流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置
【課題】 流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置において、回転に伴う振動の発生を抑制することができ、薄型化を図ることができるようにする。
【解決手段】 動圧発生溝が形成されたラジアル軸受部9aおよびスラスト軸受部9bを有する軸受部材1と、軸体部6Aとフランジ部6Bとを有するロータ6とを有し、潤滑流体10が流通自在に封止されたモータ2であって、軸受部材1は、軸方向の両端面においてラジアル軸受部9aから径方向外側の部位に設けられた開口部同士を連通させるバイパス流通路を備え、ロータ6は、軸体部6Aとフランジ部6Bとが一体に形成されるとともに、フランジ部6Bには、動圧を受ける平面部6cと、軸受部材1の軸方向の一端面での開口部に対向され、平面部6cに対する凹部となる溝部6dとを備え、軸受部材1の軸方向の他端面側において潤滑流体10の流路が形成されるようにする。
【解決手段】 動圧発生溝が形成されたラジアル軸受部9aおよびスラスト軸受部9bを有する軸受部材1と、軸体部6Aとフランジ部6Bとを有するロータ6とを有し、潤滑流体10が流通自在に封止されたモータ2であって、軸受部材1は、軸方向の両端面においてラジアル軸受部9aから径方向外側の部位に設けられた開口部同士を連通させるバイパス流通路を備え、ロータ6は、軸体部6Aとフランジ部6Bとが一体に形成されるとともに、フランジ部6Bには、動圧を受ける平面部6cと、軸受部材1の軸方向の一端面での開口部に対向され、平面部6cに対する凹部となる溝部6dとを備え、軸受部材1の軸方向の他端面側において潤滑流体10の流路が形成されるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ハードディスクドライブや光ディスクドライブなどの情報記録再生装置では、小型化、薄型化、回転精度向上等のため、軸受として流体動圧軸受が採用されている場合がある。
例えば、特許文献1には、このような流体動圧軸受として、2箇所のラジアル軸受部どうしを連通する圧力開放用バイパス通路を設け、各ラジアル軸受部に設けられている動圧発生溝の溝形状(溝長さ)等がアンバランスな状態となっていても、それに起因するポンピング力のアンバランスに相当する量の潤滑流体を圧力開放用バイパス通路内に通して、高圧側のラジアル軸受部から低圧側のラジアル軸受部に流動させ、上記2箇所のラジアル軸受部どうし間の圧力バランスをとるようにしたことによって、ラジアル軸受部のアンバランス状態によるスラスト軸受部への影響をなくし、当該スラスト軸受部における浮上量の変動を防止するようにした動圧軸受装置が記載されている。
この動圧軸受装置では、圧力開放用バイパス通路のスラスト軸受部側の開口部には、動圧発生溝よりも深い環状溝が形成され、スラスト軸受部に対向するロータ面が1つの平面から構成されている。そして、この平面部にロータの軸部が突設されている。
【特許文献1】特開2004−11897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の流体動圧軸受を用いた流体動圧軸受モータには、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、圧力開放用バイパス通路を設けることで、ラジアル軸受部のアンバランス状態によるスラスト軸受部への影響をなくすことができる。ただし、例えば、加工誤差などによって、スラスト軸受部の環状溝に対向するロータ面に凹凸やバリなどが発生すると、これらの凹凸やバリなどが圧力開放用バイパス通路の開口部を横切るたびに開口部で圧力変動が発生し、圧力開放用バイパス管路の開口部の数に対応した動圧振動が励起される。この結果、例えば、この流体動圧軸受モータをハードディスクドライブなどの情報記録再生装置に用いる場合には、記録媒体の回転に同期したRRO(Repeatable Run Out)等の外乱変動が発生し、情報の読み取り、書き込みに支障を来すという問題がある。
スラスト軸受部の環状溝の深さを深くして、加工上発生する凹凸やバリなどによる圧力変動を抑制することも考えられるが、ラジアル軸受部の長さが不足して軸受のモーメント剛性が低下してしまうという問題がある。ラジアル軸受部の長さを確保しようとすれば、モータの厚さが厚くなってしまうという問題がある。
また、ロータの加工精度を向上して、凹凸やバリなどの発生を低減することも考えられるが、この場合には製造コストが増大してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、回転に伴う振動の発生を抑制することができ、薄型化を図ることができる流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、略円筒体の内周面および軸方向の一端面にそれぞれ動圧発生溝が形成されたラジアル軸受部およびスラスト軸受部を有する軸受部材と、前記ラジアル軸受部に挿入された軸部と前記スラスト軸受部に対向されたフランジ部とを有するロータとを有し、前記ラジアル軸受部およびスラスト軸受部と前記ロータとの間の空間で、潤滑流体が流通自在に封止された流体動圧軸受モータであって、前記軸受部材は、前記軸方向の両端面において前記ラジアル軸受部から径方向外側の部位に設けられた開口部同士を連通させるバイパス流通路を備え、前記ロータは、前記軸部と前記フランジ部とが一体に形成されるとともに、該フランジ部には、前記スラスト軸受部に対向されて動圧を受ける平面部と、前記軸受部材の前記軸方向の一端面での前記開口部に対向され、前記平面部に対する凹部となる環状溝とを備え、前記軸受部材の前記軸方向の他端面側において前記開口部および前記ラジアル軸受部を少なくとも覆う範囲に、前記潤滑流体の流路が形成された構成とする。
この発明によれば、ロータの軸部およびフランジ部の平面部が、それぞれ軸受部材のラジアル軸受部およびスラスト軸受部との間で潤滑流体を介して支持され、ロータの回転開始とともに、ラジアル軸受部およびスラスト軸受部の動圧発生溝で発生する潤滑流体の動圧によって軸受部材に対して非接触状態で回転支持される。
その際、軸受部材に設けられたバイパス流通路によって、ロータに設けられた環状溝と、軸受部材の軸方向の他端面側の潤滑流体の流路とが連通されるため、環状溝、バイパス流通路、軸方向の他端面側の潤滑流体の流路、ラジアル軸受部の内側に、それぞれ潤滑流体が流通自在に満たされる。
その結果、ロータの回転時に、ラジアル軸受の軸方向にわたる流体圧のアンバランスが発生しても、環状溝およびバイパス流通路内を潤滑流体が移動することで、流体圧のアンバランスが低減される。
また、バイパス流路の一方の開口部に対向して平面部に対する凹部となる環状溝を設けるので、平面部に対向する空間に比べて、開口部に対向する空間が広くなり、開口部近傍の流体圧がロータ側の加工精度の影響を受けにくくなるので、開口部に対向する位置でのロータの加工精度に起因する振動を抑制することができる。
また、環状溝は、平面部とともに、軸部とフランジ部とが一体に形成されたロータのフランジ部に設けられているので、平面部と軸部とをそれぞれ製作してから接合する場合に比べて、環状溝の溝深さを深く取ることができる。そのため、軸受部材のラジアル軸受部の長さを短縮することなく、環状溝の溝深さを適宜深さに設定することができる。この結果、環状溝の溝底面の加工誤差による圧力変動を低減し、これによりロータの振動を低減することができる。
