので、装置のコンパクト化が難しい。特に、複数のニードル(11)を連設したり、これらのニードル(11)をそれぞれ独立的に直線動作させるリニア位置決め機構にあっては、装置の大型化や構造の複雑化が著しいだけでなく、大幅なコスト高になるという問題がある。また、この場合、直動モータ自体が持つ螺合公差などの誤差に加え、直動モータと分注装置(2)の連結誤差や、分注装置(2)に対するニードル(11)の取付誤差が影響するので、必要な位置決め精度を確保できない可能性もある。
【特許文献1】特開2004−308690号公報
【特許文献2】特開2004−125699号公報
【特許文献3】特開2004−129440号公報
【特許文献4】特開2004−129441号公報
【特許文献5】特開2004−297884号公報
【特許文献6】特開2005−24477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、直動モータを用いて流体供給路を直線動作させるものでありながら、中間部材を介することなく、流体供給路を直接的に直線動作させることを可能にし、その結果、流体供給路を直線動作させるリニア位置決め機構のコンパクト化が可能になり、特に、複数の流体供給路を連設したり、これらの流体供給路をそれぞれ独立的に直線動作させるリニア位置決め機構にあっては、装置の小型化や構造の簡略化が顕著になるだけでなく、大幅なコストダウンが図れ、さらには、中間部材による誤差の増加を排除し、位置決め精度の向上も図れる流体供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の流体供給装置は、流体の吐出及び/又は吸入を行う流体供給装置において、流体供給路をモータの駆動で直線動作させるにあたり、前記モータを、モータ本体に対してモータ軸を相対的に直線動作させる直動モータで構成すると共に、前記モータ軸の軸心に沿って形成される軸孔を流体供給路として利用し、該流体供給路を前記直動モータの駆動にもとづいて直線動作させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成したことにより、直動モータを用いて流体供給路を直線動作させるものでありながら、中間部材を介することなく、流体供給路を直接的に直線動作させることを可能にし、その結果、流体供給路を直線動作させるリニア位置決め機構のコンパクト化が可能になり、特に、複数の流体供給路を連設したり、これらの流体供給路をそれぞれ独立的に直線動作させるリニア位置決め機構にあっては、装置の小型化や構造の簡略化が顕著になるだけでなく、大幅なコストダウンが図れ、さらには、中間部材による誤差の増加を排除し、位置決め精度の向上も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する流体供給装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る流体供給装置を示す断面図である。この図に示すように、本発明の第一実施形態に係る流体供給装置1Aは、試液(流体)を検体容器2に分注(吐出)する分注機(定量分与器)に応用したものであって、試液を貯溜する試液容器3と、チューブ4を介して試液容器3から試液を吸入するポンプ5と、可撓性のチューブ6を介してポンプ5から送られる試液を検体容器2内に吐出するパイプ材(流体供給経路の一部)7と、該パイプ材7を上下方向に直線動作させる直動モータ8と、直動モータ8やパイプ材7を支持するブラケット9とを備えて構成される。
【0012】
第一実施形態の直動モータ8は、N極とS極が交互に配列された棒状磁石からなるモータ軸10と、コイル部材を内装したモータ本体11とを備え、コイル部材の励磁によりモータ軸10を相対的に直線動作させるリニアシャフトモータである。通常、リニアシャフトモータのモータ軸10は、N極及びS極を構成する円盤状のマグネット(永久磁石)12を外パイプ13内に直列状に配列して構成されるが、本実施形態のモータ軸10には、中心に丸孔が形成されたドーナッツ状のマグネット12を適用することにより、軸心部を貫通する軸孔10aが形成される。なお、ブラケット9は、正面視コ字形の固定部材であって、直動モータ8のモータ本体11を固定支持すると共に、上下一対のガイド14を介してモータ軸10を上下スライド自在に支持している。
【0013】
パイプ材7は、例えば、ステンレス管であって、その下端部には、試液の吐出口となるニードル部7aが形成され、上端部は、チューブ6を介してポンプ5に接続される。直動モータ8によるパイプ材7の直線動作は、中間部材を介することなく直接的に行われる。具体的には、モータ軸10の軸心に沿って形成される軸孔10aにパイプ材7を挿通固定し、該挿通固定したパイプ材7を直動モータ8の駆動にもとづいて上下方向に直線動作させる。なお、この場合、軸孔10aは供給路として利用され、流路としての供給路はパイプ材7として構成されている。
【0014】
パイプ材7は、洗浄や交換を可能とするために、モータ軸10に対して着脱自在であることが好ましい。例えば、パイプ材7の上端部に上部止め板15を固設し、下端部に着脱自在な下部止め板16を装着する。このようにすると、パイプ材7をモータ軸10の軸孔10aに上方から挿通した後、パイプ材7の下端部に下部止め板16を装着することにより、パイプ材7をモータ軸10に取り付け固定でき、また、逆の手順により、パイプ材7をモータ軸10から取り外すことが可能になる。なお、本実施形態では、ブラケット9に設けたフォトセンサ17で下部止め板16を検出することにより、モータ軸10の上昇リミット検出を行っている。また、ブラケット9には、ブレーキ用ソレノイド18が設けれられており、ブレーキ用ソレノイド18でモータ軸10の外周を制動することにより、モータ軸10の停止位置が保持される。
