説明

流体輸送蛇腹ホース及びその製造方法

【課題】断面の中間に樹脂層を有する樹脂複合ホースにあっても良好に蛇腹部を成形でき、且つホース全体を作業性良く安価に製造することのできる流体輸送蛇腹ホースを提供する。
【解決手段】バリア層としての樹脂層12に対して内ゴム層16と外ゴム層14とを積層して流体輸送蛇腹ホース10を構成する。そしてホース軸方向の少なくとも一部に蛇腹部22を設けておく。その蛇腹部22は、谷部22Bの内径がホース10におけるストレート形状部20の内径よりも小径で、且つ山部22Aの外径がストレート形状部20の外径を超えないものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホース軸方向の少なくとも一部に蛇腹部を有する流体輸送蛇腹ホースに関し、詳しくは輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を断面の中間に有する樹脂複合の流体輸送蛇腹ホース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体輸送ホース、例えば自動車の燃料輸送ホースとして、従来振動吸収性,組付性が良好で耐燃料(ガソリン)透過性に優れたNBR+PVC(アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド)等の一般的なゴムホースが用いられてきた。
しかしながら近年、自動車燃料の透過規制は地球環境保全の観点から厳しく、今後も耐燃料透過性に対する要求は益々強まることが予想される。
【0003】
そのための手段として、燃料に対する耐透過性に優れた樹脂層をバリア層として外ゴム層の内側に内面層として積層した樹脂複合ホースが開発され、用いられている。
しかしながらバリア層としての樹脂層は材質的にゴムよりも硬い硬質層であるため、これを外ゴム層の末端(ホース軸方向端)に到るまで積層形成すると、ホースを相手パイプに外挿状態に挿し込んだときに、相手パイプと内面の樹脂層との密着が悪く、シール性が不十分となってしまう。
またホースを相手パイプに外挿状態に挿し込む際に、内面の樹脂層が硬く変形抵抗が大きいために、挿込作業の際に大きな力を必要とし、ホースの接続作業性が悪化する問題を生ずる。
この問題の解決を目的としたものとして、下記特許文献1には図8に示すようなホースが開示されている。
【0004】
図において200は樹脂複合ホースで、202は外ゴム層、204はその内面に積層形成されたバリア層としての樹脂層である。
この樹脂複合ホース200では、金属製の相手パイプ206と接続される端部については樹脂層204を形成しないで、外ゴム層202の内面を露出させ、同内面を相手パイプ206に直接弾性接触状態に嵌合するようにしている。
【0005】
また内部を流通する燃料が、外ゴム層202の露出した内面と相手パイプ206との間に浸入し、更に樹脂層204の形成されていない外ゴム層202の端部を通じて外部に透過するのを防止するため、この樹脂複合ホース200では、樹脂層204の端部に環状の凹所208を形成して、そこにフッ素ゴム等から成る耐燃料透過性の高いリング状の弾性シール部材210を装着し、その弾性シール部材210の内面に相手パイプ206を弾性接触状態で嵌合させるようにしている。
【0006】
尚、212は相手パイプ206の先端部に径方向外方に環状に膨出する形態で設けられた膨出部であり、214は樹脂層204の形成されていない外ゴム層202の端部を外周面から縮径方向に締め付けて、相手パイプ206に固定するホースクランプである。
【0007】
この図8に示す樹脂複合ホース200では、ホース端部に樹脂層204が形成されておらず、樹脂複合ホース200を相手パイプ206に外挿状態に挿し込む際に、樹脂層204による抵抗が強く働かないことから、挿込作業を小さい力で容易に行うことが可能である。
また端部においては弾性を有する外ゴム層202の内面が直接相手パイプ206と接触するため、樹脂複合ホース200と相手パイプ206との嵌合部分のシール性を良好となすことができる。
【0008】
ところで燃料輸送ホースは、周辺部材との干渉を回避して配管する必要があることから、通常は所定の曲り形状をなしている。
一般的なゴムホースの場合、かかる曲り形状のホースを製造するには、下記特許文献2にも開示されているようにゴムホースを長尺の直管状に押出成形して、これを所定寸法に切断した後、未加硫(又は半加硫)の直管ホース216を、所定の曲り形状を有する金属製のマンドレル218に挿し込んで曲り形状に変形させ、その状態で所定時間の加熱を行って加硫処理し、そして加硫処理が済んだところで、曲りの付与されたホース220をマンドレル218から抜き取って製品とする(図9参照)。なお、マンドレル218には、直管ホース216の差し込みに先立って、離型剤を塗布しておく。また、マンドレル218から抜き取られたホース220は洗浄される。