また、環状溝は、平面部の加工時に加工上の逃げ溝となるので、平面部の加工が容易となる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の流体動圧軸受モータにおいて、前記環状溝は、前記軸部の基端部に隣接して設けられた構成とする。
この発明によれば、環状溝が軸部の基端部に設けられているため、軸部の加工時に加工上の逃げ溝となるので、軸部の加工が容易となる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、情報記録再生装置において、請求項1または2に記載の流体動圧軸受モータと、該流体動圧軸受モータに搭載した記録媒体と、該記録媒体に対して、情報読み出しおよび情報書き込みの少なくともいずれかを行う記録再生ヘッドとを備える構成とする。
この発明によれば、請求項1または2に記載の流体動圧軸受モータを備えた情報記録再生装置となっているので、請求項1または2に記載の発明と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置によれば、ロータ側にスラスト軸受部の開口部に対向する環状溝を設けるので、ラジアル軸受部を短縮することなく回転に伴う振動の発生を抑制することができ、薄型化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータについて、それを備えた情報記録再生装置とともに説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る情報記録再生装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータの概略構成を示す模式的な軸方向断面図である。図3(a)は、本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いる軸受部材の概略構成を示す平面図である。図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図4(a)は、本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いるロータの概略構成を示す下面図である。図4(b)は、図4(a)におけるB−B断面図である。
【0010】
本実施形態のハードディスクドライブ100(情報記録再生装置)は、例えば、パソコンの記憶装置などに好適に用いることができるものである。
ハードディスクドライブ100の概略構成は、図1に示すように、筐体30内に、磁気ディスク4(記録媒体)を回転駆動する記録媒体駆動装置3と、記録媒体駆動装置3によって回転駆動される磁気ディスク4上に近接浮上して、磁気ディスク4上の磁気情報からなる情報信号を再生したり、外部から入力される電気信号からなる情報信号を磁気ディスク4上に磁気情報として記録したりするヘッド31(記録再生ヘッド)と、ヘッド31を保持するサスペンションビーム32と、サスペンションビーム32に保持されたヘッド31を磁気ディスク4上の径方向に移動させるキャリッジ33と、ハードディスクドライブ100の各部の制御を行う制御部34とを備える。
なお、特に図示しないが、例えば、筐体30を覆うカバーや接続ケーブルなどの周知のハードディスクドライブの装置構成は当然に備えている。
【0011】
記録媒体駆動装置3は、図2に示すように、潤滑流体10を用いた流体動圧軸受を有するモータ2(流体動圧軸受モータ)に、磁気ディスク4を取り付けてなるものである。
潤滑流体10は、周知の流体動圧軸受に用いられるオイル等を適宜採用することができる。
モータ2の概略構成は、モータハウジング8、ステータ5、軸受部材1、およびロータ6からなる。
ステータ5およびロータ6の構成は、ロータ6が流体動圧軸受を構成する軸受本体9に支持されていれば、モータ2の種類に応じて適宜の構成を採用することができる。例えば、インナーロータ型またはアウターロータ型のスピンドルモータなどを採用することができる。以下では、一例としてインナーロータ型スピンドルモータの場合で説明する。
【0012】
モータハウジング8は、概略形状が図示上側に開口する扁平な有底円筒状とされ、その底部の中心部に、軸受部材1を図示上側に立設するため図示上方側に延ばされた円筒孔状の軸受本体固定部8aを備えている。このため、モータハウジング8の外壁内面と軸受本体固定部8aの外周面との間には、ステータ5を収容する円環状の空間であるステータ収容部8bが形成されている。
【0013】
ステータ5は、ステータコア5aとコイル5bとからなり、ステータコア5aの外縁部で、モータハウジング8の外壁の内周面および底部から突出された段状の固定部に固定されている。
ステータコア5aは、例えばプレス加工等によりケイ素鋼板等の磁性体を打ち抜いて、適宜枚数積層させ、この積層体の表面に絶縁膜のコーティングを施した板状部材である。ステータコア5aの平面視形状は、円環状のコアバック部の内周側に複数の磁極を形成するため、例えば平面視T字状の突片が径方向内側に延ばされた歯極部が周方向に等ピッチで複数設けられている。例えば、歯極部を3の倍数、例えば、9個に設定することで3相モータを構成することができる。
コイル5bは、このステータコア5aの各歯極部に巻き回されてなる。例えば、3相モータを構成する場合、ステータコア5aの9個の歯極部に2つおきに巻回すことで、3相コイルが構成される。
各コイル5bは、不図示のプリント基板等に配線され、コイル電流を制御する制御部34と電気的に接続されている。
【0014】
軸受部材1は、図3(a)、(b)に示すように、軸受本体9と蓋部材15とからなる。
軸受本体9は、軸方向長さHの略円筒スリーブ状とされ、軸方向の一端部には、径方向外側にわずかに突出されたフランジ部9fが設けられている。
軸方向の他端部には、いずれもスリーブ内径よりも大きい円径を有し、他端面から一端面側に向かって2段階に縮径された段穴部9gが形成されている。このため、軸受本体9のスリーブ内周面は、軸受本体9の軸方向の一端面から軸方向の他端面の内側の段穴部9gの底面位置までの間に、軸方向長さh(ただし、h<H)となるように形成されている。
また、段穴部9gの大径の穴部分は、蓋部材15を取り付ける蓋取付部9dを構成している。
【0015】
また、軸受本体9の軸方向の中間部の外形は、フランジ部9fの基端部から軸方向の他端側に向けてテーパ状に縮径されてから、軸方向の他端まで略一定径の円筒面が形成されている。この他端側の円筒面の外径は、軸受本体固定部8aの内径と隙間なく嵌合する大きさとされており、軸受本体9を軸受本体固定部8aに固定するための嵌合部9eを構成している。
【0016】
フランジ部9fの軸方向端面には、ロータ6が回転した場合に、ロータ6との間に介在する潤滑流体10によって軸方向(スラスト方向)に動圧を発生させるため、図3(a)に示すように、滑らかな軸直角平面の一部に複数の動圧発生溝13が形成されたスラスト軸受部9bが設けられている。
動圧発生溝13の形状は、ロータ6の回転方向や必要な動圧の大きさなどに応じて周知の適宜形状に設けることができる。例えば、スラスト軸受部9bの外周側から内周側に向かって溝幅を縮小させつつスパイラル状に配置する構成を採用することができる。
【0017】
軸受本体9のスリーブ内周面には、ロータ6が回転した場合に、ロータ6との間に介在する潤滑流体10によって径方向(ラジアル方向)に動圧を発生させるため、図3(b)に示すように、滑らかな円筒面の一部に複数の動圧発生溝14が形成されたラジアル軸受部9aが設けられている。
動圧発生溝14の形状は、ロータ6の回転方向や必要な動圧の大きさなどに応じて周知の適宜形状に設けることができる。例えば、図3(b)に示すように、軸方向に2列に設けられた周知のヘリングボーン型の動圧発生溝などを採用することができる。
