説明

流量制御装置及び流量制御方法

【課題】本発明は、ガスフローメータの追加設置を行わずにシステムの小型化を図りつつ、ガス流量測定部に異常があった場合には、異常を検出して自己診断を行うこができる流量制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】流体を供給する主配管10と、
該主配管10に並列に接続されたセンサ管20と、
該センサ管20を流れる前記流体の流量を独立して測定する第1の流量測定手段30及び第2の流量測定手段40と、
該第1の流量測定手段40と該第2の流量測定手段40の測定結果同士を比較し、該測定結果同士が等しいか否かを判定する比較回路50と、
該測定結果同士が等しいときには、流量制御状態を維持し、該測定結果同士が等しくないときには、流量アラーム信号を出力する制御手段60と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置及び流量制御方法に関し、特に、流体を供給する主配管と、主配管に並列に接続されたセンサ管とを有する流量制御装置及び流量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置、特にデバイス製造に特殊ガスを用いる装置の場合には、その流量制御精度が製品の品質に大きな影響を与えることが知られており、このような用途のガス流量制御装置として、マスフローコントローラが一般的に用いられている。
【0003】
図6は、従来のマスフローコントローラ410の基本構成を示した図である。図6において、主配管310に供給されたガスの一部はセンサ管320に導かれ、フローセンサ331、332及び実流量算出回路333により流量計測を行う。センサ管320、フローセンサ331、332及び実流量算出回路333は、ガス流量測定部330を構成している。次に、ガス流量測定部330で測定されたガス流量実測値と、外部から入力された流量設定信号とを制御主回路360において比較し、フィードバック制御によりバルブ制御回路390で制御バルブ400の開度を自動調節することによって、設定流量と同一流量となるように、流量制御を行う。この場合、異常流量に対するセルフチェック機能がないため、マスフローコントローラの出口側流量に異常が発生したとしても、異常を検出することができず、不良品を多く製造してしまうおそれがあるという問題があった。
【0004】
そこで、この点を改善して異常流量検知精度を向上させるために、例えば拡散装置等にみられるように、ガスの主配管系統にマスフローコントローラとマスフローメータとを併用する方法が提案されている。図7は、そのようなマスフローメータを併用した従来の流量制御装置の構成例を示した図である。図7において、図6に示したマスフローコントローラ410に、更にマスフローメータ420が付加されている。マスフローメータは、マスフローコンロトーラとは異なり、そのガス系統に流れているガス流量のみ計測する手段であり、流量のコントロール部分を持たない流量センサの機能を有する。つまり、図6における、ガス流量測定部330と略同一の構成と考えてよい。この場合、マスフローメータ420で測定された流量値と、マスフローコントローラ410のガス流量測定部330で測定された流量値とを実流量比較回路350で比較し、両者に差があるときに制御回路361で流量アラームを発報し、異常流量を検出して操作者に了知させることができる。
【0005】
このような、自己診断機能を有した流量制御装置の例として、ガスの主配管に、制御用流量計の他、診断用流量計を設け、その測定値に差があるときに異常と判定する判定装置を接続した流量制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−106048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の図7に示した従来技術及び特許文献1に記載の構成では、主配管にマスフローメータの設置が必要となり、ガス系統が複雑になるとともに、部品点数が増加し、コストアップを招くという問題があった。また、最近の半導体製造装置に用いられる流量制御装置においては、省スペース化を図るために集積化した流量制御装置が多く用いられている。かかる集積化した流量制御装置においては、マスフローコントローラの主配管に、マスフローメータを追加して設ける十分なスペースが無い場合が多く、マスフローメータを新たに追加設置することが困難な場合が多く存在した。
【0007】
そこで、本発明は、マスフローメータの追加設置を行わずにシステムの小型化を図りつつ、ガス流量測定部に異常があった場合には、異常を検出して自己診断を行うこができる流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る流量制御装置(110、110a)は、流体を供給する主配管(10)と、
該主配管(10)に並列に接続されたセンサ管(20)と、
該センサ管(20)を流れる前記流体の流量を独立して測定する第1の流量測定手段(30)及び第2の流量測定手段(40)と、
該第1の流量測定手段(30)と該第2の流量測定手段(40)の測定結果同士を比較し、該測定結果同士が等しいか否かを判定する比較回路(50)と、
該測定結果同士が等しいときには、流量制御状態を維持し、該測定結果同士が等しくないときには、流量アラーム信号を出力する制御手段(60)と、を有することを特徴とする。
【0009】
これにより、新たに主配管にマスフローメータ等の流量計を設けずに、既に設けられたセンサ管に流量測定手段に設けるので、スペースを増加させる必要がない。そして、流量測定手段に異常が発生した場合には、測定結果の比較により異常を確実に検出し、操作者に異常を知らせることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る流量制御装置(100、100a)において、
