説明

流水式洗浄方法及び流水式洗浄装置

【課題】基板の表面に付着した塵埃などを効率良く除去すると共に、洗浄後にこれらが基板の表面に再付着することを防止した流水式洗浄方法及び流水式洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄槽2内で洗浄液Lを層流の状態で横方向に流し、この洗浄液Lに被洗浄物Wを浸漬させて洗浄を行う流水式洗浄方法であって、洗浄槽2内を流れる洗浄液Lの全体の流れに対して、洗浄槽2内の底面及び両側面に沿って流れる洗浄液Lの一部の流れを速くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物として、例えば磁気記録媒体用基板や、磁気記録媒体の製造装置に用いられる部品、スパッタ装置のシールド板などの洗浄を行う際に好適に用いられる流水式洗浄方法及び流水式洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハードディスクドライブなどに用いられる磁気記録媒体用の基板には、中心孔が形成された円盤状のアルミニウム基板やガラス基板などが用いられている。このような磁気記録媒体用基板は、表面に研磨加工などの様々な表面処理工程を経て作製されるため、表面処理工程等の後には、基板の表面に付着した塵埃などを除去する基板洗浄工程が行われている。
【0003】
また、磁気記録媒体の更なる高記録密度化が要求に伴って、磁気記録媒体の高い平坦度が求められる一方で、磁気記録媒体用基板の表面に付着した塵埃などを除去する以外にも、磁気記録媒体の製造装置に用いられる部品やスパッタ装置のシールド板などに付着した塵埃などを除去するための高度な洗浄技術が求められている。
【0004】
このような磁気記録媒体用基板の洗浄装置としては、例えば、磁気ディスク基板などをワークとし、この表面に研磨加工などの表面処理を行った後、ワークの表面に付着している異物などを除去するために、複数の洗浄槽を用いてワークをコンベアにより順次複数の洗浄槽に搬送しながら、各洗浄槽にて液体を用いて洗浄する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載される洗浄装置では、洗浄槽に回転ブラシやシャワーなどを複数設け、基板の1枚1枚に洗浄液を供給しながら、回転ブラシを用いてスクラブ洗浄することになるが、回転ブラシが基板の表面に接触する構成のため、この基板表面に擦傷痕が生じてしまう虞がある。
【0006】
このため、回転ブラシを用いない洗浄方法として、例えば、洗浄槽の底部から洗浄液を供給し、この洗浄液を洗浄槽の上部からオーバーフローさせながら、洗浄槽内の洗浄液に基板を保持したホルダを浸漬させて基板の洗浄を行う方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、洗浄槽の下方から上方に向かって洗浄液を流す洗浄方法では、基板の表面から剥離した塵埃等を含む汚染物質が洗浄槽の上部から洗浄液と共に排出されずに一部が洗浄槽内に滞留してしまうことがあり、この洗浄槽内に洗浄液の淀みを生じさせることがあった。この場合、ホルダを洗浄槽から引き上げる際に、洗浄液内に滞留した汚染物質が基板の表面に再付着することがある。
【0008】
一方、洗浄槽内に洗浄液を層流の状態で横方向に流しながら、この洗浄槽内の洗浄液に基板を保持したホルダを浸漬させることによって、基板の洗浄を行う流水式洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献2などを参照。)。
【0009】
このような洗浄液を層流の状態で横方向に流す洗浄方法では、汚染物質を含む洗浄液を浸漬槽の外へと速やかに排出することができるため、基板の表面に汚染物質が再付着することを防止することが可能である。
【特許文献1】特開2001−96245号公報
【特許文献2】特開平9−206708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した特許文献2に記載された流水式洗浄装置では、被洗浄物から剥離した汚染物質が洗浄液の乱流に乗って被洗浄物に再付着することを防止するため、多孔状の整流板を流路内に設置し、この整流板を通すことによって洗浄液の流れを乱れのない一様な流れ(層流)となるように洗浄液の流れを調整している。
【0011】
