説明

流体判別装置付タンク

【課題】タンク高さの如何によらず、同等の流体判別装置のタンクへの取り付けを可能にし、タンクに対する流体判別装置の着脱作業を容易にし、流体判別装置付きタンクを簡素化し軽量化する。
【解決手段】タンク102の底部に設けられた突出開口形成部材102bと流体判別装置104とが可撓性管状部材106により着脱可能に接続される。可撓性管状部材106は、突出開口形成部材102bに対し外側から締着される上端部1061と、流体判別装置104に対し外側から締着される下端部1062とを有する。可撓性管状部材106の周囲には、突出開口形成部材102bへの締付けのための加締めバンド1081と、流体判別装置104への締付けのための加締めバンド1082とが付される。突出開口形成部材106は、タンク底板の開口102cに対応して位置し、タンク底板に溶接により固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容された流体を判別するための流体判別装置を備えたタンクすなわち流体判別装置付タンクに関するものである。
【0002】
本発明の流体判別装置付タンクは、例えば自動車の内燃エンジンなどから排出される排ガスを浄化するシステムにおいて窒素酸化物(NOx)の分解のために排ガス浄化触媒に対し噴霧される尿素水溶液を収容するためのタンクに適用することができる。
【背景技術】
【0003】
自動車の内燃エンジンではガソリンや軽油などの化石燃料が燃焼される。これに伴って発生する排ガス中には、水や二酸化炭素などと共に、未燃焼の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)や、硫黄酸化物(SOx)や、窒素酸化物(NOx)等の環境汚染物質が含まれる。近年、特に環境保護及び生活環境の汚染防止のため、これら自動車の排ガスを浄化すべく各種の対策が講じられている。
【0004】
このような対策の1つとして、排ガス浄化触媒装置の使用が挙げられる。これは、排気系の途中に排ガス浄化用三元触媒を配置し、ここで、CO、HC、NOx等を酸化還元反応により分解して、無害化を図るものである。触媒装置でのNOxの分解を継続的に維持するために、排気系の触媒装置のすぐ上流側から触媒に対して尿素水溶液が噴霧される。この尿素水溶液は、NOx分解の効果を高めるためには特定の尿素濃度範囲にあることが必要とされ、特に尿素濃度32.5%が最適であるとされている。
【0005】
尿素水溶液は、自動車に積載される尿素水溶液タンクに収容されるのであるが、経時的に濃度変化が生ずることがあり、また、タンク内において局所的に濃度分布の不均一が発生することもある。タンクからポンプにより供給管を介して噴霧ノズルへと供給される尿素水溶液は、一般にタンクの底部に近い出口から採取されるので、この領域のものが所定の尿素濃度であることが触媒装置の効率を高めるためには重要である。
【0006】
また、尿素水溶液タンクに誤って尿素水溶液以外の液体が収容されることも現実にはあり得る。このような場合、液体が所定の尿素濃度の尿素水溶液以外であることを素早く検知して警告を発することが、触媒装置の機能発揮のためには必要である。
【0007】
このような目的のために、特開2005−337969号公報(特許文献1)には、被測定液体が所定のものであるか否かの識別を行う液種識別装置として、発熱体及び感温体を含んでなる傍熱型液種検知部と被測定液体の温度を検知する液温検知部とを有する液種識別センサー部を備えたものが記載されている。この液種識別装置では、傍熱型液種検知部の発熱体に対して単一パルス電圧を印加して発熱体を発熱させ、傍熱型液種検知部の感温体と液温検知部とを含んでなる液種検知回路の出力に基づき被測定液体の識別を行う識別演算部を備えている。ここで、液温検知部として液種検知部と同様な構成のものを使用することが開示されている。
【0008】
この特許文献1に記載されている液種識別装置において、傍熱型液種検知部と液温検知部とが、モールド樹脂によって一体化されて、検知部モールドパッケージの形態をなしている。発熱体及び感温体を含んでなる液種検知部としての薄膜チップが熱伝達部材としての金属製フィンに接合されており、該金属製フィンの一端部が被測定液体との熱交換のためにモールド樹脂から突出している。感温体を含んでなる液温検知部としての薄膜チップが熱伝達部材としての金属製フィンに接合されており、該金属製フィンの一端部が被測定液体との熱交換のためにモールド樹脂から突出している。
【特許文献1】特開2005−337969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載されている液種識別装置即ち流体判別装置は、尿素水溶液タンクの上部に形成された開口部に支持部の上端部を取り付け、該支持部の下端部に識別センサー部を取り付けてなる。
【0010】
ところで、識別センサー部はタンク内において底部に近い高さ位置に配置されるのが好ましい。このため、特許文献1の液種識別装置では、タンクの大きさ特に高さによって長さの異なる支持部が必要になる。このように、タンクに応じた複数種類の構成部材を要することは、流体判別装置付タンクの製造効率の観点から好ましいことではない。
【0011】
また、特許文献1の液種識別装置のようにタンク上部に支持部の上端が支持される形態のものでは、タンクへの液種識別装置の着脱に際して、タンク上方に作業のための空間が存在することが必要である。しかるに、尿素水溶液タンクが搭載される自動車などでは、タンク上方における該タンクと車体との間に空間的余裕のない場合が多い。その場合には、タンクに対する液種識別装置の着脱作業の際にタンクを車体から取り外す手間が必要になり、着脱作業終了後にタンクを車体に取り付ける手間も必要になる。
【0012】