前記第1の流量測定手段(30)及び前記第2の流量測定手段(40)は、前記センサ管(20)の上流側と下流側に備えられた抵抗体からなるフローセンサ(31、32、41、42)と、該フローセンサ(31、32、41、42)の温度分布の変化を検出する実流量演算回路(33、43)とを、各々が備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、第1の流量測定手段と第2の流量測定手段でフローセンサ及び実流量演算回路を完全に独立させることができ、一方の流量測定手段のいずれかの要素に異常が発生しても、正常な流量測定手段との比較により確実に異常を発見することができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る流量制御装置(110、110a)において、
前記実流量演算回路(33、43)は、前記流体の実流量を算出する実流量算出回路(34、44)と、該実流量が設定流量と等しいか否かを判定する判定回路(35、45)とを備え、
前記制御手段(60)は、該判定回路(35、45)により該実流量が該設定流量と等しくないと判定されたときには、前記流量アラーム信号を出力することを特徴とする。
【0013】
これにより、実測流量自体が設定流量と異なっている場合には、配管の詰まり等その他の原因による一般的な流量異常であるので、このような流量異常についても当然に検知して操作者に了知させることができる。
【0014】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る流量制御装置(110、110a)において、
前記制御手段(60)から出力されるバルブ制御信号が入力されるバルブ制御回路(90)を有し、
前記制御手段(60)は、前記流体の導入開始から所定の応答時間内において、前記実流量が前記設定流量に等しくないときには、前記実流量を前記設定流量に追従させるように前記バルブ制御信号を出力し、
前記バルブ制御回路(90)は、前記バルブ制御信号に基づいて、前記主配管(10)に備えられた制御バルブ(100)を制御して前記ガスの流量を制御することを特徴とする。
【0015】
これにより、流体導入開始でオーバーシュートとアンダーシュートが続く所定の応答時間内においては、フィードバック制御を実行して、流量を早期に設定流量に追従させる制御を行うことができる。
【0016】
第5の発明に係るガス流量制御方法は、主配管(10)に流体を供給する流体供給工程と、
該主配管(10)に並列に接続されたセンサ管(20)を流れる前記流体の流量を、第1の流量測定手段(30)及び第2の流量測定手段(40)で独立して測定する流量測定工程と、
該第1の流量測定手段(30)と該第2の流量測定手段(40)の測定結果同士を比較し、該測定結果同士が等しいか否かを判定する比較工程と、
該測定結果同士が等しいときには、流量制御状態を維持し、該測定結果同士が等しくないときには、流量アラーム信号を出力する制御工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
これにより、流量測定手段に異常があった場合でも、独立した流量測定手段同士の測定結果の比較により、流量異常を確実に検出することができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明に係るガス流量制御方法において、
前記流量測定工程は、前記流体の実流量を測定する工程と、該実流量が設定流量と等しいか否かを判定する工程を含み、
該実流量が該設定流量と等しいと判定されたときに、前記比較工程を実行することを特徴とする。
【0019】
これにより、実流量自体に異常が発生していない場合にのみ、流量測定手段同士の比較を行うことができ、実流量自体に異常が発生している場合には、流量測定手段同士の比較を行うまでもなく、早期に流量異常を検知して操作者に了知させることができる。
【0020】
第7の発明は、第5又は第6の発明に係る流量制御方法において、
前記比較工程において、前記流体供給工程を開始してから所定の応答時間内に、前記測定結果同士が等しくないと判定されたときには、
前記制御工程において、前記流量アラーム信号を出力せずに、前記実流量を設定流量に追従させる制御を行うことを特徴とする。
【0021】
これにより、流体の導入開始直後で流量がオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返して一定しないときには、設定流量に実流量を追従させる通常のフィードバック制御を実行し、早期に実流量が設定流量に追従するように制御を行うことができ、流量が安定してから流量異常が発生していないか否かを再度検査することができる。
【0022】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、省スペース化を図りつつ流量測定手段の異常を発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明を適用した実施例1に係る流量制御装置110の全体構成を示した図である。図1において、実施例1に係る流量制御装置110は、主配管10と、センサ管20と、第1の流量測定手段30と、第2の流量測定手段40と、比較回路50と、制御主回路60と、バルブ制御回路90と、制御バルブ100とを有する。また、実施例1に係る流量制御装置110は、必要に応じて、流量表示器70と、流量アラーム発報手段80と、を備えてもよい。
【0026】
主配管10は、流体を供給するための流路であり、入口は流体供給源に接続され、出口は流体を供給する対象に接続される。流体は、ガスの他、液体を含んでよい。本実施例においては、流体としてガスを用いる例を挙げて説明するが、本実施例に係る流量制御装置110は、ガス供給のみならず、薬液等の液体供給にも同様に適用することができる。流体を供給する対象は、用途に応じて種々の装置等が適用されてよいが、例えば、流体としてガスを供給する場合には、半導体製造装置のエッチング装置、拡散装置、成膜装置等のガスを用いて半導体ウェハーの処理を行う装置が供給対象であってもよい。なお、主配管は、バイパス管と呼んでもよい。