【0009】
ところが図8に示す樹脂複合ホース200の場合、このような製造方法を採用することができず、そこで図8に示す樹脂複合ホースの場合、先ず外ゴム層202を単独でインジェクション成形して、その後に外ゴム層202の内面に沿った形状で樹脂層204を形成する。
樹脂層204を外ゴム層202の内面に沿った形状で形成する方法として、静電塗装の手法が好適に用いられる。
【0010】
この静電塗装では、噴出ノズルをホースの内部、詳しくは外ゴム層202の内部に挿入し、そして噴出ノズルから樹脂粉体をホース内面に向けて噴出し、静電塗装する。
この静電塗装では、樹脂粉体が負又は正に帯電(通常は負に帯電)させられ、噴出ノズルから噴出された樹脂粉末が静電場を対極(正極)となる外ゴム層202の内面に向かって飛翔し、同内面に付着して樹脂の塗膜を形成する。
【0011】
この静電塗装の工程では、目的とする厚みで樹脂層204を形成するために、通常複数回の静電塗装を施す。詳しくは樹脂粉体を外ゴム層202の内面に付着させた後、これを加熱して溶融及び冷却し、更に再びその上から静電塗装にて樹脂粉体を吹き付けて加熱溶融及び冷却を行い、目的とする厚みの樹脂層204を形成する。
この場合の全体的な製造工程は次のようなものとなる。
【0012】
即ち、先ずインジェクション成形にて外ゴム層202を得た後乾燥処理し、更に前処理としての洗浄及びその後の乾燥を行って、その後に静電塗装にて樹脂粉体を内面に付着させ、その後これを溶融及び冷却した後、2回目の樹脂粉体の静電塗装及び加熱溶融,冷却固化を行う。そしてこれを所要の回数繰り返して目的の厚みの樹脂層204を形成した後、耐燃料透過性のリング状の弾性シール部材210を軸端から嵌め込んで所定位置に装着する。
【0013】
以上のように図8に示す樹脂複合ホースを製造するには多数の工程が必要で、そのために必然的に樹脂複合ホース200の製造コストが高くなってしまう。
以上燃料輸送ホースを例にとって説明したが、こうした問題は輸送流体の透過を防止するために外ゴム層の内側に内面層として輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有する樹脂複合ホースに共通の問題である。
【0014】
そこで本発明者らは、樹脂層の更に内側に内ゴム層を内面層として積層した形態の樹脂複合ホースを案出した。
この積層構造の樹脂複合ホースでは、樹脂層によって輸送流体に対する耐透過性(バリア性)を持たせることができ、また樹脂複合ホースを相手パイプに外挿状態に挿し込む際に内ゴム層の弾性変形によって小さな力で容易に挿込作業、即ちホース接続作業を行うことができる。
また内ゴム層を相手パイプに弾性接触させる状態に接続を行うことができるため、接続部におけるシール性も良好となすことができる。
【0015】
またこの積層構造の樹脂複合ホースでは、ホース軸方向端に到るまで樹脂層を形成しておくことができるため、図8に示すような輸送流体に対する高い耐透過性を有する高価なリング状のシール部材210の組込みも省略することができる。
加えてこの積層構造の樹脂複合ホースでは、ホース軸方向端に到るまで樹脂層を形成することができるため、図9に示すのと同様な製造方法で曲りホースを製造することが可能となる。
詳しくは、内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを順次積層状態に押出成形して、積層構造の直管形状の未加硫若しくは半加硫の直管ホースを製造し、そしてこれを所定の曲り形状をなすマンドレルに外挿状態に挿し込んで変形させ、その変形状態で加硫処理することによって、曲り形状の樹脂複合ホースを製造することが可能となる。
これにより樹脂複合ホースを従来に比べて大幅に安価に製造することが可能となる。
【0016】
ところで、自動車用の流体輸送ホースは振動吸収の働きを担っており、また車両への組付性や車両衝突時におけるショック吸収のためのホースの伸びを確保する観点から、かかるホースには蛇腹部を設けることが必要とされることも多い。
ホースに蛇腹部を形成する方法としては、例えば下記特許文献2に開示のものが公知である。
【0017】
しかしながらこの特許文献2に開示の方法の場合、マンドレルにおける蛇腹成形部の山部が、ストレート形状部の外径よりも径方向外方に突出した、山部外径の大きいものであり、そのようなマンドレルに対して直管形状に成形した未加硫若しくは半加硫の直管ホースをホース軸方向に挿入するとなると、径方向外方に突出した山部が障害となって、直管ホースの挿込みの際に大きな抵抗となり、マンドレルへの直管ホースの挿込みが極めて困難となる。