【0018】
ラジアル軸受部9aの外周側近傍には、スラスト軸受部9bから段穴部9gの底面まで貫通する複数の連通路9c(バイパス流通路)が、ラジアル軸受部9aの中心に対する同心円上に設けられている。連通路9cの本数は1本以上の適宜本数を採用することができるが、本実施形態では、ラジアル軸受部9aの中心軸を挟んで対向する位置に2本設けられている。
【0019】
軸受本体9の材質は、例えば、金属、セラミックスなどの適宜の材質を採用することができる。また、軸受本体9は、各部を同一材質で一体に形成してもよいし、例えば、ラジアル軸受部9aやスラスト軸受部9bなどを別体で製作して、組み立てて一対化した構成としてもよい。
【0020】
蓋部材15は、図2に示すように、軸受本体9の他端側を液密に封止するための板状部材であり、軸受本体9の蓋取付部9dに固定されている。
このため、蓋部材15は、段穴部9gの穴底面に開口する2つの連通路9cと、ラジアル軸受部9aとに、それぞれ段穴部9gの小径の穴部の深さに対応する距離だけ離された状態で対向して配置されている。
【0021】
ロータ6の概略形状は、図2、4に示すように、軸受本体9のラジアル軸受部9aに対して、潤滑流体10を満たした状態で挿通され、先端面が段穴部9gの小径の穴底面に略整列される軸体部6A(軸部)を備え、軸体部6Aの基端側から径方向外側にフランジ部6Bが延ばされ、フランジ部6Bの外縁部から軸体部6Aの先端側の軸方向に向かって円筒状のスリーブ部6Cが延ばされ、スリーブ部6Cの外側面の中間部から径方向外側に外側フランジ部6Dが延ばされた形状に形成されている。
【0022】
スリーブ部6Cの内径は、モータハウジング8の軸受本体固定部8aの外径よりも大径とされ、スリーブ部6Cの高さは、スリーブ部6Cの先端面が、ステータ収容部8bと十分隙間を空けて対向できる高さとされる。
また、スリーブ部6Cにおいて、外側フランジ部6Dの位置よりも基端側の部分の外径は、磁気ディスク4の取付穴に嵌合して、磁気ディスク4の位置決めを行うことができる大きさとされており、磁気ディスク4に対する位置決めボスであるディスク嵌合部6fを構成している。
また、スリーブ部6Cにおいて、外側フランジ部6Dの位置よりも先端側の部分の外径は、ステータコア5aと対向する駆動マグネット7に内嵌できる寸法に設定される。
【0023】
外側フランジ部6Dの外径は、上面側(図2の上側)に磁気ディスク4を搭載するため、軸体部6Aの中心軸と直交する平面からなるディスク搭載部6bを形成するとともに、下面側(図2の下側)に駆動マグネット7の軸方向端部を固定できる寸法とされる。
【0024】
駆動マグネット7は、周方向に磁極が交替するパターンが着磁された円環状の永久磁石からなり、外側フランジ部6Dの下面および外側フランジ部6Dの下面側のスリーブ部6Cの外周面からなるマグネット取付部6gに、例えば接着などによって固定されている。これにより、ステータ収容部8bに収容されたステータ5のステータコア5aの径方向内側の先端部は、駆動マグネット7の着磁部と近接して対向される。
【0025】
軸体部6Aの中心軸上には、フランジ部6B側からネジ穴6aが設けられている。ネジ穴6aは、磁気ディスク4をディスク嵌合部6fで位置決めして、ディスク搭載部6bに搭載した状態で、例えば板バネ等からなるディスク押え部材12を、固定ネジ17によって、螺合して固定するためのものである。
【0026】
フランジ部6Bの軸体部6A側の面(図2の下面側)には、軸体部6Aの中心軸に直交し、ラジアル軸受部9aの連通路9cの開口よりも径方向外側の領域に対向する環状の平面部6cが設けられている。そして、この平面部6cおよび軸体部6Aの基端部に隣接して平面部6cに対する環状の凹部をなす溝部6d(環状溝)が設けられている。
溝部6dの深さdは、ラジアル軸受部9aに設けられた動圧発生溝13よりは深い設定とされる。例えば、動圧発生溝13が10μm程度に対して、0.05mm〜0.1mm程度の深さが好適である。
平面部6cの外径は、軸受本体9のフランジ部9fの外径よりもやや大きな寸法とされている。そして、平面部6cの外周部から、軸体部6Aの先端側の軸方向に向かって、フランジ部9fの径方向の側面を軸方向に覆う円筒部6eが形成されている。
円筒部6eの径方向外側には、スリーブ部6Cの基端部までの間において、ロータ6の抜け止めおよび潤滑流体10の周方向の封止を行う抜け止め部材11を固定する座面である抜け止め取付部6hが形成されている。
【0027】
抜け止め部材11は、図2に示すように、抜け止め取付部6hに固定された状態で、内径部がフランジ部9fの図示下端面の下側に近接して位置し、内周面が軸受本体9のフランジ部9f近傍のテーパ部に略沿って近接される、略台形状断面を有する円環状の部材である。これにより、ロータ6の平面部6cおよび円筒部6eとともに、軸受本体9のフランジ部9fの外縁部を断面コ字状に近接して覆うことできるようになっている。
このため、ロータ6と軸受本体9との間に潤滑流体10が封入された際は、毛細管現象によって、潤滑流体10を封止できるようになっている。
【0028】
このようなロータ6は、本実施形態では、例えばステンレスなどの金属材料のブロックを切削加工することにより一体部品として製作している。
このため、例えば、フランジ部6Bに別体加工した軸体部6Aを固定するような工法に比べて、平面部6cと軸体部6Aとの直角度の精度を出すことが容易となる。
また、フランジ部6Bと軸体部6Aとが一体化されているので、上記の別体工法に比べて、軸体部6Aの基端部近傍のフランジ部6Bの厚さを薄くしても、強度上、精度上の影響がより少なくなる。そのため、溝部6dを一定の深さhとしたときに、フランジ部6Bの厚さを、上記別体工法に比べてより薄くすることができる。その結果、モータ2を薄型化することができる。
【0029】
また、本実施形態のロータ6によれば、ロータ6の切削加工の際、軸体部6Aの基端部に隣接して溝部6dを形成するため、軸体部6Aを切削加工する際に、溝部6dが加工逃げ溝の役割を果たすことができる。溝部6dの深さdの範囲の軸体部6Aは、ラジアル軸受部9aと対向しないため、軸径や表面粗さの加工精度が劣っていても、動圧形成には影響しない。したがって、軸体部6Aの加工が容易となる。
また、溝部6dは、平面部6cを切削加工する際の加工逃げ溝の役割も果たすことができる。そのため、溝部6dを設けず、平面部を軸体部の基端部まで設ける場合のように、平面部と軸体部とが交わるコーナー部を高精度に仕上げる必要がなくなり、平面部6cと軸体部6Aとを別々に仕上げることができるので、加工が容易となる。
【0030】
このような構成からなるモータ2の組立方法は、まず、軸受本体9の蓋取付部9dに蓋部材15を取り付けて軸受本体9の他端面側を封止し、軸受本体9のスリーブ内に、適宜のオイルからなる潤滑流体10を導入する。一方、ロータ6には、マグネット取付部6gに駆動マグネット7を取り付けてから、ロータ6の軸体部6Aをラジアル軸受部9aに挿通させ、平面部6cとラジアル軸受部9aとが対向する状態に組み立てる。
このとき、図2に示すように、軸受本体9のスリーブ内の潤滑流体10は、ロータ6と、軸受本体9および蓋部材15との対向面の隙間および連通路9c内に充填される。このため、段穴部9gの穴底面および軸体部6Aの先端面と蓋部材15との間、ならびに溝部6dとスラスト軸受部9bとの間に、それぞれ潤滑流体10が充満し、2つの連通路9cを介して、スラスト軸受部9b上の潤滑流体10と、蓋部材15側の潤滑流体10とが連通される。
次に、軸受本体9の嵌合部9e側から、抜け止め部材11を挿通し、抜け止め取付部6hに固定する。これにより、フランジ部9fの近傍で、潤滑流体10が、微細隙間の間に封止される。