【0027】
また、主配管10には、バイパス層流素子11が設けられていてもよい。バイパス層流素子11は、ガスを層流状にして均一に装置等に供給するための素子である。なお、流体が液体の場合には、バイパス層流素子11は設けられなくてよい。
【0028】
センサ管20は、主配管10を流れている流体の一部を導入し、その流量を測定するための配管である。センサ管20は、主配管10の流量に大きな変動を与えない方が好ましいので、測定にのみ必要な流量の流体を導入すべく、主配管10よりも細い径の細配管が用いられてよい。センサ管20は、例えば、ステンレスで形成され、ステンレス細管として構成されてもよい。
【0029】
第1の流量測定手段30は、センサ管20を流れる流体の流量を測定するための手段であり、センサ管20に設けられる。第1の流量測定手段30は、フローセンサ31、32と、第1の実流量演算回路33とを含む。第1の実流量演算回路33は、実流量を算出する実流量算出回路34と、実流量が設定流量と等しいか否かを判定する判定回路35とを含む。
【0030】
フローセンサ31、32は、上流側フローセンサ31と下流側フローセンサ32とから構成され、センサ管20に設置される。フローセンサ31、32は、抵抗体からなるヒータとして構成され、抵抗体に電流を流すことにより用いる。主配管10に流体が流れていない場合には、上流側フローセンサ31と下流側フローセンサ32の熱は平衡状態に保たれる。一方、主配管10に流体が流れ出すと、センサ管20の入口から流体が導入され、上流側フローセンサ31の抵抗体の熱が奪われて下流側に移動して熱バランスが崩れ、温度分布に変化が発生する。そして、下流側フローセンサ32では、この温度変化により抵抗体の抵抗値に変化が生じる。この変化を、第1の実流量演算回路33の実流量算出回路34が検出し、実流量を算出する。
【0031】
実流量算出回路34は、上流側フローセンサ31と下流側フローセンサ32の抵抗体の値の変化を捉まえて、これを流量出力信号として算出する回路であり、例えば、ホイートストンブリッジ回路等が適用されてよい。
【0032】
判定回路35は、実流量算出回路34で算出された実流量の流量出力信号が、制御目標値となる流量設定信号と等しいか否かを判定するための回路である。なお、ここで言う等しいとは、物理的に完全に等しい流量を意味する訳ではなく、流量制御装置110における分解能の精度の範囲内で等しいことを意味しており、制御上、等しいとみなして処理を行う許容誤差、機械誤差を含めた上で等しいということを意味している。例えば、5%以内の誤差については、制御上、実流量と設定流量は等しいという制御処理を行う流量制御装置の場合には、5%以内の誤差も等しい範囲内に含むものとする。
【0033】
なお、実流量算出回路34と判定回路35を含む第1の実流量演算回路33は、センサ管20と離れた位置に設置されてもよい。
【0034】
実流量と比較判定される流量設定信号は、例えば、制御主回路60に入力された流量設定信号が、実流量演算回路33に送られて設定されてよい。また、判定回路35は、例えば、流量出力信号と流量設定信号との比較が可能なコンパレータ等を含んで構成されてもよい。判定回路35において、実流量の流量出力信号が、流量設定信号と等しいと判定されれば、流体は設定流量で異常なく正常に流れていることになる。
【0035】
しかしながら、図7の従来技術で説明したように、判定回路35で実流量と設定流量が等しく、正常状態と判定されている場合でも、フローセンサ31、32、実流量算出回路34又は判定回路35等の電気系統に異常があり、電気的には正常状態であっても、実際には異常な流量で流体が流れているような場合が起こり得る。つまり、第1のガス流量測定手段30自体に異常が発生している場合には、その異常を自己診断又は自己検出することができない。
【0036】
そこで、本実施例に係る流量制御装置110においては、第1の流量測定手段30の他、これとは独立した第2の流量測定手段40を更に設けている。
【0037】
第2の流量測定手段40は、第1の流量測定手段30とは独立してセンサ管20に設けられている。第2の流量測定手段40は、第1の流量測定手段30と独立しているため、第1の流量測定手段30と同様に、フローセンサ41、42と、実流量演算回路43とを備える。また、第2の流量測定手段40は、フローセンサ41、42が上流側フローセンサ41と下流側フローセンサ42とから構成される点と、第2の実流量演算回路43が実流量算出回路44と判定回路45とを含む点も、第1の流量測定手段30と同様である。また、フローセンサ41、42はセンサ管20に設置され、第2の実流量演算回路43はセンサ管20から離れて設置されてよい点も、第1の流量測定手段30と同様である。つまり、第2の流量測定手段40は、第1の流量測定手段30と別個独立にガス等の流体の流量を測定できるように構成されており、別個独立に設置されている。なお、個々の構成要素については、第1の流量測定手段30と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
また、第2の流量測定手段40は、主配管10に新たにセンサ管20を設けて設置されるのではなく、第1の流量測定手段30が設けられたセンサ管20に共通に設置されている。これにより、主配管10に新たにスペースを設けて別のセンサ管20を設ける必要が無くなり、既に存在するセンサ管20を有効利用して流体の流量を独立に測定することが可能となる。よって、省スペース化を図ることができ、例えば、集積化されたマスフローコントローラが用いられる場合であっても、既に存在するセンサ管20を利用して容易に低コストで第2の流量測定手段40を設置することができる。更に、既存のセンサ管20を用い、新たな配管設置を行わないので、接続関係を複雑化することなく簡素化した状態で第2の流量測定手段40を設けることができる。
【0039】
