説明

流動床スプレー乾燥法

VX−950流動床スプレー乾燥法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、流動床スプレー乾燥法、およびその結果得られる生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
難溶性薬物(drug)がしばしば低バイオアベイラビリティまたは不規則な吸収を示し、その不規則性の程度が、用量レベル、患者の食事状態、および薬物の形態のような因子によって影響されることは、薬学分野で公知である。
【0003】
マトリックス中の薬物の固体分散体を、薬物およびマトリックス物質の均一な溶液または融解物を形成させ、次いで、該混合物を冷却または溶媒の除去により固化させることにより製造することができる。かかる薬物の固体分散体はしばしば、経口投与したとき、非分散性薬物を含む経口組成物と比較して増大したバイオアベイラビリティを示す。
【0004】
スプレー乾燥法は、粒子形成および乾燥工程を含む最も広く用いられる産業的方法であり、薬物化合物の固体分散体を製造するために用いられ得る。それは、溶液、エマルジョンおよびポンプ注入可能な懸濁液のような液体原料から形成される、粉末、顆粒または凝集塊の何れかの乾燥固体の連続的製造によく適している。故に、スプレー乾燥法は、最終生成物が、粒子サイズ分布、残存水分含量、バルク密度、および粒子形状に関して厳密な品質基準に適合しなければならないとき、有用な方法である。
【0005】
スプレー乾燥法は、一般的に、液体供給溶液を霧状の液滴(spray of droplet)に微粒化する工程、および該液滴を乾燥チャンバー中で熱気流または高温ガスと接触する工程を含む。該スプレーを、一般的に、ロータリー(ホイール)アトマイザーまたはノズルアトマイザーにより製造する。該液滴からの水分の蒸発ならびに乾燥粒子の形成を、制御温度および気流条件下で行う。
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明者らは、供給溶液(例えば溶媒中に溶解または懸濁した、例えば薬物およびマトリックス(例えば、ポリマー)物質)の流動床スプレー乾燥法(FSD)が、例えばさらなる後続工程のために、得られる生成物(例えば、組成物、例えば凝集生成物、例えば薬物または治療剤のアモルファス固体分散体のような固体分散体)の特性を改善し得ることを発見した。例えば、流動床スプレー乾燥法によって得られる組成物、例えば分散体は、例えば通常のスプレー乾燥法により製造される組成物と比較して、増大した粒子サイズおよび/または生成物密度、ならびに/または縮小した“微粒子”(10ミクロン未満の幾何学的中央径を有する粒子)を有し得る。結果として、これらの分散体は、縮小した径長を有し、それにより改善された流動性を生じ得る。そのような分散体は、例えば、後続処理工程なく、または最小限の後続処理工程で、例えば経口投与形態に直接圧縮され得る。
【0007】
この工程は、とりわけ難水溶性を有する組成物(例えば、化合物、例えば治療剤(例えば、薬物)を含む組成物)の製造に有用である。例えば、FSD法により得られる分散体が必要とする後処理工程はより少ないため、分散体中の化合物(例えば、難溶性薬物)は、より安定であり得て、そして例えばアモルファス形態から結晶形態への変換の機会が少ない。
【0008】
一局面において、本発明の特徴は、流動床スプレー乾燥法である。該方法は、液体供給溶液(例えば、溶媒中に溶解または懸濁された薬物または医薬化合物のような興味のある化合物、および所望によりポリマー(複数可)および/または界面活性剤(複数可)を含む)を製造し;該供給溶液を、例えばFSDモードで操作してスプレー乾燥機の乾燥チャンバー中に送達して噴霧化し(例えば、圧力ノズル、ロータリーアトマイザーまたはディスク、二流体ノズルまたは他のアトマイザー法を用いて);加熱空気または加熱ガス(例えば、窒素)を用いて乾燥チャンバー内の供給溶液を乾燥させて、生成物を得て{ここで、生成物のより大きな粒子(例えば、非微粒子、例えば約10ミクロンより大きいか、または約10ミクロン程度の幾何学的中央径を有する粒子)を分離し、例えば取り出し、微粒子を乾燥チャンバーの頂部(例えば、自然対流により)およびサイクロンに空気流またはガス流により運ぶ。}、そして乾燥チャンバー内に微粒子を再導入し(例えば、供給溶液の液流を同軸的に取り巻くように(coaxially surrounding)、または乾燥チャンバーに対して接線方向(tangentially)に)、ここで、再導入される微粒子は、新しく形成した生成物と凝集し、凝集生成物を形成でき、該凝集生成物が十分大きければ、それは分離され得て、分離のために十分な大きさでなければ、該凝集生成物はチャンバーの頂部およびサイクロンに輸送されて、該チャンバーに再導入される工程、を含む。
【0009】
いくつかの態様において、該方法は、VX−950の液体供給溶液を製造し(ここで、該供給溶液は、塩化メチレン中に溶解される約83%のVX−950および約17%のHPMCASを含む);該供給溶液を、例えば密閉サイクルモードで操作するスプレー乾燥機の乾燥チャンバー中に送達して噴霧化し;加熱窒素を用いて乾燥チャンバー内の供給溶液を乾燥させて、生成物を得て(ここで、該生成物は、乾燥チャンバーからガス流によりサイクロンに運ばれる)、該生成物を乾燥チャンバーに再導入し(ここで、再導入される生成物は、新しく形成した生成物と凝集し、凝集生成物を形成できる);凝集生成物を第一流動化チャンバーに集め;凝集生成物を第一流動化チャンバーから第二流動化チャンバーへ放出し(ここで、乾燥後工程が行われる);凝集生成物を第二流動化チャンバーから第三流動化チャンバーに移す(ここで、凝集生成物が冷却される)工程、を含む。
【0010】
いくつかの態様において、凝集生成物は、約2重量%未満の残留水分、例えば、約2重量%未満の残留水および/または塩化メチレンのような溶媒を含む。
【0011】
いくつかの態様において、凝集生成物は、室温にて少なくとも2年間、化学的に安定である。
【0012】
いくつかの態様において、凝集生成物は、室温にて少なくとも2年間、物理的に安定である。
【0013】
いくつかの態様において、該方法は、第一流動化チャンバーに凝集生成物を集める工程をさらに含む。いくつかの好ましい態様において、該方法は、凝集生成物を第一流動化チャンバーから第二流動化チャンバーへ放出する工程(ここで、乾燥後工程が行われる)をさらに含む。いくつかのより好ましい態様において、該方法は、凝集生成物を第二流動化チャンバーから第三流動化チャンバーへ移す工程(ここで、凝集生成物が冷却される)をさらに含む。
【0014】
いくつかの態様において、該方法は、該凝集生成物を直接圧縮する工程をさらに含む。いくつかの好ましい態様において、凝集生成物は、経口投与形態(例えば、錠剤)に直接圧縮される。いくつかの態様において、該経口投与形態はコーティングされる。
【0015】
いくつかの態様において、微粒子は、供給溶液の液流を同軸的に取り巻くように乾燥チャンバー中に再導入する。
【0016】
いくつかの態様において、微粒子は、乾燥チャンバーに接線方向に再導入される。
いくつかの態様において、供給溶液を窒素のようなガスを用いて乾燥させる。
【0017】
いくつかの態様において、供給溶液は薬物を含む。いくつかの態様において、該薬物は、小分子薬物であり、例えば、約1000ダルトン未満(例えば約750ダルトン未満または約500ダルトン未満)の分子量を有する薬物である。いくつかの態様において、該薬物は、鎮痛剤、抗炎症剤、抗寄生虫薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗凝血剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗真菌薬、抗痛風薬、抗高血圧剤、抗マラリア剤、抗偏頭痛薬、抗ムスカリン剤、抗新生物剤、勃起不全改善薬、免疫抑制剤、抗原虫剤、抗甲状腺剤、抗不安薬、鎮静剤、催眠剤、神経遮断剤、β−ブロッカー、強心剤(cardiac inotropic agent)、コルチコステロイド、利尿剤、抗パーキンソン薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、角質溶解薬、脂質調節薬、抗狭心症薬、Cox−2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド剤、筋弛緩剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、プロテアーゼ阻害剤、性ホルモン、刺激剤(stimulant)、筋弛緩剤、抗骨粗鬆症薬、抗肥満薬、認知増強薬、抗尿失禁薬、食用油、抗良性前立腺肥大薬、必須脂肪酸、および非必須脂肪酸からなる群から選択される。いくつかの態様において、該薬物は、難溶性薬物である。
【0018】
いくつかの好ましい態様において、該薬物は、抗ウイルス剤、例えばC型肝炎(HepC)の処置に用いる抗ウイルス剤、例えばHepCプロテアーゼ阻害剤である。ある最も好ましい態様において、該薬物はVX−950である。
【化1】

【0019】
いくつかの態様において、該供給溶液はVX−950を含む。好ましい態様において、VX−950には、供給溶液中に溶解される、約10%ないし90%(例えば、約20%ないし約80%;約30%ないし約70%;約40%ないし約60%;約65%ないし約85%;約80%(例えば、約83%))の固体が含まれる。
【0020】
いくつかの態様において、供給溶液には、塩化メチレンまたはアセトンのような溶媒が含まれる。いくつかの態様において、溶媒には、塩化メチレンおよびアセトンが含まれる。好ましい態様において、溶媒は、アセトンを約0%ないし約30%および塩化メチレンを約70%ないし約100%含む。いくつか態様において、溶媒は、アセトンを約0%ないし約40%および塩化メチレンを約60%ないし約100%含む。
【0021】
いくつかの態様において、溶媒は、非揮発性溶媒(例えば、水または氷酢酸)を含む。
【0022】
いくつかの態様において、供給溶液は、界面活性剤、例えばビタミンEもしくはその誘導体(例えば、ビタミンE TPGS)、またはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む。いくつかの態様において、界面活性剤は、約0.1%ないし約10%(例えば、約5%まで、約4%まで、約3%まで、約2%まで、約1%)の量で存在する。
【0023】
いくつかの態様において、供給溶液は、複数のポリマー(例えば、1個または2個以上の水溶性ポリマーまたは部分的に水溶性のポリマー)を含む。いくつかの態様において、ポリマーには、供給溶液中に溶解される、約10%ないし90%(例えば、約20%ないし約80%;約30%ないし約70%;約40%ないし約60%;約15%ないし約35%;約20%(例えば、約17%))の固体が含まれる。いくつかの態様において、複数のポリマーには、セルロースポリマーが含まれる。いくつかの態様において、セルロースポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。他の態様において、セルロースポリマーは、酢酸/コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)である。いくつかの態様において、複数のポリマーは、2個のセルロースポリマーを含む。好ましい態様において、2個のセルロースポリマーのうち1個は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。他の好ましい態様において、2個のセルロースポリマーのうち1個は、酢酸/コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、例えば、HGグレートのHPMCASである。他の態様において、複数のポリマーには、HPMCおよびHPMCASが含まれる。
【0024】
いくつかの態様において、供給溶液には、界面活性剤または賦形剤が含まれる。好ましい態様において、該界面活性剤には、SLSまたはビタミンEもしくはその誘導体が含まれる。好ましい態様において、該界面活性剤はSLSである。他の好ましい態様において、界面活性剤はビタミンEまたはその誘導体(例えば、ビタミンE TPGS)である。
【0025】
いくつかの態様において、供給溶液にはポリマーが含まれる。好ましい態様において、該ポリマーには、供給溶液中に溶解される、約10%ないし90%(例えば、約20%ないし約80%;約30%ないし約70%;約40%ないし約60%;約15%ないし約35%;約20%(例えば、約17%))の固体が含まれる。他の態様において、供給溶液は、界面活性剤または賦形剤、例えばSLSまたはビタミンEもしくはその誘導体をさらに含む。好ましい態様において、界面活性剤はSLSである。他の好ましい態様において、界面活性剤は、ビタミンEまたはその誘導体(例えば、ビタミンE TPGS)である。いくつかの態様において、該界面活性剤は、約0.1%ないし約10%(例えば、約5%まで、約4%まで、約3%まで、約2%まで、約1%)の量で存在する。
【0026】
いくつかの態様において、該ポリマーには、セルロースポリマーが含まれる。好ましい態様において、セルロースポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。より好ましい態様において、セルロースポリマーは、酢酸/コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)である。
【0027】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の方法により製造される生成物を特徴とする。
【0028】
いくつかの態様において、該生成物のバルク密度は、約0.13g/mlないし約0.45g/ml、例えば約0.13g/mlないし約0.32g/ml、例えば約0.25g/mlないし約0.4g/ml、例えば約0.33g/mlないし約0.45g/ml、または例えば約0.17g/mlないし約0.20g/mlである。
いくつかの態様において、該生成物のタップ密度は、約0.23g/mlないし約0.25g/mlである。
【0029】
いくつかの態様において、該生成物の中央粒子サイズ(d50)は、約40μmないし約500μm、例えば約40μmないし約200μm;約50μmないし約130μm、約75μmないし150μm;約150μmないし約200μm、例えば約186μmである。
【0030】
いくつかの態様において、容積粒子サイズ分布スパン([d90−d10]/d50)は、約3.0未満、例えば約2.0未満である。
【0031】
いくつかの態様において、生成物中の微粒子の割合は、約30%未満、例えば約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満である。
【0032】
いくつかの態様において、該生成物は、約2重量%未満の残存水分を有する。
【0033】
いくつかの態様において、該生成物は、室温にて少なくとも2年間、化学的安定性である。
いくつかの態様において、該生成物は、室温にて少なくとも2年間、物理的に安定である。
【0034】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の方法により製造される生成物を含む医薬組成物を特徴とする。
【0035】
ある局面において、本明細書に記載の方法は、組成物、例えば興味のある化合物、例えば治療剤(例えば、薬物)、ならびに要すればポリマーおよび/または界面活性剤を含む組成物を用いる。
【0036】
いくつかの態様において、該薬物は、小分子薬物、例えば約1000ダルトン未満、例えば約750ダルトン未満、または約500ダルトン未満の分子量を有する薬物である。
【0037】
いくつかの態様において、該薬物は難溶性薬物である。
【0038】
該薬物は、下記の分類群:鎮痛剤、抗炎症剤、抗寄生虫薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗凝血剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗真菌薬、抗痛風薬、抗高血圧剤、抗マラリア剤、抗偏頭痛薬、抗ムスカリン剤、抗新生物剤、勃起不全改善薬、免疫抑制剤、抗原虫剤、抗甲状腺剤、抗不安薬、鎮静剤、催眠剤、神経遮断剤、β−ブロッカー、強心剤(cardiac inotropic agent)、コルチコステロイド、利尿剤、抗パーキンソン薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、角質溶解薬、脂質調節薬、抗狭心症薬、Cox−2阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マクロライド剤、筋弛緩剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、プロテアーゼ阻害剤、性ホルモン、刺激剤(stimulant)、筋弛緩剤、抗骨粗鬆症薬、抗肥満薬、認知増強薬、抗尿失禁薬、食用油、抗良性前立腺肥大薬、必須脂肪酸、または非必須脂肪酸の1種から選択され得る。
【0039】
ある好ましい態様において、該薬物は、抗ウイルス剤、例えばC型肝炎(HepC)の処置に用いる抗ウイルス剤、例えばHepCプロテアーゼ阻害剤である。ある最も好ましい態様において、該薬物はVX−950である。
【化2】