更に、上記の尿素水溶液タンクのように自動車積載のタンクの場合には、走行する自動車からタンクへと常時振動が伝達され、加えてタンク内の流体が常時揺動するので、特許文献1の液種識別装置のようにタンク上部に支持部の上端部が支持される形態のものでは、支持部とタンクとの接続部分に繰り返し応力が印加される。このため、支持部及び該支持部とタンクとの接続部分を頑丈なものとすることが要求され、液種識別装置付きタンクの重量が増加し及び構造が複雑化する。
【0013】
本発明の第1の目的は、以上のような現状に鑑みて、タンクの大きさ特に高さの如何によらず、同等の流体判別装置をタンクに取り付けるのを可能にすることにある。
【0014】
また、本発明の第2の目的は、タンク上方に該タンクと車体との間の空間的余裕のない場合であっても、タンクに対する流体判別装置の着脱作業を容易にすることにある。
【0015】
また、本発明の第3の目的は、流体判別装置付きタンクの構成を簡素化し、ひいては流体判別装置付きタンクを軽量化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、上記いずれかの目的を達成するものとして、
流体判別装置を備えたタンクであって、
該タンクの底部に突出開口形成部材が設けられており、
該突出開口形成部材と前記流体判別装置とが可撓性管状部材により着脱可能に接続されていることを特徴とする流体判別装置付タンク、
が提供される。
【0017】
本発明の一態様においては、前記可撓性管状部材は、前記突出開口形成部材の外周面に対して外側から締着される上端部と、前記流体判別装置の外周面に対して外側から締着される下端部とを有する。本発明の一態様においては、前記可撓性管状部材の周囲には、前記突出開口形成部材への締め付けのための第1の加締めバンドと、前記流体判別装置への締め付けのための第2の加締めバンドとが付されている。本発明の一態様においては、前記第1の加締めバンド及び第2の加締めバンドのうちの少なくとも一方は、締め付け力が150乃至800Nである。本発明の一態様においては、前記突出開口形成部材は、前記タンクの底板に形成された開口に対応して位置しており、前記タンクの底板に溶接により固定されている。
【0018】
本発明の一態様においては、前記流体判別装置は、前記突出開口形成部材内部を含む前記タンク内部の被測定流体との熱交換が可能なように配置された検知部を備えている。本発明の一態様においては、前記流体判別装置は、更に、前記検知部を用いて構成される検知回路と、該検知回路の出力に基づき前記被測定流体の判別を行う演算部とを備えている。
【0019】
本発明の一態様においては、前記流体判別装置は、前記可撓性管状部材により保持される第1の部分と該第1の部分から上方へと延びた第2の部分とを有しており、前記検知部は前記第2の部分に配置されている。本発明の一態様においては、前記流体判別装置の第1の部分には外部との電気的接続のためのコネクタが形成されている。本発明の一態様においては、前記流体判別装置の検知部は、前記突出開口形成部材の内部に位置している。本発明の一態様においては、前記突出開口形成部材は、前記タンクの底板に形成された開口に対応して位置しており、前記タンクの底板に溶接により固定されており、前記流体判別装置の検知部は、前記開口より上に位置している。本発明の一態様においては、前記突出開口形成部材は、前記検知部の位置より上まで延びている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の流体判別装置付タンクによれば、タンクの底部に設けられた突出開口形成部材と流体判別装置とを可撓性管状部材により着脱可能に接続するので、
(1)タンクの大きさ特に高さの如何によらず、同等の流体判別装置をタンクに取り付けることが可能になり、
(2)タンク上方に該タンクと車体との間の空間的余裕のない場合であっても、タンク下方には該タンクと車体との間に空間的余裕がある場合が多いので、タンクに対する流体判別装置の着脱作業が容易になり、
(3)流体判別装置の交換が容易になり、
(4)タンク内において上部から下部へと延びる支持部が不要であるので、流体判別装置付きタンクの構成が簡素化され、流体判別装置付きタンクが軽量化され、
(5)突出開口形成部材が変形しても、可撓性管状部材でのシール機能により、タンク内の流体の漏れが抑止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明による流体判別装置付タンクの一実施形態を示す模式的部分断面図であり、図2はそのX部分拡大図である。本実施形態においては、タンク内に収容されるべき流体が尿素水溶液であり、タンクが尿素水溶液タンクである。即ち、判別される流体(被測定流体)として液体(被測定液体)USを想定している。尿素水溶液タンクは、自動車に搭載された排ガス浄化システムを構成するNOx分解用のものである。
【0023】
本実施形態において、金属等からなるタンク102の底部を構成する底板には、下方に膨出した液体貯め102aが形成されており、この上に配置される不図示の汲出手段により尿素水溶液がタンク外へと汲み出される。また、タンク102の底板には、液体貯め102aに近接する位置において、金属等からなる突出開口形成部材102bが設けられている。突出開口形成部材102bは、タンク102の底板に形成された開口102cに対応して位置しており、該開口102cに適合するように配置され、タンク底板に溶接により固定されている。突出開口形成部材102bは、上下方向を向いた鍔付の円筒状をなしており、鍔の部分がタンク底板の下側に溶接されている。これにより、開口102cに対応する位置に、下方へと突出する突出開口が形成される。
【0024】