このようにして、ロータ6を回転子とする流体動圧軸受ユニットが形成される。
【0031】
この流体動圧軸受ユニットでは、潤滑流体10は、軸受本体9とロータ6の内面との間すなわち、スラスト軸受部9bおよびラジアル軸受部9aとロータ6の内面との間で流通自在に封止されている。
そして、軸受部材1には、2本の連通路9cが設けられているため、蓋部材15と軸受本体9の段穴部9gの穴底部との間に形成された潤滑流体10の流路と、スラスト軸受部9bと溝部6dとの間に形成された流路とが互いに連通されている。これにより、ラジアル軸受部9aの径方向外側の部位に、ラジアル軸受部9aの一端側と他端側との間で、潤滑流体10を連通させることができる流路が形成される。
【0032】
一方、モータハウジング8には、ステータ収容部8bにステータ5を組み立てて、不図示のプリント基板等を取り付ける。そして、流体動圧軸受ユニットの嵌合部9eを軸受本体固定部8aに嵌合して、それぞれを固定する。
このようにしてモータ2が組み立てられる。
次に、磁気ディスク4をディスク搭載部6bに取り付けて、ディスク押え部材12によって固定することで、記録媒体駆動装置3が完成する。
【0033】
次に、本実施形態のハードディスクドライブ100の作用について、モータ2の作用を中心に説明する。
モータ2は、制御部34によってコイル電流が供給されると、ロータ6を回転させる。そして、ラジアル軸受部9a、スラスト軸受部9b近傍の潤滑流体10において、それぞれ動圧発生溝13、14の作用による動圧が発生する。このため、ロータ6は潤滑流体10を介して、軸受本体9上で軸方向および径方向に浮動支持され、非接触状態を保って回転する。
一般に、動圧発生溝13や平面部6cに加工誤差があると、スラスト軸受部9bの加工不良部分における動圧が回転周波数あるいは回転周波数の整数倍の周波数で変動するため、ロータ6に振動が発生したり、回転精度が悪化したりする原因になるが、本実施形態では、潤滑流体10は、溝部6d、およびバイパス流通路を通して連通されているので、ラジアル軸受部9aでの動圧のバランスによって、ラジアル軸受部9aの一端側と他端側との間で自由に流動することができる。そのため、ラジアル軸受部9aの軸方向の動圧のアンバランスを低減することができる。このため、このような動圧の変動による振動や回転精度の悪化を低減することができる。
【0034】
モータ2では、ロータ6側に溝部6dを設けることで、潤滑流体10をバイパス流通路に連通させている。このため、スラスト軸受部の内周部に環状の溝部を設ける場合に比べて、ラジアル軸受部9aの軸方向長さを長くとることができ、軸受のモーメント剛性を向上することができる。
また、上記に説明したように、ロータ6が、軸体部6Aとフランジ部6Bとが一体に成形されたことと相俟って、モータ2を薄型化することができる。
【0035】
なお、上記の説明では、軸受部材のスラスト軸受部がロータの平面部および環状溝に対向された場合の例で説明したが、環状溝に対向するスラスト軸受部の動圧発生溝は、動圧発生にあまり寄与しないので、動圧発生溝は平面に対向する部分のみに設けてもよい。
【0036】
また、上記の説明では、環状溝をロータ側だけに設けた場合の例で説明したが、ラジアル軸受部の軸方向長さを十分確保できる場合には、ロータの環状溝に対向する位置に、スラスト軸受部にも環状溝を設けるようにしてもよい。
図5には、このような変形例のモータ20を示す。モータ20では、モータ2の軸受本体9のスラスト軸受部9bに代えて、内周側から、環状溝である溝部90d、スラスト軸受部9bと同様なスパイラル状の動圧発生溝が形成されたスラスト軸受部90bを備える。また、ラジアル軸受部9aに代えて、ラジアル軸受部9aと長さのみ異なるラジアル軸受部90aを備える
このような構成によれば、連通路9cの開口部に対向するフランジ部6Bの内面(溝部6dの溝底面)との間の距離やスペースを、必要な大きさに設定する場合に、それらの距離やスペースを溝部6dと溝部90dとに分けることができるため、溝部6dの深さをより浅くすることができる。そのため、ロータ6のフランジ部6Bの高さを低減することができる。
【0037】
また、上記の説明では、環状溝をロータの軸部の基端部に隣接して設けた場合の例で説明したが、十分な加工精度が得られる場合には、軸部の基端部に隣接して平面部を残し、環状溝をロータの軸部の基端部から径方向に離間した位置に設けてもよい。
【0038】
また、上記の説明では、情報記録再生装置として、情報信号の記録および情報信号の再生が可能な装置の場合の例で説明したが、本発明の流体動圧軸受モータを備えていれば、情報信号の記録または情報信号の再生を行うものであってもよい。
また、情報記録再生装置としては、ハードディスクドライブに限定されるものではなく、光ディスクドライブ、光磁気ディスクドライブなどの、磁気ディスク以外の記録媒体を用いた装置であってもよい。また、記録媒体は、流体動圧軸受モータに対して着脱自在に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る情報記録再生装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータの概略構成を示す模式的な軸方向断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いる軸受部材の概略構成を示す平面図、およびそのA−A断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いるロータの概略構成を示す下面図、およびそのB−B断面図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係る流体動圧軸受モータの概略構成を示す模式的な軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 軸受部材
2、20 モータ(流体動圧軸受モータ)
3 記録媒体駆動装置
4 磁気ディスク(記録媒体)
5 ステータ
6 ロータ
6A 軸体部(軸部)
6B フランジ部
6c 平面部
6d 溝部(環状溝)
9、90 軸受本体
9a、90a ラジアル軸受部
9b、90b スラスト軸受部
9c 連通路(バイパス流通路)
10 潤滑流体
13、14 動圧発生溝
15 蓋部材
31 ヘッド(記録再生ヘッド)
100 ハードディスクドライブ(情報記録再生装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ハードディスクドライブや光ディスクドライブなどの情報記録再生装置では、小型化、薄型化、回転精度向上等のため、軸受として流体動圧軸受が採用されている場合がある。
例えば、特許文献1には、このような流体動圧軸受として、2箇所のラジアル軸受部どうしを連通する圧力開放用バイパス通路を設け、各ラジアル軸受部に設けられている動圧発生溝の溝形状(溝長さ)等がアンバランスな状態となっていても、それに起因するポンピング力のアンバランスに相当する量の潤滑流体を圧力開放用バイパス通路内に通して、高圧側のラジアル軸受部から低圧側のラジアル軸受部に流動させ、上記2箇所のラジアル軸受部どうし間の圧力バランスをとるようにしたことによって、ラジアル軸受部のアンバランス状態によるスラスト軸受部への影響をなくし、当該スラスト軸受部における浮上量の変動を防止するようにした動圧軸受装置が記載されている。
この動圧軸受装置では、圧力開放用バイパス通路のスラスト軸受部側の開口部には、動圧発生溝よりも深い環状溝が形成され、スラスト軸受部に対向するロータ面が1つの平面から構成されている。そして、この平面部にロータの軸部が突設されている。