【0015】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る流体供給装置1Bを図2に沿って説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付け、前記実施形態の説明を援用する。
【0016】
図2は本発明の第二実施形態に係る流体供給装置を示す要部断面図である。この図に示すように、本発明の第二実施形態に係る流体供給装置1Bは、モータ軸10をリニアガイド機構19でリニアガイドする点が前記実施形態と相違している。リニアガイド機構19は、例えば、モータ軸10の上下両端部を一体的に支持する正面視コ字状の可動部20と、該可動部20を固定部21に対して上下方向移動自在にガイドするガイド部22とを備えて構成されている。このようなリニアガイド機構19を用いてモータ軸10をリニアガイドすると、モータ軸10の支持強度が高められるだけでなく、モータ本体11に優る精度でモータ軸10をリニアガイドし、位置決め精度の向上が図れる。
【0017】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る流体供給装置1Cを図3に沿って説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付け、前記実施形態の説明を援用する。
【0018】
図3は本発明の第三実施形態に係る流体供給装置を示す断面図である。この図に示すように、本発明の第三実施形態に係る流体供給装置1Cは、試液の吸入・貯溜・吐出する分注工程を行う分注装置への応用例を示したものであり、直動モータ23としてリニアステッピングモータを用いる点や、ポンプに代えてシリンダユニット24を備える点が前記実施形態と相違している。直動モータ23として用いるリニアステッピングモータは、ネジ軸からなるモータ軸25と、該モータ軸25に螺合する回転ナットが内装されたモータ本体26とを備え、回転ナットの回転駆動によりモータ軸25を相対的に直線動作させるように構成されており、その使用に際しては、モータ軸25を回り止めする必要があるものの、リニアシャフトモータに比して安価であるだけでなく、ブレーキを掛けなくてもモータ軸25の停止位置を保持できるという利点がある。また、モータ軸25の軸孔25aにパイプ材7を挿通固定して試液(通常は低温に維持)を流すと、モータ軸25の温度上昇が抑えられるので、モータ軸25の熱膨張による螺入公差の変動を抑止し、位置決め精度を向上させることが可能になる。
【0019】
第三実施形態のモータ軸25は、第二実施形態と同様に、リニアガイド機構27でリニアガイドされる。リニアガイド機構27は、例えば、モータ軸25の上下両端部を一体的に支持する正面視コ字状の可動部28と、該可動部28を固定部29に対して上下方向移動自在にガイドするガイド部30とを備えて構成されている。このようなリニアガイド機構27を用いてモータ軸25をリニアガイドすると、モータ軸25の支持強度が高められるだけでなく、モータ本体26に優る精度でモータ軸25をリニアガイドし、位置決め精度の向上が図れる。なお、シリンダユニット24は、例えば、試液を貯溜するシリンジ31と、シリンジ31内をスライドするピストン32と、ピストン32を直線動作させるモータ(リニアステッピングモータ)33とを備えて構成されるものである。
【0020】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、流体の吐出及び/又は吸入を行う流体供給装置1における流体(試液)供給路を、直動モータ8の駆動で直線動作させるのであるが、直動モータ8のモータ軸10は、その軸心に沿って形成させた軸孔10aを流体供給路として直接または間接的な流路として利用し、該流体供給路は、前記直動モータ8の駆動にもとづいて直線動作させる構成となっているので、当該軸孔10aを、試液の吐出・吸入を行う定量分与器や分注装置等に対し、ポンプ5やシリンダユニット24に連通する流体供給路の一部として利用でき、また、特許文献1の如きのシリンダユニット機構により、シリンダ自体が試液の吸入・貯溜・吐出する機能を有する分注装置や、シリンダユニット24のシリンダ部31に対しても、貯溜機能を備えた流体供給路として利用することができる。その結果、直動モータ8を用いて流体供給路を直線動作させるものでありながら、中間部材を介することなく、流体供給路を直接的に直線動作させることを可能にし、その結果、流体供給路を直線動作させるリニア位置決め機構のコンパクト化が可能になり、特に、複数の流体供給路を連設したり、これらの流体供給路をそれぞれ独立的に直線動作させるリニア位置決め機構にあっては、装置の小型化や構造の簡略化が顕著になるだけでなく、大幅なコストダウンが図れ、さらには、中間部材による誤差の増加を排除し、位置決め精度の向上も図ることができる利点がある。
【0021】