この突出開口に、流体判別装置104が着脱可能に取り付けられる。具体的には、突出開口形成部材102bと流体判別装置104とが可撓性管状部材106により着脱可能に接続されている。可撓性管状部材106は、突出開口形成部材102bの外周面に対して外側から締着される上端部1061と、流体判別装置104の外周面に対して外側から締着される下端部1062とを有する。可撓性管状部材106は、たとえばEPDMゴム等のゴムからなる。可撓性管状部材106の上端部1061の周囲には、突出開口形成部材102bへの締め付けのための第1の加締めバンド1081が付されている。また、可撓性管状部材106の下端部1062の周囲には、流体判別装置104への締め付けのための第2の加締めバンド1082とが付されている。第1の加締めバンド1081及び第2の加締めバンド1082のうちの少なくとも一方は、好ましくは、締め付け力が150乃至800Nである。加締めバンドの締め付け力は、バンドの幅、厚さ及び外径の大小に応じて、適宜設定される。加締めバンドとしては、たとえば、OETIKER社製のSteplessEarClamps(商品名)を好ましく使用することができる。
【0025】
図3は本発明による流体判別装置付タンクの他の実施形態を示す模式的部分斜視図であり、図4はその模式的断面図であり、図5はその流体判別装置の模式的斜視図である。これらの図において、上記図1〜2におけると同様の機能を有する部材には同一の符号が付されている。
【0026】
本実施形態は、流体判別装置104の形状及び該流体判別装置104と突出開口形成部材102bとの位置関係が上記図1〜2の実施形態と異なる。尚、図3においては、第1の加締めバンド1081及び第2の加締めバンド1082の図示が省略されている。
【0027】
流体判別装置104の外周面には、第2の加締めバンド1082により可撓性管状部材106の下端部1062が締め付けられる領域のすぐ上に、環状に延びた凸部104’が形成されている。これにより、第2の加締めバンド1082による締め付け位置が容易且つ正確に設定されると共に、締め付けによる液体漏れ防止のシール効果が高められる。同様に、突出開口形成部材102bの外周面には、第1の加締めバンド1081により可撓性管状部材106の上端部1061が締め付けられる領域のすぐ下に、環状に延びた凸部102b’が形成されている。これにより、第1の加締めバンド1081による締め付け位置が容易且つ正確に設定されると共に、締め付けによる液体漏れ防止のシール効果が高められる。
【0028】
本実施形態の流体判別装置付タンクによれば、タンク底部に設けられた突出開口形成部材102bと流体判別装置104とが可撓性管状部材106により着脱可能に接続されているので、
(1)タンク102の大きさ特に高さの如何によらず、同等の流体判別装置104をタンク102に取り付けることが可能になり、
(2)タンク102の上方に該タンクと車体との間の空間的余裕のない場合であっても、タンク102の下方には該タンクと車体との間に空間的余裕がある場合が多いので、タンク102に対する流体判別装置104の着脱作業が容易になり、
(3)流体判別装置104の交換が容易になり、
(4)タンク102内において上部から下部へと延びる支持部が不要であるので、流体判別装置付きタンクの構成が簡素化され、流体判別装置付きタンクが軽量化され、
(5)突出開口形成部材102bが変形しても、可撓性管状部材106でのシール機能により、タンク102内の流体の漏れが抑止される。
【0029】
以上の実施形態においては突出開口形成部材102bの上端がタンク底板に形成された開口102cの位置まで延びているが、本発明においては、突出開口形成部材102bの上端は開口102cより更に上の位置まで延びていてもよい。
【0030】
さて、以上の図1〜2の実施形態及び図3〜5の実施形態において、流体判別装置104は、以下に説明するような構成を有する。
【0031】
図6は、流体判別装置104を構成する検知部モールドパッケージを示す模式的斜視図であり、図7はその模式的断面図であり、図8はその液種検知部を含む板状突出部を示す模式的部分断面図である。
【0032】
検知部モールドパッケージ2Aは、液種識別センサー部21及び液温センサー部22を備えている。
【0033】
液種識別センサー部21では、薄膜発熱体及び薄膜感温体を含んでなる薄膜チップからなる液種検知部21aが、接合材21bにより第1の金属製ダイパッド21cに接合されている。また、液種検知部21aの発熱体の電極及び感温体の電極と外部電極端子(リード)21eとが、それぞれボンディングワイヤ21dにより電気的に接続されている。液温センサー部22も、同様な構成を有している。即ち、薄膜発熱体及び薄膜感温体を含んでなる薄膜チップからなる液温検知部22aが、接合材により第2の金属製ダイパッド22cに接合されている。また、液温検知部22aの発熱体の電極及び感温体の電極と外部電極端子(リード)22eとが、それぞれボンディングワイヤ22dにより電気的に接続されている。液種検知部21a及び液温検知部22aの厚さは、例えば0.3mm〜0.4mmである。このような液種検知部21a及び液温検知部22a自体の構成は、公知である。
【0034】
液種検知部21a及び/または液温検知部22aが、本発明でいう検知部を構成する。図2及び図4に示されるように、本実施形態では、液種識別センサー部21及び液温センサー部22ひいては上記検知部は、突出開口形成部材104の内部に位置しており、突出開口形成部材102bの内部を含むタンク102の内部の被測定流体USとの熱交換が可能なように配置されている。流体判別装置104は、可撓性管状部材106の下端部1062により保持される第1の部分と該第1の部分から上方へと延びた第2の部分とを有しており、検知部は上記第2の部分に配置されている。また、流体判別装置104の第1の部分の内部には液種識別センサー部21及び液温センサー部22に接続された不図示の電気回路部が収容されている。流体判別装置104の第1の部分には、前記電気回路部に接続された、外部と電気的接続のためのコネクタ110が形成されている。
【0035】