【0040】
VX−950およびその分散体の記載については、例えば、WO02/018369;WO2005/12307;および、US2006−0089385を参照のこと。
【0041】
全ての本明細書に引用される特許、特許出願、および参考文献は、その全内容を参照により本明細書中に包含される。内容の不一致の場合には、本明細書が適用される。
本発明の1個以上の態様の詳細を、添付の図面および下記に記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、明細書、図面および特許請求の範囲から明らかであり得る。
【0042】
詳細な説明
本発明者らは、流動床スプレー乾燥法(FSD)が、最少量の微粒子を含む自由流動性かつ良好な再分散性を有する生成物の製造、ならびに凝集または顆粒生成物の製造に有用であることを発見した。得られる生成物(例えば、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950))を含む組成物)は、変化した(例えば通常のスプレー乾燥法の生成物と比較して、例えば増大または低減した)バルクおよびタップ密度、および/または改善された溶解性(例えば、通常のスプレー乾燥法の生成物と比較して)を有し得る。ある例において、低密度であるが、より良好な流動特性を有する生成物が、微粒子の量を減少する結果として得られる。該生成物粒子(例えば、凝集塊)は、しばしば、常套のスプレー乾燥法により得られる粒子よりもサイズが大きい。改変した(例えば、増大した)密度および/または増大した粒子サイズの結果、FSDの生成物は、さらなる処理工程なく、または最小限の後続処理工程(例えば、粉砕、造粒、混和および/または混合工程)で、(例えば、経口投与形態に)直接圧縮され得る。
【0043】
流動床スプレー乾燥法
一般的に、流動床スプレー乾燥法は、スプレー乾燥および流動床乾燥技術を組み合わせる。得られる生成物は、統合した流動床またはベルトおよび第一乾燥工程で生じた湿粉末から凝集塊を形成し、それを次工程にて乾燥後処理および冷却し得る多工程方法の結果としての凝集生成物(例えば、凝集粉末または顆粒)であり得る。
【0044】
概要として、FSDの実行には、アトマイザー(例えば、圧力ノズル、ロータリーアトマイザーまたはディスク、二流体ノズル、または静電処理、例えば電気的噴霧技術のような他のアトマイザー法)により、スプレー乾燥機の乾燥チャンバー中で乾燥されるべき供給溶液を流動床に向けてスプレーする。より細かい、再利用した物質を含む凝集化がスプレー乾燥機中で起こり、凝集粒子は流動床に落下する。該供給溶液は、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)ならびに所望により1種以上のポリマー、および/または界面活性剤のような他の成分を含む。排気口はチャンバーの頂部を通り、スプレー領域におけるさらなる凝集を起こす。その後、凝集生成物を乾燥させ得る。該方法は、熱感受性生成物を乾燥するのに理想的であり、適当なとき、改善された保香(aroma retention)を達成する。該方法により、例えば自由流動性の最小微粒子として、凝集生成物を得る。
【0045】
いくつかの態様において、1個以上の成分が溶媒中に溶解される。いくつかの態様において、該成分全てが溶解され、例えば供給溶液は均一である。いくつかの態様において、1個以上の成分が供給溶液中に懸濁される(例えば、供給溶液は均一ではない)。
【0046】
用語“凝集分散体”は、複数の粒子(例えば、2個以上の粒子)が一体となってより大きい粒子を製造することを意味する。
【0047】
例として、該スプレー乾燥において、供給溶液を、乾燥チャンバーの上部に取り付けた微粒化ノズルから乾燥空気中にスプレーし、スプレーチャンバーに入れる。チャンバー基底に位置する流動床中湿粉末の活発な流動化と、サイクロン付属装置からの微粒子の再利用は、粉末を含む雰囲気で行われる流動床スプレー乾燥をもたらす。流動床スプレー乾燥法により生じる凝集分散体(例えば、粉末)は、通常のスプレー乾燥法により得られる分散体よりも乾燥され得る。該粉末は、より長時間循環するため(例えば、該粉末が、例えば乾燥床に落下するのに十分な大きさになるまで循環し得る)、該粉末中の残留水分または有機揮発成分が低減され得る。乾燥を、より低い粉末および排気温度で行うことができ、故に生成物品質を改善し、より高い熱効率が得られる。
【0048】
凝集の程度およびそれによる粒子サイズ分布は、操作条件を変えることにより影響を受け得る。例えば、以下のパラメーターのいくつかまたは全てが変更され得る:C_feed:供給溶液の濃度(wt%);feed viscosity:スプレー乾燥される供給溶液の粘度;T_in:スプレー乾燥機の入口温度;T_out:スプレー乾燥機の出口温度;ΔP cyclone:スプレー乾燥機の分離サイクロン内の異なる圧力(乾燥ガスの流速を示す);P_feed_SP:供給圧力設定値;乾燥ガスのkg/hr;F_feed:供給溶液の流速;FR position:微粒子が戻される場所(スプレー乾燥管の一部)、より高い位置で最も凝集した状態(ノズル付近)が得られ、より低い位置で低凝集または非凝集状態が得られる;T_FB1_SP:流動床の温度設定値#1;T_FB2_SP:流動床の温度設定値#2;T_FB3_SP:流動床の温度設定値#3;V_FB1,2,3:%開口流動床ファンバルブ(#1−3それぞれ)位置(%開口);ならびに、VT−FB:流動床ファン。操作条件を最適化することにより、後続処理(例えば、直接圧縮)に有利な特性を有する分散体が得られ得る。
【0049】
パラメーターの調整を本明細書に記載の方法で行い、その適合性を試験することができ、得られる生成物の後続の使用のための、該生成物の適合性を試験することもできる。例えば、スプレー乾燥機の入口温度を、例えば本明細書に記載の入口温度と比較して、上昇または低下させることができる(例えば、該温度は70℃以下に下げられ得る)。得られる凝集生成物の特性に対するこの入口温度の調整の効果を(例えば、全ての他のパラメーターは変更なし)、本明細書に記載の通りに(例えば、70℃の入口温度で)製造した凝集生成物の特性と比較することができる。該調整による生成物の特性(例えば、増大した粒子サイズまたは増大した流動性)または(例えば特定の適用、例えば直接圧縮に対する)適合性の改善は、該調整が本明細書に記載の方法に有用かつ好適であることを示唆する。
【0050】
FSD中の工程には、例えば以下:
液体供給溶液の製造(例えば、溶媒中に溶解または懸濁した、興味のある化合物、ならびに所望により、ポリマー(複数可)および/または界面活性剤(複数可)を含む);
該供給溶液を、例えばFSDモードで操作して、スプレー乾燥機の乾燥チャンバー中に送達して噴霧化し(例えば、圧力ノズル、ロータリーアトマイザーまたはディスク、二流体ノズルまたは他のアトマイザー法を用いて);
加熱空気または加熱ガス(例えば、窒素)を用いて乾燥チャンバー内の供給溶液を乾燥させて、生成物を得て{ここで、生成物のより大きな粒子を分け、例えば取り出し、微粒子を該乾燥チャンバーの頂部(例えば、自然対流により)およびサイクロンに空気流またはガス流により運ぶ。}、そして
乾燥チャンバー内(例えば、乾燥チャンバーの頂部に、または該チャンバーの中間に軸方向に)微粒子を再導入し、ここで、再導入される微粒子は、新しく形成した生成物と凝集し、凝集生成物を形成でき、該凝集生成物が十分大きければ、それは分離され得て、分離のために十分な大きさでなければ、該凝集生成物はチャンバーの頂部およびサイクロンに輸送されて、該チャンバーに再導入される工程、が含まれ得る。この方法を、落下するのに十分な大きさの凝集生成物が形成されるまで繰り返す。微粒子は、サイクロンから供給パイプにより乾燥チャンバー中に再導入され得る。
【0051】
いくつかの態様において、加熱空気または加熱ガスで供給溶液を乾燥させるよりも、供給溶液は、その代わりに、例えば、該チャンバーを室温(例えば、21±4℃)にて、または例えば冷却ガス(例えば、窒素)を該工程に用いて冷却して、スプレー凝集され得る。
【0052】
本発明者らは、サイクロンから乾燥チャンバーに微粒子が再導入される位置が、得られる凝集分散体の特性に影響を及ぼすことを発見した。供給溶液の液流を同軸的に取り巻く(すなわち、乾燥チャンバーの頂部での)微粒子の再導入は、より高度な凝集を促進することができ(例えば、再導入粒子と供給溶液の直接接触のため)、例えば凝集の増大が特定の化合物に望ましいとき、実行され得る。別の態様において、該微粒子は、乾燥チャンバーに接線方向に(すなわち、乾燥チャンバー側に)再導入され得る。該微粒子は、該チャンバー側のどこでも、例えば該チャンバー側の約1/4、約1/3、約1/2、約2/3、または約3/4下方などに接線方向に再導入され得る。微粒子の接線方向の再導入は、凝集の程度を低下させ得る(例えば、該供給溶液の液滴が、該微粒子が再導入される前に十分な量乾燥され、凝集の時間がわずかであるため)。生成物の密度(例えば、バルク密度)は、結果として増大または低下され得る。いくつかの態様において、生成物密度は増大され得る(例えば、バルク密度、例えば0.17ないし0.20g/ml;および、タップ密度、例えば0.23ないし0.25g/ml)。いくつかの態様において、この低下した凝集および増大した密度が、例えば通常のスプレー乾燥法により得られる中央粒子サイズと比較して、より大きな中央粒子サイズ(例えば、d50=186μm)を維持しながら、達成され得る。いくつかの態様において、粒子サイズは、例えば通常のスプレー乾燥法により得られる粒子サイズと比較して増大する。故に、FSD法の適用において、生成物密度の増大を達成するために凝集量を低下することが望ましい。このことは、例えば中央粒子サイズを減少することなく、達成することができる。粒子サイズは、例えば顕微鏡により測定され得る。
【0053】
FSDは、凝集生成物を第一流動化チャンバーから第二流動化チャンバーに放出すること(ここで、乾燥後工程が行われ得る。)により行われ得る、凝集生成物を第一流動化チャンバーに集める工程をさらに含み得る。
【0054】
該(例えば、乾燥チャンバー中に分離される)凝集生成物は、その後第二流動化チャンバーから第三流動化チャンバーに移されて、ここで凝集生成物は冷却される。その後、凝集生成物(例えば、アモルファス化合物の固体分散体)は、さらに処理され得る。例えば、該生成物は、直接圧縮され得る。該生成物は、例えば直接圧縮の前に、界面活性剤、賦形剤、または薬学的に許容される担体と混合されてもよい。該生成物は、所望により、さらに処理、例えば、溶融顆粒、界面活性剤、賦形剤、および/または薬学的に許容される担体と共に粉砕、造粒、混和および/または混合されてよい。
【0055】
FSDは、流動床スプレー乾燥モード(FSDモード)で操作される市販のスプレー乾燥機で実行され得る。FSDは、開放サイクルモードまたは(例えば乾燥ガス、例えば窒素が再利用される)密閉サイクルモードで達成され得る。FSDに用いるのに適当なスプレー乾燥機の例には、Niroの乾燥機(例えば、Niroにより製造されたPSD系スプレー乾燥機:PHARMASD(商標);ChemicalまたはSD系乾燥機)が含まれる。FSDモードで操作する例示的スプレー乾燥機の図を、図1に記載する。FSDは、実質的に、乾燥チャンバー中に微粒子を再導入するのを可能にする形状のいずれのスプレー乾燥機でも実行され得る。
【0056】
さらなる乾燥後処理を、例えば真空もしくは流動床乾燥機またはダブルコーンもしくはバイコニカルポスト乾燥機または回転式乾燥機で、さらに溶媒を除去するのに必要なとき/適用可能なとき、行うことができる。好ましい態様において、乾燥後工程を行う。
【0057】
溶媒または溶媒混合物の除去のために、真空乾燥、スプレー乾燥、流動床スプレー乾燥、トレー乾燥、凍結乾燥、回転乾燥および他の乾燥方法を適用可能である。本明細書に開示の通り、適当な処理パラメーターを用いてこれらの方法のいずれかを適用することは、最終固体分散体生成物中にアモルファス状態のVX−950を提供し得る。望ましい特性(例えば、40−200ミクロン 9、例えば40−150ミクロンの中央粒子サイズ(d50))、>0.2g/ml、好ましくは>0.25g/mlの粉末バルク密度(例えば、0.2ないし0.5g/ml)、改善された粉末流動性(例えば、低凝集力、低い粒子間内部摩擦)を有する、分散体、例えば粉末;ならびに/または、低OVI、例えば、低いICH限界および/または使用規格を有する乾燥粉末をもたらす、適当な条件の使用(例えば、スプレー乾燥機の低い出口温度、低い沸点溶媒の使用、加熱ガスの使用)により、該分散体が投与形態に直接圧縮され得る。
【0058】
FSD法は、組成物(例えば、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950))の流動特性を改善するために用いられ得る。いくつかの態様において、FSD法は、通常のスプレー乾燥法により得られる生成物と比較して、生成物密度(例えば、バルクまたはタップ密度)を変える(例えば、増大する)ことなく、生成物の流動性を増大する。例えば、FSD法により(例えば、通常のスプレー乾燥法と比較して)、微粒子の量を減らすことができ(例えば、該微粒子が、乾燥チャンバーに再導入後に凝集塊を形成するため)、これは、より狭いスパンおよび粒子サイズ分布をもたらし得る。それ故に、密度とは無関係の改善された流動特性がもたらされる。いくつかの態様において、FSDにより得られる生成物中に存在する微粒子の割合は、約30%未満、例えば約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満である。
【0059】
用語“流動性”は、組成物の流動能を意味する。組成物、例えば凝集分散体または粉末の流動性は、いくつかの方法で測定できる。例えば、一定量の粉末についての静止角、粉末が一定の直径を有する漏斗(流入漏斗)の穴を通過するのに要する時間、動的静止角(dynamic angle of repose)、圧縮率、Carr指数、ヨハンソンインディサイザー、または最小オリフィス直径を測定することができるか、またはJenike and Johanson QC テスターを用いることができる。別の選択肢として、一定の回転/分の回転ドラム中、明確なスリットを介して流入する一定量の粉末についての時間を測定する(例えば、Niroにより開発されたシステムを用いて)。流動性は、密度、結合力および壁面摩擦を含み、バルク材料の動きを意味する。流動性および流動特性の解説については、Prescott and Barnum, “On Powder Flowability” in Pharma. Technol. pages 60-84 (October 2000出版)を参照のこと。
【0060】
他の態様において、FSDは、通常のスプレー乾燥法と比較して、生成物密度の増大と同時に生成物の流動性を増大する。さらに他の態様において、FSDは、例えば通常のスプレー乾燥法と比較して、生成物の流動特性を増大することができ、結果として、生成物密度を低下させ得る。
【0061】
他の態様において、FSDは、例えば通常のスプレー乾燥法と比較して、粒子サイズの増加と同時に生成物の流動性を増大する。
【0062】
いくつかの態様において、FSDにより得られる生成物中の残存水分量は、約10%未満、例えば約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満である。
【0063】
いくつかの態様において、入口温度は、約50℃ないし約200℃、例えば約60℃ないし約150℃、約70℃ないし約100℃、約65℃ないし約85℃、約70℃ないし約90℃、または約70℃ないし約85℃である。
【0064】
いくつかの態様において、出口温度は、およそ室温(例えば、USP室温(例えば、21±4℃))ないし約80℃、例えば約25℃ないし約75℃、約30℃ないし約65℃、約35℃ないし約70℃、約40℃ないし約65℃、約45℃ないし約60℃または約35℃ないし約45℃である。
【0065】
いくつかの態様において、流動床の設定温度(各床に対する温度は、別の床に対して選択される温度と独立して選択される)は、およそ室温(例えば、USP室温(例えば、21±4℃))ないし約100℃、例えば約30℃ないし約95℃、約40℃ないし約90℃、約50℃ないし約80℃、約60℃ないし約85℃、約65℃ないし約95℃、または約80℃ないし約95℃である。
【0066】
いくつかの態様において、生成物の中央粒子サイズ(d50)は、約40μmないし約500μm、例えば約40μmないし約200μm;約50μmないし約130μm、約45μmないし約100μm;約50μmないし約90μm;約50μmないし約80μm;約75μmないし150μm;約80μmないし125μm;約90μmないし175μm;約150μmないし約200μm、例えば約186μmである。
【0067】
FSDは、興味のある化合物(例えば、治療剤(例えば、薬物)、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む混合物に行われ得る。例えば、FSDは、VX−950(例えば、1個以上のポリマー、および所望により界面活性剤(複数可))を含む混合物に対して行われ、例えば経口投与形態(例えば、錠剤)に直接圧縮され得る、アモルファスVX−950の固体分散体が得られ得る。あるいは、分散体は、圧縮前に1個以上の賦形剤と混合され得る。
【0068】
上記のとおり、乾燥工程で調整され得るパラメーターには、スプレー乾燥機の出口温度、溶媒の選択、ガスの選択およびその温度が含まれる。さらに、密閉サイクルスプレー乾燥モードのときの温度およびコンデンサーの数、噴霧化装置のタイプ(例えば、二流体、ロータリー、または圧力ノズル)、噴霧化装置の入口における流れの方向(並流または噴水(fountain)モード)、供給溶液の固体濃度、乾燥ガスの流速、および/または液滴の滞留時間、供給溶液の供給圧または流速、噴霧化ガス流速(適用可能なとき)、サイクロン分離器のタイプおよび直径、膜バグハウスフィルターのタイプもまた、調整され得る。例えば、パラメーターは、以下の特徴の1個以上:40−500μmの中央粒子サイズ(d50)、低スパン([d90−d10]/d50)、例えば好ましくは<3.0(例えば、低分散圧)、より好ましくはスパン<2.0の容積粒子サイズ分布、約0.13ないし約0.45g/cc、例えば約0.13ないし約0.32g/cc、約0.25ないし約0.4g/cc、約0.33ないし約0.45g/ccの粉末バルク密度、改善された粉末流動性(例えば、低凝集力、低い粒子間内部摩擦);および/または、低OVIを有する乾燥粉末、を有する分散体を得るために選択され得る。分散体の製造に用いるスプレー乾燥機はまた、変更され得る。
【0069】
本明細書に用いる用語“物理的に安定”は、VX−950の形態が、特定の期間、例えば1日、2日、3日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、特定の条件、例えば室温/周囲湿度または40℃/75%相対湿度に付すとき、VX−950(例えば、XRPD、DSCなどにより測定される異なる固体形態)の1個以上の異なる物理的形態に変化しないことを意味する。いくつかの態様において、25%未満のVX−950形態が、特定の条件に付すとき、1個以上の異なる物理的形態に変化する。いくつかの態様において、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約1%未満、約0.5%未満のVX−950形態が、記載の特定の条件に付すとき、VX−950の1個以上の異なる物理的形態に変化する。いくつかの態様において、VX−950の形態はほとんど、VX−950の1個以上の異なる物理的形態に変化しない。
【0070】
本明細書で用いる用語“化学的に安定”は、VX−950の化学構造が、特定の期間、例えば1日、2日、3日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、特定の条件、例えば室温/周囲湿度または40℃/75%相対湿度に付すとき、別の化合物に変化しない(例えば、分解されない)ことを意味する。いくつかの態様において、25%未満のVX−950形態が、特定の条件に付すとき、1個以上の異なる化合物に変化する。いくつかの態様において、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約1%未満、約0.5%未満のVX−950形態が、記載の特定の条件に付すとき、VX−950の1個以上の異なる化合物に変化する。いくつかの態様において、VX−950の形態はほとんど、VX−950の1個以上の異なる物理的形態に変化しない。
【0071】
VX−950(テラプレビール)
一般的に、VX−950の微粉化結晶性薬剤粉末をラットに経口投与後の絶対的バイオアベイラビリティが0.5%未満であることが発見されている。VX−950と常套の薬学的賦形剤の単純混合物は、哺乳動物に経口投与されて同様に低バイオアベイラビリティを示す。結晶形態のVX−950を含む組成物(すなわち、VX−950のかなりの部分が、結晶形態である)は一般的に、VX−950の十分な治療的有効性が提供される程度の薬物吸収が達成されない。本明細書に記載の組成物は、比較的改善されたバイオアベイラビリティを提供する。従って、いくつかの態様において、VX−950を含む供給溶液のFSD法を提供する。例えば、該方法は、結晶形VX−950のような、実質的に不純物不含有の生成物を製造するために使用され得る。いくつかの態様において、本発明には、例えば化合物、例えばVX−950の凝集分散体、または直接圧縮形態のVX−950を含む凝集固体分散体を含む医薬組成物が含まれる。本発明の組成物は、安定であり、投与が容易であり、投与によりVX−950の高バイオアベイラビリティを提供する。
【0072】
ある態様にいて、VX−950は、生成物中、約5重量%ないし約95重量%、例えば約20重量%ないし約90重量%、約30重量%ないし約80重量%、約40重量%ないし約70重量%、約45重量%ないし約55重量%、好ましくは約30重量%まで(例えば、28重量%ないし32重量%)、約35重量%まで(例えば、約33重量%ないし37重量%)、約40重量%まで(例えば、約38重量%ないし42重量%)、約45重量%まで(例えば、約43重量%ないし47重量%)、約50重量%まで(例えば、約48重量%ないし52重量%)、約55重量%まで(例えば、53重量%ないし57%)、約60重量%まで(例えば、58重量%ないし62重量%)、約65重量%まで(例えば、63重量%ないし67重量%)、約70重量%まで(例えば、68重量%ないし72重量%)、約75重量%まで(例えば、73重量%ないし77重量%)、約80重量%まで(例えば、78重量%ないし82重量%)、約85重量%まで(例えば、83重量%ないし87重量%)、または約90重量%まで(例えば、88重量%ないし92重量%)存在する。VX−950は、D−異性体およびL−異性体の混合物であり、どちらの異性体も実質的に純粋な生成物である。VX−950は、好ましくは実質的にアモルファス(例えば、少なくとも約50%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも55%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約60%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約65%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約70%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約75%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約80%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約85%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約90%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約95%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約98%のVX−950がアモルファスであるか、少なくとも約99%のVX−950がアモルファスであるか、または実質的に全てのVX−950がアモルファスである)である。
【0073】
本明細書で用いる用語“アモルファス”は、その原子の位置において、長距離秩序(long range order)を有さない固体物質を意味する。アモルファス固体は一般的に、明確な配列がなく、長距離秩序がないように、分子が無作為に配列される過冷液体である。アモルファス固体は一般的に、等方性であり、すなわち全ての方向に同様の特性を示し、明確な融点を有さない。例えば、アモルファス物質は、そのX線粉末回折(XRPD)パターンにおける鋭い特徴的な結晶ピーク(複数可)を有さない固体物質である(すなわち、XRPDにより決定される結晶ではない)。その代わりに、1個またはいくつかのブロードピーク(例えば、ハロ)が、そのXRPDパターンに現れる。ブロードピークは、アモルファス固体の特徴である。アモルファス物質および結晶物質のXRPDの比較については、US2004/0006237を参照のこと。
【0074】
本明細書で用いる“結晶固体”は、該構造単位が、結晶固体が厳密な長距離秩序を有するように、固定形状パターンまたは格子に配列された化合物または組成物を意味する。結晶構造を構成する該単位は、原子、分子またはイオンであり得る。結晶固体は、明確な融点を示す。
【0075】
本明細書で用いる“分散体”は、第一の物質(分散相)が、第二の物質(連続相またはビークル)全体に、不連続単位で分散される分散系を意味する。該分散相のサイズは、かなり異なり得る(例えば、ナノメートル寸法ないし数ミクロンサイズのコロイド状粒子)。一般的に、該分散相は、固体、液体またはガスであり得る。固体分散体の場合において、該分散相および連続相は両方とも固体である。薬学的適用において、固体分散体には、アモルファスポリマー(連続相)中の結晶薬剤(分散相)、あるいは、アモルファスポリマー(連続相)中のアモルファス薬物(分散相)が含まれ得る。いくつかの態様において、アモルファス固体分散体には、分散相を構成するポリマーが含まれ、薬物は、連続相を構成する。いくつかの態様において、(例えば、アモルファスVX−950の)分散体を、供給溶液のFSDにより製造する。
【0076】
用語“アモルファス固体分散体”は、一般的に、2個以上の成分、通常薬物およびポリマー(または、複数のポリマー)の固体分散体を意味するが、界面活性剤のような他の成分または他の医薬賦形剤を含んでいてよく、ここで該薬物は、アモルファス相であり、物理的安定性および/または溶解性、および/またはアモルファス薬物の溶解特性が、他の成分により増大される。
【0077】
本明細書に記載の凝集固体分散体は、本発明の特に好ましい態様である。凝集固体分散体には典型的に、固体状態担体のような適当な担体媒体中に分散される化合物が含まれ、通常のスプレー乾燥法により得られる分散体と比較して、増大した粒子サイズおよび/またはバルクおよび/またはタップ密度を有し得る。いくつかの態様において、本発明の担体には、ポリマー(例えば、水溶性ポリマーまたは部分的に水溶性のポリマー)が含まれる。好ましくは、いくつかの態様において、担体には、複数のポリマー、好ましくは1個以上の水溶性ポリマーもしくは1個以上の部分的に水溶性のポリマー、またはその組合せが含まれる。
【0078】
例示的固体分散体は、1個のポリマーまたは複数のポリマーとVX−950との共沈殿物または共融解物である。“共沈殿物”は、溶媒または溶媒混合物中に1個の薬物および複数のポリマーを溶解し、次いで該溶媒または溶媒混合物を除去した後の生成物である。ポリマーの混合物は、溶媒または溶媒混合物中に懸濁または溶解され得る。溶媒または溶媒混合物には、有機溶媒および超臨界流体が含まれ得る。溶媒または溶媒混合物にはまた、氷酢酸または水のような非揮発性溶媒が含まれ得る。“共融解物”は、薬物およびポリマー(複数)を、所望により溶媒または溶媒混合物の存在下で加熱融解し、次いで混合して、適当なとき溶媒の少なくとも一部を除去し、選択した速度で室温まで冷却した後の生成物である。いくつかの場合において、固体分散体は、薬物および固体ポリマーの溶液を添加し、次いで、混合し、溶媒または溶媒混合物を除去して製造される。溶媒または溶媒混合物の除去のため、真空乾燥法、スプレー乾燥法、流動床スプレー乾燥法、トレー乾燥法、凍結乾燥法、および他の乾燥方法が用いられ得る。FSDが好ましい方法である。本明細書に記載の適当な処理パラメーターを用いるこれらの方法のいずれかの適用は、最終固体分散体生成物中、アモルファス状態のVX−950を提供し得る。適当な条件(例えば、スプレー乾燥機の低い出口温度、低い沸点溶媒の使用、加熱ガスまたはFSDの使用)の使用により、所望の特徴(例えば、40−500μmの中央粒子サイズ(d50)、約0.13ないし約0.45g/cc、例えば約0.13ないし約0.32g/cc、約0.25ないし約0.4g/cc、約0.33ないし約0.45g/ccの粉末バルク密度、改善された粉末流動性(例えば、低い凝集力、低い粒子間内部圧力);および/または、低いOVIを有する乾燥粉末)を有する分散体、例えば凝集生成物がもたらされ、該分散体は、例えば投与形態(例えば、錠剤)に直接圧縮され得る。
【0079】
直接圧縮
FSDにより得られる生成物(例えば、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む組成物)を、直接圧縮することができる。例えば、FSDにより得られる凝集薬物分散体は、経口投与形態(例えば、錠剤)に直接圧縮され得る。直接圧縮の方法は、金型キャビティに保持される物質に(例えば、上部および下部パンチにより)圧力をかける方法である。圧縮方法において起こる事象は、(1)過渡的な再パッキング、(2)接点での変形、(3)断片化および/または変形、(4)接着、(5)固体の変形、(6)減圧、および(7)排出である。直接圧縮法は、流動性、圧縮性および希釈可能性のような粉末特性に影響される。
【0080】
圧縮前に、圧縮されるべき生成物を、所望により1個以上の賦形剤と混合することができる。直接圧縮法はまた、使用される賦形剤の特性により影響を受ける。直接圧縮(DC)賦形剤の重要な機能性は、加圧下でのそれらの圧縮性であり、それは主に、表面エネルギーおよび変形のような物質特性により決定される。さらに、しっかりした功を奏する方法を確実にする賦形剤の物理的機械的特性には、低減された滞留時間での高速打錠機においてさえ、良好な流動性、良好な結合機能性、良好な圧縮性、低い潤滑剤感受性、および良好な加工性(machineability)が含まれる。いくつかの適用(例えば、VX−950の直接圧縮のいくつかの態様における)、感湿が低いかまたは無い賦形剤(複数可)が望ましい。加えて、よく設計された粒子サイズ分布(すなわち、低スパン、例えばスパン=[d90−d10]/d50]、例えば好ましくは<3.0(例えば、低分散圧で)、より好ましくはスパン<2.0)は、好ましい混合条件を提供する。他の賦形剤または薬物との互換性および多量の有効成分を運搬する能力もまた重要である。
【0081】
賦形剤は、例えば1個以上の以下のクラスの賦形剤から選択され得る:微結晶セルロース(MCC)、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム(DCP)、滑剤、および糖。賦形剤の例には、アルファ化デンプン、ゼラチン、クロスカルメロースナトリウム(例えば、AC−DI−SOL(登録商標))、クロスポビドン、二酸化ケイ素(例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えばCabosil)、DC−マンニトール、微結晶セルロース(例えば、AVICEL(登録商標)、例えばAVICEL(登録商標)PH113、AVICEL(登録商標)PH102)、二塩基性リン酸カルシウム(例えば、無水二塩基性リン酸カルシウム、例えば、粒状の無水二塩基性リン酸カルシウム、例えばA−TAB(登録商標))、ナトリウムステアリルフマレート、グリコール酸ナトリウムデンプン。
【0082】
例えば1個以上の賦形剤との混合を、物質の均一混合を達成するために行うことができる。物質の混合を、例えば、約1、約2、約5、約10、約15、約20、約30、約40、約50、または約60分間、物質を回転することにより達成することができる。さらなる例として、混合を、約1ないし約60分;約1ないし約30分;約1ないし約15分;約5ないし約20分;約5ないし約10分間行うことができる。好ましくは、混合を約2ないし約20分行う。例えば、混合を約3、約7、約10、約13、または約14分間行うことができる。いくつかの態様において、約10分間の混合を行う。別の態様において、約21分の混合を行う。混合機の例には、ビンブレンダー、ツインシェル(V型)ブレンダーが含まれる。混合を、例えば制御温度、例えばUSP室温(例えば、21±4℃)で行うことができる。混合を、例えば制御相対湿度で、例えば少なくとも約70%、少なくとも約60%、または少なくとも約35%の相対湿度で行うことができ、例えば混合を、30±5%の相対湿度で行うことができる。いくつかの態様(例えば、アモルファスVX−950の固体分散体の混合)において、混合を21±4℃および30±5%相対湿度で行う。温度および相対湿度は、例えば有効成分、例えば薬剤(例えば、アモルファスVX−950の固体分散体)についての条件を制御するために選択され得る。
【0083】
直接圧縮法についての賦形剤の適当性は、1個以上の以下のパラメーターを用いて評価され得る。賦形剤は、例えば水分含量、粒子サイズ、密度、流動特性について評価され得る。賦形剤(複数可)および薬物(例えば、VX−950の分散体)(例えば、共に混合されている)を含む圧縮製剤は、圧縮について評価され得る。例えば、異なる圧縮力(例えば、2.2kNないし22kN)を、各物質について試験することができる。各圧縮生成物(例えば、VX−950および試験賦形剤(複数)の固体分散体を含む)は、計量され、その寸法(直径および厚み)は、相対密度、有孔性、および容積減少の程度の計算を可能にするために測定され得る。該圧縮製剤の硬度が測定可能であり、ヘッケル分析(接着機構の説明を可能にする)、カワキタ分析(粉末カラムの容積減少と適用された圧力の間の関係について説明する)、およびクーパー−イーテン分析(容積減少の段階を評価するために用いられる)を行うことができる。さらなる詳細は、Zhang et al. (AAPS PharmSciTech. (2003) 4(4):E62)に記載される。試験賦形剤(複数可)を含む圧縮生成物の特徴を、所望により、別の圧縮生成物、例えばVX−950の固体分散体を含み、賦形剤を含まない直接圧縮形態の特徴と比較することができる。加えて、または別に、用いる賦形剤(複数可)の量を変えることができ、その結果の圧縮生成物の特徴を、所望により、別の圧縮生成物、例えばVX−950の固体分散体を含み、賦形剤を含まない直接圧縮形態と比較することができる。加えて、または別に、賦形剤の組合せを、同様の方法で試験し、評価することができる。
【0084】
直接圧縮に適当な分散体を得るために乾燥工程で調節され得るパラメーターには、スプレー乾燥機の出口温度、溶媒の選択、ガスの選択およびその温度が含まれる。さらに、密閉サイクルスプレー乾燥モードのときの温度およびコンデンサーの数、噴霧化装置のタイプ(例えば、二流体、ロータリー、または圧力ノズル)、噴霧化装置の入口における流れの方向(並流または噴水モード)、供給溶液の固体濃度、乾燥ガスの流速、および/または液滴の滞留時間、供給溶液の供給圧または流速、噴霧化ガス流速(適当なとき)、サイクロン分離器のタイプおよび直径、膜バグハウスフィルターのタイプもまた、調整され得る。例えば、パラメーターは、以下の特徴の1個以上:40−500μmの中央粒子サイズ(d50)、低スパン([d90−d10]/d50)、例えば好ましくは<3.0(例えば、低分散圧)、より好ましくはスパン<2.0の容積粒子サイズ分布、約0.13ないし約0.45g/cc、例えば約0.13ないし約0.32g/cc、約0.25ないし約0.4g/cc、約0.33ないし約0.45g/ccの粉末バルク密度、改善された粉末流動性(例えば、低凝集力、低い粒子間内部摩擦);および/または、低OVIを有する乾燥粉末、を有する分散体を得るために選択され得る。分散体の製造に用いるスプレー乾燥機はまた、変更され得る。パラメーターは、本明細書に記載の通りに調節および試験され得る。
【0085】
