説明

流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ、情報処理装置

【課題】スラストフランジと被対向部材との接触による起動不良や異常摩擦を抑制する流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ、情報処理装置を提供する。
【解決手段】流体軸受装置20は、シャフト12と、スラストフランジ13と、溶融中心部Gとを備えている。スラストフランジ13は、本体部13aと、シャフト12が挿通される挿通孔13bと、挿通孔13bの周囲に形成され、軸方向における厚みH2が、本体部13aの軸方向における厚みH1の1/2より大きい薄肉部13cとを有しており、シャフト12の端部近傍に配置されている。溶融中心部Gは、本体部13aの厚みの中心位置Hよりもやや上側に配置され、シャフト12とスラストフランジ13とをシャフト12の端部側から溶接した際のシャフト12とスラストフランジ13との溶融部30における断面の重心位置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ等のように情報を記録もしくは再生する装置に搭載される流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等のディスク状の記録媒体を回転駆動する記録装置において使用されるスピンドルモータの軸受として、シャフトとスリーブとの間に介在させたオイル等の潤滑流体の流体圧力を利用して両者を相対回転自在に支持する流体軸受装置が提案されている。
【0003】
このような流体軸受装置において、シャフトとスラストフランジとを接合する接合方法の1つとして、溶接が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、溶接するシャフトとスラストフランジとの間に窪みを形成し、レーザ等の熔解エネルギーにより熔解させた金属をその窪みに流し込んで両者を固定させる流体軸受装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、スラストフランジの貫通孔の周囲に薄肉部を形成し、薄肉部とシャフトとの接合部を溶接手段により固定させた流体軸受装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−324753号公報
【特許文献2】特開2003−184866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に示す流体軸受装置は、シャフトとスラストフランジとを溶接する際、スラストフランジが溶接部の熱収縮により引っ張られて、スラストフランジが反ってしまうという問題点を有している。
【0007】
具体的に説明すると、特許文献1の流体軸受装置では、特許文献1の図2に示すように、シャフトとスラストフランジとを接合するために、スラストプレートが配置されている側(以下、スラストフランジ下側と示す)を溶接している。これにより、スラストフランジ下側が熱収縮することとなり、スラストフランジは、スラストフランジの外周端がスラストプレート側に向くような状態に反ってしまう。この結果、スラストフランジは、起動時にスラストプレートと強く摺動するようになり、摩擦トルク過大による起動不良や異常摩擦を発生させる。とりわけスラストプレートをスリーブに溶接固定した場合には、スラストプレートは、熱収縮によって中央部分が突出し、その外周部分はスラストフランジ外周に近接するように変形する。その結果、スラストフランジとスラストプレートとは互いに半径が大きい外周側で強く摺動することになるため、起動停止を頻繁に行うノートPC等のモバイル用途向けのHDD(Hard Disc Drive)等では、軸受部の寿命を著しく短くしてしまいかねない。
【0008】
一方、特許文献2の流体軸受装置では、特許文献2の図1に示すように、シャフトとスラストフランジとを接合するために、薄肉部のスラストプレートが配置されている側(以下、スラストフランジ下側と示す)を溶接している。しかし、実際には、スラストフランジの厚さ方向の中心位置よりも上側の位置で溶接される。これにより、スラストフランジ上側が熱収縮することとなり、スラストフランジは、スラストフランジの外周端がスラストプレートとは反対側に向くような状態に大きく反ってしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、スラストフランジが被対向部材側に反ることを防止することによって、スラストフランジと被対向部材との接触による起動不良や異常摩擦を抑制する流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ、情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る流体軸受装置は、シャフトと、スラストフランジと、溶融中心部とを備えている。スラストフランジは、本体部と、シャフトが挿通される挿通孔と、挿通孔の周囲に形成されており、軸方向における厚みが、本体部の軸方向における厚みの1/2よりも大きい薄肉部と、を有しており、シャフトの端部近傍に配置されている。溶融中心部は、本体部の軸方向における厚みの中心位置あるいは略中心位置に配置されており、シャフトとスラストフランジとをシャフトの端部側から溶接した際のシャフトとスラストフランジとの溶融部における断面の重心位置である。
【0011】
ここでは、スラストフランジにおける薄肉部の軸方向における厚みが、本体部の軸方向における厚みの1/2より大きく、かつ、シャフトの端部側から溶接した際の溶融中心部が本体部の厚みの中心位置あるいは略中心位置に配置されている。
【0012】
ここで、流体軸受装置は、シャフトにおける端部側にスラストフランジと対向するように被対向部材が配置されている。例えば、スラストフランジと共にスラスト軸受部を形成するスラストプレート等がその被対向部材に該当する。以下、スラストフランジから見て、スラストプレート等の被対向部材が配置されている側を「下側」、その反対側を「上側」と表現する。