図6〜図8に示されているように、液種識別センサー部21と液温センサー部22とは、モールド樹脂23によって一体化されている。モールド樹脂23の材質としては、シリカ及び/またはカーボン含有エポキシ樹脂が例示される。この樹脂は、金属製ダイパッド21c,22cよりも高い親水性をもつ。外部電極端子21e,22eの先端が、モールド樹脂23から突出している。モールド樹脂23は、液種識別センサー部21及び液温センサー部22に対応して、外部電極端子21e,22eとは反対側(図6〜8では下側)に、第1の板状突出部21P及び第2の板状突出部22Pを備えている。これらの板状突出部21P,22Pは、被測定液体との熱交換のため該被測定液体と接触する。
【0036】
第1の板状突出部21Pは、液種検知部21a及び第1の金属製ダイパッド21cを、これらが表面に露出することのないようにモールド樹脂23で封止することで形成されている。第1の板状突出部21Pの両主面は第1の金属製ダイパッド21cと平行である。同様に、第2の板状突出部22Pは、液温検知部22a及び第2の金属製ダイパッド22cを、これらが表面に露出することのないようにモールド樹脂23で封止することで形成されている。第2の板状突出部22Pの両主面は第2の金属製ダイパッド22cと平行である。第1の板状突出部21P及び第2の板状突出部22Pは、同一平面上(図7の紙面上)にて互いに隔てられて配置されている。
【0037】
第1及び第2の金属製ダイパッド21c,22c及び外部電極端子21e,22eは、リードフレームからの切断により得ることができる。金属製ダイパッド21c,22cの厚さは例えば0.2mm〜0.3mmである。
【0038】
第1及び第2の板状突出部21P,22Pにおいて、金属製ダイパッド21c,22cの第1の主面(液種検知部21aまたは液温検知部22aの接合された主面)を覆うモールド樹脂23の厚さはT1であり、該金属製ダイパッドの第2の主面を覆うモールド樹脂23の厚さはT2である。液種検知部21a及び接合材21bの合計厚さ又は液温検知部22a及びその接合材の合計厚さはt0であり、液種検知部21a又は液温検知部22aの上のモールド樹脂23の厚さはt1であり、ここでt0+t1=T1である。厚さt1は、例えば、0.2mm〜1.0mmである。厚さT2は、被測定液体と金属製ダイパッドとの熱交換を高める観点からはできるだけ小さい方が好ましいが、経時劣化によるひび割れ等の損傷の発生を防止する観点からはできるだけ大きい方が好ましい。厚さT2を、例えば0.3mm〜1.5mmとすることで、被測定液体と金属製ダイパッドとの熱交換を高め且つ損傷発生を防止する効果を良好に発揮することができる。
【0039】
また、第1及び第2の板状突出部21P,22Pにおける温度変化による熱膨張収縮に基づく反りの発生を抑制するためには、厚さT1と厚さT2との比を0.5〜2.0の範囲内にするのが好ましい。
【0040】
尚、液種検知部21a及び液温検知部22aの寸法は例えば縦横2mm〜4mmであり、第1及び第2の板状突出部21P,22Pの主面の寸法は例えば縦横3mm〜5mmである。
【0041】
以上のような本実施形態の検知部モールドパッケージによれば、液種検知部21a及び液温検知部22aが接合された金属製ダイパッド21c,22cが表面に露出していないので、長期にわたる使用に際しても、内部への被測定液体の浸入が抑制され、検知精度の低下は少ない。また、本実施形態によれば、検知部モールドパッケージの外面が金属製ダイパッド21c,22cよりも高い親水性をもつモールド樹脂23により形成されるので、被測定液体が尿素水溶液のような水性液体である場合において外面への気泡の付着が低減され、検知精度の低下及び変動は少ない。更に、本実施形態の検知部モールドパッケージの作製工程は簡単である。
【0042】
以上のような検知部モールドパッケージ2Aを用いて、図1〜2の実施形態及び図3〜5の実施形態の流体判別装置104を構成することができる。
【0043】
さて、図9に、以上説明したような実施形態における流体判別とくに液種識別ための回路の構成を示す。上記の液種識別センサー部21の感温体21a2、液温センサー部22の感温体22a2、及び2つの抵抗体64,66によりブリッジ回路(液種検知のための検知回路)68が形成されている。このブリッジ回路68の出力が差動増幅器70に入力され、該差動増幅器の出力(液種検知回路出力またはセンサー出力ともいう)が不図示のA/D変換器を介して液種識別のための演算部を構成するマイコン(マイクロコンピュータ)72に入力される。また、マイコン72には、液温センサー部22の感温体22a2から液温検知増幅器71を経て被測定液体の温度に対応する液温対応出力値が入力される。一方、マイコン72からは、液種識別センサー部21の発熱体21a4への通電経路に位置するスイッチ74に対してその開閉を制御するヒーター制御信号が出力される。
【0044】
以上のように、本実施形態は、検知部を用いて構成される検知回路と、該検知回路の出力に基づき被測定流体の判別を行う演算部とを備えている。本実施形態においては、図9にて一点鎖線で囲まれる部分26がカスタムICに作り込まれている。
【0045】
図9には、簡単のために、スイッチ74が単なる開閉を行うものとして記載されているが、カスタムICに作り込む際に、互いに異なる電圧の印加が可能な複数の電圧印加経路を形成しておき、ヒーター制御に際していずれかの電圧印加経路を選択できるようにしてもよい。このようにすることで、液種識別センサー部21の発熱体21a4の特性の選択の幅が大幅に広がる。すなわち、発熱体21a4の特性に応じて識別に最適な電圧を印加することが可能となる。また、ヒーター制御に際して互いに異なる複数の電圧の印加を行うことができるので、識別対象液体の種類を広げることが可能となる。
【0046】
また、図9には、簡単のために、抵抗体64,66が抵抗値一定のものとして記載されているが、カスタムICに作り込む際に、これら抵抗体64,66のそれぞれを抵抗値可変なものに形成しておき、識別に際して抵抗体64,66の抵抗値を適宜変更できるようにしてもよい。同様に、カスタムICに作り込む際に、差動増幅器70および液温検知増幅器71について特性調節が可能なようにしておき、識別に際して増幅器特性を適宜変更できるようにしてもよい。このようにすることで、液種検知回路の特性を最適なものに設定することが容易になり、液種識別センサー部21および液温センサー部22の製造上の個体ばらつきとカスタムICの製造上の個体ばらつきとに基づき発生する識別特性のばらつきを低減することができ、製造歩留まりが向上する。