【0018】
またマンドレルにおける蛇腹成形部の山部を乗り越えた直管ホースは、その山部によって拡径変形してしまうため、山部を乗り越えた後に十分収縮して元の寸法に戻らず、そのため蛇腹ホースを求める形状、寸法で良好に成形することができない。
【0019】
【特許文献1】特開2002−54779号公報
【特許文献2】特公平7−61690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、断面の中間に樹脂層を有する樹脂複合ホースにあっても良好に蛇腹部を成形でき、且つホース全体を作業性良く安価に製造することのできる流体輸送蛇腹ホース及びそのための製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1は、流体輸送蛇腹ホースに関するもので、輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有し、該樹脂層の内側の内面層としての内ゴム層と、該樹脂層の外側の外ゴム層とを該樹脂層に対し積層した積層構造をなしているとともに、ホース軸方向の少なくとも一部に蛇腹部を有しており、且つ該蛇腹部は、谷部の内径がホースにおけるストレート形状部の内径よりも小径で、且つ山部の外径が該ストレート形状部の外径を超えないものとされていることを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、請求項1において、ホース軸方向の少なくとも一部に曲り部を有する曲りホースであることを特徴とする。
【0023】
請求項3は請求項1,2の何れかの流体輸送蛇腹ホースの製造方法に関するもので、前記内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを順次積層状態に押出成形して積層構造の直管形状の塑性変形可能な未加硫若しくは半加硫の直管ホースを製造し、該直管ホースを、蛇腹成形部を有し且つ該蛇腹成形部の山部の外径が前記直管ホースの内径を超えず、谷部の外径が該直管ホースの内径よりも小径を成すマンドレルに外挿状態に挿し込み、該直管ホースの該蛇腹成形部に対応する部分を該蛇腹成形部に沿って変形させ、且つその変形状態で加硫処理することを特徴とする。
【0024】
請求項4のものは、請求項3において、前記マンドレルの蛇腹成形部に対応した形状の蛇腹成形部を有する外型を、該マンドレルに外挿した前記直管ホースに対して径方向内方に押圧し、前記マンドレルの蛇腹成形部とともに該直管ホースをそれら蛇腹成形部に沿って変形させ、その変形状態で前記加硫処理を行うことを特徴とする。
【0025】
請求項5のものは、請求項3において、前記マンドレルを中空構造とし、該マンドレルの前記蛇腹成形部を径方向に貫通して該中空部と該マンドレルに外挿した前記直管ホースの内側と連通させる吸引通路を該マンドレルに形成して、該吸引通路を通じ該直管ホースを該マンドレル側に負圧吸引することで該直管ホースを該蛇腹成形部に沿って変形させ、その変形状態で前記加硫処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のように請求項1の流体輸送蛇腹ホースは、蛇腹部における谷部の内径がホースにおけるストレート形状部の内径よりも小径で、且つ山部の外径がストレート形状部の外径を超えない形状で蛇腹部を形成したもので、本発明の流体輸送蛇腹ホースにあっては、ホース製造に際して未加硫(若しくは半加硫。以下半加硫を含めて未加硫として説明する)の直管ホースをマンドレルに外挿状態に挿し込む際に、マンドレルに形成した蛇腹成形部による抵抗を何ら受けることなく、円滑に直管ホースをマンドレルに外挿状態に挿込作業することができる。
そしてその後において直管ホースをマンドレルの蛇腹成形部に沿って変形させることで、目的とする蛇腹部を有する流体輸送蛇腹ホースを得ることができる。
換言すれば本発明では、ホース製造に際してマンドレルを用いた成形が可能となり、所要コストを安価となすことができる。
【0027】
本発明は、直管形状をなす流体輸送蛇腹ホースに適用することも可能であるが、特にホース軸方向の少なくとも一部に曲り部を有する曲りホースに適用して効果が大であり(請求項2)、そしてマンドレルを用いることで容易にホースに所要の曲り形状を付与することができる。
【0028】
請求項3は上記流体輸送蛇腹ホースの製造方法に関するもので、この製造方法では、内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを順次積層状態に押出成形して、積層構造の直管形状の未加硫の直管ホースを製造し、これをマンドレルに外挿状態に挿し込んで、その状態で加硫処理するものである。