【0013】
従来より、シャフトとスラストフランジとを接合する際に溶接による接合が行われている。ところが、スラストフランジにおける挿通孔周辺の下側端面近傍を溶接してシャフトと接合すると、溶融部が形成される下側端面近傍が熱収縮により引っ張られて、スラストフランジは、下側に反ってしまう。そして、スラストフランジが下側に反ると、被対向部材と接触するようになる。
【0014】
ところで、スラスト軸受部のアキシャル方向の遊び(ガタ量)は、軸受の浮上量、軸受剛性、使用時などディスクの振動等を考慮して、10〜30ミクロン程度に設定される。そして、モバイル用途や車載用途などに使用される2.5インチ以下のHDDにおいては、上下方向の外乱振動が加わった場合でもディスクの上下方向位置が大きく変化しないようにするために、ロータマグネットとベースとの間またはロータマグネットとステータコアとの間で回転体重量の数倍程度の軸方向吸引力が生ずるように構成される。こうすることで、スラストフランジ下面は、スラストプレート上面に向かって付勢され、回転中はこの磁気吸引力とスラスト軸受における発生動圧力とが釣り合うような位置に定まる。
【0015】
しかしながら、このような構成においてスラストフランジ外周がスラストプレートに向かって反っていると、スラストフランジは、起動時にスラストプレートと強く摺動するようになり、摩擦トルク過大による起動不良や異常摩擦を発生させる。
【0016】
そこで、本発明の流体軸受装置においては、スラストフランジにおける薄肉部の厚みが、本体部の厚みの1/2より大きくなるように形成している。より好ましくは、本体部厚みの10%以上大きい。そして、シャフトとスラストフランジとを溶接接合した際のシャフトとスラストフランジとの溶融部における断面の重心位置である溶融中心部が、本体部の厚みの中心位置、あるいは、本体部の厚みの略中心位置にくるように配置されている。
【0017】
なお、ここでいう「本体部の厚みの略中心位置」とは、スラストフランジの厚みの中心位置よりもやや上側であることを指し、スラストフランジの厚みの中心位置よりも下側であることはない。そして、その範囲は、例えば、本体部の厚みの中心位置から本体部厚みの20%以内、より好ましくは、15%以内である。
【0018】
これにより、スラストフランジにおける下側と上側とにおける熱収縮の量を均等、あるいは、やや上側に偏った状態(例えば、フランジ外径が4.5〜7mm、本体部厚みが0.3〜0.7mmである場合の設計上好ましい値である0〜3ミクロン)にすることができるので、スラストフランジを反りのない状態、あるいは、反りが発生してもやや上側向きの状態に形成することが可能となる。
【0019】
この結果、スラストフランジが被対向部材側に反ることを防止することができるので、スラストフランジと被対向部材との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。
【0020】
第2の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、シャフトに対してスラストフランジを支持する支持部分における軸方向中心位置は、本体部の厚みの中心位置と一致、あるいは、ほぼ一致している。
【0021】
ここでは、シャフトに対してスラストフランジを支持する支持部分における軸方向中心位置を、本体部の厚みの中心位置に一致、あるいは、ほぼ一致させている。
【0022】
なお、ほぼ一致の範囲とは、支持部分における軸方向中心位置がスラストフランジの本体部の厚みの中心位置から20%以内の位置(より好ましくは15%以内)をいう。
【0023】
シャフトとスラストフランジとを溶接接合するにあたっては、シャフトに対してスラストフランジを支持する支持部分をスラストフランジの本体部の中心位置近傍に配置しておくことで、上述の溶融中心部を本体部の厚みの中心位置あるいは略中心位置に形成することができる。
【0024】
第3の発明に係る流体軸受装置は、第1または第2の発明に係る流体軸受装置であって、スラストフランジにおけるシャフトの端部とは反対側の端面とシャフトとの間には、非当接部が形成されている。
【0025】
ここでは、スラストフランジにおける上側端面とシャフトとの間に、非当接部が形成されている。
【0026】
これにより、レーザ照射エネルギーがばらついてシャフトとスラストフランジとが互いに当接する円筒面を貫通してしまっても、溶融部はスラストフランジの薄肉部よりも拡大することはない。その結果、照射エネルギーのバラツキが生じてもスラストフランジの反り量を一定に安定化することが可能となる。
【0027】
第4の発明に係る流体軸受装置は、第3の発明に係る流体軸受装置であって、非当接部は、スラストフランジに対して凹んだ状態となるようにシャフトに形成されている。
【0028】
ここでは、非当接部は、シャフト側に形成されている。
これにより、流体軸受装置として組み立てられた場合でも、シャフトとスラストフランジとが接触しない非当接部を容易に形成することが可能となる。
【0029】
第5の発明に係る流体軸受装置は、第3の発明に係る流体軸受装置であって、非当接部は、シャフトに対して凹んだ状態となるようにスラストフランジに形成されている。
【0030】
ここでは、非当接部は、スラストフランジ側に形成されている。
これにより、流体軸受装置として組み立てられた場合でも、シャフトとスラストフランジとが接触しない非当接部を容易に形成することが可能となる。また、非当接部をスラストフランジ側に設けることによって、シャフトの先端を細くすることがなくなるので、シャフトに応力集中が発生することを抑制することができる。このため、シャフトの強度を高くすることが可能となる。
【0031】
第6の発明に係る流体軸受装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、本体部の厚み中心位置とスラストフランジにおけるシャフトの端部側の端面との距離aと、本体部の厚み中心位置とスラストフランジにおけるシャフトの端部とは反対側の端面との距離bとが、b>2aの関係を満たしている。
【0032】