なお、第2の流量測定手段40に用いられているフローセンサ41、42、実流量算出回路43及び判定回路44は、第1の流量測定手段30に用いられているフローセンサ31、32、実流量算出回路33及び判定回路35と全く同じ構成部品を用いてもよいし、異なる部品を用いてもよい。完全に同じ特性で実流量の流量出力信号を出力する、という観点からは同じ部品とすることが好ましいが、流量を正確に測定できる限り、異なる部品を用いる構成であってもよい。
【0040】
また、本実施例では、第1の流量測定手段30と第2の流量測定手段40の双方において、測定された実流量が設定流量と等しいか否かを判定する判定回路35、45が、実流量演算回路33、43内に設けられている例を挙げて説明している。しかしながら、判定回路35、45は、実流量演算回路33、43の外部に設けられていてもよい。例えば、判定回路35、45は、制御主回路60や、比較回路50にその機能が設けられていてもよい。判定回路35、45は、実流量と設定流量が等しいか否かを判定でき、その結果を比較回路50及び制御主回路60に反映できれば、いずれに設けられてもよい。
【0041】
なお、実流量算出回路34、44及び判定回路35、45における演算は、流量を電圧に換算した信号により演算が行われてよい。例えば、0〜5〔V〕の間で流量換算した電圧がセット電圧として設定され、ガス等の流体の実流量の流量出力信号や設定流量信号が電圧ベースで設定され、比較演算等がなされてよい。
【0042】
判定回路35、45において、流体の実流量が設定流量と等しいと判定された場合には、第1の流量測定手段30及び第2の流量測定手段40の測定結果の流量出力信号が、比較回路50に出力される。一方、判定回路35、45において、流体の実流量が設定流量と等しくなく、差があると判定された場合には、設定流量通りに流体が供給されず、流量異常が発生しているので、流量異常検出信号が、制御主回路60に出力される。
【0043】
比較回路50は、第1の流量測定手段30の測定結果と、第2の流量測定手段40の測定結果とを比較し、両者の測定結果同士が等しいか否かを検出するための回路である。
【0044】
例えば、第1の流量測定手段30で測定された流体の実流量は、判定回路35により設定流量と等しいと判定され、第2の流量測定手段40で測定された流体の実流量も判定回路45により設定流量と等しいと判定された場合、双方とも正しく測定が出来ていれば、第1の流量測定手段30と第2の流量測定手段40の測定結果は一致するはずである。
【0045】
しかしながら、上述のように、判定回路35、45における判定結果は正常であっても、第1の流量測定手段30又は第2の流量測定手段40のいずれか一方が故障している場合には、両者の値は異なるはずである。つまり、第1の流量測定手段30又は第2の流量測定手段40のいずれか一方のみが故障している場合には、比較回路50において、正常に動作している方の流量測定手段30、40と、異常が発生している方の流量測定手段30、40との測定結果同士を比較することになるので、確実に流量測定手段30、40自体の異常を発見することができる。
【0046】
このように、比較回路50では、第1の流量測定手段30の測定結果と、第2の流量測定手段40の測定結果を比較し、両者の実測ガス流量が等しいか否かを判定することにより、第1の流量測定手段30及び第2の流量測定手段40が正常に機能しているか否かを検査する。
【0047】
なお、比較回路50においても、等しいという意味は、判定回路35、45における説明と同様に、物理的に流量が完全に一致していることまでは要せず、制御上、等しいという処理を行うレベルでの等しさであってよい。つまり、分可能の精度の範囲内で、許容誤差や機械誤差を含めた範囲における等しさであってよい。
【0048】
また、稀ではあるが、第1の流量測定手段30及び第2の流量測定手段40の双方が同時に故障する場合も考えられるが、そのような場合も、同じ故障の仕方で同じように誤った流量出力信号を出力することは極めて稀と考えられる。よって、第1の流量測定手段30と第2の流量測定手段40の双方に異常が発生した場合であっても、比較回路50において両測定手段30、40の実測量のガス流量差を検出することは可能である。
【0049】
なお、比較回路50における第1の流量測定手段30と第2の流量測定手段40の測定結果同士の比較結果は、制御主回路60に出力される。
【0050】
制御主回路60は、ガス流量制御装置110の全体の制御を行う制御手段である。制御主回路60は、比較回路50から出力された比較結果信号が、第1の流量測定手段30及び第2の流量測定手段40が正常である状態を示す信号であった場合には、流量制御を継続し、流量表示器70に流量を表示するとともに、必要に応じてバルブ制御回路90に流量制御状態を継続させる指令信号を出力する。なお、流量制御継続の場合には、バルブ制御回路90に特に指令信号の出力を必要としない場合には、特に制御指令信号を送らなくてもよい。
【0051】
一方、制御主回路60は、比較回路50から出力された比較結果信号が、第1の流量測定手段30又は第2の流量測定手段40の測定結果同士が等しくなく、いずれかの流量測定手段30、40に故障が発生し、異常流量が発生している状態を示す信号であった場合には、流量アラーム発報手段80に流量アラーム信号を出力し、流量アラームを発報させる。これにより、操作者に流量異常を知らせることができる。また、比較回路50ではなく、第1の流量測定手段30及び/又は第2の流量測定手段40から流量異常検出信号が入力された場合には、詰まり等の原因により流量異常が発生しているので、この場合にも、流量アラーム信号を出力し、流量アラームを発報させる。
【0052】
流量アラームの発報は、例えば、流量アラーム発報手段80を用いて行ってよい。流量アラーム発報手段80は、操作者に流量異常を了知させる種々の手段が用いられてよく、例えば、ブザー等の警報手段や、光を点滅させる点灯手段等が適宜適用されてよい。流量異常を知った操作者は、例えば、工程を止めて原因を調査する、等の適切な措置を採ることができ、流量異常のまま製品が製造され続ける事態を防ぐことができる。