【特許文献1】特開2004−11897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の流体動圧軸受を用いた流体動圧軸受モータには、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、圧力開放用バイパス通路を設けることで、ラジアル軸受部のアンバランス状態によるスラスト軸受部への影響をなくすことができる。ただし、例えば、加工誤差などによって、スラスト軸受部の環状溝に対向するロータ面に凹凸やバリなどが発生すると、これらの凹凸やバリなどが圧力開放用バイパス通路の開口部を横切るたびに開口部で圧力変動が発生し、圧力開放用バイパス管路の開口部の数に対応した動圧振動が励起される。この結果、例えば、この流体動圧軸受モータをハードディスクドライブなどの情報記録再生装置に用いる場合には、記録媒体の回転に同期したRRO(Repeatable Run Out)等の外乱変動が発生し、情報の読み取り、書き込みに支障を来すという問題がある。
スラスト軸受部の環状溝の深さを深くして、加工上発生する凹凸やバリなどによる圧力変動を抑制することも考えられるが、ラジアル軸受部の長さが不足して軸受のモーメント剛性が低下してしまうという問題がある。ラジアル軸受部の長さを確保しようとすれば、モータの厚さが厚くなってしまうという問題がある。
また、ロータの加工精度を向上して、凹凸やバリなどの発生を低減することも考えられるが、この場合には製造コストが増大してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、回転に伴う振動の発生を抑制することができ、薄型化を図ることができる流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、略円筒体の内周面および軸方向の一端面にそれぞれ動圧発生溝が形成されたラジアル軸受部およびスラスト軸受部を有する軸受部材と、前記ラジアル軸受部に挿入された軸部と前記スラスト軸受部に対向されたフランジ部とを有するロータとを有し、前記ラジアル軸受部およびスラスト軸受部と前記ロータとの間の空間で、潤滑流体が流通自在に封止された流体動圧軸受モータであって、前記軸受部材は、前記軸方向の両端面において前記ラジアル軸受部から径方向外側の部位に設けられた開口部同士を連通させるバイパス流通路を備え、前記ロータは、前記軸部と前記フランジ部とが一体に形成されるとともに、該フランジ部には、前記スラスト軸受部に対向されて動圧を受ける平面部と、前記軸受部材の前記軸方向の一端面での前記開口部に対向され、前記平面部に対する凹部となる環状溝とを備え、前記軸受部材の前記軸方向の他端面側において前記開口部および前記ラジアル軸受部を少なくとも覆う範囲に、前記潤滑流体の流路が形成された構成とする。
この発明によれば、ロータの軸部およびフランジ部の平面部が、それぞれ軸受部材のラジアル軸受部およびスラスト軸受部との間で潤滑流体を介して支持され、ロータの回転開始とともに、ラジアル軸受部およびスラスト軸受部の動圧発生溝で発生する潤滑流体の動圧によって軸受部材に対して非接触状態で回転支持される。
その際、軸受部材に設けられたバイパス流通路によって、ロータに設けられた環状溝と、軸受部材の軸方向の他端面側の潤滑流体の流路とが連通されるため、環状溝、バイパス流通路、軸方向の他端面側の潤滑流体の流路、ラジアル軸受部の内側に、それぞれ潤滑流体が流通自在に満たされる。
その結果、ロータの回転時に、ラジアル軸受の軸方向にわたる流体圧のアンバランスが発生しても、環状溝およびバイパス流通路内を潤滑流体が移動することで、流体圧のアンバランスが低減される。
また、バイパス流路の一方の開口部に対向して平面部に対する凹部となる環状溝を設けるので、平面部に対向する空間に比べて、開口部に対向する空間が広くなり、開口部近傍の流体圧がロータ側の加工精度の影響を受けにくくなるので、開口部に対向する位置でのロータの加工精度に起因する振動を抑制することができる。
また、環状溝は、平面部とともに、軸部とフランジ部とが一体に形成されたロータのフランジ部に設けられているので、平面部と軸部とをそれぞれ製作してから接合する場合に比べて、環状溝の溝深さを深く取ることができる。そのため、軸受部材のラジアル軸受部の長さを短縮することなく、環状溝の溝深さを適宜深さに設定することができる。この結果、環状溝の溝底面の加工誤差による圧力変動を低減し、これによりロータの振動を低減することができる。
また、環状溝は、平面部の加工時に加工上の逃げ溝となるので、平面部の加工が容易となる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の流体動圧軸受モータにおいて、前記環状溝は、前記軸部の基端部に隣接して設けられた構成とする。
この発明によれば、環状溝が軸部の基端部に設けられているため、軸部の加工時に加工上の逃げ溝となるので、軸部の加工が容易となる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、情報記録再生装置において、請求項1または2に記載の流体動圧軸受モータと、該流体動圧軸受モータに搭載した記録媒体と、該記録媒体に対して、情報読み出しおよび情報書き込みの少なくともいずれかを行う記録再生ヘッドとを備える構成とする。
この発明によれば、請求項1または2に記載の流体動圧軸受モータを備えた情報記録再生装置となっているので、請求項1または2に記載の発明と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の流体動圧軸受モータおよびそれを備えた情報記録再生装置によれば、ロータ側にスラスト軸受部の開口部に対向する環状溝を設けるので、ラジアル軸受部を短縮することなく回転に伴う振動の発生を抑制することができ、薄型化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータについて、それを備えた情報記録再生装置とともに説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る情報記録再生装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータの概略構成を示す模式的な軸方向断面図である。図3(a)は、本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いる軸受部材の概略構成を示す平面図である。図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図4(a)は、本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いるロータの概略構成を示す下面図である。図4(b)は、図4(a)におけるB−B断面図である。
【0010】
本実施形態のハードディスクドライブ100(情報記録再生装置)は、例えば、パソコンの記憶装置などに好適に用いることができるものである。
ハードディスクドライブ100の概略構成は、図1に示すように、筐体30内に、磁気ディスク4(記録媒体)を回転駆動する記録媒体駆動装置3と、記録媒体駆動装置3によって回転駆動される磁気ディスク4上に近接浮上して、磁気ディスク4上の磁気情報からなる情報信号を再生したり、外部から入力される電気信号からなる情報信号を磁気ディスク4上に磁気情報として記録したりするヘッド31(記録再生ヘッド)と、ヘッド31を保持するサスペンションビーム32と、サスペンションビーム32に保持されたヘッド31を磁気ディスク4上の径方向に移動させるキャリッジ33と、ハードディスクドライブ100の各部の制御を行う制御部34とを備える。