いくつかの態様において、直接圧縮投与形態には、約5%ないし約99%のVX−950の固体分散体が含まれる。例えば、直接圧縮投与形態は、約10%まで、約20%まで、約30%まで、約40%まで、約50%まで、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約85%まで、約90%まで、約95%まで、約96%まで、約97%まで、約98%のVX−950の固体分散体で製造される。直接圧縮投与形態は、所望により別の賦形剤を含んでいてよく、例えば該形態は、1個以上の以下のクラスの賦形剤成分:微結晶セルロース(MCC)、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム(DCP)、滑剤、および糖を含み得る。賦形剤の例には、アルファ化デンプン、ゼラチン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、二酸化ケイ素、DC−マンニトール、AVICEL(登録商標)、A−TAB(登録商標)、ナトリウムステアリルフマレートを含む。賦形剤は、約0%ないし約80%、例えば約1%ないし約40%の量で存在していてよく、例えば各賦形剤は、約1%ないし約8%、例えば約7%ないし約8%の量で存在していてよい。例えば、1個以上の以下の賦形剤が、圧縮前にFSD法で混合され得る:MCCおよび/またはDCPは、流動性および圧縮性を改善するために添加されてよく、ナトリウムステアリルフマレートは、滑剤として(例えば、圧縮生成物を金型から取り出すのを補助するため)添加されてよく、二酸化ケイ素は、流動性を改善するために添加されてよく、かつ/またはクロスカルメロースナトリウムは崩壊剤として添加されてよい。
【0086】
直接圧縮を行うことによる、医薬組成物(例えば、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950))の製造方法における利点には、賦形剤との混合(必要であれば)、錠剤ホッパー流動(tablet hopper flow)、連続打錠機流動(tablet die flow)、錠剤重量の均一化を含む、組成物の改善された後続工程(例えば、通常のスプレー乾燥法により得られる組成物と比較して);ローラー圧縮、ミル工程の削除;錠剤への挿入が可能な最も乾燥した(driest)粉末;望ましくないアモルファスの結晶への遷移のより少ない工程;重量均一性の非常に低いRSD、それぞれの薬物または賦形剤の重量均一性の非常に低いRSDでの錠剤圧縮の連続操作;スプレー乾燥、乾燥後工程、混合、および打錠の可能性のある直接製造システム、ならびに可能性のあるスプレー乾燥および打錠のみ;ならびに、改善されたインビトロおよびインビボの溶解性、の1個以上が含まれる。
【0087】
本明細書で用いる用語“直接圧縮投与形態”は一般的に、化合物、例えば活性成分、例えば治療剤、例えば薬物(例えばポリマー(複数可)および所望により界面活性剤(複数可)も含む例えば固体分散体中の、例えば難溶性薬物、例えばVX−950、例えばアモルファスVX−950)を含み、所望により1個以上の賦形剤を含んでいてよい、粉末(例えば、固体分散体、例えば凝集分散体)の乾燥混合物の圧縮により得られる形態(例えば、錠剤)を意味する。例えば、本明細書に記載の方法により得られる生成物(例えば、固体分散体)は、例えば、経口投与形態、例えば錠剤に直接圧縮されるか、またはカプセル剤もしくはサシェ剤に製剤されるのを可能にする、改善された特性(例えば、流動性)を有し得る。
【0088】
ポリマー
興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)および1個のポリマーまたは複数のポリマー(または、固体状態担体(複数可))を含む、固体分散体(例えば、アモルファス固体分散体)のようなFSDの生成物(例えば、粉末または顆粒のような凝集生成物)が、本明細書中で提供される。1個のポリマーまたは複数のポリマーは、アモルファス固体分散体系の一部として、興味のある化合物と共に用いられ得る。例えば、ポリマー(複数可)は、興味のある化合物(例えば、薬物)と共に供給溶液中に存在し得る(例えば、FSDにより乾燥され得る)。理論にとらわれることなく、ポリマーの存在は、ポリマーの不存在下で起こる結晶化の量または速度と比較して、興味のある化合物(例えば、薬物)の結晶化の量または速度を阻止、減少または遅延するのを補助し得る。例えば、ポリマーを用いるとき、結晶化の量は、ポリマーの不存在下での結晶化の量と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%減少し得る。例えば、1個のポリマーまたは複数のポリマーは、胃液および/または腸液のような水性媒体中での結晶化から薬物を保護し得る。例えば、HPMCは、胃液のような低pHでの結晶化(例えば、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950))の量を減少するのを補助し得る。HPMCは、胃液(例えば、絶食時または満腹時の胃液)、および人工胃液(“SGF”)(例えば、絶食時または満腹時SGF)中での保護を与え得る。別の例として、HPMCASは、腸液(例えば、絶食時または満腹時の腸液)および人工腸液(“SIF”)(例えば、絶食時または満腹時SIF)中、増大した物理的安定性および減少した結晶化(例えば、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950))の量を提供し得る。結果として、バイオアベイラビリティ、溶解性、および興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の吸収のうち1個以上が増強され得る。
【0089】
加えて、結晶化速度の低下により、ポリマーは、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む組成物、例えばFSDにより得られる分散体または固体形態(例えば直接圧縮形態、例えば錠剤)のシェルフ安定性を、ポリマーを用いないときと組成物の安定性を比較して、少なくとも約10%(例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%)増大し得る。ポリマーは、固体分散体(例えば、4℃または室温で貯蔵したとき)の安定性を、同一条件下かつポリマーの不存在下で貯蔵される固体分散体と比較して、少なくとも約10%(例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%)増大し得る。
【0090】
さらに、理論にとらわれることなく、複数のポリマーの存在は、1個のポリマーの存在下で生じる結晶化の量または速度と比較して、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の結晶化の量または速度を阻止、減少または遅延するのを補助し得る。例えば、複数のポリマーが用いられるとき、結晶化の量は、1個のポリマーの存在下での結晶化の量と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%減少し得る。例えば、複数のポリマーは、胃液または腸液のような水性媒体中での結晶化から薬物を保護し得る。例えば、1個のポリマー、例えばHMPCもしくはHPMCAS、または複数のポリマー、例えばHPMCおよびHPMCASを含む混合物は、VX−950の所定の分散体に対して増大した保護を提供し得る:例えば、HMPCは、胃液またはSGF中での結晶化からVX−950を保護することができ、HPMCASは、腸液またはSIF中での結晶化からVX−950を保護することができる。結果として、混合物の使用は、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の改善されたバイオアベイラビリティ、溶解性、および/または吸収を提供し得る。加えて、複数のポリマーは、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む組成物、例えば固体形態(例えば、スプレー乾燥分散体、直接圧縮投与形態、例えば錠剤)のシェルフ安定性を、ポリマーを用いないときの組成物の安定性と比較して、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%)増大し得る。複数のポリマーは、同一条件およびポリマー不含有下で貯蔵される固体分散体と比較して、固体分散体(例えば、4℃または室温で貯蔵したとき)の安定性を、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%)増大し得る。
【0091】
ポリマーまたは複数のポリマー(例えば、1個以上のセルロースポリマーを含む)は、投与したとき、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の曲線下面積(AUC)が、絶食時および満腹時の対象において実質的に同一であり得る、例えば対象における食物効果を減少するか、または実質的に除去するような、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の形態を提供するために用いられ得る。
【0092】
一態様において、本発明の1個のポリマーまたは複数のポリマー、または複数のポリマー中の1個以上のポリマーは、水性媒体中に溶解され得る。ポリマー(複数可)の溶解性は、pH非依存性またはpH依存性であり得る。後者には、1個以上の腸溶ポリマーを含む。用語“腸溶ポリマー”は、胃のより酸性の環境と比較して腸の低酸性環境で優先的に可溶性であるポリマー、例えば酸性水性媒体に不溶性であるが、pHが5−6以上のとき可溶性であるポリマーを意味する。適当なポリマーは、化学的かつ生物学的に不活性でなければならない。固体分散体の物理的安定性を改善するため、ポリマーまたは複数のポリマーの(例えば複数のポリマーの、または複数のポリマー中1個以上のポリマーの)ガラス転移温度(T)は、可能な限り高くなければならない。例えば、好ましいポリマーは、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)のガラス転移温度と少なくとも等しいか、またはそれ以上のガラス転移温度を有する。他の好ましいポリマーは、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の約10ないし約15℃以内であるガラス転移温度を有する。該ポリマーの好適なガラス転移温度の例には、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、少なくとも約70℃、少なくとも約75℃、少なくとも約80℃、少なくとも約85℃、少なくとも約90℃、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約115℃、少なくとも約120℃、少なくとも約125℃、少なくとも約130℃、少なくとも約135℃、少なくとも約140℃、少なくとも約145℃、少なくとも約150℃、少なくとも約155℃、少なくとも約160℃、少なくとも約165℃、少なくとも約170℃、または少なくとも約175℃(乾燥条件下での測定として)が含まれる。理論にとらわれることなく、より高いTを有するポリマーが、一般的に、室温でより低い分子運動性を有すること(それは、アモルファス固体分散体の物理的安定性を安定化する決定因子であり得る。)は、基本的な機序であると考えられる。
【0093】
加えて、ポリマー(または複数のポリマー、または複数のポリマー中の1個以上のポリマー)の吸湿性は、可能な限り低いべきである。この適用における比較を目的として、ポリマー、ポリマーの組合せ、または組成物の吸湿性は、約60%相対湿度を特徴とする。いくつかの好ましい態様において、ポリマー(複数可)は、約10%未満の吸水率、例えば約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、または約2%の吸水率を有する。セルロースポリマーは一般的に、約3%の吸水率を有し、PVPは一般的に、約9%の吸水率を有する。吸湿性はまた、固体分散体の物理的安定性に影響を与え得る。概して、ポリマー中の吸着水分は、ポリマーならびに得られる固体分散体のTを著しく減少させることができ、さらに、上記の通り、固体分散体の物理的安定性を減少させ得る。
【0094】
一態様において、1個のポリマーまたは複数のポリマー、または複数のポリマー中の1個以上のポリマーは、1個以上の水溶性ポリマー(複数可)または部分的に水溶性のポリマー(複数可)である。水溶性または部分的に水溶性のポリマーには、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしても公知)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))またはエチルセルロース;ポリビニルピロリドン(PVP);ポリエチレングリコール(PEG);ポリビニルアルコール(PVA);ポリメタクリレート(例えば、EUDRAGIT(登録商標)E)のようなアクリレート;シクロデキストリン(例えば、β−シクロデキストリン)ならびに、例えば、PVP−VA(ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル)を含む、それらコポリマーおよび誘導体が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの好ましい態様において、1個のポリマーまたは複数のポリマーのうち1個は、HPMC E50(例えばDowにより市販される)、HPMCE15、またはHPMC 60SH 50cP(例えば、Shin-EtsuのMetolose、HPMC60SH50)のようなヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。HPMCは、SM、60SH、65SH、90SHを含む種々のタイプがShin-Etsuから市販されている。これらのタイプのそれぞれは、粘度ならびにメトキシルおよびヒドロキシプロポキシル含量によって異なる。スプレー分散における使用に最も好ましいタイプは、HPMC 60SHである。
【0095】
いくつかの態様において、1個のポリマーまたは複数のポリマー、または複数のポリマー中の1個以上のポリマーは、pH依存性腸溶ポリマーである。かかるpH依存性腸溶ポリマーには、セルロース誘導体(例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはそれらの塩(例えば、(CMC−Na)のようなナトリウム塩);トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース(HPCAP)、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチル−セルロース(HPMCAP)、および酢酸フタル酸メチルセルロース(MCAP)、またはポリメタクリレート(例えば、EUDRAGIT(登録商標)S)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい態様において、1個のポリマーまたは複数のポリマーの1個は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)である。HPMCASは、AS−LF、AS−MF、AS−HF、AS−LG、AS−MG、AS−HGを含む種々のタイプがShin-Etsuから市販されている。これらのグレードのそれぞれは、アセテートおよびスクシネートの置換割合が異なる。スプレー分散における使用に最も好ましいグレードは、Shin-Etsuから市販されるAS−HGである。
【0096】
ヒドロキシプロポキシ、メトキシ、アセチルおよびスクシノイル基の置換の程度および組合せが異なる、HPMCASおよびHPMCAの他のポリマーはまた、当技術分野で公知であり(例えば、WO2005/115330を参照)、本明細書に記載の発明で用いられ得る。例えば、HPMCASの、スクシノイル基の置換の程度(DOS)およびアセチル基の置換の程度(DOSAc)が、DOS≧約0.02、DOSAc≧約0.65、およびDOSAc+DOS≧約0.85であるHPMCASポリマーが使用され得る。他の例として、ポリマーのアセチル基(DOSAc)の置換の程度が、約0.6未満であるか、またはポリマーのアセチル基(DOSAc)の置換の程度が、少なくとも約0.15であるHPMCAポリマーが用いられ得る。他の態様において、約24.0(J/cm)未満の溶解性パラメーターを有するHPMCAポリマーが用いられ得る。
【0097】
さらに別の態様において、1個のポリマーまたは複数のポリマーの1個以上のポリマーは、不溶性架橋ポリマー、例えばポリビニルピロリドン(例えば、クロスポビドン)である。
【0098】
いくつかの場合に、ポリマーは、興味のある化合物と反応し得る。故に、いくつかの態様において、興味のある化合物と反応しないポリマーは、その化合物を含む供給溶液を製造するとき、好ましい。例えば、アルコールは、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)と反応してケタールを形成し得る。従って、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)と反応しないポリマー(特に、ケタールを形成するもの)が、その化合物を含む供給溶液を製造するとき、好ましい。かかるポリマーは、OH基または類似の反応基を含むべきではない。任意の化合物(例えば、VX−950)の反応性のために、かかる化合物を含む供給溶液の製造についての本明細書の開示に関連して、複数のポリマーまたは1個のポリマーとして用いるのに好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(例えば、PEG8000)以外(すなわち、遊離ヒドロキシル基を有するポリマー以外)である。
【0099】
興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)が、1個のポリマーまたは複数のポリマーを含む固体分散体(例えば、凝集生成物)、例えばHPMCおよび/またはHPMCASポリマーを含むVX−950を形成する態様において、固体分散体の全重量と比べてポリマー(複数可)の総量は、典型的に、少なくとも約5%(例えば、約4%または6%)、少なくとも約10%(例えば、9%または11%)、少なくとも約15%(例えば、14%または16%)、少なくとも約20%(例えば、19%または21%)、および好ましくは少なくとも約30%(例えば、約29%または31%)、例えば、少なくとも約35%(例えば、約34%または36%)、少なくとも約40%(例えば、約39%または41%)、少なくとも約45%(例えば、約44%または46%)、または少なくとも約50%(例えば、約49%または51%)である。該量は、典型的に、約99%以下、好ましくは約80%以下、例えば約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、または約55%以下である。一態様において、ポリマー(複数可)は、分散体の全重量の約30%までの量(より具体的には、約28%ないし32%、例えば約29%)である。一態様において、ポリマー(複数可)は、分散体の全重量の約35%までの量(より具体的には、約33%ないし37%、例えば約34%)である。一態様において、ポリマー(複数可)は、分散体の全重量の約40%までの量(より具体的には、約38%ないし42%、例えば約39%)である。一態様において、ポリマー(複数可)は、分散体の全重量の約45%までの量(より具体的には、約43%ないし47%、例えば約44%)である。
【0100】
興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む固体分散体(例えば、凝集生成物)は、複数のポリマーを含み得る。例えば、2個のポリマーが分散体に用いられ得る。いくつかの態様において、複数のポリマーは、1個または2個以上のセルロースポリマーを含み得る。例えば、スプレー乾燥分散体は、2個のセルロースポリマー、例えばHPMCおよびHPMCASを含み得る。いくつかの態様において、固体分散体は、HPMCおよびHPMCASの混合物を含む。分散体に用いられる各ポリマーの量は可変であり、それぞれのポリマーの割合も変更可能である。例えば、分散体は、約0重量%ないし約100重量%の第一のポリマー(例えば、HPMC)、および約0重量%ないし約100重量%の第二のポリマー(例えば、HPMCAS)を含み得る(2個のポリマーの重量%は、分散体中に存在する総量ポリマーの100%まで添加される)。例えば、ポリマーを含むVX−950の固体分散体において、添加されるポリマーの総量のうち、第一のポリマーは、約33%の量で存在し、第二のポリマーは、約67%の量で存在する。別の例において、添加されるポリマーの総量のうち、第一のポリマーは、約55.5%の量で存在し、第二のポリマーは約44.5%の量で存在する。他の例において、添加されるポリマーの総量のうち、第一のポリマーは約63%の量で存在し、第二のポリマーは約37%の量で存在する。別の例において、添加されるポリマーの総量のうち、第一のポリマーは約50%の量で存在し、第二のポリマーは約50%の量で存在する。別の例において、添加されるポリマーの総量のうち、第一のポリマーは約100%の量で存在し、第二のポリマーは約0%の量で存在する。
【0101】
本発明のより具体的な態様の1つにおいて、ポリマーの1つは、ポリビニルピロリドン(PVP)(例えば、PVP29/32)である。PVPは、約35%まで、約40%まで、約45%まで、または約50%までの量で存在し得る。約50%(例えば、約49.5%)のPVP K29/32を含む分散体は、本発明に包含される。
【0102】
別の態様において、本発明は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)およびセルロースポリマー、例えばHPMCまたはHPMCASポリマーの固体分散体(例えば、凝集生成物)を含む。いくつかの好ましい態様において、化合物(すなわち、VX−950)は、少なくとも約50%の分散体、例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、またはそれ以上の量で存在する。いくつかの好ましい態様において、該薬物は、約55%ないし約90%、例えば約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または約85%の量で存在する。ポリマーの量は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、および好ましくは少なくとも約20%、例えば少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、または少なくとも約45%の量で存在する。いくつかの態様において、該量は典型的に、約55%以下、および好ましくは約50%以下、例えば約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、または約10%以下である。
【0103】
別の態様において、本発明は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)および少なくとも2個のセルロースポリマー、例えばHPMCおよび/またはHPMCASポリマーの固体分散体(例えば、凝集生成物)を含む。いくつかの好ましい態様において、化合物(すなわち、VX−950)は、分散体の、少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、またはそれ以上の量で存在する。いくつかの好ましい態様において、該薬物は、約55%ないし約70%、例えば約55%、約60%、約65%、または約70%の量で存在する。上記の通り、ポリマーの総量は、少なくとも約15%、および好ましくは少なくとも約20%、例えば少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、または少なくとも約45%の量で存在する。いくつかの態様において、該量は典型的に、約55%以下、好ましくは約50%以下、例えば約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、または約10%以下である。
【0104】
いくつかの好ましい態様において、該分散体は、他の微量成分、例えば界面活性剤(例えば、SLSまたはビタミンE TPGS)をさらに含む。ある好ましい態様において、該界面活性剤は、該分散体の約10重量%未満、例えば約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、または約1重量%未満存在する。
【0105】
最も好ましい態様において、該分散体は、VX−950を約49.5%、HPMCASを約49.5%、およびSLSを約1%含む。
【0106】
該ポリマーまたは複数のポリマーは、固体分散体の安定化に十分な量で存在すべきである。安定化には、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の結晶化を阻止または低下することが含まれる。かかる安定化は、アモルファス形態から結晶形態への化合物の変化を阻止し得る。例えば、該ポリマー(複数可)は、化合物のアモルファス形態から結晶形態への変化を少なくとも一部(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、またはそれ以上)阻止し得る。
【0107】
例えば、低pH(例えば、胃液(例えば、絶食時の胃液)またはSGF(例えば、絶食時のSGF)にて、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)は、溶解して過飽和になり、その後結晶になり得る。該ポリマーまたは複数のポリマーは、そのようなまたは同様の条件において、または該化合物を含む組成物の貯蔵中、該化合物の結晶化を阻止または低下し得る。安定化を、例えば、固体分散体のガラス転移温度を測定すること、アモルファス物質の緩和率(relaxation rate)を測定すること、または該化合物の溶解度またはバイオアベイラビリティを測定することにより、測定することができる。
【0108】
ポリマーまたは複数のポリマーを、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む製剤に用いることができる。例えばアモルファス固体分散体のような固体分散体(例えば、凝集生成物)を形成するために、化合物との併用使用に適する1種、2種以上、または全てのポリマーは、下記の特性の1個以上を有すべきである:
【0109】
1.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーのガラス転移温度は、該化合物のガラス転移温度より約10−15℃以上低い温度でなければならない。好ましくは、組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーのガラス転移温度は、該化合物のガラス転移温度より高く、一般的に、該医薬品の所望の貯蔵温度より少なくとも50℃高い。例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約120℃、少なくとも約130℃、少なくとも約140℃、少なくとも約150℃、少なくとも約160℃、少なくとも約160℃、またはそれ以上である。
【0110】
2.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、比較的非吸湿性でなければならない。例えば、該ポリマーは、標準的条件下で貯蔵時、約10%未満の吸水率、例えば約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、または約5%未満、約4%未満、または約3%未満の吸水率でなければならない。好ましくは該ポリマーまたは複数のポリマーは、標準的条件下で貯蔵時、実質的に吸着水を不含有であり得る。
【0111】
3.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、スプレー乾燥工程に適する溶媒に、該化合物の溶解度と比較して同程度またはより溶解性を有しなければならない。好ましい態様において、該ポリマーまたは複数のポリマーを、化合物と同じ溶媒または溶媒系の1種以上中に溶解し得る。該ポリマーまたは複数のポリマーが、塩化メチレン、アセトン、またはそれらの組合せのような溶媒を含む、少なくとも1種の非ヒドロキシ溶媒に可溶性であることが好ましい。
【0112】
4.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、例えば固体分散体中、該化合物と組み合わせたとき、ポリマー不存在下での化合物の溶解度と比較して、または参照ポリマーと組合せたときの化合物の溶解度と比較して、水性かつ生理的学的に関係のある媒体中、該化合物の溶解度を増大すべきである。例えば、該ポリマーまたは複数のポリマーは、アモルファス固体分散体から結晶化合物に変化するアモルファス化合物の量を減少することにより、アモルファス化合物の溶解度を増大し得る。
【0113】
5.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、アモルファス物質の緩和率を低下すべきである。
6.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、化合物の物理的および/または化学的安定性を増大すべきである。
7.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、化合物の製造容易性を改善すべきである。
【0114】
8.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、化合物の取扱い、投与または貯蔵特性の1個以上を改善すべきである。
9.組合せ中ポリマーまたは複数のポリマーは、他の薬学的成分、例えば賦形剤と不利に相互作用すべきではない。
【0115】
候補ポリマー(複数可)(または他の構成成分)の安定性を、アモルファス化合物を含む組成物を形成するために、本明細書に記載のFSD法を用いて試験することができる。該候補組成物は、安定性、結晶の形成に対する抵抗性、または他の特性に関して、参照生成物、例えば本明細書に記載の生成物、例えば、興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む生成物と比較され得る。例えば、約83%のアモルファスVX−950、約17%のHPMCAS、または結晶VX−950の生成物である。例えば、候補組成物を、溶媒により仲介される結晶化の発生までの時間、または制御条件下で所望の時間に変化する割合を、少なくとも50%、75%、100%、または110%阻害するかどうかを決定するために試験することができ、ならびに参照生成物または候補組成物を、結晶VX−950と比較して、VX−950の改善したバイオアベイラビリティまたは溶解性を有するかどうかを決定するために試験することができる。
【0116】
凝集生成物の好ましい態様には、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)、HPMC、HPMCAS、および界面活性剤の固体分散体が含まれる。例えば、凝集生成物には、該化合物を約55%、HPMCポリマー、例えばHPMC60SH50を約15%ないし約25%(例えば約19.6%)、HPMCASポリマー、例えばHPMCAS−HGを約20%ないし約30%(例えば、約24.4%)、界面活性剤、例えばSLSを約1%含む固体分散体が含まれる。
【0117】
別の好ましい態様には、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を約80%ないし約85%(例えば、83%)、およびHPMCASポリマー、例えばHPMCAS−HGを約15%ないし約20%(例えば、約17%)含む固体分散体が含まれる。分散体は、所望により、約1%の界面活性剤、例えばSLSを含み得る。
【0118】
別の好ましい態様は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を約55%、HPMCポリマー、例えばHPMC60SH50を約25%ないし約35%(例えば、約29.3%)、HPMCASポリマー、例えばHPMCAS−HGを約10%ないし約20%(例えば、約14.7%)、界面活性剤、例えばSLSを約1%含む固体分散体を含む。
【0119】
別の好ましい態様は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を約60%、HPMCポリマー、例えばHPMC60SH50を約10%ないし約20%(例えば、約14.6%)、HPMCASポリマー、例えばHPMCAS−HGを約20%ないし約30%(例えば、約24.4%)、界面活性剤、例えばSLSを約1%含む固体分散体を含む。
【0120】
別の好ましい態様は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を約65%、HPMCポリマー、例えばHPMC60SH50を約12%ないし約22%(例えば、約17%)、HPMCASポリマー、例えばHPMCAS−HGを約12%ないし約22%(例えば、約17%)、界面活性剤、例えばSLSを約1%含む固体分散体を含む。
【0121】
別の好ましい態様は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を約70%、HPMCポリマー、例えばHPMC60SH50を約15%ないし約25%(例えば、約19.3%)、HPMCASポリマー、例えばHPMCAS−HGを約5%ないし約15%(例えば、約9.7%)、界面活性剤、例えばSLSを約1%含む固体分散体を含む。
【0122】
界面活性剤
FSDの生成物(例えば、凝集生成物、例えば粉末または顆粒)、例えば興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)、および所望により、ポリマーもしくは複数のポリマー(または、固体状態の担体(複数可))を含む固体分散体(例えば、アモルファス固体分散体)は、界面活性剤を含み得る。界面活性剤または界面活性剤混合物は、一般的に、固体分散体と水性媒体の間の界面張力を減少し得る。適当な界面活性剤または界面活性剤混合物はまた、固体分散体の興味のある化合物(例えば薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の水溶性およびバイオアベイラビリティを増大し得る。本発明に関連する使用のための界面活性剤には、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、SPANS(登録商標))、ポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、TWEENS(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(Docusate)、ジオキシコール酸ナトリウム塩(DOSS)、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ヘキサデシルトリメチル・アンモニウム・ブロマイド(HTAB)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、Gelucire44/14、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ビタミンEまたはトコール誘導体、例えばαトコフェロール(例えば、d−αトコフェロール、d1−αトコフェロール、コハク酸トコフェロールエステル)、およびトコフェリルエステル、例えば酢酸トコフェリルエステル、コハク酸トコフェリルエステル、例えばビタミンE d−αコハク酸トコフェリルポリエチレングリコール1000(TPGS;例えば、EastmanのビタミンE TPGS)、レシチン、MW677−692、グルタミン酸一ナトリウム一水和物、Labrasol、PEG 8 カプリル/カプリン酸グリセリド、トランスカトール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ソルトールHS−15、ポリエチレングリコール/ヒドロキシステアレート、タウロコール酸、プルロニックF68、プルロニックF108、およびプルロニックF127(または、何れかの他のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン・コポリマー(PLURONICS(登録商標))、または飽和ポリグリコール化(glycolized)グリセリド(GELUCIRS(登録商標)))が含まれるが、これらに限定されない。本発明に関係して用いられ得る、かかる界面活性剤の特定の例は、Span 65、Span 25、Tween 20、Capryol 90、Pluronic F108、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ビタミンE TPGS、プルロニックおよびコポリマー、リン脂質、例えばPC(ホスファチジルコリン)(例えば、卵または大豆由来)、PI(ホスファチジルイノシトール)、PA(ホスファチジン酸)、PE(ホスファチジルエタノールアミン)、PG(ホスファチジルグリセロール)が含まれるが、これらに限定されない。該界面活性剤には、脂質または脂肪酸、例えばジパルミトイルホスホコリン(DPPC)または類似の脂質(DAPC、DSPC、DPPGなど)が含まれ得る。かかる脂質は、合成的に、例えばGenzyme or Avanti Polar Lipidsから入手可能である。SLS(例えば、SigmaまたはFischer)およびビタミンE TPGSが好ましい。