【0053】
流量表示器70は、流量を表示する手段であり、現在の測定流量、又は過去の履歴を含めて流量表示を行う表示手段等が適用されてよい。
【0054】
また、制御主回路60には、設定流量を定める流量設定信号が入力されてよい。この流量設定信号は、第1の実流量演算回路33及び第2の実流量演算回路43に送られ、判定手段35、45において、実流量が設定流量から所定範囲内にあるか否かの判定に用いられる。また、流量設定信号は、バルブ制御回路90において、バルブ制御を行う際に用いられてもよい。
【0055】
バルブ制御回路90は、制御バルブ100の開度を制御する手段であり、制御主回路60からの制御指令信号により動作してよい。具体的なフィードバック制御は、制御主回路60で行われてもよいし、バルブ制御回路90で行われてもよい。フィードバック制御においては、例えば、設定流量信号と実測の流量出力信号とを比較し、それぞれの信号レベルが一致するまで、PID動作(比例、積分、微分)を行うような制御を実行してもよい。流体の主配管10への導入開始後、間もない段階では、流量は、オーバーシュートとアンダーシュートを繰り返し、ハンチングを起こしたような状態となる。これは、20〜30〔msec〕程度の短い時間であるが、その間、流量は安定しないのが通常である。このような、流体導入開始後、制御目標値に到達して安定するまでの所定の応答時間については、制御目標値に流量を追従させるフィードバック制御を行い、早期に目標値に到達するように制御することが好ましい。そこで、流体導入開始後の所定の応答時間内においては、第1の流量測定手段30及び第2の流量測定手段40で測定された実流量が設定流量と一致しない、又は実流量同士が一致しない場合であっても、制御主回路60は、これを流量異常として認識せず、流量を設定流量に一致させるフィードバック制御を実行する処理を行う。バルブ制御回路90は、制御主回路60から出力されるバルブ制御信号の指示に従い、そのようなフィードバック制御を実行する。なお、バルブ制御回路90は、制御バルブ100の制御を、制御バルブ100のバルブ開度を適切に調節することにより行う。
【0056】
制御バルブ100は、主配管10の出口に設けられ、主配管10から供給される流体の流量を調整する弁である。制御バルブ100は、電気的に開度を制御し易いように、例えば、ソレノイドバルブ等の電磁弁が適用されてよい。
【0057】
このように、本実施例に係るガス流量制御装置110によれば、通常の詰まり等を原因とする流量異常を検知するだけでなく、流量測定手段30、40の故障に基づく流量異常も検知することができる。しかも、流量測定手段30、40の故障に基づく流量異常は、新たにマスフローメータ等の流量計を設置することなく、既存のセンサ管20に独立した流量測定手段30、40を設けることにより、省スペース化に対応しつつ、簡素な構成で検出することができる。
【0058】
次に、図2を用いて、本実施例に係る流量制御装置110を用いた流量制御方法について説明する。図2は、本実施例に係る流量制御方法の処理フローを示した図である。
【0059】
ステップ100では、制御手段である制御主回路60に、設定流量信号が入力される。これにより、制御目標値が定まる。なお、入力された設定流量信号は、第1の実流量演算回路33、第2の実流量演算回路43及びバルブ制御回路90等、必要に応じてその値が送られてよい。
【0060】
ステップ110では、主配管10へのガス等の流体導入が開始される。主配管10の入口から、流体が導入される。
【0061】
ステップ120では、ソレノイドバルブ等の制御バルブ100の開度調整動作が開始する。これにより、流体の流量を調整するフィードバック制御が開始する。
【0062】
ステップ130では、センサ管20に導入された流体から、第1の流量測定手段30により流体の実流量の測定が行われ、次いで実流量が設定流量と等しくなっているか否かが判定される。流体の実流量の測定は、例えば、上流側フローセンサ31と下流側フローセンサ32の抵抗体から、実流量算出回路34で抵抗体の変化を検出することにより行われる。そして、実流量が設定流量に等しいか否かの判定は、判定回路35により行われる。
【0063】
ステップ130において、流量測定手段30の実流量が設定流量と等しいと判定されたときにはステップ150に進み、等しくないと判定された場合には、ステップ160に進む。
【0064】
ステップ140では、ステップ130と並行して、センサ管20に導入された流体から、第2の流量測定手段40により流体の実流量の測定が行われ、次いで実流量が設定流量と等しくなっているか否かが判定される。その具体的な内容は、ステップ130と同様であり、構成要素が上流側フローセンサ41、下流側フローセンサ42、実流量算出回路43及び判定回路45に入れ替わっただけであるので、その説明を省略する。
【0065】
ステップ140においても、ステップ130と同様に、実流量が設定流量と等しい場合にはステップ150に進み、等しくない場合には、ステップ160に進む。
【0066】
ステップ150では、比較回路50において、第1の流量測定手段30の測定結果と第2の流量測定手段40の測定結果が等しいか否かが比較判定される。ステップ150において、第1の流量測定手段30の測定結果と第2の流量測定手段40の測定結果が等しい場合にはステップ180に進み、等しくない場合にはステップ170に進む。
【0067】
ステップ180では、制御主回路60が、比較回路50から測定結果同士が一致しており、制御動作正常の比較結果を示す信号を受けて、流量制御状態を維持する制御を継続する処理を行い、処理フローを終了する。つまり、制御主回路60は、バルブ制御回路90に、制御状態維持の指令信号を出力するか、又は維持状態で変化は無いので、特に指令信号は出力しない。バルブ制御回路90は、制御バルブ100の開度を維持し、流体の流量を一定に保つ。これにより、正常な制御状態を維持することができる。また、制御主回路60は、フィードバック制御と同時に、流量表示手段70に流量を表示させる動作を行ってもよい。処理フロー終了後は、また最初から処理フローを繰り返す。