【0047】
以下、本実施形態における液種識別動作につき説明する。
【0048】
タンク102内に被測定液体が収容されると、突出開口形成部材102b内にも被測定液体が満たされる。理想的には、突出開口形成部材102b内を含めてタンク102内の被測定液体は、自然対流によるものの他には実質上流動しない。
【0049】
マイコン72からスイッチ74に対して出力されるヒーター制御信号(スイッチ閉信号)により、該スイッチ74を所定時間(たとえば8秒間)閉じることで、発熱体21a4に対して所定高さ(たとえば10V)の単一パルス電圧Pを印加して該発熱体を発熱させる。この時の差動増幅器70の出力電圧(センサー出力)Qは、図10に示されるように、発熱体21a4への電圧印加中は次第に増加し、発熱体21a4への電圧印加終了後は次第に減少する。
【0050】
マイコン72では、図10に示されているように、発熱体21a4への電圧印加の開始前の所定時間(たとえば0.1秒間)センサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値を得る演算を行って平均初期電圧値V1を得る。この平均初期電圧値V1は、感温体21a2の初期温度に対応する。
【0051】
また、図10に示されているように、発熱体への電圧印加の開始から比較的短い時間である第1の時間(例えば単一パルスの印加時間の1/2以下であって0.5〜3秒間;図10では2秒間)経過時(具体的には第1の時間の経過の直前)に所定時間(たとえば0.1秒間)センサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第1電圧値V2を得る。この平均第1電圧値V2は、感温体21a2の単一パルス印加開始から第1の時間経過時の第1温度に対応する。そして、平均初期電圧値V1と平均第1電圧値V2との差V01(=V2−V1)を液種対応第1電圧値として得る。
【0052】
また、図10に示されているように、発熱体への電圧印加の開始から比較的長い時間である第2の時間(例えば単一パルスの印加時間;図10では8秒間)経過時(具体的には第2の時間の経過の直前)に所定時間(たとえば0.1秒間)センサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第2電圧値V3を得る。この平均第2電圧値V3は、感温体21a2の単一パルス印加開始から第2の時間経過時の第2温度に対応する。そして、平均初期電圧値V1と平均第2電圧値V3との差V02(=V3−V1)を液種対応第2電圧値として得る。
【0053】
ところで、以上のような単一パルスの電圧印加に基づき発熱体21a4で発生した熱の一部は被測定液体を介して感温体21a2へと伝達される。この熱伝達には、パルス印加開始からの時間に依存して異なる主として2つの形態がある。即ち、パルス印加開始から比較的短い時間(例えば3秒とくに2秒)内の第1段階では、熱伝達は主として伝導が支配的である(このため、液種対応第1電圧値V01は主として液体の熱伝導率による影響を受ける)。これに対して、第1段階後の第2段階では、熱伝達は主として自然対流が支配的である(このため、液種対応第2電圧値V02は主として液体の動粘度による影響を受ける)。これは、第2段階では、第1段階で加熱された被測定液体による自然対流が発生し、これによる熱伝達の比率が高くなるからである。
【0054】
上記のように、排ガス浄化システムにおいて使用される尿素水溶液の濃度[重量パーセント:以下同様]は32.5%が最適とされている。従って、尿素水溶液タンク100に収容されるべき尿素水溶液の尿素濃度の許容範囲を、たとえば32.5%±5%と定めることができる。この許容範囲の幅±5%は、所望により適宜変更可能である。即ち、本実施形態では、所定の液体として、尿素濃度が32.5%±5%の範囲内の尿素水溶液を定めている。
【0055】
上記液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02は、尿素水溶液の尿素濃度が変化するにつれて変化する。従って、尿素濃度32.5%±5%の範囲内の尿素水溶液に対応する液種対応第1電圧値V01の範囲(所定範囲)及び液種対応第2電圧値V02の範囲(所定範囲)が存在する。
【0056】
ところで、尿素水溶液以外の液体であっても、その濃度によっては、上記の液種対応第1電圧値V01の所定範囲内及び液種対応第2電圧値V02の所定範囲内の出力が得られる場合がある。即ち、液種対応第1電圧値V01または液種対応第2電圧値V02がそれぞれ所定範囲内であったとしても、その液体が所定の尿素水溶液であるとは限らない。例えば、図11に示されているように、尿素濃度が所定範囲内32.5%±5%の尿素水溶液で得られる液種対応第1電圧値V01の範囲内(即ち、センサー表示濃度値に換算して32.5%±5%の範囲内)には、砂糖濃度が25%±3%程度の範囲内の砂糖水溶液の液種対応第1電圧値が存在する。
【0057】