しかしながら、このような流水式洗浄装置において、洗浄槽内を流れる洗浄液が層流となるのは、この洗浄槽内に被洗浄物を浸漬しない場合である。一方、洗浄槽内に被洗浄物を浸漬した場合は、この洗浄槽内を流れる洗浄液が被洗浄物に乱されて乱流となり、この乱流によって被洗浄物に対する洗浄能力が低下してしまうことがあった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、被洗浄物の表面に付着した塵埃などを効率良く除去すると共に、洗浄後にこれらが被洗浄物の表面に再付着することを防止した流水式洗浄方法及び流水式洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、洗浄槽内で洗浄液を層流の状態で横方向に流し、この洗浄液に被洗浄物を浸漬させて洗浄を行う際に、洗浄槽内に浸漬した被洗浄物により乱流が発生し、この乱流によって洗浄槽内の底面及び両側面において、被洗浄物の表面から離脱した塵埃や異物などの汚染物質が滞留し、この滞留した汚染物質が被洗浄物に再付着することで、被洗浄物に対する洗浄能力が低下することを解明した。
【0014】
また、洗浄槽の底面や両側面に沿って流れる洗浄液の流れは、これらの面との抵抗により遅くなる。この場合、上述した汚染物質は、この部分に滞留し易くなり、この滞留した汚染物質が乱流により巻き上げられて、被洗浄物に再付着するものと考えられる。
【0015】
そこで、本発明者は、洗浄槽内を流れる洗浄液の全体の流れに対して、この洗浄槽内の底面及び両側面に沿って流れる洗浄液の一部の流れを速くすることによって、上述した汚染物質を浸漬槽内から速やかに排出し、汚染物質が乱流により巻き上げられて、被洗浄物に再付着するといったことを低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 洗浄槽内で洗浄液を層流の状態で横方向に流し、この洗浄液に被洗浄物を浸漬させて洗浄を行う流水式洗浄方法であって、
前記洗浄槽内を流れる洗浄液の全体の流れに対して、前記洗浄槽内の底面及び両側面に沿って流れる洗浄液の一部の流れを速くすることを特徴とする流水式洗浄方法。
(2) 前記被洗浄物として、ホルダに保持された基板の洗浄を行う際に、この基板の主面が前記洗浄液の流れる方向と平行となるように前記ホルダを前記浸漬槽内に配置することを特徴とする前項(1)に記載の流水式洗浄方法。
(3) 前記ホルダに互いに平行な状態で複数並んで保持された基板に対して洗浄を行うことを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の流水式洗浄方法。
(4) 前記基板として、磁気記録媒体用基板を洗浄することを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載の流水式洗浄方法。
(5) 洗浄槽内で洗浄液を層流の状態で横方向に流し、この洗浄液に被洗浄物を浸漬させて洗浄を行う流水式洗浄装置であって、
前記洗浄層内の洗浄液を供給する側に、この洗浄槽内を流れる洗浄液の流れを調整する整流板が配置され、
前記整流板には、前記洗浄液を供給する孔部が幅方向と高さ方向とに複数並んで設けられると共に、前記洗浄槽内の底面及び両側面に沿って並ぶ少なくとも1列以上の孔部については、他の孔部よりも相対的に径を大きくしていることを特徴とする流水式洗浄装置。
(6) 前記整流板は、前記洗浄層内の前記洗浄液が供給される側の空間と、前記被洗浄物が浸漬される側の空間との間を仕切るように配置されていることを特徴する前項(5)に記載の流水式洗浄装置。
(7) 前記洗浄層内の洗浄液を排出する側に、前記供給側の整流板と一致した形状の孔部を有する整流板が、前記供給側の整流板と対向して配置されていることを特徴する前項(5)又は(6)に記載の流水式洗浄装置。
(8) 前記排出側の整流板は、前記洗浄層内の前記洗浄液が排出される側の空間と、前記被洗浄物が浸漬される側の空間との間を仕切るように配置されていることを特徴する前項(7)に記載の流水式洗浄装置。
(9) 前記被洗浄物は、ホルダに保持された基板であり、この基板の主面が前記洗浄液の流れる方向と平行となるように前記ホルダが前記浸漬槽内に配置されることを特徴とする前項(5)〜(8)の何れか一項に記載の流水式洗浄装置。
(10) 前記ホルダには、前記基板が互いに平行な状態で複数並んで保持されることを特徴とする前項(5)〜(9)の何れか一項に記載の流水式洗浄装置。