【0068】
ステップ130及びステップ140に戻り、第1の流量測定手段30又は第2の流量測定手段40において、実流量が設定流量と等しくなかった場合には、制御主回路60に流量異常検出信号を出力して、ステップ160に進む。
【0069】
ステップ160では、制御主回路60において、ステップ110のガス導入開始から所定の応答時間以内か否かが判定される。これは、制御を開始したすぐ後の段階では、目標値付近でオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返し、目標値に追従するまでに所定の応答時間を要するため、この段階は初期状態として通常運転状態とは区別するためである。なお、応答時間は、例えば20〜30〔msec〕といったレベルのオーダーであってよい。
【0070】
ステップ160において、まだ流体導入開始から所定応答時間以内であった場合には、ステップ120に戻り、制御バルブ90の開度調整動作が開始した段階から処理フローを繰り返す。一方、流体導入から所定応答時間が経過している場合には、詰まり等を原因とする流量異常が発生していると考えられるので、ステップ190に進む。
【0071】
ステップ190では、制御主回路60が流量異常アラーム信号を出力し、流量アラーム発報手段80を動作させ、操作者に流量異常を知らせる。そして、処理フローを終了し、終了後は、最初から処理フローを繰り返す。
【0072】
ステップ150に戻る。ステップ150において、第1の流量測定手段30による流量の測定結果と、第2の流量測定手段40による流量の測定結果とが等しくないときには、第1の流量測定手段30又は第2の流量測定手段40のいずれか又は双方に異常が発生していると考えられるので、比較回路50は比較判定結果を制御主回路60に出力し、ステップ170に進む。
【0073】
ステップ170では、ステップ160と同様に、制御主回路60において、ステップ110の流体導入開始から所定の応答時間以内であるか否かが判定される。応答時間は、ステップ160で説明したように、例えば20〜30〔msec〕程度であってよい。
【0074】
ステップ170において、流体導入開始から所定の応答時間の範囲内のタイミングであると判定された場合には、ステップ120に戻り、制御バルブ90の開度調整動作開始段階から処理フローを繰り返す。一方、流体導入開始から所定の応答時間が過ぎて通常動作段階に入っていると判定された場合には、ステップ190に進む。
【0075】
ステップ190では、上述のように、制御主回路60が流量異常アラーム信号を出力し、流量アラーム発報手段80を動作させ、警報を発して操作者に流量異常を知らせ、処理フローを終了する。処理フロー終了後は、また最初から処理フローを繰り返す。
【0076】
このように、本実施例に係る流量制御方法によれば、流量の正常時には制御状態を継続し、流量異常が検出されたときには、流量アラームを発報させるが、この場合の流量アラームは、単に流量測定手段30、40で流量異常が検出された場合のみならず、第1の流量測定手段30の測定結果と第2の流量測定手段の測定結果が一致しない場合も流量アラームを発することができ、流量測定手段30、40自体の異常に基づく流量異常をも検知することができる。これにより、流量制御装置110の自己診断と、高精度の流量異常検知が可能となる。
【0077】
図3は、比較のため、参考として従来のマスフローコントローラの処理フローを示した図である。図6で示したマスフローコントローラにおいて行われる処理フローに対応する。なお、図3において、比較のため、図2と同一のステップについては、同一のステップ番号を用いており、類似しているが内容又は意義が異なるステップについては、類似しているステップの一の位の数字を変えたステップ番号を付している。また、以下の説明中の構成要素の参照符号は、図6に対応して付している。
【0078】
図3において、ステップ100では、設定流量信号の入力が行われる。これは、制御目標値の入力であるので、本実施例に係る流量制御方法と同様のステップである。
【0079】
ステップ110では、主配管310へのガス導入が開始され、これもガス供給のために行われる共通のステップである。
【0080】
ステップ120では、制御バルブ400の開度調整動作が開始される。これにより、フィードバック制御が開始する共通のステップである。
【0081】
ステップ135では、制御主回路360において、ガス流量測定部330で測定された実流量が、設定流量と等しくなっているか否かが判定される。これは、フィードバック制御を行うための判定であり、流量異常を検出する作用は有していない。
【0082】
ステップ135において、目標値である設定流量と実流量が異なる場合には、ステップ120に戻り、目標値に実測値が等しくなるまで、制御バルブ400の開度調整動作のフィードバック制御を繰り返す。そして、実測量が設定流量と等しくなったときに、ステップ180に移るが、流量異常が発生して実測量が設定流量と差がある場合には、延々とステップ120とステップ135を繰り返す処理を実行するしか無く、流量異常を検出できない。
【0083】
ステップ180では、制御主回路で360において動作正常の判定がなされ、制御状態が維持され、処理フローを終了する。
【0084】
このように、図3の処理フローでは、流量異常が発生している場合であっても、延々とフィードバック制御を繰り返すのみであり、流量異常を検知することができない。
【0085】
図4は、参考比較のため、アラーム機能を持たせた従来のマスフローコントローラの処理フローを示した図である。図6で示したマスフローコントローラにおいて、制御主回路360にアラーム機能を搭載した場合に行われる処理フローに対応する。なお、図4において、比較のため、図2と同一のステップについては、同一のステップ番号を付している。また、以下の説明中の構成要素の参照符号は、図6に対応して付している。
