説明

流量制御弁

【課題】冷媒導出用絞り部としての溝を通過する冷媒によって発生する騒音(冷媒通過音)を可及的に低減できるようにされた流量制御弁を提供する。
【解決手段】弁シート部14aを有する弁座部材14と、前記弁シート部14aに接離する弁体部20aを有する弁体20とを備え、前記弁シート部14aに前記弁体部20aが当接する閉弁時においても冷媒を絞って導出させるべく、前記弁シート部14aに、所定深さの溝17が形成されるとともに、該溝17の底部17Bに、冷媒を分散して導出するように、断面が三角形状、半円弧状、台形状等の所定深さの凹部18が複数列並設されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等に使用されるソレノイド(電磁)駆動式やモータ駆動式等の流量制御弁に係り、特に、弁シート部又は弁体部に、閉弁状態においても冷媒を絞って導出させる冷媒導出用絞り部としての溝が形成されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和機等に使用される流量制御弁にあっては、例えば下記特許文献1、2等にも見られるように、除湿(ドライ)運転を行う際等の冷媒導出用絞り部(閉弁状態においても冷媒を絞って導出させる)としての溝を弁シート部(弁座)に設けたものが知られている。
【特許文献1】特開平11−51514号
【特許文献2】特開2004−150580号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の流量制御弁のように、単に冷媒導出用絞り部としての溝を弁シート部(又は弁体部)に設けただけでは、該溝を通過する冷媒によって不快な騒音(冷媒通過音)が発生するという問題があった。
【0004】
本発明は、前記問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、冷媒導出用絞り部としての溝を通過する冷媒によって発生する騒音(冷媒通過音)を可及的に低減できるようにされた流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る流量制御弁は、弁シート部を有する弁座部材と、前記弁シート部に接離する弁体部を有する弁体とを備え、前記弁シート部に前記弁体部が当接する閉弁時においても冷媒を絞って導出させるべく、前記弁シート部又は弁体部に、所定深さの溝が形成されるとともに、該溝の底部に、更に冷媒が分散して導出するように、所定深さの凹部を複数列並設していることを特徴としている。
【0006】
この場合、好ましくは、前記弁シート部及び弁体部は、逆円錐面状のテーパ面で構成され、前記溝は、等間隔に複数箇所に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る流量制御弁では、所定深さの溝に所定深さの凹部が複数列並設されるので、冷媒空気調和機の除湿(ドライ)運転時等において、冷媒は溝で分散されると同時に、凹部でさらに分散されて導出されることになり、そのため、溝を通過する冷媒による騒音(冷媒通過音)を効果的に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の流量制御弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る流量制御弁の一実施形態を示す縦断面図である。
図示実施形態の流量制御弁1は、空気調和機等の冷凍サイクルに使用されるのもので、逆有底円筒状の小径部12A及びその下部に連なる大径部12Bからなる段付きのキャン12と該キャン12の大径部12Bに下から嵌め込まれて溶接等により密封接合された鍔状部付き筒状の弁座部材14とで弁本体10が構成されている。弁座部材14の上端部内周側は、テーパ面(逆円錐面)の弁シート部14aとなっており、この弁シート部14aに、棒状の弁体20の下部大径部20Aの下端外周側に設けられたテーパ面(逆円錐面)の弁体部20aが接離するようになっている(後述)。
【0009】
また、前記キャン12の大径部12Bの一側部には導管(継手)41が、また、弁座部材14の下部には導管(継手)42が、それぞれろう付け等により接合連結されている。
【0010】
前記キャン12の小径部12Aの下部には、固定鉄芯である吸引子22がかしめ等により固着され、この吸引子22、キャン12の大径部12B、及び弁座部材14で弁室15が画成され、この弁室15には、前記弁体20の下部大径部20Aが位置せしめられている。
【0011】
前記吸引子22に設けられた貫通穴には前記弁体20の小径部20Bが摺動自在に嵌挿され、弁体20の上端部は、キャン12の上部に摺動自在に嵌挿された中空のプランジャ24に差し込まれてかしめ固定されている。
【0012】