なお、特に図示しないが、例えば、筐体30を覆うカバーや接続ケーブルなどの周知のハードディスクドライブの装置構成は当然に備えている。
【0011】
記録媒体駆動装置3は、図2に示すように、潤滑流体10を用いた流体動圧軸受を有するモータ2(流体動圧軸受モータ)に、磁気ディスク4を取り付けてなるものである。
潤滑流体10は、周知の流体動圧軸受に用いられるオイル等を適宜採用することができる。
モータ2の概略構成は、モータハウジング8、ステータ5、軸受部材1、およびロータ6からなる。
ステータ5およびロータ6の構成は、ロータ6が流体動圧軸受を構成する軸受本体9に支持されていれば、モータ2の種類に応じて適宜の構成を採用することができる。例えば、インナーロータ型またはアウターロータ型のスピンドルモータなどを採用することができる。以下では、一例としてインナーロータ型スピンドルモータの場合で説明する。
【0012】
モータハウジング8は、概略形状が図示上側に開口する扁平な有底円筒状とされ、その底部の中心部に、軸受部材1を図示上側に立設するため図示上方側に延ばされた円筒孔状の軸受本体固定部8aを備えている。このため、モータハウジング8の外壁内面と軸受本体固定部8aの外周面との間には、ステータ5を収容する円環状の空間であるステータ収容部8bが形成されている。
【0013】
ステータ5は、ステータコア5aとコイル5bとからなり、ステータコア5aの外縁部で、モータハウジング8の外壁の内周面および底部から突出された段状の固定部に固定されている。
ステータコア5aは、例えばプレス加工等によりケイ素鋼板等の磁性体を打ち抜いて、適宜枚数積層させ、この積層体の表面に絶縁膜のコーティングを施した板状部材である。ステータコア5aの平面視形状は、円環状のコアバック部の内周側に複数の磁極を形成するため、例えば平面視T字状の突片が径方向内側に延ばされた歯極部が周方向に等ピッチで複数設けられている。例えば、歯極部を3の倍数、例えば、9個に設定することで3相モータを構成することができる。
コイル5bは、このステータコア5aの各歯極部に巻き回されてなる。例えば、3相モータを構成する場合、ステータコア5aの9個の歯極部に2つおきに巻回すことで、3相コイルが構成される。
各コイル5bは、不図示のプリント基板等に配線され、コイル電流を制御する制御部34と電気的に接続されている。
【0014】
軸受部材1は、図3(a)、(b)に示すように、軸受本体9と蓋部材15とからなる。
軸受本体9は、軸方向長さHの略円筒スリーブ状とされ、軸方向の一端部には、径方向外側にわずかに突出されたフランジ部9fが設けられている。
軸方向の他端部には、いずれもスリーブ内径よりも大きい円径を有し、他端面から一端面側に向かって2段階に縮径された段穴部9gが形成されている。このため、軸受本体9のスリーブ内周面は、軸受本体9の軸方向の一端面から軸方向の他端面の内側の段穴部9gの底面位置までの間に、軸方向長さh(ただし、h<H)となるように形成されている。
また、段穴部9gの大径の穴部分は、蓋部材15を取り付ける蓋取付部9dを構成している。
【0015】
また、軸受本体9の軸方向の中間部の外形は、フランジ部9fの基端部から軸方向の他端側に向けてテーパ状に縮径されてから、軸方向の他端まで略一定径の円筒面が形成されている。この他端側の円筒面の外径は、軸受本体固定部8aの内径と隙間なく嵌合する大きさとされており、軸受本体9を軸受本体固定部8aに固定するための嵌合部9eを構成している。
【0016】
フランジ部9fの軸方向端面には、ロータ6が回転した場合に、ロータ6との間に介在する潤滑流体10によって軸方向(スラスト方向)に動圧を発生させるため、図3(a)に示すように、滑らかな軸直角平面の一部に複数の動圧発生溝13が形成されたスラスト軸受部9bが設けられている。
動圧発生溝13の形状は、ロータ6の回転方向や必要な動圧の大きさなどに応じて周知の適宜形状に設けることができる。例えば、スラスト軸受部9bの外周側から内周側に向かって溝幅を縮小させつつスパイラル状に配置する構成を採用することができる。
【0017】
軸受本体9のスリーブ内周面には、ロータ6が回転した場合に、ロータ6との間に介在する潤滑流体10によって径方向(ラジアル方向)に動圧を発生させるため、図3(b)に示すように、滑らかな円筒面の一部に複数の動圧発生溝14が形成されたラジアル軸受部9aが設けられている。
動圧発生溝14の形状は、ロータ6の回転方向や必要な動圧の大きさなどに応じて周知の適宜形状に設けることができる。例えば、図3(b)に示すように、軸方向に2列に設けられた周知のヘリングボーン型の動圧発生溝などを採用することができる。
【0018】
ラジアル軸受部9aの外周側近傍には、スラスト軸受部9bから段穴部9gの底面まで貫通する複数の連通路9c(バイパス流通路)が、ラジアル軸受部9aの中心に対する同心円上に設けられている。連通路9cの本数は1本以上の適宜本数を採用することができるが、本実施形態では、ラジアル軸受部9aの中心軸を挟んで対向する位置に2本設けられている。
【0019】
軸受本体9の材質は、例えば、金属、セラミックスなどの適宜の材質を採用することができる。また、軸受本体9は、各部を同一材質で一体に形成してもよいし、例えば、ラジアル軸受部9aやスラスト軸受部9bなどを別体で製作して、組み立てて一対化した構成としてもよい。
【0020】
蓋部材15は、図2に示すように、軸受本体9の他端側を液密に封止するための板状部材であり、軸受本体9の蓋取付部9dに固定されている。
このため、蓋部材15は、段穴部9gの穴底面に開口する2つの連通路9cと、ラジアル軸受部9aとに、それぞれ段穴部9gの小径の穴部の深さに対応する距離だけ離された状態で対向して配置されている。
【0021】
ロータ6の概略形状は、図2、4に示すように、軸受本体9のラジアル軸受部9aに対して、潤滑流体10を満たした状態で挿通され、先端面が段穴部9gの小径の穴底面に略整列される軸体部6A(軸部)を備え、軸体部6Aの基端側から径方向外側にフランジ部6Bが延ばされ、フランジ部6Bの外縁部から軸体部6Aの先端側の軸方向に向かって円筒状のスリーブ部6Cが延ばされ、スリーブ部6Cの外側面の中間部から径方向外側に外側フランジ部6Dが延ばされた形状に形成されている。
【0022】
スリーブ部6Cの内径は、モータハウジング8の軸受本体固定部8aの外径よりも大径とされ、スリーブ部6Cの高さは、スリーブ部6Cの先端面が、ステータ収容部8bと十分隙間を空けて対向できる高さとされる。
また、スリーブ部6Cにおいて、外側フランジ部6Dの位置よりも基端側の部分の外径は、磁気ディスク4の取付穴に嵌合して、磁気ディスク4の位置決めを行うことができる大きさとされており、磁気ディスク4に対する位置決めボスであるディスク嵌合部6fを構成している。
また、スリーブ部6Cにおいて、外側フランジ部6Dの位置よりも先端側の部分の外径は、ステータコア5aと対向する駆動マグネット7に内嵌できる寸法に設定される。
【0023】
外側フランジ部6Dの外径は、上面側(図2の上側)に磁気ディスク4を搭載するため、軸体部6Aの中心軸と直交する平面からなるディスク搭載部6bを形成するとともに、下面側(図2の下側)に駆動マグネット7の軸方向端部を固定できる寸法とされる。
【0024】
駆動マグネット7は、周方向に磁極が交替するパターンが着磁された円環状の永久磁石からなり、外側フランジ部6Dの下面および外側フランジ部6Dの下面側のスリーブ部6Cの外周面からなるマグネット取付部6gに、例えば接着などによって固定されている。これにより、ステータ収容部8bに収容されたステータ5のステータコア5aの径方向内側の先端部は、駆動マグネット7の着磁部と近接して対向される。