【0086】
ステップ100〜ステップ120の設定流量信号入力、ガス導入及び制御バルブについては、図2及び図3の処理フローと同一であるので、その説明を省略する。
【0087】
ステップ130では、実流量制御主回路360において、実流量が設定流量と等しくなっているかの判定が行われる。これは、実施例1の図1に係る流量制御装置においては、第1の流量測定手段30及び第2の流量測定手段40の判定回路35、45で各々行われていた処理である。処理内容的には、図2のステップ130とほぼ同様である。
【0088】
ステップ130において、実流量が設定流量と等しいと判定された場合には、ステップ180に進み、制御状態を維持し、処理フローを終了する。一方、ステップ130において、実流量が設定流量と等しくないと判定された場合には、ステップ160に進む。
【0089】
ステップ160では、制御主回路360において、ガス導入から所定応答時間内であるか否かが判定される。これは、ガス導入開始の初期状態では、流量が安定しないため、フィードバック制御を継続するためであり、図2のステップ160と同様の処理内容である。
【0090】
ステップ160において、所定の応答時間内であった場合には、ステップ120に戻り、制御バルブ400の開度調整動作から処理フローを繰り返す。この動作も、図2のステップ160〜ステップ120と同様である。
【0091】
一方、ステップ160において、所定の応答時間を過ぎていた場合には、制御が安定した時期であるにも関わらず、実流量が設定流量と等しくならないので、ステップ190に進み、流量異常アラームを発報し、処理フローを終了する。この処理も、図2のステップ160〜ステップ190の動作と同じである。
【0092】
このように、一見すると、図4に示す処理フローは、流量異常を検知するアラーム機能を備え、問題無く見えるが、ステップ130における、実流量と設定流量との比較判定の際、流量検出系又は制御系に異常があり、見かけ上の信号が一致しているように動作すると、現実には流量異常が発生しても、これを異常として検知することができない。つまり、図4の処理フローは、図2の本実施例に係る流量制御方法の処理フローにおけるステップ140、150、170の、実流量を、第1の流量測定手段30と並行して独立した第2の流量測定手段40でも測定し、実流量の測定結果同士を比較して流量測定手段30、40(図1)の自己診断を行う機能及び工程がないため、ガス流量測定部330、制御主回路360の異常を検知することができない。
【0093】
図2に示した本実施例に係る流量制御方法の処理フローと、従来の図3、図4の処理フローを比較すると、本実施例に係る流量制御方法が、高精度な流量異常検出機能を有していることが分かる。
【実施例2】
【0094】
実施例2においては、実施例1に係る流量制御装置110を、ガス供給用のマスフローコントローラ110aに適用し、ドライエッチング装置を構成した例について説明する。図5は、実施例2に係るドライエッチング装置の全体構成を示した図である。
【0095】
実施例2に係るドライエッチング装置は、ガス供給系には、ガス導入バルブ120と、マスフローコントローラ110aと、ガスラインフィルタ130と、レギュレータ140と、ガス取り出しバルブ150とを備える。また、ドライエッチング装置は、チャンバー200を備え、チャンバー200内に、電極部180と、ステージ190を備え、ステージ190上には、ウェハーWが載置されている。更に、ドライエッチング装置は、ラジカルガスを生成するための電極ヘッド部170と、RF(Radio Frequency)発振器170をチャンバー200の外部に備え、真空排気系としてメインバルブ210と、圧力制御用バルブ220と、真空ポンプ230とを備える。また、ドライエッチング装置は、ステージ190の温度調整のためのステージ温度調節器240と、アース線250をチャンバー200の外部に備える。
【0096】
実施例2に係るドライエッチング装置のエッチング加工は、ウェハーWがステージ190上に載置され、真空ポンプ230、圧力制御バルブ220、メインバルブ210によってチャンバー200内が適切な真空度に調整され、ステージ温度調節器240によりステージ190が適切な温度に調整された状態で、ラジカルの活性化状態のエッチングガスがチャンバー200内に導入されることにより行われる。
【0097】
ガスの供給は、ガス取り出しバルブ150を開として取り出されたガスがレギュレータ140により粗く流量調整され、更にガスラインフィルタ130を介して清浄化されたガスがマスフローコントローラ110aにより高精度に流量調整され、ガス導入バルブ120を開とすることにより行われる。ガスは、ドライエッチング用の種々のガスが用いられてよいが、例えば、六フッ化硫黄(SF)ガス、四フッ化炭素(CF)ガス等が用いられてよい。
【0098】
電極ヘッド部160には、ガスが供給され、RF発振器により高周波が付与され、プラズマによりガスをイオン化・ラジカル化して、電極部180から、チャンバー200内にイオン化・ラジカル化したガスが供給される。
【0099】
活性化したガスは、ウェハーWと反応し、化学反応により、ウェハーWがエッチングされる。このようにして、反応性イオンエッチングが実行される。この場合、ガスの供給流量の制御は極めて重要であり、設定流量通りのガスを電極ヘッド分60に供給することにより、初めて適切な反応性イオンエッチングが実行される。よって、ガスの流量異常が発生すると、ウェハーWの適切なエッチングが行えず、不良品を製造してしまうことになる。特に、図5においては枚様式の処理装置を示しているが、複数枚のウェハーWを一度に処理する処理装置では、歩留まりを大きく低下させることになってしまう。
【0100】
かかる観点から、異常流量の検出は半導体製造のプロセスにおいて極めて重要であり、本実施例に係るマスフローコントローラ110aを用いることにより、流量異常を高精度に検出し、操作者に了知させることが可能となり、半導体製造の歩留まりを向上させることができる。