ここでは、本体部の厚み中心位置とスラストフランジにおける上側端面との距離aと、本体部の厚み中心位置とスラストフランジにおける下側端面との距離bとがb>2aの関係を満たしている。
【0033】
ここで、シャフトとスラストフランジとの溶融部は、一般的に横断面形状が楕円状に形成される。このため、溶融中心部を本体部における厚みの中心位置よりも上側に形成することで、スラストフランジを確実に上側向きに反らせることが可能となる。
【0034】
第7の発明に係る流体軸受装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、スラストフランジと対向する位置に配置されているスラストプレートをさらに備えている。
【0035】
ここでは、スラストフランジと対向する位置に配置されるスラストプレートがさらに備えられている。
【0036】
上述したように、本発明の流体軸受装置では、スラストフランジにおける下側と上側とにおける熱収縮の量を均等、あるいは、やや上側に偏った状態にすることができるので、スラストフランジを反りのない状態、あるいは、反りが発生してもやや上側向きの状態に形成することが可能となる。
【0037】
これにより、スラストフランジが下側、すなわち、スラストプレート側に反ることを防止することができるので、スラストフランジとスラストプレートとの接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。
【0038】
第8の発明に係る流体軸受装置は、第7の発明に係る流体軸受装置であって、スラストプレートは、外周端が固定部材に対して溶接接合されている。
【0039】
ここでは、スラストプレートが、外周端が固定部材に対して溶接接合されている。
なお、ここでいう固定部材とは、スラストプレートをスラストフランジと対向する位置に固定する部材をいい、例えば、シャフトと微少隙間を介して配置されるスリーブや、前記スリーブを固定するための筒状部を有するベース等を意味する。
【0040】
ここで、外周端の下側が溶接接合されたスラストプレートは、溶接時の熱収縮によって外周端の下側が引っ張られ、上側に反った状態となる。また、本発明のスラストフランジは、上述に示したように、上側に反った状態、すなわち、スラストプレート同様の状態に形成することが可能である。
【0041】
これにより、スラストフランジと対向する位置に、外周部が溶接によって接合されるスラストプレートが配置されていても、このスラストプレートの反りの状態に合わせて、スラストフランジの反りの状態を形成することができる。この結果、スラストフランジがスラストプレートに接触することをより効果的に回避することが可能となる。
【0042】
第9の発明に係るスピンドルモータは、第1から第8の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを備えている。ロータマグネットは、流体軸受装置の回転側部材に取り付けられている。ステータコイルは、ロータマグネットに対して回転力を付与する。
【0043】
ここでは、上述した流体軸受装置をスピンドルモータに搭載している。
これにより、スラストフランジと被対向部材との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能なスピンドルモータを提供することができる。
【0044】
第10の発明に係る情報処理装置は、第9の発明に係るスピンドルモータを備えている。
【0045】
ここでは、上述したスピンドルモータを情報処理装置に搭載している。
ここで、上記情報処理装置には、記録再生装置としてのHDD、光ディスク装置、光磁気記録再生装置、各種再生専用装置等や、CPUに搭載される冷却用ファン、レーザプリンタやレーザスキャナ等に用いられるポリゴンミラー駆動用スピンドルモータ等が含まれる。
【0046】
これにより、スラストフランジと被対向部材との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る流体軸受装置によれば、スラストフランジが被対向部材側に反ることを防止することができるので、スラストフランジと被対向部材との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を搭載したスピンドルモータ10について、図1〜図4を用いて説明すれば以下の通りである。
【0049】
なお、本実施形態の説明では、便宜上、図面の上下方向を「軸方向上側(上端)」、「軸方向下側(下端)」等と表現するが、スピンドルモータ10の実際の取り付け状態を限定するものではない。
【0050】
[スピンドルモータ10全体の構成]
本実施形態に係るスピンドルモータ10は、図1に示すように、ロータハブ15、ロータマグネット16、ステータ17、ベース18および流体軸受装置20等を備えている。
【0051】
そして、流体軸受装置20は、スリーブ(固定部材)11、シャフト12、スラストフランジ13、スラストプレート(被対向部材)14を有している。
【0052】
スリーブ11は、軸受孔11aを有しており、鉄、鉄合金、銅、銅合金等の金属材料等によって形成され、ベース18に固定されている。また、スリーブ11には、スラストフランジ13の外径部分に対向する段部11bが設けられており、スラストフランジ13の外径部分が段部11bと隙間を介して位置している。さらに、スリーブ11には、段部11bより径が大きな段部11cが設けられており、円板状のスラストプレート14が段部11cに溶接によって接合され、さらに必要に応じて接着剤などで密閉されている。また、スリーブ11における軸受孔11aの上側端部には、径方向内側に向かって軸方向下向きに傾斜する傾斜面11dが形成されている。この傾斜面11dは、軸方向下向きにシャフト12との間隔が狭くなるように形成されているため、毛管力を用いたテーパシール部として機能する。そして、テーパシール部は、潤滑流体26をシャフト12とスリーブ11との間の隙間に安定して保持している。潤滑流体26としては、エステル系オイル、高流動性グリース、イオン性液体などが用いられる。
【0053】