【0025】
軸体部6Aの中心軸上には、フランジ部6B側からネジ穴6aが設けられている。ネジ穴6aは、磁気ディスク4をディスク嵌合部6fで位置決めして、ディスク搭載部6bに搭載した状態で、例えば板バネ等からなるディスク押え部材12を、固定ネジ17によって、螺合して固定するためのものである。
【0026】
フランジ部6Bの軸体部6A側の面(図2の下面側)には、軸体部6Aの中心軸に直交し、ラジアル軸受部9aの連通路9cの開口よりも径方向外側の領域に対向する環状の平面部6cが設けられている。そして、この平面部6cおよび軸体部6Aの基端部に隣接して平面部6cに対する環状の凹部をなす溝部6d(環状溝)が設けられている。
溝部6dの深さdは、ラジアル軸受部9aに設けられた動圧発生溝13よりは深い設定とされる。例えば、動圧発生溝13が10μm程度に対して、0.05mm〜0.1mm程度の深さが好適である。
平面部6cの外径は、軸受本体9のフランジ部9fの外径よりもやや大きな寸法とされている。そして、平面部6cの外周部から、軸体部6Aの先端側の軸方向に向かって、フランジ部9fの径方向の側面を軸方向に覆う円筒部6eが形成されている。
円筒部6eの径方向外側には、スリーブ部6Cの基端部までの間において、ロータ6の抜け止めおよび潤滑流体10の周方向の封止を行う抜け止め部材11を固定する座面である抜け止め取付部6hが形成されている。
【0027】
抜け止め部材11は、図2に示すように、抜け止め取付部6hに固定された状態で、内径部がフランジ部9fの図示下端面の下側に近接して位置し、内周面が軸受本体9のフランジ部9f近傍のテーパ部に略沿って近接される、略台形状断面を有する円環状の部材である。これにより、ロータ6の平面部6cおよび円筒部6eとともに、軸受本体9のフランジ部9fの外縁部を断面コ字状に近接して覆うことできるようになっている。
このため、ロータ6と軸受本体9との間に潤滑流体10が封入された際は、毛細管現象によって、潤滑流体10を封止できるようになっている。
【0028】
このようなロータ6は、本実施形態では、例えばステンレスなどの金属材料のブロックを切削加工することにより一体部品として製作している。
このため、例えば、フランジ部6Bに別体加工した軸体部6Aを固定するような工法に比べて、平面部6cと軸体部6Aとの直角度の精度を出すことが容易となる。
また、フランジ部6Bと軸体部6Aとが一体化されているので、上記の別体工法に比べて、軸体部6Aの基端部近傍のフランジ部6Bの厚さを薄くしても、強度上、精度上の影響がより少なくなる。そのため、溝部6dを一定の深さhとしたときに、フランジ部6Bの厚さを、上記別体工法に比べてより薄くすることができる。その結果、モータ2を薄型化することができる。
【0029】
また、本実施形態のロータ6によれば、ロータ6の切削加工の際、軸体部6Aの基端部に隣接して溝部6dを形成するため、軸体部6Aを切削加工する際に、溝部6dが加工逃げ溝の役割を果たすことができる。溝部6dの深さdの範囲の軸体部6Aは、ラジアル軸受部9aと対向しないため、軸径や表面粗さの加工精度が劣っていても、動圧形成には影響しない。したがって、軸体部6Aの加工が容易となる。
また、溝部6dは、平面部6cを切削加工する際の加工逃げ溝の役割も果たすことができる。そのため、溝部6dを設けず、平面部を軸体部の基端部まで設ける場合のように、平面部と軸体部とが交わるコーナー部を高精度に仕上げる必要がなくなり、平面部6cと軸体部6Aとを別々に仕上げることができるので、加工が容易となる。
【0030】
このような構成からなるモータ2の組立方法は、まず、軸受本体9の蓋取付部9dに蓋部材15を取り付けて軸受本体9の他端面側を封止し、軸受本体9のスリーブ内に、適宜のオイルからなる潤滑流体10を導入する。一方、ロータ6には、マグネット取付部6gに駆動マグネット7を取り付けてから、ロータ6の軸体部6Aをラジアル軸受部9aに挿通させ、平面部6cとラジアル軸受部9aとが対向する状態に組み立てる。
このとき、図2に示すように、軸受本体9のスリーブ内の潤滑流体10は、ロータ6と、軸受本体9および蓋部材15との対向面の隙間および連通路9c内に充填される。このため、段穴部9gの穴底面および軸体部6Aの先端面と蓋部材15との間、ならびに溝部6dとスラスト軸受部9bとの間に、それぞれ潤滑流体10が充満し、2つの連通路9cを介して、スラスト軸受部9b上の潤滑流体10と、蓋部材15側の潤滑流体10とが連通される。
次に、軸受本体9の嵌合部9e側から、抜け止め部材11を挿通し、抜け止め取付部6hに固定する。これにより、フランジ部9fの近傍で、潤滑流体10が、微細隙間の間に封止される。
このようにして、ロータ6を回転子とする流体動圧軸受ユニットが形成される。
【0031】
この流体動圧軸受ユニットでは、潤滑流体10は、軸受本体9とロータ6の内面との間すなわち、スラスト軸受部9bおよびラジアル軸受部9aとロータ6の内面との間で流通自在に封止されている。
そして、軸受部材1には、2本の連通路9cが設けられているため、蓋部材15と軸受本体9の段穴部9gの穴底部との間に形成された潤滑流体10の流路と、スラスト軸受部9bと溝部6dとの間に形成された流路とが互いに連通されている。これにより、ラジアル軸受部9aの径方向外側の部位に、ラジアル軸受部9aの一端側と他端側との間で、潤滑流体10を連通させることができる流路が形成される。
【0032】
一方、モータハウジング8には、ステータ収容部8bにステータ5を組み立てて、不図示のプリント基板等を取り付ける。そして、流体動圧軸受ユニットの嵌合部9eを軸受本体固定部8aに嵌合して、それぞれを固定する。
このようにしてモータ2が組み立てられる。
次に、磁気ディスク4をディスク搭載部6bに取り付けて、ディスク押え部材12によって固定することで、記録媒体駆動装置3が完成する。
【0033】
次に、本実施形態のハードディスクドライブ100の作用について、モータ2の作用を中心に説明する。
モータ2は、制御部34によってコイル電流が供給されると、ロータ6を回転させる。そして、ラジアル軸受部9a、スラスト軸受部9b近傍の潤滑流体10において、それぞれ動圧発生溝13、14の作用による動圧が発生する。このため、ロータ6は潤滑流体10を介して、軸受本体9上で軸方向および径方向に浮動支持され、非接触状態を保って回転する。
一般に、動圧発生溝13や平面部6cに加工誤差があると、スラスト軸受部9bの加工不良部分における動圧が回転周波数あるいは回転周波数の整数倍の周波数で変動するため、ロータ6に振動が発生したり、回転精度が悪化したりする原因になるが、本実施形態では、潤滑流体10は、溝部6d、およびバイパス流通路を通して連通されているので、ラジアル軸受部9aでの動圧のバランスによって、ラジアル軸受部9aの一端側と他端側との間で自由に流動することができる。そのため、ラジアル軸受部9aの軸方向の動圧のアンバランスを低減することができる。このため、このような動圧の変動による振動や回転精度の悪化を低減することができる。
【0034】
モータ2では、ロータ6側に溝部6dを設けることで、潤滑流体10をバイパス流通路に連通させている。このため、スラスト軸受部の内周部に環状の溝部を設ける場合に比べて、ラジアル軸受部9aの軸方向長さを長くとることができ、軸受のモーメント剛性を向上することができる。
また、上記に説明したように、ロータ6が、軸体部6Aとフランジ部6Bとが一体に成形されたことと相俟って、モータ2を薄型化することができる。
【0035】