(11) 前記基板は、磁気記録媒体用基板であることを特徴とする前項(5)〜(10)の何れか一項に記載の流水式洗浄装置。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、被洗浄物の表面に付着した塵埃や異物などの汚染物質を効率良く除去すると共に、洗浄後にこれらの汚染物質が被洗浄物の表面に再付着するといったこと防止した洗浄能力の高い流水式洗浄方法及び流水式洗浄装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した流水式洗浄方法及び流水式洗浄装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合があり、各部の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
本実施形態では、例えば図1及び図2に示すような本発明を適用した流水式洗浄装置1を用いて、ハードディスクドライブに搭載される磁気記録媒体用の基板(被洗浄物)Wを洗浄する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
なお、基板Wを洗浄する洗浄液Lとしては、基本的に純水が使用されるが、それ以外にも化学的な処理等が施された処理水などを使用することができる。具体的に、洗浄液Lとしては、例えば、純水や超純水の他に、イソプロピルアルコール等の有機溶剤、界面活性剤を含む薬液洗剤、アノード水、カソード水、純水で低濃度に希釈した酸性溶液やアルカリ性溶液、オゾン水や水素水などを挙げることができる。そして、これらの洗浄液Lは、洗浄対象となる基板(被洗浄物)Wに応じて適宜選択して使用することが可能である。
【0021】
本発明を適用した流水式洗浄装置1は、図1及び図2に示すように、基板Wを保持したホルダ50を洗浄液Lに浸漬させて基板Wの洗浄を行う洗浄槽2を備えている。
【0022】
ホルダ50には、中心孔が形成された円盤状の基板Wが互いに平行な状態で複数並んで保持されている。また、各基板Wは、ホルダ50に設けられた一対の支持プレート51a,51bによって、その中心孔を通る鉛直方向の中心線を挟んだ両側の外周部が支持されている。なお、これら一対の支持プレート51a,51bには、各基板Wの外周部が係合されるV字状の溝部(図示せず。)が設けられている。
【0023】
各基板Wは、これら一対の支持プレート51a,51bに支持されることによって、縦置き状態(基板Wの主面が鉛直方向と平行となる状態)でホルダ50に保持されている。そして、このホルダ50は、各基板Wの主面が洗浄液Lの流れる方向と平行となるようにして、洗浄槽2の底面上に配置されている。なお、本例では、直径2.5インチの基板Wを約5mm間隔で1列に50枚程度並べてホルダ50に保持している。
【0024】
洗浄槽2は、長方形を為す底壁2aと、底壁2aの周囲から立ち上がる4つの側壁2b,2c,2d,2eと、底壁2aと対向する上面の開口部2fとを有して、全体が略直方体状に形成されている。
【0025】
また、洗浄槽2の底壁2aには、洗浄液Lを供給する供給管3と、洗浄液Lを排出する排出口4とが設けられている。このうち、供給管3は、洗浄液Lの流れる長手方向の上流側の側壁2bの近傍に沿って複数並んで設けられている。また、供給管3は、その先端の供給口を側壁2b側に向けて洗浄液Lを供給することで、層流をより安定的に発生させることができる。一方、排出口4は、洗浄液Lの流れる長手方向の下流側の側壁2dの近傍に沿って複数並んで設けられている。
【0026】
また、洗浄槽2の上流側には、この洗浄槽2内を流れる洗浄液Lの流れを調整する整流板5が、上記供給口3から供給された洗浄液Lが貯留される貯留空間S1と、上記ホルダ50が浸漬される浸漬空間S2との間を仕切るように設けられている。一方、洗浄槽2の下流側には、上記浸漬空間S2と、上記排出口4から洗浄液Lが排出される排出空間S3との間を仕切るように、整流板6が設けられている。
【0027】
このうち、供給側の整流板5は、貯留空間S1から浸漬空間S2に向かって流れる洗浄液Lの流れを整流し、浸漬空間S2内の洗浄液Lを層流の状態で横方向(水平方向)に流すためのものであり、洗浄液Lを供給する孔部5a,5bが幅方向と高さ方向とに複数並んで設けられた多孔板からなる。
【0028】
また、この整流板5に設けられた複数の孔部5a,5bのうち、洗浄槽2の底壁2a及び側壁2c,2eに沿って並ぶ少なくとも1列以上の孔部5bについては、他の孔部5aよりも相対的に径が大きくなっている。
【0029】