さらに、スリーブ11の軸受孔11aの内周面側には、ヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝が形成されている。なお、ラジアル動圧発生溝は、スパイラル形状であってもよい。
【0054】
シャフト12は、円筒状の外周面を有する部材であって、軸受孔11aに回転可能な状態で挿入されている。また、シャフト12の下端部には、第1凸部12aが形成されており、この第1凸部12a部分に、後述するスラストフランジ13が溶接接合されている。なお、シャフト12は回転中心の軸として用いられることから、例えば、SUS等の素材的には硬い金属が使われており、成型バイト等によって加工され、さらにセンタレス研磨加工などを用いることで直径、円筒度、真円度など必要な精度が確保される。また、シャフト12の上端部には、ロータハブ15を取り付けるための第2凸部12bが設けられている。
【0055】
スラストフランジ13は、シャフト12と溶接可能な金属製の略円板状の部材であって、上述のように、シャフト12の下端部に形成された第1凸部12aに対して溶接によって接合されている。そして、スラストフランジ13は、スリーブ11の段部11bとスラスト軸受部材であるスラストプレート14とで囲まれた空間に配置されている。スラストフランジ13の下面は、スラストプレート14に対向し、スラストフランジ13の上面は、スリーブ11の一部と対向している。スラストフランジ13の上面に対向するスリーブ11の面には、スラスト動圧発生溝が形成されている。なお、スラストフランジ13の詳述な形状およびシャフト12とスラストフランジ13との接合構造については、後段にて詳述する。
【0056】
スラストプレート14は、流体軸受装置20の底面を覆うように取り付けられた略円板状の部材であって、その上部表面にはスラスト動圧発生溝が形成されている。なお、スラスト動圧発生溝が形成される面は、本実施形態の構成に限定されるものではなく、軸方向に隙間を形成しつつ対向する面のいずれか一方に形成されていればよい。すなわち、スラスト動圧発生溝は、スラストフランジ13の下面、あるいは、スラストプレート14の上面に形成されていてもよい。また、スラスト動圧発生溝は必ずしもスラストフランジ13の上下に配置される必要はなく、例えば、スラストフランジ13とスラストプレート14との間だけに配置されていてもよい。
【0057】
ロータハブ15は、略中心部分には貫通孔15aが形成されており、シャフト12の第2凸部12bに対して、例えば、圧入接着工法や溶接などによって固着されている。ロータハブ15の内周面側には、略円環状のロータマグネット16が取り付けられており、ステータ17に対して半径方向において対向している。
【0058】
また、ラジアル動圧発生溝およびスラスト動圧発生溝を含むシャフト12とスリーブ11の軸受孔11aとの間の隙間、および、スラストフランジ13とスリーブ11との間、および、スラストフランジ13とスラストプレート14との間の隙間には、潤滑流体26が保持されている。
【0059】
円環状のロータマグネット16は、円周方向に等間隔に複数極に磁化されており、ロータハブ15の内周面側に固定されている。そして、ステータコイル17aが巻回された対向するステータ17との間において吸引、反発を繰り返すことで、シャフト12を中心としてロータハブ15を回転させる。
【0060】
ベース18は、ステータ17やロータマグネット16等を含むモータ部を収容する凹部18aが形成されている。そして、その凹部18aの略中心部分には、スリーブ11を固着するための穴18bが設けられている。そのベース18の穴18bを形成する部分には、ステータコイル17aが巻線されたコアを含むステータ17が接着等の工法によって固定されている。
【0061】
[シャフト12とスラストフランジ13との接合]
シャフト12とスラストフランジ13との接合部およびその接合方法について、図2,図3を用いて詳しく説明すれば以下の通りである。
【0062】
シャフト12は、上述したように、シャフト12の下端部に第1凸部12aを有している。さらに、第1凸部12aの根本には、逃げ部(非当接部)12cが形成されている。逃げ部12cは、第1凸部12aにスラストフランジ13を挿通させた際に、スラストフランジ13に対して凹んだ状態になるように形成されている。
【0063】
スラストフランジ13は、図2に示すように、本体部13aと、挿通孔13bと、薄肉部13cとを有している。本体部13aは、スラストフランジ13において上述したスラスト動圧発生溝が形成される本体部分を構成している。挿通孔13bは、シャフト12における第1凸部12aが挿通される。薄肉部13cは、挿通孔13bの周囲に形成され、本体部13aにおける上側が内周側に突出した形状となっている。そして、薄肉部13cの軸方向における厚みH2は、本体部13aの軸方向に対する厚みH1の1/2より大きい。より好ましくは、1/2よりも本体部13aの厚みH1の10%以上厚い。なお、本実施形態においては、第1凸部12aの高さH3は、薄肉部13cの軸方向における厚みH2に対して、本体部13aの厚みH1の−5%〜+10%を加えた範囲である。
【0064】
シャフト12とスラストフランジ13との接合は、溶接によって行われている。本実施形態においては、溶接工法としてレーザ溶接を採用している。
【0065】
そして、シャフト12とスラストフランジ13とは、シャフト12における下端部側から溶接され、図2に示すような溶融部30を形成している。そして、溶融部30における断面の重心位置(図心)である溶融中心部Gは、本体部13aの厚みの中心位置Hよりやや上側となるように配置されている。そして、ここでいう、やや上側とは、本体部の厚みの中心位置から本体部厚みの20%以内、より好ましくは、15%以内の範囲に配置される。
【0066】