【0029】
ここではマンドレルに蛇腹成形部を設けておき、直管ホースをマンドレルに外挿状態に挿し込んで加硫処理する。
ここでマンドレルにおける蛇腹成形部は、山部の外径が直管ホースの内径を超えず、谷部の外径が直管ホースの内径よりも小径をなす形状となしておく。
この場合、蛇腹成形部の山部はその外径が直管ホースの内径を超えないものであるため、直管ホースをマンドレルに挿し込む際に、蛇腹成形部の山部は直管ホースの挿し込みに対して何ら障害とならず、従って直管ホースを蛇腹成形部による抵抗を受けることなく円滑にマンドレルに挿し込み作業することができる。
また直管ホースをマンドレルに挿し込んだときに、直管ホースが蛇腹成形部の山部を乗り越えることによって拡径変形し、その後に元の形状に良好に収縮変形しないといった従来の成形方法の問題を生じない。
而してその後直管ホースをその蛇腹成形部に沿って変形させることで、ホースの蛇腹部を良好に成形することができる。
【0030】
請求項4は、蛇腹成形部を有するマンドレルに外挿した直管ホースを蛇腹形状に成形するに際して、マンドレルの蛇腹成形部に対応した蛇腹成形部を有する外型を直管ホースに対して径方向内方に押圧し、マンドレルの蛇腹成形部とともに直管ホースをそれら蛇腹成形部に沿って変形させ、その変形状態で加硫処理を行うもので、この請求項4によれば良好に蛇腹部を成形することができる。
【0031】
一方請求項5の製造方法は、マンドレルを中空構造として、その中空部に連通した吸引通路をマンドレルに形成し、その吸引路を通じて直管ホースを径方向内方に吸引することで、直管ホースをマンドレルの蛇腹成形部に沿って変形させ、蛇腹形状に成形するもので、この請求項5の製造方法においても良好に直管ホースの所定部分を蛇腹形状に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2において、10は自動車の燃料注入口から注入された燃料を燃料タンクに輸送する燃料輸送ホース(フィラーホース)等に用いて好適な流体輸送蛇腹ホース(以下単にホースとする)で、輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層12と、樹脂層12の外側の外ゴム層14と、樹脂層12の内側の内面層としての内ゴム層16との積層構造を成している。
ここで中間の樹脂層12はホース軸方向の一端から他端に到るまで形成されている。
【0033】
本実施形態では、内ゴム層16としてNBRが、樹脂層12としてTHV(フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの少なくとも3元共重合体から成る熱可塑性フッ素樹脂)が、また外ゴム層14としてNBR+PVCが用いられている。
ここで各層の密着強度は10N/25mm以上を超えており、互いに強固に接着をしている。そして、密着強度を測定したサンプルは、層間界面で剥離したわけではなく、母材が破壊してしまった。樹脂層12と内ゴム層16及び外ゴム層14との接着は加硫接着であるが、接着剤を用いた接着も可能である。
内ゴム層16,樹脂層12,外ゴム層14は上記の材料の組合せを含めて以下のような材料で構成することができる。
詳しくは、内ゴム層16の材料としてNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム:アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上),FKM(フッ素ゴム),H-NBR(水素添加NBR)等を好適に用いることができる。
またその肉厚は1.0〜2.5mm程度となしておくことができる。
【0034】
中間層の樹脂層12としては、THV,PVDF(ポリビニリデンフルオライド),ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンの共重合体),CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン),EVOH(エチレン−ビニルアルコール),PBN(ポリブチレンナフタレート) ,PBT(ポリブチレンテレフタレート) ,PPS(ポリフェニレンスルフィド)等を好適に用いることができる。
その肉厚は0.03〜0.3mm程度の肉厚となしておくことができる。
THVはEVOH、PVDFに比べ柔軟であり、樹脂ゴム積層ホースのバリア材として好適である。ETFE、THVはPTFE(四フッ化エチレン樹脂)、EVOHに比べ、押出加工性が良くゴムとの積層化がし易く、またゴムとの接着性にも優れる。PBN、PBTはTHVに比べ剛直であるが耐燃料透過性が優れており、THVより薄肉化が可能なため、THVと同様に柔軟なホースが得られる。