具体的に、この流水式洗浄装置1では、図3に示すように、洗浄槽2内の底壁2a及び側壁2c,2eに沿って並ぶ孔部5bの径を他の孔部5aよりも大きくすることによって、図1及び図2に示すように、洗浄槽2内を流れる洗浄液Lの全体の流れF1に対して、この洗浄槽2内の底面及び両側面に沿って流れる洗浄液Lの一部の流れF2(流速)が速くなるように調整されている。
【0030】
なお、層流とは、流れの流線が線状を為して整然と流れる状態のことを言う。本例では、このような層流状態の洗浄液Lを一定の流速(例えば10mm/sec程度)で横方向(水平方向)に流している。これに対して、洗浄槽2内の底面及び両側面に沿って流れる洗浄液Lの流速は、この洗浄槽2内を流れる洗浄液Lの全体の流れよりも、好ましくは2〜4倍(例えば、20〜40mm/sec)程度速くなっている。
【0031】
一方、排出側の整流板6は、洗浄槽2内を層流の状態で流れる洗浄液Lの流れをより安定化させるためのものであり、洗浄液Lを排出する孔部6a,6bが幅方向と高さ方向とに複数並んで設けられた多孔板からなる。
【0032】
また、排出側の整流板6は、上記図3に示す供給側の整流板5と一致した形状の孔部6a,6bを有して、上記供給側の整流板5と対向して配置されている。すなわち、この排出側の整流板6に設けられた複数の孔部6a,6bのうち、洗浄槽2の底壁2a及び側壁2c,2eに沿って並ぶ少なくとも1列以上の孔部6bについては、他の孔部6aよりも相対的に径が大きくなっている。
【0033】
なお、本例では、基板Wとして、例えば大きさが10cm程度の磁気記録媒体用基板を洗浄する場合には、上記整流板5,6に設けられた複数の孔部5a,5b、6a,6bのうち、通常の孔部5a,6aの径が例えばφ0.5cmであるのに対し、洗浄槽2内の底壁2a及び側壁2d,2eに沿って並ぶ孔部5b,6bの径が例えばφ1cmである。また、各孔部5a,5b、6a,6bの幅方向及び高さ方向における中心間距離はそれぞれ例えば2cmである。
【0034】
一方、例えば大きさが30cm〜1m程度のスパッタ装置のシールド板を洗浄する場合には、上記整流板5,6に設けられた複数の孔部5a,5b、6a,6bのうち、通常の孔部5a,6aの径が例えばφ5cmであるのに対し、洗浄槽2内の底壁2a及び側壁2d,2eに沿って並ぶ孔部5b,6bの径が例えばφ10cmである。また、各孔部5a,5b、6a,6bの幅方向及び高さ方向における中心間距離はそれぞれ例えば20cmである。
【0035】
また、排出側の整流板6の高さは、洗浄液Lの一部を上部からオーバーフローさせるように、上記4つの側壁2b,2c,2d,2eよりも低く設定されている。
【0036】
さらに、この流水式洗浄装置1には、洗浄槽2内を流れる洗浄液Lを循環的に再使用するため、排出口4から排出された洗浄液Lが貯留されるリザーバータンク7と、リザーバータンク7に貯留された洗浄液Lを供給口3に圧送するためのポンプ8と、ポンプ8により圧送された洗浄液Lを浄化するフィルタ9とが設けられている。
【0037】
本発明を適用した流水式洗浄方法は、以上のような構造を有する流水式洗浄装置1を用いて、ホルダ50に保持された複数の基板Wに対する洗浄を行う。具体的に、この流水式洗浄装置1を用いた流水式洗浄方法では、洗浄槽2の浸漬空間S2内で洗浄液Lを層流の状態で水平方向に流しながら、この浸漬空間S2内の洗浄液Lに複数の基板Wを保持したホルダ50を浸漬させる。
【0038】
このとき、洗浄槽2内では、ホルダ50に保持された各基板Wの主面が洗浄液Lの流れる方向と平行とされて、これら各基板Wの間を層流状態の洗浄液Lが流れることになる。これにより、各基板Wの表面が洗浄液Lにより洗浄されて、これら各基板Wの表面に付着した塵埃や異物などの汚染物質が除去される。
【0039】
また、この流水式洗浄装置1では、洗浄槽2内を流れる洗浄液Lの全体の流れF1に対して、この洗浄槽2内の底面及び両側面に沿って流れる洗浄液Lの一部の流れF2が速くなっている。これにより、上述した汚染物質を洗浄槽2内に滞留させることなく、この洗浄槽2の外側へと速やかに排出させることができる。したがって、本発明によれば、上述した汚染物質が乱流により巻き上げられて、基板Wに再付着するといったことを低減することができる。
【0040】