【0101】
なお、図5においては、反応性イオンエッチングの例を挙げて説明したが、反応ガスをチャンバー200に供給し、反応性ガスエッチングを行うドライエッチング装置としてもよい。この場合、RF発振器170、電極ヘッド部160及び電極部180は必要とせず、チャンバー200内に直接反応ガスを供給するような装置構成としてよい。
【0102】
また、ウエットエッチングを行う場合には、流体をエッチング液に変えてウエットエッチング用の装置として構成することにより、液体を設定流量通りに所定量供給することを要するウエットエッチング装置として構成することもできる。
【0103】
その他、流体を設定流量通りに所定量供給することが必要な装置には、半導体装置に限らず、総て本実施例に係る流量制御装置及び流量制御方法を適用することができる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例1に係る流量制御装置110の全体構成図である。
【図2】実施例1に係る流量制御方法の処理フローを示した図である。
【図3】従来のマスフローコントローラの処理フローを示した参考比較図である。
【図4】アラーム機能を持たせた従来のマスフローコントローラの処理フローを示した参考比較図である。
【図5】実施例2に係るドライエッチング装置の全体構成図である。
【図6】従来のマスフローコントローラ410の基本構成図である。
【図7】マスフローメータを併用した従来の流量制御装置の構成例を示した図である。
【符号の説明】
【0106】
10 主配管
11 バイパス層流素子
20 センサ管
30 第1の流量測定手段
31、32、41、42 フローセンサ
33 第1の実流量演算回路
34、44 実流量算出回路
40 第2の流量測定手段
43 第2の実流量算出回路
50 比較回路
60 主制御回路
70 流量表示器
80 流量アラーム発報手段
90 バルブ制御回路
100 制御バルブ
110、110a 流量制御装置
120 ガス導入バルブ
130 ガスラインフィルタ
140 レギュレータ
150 ガス取り出しバルブ
160 電極ヘッド部
170 RF発振器
180 電極部
190 ステージ
200 チャンバー
210 メインバルブ
220 圧力制御用バルブ
230 真空ポンプ
240 ステージ温度調節器
250 アース線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給する主配管と、
該主配管に並列に接続されたセンサ管と、
該センサ管を流れる前記流体の流量を独立して測定する第1の流量測定手段及び第2の流量測定手段と、
該第1の流量測定手段と該第2の流量測定手段の測定結果同士を比較し、該測定結果同士が等しいか否かを判定する比較回路と、
該測定結果同士が等しいときには、流量制御状態を維持し、該測定結果同士が等しくないときには、流量アラーム信号を出力する制御手段と、を有することを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
前記第1の流量測定手段及び前記第2の流量測定手段は、前記センサ管の上流側と下流側に備えられた抵抗体からなるフローセンサと、該フローセンサの温度分布の変化を検出する実流量演算回路とを、各々が備えることを特徴とする請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記実流量演算回路は、前記流体の実流量を算出する実流量算出回路と、該実流量が設定流量と等しいか否かを判定する判定回路とを備え、
前記制御手段は、該判定回路により該実流量が該設定流量と等しくないと判定されたときには、前記流量アラーム信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記制御手段から出力されるバルブ制御信号が入力されるバルブ制御回路を有し、
前記制御手段は、前記流体の導入開始から所定の応答時間内において、前記実流量が前記設定流量に等しくないときには、前記実流量を前記設定流量に追従させるように前記バルブ制御信号を出力し、
前記バルブ制御回路は、前記バルブ制御信号に基づいて、前記主配管に備えられた制御バルブを制御して前記ガスの流量を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流量制御装置。
【請求項5】
主配管に流体を供給する流体供給工程と、
該主配管に並列に接続されたセンサ管を流れる前記流体の流量を、第1の流量測定手段及び第2の流量測定手段で独立して測定する流量測定工程と、
該第1の流量測定手段と該第2の流量測定手段の測定結果同士を比較し、該測定結果同士が等しいか否かを判定する比較工程と、
該測定結果同士が等しいときには、流量制御状態を維持し、該測定結果同士が等しくないときには、流量アラーム信号を出力する制御工程と、を有することを特徴とするガス流量制御方法。
【請求項6】
前記流量測定工程は、前記流体の実流量を測定する工程と、該実流量が設定流量と等しいか否かを判定する工程を含み、
該実流量が該設定流量と等しいと判定されたときに、前記比較工程を実行することを特徴とする請求項5に記載の流量制御方法。
【請求項7】
前記比較工程において、前記流体供給工程を開始してから所定の応答時間内に、前記測定結果同士が等しくないと判定されたときには、
前記制御工程において、前記流量アラーム信号を出力せずに、前記実流量を設定流量に追従させる制御を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の流量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−55500(P2010−55500A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221762(P2008−221762)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】