【0035】
他方、外ゴム層14の材料としてはNBR+PVC,ECO(エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴム),CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム),NBR+ACM(アクリルゴム),NBR+EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム),EPDM等の材料を好適に用いることができる。
またその肉厚は1.0〜3.0mm程度となしておくことができる。
【0036】
ホース10は、ホース軸方向の所定個所に曲り部を有する曲り形状をなしている。図1中18はその曲り部を表している。
また20は、ホース軸方向にストレート形状をなすストレート形状部を表している。
図に示しているように、ホース10はホース軸方向の両端部が何れもストレート形状部20をなしている。
ホース10はまた、ホース軸方向の所定部分が蛇腹部22とされている。
【0037】
通常、ホースに形成される蛇腹部は、その山部がストレート形状部の外径よりも半径方向外方に突出する形状をなしているが、この実施形態では、図2に示しているように蛇腹部22における山部22Aの外径が、ストレート形状部の20の外径D1と同じ外径D1とされている。
また谷部22Bの内径D3が、ストレート形状部20の内径D2よりも小径とされている。
【0038】
図3は上記ホース10の製造方法の要部工程を示している。
図において24は金属製のマンドレルで、外面形状が上記ホース10の内面形状に対応した形状をなしている。
図に示しているようにこのマンドレル24は、蛇腹成形部26を有している。
ここで蛇腹成形部26は、山部26Aの外径がホース10におけるストレート形状部20の内径D2と同じ外径D2とされており、また谷部26Bの外径がこれよりも小径のD3とされている。
【0039】
この製造方法では、先ず内ゴム層16,樹脂層12,外ゴム層14を順次積層状態に長尺に押出成形した後、これを所定寸法に切断し、直管形状の塑性変形可能な未加硫の直管ホース10Aを製造する。
尚直管ホース10Aは、その後半加硫状態としてなしておいても良い。
次にこのようにして製造した直管ホース10Aをマンドレル24に外挿状態に挿し込む。これにより直管ホース10Aがマンドレル24に沿った形状に変形させられ、図1における曲り部18Aが成形される。
【0040】
続いて直管ホース10Aにおけるマンドレル24の蛇腹成形部26に対応する部分が、蛇腹成形部26に沿って変形させられ、蛇腹部22が成形される。
この蛇腹部22の成形は、図4に示す方法にて行うことができる。
【0041】
図4において28は外型で、直管ホース10A即ちマンドレル24に対向する側に蛇腹成形部30が形成されている。
図中30Aは蛇腹部22における山部22A成形用の谷部で、また30Bは蛇腹部22における谷部22B成形用の山部である。
この図4に示す方法では、外型28をマンドレル24に外挿された直管ホース10Aに対し径方向内方に押圧し、直管ホース10Aにおける蛇腹成形部26及び30に対応する部分を、マンドレル24の蛇腹成形部26と外型28の蛇腹成形部30とで挟み込んで、同部分をそれら蛇腹成形部26及び30に沿った形状に変形させ、直管ホース10Aに蛇腹部22を成形する(図4(II)参照)。
そしてその状態で直管ホース10Aを加熱して加硫処理する。
所定時間の加硫処理が済んだところで外型28を型開きし、更に加硫後のホースをマンドレル24から抜き取ることで、図1に示す曲り形状且つ蛇腹部22を有する樹脂積層構造のホース10が得られる。
【0042】
以上のような本実施形態にあっては、ホース製造に際して未加硫の直管ホース10Aをマンドレル24に外挿状態に挿し込む際に、マンドレル24に形成した蛇腹成形部26による抵抗を何ら受けることなく、円滑に直管ホース10Aをマンドレル24に外挿状態に挿込作業することができる。
そしてその後において直管ホース10Aをマンドレル24の蛇腹成形部26に沿って変形させることで、目的とする蛇腹部22を有する流体輸送蛇腹ホース10を得ることができる。
【0043】
即ちホース製造に際して、このようなマンドレル24を用いた成形が可能となり、所要コストを安価となすことができる。
また本実施形態によれば曲り部18を有するホース10であってもマンドレル24を用いての製造が可能となる。
【0044】
この実施形態では、直管ホース10Aをマンドレル24に外挿状態に挿し込む際、蛇腹成形部26の山部26Aの外径が、直管ホース10Aの内径を超えないものであるため、直管ホース10Aを蛇腹成形部26による抵抗を受けることなく、円滑にマンドレル24に挿込作業することができる。