以上のようにして、本発明では、基板の表面に付着した塵埃などを効率良く除去すると共に、洗浄後にこれらが基板の表面に再付着することを防止した高度な基板洗浄を行うことが可能である。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、上記図3に示す整流板5,6には、通常の孔部5a,6aよりも径が拡大された孔部5b,6bが、洗浄槽2内の底面及び両側面の側から、それぞれ2列並んで設けられた構成となっているが、径が拡大された孔部5b,6bが並ぶ列の数については、少なくとも1列以上とし、その上限については、上記ホルダ50を洗浄槽2の底面上に配置したときに、この孔部3bから供給された洗浄液Lによって流速が高められた一部の流れが、ホルダ50に保持された各基板Wの間を直接通過しない数とすることが好ましい。
【0043】
すなわち、上記ホルダ50に保持された各基板Wの間は、通常の孔部3aから供給される層流状態の洗浄液Lが流れるようにし、その外側を流速が高められた洗浄液Lが流れるようにすることが好ましい。本発明では、このような理由に基づいて、通常の孔部3aに対する径が拡大された孔部3bの配置や数、径などが設定されている。
【0044】
なお、この流水式洗浄装置1では、洗浄液Lを層流の状態で横方向に流すことができる構成であれば、上述した整流板5の他にも、層流発生手段として、例えば多孔質板や不織布などの通水抵抗を有した緩衝材等を使用してもよく、これらを組み合わせて洗浄槽2内を流れる洗浄液Lの流れを適宜調整することも可能である。
【0045】
さらに、本発明では、基板Wに対する洗浄能力を高めるため、浸漬空間S2内の洗浄液Lに超音波振動(例えば、200kHzで500W程度)を加えることも可能である。
【0046】
また、上記ホルダ50は、一対の支持プレート51a,51bにより各基板Wの外周部を2点で支持する構成となっているが、このような構成に限らず、各基板Wを支持する外周部の位置や点数などについては、適宜変更して実施することが可能であり、例えば各基板Wの外周部を3点で支持したり、4点で支持したりすることが可能である。
【0047】
また、各基板Wの外周部を支持する部材についても、上記支持プレート51a,51bのようなものに限定されるものではなく、洗浄槽2内を流れる洗浄液Lの流れを乱さないものであれば、その形状等については適宜変更して実施することが可能である。
【0048】
また、本発明は、上述した磁気記録媒体用の基板Wについて、表面処理工程等の後に表面に付着した塵埃や異物などを除去する工程とは別に、例えば磁性膜等を成膜した後や、潤滑剤を塗布する前の磁気記録媒体の洗浄にも適用することが可能である。
【0049】
さらに、本発明は、上述した磁気記録媒体用の基板Wを洗浄する場合に限らず、平板状の被洗浄物を洗浄する場合に好適に用いることが可能であるが、上記流水式洗浄装置1を用いて洗浄可能なものであれば、被洗浄物については特に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0051】
(実施例1)
実施例1では、上記図1,2に示す流水式洗浄装置1を用いて、実際に基板Wの洗浄を行った。具体的には、長さ200cm、幅100cm、深さ200cmのSUS304製の洗浄槽2を用い、この洗浄槽2の上流側に貯留空間S1と浸漬空間S2との間を仕切るように幅100cm、高さ200cmの整流板5を配置した。この供給側の整流板5には、複数の孔部5a,5bが幅方向に4列、高さ方向に9列並んで設けられており、このうち、通常の孔部5aの径をφ5cmとしたのに対し、洗浄槽2内の底壁2a及び側壁2d,2eに沿って並ぶ1列の孔部5bの径をφ10cmとした。また、各孔部5a,5bの幅方向及び高さ方向における中心間距離はそれぞれ20cmである。一方、洗浄槽2の下流側には、供給側の整流板5と一致した形状の孔部6a,6bを有する整流板6を、浸漬空間S2と排出空間S3との間を仕切るように配置した。また、洗浄槽2の底面の外側には周波数38kHz、出力1200Wの超音波発信器を配置した。
【0052】
そして、この洗浄槽2内に、1ミクロンから50ミクロンの粉体が付着した洗浄力評価用のテストピース(外径50mm、厚み3mmの円盤状の基板)Wを50枚用意し、これを洗浄槽2内を流れる洗浄液Lに浸漬し、10分間の洗浄を行った。
【0053】
なお、洗浄液Lには純水を使用し、水温を45℃±5℃とした。また、洗浄槽2内を層流の状態で流れる洗浄液Lの平均流速(被洗浄物を浸漬しない状態での流速)は3m/分とした。フィルタ9には3ミクロンフィルタと1ミクロンフィルタとを2段で使用し、洗浄槽2内を流れる洗浄液Lを循環的に再使用した。
【0054】
実施例1では、洗浄後にテストピースWに残存する粉体の割合を評価したところ、粉体の平均除去率は、約99.8%であった。
【0055】