なお、上記の説明では、軸受部材のスラスト軸受部がロータの平面部および環状溝に対向された場合の例で説明したが、環状溝に対向するスラスト軸受部の動圧発生溝は、動圧発生にあまり寄与しないので、動圧発生溝は平面に対向する部分のみに設けてもよい。
【0036】
また、上記の説明では、環状溝をロータ側だけに設けた場合の例で説明したが、ラジアル軸受部の軸方向長さを十分確保できる場合には、ロータの環状溝に対向する位置に、スラスト軸受部にも環状溝を設けるようにしてもよい。
図5には、このような変形例のモータ20を示す。モータ20では、モータ2の軸受本体9のスラスト軸受部9bに代えて、内周側から、環状溝である溝部90d、スラスト軸受部9bと同様なスパイラル状の動圧発生溝が形成されたスラスト軸受部90bを備える。また、ラジアル軸受部9aに代えて、ラジアル軸受部9aと長さのみ異なるラジアル軸受部90aを備える
このような構成によれば、連通路9cの開口部に対向するフランジ部6Bの内面(溝部6dの溝底面)との間の距離やスペースを、必要な大きさに設定する場合に、それらの距離やスペースを溝部6dと溝部90dとに分けることができるため、溝部6dの深さをより浅くすることができる。そのため、ロータ6のフランジ部6Bの高さを低減することができる。
【0037】
また、上記の説明では、環状溝をロータの軸部の基端部に隣接して設けた場合の例で説明したが、十分な加工精度が得られる場合には、軸部の基端部に隣接して平面部を残し、環状溝をロータの軸部の基端部から径方向に離間した位置に設けてもよい。
【0038】
また、上記の説明では、情報記録再生装置として、情報信号の記録および情報信号の再生が可能な装置の場合の例で説明したが、本発明の流体動圧軸受モータを備えていれば、情報信号の記録または情報信号の再生を行うものであってもよい。
また、情報記録再生装置としては、ハードディスクドライブに限定されるものではなく、光ディスクドライブ、光磁気ディスクドライブなどの、磁気ディスク以外の記録媒体を用いた装置であってもよい。また、記録媒体は、流体動圧軸受モータに対して着脱自在に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る情報記録再生装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータの概略構成を示す模式的な軸方向断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いる軸受部材の概略構成を示す平面図、およびそのA−A断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータに用いるロータの概略構成を示す下面図、およびそのB−B断面図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係る流体動圧軸受モータの概略構成を示す模式的な軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 軸受部材
2、20 モータ(流体動圧軸受モータ)
3 記録媒体駆動装置
4 磁気ディスク(記録媒体)
5 ステータ
6 ロータ
6A 軸体部(軸部)
6B フランジ部
6c 平面部
6d 溝部(環状溝)
9、90 軸受本体
9a、90a ラジアル軸受部
9b、90b スラスト軸受部
9c 連通路(バイパス流通路)
10 潤滑流体
13、14 動圧発生溝
15 蓋部材
31 ヘッド(記録再生ヘッド)
100 ハードディスクドライブ(情報記録再生装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒体の内周面および軸方向の一端面にそれぞれ動圧発生溝が形成されたラジアル軸受部およびスラスト軸受部を有する軸受部材と、前記ラジアル軸受部に挿入された軸部と前記スラスト軸受部に対向されたフランジ部とを有するロータとを有し、前記ラジアル軸受部およびスラスト軸受部と前記ロータとの間の空間で、潤滑流体が流通自在に封止された流体動圧軸受モータであって、
前記軸受部材は、
前記軸方向の両端面において前記ラジアル軸受部から径方向外側の部位に設けられた開口部同士を連通させるバイパス流通路を備え、
前記ロータは、
前記軸部と前記フランジ部とが一体に形成されるとともに、
該フランジ部には、前記スラスト軸受部に対向されて動圧を受ける平面部と、
前記軸受部材の前記軸方向の一端面での前記開口部に対向され、前記平面部に対する凹部となる環状溝とを備え、
前記軸受部材の前記軸方向の他端面側において前記開口部および前記ラジアル軸受部を少なくとも覆う範囲に、前記潤滑流体の流路が形成されたことを特徴とする流体動圧軸受モータ。
【請求項2】
前記環状溝は、前記軸部の基端部に隣接して設けられたことを特徴とする請求項1に記載の流体動圧軸受モータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体動圧軸受モータと、
該流体動圧軸受モータに搭載した記録媒体と、
該記録媒体に対して、情報信号の記録および情報信号の再生の少なくともいずれかを行う記録再生ヘッドとを備えることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項1】
略円筒体の内周面および軸方向の一端面にそれぞれ動圧発生溝が形成されたラジアル軸受部およびスラスト軸受部を有する軸受部材と、前記ラジアル軸受部に挿入された軸部と前記スラスト軸受部に対向されたフランジ部とを有するロータとを有し、前記ラジアル軸受部およびスラスト軸受部と前記ロータとの間の空間で、潤滑流体が流通自在に封止された流体動圧軸受モータであって、
前記軸受部材は、
前記軸方向の両端面において前記ラジアル軸受部から径方向外側の部位に設けられた開口部同士を連通させるバイパス流通路を備え、
前記ロータは、
前記軸部と前記フランジ部とが一体に形成されるとともに、
該フランジ部には、前記スラスト軸受部に対向されて動圧を受ける平面部と、
前記軸受部材の前記軸方向の一端面での前記開口部に対向され、前記平面部に対する凹部となる環状溝とを備え、
前記軸受部材の前記軸方向の他端面側において前記開口部および前記ラジアル軸受部を少なくとも覆う範囲に、前記潤滑流体の流路が形成されたことを特徴とする流体動圧軸受モータ。
【請求項2】
前記環状溝は、前記軸部の基端部に隣接して設けられたことを特徴とする請求項1に記載の流体動圧軸受モータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体動圧軸受モータと、
該流体動圧軸受モータに搭載した記録媒体と、
該記録媒体に対して、情報信号の記録および情報信号の再生の少なくともいずれかを行う記録再生ヘッドとを備えることを特徴とする情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−44903(P2009−44903A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209103(P2007−209103)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(305018719)エスアイアイ・マイクロプレシジョン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(305018719)エスアイアイ・マイクロプレシジョン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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