なお、溶融中心部Gは、本体部13aの厚みの中心位置Hよりも下側に配置されることはない。これにより、スラストフランジ13の下側半分よりも上側半分の方が、スラストフランジ13における半径方向の熱収縮の量が若干ではあるが大きくなる。このため、スラストフランジ13は、最小限の範囲で上側に反ることとなり、スラストフランジ13がスラストプレート14の配置されている下側に反ってしまうことを防止することができる。この結果、スラストフランジ13の外周部が、スラストプレート14に接触することを防止できるので、スラストフランジ13とスラストプレート14との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。ここで、スラストプレート14をスリーブ11やベース18に対して溶接によって固定した場合、スラストプレート14は熱収縮によって中央部分が突出し、外周部分はスラストフランジ13の外周に近接するように変形する。しかしながら本実施形態によれば、特許文献1に記載された例とは異なり、スラストフランジ13は、ほぼフラットな状態、あるいは、その外周が、スラストプレート14から離間する方向に変形させることが可能である。その結果、スラストフランジ13とスラストプレート14とが強く摺動することを回避できる。
【0067】
ここで、スラストフランジ13の各部寸法の関係について説明する。
本実施形態のスラストフランジ13では、図2に示すように、本体部13aの厚み中心位置Hとスラストフランジ13におけるシャフト12の下端側端面との距離aと、本体部13aの厚み中心位置Hとスラストフランジ13におけるシャフト12の上端側端面との距離bとが、b>2aの関係を満たしている。ここで、上述の距離bは、スラストフランジ13における本体部13aの厚みの半分の大きさと一致している。これにより、本体部13aにおける厚みの中心位置Hよりも確実に上側に、溶融中心部Gを形成することを可能としている。
【0068】
次に、シャフト12とスラストフランジ13との接合方法について説明する。
シャフト12とスラストフランジ13とを接合する際には、最初に、シャフト12に対してスラストフランジ13の接合位置を決める位置決めを行う。具体的には、図3に示すように、シャフト12に対してスラストフランジ13を支持する支持部分35における軸方向中心位置35aを、本体部13aの厚みの中心位置Hとほぼ一致するように位置決めを行う。
【0069】
なお、ここでいうほぼ一致の範囲とは、支持部分35における軸方向中心位置35aがスラストフランジ13の本体部13aの厚みの中心位置から20%以内の位置(より好ましくは、15%以内)である。
【0070】
本実施形態においては、シャフト12に逃げ部12cが形成されている。そして、この逃げ部12cにおいては、スラストフランジ13とシャフト12とが当接することはないので、上記支持部分35がシャフト12の上端側に近い方まで形成されることを回避することができる。すなわち、逃げ部12cを設けることによって、上記支持部分35が形成される部分の長さを調整することができる。これにより、スラストフランジ13における支持部分35の長さを調整して、支持部分35における軸方向中心位置35aが、本体部13aの厚みの中心位置Hとほぼ一致するように位置決めを行うことが可能となる。
【0071】
次に、上述の位置決めした状態で、シャフト12とスラストフランジ13とを溶接接合する。具体的には、シャフト12の下端側からシャフト12とスラストフランジ13との溶接を行い、溶融部30(図2参照)を形成する。なお、溶接後の支持部分35とは、溶融部30と、たとえシャフト12と溶接によって一体となっていなくてもシャフト12と半径方向に当接する円筒部分を含む。
【0072】
このような方法で溶接接合された流体軸受装置20では、支持部分35における軸方向中心位置35aが、スラストフランジ13における本体部13aの厚みの中心位置Hとほぼ一致している。そして、流体軸受装置20をこのように形成することで、溶融中心部Gをスラストフランジ13における本体部13aの厚みの中心位置Hよりもやや上側に確実に形成することが可能となる。これによりたとえレーザ照射エネルギーや、シャフト12やスラストフランジ13の寸法等にバラツキがあっても、反り量の安定化を図ることができ、結果として製品品質の安定化と信頼性の向上を図ることが出来る。
【0073】
[スリーブ11とスラストプレート14の接合]
ここで、スリーブ11とスラストプレート14の接合部およびその接合方法について、図4を用いて詳しく説明すれば以下の通りである。
【0074】
スラストプレート14は、図4に示すように、スリーブ11の下端側を覆うように取り付けられている。具体的には、スラストプレート14は、スリーブ11における段部11cに嵌合され、スラストプレート14の外周端14aにおける下端部が、スリーブ11の段部11cに溶接接合されている。このため、スラストプレート14は、溶接時の熱収縮によって外周端14aの下側が引っ張られ、図4に破線で示すようなやや上側に反った状態となる。
【0075】
ここで、上述したように、本実施形態のスラストフランジ13は、やや上側に反った状態に形成することが可能である。このため、スラストフランジ13の反りの状態を、スラストプレート14の反りの状態に合わせて形成することができる。この結果、スラストフランジ13がスラストプレート14に接触することをより効果的に回避することが可能となる。また、スラストフランジ13とスラストプレート14とを同様の形状に形成することによって、等間隔の微少隙間を形成することができる。これにより、スラストフランジ13とスラストプレート14との間に微少間隙を良好に形成することができ、スラスト軸受部を良好な状態に形成することが可能となる。
【0076】
[スピンドルモータ10の特徴]
(1)
本実施形態のスピンドルモータ10は、図2に示すように、スラストフランジ13における薄肉部13cの厚みが、本体部13aの厚みの1/2より大きくなるように形成している。そして、シャフト12とスラストフランジ13とを溶接接合した際のシャフト12とスラストフランジ13との溶融部30における断面の重心位置である溶融中心部Gが、本体部13aの厚みの位置よりやや上側にくるように配置されている。
【0077】