しかしながら、この砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液から得られる液種対応第2電圧値V02の値は、所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液で得られる液種対応第2電圧値V02の範囲とはかけ離れたものとなる。即ち、図12に示されているように、25%±3%程度の砂糖濃度範囲を包含する15%〜35%の砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液では、液種対応第1電圧値V01が所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液と重複するものがあるが、液種対応第2電圧値V02は所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液とは大きく異なる。尚、図12では、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の双方が、尿素濃度30%の尿素水溶液のものを1.000とした相対値で示されている。かくして、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の双方についてそれぞれの所定範囲内にあることを所定の液体であるか否かの判定基準とすることで、上記砂糖水溶液が所定の液体ではないと確実に識別することができる。
【0058】
また、液種対応第2電圧値V02が所定の液体のものと重複する場合もあり得る。しかし、この場合には、液種対応第1電圧値V01が所定の液体のものと異なるので、上記判定基準により当該液体が所定のものではないと確実に識別することができる。
【0059】
本実施形態は、以上のように液種対応第1電圧値V01と液種対応第2電圧値V02との関係が溶液の種類により異なることを利用して、液種の識別を行うものである。即ち、液種対応第1電圧値V01と液種対応第2電圧値V02とは液体の互いに異なる物性即ち熱伝導率と動粘度との影響を受け、これらの関係は溶液の種類により互いに異なるので、以上のような液種識別が可能となる。尿素濃度の所定範囲を狭くすることで、更に識別の精度を高めることができる。
【0060】
即ち、本実施形態では、尿素濃度既知の幾つかの尿素水溶液(参照尿素水溶液)について、温度と液種対応第1電圧値V01との関係を示す第1検量線及び温度と液種対応第2電圧値V02との関係を示す第2検量線を予め得ておき、これらの検量線をマイコン72の記憶手段に記憶しておく。第1及び第2の検量線の例を、それぞれ図13及び図14に示す。これらの例では、尿素濃度c1(例えば27.5%)及びc2(例えば37.5%)の参照尿素水溶液について、検量線が作成されている。
【0061】
図13及び図14に示されているように、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02は温度に依存するので、これらの検量線を用いて被測定液体を識別する際には、液温センサー部22の感温体22a2から液温検知増幅器71を介して入力される液温対応出力値Tをも用いる。液温対応出力値Tの一例を図15に示す。このような検量線をもマイコン72の記憶手段に記憶しておく。
【0062】
液種対応第1電圧値V01の測定に際しては、先ず、測定対象の被測定液体について得た液温対応出力値Tから図15の検量線を用いて温度値を得る。得られた温度値をtとして、次に、図13の第1の検量線において、温度値tに対応する各検量線の液種対応第1電圧値V01(c1;t),V01(c2;t)を得る。そして、測定対象の被測定液体について得た液種対応第1電圧値V01(cx;t)のcxを、各検量線の液種対応第1電圧値V01(c1;t),V01(c2;t)を用いた比例演算を行って、決定する。即ち、cxは、V01(cx;t),V01(c1;t),V01(c2;t)に基づき、以下の式(1)
cx=c1+
(c2−c1)[V01(cx;t)−V01(c1;t)]
/[V01(c2;t)−V01(c1;t)]・・・・(1)
から求める。
【0063】
同様にして、液種対応第2電圧値V02の測定に際しては、図14の第2の検量線において、以上のようにして被測定液体について得た温度値tに対応する各検量線の液種対応第2電圧値V02(c1;t),V02(c2;t)を得る。そして、被測定液体について得た液種対応第2電圧値V02(cy;t)のcyを、各検量線の液種対応第2電圧値V02(c1;t),V02(c2;t)を用いた比例演算を行って、決定する。即ち、cyは、V01(cy;t),V01(c1;t),V01(c2;t)に基づき、以下の式(2)
cy=c1+
(c2−c1)[V02(cy;t)−V02(c1;t)]
/[V02(c2;t)−V02(c1;t)]・・・・(2)
から求める。
【0064】
尚、図13及び図14の第1及び第2の検量線として温度の代わりに液温対応出力値Tを用いたものを採用することで、図15の検量線の記憶及びこれを用いた換算を省略することもできる。
【0065】
以上のように、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02のそれぞれについて、温度に応じて変化する所定範囲を設定することができる。上記のようにc1を27.5%とし、且つc2を37.5%とすることで、図13及び図14のそれぞれにおける2つの検量線で囲まれた領域が、所定の液体(即ち尿素濃度32.5%±5%の尿素水溶液)に対応するものとなる。
【0066】
図16は、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の組み合わせによる所定液体識別の判定基準が温度に応じて変化することを模式的に示すグラフである。温度がt1,t2,t3と上昇するにつれて、所定の液体と判別される領域AR(t1),AR(t2),AR(t3)が移動する。
【0067】
図17は、マイコン72での液種識別プロセスを示すフロー図である。
【0068】
先ず、ヒーター制御による発熱体21a4へのパルス電圧印加の前に、マイコン内にN=1を格納し(S1)、次いでセンサー出力をサンプリングし平均初期電圧値V1を得る(S2)。次に、ヒーター制御を実行し、発熱体21a4への電圧印加の開始から第1の時間経過時にセンサー出力をサンプリングし、平均第1電圧値V2を得る(S3)。次に、V2−V1の演算を行って、液種対応第1電圧値V01を得る(S4)。次に、発熱体21a4への電圧印加の開始から第2の時間経過時にセンサー出力をサンプリングし、平均第2電圧値V3を得る(S5)。次に、V3−V1の演算を行って、液種対応第2電圧値V02を得る(S6)。