【0123】
固体分散体の総量と比較して、界面活性剤(例えば、SLSまたはビタミンE TPGS)の量は、約0.1−20%であり得る。好ましくは、それは、約1%ないし約20%、約1ないし約15%、約1ないし約10%、より好ましくは約1%ないし約5%、例えば約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%である。
【0124】
任意の態様において、固体分散体の総重量と比較して、界面活性剤(例えば、SLSまたはビタミンE TPGS)の量は、約0.1−20%であり得る。好ましくは、約1%ないし約20%、約1ないし約15%、約1ないし約10%、より好ましくは約1%ないし約5%、例えば約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%である。
【0125】
ある態様において、固体分散体の総重量と比較して、界面活性剤の量は、少なくとも約0.1%、好ましくは少なくとも約0.5%、より好ましくは少なくとも約1%(例えば、約1%)である。これらの態様において、界面活性剤は、約20%以下、好ましくは約15%以下、約12%以下、約11%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下の量で存在し得る。
【0126】
候補界面活性剤(または、他の構成成分)を、ポリマーの試験について記載の方法と同様に、本発明における使用に対する適性を試験することができる。
【0127】
溶媒
FSDは、1個以上の溶媒を含む供給溶液を乾燥するために実行され得る。例えば、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)、および所望により、1個以上のポリマーのような他の成分、および/または界面活性剤が、溶媒(複数可)中に溶解または懸濁され、その結果供給溶液を得る。好ましい工程において、溶媒には、揮発性溶媒が含まれる。いくつかの態様において、溶媒には、揮発性溶媒の混合物が含まれる。他の態様において、溶媒には、揮発性および不揮発性溶媒が含まれる。好ましい溶媒には、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)およびポリマー(複数可)(使用するとき)の両方を溶解し得るものが含まれる。さらに、該溶媒は、使用するとき、界面活性剤の溶解を補助し得る。適当な溶媒には、例えば揮発性および/または不揮発性溶媒が含まれる。
【0128】
揮発性溶媒の例には、塩化メチレン(ジクロロメタン)、アセトン、ケトン、クロロホルム、およびTHFが含まれる。好ましい方法において、該溶媒は塩化メチレンである。このましい方法において、該溶媒は、塩化メチレンおよびアセトンの混合物である。塩化メチレン:アセトンの重量%比は、例えば約100:0、約90:10、約80:20、約75:25、約70:30、約60:40であり、好ましくは約80:20または約70:30であり得る。
【0129】
溶媒または溶媒混合物にはまた、不揮発性または高沸点溶媒も含まれ得る。不揮発性溶媒の例には、氷酢酸、DMSO、DMFおよび水のような有機酸が含まれる。いくつかの態様において、不揮発性溶媒は、約100℃以下、例えば約80℃ないし約100℃の沸点を有する。好ましい態様において、不揮発性溶媒は水である。いくつかの例において、不揮発性溶媒(例えば、水)は、流動床スプレー乾燥法が行われる混合物中に存在する1個の成分、例えば界面活性剤(例えば、SLS)を溶解し得る。好ましい態様において、不揮発性溶媒(例えば、水)の使用により、より高いバルク密度を有する分散体が得られる。組成物をスプレー乾燥するための不揮発性溶媒の使用の詳細は、2006年3月20日出願の仮出願番号第60/784,275号(発明の名称“Pharmaceutical Compositions;”)および2006年12月22日出願の仮出願番号第60/871,692号(発明の名称“Pharmaceutical Compositions;”)(代理人事件番号19079−007P02)に記載される。
【0130】
本発明者らは、氷酢酸または水のような不揮発性溶媒の、溶媒または溶媒混合物への添加が、より大きく、高密度、かつより流動性の粒子をもたらし得ることを発見した。かかる粒子は、圧縮のような後続工程、例えば直接圧縮により錠剤にするのにより適当であり得る。不揮発性溶媒は、溶媒混合物の、例えば約5重量%まで、約10重量%まで、または約15重量%までであり得る。例えば、溶媒混合物は、塩化メチレン:アセトン:氷酢酸を約67:28:5または63:27:10の重量%比で含み得る。塩化メチレン:アセトン:水の重量パーセント比の例は、75:24:1である。
【0131】
いくつかの態様において、不揮発性溶媒は、溶媒混合物の構成成分である。例えば、不揮発性溶媒は、溶媒の構成成分として、約1重量%ないし約20重量%(例えば、約3重量%ないし約15重量%、約4重量%ないし約12重量%、または約5重量%ないし約10重量%)存在する。他の態様において、不揮発性溶媒(例えば、水)は、約0%ないし約5%、例えば約1%存在する。
【0132】
いくつかの好ましい態様において、溶媒混合物は、揮発性溶媒の組合せまたは塩化メチレンおよびアセトンのような揮発性溶媒と水または氷酢酸のような不揮発性溶媒の組合せである。例えば、該溶媒混合物は、塩化メチレンを約40%ないし約80%、アセトンを約20%ないし約35%、および氷酢酸を約1%ないし約15%(例えば、塩化メチレンを約50%ないし約70%、アセトンを約25%ないし約30%、および氷酢酸を約3%ないし約12%)含む。別の例として、該溶媒混合物は、塩化メチレンを約40%ないし約80%、アセトンを約20%ないし約35%、および水を約1%ないし約15%(例えば、塩化メチレンを約50%ないし約70%、アセトンを約25%ないし約30%、および水を約1%ないし約5%)含む。塩化メチレン:アセトン:不揮発性溶媒の重量パーセント割合の例は、75:24:1である。
【0133】
いくつかの態様において、該溶媒混合物は、氷酢酸を含む。
いくつかの態様において、該溶媒混合物は、氷酢酸と少なくとも1個の揮発性溶媒、例えばアセトンおよび/または塩化メチレン(例えば、塩化メチレンおよびアセトンの混合物)の組合せを含む。
【0134】
いくつかの態様において、該溶媒混合物は水を含む。
いくつかの態様において、該溶媒混合物は、水と少なくとも1個の揮発性溶媒、例えばアセトンおよび/または塩化メチレン(例えば、塩化メチレンおよびアセトンの混合物)の組合せを含む。
【0135】
アルコール溶媒は、本発明のFSD法と関連して用いられてよく、アルコールは、ある化合物(例えば、VX−950)と反応してケタールを生成し得る。従って、VX−950のような化合物と反応しない溶媒(特に、ケタールを生成するもの)は、かかる化合物を含む供給溶液を製造するとき好ましい。かかる溶媒は、OH基または類似の反応基を含むべきではない。故に、これらの方法において、好ましい溶媒はアルコール以外である。
【0136】
組成物/パッケージング/使用
興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)のFSDにより得られる生成物を含む医薬組成物はまた、本明細書で提供される。本発明のFSDの生成物(例えば、凝集生成物、例えば薬物、例えばVX−950)は、患者に投与するための医薬組成物に製造され得る。FSDの生成物(例えば、凝集固体分散体)は、医薬組成物とみなされ得るが、さらなる処理が投与の前に必要であり得る(例えば、固体分散体は、錠剤にさらに直接圧縮され得る)。全てのかかる医薬組成物、投与形態(例えば、直接圧縮投与形態)、および製剤は、本発明の範囲内に包含され得る。製剤は、公知の方法に従い、公知の成分を用いて製造され得る(Handbook of Pharmaceutical Excipientsを参照)。適当であるならば、経口製剤はしばしば、医薬投与に好ましい。
【0137】
従って、FSDを含む方法により製造される興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む医薬組成物は、本明細書中に提供される(例えば、直接圧縮投与形態の医薬組成物)。かかる組成物は典型的に、薬学的に許容される担体、希釈剤、またはビークルを含む。いくつかの態様において、該興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)は、アモルファス形態である。いくつかの態様において、該興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)は、固体分散体(例えば、アモルファス固体分散体)の形態である。これらの形態および分散体は、好ましくは本明細書に記載の通りに製造される。
【0138】
本発明の組成物および方法は、所望により1個以上の賦形剤を含み得る(USP6,720,003、US2004/0030151、および/またはWO99/02542を参照のこと)。賦形剤は、投与形態中、担体またはビークルとして用いられる物質であるか、または投与形態の取扱い、貯蔵、または製造を改善するために医薬組成物に添加される物質である。賦形剤には、希釈剤、崩壊剤、接着剤、湿潤剤、滑剤、流動促進剤、結晶化阻害剤、表面修飾剤(surface modifying agent)、好ましくない臭味を遮蔽または中和する物質、香味剤、色素、香料、充填剤、結合剤、安定化剤および組成物の外観を改善する物質が含まれるが、これらに限定されない。例えば、賦形剤(複数可)は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の固体分散体と混合され、次いで、いかなるさらなる処理工程(例えば、ローラー圧縮および/またはミル工程)も必要とすることなく、投与形態に直接圧縮され得る。
【0139】
FSDにより製造される興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)を含む製剤、またはその分散体もしくは組成物を、哺乳動物に投与するために適する投与形態にする製造工程はまた、本明細書に包含される。好ましくは、該製剤は、本明細書に記載の通りに製造される興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の直接圧縮投与形態を含む。
【0140】
従って、本発明の別の態様は、FSDにより製造される興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物(例えば、直接圧縮投与形態、例えば錠剤)を提供する。好ましい態様に従い、VX−950は、サンプルまたは患者におけるウイルス量を低減する(例えば、血漿ウイルスレベルを少なくとも約3log、少なくとも約4log、または少なくとも約5logに低減する)のに有効な量、および所望により薬学的に許容される担体が存在する。あるいは、本発明の組成物は、本明細書に記載の別のさらなる物質(例えば、CYP阻害剤)を含む。各成分は、個々の組成物、組成物の組合せ、または単一組成物中に存在し得る。例えば、別のさらなる物質は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)の固体分散体と共に、直接圧縮形態、例えば錠剤に直接圧縮され得る。あるいは、別のさらなる物質は、個別に製剤され得る。
【0141】
本明細書で用いる用語“含む”は、オープンエンドであることを意図し、故に、特定の物質に加えて他の物質を包含する可能性を示す。
【0142】
本明細書で用いる、VX−950を含む本発明の化合物は、薬学的に許容される誘導体またはそのプロドラッグを含むことが定義される。“薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ”は、本発明の化合物の何れかの薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体(例えば、アミドのイミダートエステル)を意味し、それらは受容者に投与されることにより、本発明の化合物を(直接的または間接的に)提供し得る。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、かかる化合物が哺乳動物に投与されるとき(例えば、経口投与された化合物がより容易に血中に吸収されるのを可能にすることにより)、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増大するもの、または親種と比較して、親化合物の生物学的コンパートメント(例えば、肝臓、脳またはリンパ系)への送達を増強するものである。好ましいプロドラッグには、水溶性または腸の膜を通過する能動輸送を増強する基が、本明細書に記載の式の構造に付加される誘導体が含まれる。
【0143】
本発明の組成物および方法に用いられる興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)はまた、適当な官能基を付加することにより修飾され、選択的生物学的特性を増大し得る。かかる修飾は、当技術分野で公知であり、所定の生物系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的透過を増大させ、経口利用可能性を増大させ、注射による投与を可能にするために溶解性を増大させ、代謝を変化させ、そして排出速度を変化させることが含まれる。
【0144】
これらの組成物に用いられ得る薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩もしくは電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
本発明の医薬組成物、は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末、顆粒、水性懸濁液または溶液を含むが、これらに限定されない、何らかの経口で許容される投与形態で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、ラクトース、微結晶セルロース、マンニトール、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウムおよびトウモロコシデンプンを含む担体が常用される。ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムステアリルフマレート、またはステアリン酸のような滑剤もまた、典型的に添加される。クロスカルメロースナトリウムまたはデンプングリコール酸ナトリウムのような崩壊剤、コロイド状シリカのような流動助剤、ならびにSLSおよびビタミンEのような界面活性剤を含み得る他の成分もまた、包含され得る。カプセル剤形態での経口投与のために、有用な希釈剤には、ラクトース、微結晶セルロース、マンニトール、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウムおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。上記の錠剤形と同様に、カプセル剤はまた、滑剤、崩壊剤、界面活性剤、または流動助剤を包含し得る。いくつかの態様において、錠剤は、例えば嚥下の簡便性を増大するために、フィルムコートされる。水性懸濁液が経口使用に必要とされるとき、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と混合される。要すれば、任意の甘味剤、香味剤または着色剤もまた添加され得る。許容される液体投与形態には、エマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。
【0146】
好ましい態様に従い、本発明の医薬組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与する医薬品として製剤される。本発明で供される興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)および分散体の形態は、好ましくは経口投与用に製剤されるが、他の製剤が得られ得る。
【0147】
本発明の他の医薬組成物(ならびに、本発明の方法、組合せ剤、キットおよびパッケージに用いるための組成物)は、経口、非経腸、舌下、吸入、局所的、経直腸、経鼻、頬内、経膣または埋め込み容器により投与され得る。本明細書で用いる用語“非経腸”には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術が含まれる。好ましくは、該組成物は、経口または静脈内に投与され得る。
【0148】
本発明はまた、本明細書中の何れかの態様に従い、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950、例えばアモルファスVX−950)、固体分散体、またはFSDにより得られた(または、FSDにより得られた成分を含む)医薬組成物を含む、薬学的パッケージおよびキットを提供する。
【0149】
本発明はさらに、患者に医薬組成物を投与することを含む、患者においてC型肝炎ウイルス感染を処置または予防する方法を提供する。該医薬組成物は、本発明の、FSDにより製造されるVX−950の何れかの形態、何れかの固体分散体、何れかの直接圧縮投与形態、または何れかの組成物を含む。
【0150】
別の態様に従い、本発明は、本発明の、VX−950の何れかの形態、何れかの固体分散体、何れかの直接圧縮投与形態、または組成物を該患者に投与することにより、ウイルスの生活環に必須の、ウイルスによりコード化されるNS3/4A セリンプロテアーゼにより特徴付けられるウイルス、例えばHCVに感染した患者を処置するための方法を提供する。好ましくは、本発明の方法は、HCV感染を有する患者を処置するために用いられる。かかる処置は、ウイルス感染を完全に根絶するか、またはその重症度を低減し得る。より好ましくは、患者はヒトである。
【0151】
医薬組成物はまた、単一パッケージ(例えば、ブリスターパッケージ)中に、2個以上の用量、および好ましくは一連の処置全体を含む、“患者パック(patient pack)”で患者に処方され得る。患者パックは、患者が、従来の処方において通常紛失される患者パックに含まれる添付文書をいつでも利用できる点で、薬剤師が、大量購入物から患者への薬剤分配を行なう従来の処方よりも有利である。添付文書の包含は、患者に医者の指示の順守を改善させることが明らかにされている。好ましくは該薬物は、直接圧縮形態、例えば経口投与形態、例えば錠剤である。
【0152】
患者が本発明の正しい使用をするように指示する添付文書を包含する単一の患者パック、または各製剤の患者パックを用いる本発明の組み合わせの投与は、本発明の望ましいさらなる特徴であることが理解されるだろう。
【0153】
本発明のさらなる局面は、本発明の、少なくとも何れかの形態の興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)、何れかの固体分散体、何れかの直接圧縮投与形態、または何れかの組成物、および本発明の組合せ剤の使用指示書を含む添付情報を含むパッケージである。本発明の別の態様において、前記医薬的パッケージは、本明細書中に記載の1個以上のさらなる薬剤をさらに含む。さらなる薬剤または複数の薬剤は、同一のパッケージまたは異なるパッケージで提供され得る。
【0154】
本発明の別の局面は、各医薬成分の単一または複数の医薬製剤;貯蔵中および投与前に医薬製剤(複数可)を保存する容器;および、HCV感染を処置または予防するのに有効な方法で薬剤投与を行うための指示書を含む、HCVを阻止するため、またはHCV感染の処置またはHCV感染の予防における患者への使用のためのパッケージ化されたキットを包含する。好ましくは、該薬剤は、直接圧縮形態、例えば経口投与形態である。
【0155】
従って、本発明は、興味のある化合物(例えば、薬物、例えば難溶性薬物、例えばVX−950)(および、所望によりさらなる薬剤)または常套法により製造されるそれらの誘導体の用量の同時または連続投与のためのキットを提供する。典型的に、そのようなキットは、例えば、薬学的に許容される担体中(および、単一または複数の医薬製剤中)、各阻害剤の組成物および任意のさらなる薬剤(複数可)、ならびに同時または連続投与のための指示書を含み得る。好ましくは、該薬剤は、経口投与形態、例えば直接圧縮投与形態、例えば錠剤である。
【0156】
別の態様において、パッケージキットは、自己投与のための1個またはそれ以上の投与形態(好ましくは、経口投与形態、例えば直接圧縮投与形態、例えば錠剤形);貯蔵中および使用前に前記剤形を保存するための、好ましくは密閉された容器;および、薬剤投与を行うための患者のための指示書を包含して提供される。該指示書は、一般的に、添付文書、ラベル、および/またはキットの他の成分の指示書であり、投与形態または複数の投与形態が、本明細書中に記載されている。各投与形態は、一枚の金属箔−プラスチック薄板で形成される個々の空間(cell)または半球形(bubble)中に、他から分離されたそれぞれの投与形態を包含させるか、または該投与形態は、プラスチック容器のような単一の容器中に包含され得る。本発明のキットはまた、典型的には、個々のキット成分をパッケージングするための手段、すなわち、投与形態、容器、および使用のための指示書を含み得る。そのようなパッケージング手段は、段ボール箱または紙箱、プラスチック容器または金属箔容器などの形態であり得る。
【0157】
本発明の態様はまた、さらなる薬剤を含み得る。故に、本発明の方法は、かかるさらなる薬剤を投与する工程を含み得る。
【0158】
投与量
1日あたり、約0.01ないし約100mg/kg体重の、好ましくは1日あたり、約10ないし約100mg/kg体重の、VX−950の投与量レベルは、HCVにより仲介される疾患の予防および処置に有用である。いくつかの態様において、一人あたり(約70kgと計算されるヒトの平均サイズに基づき)、約0.4ないし約10g/日、例えば、約1ないし約4g/日、好ましくは約2ないし約3.5g/日である投与量レベルが包含される。典型的に、本発明の医薬組成物は、1日に約1ないし約5回、好ましくは1日あたり、約1ないし約3回投与され得るか、あるいは、連続的に注入され得る。いくつかの態様において、VX−950は、制御放出製剤を用いて投与される。いくつかの態様において、このことは、VX−950の比較的安定な血中レベルを提供するのを補助し得る。
【0159】
いくつかの態様において、アモルファスVX−950(例えば、FSDにより得られる)の用量は、標準的用量、例えば1日あたり約1gないし約5g、より好ましくは1日あたり約2gないし約4g、より好ましくは1日あたり約2gないし約3g、例えば1日あたり約2.25gまたは約2.5gであり得る。例えば、1日あたり約2.25gのアモルファスVX−950の用量は、例えば約750mgを1日に3回投与して、患者に投与され得る。かかる用量は、例えば、3個の250mg用量を1日3回、または2個の375mg用量を1日2回のように、投与され得る。いくつかの態様において、250mg用量は、約700mgの錠剤中にある。いくつかの態様において、375mg用量は、約800mgの錠剤中にある。別の例として、約2.5g/日のアモルファスVX−950の用量は、患者に対して、例えば約1250mgを1日に2回で投与され得る。別の例として、約1gないし約2gのアモルファスVX−950/日が患者に対して投与され得て、例えば約1.35gのアモルファスVX−950が、患者に、例えば約450mgを1日3回で投与され得る。アモルファスVX−950の用量は、例えばFSD生成物または錠剤(例えば、VX−950を含む錠剤、例えば、FSDにより得られる分散体)として、投与され得る。該錠剤は、例えば本明細書に記載の、アモルファスVX−950の例えば直接圧縮投与形態であり得る。
【0160】
いくつかの態様において、本明細書に記載のFSD生成物は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%またはそれ以上のVX−950(例えば、アモルファスVX−950)を含む。これらのFSD生成物は、一定量の生成物に対して、より多量のVX−950(例えば、より高い重量%のVX−950)を含んでいてよく、同重量の固体分散体に対して、より多量のVX−950が医薬組成物(例えば、直接圧縮投与形態)中に包含され得るため、該組成物中の活性成分の重量が増大する。結果として、VX−950を受容する対象は、より少量のVX−950を服用して、同量の薬物を摂取することができる。例えば、750mg用量のVX−950を受容するために、対象は、3個の250mg用量の代わりに、本明細書に記載の固体分散体を含む2個の375mg用量のVX−950を服用し得る。これは、数名の患者にとって改善されたか、または好ましい用量であり得る。別の例として、FSD生成物中のアモルファスVX−950の増大した重量は、固定された総用量の医薬組成物での対象に対するより多量のVX−950の投与を可能とし得る(例えば、標準サイズの錠剤は、より高い割合(故に、用量)のアモルファスVX−950を含み得る)。反対に、増大量のアモルファスVX−950は、少ない総用量の医薬組成物で、対象に投与されるべき固定された用量のアモルファスVX−950を可能にし得る(例えば、標準用量のアモルファスVX−950をより小さい錠剤で投与することができる)。
【0161】
いくつかの態様において、アモルファスVX−950は、100%有効または純粋(例えば、効力または純度は、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%有効である)ではなく、その時、上記の用量は、総量のVX−950というよりも、患者に対して投与される有効または純粋なVX−950の量を意味する。これらの用量は、例えばさらに以下に記載の、単剤療法として、および/または併用療法の一部として、患者に投与され得る。
【0162】
かかる投与は、慢性または急性治療として使用できる。単一投与形態を製造するために担体物質と組み合わせ得る活性成分の量は、処置する対象および特定の投与方法によって変わり得る。典型的な製剤は、約5%ないし約95%の活性化合物(w/w)を含む。好ましくは、このような製剤は、約20%ないし約80%、約25%ないし約70%、約30%ないし約60%の活性化合物を含む。
【0163】
本発明の組成物または方法が、VX−950と1個以上の付加的治療剤もしくは予防剤との組合せ剤を含むとき、該化合物および該付加的薬物の両方とも、単剤療法レジメンにおいて通常投与される投与量の約10ないし100%、より好ましくは、約10ないし80%の投与量レベルで存在すべきである。
【0164】
患者の状態が改善すれば、本発明の化合物、組成物または組合せ剤の維持量を、必要であれば投与できる。その後、投与量または投与頻度、または両方を、例えば、症状の関数として、改善された状態が維持されるレベルまで、約1/2または1/4またはそれ未満の投与量または投与頻度まで減少でき、症状が所望のレベルまで軽減したとき、処置を止めるべきである。しかしながら、患者は、疾患症状の何らかの再発に基づいて、長期に断続的処置を必要とし得る。
【0165】
何れかの特定の患者のための具体的投与量および処置レジメンは、用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康、性別、食事、投与の時間、排泄速度、薬物組合せ、および処置医の判断ならびに、処置される特定の疾患の重症度を含む、種々の因子に依存し得ることが理解されるべきである。活性成分の量も特定の記載の化合物および組成物中の付加的抗ウイルス剤の存在または不存在ならびにその性質に依存し得る。
【0166】
併用療法
本発明の方法はまた、免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼの阻害剤;HCV生活環の他の標的の阻害剤;内部リボソーム侵入の阻害剤、広域的ウイルス阻害剤;別のシトクロムP−450阻害剤;または、それらの組合せ剤、から選択されるさらなる薬剤を含む別の成分の投与を含み得る。
【0167】
従って、別の態様において、本発明は、VX−950、何れかの固体分散体、何れかの直接圧縮投与形態、またはFSDにより得られた(または、FSDにより得られた成分を含む)本発明の何れかの組成物、CYP阻害剤、および別の抗ウイルス剤、好ましくは抗HCV剤を投与することを含む方法を提供する。そのような抗ウイルス剤には、α−、β−、およびγ−インターフェロン、PEG化誘導インターフェロン−α化合物、およびチモシンのような免疫調節剤;リバビリン、アマンタジン、およびテルビブジンのような他の抗ウイルス剤;C型肝炎プロテアーゼの他の阻害剤(NS2−NS3阻害剤およびNS3−NS4A阻害剤);ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、およびメタロプロテアーゼ阻害剤を含む、HCV生活環における他の標的の阻害剤;内部リポソーム侵入の阻害剤;IMPDH阻害剤のような広域的ウイルス阻害剤(例えば、VX−497、VX−148、および/またはVX−944を含むが、それらに限定されない、米国特許第5,807,876号、同第6,498,178号、同第6,344,465号、同第6,054,472号、国際特許出願WO97/40028、WO98/40381、WO00/56331の化合物、ならびにミコフェノール酸およびその誘導体);または、上記のいずれかの組合せ剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0168】
好ましい併用療法には、ある用量の本明細書に記載のアモルファスVX−950およびインターフェロン−α、例えば、ペグ化誘導インターフェロン−α(例えば、例えばその標準用量での、ペグ化インターフェロン−α−2a;例えばPEGASYS(登録商標)、または例えばその標準用量での、ペグ化インターフェロン−α−2b、例えばPEG−INTRON(登録商標)(例えばREDIPEN PEG−INTRON(登録商標)))が含まれる。例えば、本明細書に記載の形態(例えば、直接圧縮投与形態)中、例えば、(例えば、上記の)用量のアモルファスVX−950、例えば約2gないし約3g(例えば、2.5g、2.25g(例えば、750mgを1日3回))を、1日に3回投与することができ、ペグ化インターフェロン−α−2aを、標準用量で、例えば皮下投与により1週間に1回180μgを、例えば48週間投与することができる。別の例として、VX−950用量を、ペグ化インターフェロン−アルファ−2およびリバビリンの両方と共に投与することができる。例えば、約2gないし約3g(例えば、約2.5g、約2.25g(例えば、750mgを1日3回))の、本明細書に記載のアモルファスVX−950を、遺伝子型1の患者に対して、180μgのペグ化インターフェロン−α−2a(例えば、PEGASYS(登録商標))を1週間に1回ならびにリバビリン(例えば、COPEGUS(登録商標)、REBETOL(登録商標))を1000−1200mg/日と併用して、例えば48週間、投与することができるか、または遺伝子型2または3のC型肝炎患者に対して、180μgのペグ化インターフェロン−α−2aを1週間に1回ならびにリバビリンを800mg/日と併用して、投与することができる。
【0169】
各薬物は、個別の投与形態に製剤され得る。あるいは、患者に投与される投与形態の数を減少するために、各薬物は、何れかの組合せで共に製剤され得る。例えば、VX−950は、一投与形態に製剤されてよく、何らかの付加的薬物を、共に、または別の投与形態に製剤できる。VX−950は、例えば付加的薬物の投与量の前、後または投与中に投与され得る。
【0170】
本発明の方法はまた、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の投与の段階を含み得る。CYP阻害剤は、CYPにより阻害される化合物(例えば、VX−950)の肝臓濃度の増加および/または血中濃度の増加に有用であり得る。
【0171】
薬剤の薬物動力学の(例えば、CYP阻害剤投与による)改善の利点は、当分野で十分認められている。CYP阻害剤の投与により、本発明は、プロテアーゼ阻害剤、VX−950の減少した代謝のために提供する。プロテアーゼ阻害剤の薬物動力学は、故に改善される。薬剤の薬物動力学の改善の利点は、当分野で十分認められている。このような改善は、プロテアーゼ阻害剤の血中濃度の増加に至り得る。HCV治療のためにより重要なことに、この改善は、肝臓におけるプロテアーゼ阻害剤の濃度の増加をもたらし得る。
【0172】
本発明の方法において、投与されるCYP阻害剤の量は、このプロテアーゼ阻害剤をCYP阻害剤なしに投与したときの血中濃度と比較して、VX−950の血中濃度を上昇させるのに十分である。故に、有利なことに、本発明の方法において、プロテアーゼ阻害剤のさらにより少ない用量が使用され得る(プロテアーゼ阻害剤単独投与と比較して)。
【0173】
従って、別の本発明の態様は、VX−950を受容する患者におけるVX−950の血中濃度を増加させるまたは肝臓濃度を増加させるための方法であって、該患者に治療的有効量のVX−950およびチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤を投与する方法を提供する。
【0174】
C型肝炎に感染した患者の処置に加えて、本発明の方法は、患者がC型肝炎に感染するのを予防するために使用できる。従って、本発明の一つの態様は、患者におけるC型肝炎ウイルス感染の予防法であって、患者にa)本発明のVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または任意の組成物;およびb)チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0175】
当業者には認識され得る通り、本発明の方法は患者の予防的処置に使用され、そしてその患者がC型肝炎ウイルスに感染したとき、その後、本方法は該感染を処置し得る。故に、本発明の一態様は、本発明のVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、任意の直接圧縮投与形態または任意の組成物およびチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤(ここで、阻害剤の組合せ剤は、患者におけるC型肝炎感染の処置または予防に対して治療的有効量である)を提供する。
【0176】
本発明の態様がCYP阻害剤を含むとき、VX−950の薬物動力学を改善する全てのCYP阻害剤を本発明の方法において使用できる。これらのCYP阻害剤には、リトナビル(国際出願WO94/14436)、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、クロメチアゾール、シメチジン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、フルボキサミン、フルオキセチン、ネファゾドン、セルトラリン、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、フォサンプレナビル、サキナビル、ロピナビル、デラビルジン、エリスロマイシン、VX−944およびVX−497が含まれるが、これらに限定されない。好ましいCYP阻害剤には、リトナビル、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、およびクロメチアゾールが含まれる。リトナビルの好ましい投与形態について、米国特許第6,037、157号、およびその中に引用される文献:米国特許第5,484,801号、米国特許出願第08/402,690号、および国際出願WO95/07696およびWO95/09614参照。
【0177】
VX−944の構造式を下記に提供する。
【化3】