これにより、スラストフランジ13の下側半分よりも上側半分の方が、スラストフランジ13における半径方向の熱収縮の量が若干ではあるが大きくなる。このため、スラストフランジ13は、最小限の範囲でやや上側に反るようになり、スラストフランジ13がスラストプレート14の配置されている下方に反ってしまうことを防止することができる。この結果、スラストフランジ13が、スラストプレート14に接触することを防止できるので、スラストフランジ13とスラストプレート14との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。
【0078】
スラスト動圧発生溝は、通常、外周側では潤滑流体26をスラストフランジ13の内周側に向かって掻き込もうとするように溝形状が設定されている。ここで、スラストフランジ13が下側に反っていると、潤滑流体26は、設計意図よりも大量にスラストフランジ13の下面とスラストプレート14との間に掻き込まれてしまう。その結果、特に低温においては、スラストフランジ13の下側隙間における浮上量が過大になり、スラストフランジ13とスリーブ11との間で摺動してしまうことが生ずる。このような状態に陥ると、低温環境下ではモータの起動が正常に出来なくなる、もしくは、軸受内部で摺動状態が生ずることにより軸受磨耗が進行するといった事態を引き起こす。
【0079】
一方、本実施形態においては、スラストフランジ13がやや上側に反っている。その結果、スラストフランジ13とスラストプレート14との間に大量に潤滑流体が掻き込まれることが防止され、低温時における過大浮上を抑制することが可能となる。また、スラストフランジ13の上面とスリーブ11下面との間にスラスト動圧発生溝が形成されている場合、スラストフランジ13がやや上側に反っていることにより、スラストフランジ13とスリーブ11との間にも潤滑流体26が掻き込まれることによりスリーブ11とスラストフランジ13との間で摺動するといった事態を生じない。この結果、低温においても、良好な状態で回転部材を回転させることが可能となる。
【0080】
(2)
本実施形態のスピンドルモータ10では、支持部分35における軸方向中心位置35aが、スラストフランジ13における本体部13aの厚みの中心位置Hとほぼ一致している。
【0081】
これにより、本体部13aの厚みの中心位置Hよりもやや上側に溶融中心部Gを確実に形成することが可能となる。その結果、たとえレーザ照射エネルギーや、シャフト12やスラストフランジ13の寸法等にバラツキがあっても、反り量の安定化を図ることができ、結果として製品品質の安定化と信頼性の向上を図ることが出来る。
【0082】
(3)
本実施形態のスピンドルモータ10では、図2に示すように、スラストフランジ13における上側端面とシャフト12との間に、逃げ部12cが形成されている。
【0083】
これにより、スラストフランジ13における支持部分35の長さを調整して、支持部分35における軸方向中心位置35aが、本体部13aの厚みの中心位置Hとほぼ一致するように位置決めを行うことが可能となる。その結果、レーザ照射エネルギーがばらついてもスラストフランジ13の反り量を一定に安定化することが可能になる。
【0084】
(4)
本実施形態のスピンドルモータ10では、逃げ部12cが、スラストフランジ13の上端面に対して凹んだ状態となるようにシャフト12に形成し、溶融部30の近傍で軸方向に接触しない非当接部を構成している。
【0085】
これにより、レーザ照射エネルギーがばらついてシャフト12とスラストフランジ13が互いに当接する円筒面を貫通してしまっても溶融部30はスラストフランジ13の薄肉部13cよりも拡大することはない。その結果、照射エネルギーのバラツキが生じてもスラストフランジ13の反り量を一定に安定化することが可能となる。
【0086】
(5)
本実施形態のスピンドルモータ10では、図2に示すように、本体部13aの厚み中心位置Hとスラストフランジ13におけるシャフト12の下端側端面との距離aと、本体部13aの厚み中心位置Hとスラストフランジ13におけるシャフト12の上端側端面との距離bとが、b>2aの関係を満たしている。
【0087】
これにより、溶融中心部Gをスラストフランジ13の本体部13aにおける厚みの中心位置Hよりも上側に確実に形成することができる。
【0088】
(6)
本実施形態のスピンドルモータ10では、図4に示すように、スラストフランジ13と対向する位置に配置されているスラストプレート14をさらに備えている。
【0089】
上記流体軸受装置20では、スラストフランジ13の外周が、下側、すなわち、スラストプレート14側に反ることを防止することができるので、スラストフランジ13とスラストプレート14との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。
【0090】
(7)
本実施形態のスピンドルモータ10では、図4に示すように、スラストプレート14の外周端14aにおける下端部が、スリーブ11の段部11cに溶接接合されている。
【0091】
これにより、スラストフランジ13の反りの状態を、図4の破線が示すようなやや上側に反った状態であるスラストプレート14に合わせて形成することが可能となる。この結果、スラストフランジ13がスラストプレート14に接触することをより効果的に回避することが可能となる。また、スラストフランジ13とスラストプレート14とを同様な形状に形成することによって、スラストフランジ13とスラストプレート14との間に微少間隙を内周から外周にわたってより均一に形成することができ、スラスト軸受部を良好な状態に形成することが可能となる。
【0092】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0093】
(A)
上記実施形態のスピンドルモータ10では、溶融部30における断面の重心位置である溶融中心部Gを本体部13aの厚みの中心位置Hよりやや上側に配置し、スラストフランジ13をやや上側に反った状態に維持する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0094】