また直管ホース10Aをマンドレル24に挿し込んだときに、直管ホース10Aが蛇腹成形部26の山部26Aを乗り越えることによって拡径変形し、その後に元の形状に良好に収縮変形しないといった従来の成形方法の問題を生じない。
【0045】
図5はホース10の更に他の製造方法の要部工程を示している。
図5に示しているようにこの製造方法では、マンドレル24を中空構造となして、その中空部32と直管ホース10Aの蛇腹成形部26に対応する部分の内側とを連通させる吸引通路34をマンドレル24に形成しておく。
そして直管ホース10Aをマンドレル26に外挿した後、吸引通路24を通じて負圧吸引することで、直管ホース10Aを吸引して、これを蛇腹成形部26に沿って変形させる。
そしてその変形状態で加熱を行って直管ホース10Aを加硫処理し、上記の曲り形状のホース10を製造する。
この実施形態の製造方法においても、良好に直管ホース10Aの所定部分を蛇腹形状に成形することができる。
【0046】
以上の例ではホース10における内ゴム層16が単層とされているが、図6に示しているように内層16を、最内面の第1層(ゴム層)16-1とその外側の第2層(ゴム層)16-2との2層積層構造で構成することも可能である。
この4層積層構造のホースにおいてもまた、各層の密着強度は10N/25mm以上を超え、各層が互いに強固に接着をしている。そして、密着強度を測定したサンプルは、層間界面で剥離したわけではなく、母材が破壊してしまった。樹脂層12と第2層16-2及び外ゴム層14との接着は加硫接着であるが、接着剤を用いた接着も可能である。
この場合において、各層の材料の組合せを以下のような組合せとなすことができる。
即ち第1層16-1の材料としてFKM,NBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を好適に用いることができる。
またその肉厚は0.2〜1mm程度となしておくことができる。
【0047】
一方、第2層16-2の材料としてNBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を好適に用いることができる。
その肉厚は1〜2mm程度となしておくことができる。
尚中間の樹脂層12,外ゴム層14については上記と同様である。
特に、第1層16−1に、耐ガソリン透過性に優れたFKMを用いるのが好ましい。このように構成することにより、樹脂層12による燃料透過抑制機能に加え、相手パイプ等に接続されたホース10の軸方向端部で、内面層を透過してホース10の軸方向端縁から燃料が透過するといったことを効果的に防止する軸端部透過防止機能も確保できる。ここで、相手パイプ等との良好な接続作業性を確保しようとすると、内ゴム層16の肉厚は1mm以上になるわけであるが、内ゴム層16全体をFKM製とすると、ホース10が高価なものとなってしまう。したがって、第2層16−2には安価なNBR(アクリロニトリル量30質量%以上)、又は安価なNBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を用いることとなる。
【0048】
また、図7に示しているように、樹脂層12と外ゴム層14との間に中間ゴム層13(外ゴム層の第1層と捉えることもでき、この場合には外ゴム層14は外ゴム層の第2層となる)を有する積層構造でホース10を構成することもできる。
この4層積層構造のホース10においてもまた、各層の密着強度は10N/25mm以上を超え、各層が互いに強固に接着している。なお、密着強度を測定したサンプルは、層間界面で剥離したわけではなく、母材が破壊してしまった。樹脂層12と内ゴム層16及び中間ゴム層13との接着は加硫接着であるが、接着剤を用いた接着も可能である。
この場合において、各層の材料を以下のような組合せとすることができる。
すなわち、内ゴム層16の材料としてFKM、NBR(アクリロニトリル量30質量%以上)又はNBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上)を好適に用いることができる。
またその肉厚は0.2〜1mm程度とすることができる。
中間の樹脂層12の材料としては,THV,PVDF ETFEなどのフッ素系樹脂、PA(ポリアミド)又はPA6,PA66,PA11,PA12などのナイロン樹脂を好適に用いることができる。
その肉厚は0.03〜0.3mm程度とすることができる。
一方、中間ゴム層13の材料としてNBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上),ECO,CSM,NBR+ACM,NBR+EPDM,IIR(ブチルゴム),EPDM+IIR、EPDMを好適に用いることができる。