【0178】
VX−497は、IMPDH阻害剤である。VX−497、ペグ化IFN−α、およびリバビリンの組合せ剤が、現在HCV処置のために臨床開発されている[W. Markland et al., Antimicrobial & Antiviral Chemotherapy, 44, p. 859 (2000);米国特許第6,541,496号]。
【化4】

【0179】
化合物がチトクロームP50モノオキシゲナーゼ活性を阻害する能力の測定法は既知である(US特許第6,037,157号およびYun, et al. Drug Metabolism & Disposition, vol. 21, pp. 403-407 (1993)参照)。
【0180】
本発明で用いるCYP阻害剤は、1個のみのイソ酵素または2個以上のイソ酵素の阻害剤であり得る。CYP阻害剤が2個以上のイソ酵素を阻害するときでも、該阻害剤は、1個のイソ酵素を他のイソ酵素よりも選択的に阻害し得る。全てのそのようなCYP阻害剤を本発明の方法において使用できる。
【0181】
本発明の方法において、該CYP阻害剤は、本発明のVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、任意の直接圧縮投与形態または任意の組成物と共に、同じ投与形態中または別個の投与形態で投与できる。
【0182】
CYP阻害剤および組合せ剤中の他の成分を別個の投与形態で投与するとき、各阻害剤をほぼ同時に投与できる。あるいは、該CYP阻害剤を、組合せ剤の投与周辺の任意の時点で投与できる。すなわち、該CYP阻害剤を、組合せ剤の各成分の投与前に、共にまたはその後に投与できる。投与時間は、CYP阻害剤が組合せ剤の成分の、好ましくは、VX−950の代謝に影響するようなものでなければならない。例えば、VX−950を最初に投与したとき、該CYP阻害剤を、VX−950が実質的に代謝および/または排泄される前に投与すべきである(例えば、VX−950の半減期以内)。
【図面の簡単な説明】
【0183】
図面の説明
【図1】図1は、流動床スプレー乾燥モードで操作するスプレー乾燥機の説明図である。
【実施例】
【0184】
実施例
実施例1
以下の実施例は、流動床スプレー乾燥法(FSD)を詳述し、2種の混合物、HPMCASポリマーおよび溶媒(プラセボ)の混合物、ならびにVX−950、HPMCAS、および溶媒(活性)の混合物の流動床スプレー乾燥の結果物を提供する。FSD法のパラメーターの変化により、得られる生成物の特性は、後続処理または使用のために最適化かつ調整され得る。
【0185】
目的
本明細書に記載の実施例は、一部において:
i)流動床スプレー乾燥モードで操作する市販のスプレー乾燥機(例えば、FSDモードで操作する1250kg/hrの能力を有する乾燥機)を用いて、VX−950分散体に行ったスプレー乾燥実験を説明すること。
ii)生成物密度、粒子サイズ分布、および残存溶媒に対する、選択した操作パラメーターの変更の効果を報告すること
を設計された。
【0186】
序論
増大した粒子サイズおよび/または生成物密度は、直接圧縮生成物を得るのに都合よい。より大きな粒子を得るため、ならびに例えば直接圧縮に適当な高密度の生成物を得るために流動床スプレー乾燥機用(FSDモード)に設定された、商業用スプレー乾燥機(例えば、1250kg/hrの能力を有するスプレー乾燥機)を用いた。直接圧縮物質を得るために、20−40μmの範囲から、それ以上のレベルの平均粒子サイズに増大し、生成物密度(例えば、バルク密度>0.2g/mlおよびタップ密度>0.4g/ml)を維持または増大することが望ましいことがある。さらなる基準は、乾燥後の残留溶媒のレベルを許容される制限内に減少し得ることである。
【0187】
スプレー乾燥した物質および最終生成物の分析実験は、粒子特性(生成物密度および粒子サイズ分布)の分析および残留溶媒のレベルに関係する。
【0188】
装置、材料および方法
2種の供給溶液を、本実験中に製造した。高薬物製剤(high drug formula)についてのプラセボ供給溶液(プラセボ)、および各々の高薬物負荷製剤供給溶液(活性)である。表1は、各実験でスプレー乾燥された供給溶液をまとめる。
【表1】