例えば、図5に示すように、溶融部30における断面の重心位置である溶融中心部G1を本体部13aの厚みの中心位置Hに配置してもよい。これにより、スラストフランジ13における下側と上側とにおける熱収縮の量を均等にすることができるので、スラストフランジ13を反りのない状態に形成することが可能となる。この結果、スラストフランジ13がスラストプレート14側に反ることを防止することができるので、スラストフランジ13とスラストプレート14との接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。
【0095】
(B)
上記実施形態のスピンドルモータ10では、シャフト12の端部に第1凸部12aが形成され、その第1凸部12aにスラストフランジ13が溶接接合されている流体軸受装置20を備えている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
例えば、流体軸受装置120は、図6に示すように、シャフト112の本体部にスラストフランジ113が溶接接合されているような構造であってもよい。すなわち、スラストフランジ113は、上記実施形態と同様に、本体部113aと、挿通孔113bと、薄肉部113cとを有している。そして、薄肉部113cの軸方向における厚みH2は、本体部113aの軸方向に対する厚みH1の1/2より大きい。さらに、シャフト112とスラストフランジ113との溶融部130における断面の重心位置である溶融中心部G2が、本体部113aの厚みの中心位置H、あるいは、本体部113aの厚みの中心位置Hよりやや上側となるように配置されている。この場合であっても、上記スピンドルモータ10と同様の効果を得ることができる。
【0097】
(C)
上記実施形態のスピンドルモータ10では、逃げ部12cがシャフト12に形成されている流体軸受装置20を備えている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
例えば、図7に示すように、スラストフランジ313側に逃げ部(非当接部)313dが形成された流体軸受装置320であってもよい。逃げ部313dの形状は図7に示すように薄肉部313cの内周側において、スラストフランジ313の上面側に設けた段部であっても良いし、単純なC面取り形状でも良い。
【0099】
これにより、レーザ照射エネルギーがばらついてシャフト312とスラストフランジ313とが互いに当接する円筒面を貫通してしまっても、溶融部330はスラストフランジ313の薄肉部313cよりも拡大することはない。その結果、照射エネルギーのバラツキが生じてもスラストフランジ313の反り量を一定に安定化することが可能となる。
【0100】
また、逃げ部313dをスラストフランジ313側に設ける構成の場合、シャフト312先端を細くすることがなくなるので、シャフト312に応力集中が発生することを抑制することができる。このため、シャフト312の強度を高くすることが可能となる。
【0101】
(D)
上記実施形態のスピンドルモータ10では、スラストプレート14がスリーブ11の下端部に取り付けられている流体軸受装置20を備えている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0102】
例えば、スピンドルモータ410は、図8に示すような流体軸受装置420を備えていてもよい。すなわち、スピンドルモータ410は、スラストプレート114が取り付けられている固定部材は、スリーブ411ではなく、ベース(固定部材)418であってもよい。なお、上述以外の構成(図1と参照番号が同じ部位)は、上記スピンドルモータ10と同じであるので、ここではその説明は省略する。この場合も、上記の実施形態に係るスピンドルモータ10と同様の効果を得ることができる。
【0103】
(E)
上記実施形態では、本発明に係る流体軸受装置20を、スピンドルモータ10に対して搭載した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0104】
例えば、図9に示すように、記録再生ディスク551に対して記録再生を行う記録ヘッド552を有する磁気記録再生装置(情報処理装置)550に搭載されるスピンドルモータ510(流体軸受装置520)に対しても本発明の適用は当然に可能である。
【0105】
また、記録再生装置としては、磁気記録再生装置に限らず、例えば、光ディスク等の他の記録再生装置に対しても搭載可能である。
【0106】
さらには、情報処理装置として、レーザプリンタやレーザスキャナ等に用いられるポリゴンミラー駆動用スピンドルモータや、CPUに搭載される冷却ファンを回転させるスピンドルモータ等に含まれる流体軸受装置としても本発明の適用は可能である。
【0107】
(F)
上記実施形態のスピンドルモータ10では、軸受シール構造は、図1に示すように、スリーブ11における軸受孔11aの上側端部に形成され径方向内側に向かって軸方向下向きに傾斜する傾斜面11dと、シャフト12とによって構成されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
例えば、スリーブ上端側にカバー部材を設け、カバー部材とスリーブ上端との間に潤滑流体を保持し、カバー部材内周部とシャフト外周円筒面との間で毛管シールを形成してもよい。
【0109】
さらに、スリーブ上端とこれに対向するハブ下面との間に潤滑流体を溜めると共に、スリーブ上端外周を囲うようにハブ下面に垂下円筒面を設けて、この垂下円筒面の内周円筒面とスリーブ上端の外周円筒面との間に毛管シールを形成する構成であってもよい。
【0110】
(G)
上記実施形態のスピンドルモータ10では、図1に示すような、流体軸受装置20を搭載している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0111】
例えば、本発明は、シャフト側が回転する軸回転型の流体軸受装置だけではなく、スリーブ側が回転する軸固定型の流体軸受装置に適用することも可能である。また、スリーブの一端が閉鎖された型の流体軸受装置だけではなく、スリーブの両端が開口している両端開口型の流体軸受装置に適用することも可能である。
【0112】
(H)
上記実施形態のスピンドルモータ10では、スリーブ11とスラストプレート14とが溶接により接合されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0113】