その肉厚は0.2〜2mm程度とすることができる。
外ゴム層14の材料としては、NBR(アクリロニトリル量30質量%以上),NBR+PVC(アクリロニトリル量30質量%以上),ECO,CSM,NBR+ACM,NBR+EPDM,IIR,EPDM+IIR、EPDMを好適に用いることができる。
その肉厚は1〜3mm程度とすることができる。
なお、肉厚の総計、すなわち図7のホース10の肉厚は、2.5〜6mm程度が適切である。ホース10の肉厚が2.5mmを下回れば、耐ガソリン透過性が不十分となるし、ホース10の肉厚が6mmを上回れば、可撓性が不足する。
【0049】
ここで、外ゴム層14(外ゴム層の第2層)や中間ゴム層13(外ゴム層の第1層)にIIR又はEPDM+IIRを用いると、IIR及びEPDM+IIRは耐アルコール性を有しているので、外ゴム層14、中間ゴム層13はガソリン燃料耐透過性を有し、バリア層として機能する。したがって、樹脂層12を薄く形成し、ホース10の可撓性又は柔軟性を高めても、ホース10のガソリン燃料耐透過性が不十分となることはない。また、樹脂層12に、耐ガソリン透過性に優れたフッ素系樹脂ではなく、安価なナイロン樹脂を用いても、ホース10のガソリン燃料耐透過性が不十分とならないようにできる。
【0050】
次に、中間ゴム層にIIRを用いたホースを耐ガソリン燃料透過性に関して評価した。評価結果は表1に示されている。
評価は次のようにして行われた。まず、内径が24.4mm、肉厚が4mm及び長さが300mmの4種類のホース試料又は試験片(A)、(B)、(C)、(D)を作成した。ホース試料(A)は、NBRの内ゴム層、THV(具体的にはDyneon社製の製品名(商標)Dyneon製品番号THV815)の樹脂層及びNBR+PVCの外ゴム層の3層構造、ホース試料(B)は、NBRの内ゴム層、THVの樹脂層(THV815、肉厚0.11mm)、IIRの中間ゴム層(外ゴム層の第1層)及びNBR+PVCの外ゴム層(外ゴム層の第2層)の4層構造、ホース試料(C)は、NBRの内ゴム層、THVの樹脂層(THV815、肉厚0.08mm)、IIRの中間ゴム層(外ゴム層の第1層)及びNBR+PVCの外ゴム層(外ゴム層の第2層)の4層構造、ホース試料(D)は、NBRの内ゴム層、ナイロン(PA11)の樹脂層、IIRの中間ゴム層(外ゴム層の第1層)及びNBR+PVCの外ゴム層(外ゴム層の第2層)の4層構造を備えている。ただし、表1の試験片及び厚みの欄には、樹脂層及び中間ゴム層(ホース試料(A)では樹脂層及び外ゴム層)の材料及び厚みのみが示されている。それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)の両端部に、R処理した外径25.4mm(最大外径27.4mmのバルジ加工部が2個所に形成されている)の金属製パイプを圧入した。そして、それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)で、一方の金属パイプに密栓を装着し、他方の金属製パイプから、ホース試料(A)、(B)、(C)、(D)内に試験液(FuelC+エタノール(E)10容量%)を供給した後、他方の金属製パイプにネジ式の密栓を装着し、試験液を各ホース試料(A)、(B)、(C)、(D)に封入した。それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)を、40℃で3000時間保持した(ただし、試験液は168時間毎に交換)。そして、SHED法CARB‐DBLパターンで、3日間HC(炭化水素)の透過量を測定し、それぞれのホース試料(A)、(B)、(C)、(D)について、HCの透過量が最大であった日のHCの透過量を求めて透過量とした。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から、外ゴム層にNBR+PVCを用いたホース試料(A)と、中間ゴム層にIIRを用いたホース試料(C)とでは、HCの透過量がともに4.2mg/本と等しいが、樹脂層の厚みが、ホース試料(A)では0.11mm、ホース試料(C)では0.08mmとなっていて、IIRを用いると、樹脂層の厚みを約30%低減させても同一の耐ガソリン燃料透過性が確保されることが理解できる。また、外ゴム層にNBR+PVCを用いたホース試料(A)と中間ゴム層にIIRを用いたホース試料(B)とでは、樹脂層の厚みがともに0.11mmと等しいが、HCの透過量が、ホース試料(A)では4.2mg/本、ホース試料(B)では2.7mg/本となっていて、IIRを用いると、樹脂層の厚みを同一とした場合に、HCの透過量が約35%低減されることが理解できる。さらに、中間ゴム層にIIRを用いたホース試料(D)では、樹脂層にPA11が用いられているが、樹脂層の厚みを約80%増加させれば、ホース試料(A)よりもHCの透過量が10%低減されることが理解できる。ここでの評価は、中間ゴム層にEPDM+IIRを用いた場合にも基本的に適用できる。