【0069】
次に、被測定液体について得た温度値tを参照して、液種対応第1電圧値V01が当該温度での所定範囲内にあり且つ液種対応第2電圧値V02が当該温度での所定範囲内にあるという条件が満たされるか否かを判断する(S7)。S7において液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02のうちの少なくとも一方がそれぞれの所定範囲内にない(NO)と判断された場合には、上記格納値Nが3であるか否かを判断する(S8)。S8においてNが3ではない[即ち現測定ルーチンが3回目ではない(具体的には1回目または2回目である)](NO)と判断された場合には、続いて格納値Nを1だけ増加させ(S9)、S2へと戻る。一方、S8においてNが3である[即ち現測定ルーチンが3回目である](YES)と判断された場合には、被測定流体が所定のものではないと判定する(S10)。
【0070】
一方、S7において液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の双方がそれぞれの所定範囲内にある(YES)と判断された場合には、被測定流体が所定のものであると判定する(S11)。
【0071】
本実施形態においては、S11に続いて、尿素水溶液の尿素濃度を算出する(S12)。この濃度算出は、液温センサー部22の出力即ち被測定液体について得た温度値tと、液種対応第1電圧値V01と、図13の第1の検量線とに基づき、上記式(1)を用いて行うことができる。或いは、濃度算出は、液温センサー部22の出力即ち被測定液体について得た温度値tと、液種対応第2電圧値V02と、図14の第2の検量線とに基づき、上記式(2)を用いて行うこともできる。
【0072】
以上のようにして液種の識別を正確に且つ迅速に行うことができる。この液種識別のルーチンは、自動車のエンジン始動時に、或いは定期的に、或いは運転者または自動車(後述のECU)側からの要求時に、或いは自動車のキーOFF時等に、適宜実行することができ、所望の様式にて尿素タンク内の液体が所定の尿素濃度の尿素水溶液であるか否かを監視することができる。このようにして得られた液種を示す信号(所定のものであるか否か、更には所定のもの[所定の尿素濃度の尿素水溶液]である場合の尿素濃度を示す信号)が不図示のD/A変換器を介して、図9に示される出力バッファ回路76へと出力され、ここからコネクタ110及びそれに接続される不図示の配線を介して、アナログ出力として不図示の自動車のエンジンの燃焼制御などを行うメインコンピュータ(ECU)へと出力される。液温対応のアナログ出力電圧値も同様な経路でメインコンピュータ(ECU)へと出力される。一方、液種を示す信号は、必要に応じてデジタル出力として取り出して、同様な経路で表示、警報その他の動作を行う機器へと入力することができる。
【0073】
更に、液温センサー部22から入力される液温対応出力値Tに基づき、尿素水溶液が凍結する温度(−13℃程度)の近くまで温度低下したことが検知された場合に警告を発するようにすることができる。
【0074】
なお、以上の液種識別は、自然対流を利用しており、尿素水溶液等の被測定液体の動粘度とセンサー出力とが相関関係を有するという原理を利用している。このような液種識別の精度を高めるためには、液種検知部21aおよび液温検知部22aと被測定液体との間の熱伝達がなされる板状突出部21P,22Pの周囲の被測定液体にできるだけ外的要因に基づく強制流動が生じにくくするのが好ましく、この点から液種検知部21a及び/または液温検知部22aからなる検知部が突出開口形成部材102bの内部に位置するようにしたもの、換言すれば突出開口形成部材102bが液種検知部21a及び/または液温検知部22aからなる検知部の位置より上まで延びているようにしたものは好ましい。この場合、検知部はタンク開口102cより上に位置していてもよい。尚、突出開口形成部材102bは、板状突出部21P,22Pへの異物の接触を防止する保護部材としても機能する。
【0075】
以上の実施形態では、液種識別センサー部21及びこれに対応する第1の板状突出部21Pと液温センサー部22及びこれに対応する第2の板状突出部22Pとの双方を1つの検知部モールドパッケージに作り込んでいるが、本発明は、液種識別センサー部21及びこれに対応する第1の板状突出部21Pと液温センサー部22及びこれに対応する第2の板状突出部22Pとを別々の検知部モールドパッケージに作り込んでなるものをも包含するものである。
【0076】
以上の実施形態では所定の流体として所定の尿素濃度の尿素水溶液が用いられているが、本発明では、所定の液体は溶質として尿素以外を用いた水溶液その他の液体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による流体判別装置付タンクの実施形態を示す模式的部分断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明による流体判別装置付タンクの実施形態を示す模式的部分斜視図である。
【図4】図3の流体判別装置付タンクの模式的断面図である。
【図5】図3の流体判別装置付タンクの模式的斜視図である。
【図6】液種識別センサーモジュールを構成する検知部モールドパッケージを示す模式的斜視図である。
【図7】図6の検知部モールドパッケージの模式的断面図である。
【図8】図6の検知部モールドパッケージの液種検知部を含む板状突出部を示す模式的部分断面図である。
【図9】液種識別ための回路の構成図である。
【図10】発熱体に印加される単一パルス電圧Pとセンサー出力Qとの関係を示す図である。