(比較例1)
比較例1では、供給側及び排出側の整流板5,6に設けられた孔部5a,6aの径を全てφ5cmとした以外は、実施例1と同様に50枚のテストピースWに対して洗浄を行った。そして、洗浄後にテストピースWに残存する粉体の割合を評価したところ、粉体の平均除去率は、約97.8%であり、実施例1の場合よりも洗浄能力が劣ることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明を適用した流水式洗浄装置の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明を適用した流水式洗浄装置の構成を示す断面図である。
【図3】図3は、整流板の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…流水式洗浄装置 2…洗浄槽 3…供給口 4…排出口 5…供給側の整流板 5a…通常の孔部 5b…経が拡大された孔部 6…排出側の整流板 6a…通常の孔部 6b…径が拡大された孔部 7…リザーバータンク 8…ポンプ 9…フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽内で洗浄液を層流の状態で横方向に流し、この洗浄液に被洗浄物を浸漬させて洗浄を行う流水式洗浄方法であって、
前記洗浄槽内を流れる洗浄液の全体の流れに対して、前記洗浄槽内の底面及び両側面に沿って流れる洗浄液の一部の流れを速くすることを特徴とする流水式洗浄方法。
【請求項2】
前記被洗浄物として、ホルダに保持された基板の洗浄を行う際に、この基板の主面が前記洗浄液の流れる方向と平行となるように前記ホルダを前記浸漬槽内に配置することを特徴とする請求項1に記載の流水式洗浄方法。
【請求項3】
前記ホルダに互いに平行な状態で複数並んで保持された基板に対して洗浄を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の流水式洗浄方法。
【請求項4】
前記基板として、磁気記録媒体用基板を洗浄することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の流水式洗浄方法。
【請求項5】
洗浄槽内で洗浄液を層流の状態で横方向に流し、この洗浄液に被洗浄物を浸漬させて洗浄を行う流水式洗浄装置であって、
前記洗浄層内の洗浄液を供給する側に、この洗浄槽内を流れる洗浄液の流れを調整する整流板が配置され、
前記整流板には、前記洗浄液を供給する孔部が幅方向と高さ方向とに複数並んで設けられると共に、前記洗浄槽内の底面及び両側面に沿って並ぶ少なくとも1列以上の孔部については、他の孔部よりも相対的に径を大きくしていることを特徴とする流水式洗浄装置。
【請求項6】
前記整流板は、前記洗浄層内の前記洗浄液が供給される側の空間と、前記被洗浄物が浸漬される側の空間との間を仕切るように配置されていることを特徴する請求項5に記載の流水式洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄層内の洗浄液を排出する側に、前記供給側の整流板と一致した形状の孔部を有する整流板が、前記供給側の整流板と対向して配置されていることを特徴する請求項5又は6に記載の流水式洗浄装置。
【請求項8】
前記排出側の整流板は、前記洗浄層内の前記洗浄液が排出される側の空間と、前記被洗浄物が浸漬される側の空間との間を仕切るように配置されていることを特徴する請求項7に記載の流水式洗浄装置。
【請求項9】
前記被洗浄物は、ホルダに保持された基板であり、この基板の主面が前記洗浄液の流れる方向と平行となるように前記ホルダが前記浸漬槽内に配置されることを特徴とする請求項5〜8の何れか一項に記載の流水式洗浄装置。
【請求項10】
前記ホルダには、前記基板が互いに平行な状態で複数並んで保持されることを特徴とする請求項5〜9の何れか一項に記載の流水式洗浄装置。
【請求項11】
前記基板は、磁気記録媒体用基板であることを特徴とする請求項5〜10の何れか一項に記載の流水式洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−131524(P2010−131524A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309912(P2008−309912)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】