【0053】
このようにホース10の積層数を4層とし、また各材料の組合せを上記の中から適宜選択することで、輸送流体に対する耐透過性をより一層高めることができ、或いはまた燃料輸送ホースにおいて耐サワーガソリン性をより高めることができ、或いは耐熱性、耐アルコールガソリン性を向上させることができる。そして、樹脂層を薄く形成して、ホース10の可撓性を向上させることもできる。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態・対応で構成・実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態の流体輸送蛇腹ホースの図である。
【図2】同実施形態の流体輸送蛇腹ホースの要部断面図である。
【図3】同実施形態の流体輸送蛇腹ホースの製造方法の要部工程の説明図である。
【図4】図3に続く工程説明図である。
【図5】流体輸送蛇腹ホースの他の製造方法の要部工程の説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態の流体輸送蛇腹ホースの図である。
【図7】本発明の別の実施形態の流体輸送蛇腹ホースの図である。
【図8】従来の樹脂複合ホースの一例を示す図である。
【図9】従来の曲り形状のホースの一般的な製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 流体輸送蛇腹ホース
10A 直管ホース
12 樹脂層
14 外ゴム層
16 内ゴム層
18 曲り部
20 ストレート形状部
22 蛇腹部
22A,26A 山部
22B,26B 谷部
24 マンドレル
26,30 蛇腹成形部
28 外型
32 中空部
34 吸引通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送流体に対して耐透過性を有するバリア層としての樹脂層を有し、該樹脂層の内側の内面層としての内ゴム層と、該樹脂層の外側の外ゴム層とを該樹脂層に対し積層した積層構造をなしているとともに、ホース軸方向の少なくとも一部に蛇腹部を有しており、且つ該蛇腹部は、谷部の内径がホースにおけるストレート形状部の内径よりも小径で、且つ山部の外径が該ストレート形状部の外径を超えないものとされていることを特徴とする流体輸送蛇腹ホース。
【請求項2】
請求項1において、ホース軸方向の少なくとも一部に曲り部を有する曲りホースであることを特徴とする流体輸送蛇腹ホース。
【請求項3】
請求項1,2の何れかの流体輸送蛇腹ホースの製造方法であって、
前記内ゴム層と樹脂層と外ゴム層とを順次積層状態に押出成形して積層構造の直管形状の塑性変形可能な未加硫若しくは半加硫の直管ホースを製造し、該直管ホースを、蛇腹成形部を有し且つ該蛇腹成形部の山部の外径が前記直管ホースの内径を超えず、谷部の外径が該直管ホースの内径よりも小径を成すマンドレルに外挿状態に挿し込み、該直管ホースの該蛇腹成形部に対応する部分を該蛇腹成形部に沿って変形させ、且つその変形状態で加硫処理することを特徴とする流体輸送蛇腹ホースの製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記マンドレルの蛇腹成形部に対応した形状の蛇腹成形部を有する外型を、該マンドレルに外挿した前記直管ホースに対して径方向内方に押圧し、前記マンドレルの蛇腹成形部とともに該直管ホースをそれら蛇腹成形部に沿って変形させ、その変形状態で前記加硫処理を行うことを特徴とする流体輸送蛇腹ホースの製造方法。
【請求項5】
請求項3において、前記マンドレルを中空構造とし、該マンドレルの前記蛇腹成形部を径方向に貫通して該中空部と該マンドレルに外挿した前記直管ホースの内側と連通させる吸引通路を該マンドレルに形成して、該吸引通路を通じ該直管ホースを該マンドレル側に負圧吸引することで該直管ホースを該蛇腹成形部に沿って変形させ、その変形状態で前記加硫処理を行うことを特徴とする流体輸送蛇腹ホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−292299(P2007−292299A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76463(P2007−76463)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】