【0189】
供給溶液を、機械的スターラーおよび供給溶液の温度を制御するための熱回路を備える8000Lステンレススチール撹拌槽反応機中で製造した。プラセボバッチの製造の間、溶媒を、ポリマー(HPMCAS)を充填する前に該反応機に充填した。完全な溶解を、低から中程度の撹拌(30ないし80rpm)下で観察した。活性試験において、第一に固体を充填し、その後溶媒を充填した。溶解にはおよそ6時間かかった。供給反応機内の溶液の温度は、スプレー乾燥機に供するまで約20℃(15ないし30℃)に維持された。
【0190】
プラセボ供給溶液および活性供給溶液の流動床スプレー乾燥法
圧力ノズル噴霧化システムを備えるステンレススチール製の商業スケールのスプレー乾燥機(NIRO、サイズ4)を、試験に用いた。用いる噴霧化ノズルは、Spraying Systems(MFP (Maximum Free Passage) SK Series SPRAYDRY(登録商標) Nozzles Series variety, コア27を有するオリフィス52)からのものであった。
【0191】
スプレー乾燥装置の簡単なスキームを図1に示す。
図1を参照して、スプレー乾燥ユニットを、密閉サイクルモード、すなわち乾燥ガスの再循環モードで操作した。該スプレー乾燥ユニットは、開始から終了操作の間に用いるための溶媒を含む供給タンク(T510)、ならびに乾燥されるべき物質を含む供給タンク(R240)を含む。スプレー乾燥法の開始のため、バルブV2を開き、スプレー乾燥されるべき物質を供給タンクR240からスプレー乾燥チャンバーDCにポンプHP−Pを介して供給した。該物質は、乾燥チャンバー中で部分的に乾燥され、その後、より軽い乾燥した粒子は、乾燥ガスを用いてサイクロンCに排出され、より重い粒子は、流動床FB1に落下した。該粒子は、FB1から最終的に第二流動床FB2およびFB3に循環され、完全に冷却および乾燥された。サイクロンCに排出された軽い粒子(微粒子)は、その後、サイクロンで分離され、微粒子返還FRにて乾燥チャンバーに戻された。サイクロンを通過する微粒子は全て、フィルターバッグFBで捕捉され、次いでガス再循環ユニットRUに至る。
【0192】
乾燥ガスの再循環を、再循環ユニットから、流路(1)および(2)で示される閉ループのどちらか一方を介してガスを再循環することにより達成した。再循環ユニットから排出されるガスを取り込む流路は、バルブ操作により決定した(記載なし)。ガスは流路(2)を介して再循環され、微粒子をサイクロンから乾燥チャンバーDCに戻した。ガスはまた、乾燥チャンバーDCの乾燥ガスとして、熱交換器HX1を介して乾燥チャンバーに再循環された。
【0193】
ブローファン(Fl)の設定で制御される乾燥窒素の流量を、10ないし18cmHOの、サイクロン(AP_サイクロン)を通過する圧力低下を得るために調整した。高圧ポンプを用い(HP−P)、そして供給圧(P−feed)を、所望の設定値(P_feed_SP)にするために自動的に制御した。粒子の戻る位置(FR位置)は、乾燥チャンバーの頂部(凝集を促進する)または乾燥チャンバーの中間(凝集を減少する)のどちらかであった。閉ループへのバルブ(1)を開口したとき、ガスが流動床チャンバーFB1−FB3に独立したファン(VT−FB)を介して供給され、3個の流動床チャンバーのそれぞれの温度(T_FB1、T_FB2、T_FB3)を、3個の熱交換器(HE1、HE2、HE3)により制御した。これらは、試験値(それぞれ30℃、35℃および40℃)に設定された。
【0194】
該供給溶液を、ノズルチップで噴霧化し、乾燥チャンバー内で並流加熱窒素により乾燥した。サイクロンに入る前の頂部に存在する乾燥生成物を含む流れは、乾燥チャンバー内で逆方向にされ、ここで多くの固体が分離され、微粒子が、乾燥チャンバーの頂部(スプレー形成物とノズルにて混合される)または、乾燥チャンバーの中間に軸方向に再導入された。上記の通り、より重い粒子が、乾燥中、および/または凝集処理中に形成され、乾燥チャンバー内およびメイン流動床チャンバー(FB1)内に落下した。該処理を、生成物の層が得られる(FB1を通過する圧力差として測定される)まで行った。その後、FB1中の生成物部分を、乾燥後処理工程が行われるFB2に放出し、次いで、FB2中の生成物をFB3に移した。FB3中、生成物を環境温度まで冷却し、その後、最終的に包装室に放出した。上記の通り、サイクロンを通過後、窒素をフィルターバッグに通し、ここで微粒子が捕捉され、その後、排気ファン(F2)に入り、そこからガス再循環ユニットにループ(1)および/または(2)を介して再循環した。排気ファンスピードを、システムの内側からの圧力を制御するために調節した。
【0195】
材料
本試験中に用いる材料を、表2に記載する。
【表2】