プランジャ24と吸引子22との間には圧縮コイルばね25が介装されており、この圧縮コイルばね25は、常時プランジャ24を吸引子22から引き離す方向、すなわち、弁体部20aを弁シート部14aから引き離す方向(開弁方向)に付勢している。
【0013】
前記キャン12(の小径部12A)の外周側には、ハウジング32、コイル33、ボビン34等を有する電磁式アクチュエータ30が取り付けられている。なお、ハウジング32の上部には、リベット36等で半球状凸部を有するストッパ37が固着されており、このストッパ37の半球状凸部をキャン12側に複数箇所(例えば4箇所)設けられた半球状の凹部のいずれかに嵌合させることにより、キャン12に対して電磁式アクチュエータ30が位置決め固定される。
【0014】
かかる構成のもとで、コイル33に通電がなされない状態にあっては、圧縮コイルばね25の付勢力により、プランジャ24は上端位置(図1に示される位置)にあって、弁体20の弁体部20aは弁座部材14の弁シート部14aから離れている。したがって、冷媒は、弁室15を介して両導管41、42の間を自由に流れることができる(ここでは、図の矢印で示されるように導管41→導管42の流れを基本としている)。
【0015】
コイル33に通電されると、コイル33から発せられる磁界により吸引子22が磁化される。吸引子22の磁力はプランジャ24を圧縮コイルばね25の付勢力に抗して吸引子22側へ引き寄せる。これによって、弁体20の弁体部20aが弁シート部14aに当接して閉弁状態となる。
【0016】
以上の構成に加えて、本実施形態では、前記閉弁状態において冷媒を絞って導管41→導管42に導出するため、つまり、空気調和機において除湿(ドライ)運転を行う際等の冷媒導出用絞り部として、前記弁シート部14aに、図2、図3、図4(A)に示される如くに、複数箇所(例えば周方向に90°間隔で4箇所)に、深さdの溝17が形成されており、この溝17の底部に、更に、弁室15から導管42に向かうように、例えば断面二等辺三角形状で深さe(e<d)の凹部18が複数列(例えば4列)並設されている。
【0017】
このように、深さがdの溝17に深さがeの凹部18を複数列(例えば4列)並設することにより、冷媒空気調和機の除湿(ドライ)運転時において、冷媒は前記4つの溝17で分散されると同時に、前記4列の凹部18でさらに分散されて導出されることになり、そのため、必要除湿量を確保しながら溝17を通過する冷媒による騒音(冷媒通過音)を効果的に低減できる。
【0018】
なお、凹部18の断面形状は、図4(A)のような断面二等辺三角形状に限られることはなく、図4(B)、(C)、(D)のように、断面形状を角丸三角形、半円弧状、台形状等やそれらの組み合わせにしてもよい。また、溝17の深さd、凹部18の深さe及び本数は、試作実験等に基づいて適宜に設定できる。更に、本実施形態では溝17は、4箇所に形成しているが、弁シート部14aの周方向に等間隔に4以外の複数箇所であっても良い。
【0019】
また、前記実施形態では溝及び凹条を弁シート部に設けているが、これに代えて溝及び凹条を弁体部に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る流量制御弁の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1に示される弁シート部の平面図。
【図3】図1のA部の拡大図。
【図4】図3のB−B矢視線に従う断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 流量制御弁
10 弁本体
14 弁座部材
14a 弁シート部
20 弁体
20a 弁体部
17 溝
17B 底部
18 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁シート部を有する弁座部材と、前記弁シート部に接離する弁体部を有する弁体とを備えた流量制御弁であって、
前記弁シート部に前記弁体部が当接する閉弁時においても冷媒を絞って導出させるべく、前記弁シート部又は弁体部に所定深さの溝が形成されるとともに、該溝の底部に、更に冷媒が分散して導出するように、所定深さの凹部を複数列並設していることを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
前記弁シート部及び弁体部は、逆円錐面状のテーパ面からなっていることを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記溝は、等間隔に複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−327551(P2007−327551A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158785(P2006−158785)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】