説明

流量制御弁

【課題】弁体に一体に形成した円筒部にシール部材が装着されており、このシール部材は円筒面との間の摩擦力を軽減するためグリスと共に装着されている。このシール部分のグリスが、作動流体により減少し、シール部の摩擦力が大きくなる事を防止する構造を提供する。
【解決手段】弁体に一体に形成した円筒部にシール部材において、シール部材22に対して所定の間隔を空けてグリス保持部材23を装着し、シール部材22とグリス保持部材23との間にグリスを密封し、このシール保持部材23の円筒面31に対する押接力をシール部材22の円筒面31に対する押接力よりも小さくなるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置など、水の通路を備えた機器に用いられ、この通路を流れる水の流量を増減制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流量調節弁としては、モータの回転軸にウォームギヤを取り付け、このウォームギヤに螺合するウォームフォイルの中心軸としてロッドを設けたものが知られている。このウォームフォイルは本体側に螺合しており、モータを駆動させウォームギヤを回転させるとウォームフォイルが上下に移動することによってロッドが長手方向に往復移動する。ロッドの先端側は水の通路内に延在されており、ロッドの先端には弁体が取り付けられている。この弁体は、ロッドが前進すると水の通路の途中に設けられた弁座に接近していき流量を連続して減少させ、最終的に弁体が弁座に着座して水の流れを遮断する。
【0003】
その水の流れを遮断している状態からロッドを後退させると弁体が弁座から離れ、弁体と弁座との間を通って水が流れる。この弁体と弁座との距離が広がれば流量が増加し、逆に狭まれば流量は減少する。
【0004】
水が遮断されている状態から弁体を引き上げる際に、弁体の背面には水の1次圧が作用するため、開弁時に大きなトルクが必要となる。そこで、弁体から後方に向かって円筒部を一体に形成すると共に、円筒部の表面にリング状のシール部材を保持する部分を突設し、更にシール部材が押接される円筒面を備えたガイド部材で円筒部を囲繞することにより、1次圧がシール部材を保持する部分にも作用し、その力と弁体の背面に作用する力とを相殺させて、弁体の開弁時のトルクを軽減したものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−208229号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の流量制御弁では、円筒部に装着したシール部材は弁体が移動する際にガイド部材の円筒面に押接された状態で摺動するため、摩擦力が生じモータの負荷になる。そこで、摩擦力を軽減するためにシール部材は潤滑用のグリスと共に装着されている。ところが、シール部材は水に接触した状態で摺動するため、潤滑用のグリスが徐々にではあるが水によって流されていき、グリス切れの状態になる恐れがある。グリスが切れるとシール部材がガイド部材の円筒面を摺動する際の摩擦力が増加し、モータの負荷が増大するという不具合が生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、外部からグリスを補給することなく可及的にグリス切れを回避することのできる流量制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による流量制御弁は、水の通路の途中に弁座を設けると共に、この弁座の中心軸線に沿って往復移動するロッドの先端に弁体を取り付け、ロッドを往復移動させることにより弁座と弁体との距離を増減させ、水の流量を制御する流量制御弁であって、ロッドの後端側に向かって延びる円筒部を弁体に一体に形成すると共に、この円筒部を囲繞する円筒面を備えたガイド部を固定して設け、円筒部の外周面にガイド部の円筒面に押接されて弁体側から水が浸入することを防止するリング状のシール部材を潤滑用のグリスと共に装着したものにおいて、ガイド部の円筒面に対するシール部材の押接力よりも小さい押接力でこの円筒面に押接されるグリス保持部材を、シール部材に対して所定の間隔を空けて円筒部に装着したことを特徴とする。
【0009】
シール部材を2本装着すれば両シール部材に挟まれた空間が水から遮断されるので、その空間にグリスを保持させておけばグリスの流出は大幅に軽減される。ただし、シール部材が2本になれば1本の場合と比較して確実に駆動トルクが大きくなりモータの負荷が増加する。そこで、本発明ではシール部材が円筒面に押接する押接力よりも小さな押接力で円筒面に押接するグリス保持部材を設けることにより、モータの負荷の増大を可及的に抑えつつグリスの流出を抑制するようにした。なお、グリス保持部材を1本装着する場合にはシール部材のいずれの側に設けてもよく、あるいは2本のグリス保持部材を用いる場合にはシール部材を挟むように両側に設けることができる。
【0010】
なお、上記シール部材とグリス保持部材との間にグリスが保持される空間を形成すればグリスの保持量が増加するので更にグリス切れになりにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、シール部材に並べてグリス保持部材を装着してもモータの負荷の増加を可及的に抑えることができ、かつシール部材のグリス切れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】シール部材の近傍を示す図
【図3】グリス保持部の一例を示す図
【図4】グリス保持部の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明による流量制御弁である。この流量制御弁1は流入口11から流入する水を流出口12から流出させるものである。流入口11と流出口12との間に設けた弁座13に弁体2を着座させると、流出口12からの水の流出が停止し、弁体2を弁座13から離すと、両者の距離に応じた流量の水が流出口12から流出する。
【0014】