また、流体供給路をパイプ材7で構成すると共に、前記モータ軸10の軸孔10aにパイプ材を挿通固定し、該挿通固定したパイプ材7を流体供給路に構成せしめて、前記直動モータ8の駆動にもとづいて直線動作させるようにしたので、直動モータ8とパイプ材7の間に中間部材を介在させることなく、パイプ材7を直接的に動作させることができ、その結果、パイプ材7を直線動作させるリニア位置決め機構のコンパクト化が可能になる。特に、複数のパイプ材7を連設したり、これらのパイプ材7をそれぞれ独立的に直線動作させるリニア位置決め機構にあっては、装置の小型化や構造の簡略化が顕著になるだけでなく、大幅なコストダウンが図れる。しかも、中間部材による誤差の増加が排除されるので、位置決め精度の向上も図ることができる。
【0022】
しかも、パイプ材7は、モータ軸10に対して着脱自在であるため、洗浄や交換を任意に行うことができる。例えば、一定の使用期間毎に新規なパイプ材7に交換したり、試液の種類を変更する毎にパイプ材7を外して洗浄する等の使用態様に対応できる。また、パイプ材7の径寸法は、軸孔10aの径寸法の範囲内で任意に選択できるので、分注機(流体供給装置)の汎用性が高められるという利点がある。また、本実施形態のパイプ材7は、一端部にニードル部7aを有するので、ニードルを別部材で構成する場合に比べ、部品点数の削減やコストダウンが図れる。
【0023】
また、本実施形態の直動モータ8は、N極とS極が交互に配列された棒状磁石からなるモータ軸10と、コイル部材を内装したモータ本体11とを備え、コイル部材の励磁によりモータ軸10を相対的に直線動作させるリニアシャフトモータであるため、可及的に長い直線動作ストロークを確保できるだけでなく、モータ軸10の回り止めが不要である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係る流体供給装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る流体供給装置を示す要部断面図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係る流体供給装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1A 流体供給装置
1B 流体供給装置
1C 流体供給装置
2 検体容器
3 試液容器
4 チューブ
5 ポンプ
6 チューブ
7 パイプ材
7a ニードル部
8 直動モータ
9 ブラケット
10 モータ軸
10a 軸孔
11 モータ本体
12 マグネット
13 外パイプ
14 ガイド
15 上部止め板
16 下部止め板
17 フォトセンサ
18 ブレーキ用ソレノイド
19 リニアガイド機構
20 可動部
21 固定部
22 ガイド部
23 直動モータ
24 シリンダユニット
25 モータ軸
25a 軸孔
26 モータ本体
27 リニアガイド機構
28 可動部
29 固定部
30 ガイド部
31 シリンジ
32 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の吐出及び/又は吸入を行う流体供給装置において、流体供給路をモータの駆動で直線動作させるにあたり、前記モータを、モータ本体に対してモータ軸を相対的に直線動作させる直動モータで構成すると共に、前記モータ軸の軸心に沿って形成される軸孔を流体供給路として利用し、該流体供給路を前記直動モータの駆動にもとづいて直線動作させることを特徴とする流体供給装置。
【請求項2】
前記流体供給路をパイプ材で構成すると共に、前記モータ軸の軸孔にパイプ材を挿通固定し、該挿通固定したパイプ材を流体供給路に構成せしめて、前記直動モータの駆動にもとづいて直線動作させることを特徴とする請求項1に記載の流体供給装置。
【請求項3】
前記パイプ材を前記モータ軸に対して着脱自在としたことを特徴とする請求項2に記載の流体供給装置。
【請求項4】
前記パイプ材の一端部に、流体の吐出口及び/又は吸入口となるニードルを形成し、前記パイプ材の他端部に、可撓性のチューブを介して、ポンプ及び/又はシリンダユニットを接続したことを特徴とする請求項2又は3に記載の流体供給装置。
【請求項5】
前記直動モータは、N極とS極が交互に配列された棒状磁石からなるモータ軸と、コイル部材を内装したモータ本体とを備え、前記コイル部材の励磁により前記モータ軸を相対的に直線動作させるリニアシャフトモータであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の流体供給装置。
【請求項6】
前記直動モータは、ネジ軸からなるモータ軸と、該モータ軸に螺合する回転ナットが内装されたモータ本体とを備え、前記回転ナットの回転駆動により前記モータ軸を相対的に直線動作させるリニアステッピングモータであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の流体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−155656(P2007−155656A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354690(P2005−354690)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000229645)日本パルスモーター株式会社 (46)
【Fターム(参考)】