例えば、スリーブとスラストプレートとは、カシメ接着、圧入接着等により接合されていてもよい。この場合であっても、スラストフランジがスラストプレート側に反ることを防止することができるので、スラストフランジとスラストプレートとの接触による起動不良や異常摩擦を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によれば、被溶接部材が溶接時の熱収縮によって反ってしまうことを防止あるいは抑制することができるので、被溶接部材の反りによって発生する起動不良や異常摩擦を生じさせてしまう部位への適用が特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を含むスピンドルモータの断面図。
【図2】図1に含まれる流体軸受装置の下端部を拡大した拡大断面図。
【図3】図1に含まれる流体軸受装置を示した断面図。
【図4】図1に含まれる流体軸受装置の下端部を拡大した拡大断面図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置の下端部を拡大した拡大断面図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置の下端部を拡大した拡大断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置の下端部を拡大した拡大断面図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置を含むスピンドルモータの断面図。
【図9】本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を搭載した磁気記録再生装置の断面図。
【符号の説明】
【0116】
10,410,510 スピンドルモータ
11 スリーブ(固定部材)
11a 軸受孔
11b 段部
11c 段部
11d 傾斜面
12,112,312 シャフト
12a 第1凸部
12b 第2凸部
12c 逃げ部(非当接部)
13,113,313 スラストフランジ
13a,113a 本体部
13b,113b 挿通孔
13c,113c,313c 薄肉部
14,114 スラストプレート(被対向部材)
14a 外周端
15 ロータハブ
15a 貫通孔
16 ロータマグネット
17 ステータ
17a ステータコイル
18 ベース
18a 凹部
18b 穴
20,120,320,420,520 流体軸受装置
26 潤滑流体
30,130,330 溶融部
35 支持部分
35a 支持部分における軸方向中心位置
313d 逃げ部(非当接部)
411 スリーブ
418 ベース(固定部材)
550 磁気記録再生装置(情報処理装置)
551 記録再生ディスク
552 記録ヘッド
G,G1,G2 溶融中心部
H 本体部における厚み中心位置
H1 本体部の厚み
H2 薄肉部の厚み


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
本体部と、前記シャフトが挿通される挿通孔と、前記挿通孔の周囲に形成されており、軸方向における厚みが、前記本体部の前記軸方向における厚みの1/2よりも大きい薄肉部と、を有しており、前記シャフトの端部近傍に配置されているスラストフランジと、
前記本体部の前記軸方向における厚みの中心位置あるいは略中心位置に配置されており、前記シャフトと前記スラストフランジとを前記シャフトの端部側から溶接した際の前記シャフトと前記スラストフランジとの溶融部における断面の重心位置である溶融中心部と、
を備えている、流体軸受装置。
【請求項2】
前記シャフトに対して前記スラストフランジを支持する支持部分における前記軸方向中心位置は、前記本体部の厚みの中心位置と一致、あるいは、ほぼ一致している、
請求項1に記載の流体軸受装置。
【請求項3】
前記スラストフランジにおける前記シャフトの端部とは反対側の端面と前記シャフトとの間には、非当接部が形成されている、
請求項1または2に記載の流体軸受装置。
【請求項4】
前記非当接部は、前記スラストフランジに対して凹んだ状態となるように前記シャフトに形成されている、
請求項3に記載の流体軸受装置。
【請求項5】
前記非当接部は、前記シャフトに対して凹んだ状態となるように前記スラストフランジに形成されている、
請求項3に記載の流体軸受装置。
【請求項6】
前記本体部の厚み中心位置と前記スラストフランジにおける前記シャフトの端部側の端面との距離aと、前記本体部の厚み中心位置と前記スラストフランジにおける前記シャフトの端部とは反対側の端面との距離bとが、b>2aの関係を満たしている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項7】
前記スラストフランジと対向する位置に配置されているスラストプレートをさらに備えている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項8】
前記スラストプレートは、外周端が固定部材に対して溶接接合されている、
請求項7に記載の流体軸受装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の流体軸受装置と、
前記流体軸受装置の回転側部材に取り付けられたロータマグネットと、
前記ロータマグネットに対して回転力を付与するステータコイルと、
を備えている、スピンドルモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のスピンドルモータを備えている、情報処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−53906(P2010−53906A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217281(P2008−217281)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】