図において弁体2の下側には複数本のガイド爪21が形成され、弁体2と弁座13とが芯ずれしないように構成されている。また、ケース側にはガイド部材3が固定されており、このガイド部材3の内周面である円筒面31に沿って弁体2が往復移動するように構成されている。弁体2には図において上方に延在されている円筒部20が一体に形成されており、この円筒部20にリング状のシール部材22が装着され、流入口11側の1次圧がガイド部材3の内部空間32に作用しないように構成されている。
【0015】
一方、流量制御弁1の上部には駆動機構4が設けられている。この駆動機構4の構成要素の1つであるモータ5の回転軸にはウォームギア51が取り付けられている。ウォームギア51にはウォームフォイル41が噛合しており、モータ5を駆動させるとウォームフォイル41が回転する。ウォームフォイル41の内周面にはねじ部が形成されており、そのねじ部に可動部材42が螺合している。可動部材42は回り止め部材43に対してセレーションを介して係合している。
【0016】
従って、ウォームフォイル41が回転すると可動部材42が図において上下方向に往復移動する。この可動部材42にはロッド6の後端が固定されており、ロッド6の先端には上述の弁体2が取り付けられている。この弁体2には上下方向に対面する2つの面2a,2bが形成されている。このため、1次圧が両面2a,2bに各々の逆方向に作用しあって打ち消しあうので、1次圧の影響を受けずに弁体2を上下方向に移動させることができ、モータ5の負荷を軽減させることができる。
【0017】
ロッド6は上述のようにモータ5などから成る駆動機構4側から水の通路側に貫通して設けられているので、通路内の水が駆動機構側に漏出しないように、リング状のシール部材61が設けられている。なお、本実施の形態では、シール部材6の上方に更に補助シール部材62を設けた。そして、シール部材61の下方にスリーブ71を設け、シール部材61と補助シール部材62との間にスペーサ72を取り付けた。
【0018】
上記構成で、本発明では更にシール部材22の上側に所定の距離を空けてグリス保持部材23を装着した。図2を参照して、グリス保持部材23としてシール部材22と同じものを装着しているが、シール部材22が装着される溝の底面22aの直径をD1とし、グリス保持部材23が装着される溝の底面23aの直径をD2として、D2はD1より小さくなるようにした。そのため、シール部材22と同じものを使用してもグリス保持部材23の円筒面31に対する押接力はシール部材22の押接力よりも小さくなる。仮にD1とD2とが同じ寸法であれば、シール部材22と円筒面31との間に生じる摩擦力と同じ大きさの摩擦力がグリス保持部材23と円筒面31との間に生じることになる。ところが、上述のようにグリス保持部材23の円筒面31に対する押接力を小さくしたので、グリス保持部材23と円筒面31との間に生じる摩擦力を小さくすることができる。その結果、モータ5に対する負荷を小さくすることができる。ただし、押接力が小さくなるとはいえ、シール部材22とグリス保持部材23とで挟まれる空間は水に晒されないのでその空間にグリスが保持される。
【0019】
そして本発明では更に、シール部材22とグリス保持部材23との間の隔壁24を低くして、グリスが確実に保持される空間25を確保した。なお、図1および図2に示したものではシール部材22の上方にグリス保持部材23を設けたが、シール部材22の下方にグリス保持部材を設けてもよく、あるいは2本のグリス保持部材でシール部材22を挟むように装着してもよい。
【0020】
ところで、隔壁24を低く形成することによりグリスが保持される空間25を確保したが、たとえば図3に示すように、隔壁24に全周にわたる溝26を形成して、その溝26に更に多量のグリスを保持させるようにしてもよい。
【0021】
また、図4に示すように、隔壁24に複数の凹部27を形成し、各凹部27にグリスを保持させてもよい。なお、これら凹部27はグリス保持部材23側の隔壁24の側面に形成したが、その側面に全周にわたって放射状に形成してもよい。ただし、円筒部20を含めて弁体2を樹脂の射出成形で形成する場合であって、放射状に凹部27を形成することが難しい場合には、図4に示すように一方向に向かって凹部27を形成すればよい。凹部27内のグリスは上記空間25内に流出するが空間25は全周にわたり密閉した状態に形成されているのでグリスは全周に供給されることになる。
【0022】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0023】
1 流量制御弁
2 弁体
3 ガイド部材
4 駆動機構
5 モータ
6 ロッド
22 シール部材
23 グリス保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の通路の途中に弁座を設けると共に、この弁座の中心軸線に沿って往復移動するロッドの先端に弁体を取り付け、ロッドを往復移動させることにより弁座と弁体との距離を増減させ、水の流量を制御する流量制御弁であって、ロッドの後端側に向かって延びる円筒部を弁体に一体に形成すると共に、この円筒部を囲繞する円筒面を備えたガイド部を固定して設け、円筒部の外周面にガイド部の円筒面に押接されて弁体側から水が浸入することを防止するリング状のシール部材を潤滑用のグリスと共に装着したものにおいて、ガイド部の円筒面に対するシール部材の押接力よりも小さい押接力でこの円筒面に押接されるグリス保持部材を、シール部材に対して所定の間隔を空けて円筒部に装着したことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
上記シール部材とグリス保持部材との間にグリスが保持される空間を形成したことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−41960(P2012−41960A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182067(P2010−182067)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】