【0196】
分析法
用いる分析対照は、バルクおよびタップ密度(例えば、United States Pharmacopeia (USP)法<601>により測定される)、典型的な容積レーザー回折(例えば、Malvern Mastersizer、またはSympatec HELOS もしくは MYTOS)による粒子サイズ分布、ならびにガスクロマトグラフィー(GC)による有機溶媒(ジクロロメタン(DCM)、アセトンおよび酢酸エチル)であった。
【0197】
結果および考察
スプレー乾燥試験:データおよび観察
7つのスプレー乾燥試験を行った(5個のプラセボおよび2個の活性物)。主な結果を、表3にまとめた。走査型電子顕微鏡(SEM)画像を用いた。スプレー乾燥機の頂部で導入される微粒子で製造された分散体およびスプレー乾燥機の中間に導入される微粒子で製造された分散体の画像を得た。スプレー乾燥機の頂部に微粒子を導入することにより、より凝集した生成物を得た。スプレー乾燥機の中間に微粒子を導入することにより、より凝集していない生成物を得た。画像を、30、100および300倍で得た。
【0198】
【表3】


a)F_solid(=_feed x C_feed)は、スプレー乾燥機に供給される固体物質の流速である。
b)収率は、乾燥機が試験間で掃除されなかったとき、大きな誤差を有する。
【0199】
実施例2
本実施例は、流動床スプレー乾燥法により製造されるVX−950の分散体が、錠剤に直接圧縮された実験の結果を提供する。
【0200】
序論
錠剤特性は、APIの物理的−化学的および機械的特性、関係する賦形剤、ならびに方法パラメーターのような多くの因子により影響を受け得る。しっかりした製剤を達成するため、これらの効果は、製剤開発段階で評価される。これらの実験は、ビタミンE添加の異なる方法(スプレー凝集物、BASF Vit Eアセテート、賦形剤上で融解造粒した物、および分散体上で融解造粒した物)を含む流動床スプレー乾燥法によりスプレー乾燥される分散体の効果を評価した。打錠特性は、錠剤硬度、突出力および厚さにより特徴付けられた。
【0201】
方法
異なるタイプのVit Eの添加およびVit Eの異なる添加方法を評価した。Vit Eのタイプおよび分散体への添加方法を以下に記載する。
【0202】
VX−950の分散体は、本明細書に記載の流動床スプレー乾燥法により製造される。
【表4】