【図11】尿素濃度が所定範囲内の尿素水溶液で得られる液種対応第1電圧値V01の範囲内には、或る砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液の液種対応第1電圧値が存在することを示す図である。
【図12】尿素水溶液及び砂糖水溶液及び水についての液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02を、尿素濃度30%の尿素水溶液のものを1.000とした相対値で示す図である。
【図13】第1の検量線の例を示す図である。
【図14】第2の検量線の例を示す図である。
【図15】液温対応出力値Tの一例を示す図である。
【図16】液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の組み合わせによる所定液体識別の判定基準が温度に応じて変化することを模式的に示すグラフである。
【図17】液種識別プロセスを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0078】
US 被測定液体
102 尿素水溶液タンク
102a 液体貯め
102b 突出開口形成部材
102b’ 環状に延びた凸部
102c 開口
104 流体判別装置
104’ 環状に延びた凸部
106 可撓性管状部材
1061 上端部
1062 下端部
1081 第1の加締めバンド
1082 第2の加締めバンド
110 コネクタ
2A 検知部モールドパッケージ
21 液種識別センサー部
21P 第1の板状突出部
21a 液種検知部
21a2 感温体
21a4 発熱体
21b 接合材
21c 第1の金属製ダイパッド
21d ボンディングワイヤ
21e リード(外部電極端子)
22 液温センサー部
22P 第2の板状突出部
22a 液温検知部
22a2 感温体
22c 第2の金属製ダイパッド
22e リード(外部電極端子)
23 モールド樹脂(合成樹脂モールド)
26 カスタムIC
64,66 抵抗体
68 ブリッジ回路
70 差動増幅器
71 液温検知増幅器
72 マイコン(マイクロコンピュータ)
74 スイッチ
76 出力バッファ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体判別装置を備えたタンクであって、
該タンクの底部に突出開口形成部材が設けられており、
該突出開口形成部材と前記流体判別装置とが可撓性管状部材により着脱可能に接続されていることを特徴とする流体判別装置付タンク。
【請求項2】
前記可撓性管状部材は、前記突出開口形成部材の外周面に対して外側から締着される上端部と、前記流体判別装置の外周面に対して外側から締着される下端部とを有することを特徴とする、請求項1に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項3】
前記可撓性管状部材の周囲には、前記突出開口形成部材への締め付けのための第1の加締めバンドと、前記流体判別装置への締め付けのための第2の加締めバンドとが付されていることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項4】
前記第1の加締めバンド及び第2の加締めバンドのうちの少なくとも一方は、締め付け力が150乃至800Nであることを特徴とする、請求項3に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項5】
前記突出開口形成部材は、前記タンクの底板に形成された開口に対応して位置しており、前記タンクの底板に溶接により固定されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項6】
前記流体判別装置は、前記突出開口形成部材内部を含む前記タンク内部の被測定流体との熱交換が可能なように配置された検知部を備えていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項7】
前記流体判別装置は、更に、前記検知部を用いて構成される検知回路と、該検知回路の出力に基づき前記被測定流体の判別を行う演算部とを備えていることを特徴とする、請求項6に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項8】
前記流体判別装置は、前記可撓性管状部材により保持される第1の部分と該第1の部分から上方へと延びた第2の部分とを有しており、前記検知部は前記第2の部分に配置されていることを特徴とする、請求項6乃至7のいずれか一項に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項9】
前記流体判別装置の第1の部分には外部との電気的接続のためのコネクタが形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項10】
前記流体判別装置の検知部は、前記突出開口形成部材の内部に位置していることを特徴とする、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項11】
前記突出開口形成部材は、前記タンクの底板に形成された開口に対応して位置しており、前記タンクの底板に溶接により固定されており、前記流体判別装置の検知部は、前記開口より上に位置していることを特徴とする、請求項6乃至10のいずれか一項に記載の流体判別装置付タンク。
【請求項12】
前記突出開口形成部材は、前記検知部の位置より上まで延びていることを特徴とする、請求項11に記載の流体判別装置付タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−117157(P2010−117157A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288720(P2008−288720)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】