【表5】


注釈:VX 950 SD Lot 02
有効性:250mg VX950
【0203】
【表6】


【表7】


注釈:VX 950 SD Lot 02
有効性:250mg VX950
【0204】
【表8】


注釈:VX 950 SD Lot 02
有効性:250mg VX950

【表9】

【0205】
結果
【表10】


【表11】

【0206】
多くの本発明の態様を記載している。それにも係わらず、種々の修飾が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなし得ることが理解され得る。従って、他の態様は、特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VX−950を含む液体供給溶液を製造し;
該供給溶液を、流動床スプレー乾燥モードで操作するスプレー乾燥機の乾燥チャンバー中に送達して噴霧化し;
加熱空気または加熱ガスを用いて乾燥チャンバー内の供給溶液を乾燥させて、生成物を得て(ここで、生成物のより大きな粒子を分離し、微粒子を該乾燥チャンバーの頂部およびサイクロンに空気流またはガス流により運ぶ。)、そして
乾燥チャンバー内に該微粒子を再導入し、ここで、再導入される微粒子は、新しく形成した生成物と凝集して凝集生成物を形成でき、該凝集生成物が十分大きければ、それは分離され得て、分離のために十分な大きさでなければ、該凝集生成物はチャンバーの頂部およびサイクロンに輸送されて、該チャンバーに再導入される工程
を含む、VX−950の流動床スプレー乾燥法。
【請求項2】
第一流動化チャンバー中に凝集生成物を集める工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該凝集生成物を第一流動化チャンバーから第二流動化チャンバーに放出する工程(ここで、乾燥後工程が行われる。)をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該凝集生成物を第二流動化チャンバーから第三流動化チャンバーに移す工程(ここで、凝集生成物が冷却される。)をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
該微粒子を、供給溶液の液流を同軸的に取り巻くように(coaxially surrounding)乾燥チャンバー中に再導入する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該微粒子を、乾燥チャンバーに接線方向(tangentially)に再導入する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該供給溶液をガスを用いて乾燥させ、該ガスが窒素である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該VX−950が、供給溶液中に溶解される固体の約10重量%ないし90重量%を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該供給溶液が溶媒を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該溶媒が塩化メチレンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該溶媒がアセトンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
該溶媒が、塩化メチレンおよびアセトンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
該溶媒が、アセトンを約0%ないし約30%、および塩化メチレンを約70%ないし約100%含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該溶媒が、アセトンを約0%ないし約40%、および塩化メチレンを約60%ないし約100%含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
該溶媒が非揮発性溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
該供給溶液が界面活性剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
該界面活性剤が、ビタミンEまたはその誘導体を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該界面活性剤が、約0.1%ないし約10%の量で存在する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
該供給溶液が複数のポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
該ポリマーが、供給溶液中に溶解される固体の約10%ないし90%を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
該複数のポリマーが、セルロースポリマーを含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
該セルロースポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
該セルロースポリマーが、酢酸/コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
該複数のポリマーが、2個のセルロースポリマーを含む、請求項19記載の方法。
【請求項25】
2個のセルロースポリマーのうち1個が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
2個のセルロースポリマーのうち1個が、酢酸/コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
該複数のポリマーが、HPMCおよびHPMCASを含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
該供給溶液が界面活性剤または賦形剤を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)またはビタミンEまたはその誘導体である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
該界面活性剤がSLSである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
該界面活性剤が、ビタミンEまたはその誘導体である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
該供給溶液が1個のポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
該ポリマーが、供給溶液中に溶解される固体の約10%ないし90%を含む、請求項33記載の方法。
【請求項34】
該供給溶液が、界面活性剤または賦形剤をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項35】
該界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)またはビタミンEまたはその誘導体である、請求項36記載の方法。
【請求項36】
該界面活性剤がSLSである、請求項34記載の方法。
【請求項37】
該界面活性剤が、ビタミンEまたはその誘導体である、請求項34記載の方法。
【請求項38】
該界面活性剤が、約0.1%ないし約10%の量で存在する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
該ポリマーが、セルロースポリマーを含む、請求項32記載の方法。
【請求項40】
該セルロースポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
該セルロースポリマーが、酢酸/コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)である、請求項39記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−514703(P2010−514703A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543292(P2009−543292)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/088837
【国際公開番号】WO2008/080167
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】