説明

流量調整デバイス

【課題】駆動時の振動や電気ノイズを抑制するとともに、小型・軽量化が可能な流量調整デバイスを提供すること。
【解決手段】流量調整デバイス10は、管100内を流れる流体の流量を調整するデバイス(マイクロバルブ)であり、管100内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部1と、該変形部1の外周の一部を覆うように設けられた黒色の板状部材2と、当該板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段3とを備えている。板状部材2にレーザ照射手段3よりレーザを照射して板状部材2を加熱することにより、変形部1の温度を調整するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野やマイクロマシン分野等において、小型のアクチュエータの必要性が高まっている。
中でも、アクチュエータをマイクロバルブといった流量調整用のデバイスに用いる試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
従来のマイクロバルブに用いられているアクチュエータは、電圧の印加による変形を利用したものが主流であり、このようなアクチュエータでは、駆動時の振動や電気ノイズといった問題があった。特に電気ノイズで影響を考慮しないといけない医療用機器などでは使用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−317647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、駆動時の振動や電気ノイズを抑制するとともに、小型・軽量化が可能な流量調整デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の流量調整デバイスは、流体が流れる管内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部を有し、
前記変形部の体積の膨張または収縮により前記流体の流量を調整することを特徴とする。
これにより、駆動時の振動や電気ノイズを抑制するとともに、小型・軽量化が可能な流量調整デバイスを提供することができる。
【0006】
本発明の流量調整デバイスでは、前記変形部の周囲の一部に設けられた暗色の板状部材と、
前記管の外部から前記板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段とを有し、
前記板状部材にレーザを照射して前記板状部材を加熱することにより、前記変形部の温度を調整することが好ましい。
これにより、流体の流量をより容易に制御することができる。
【0007】
本発明の流量調整デバイスでは、前記変形部を冷却する冷却手段を有することが好ましい。
これにより、流体の流量をさらに容易に制御することができる。
本発明の流量調整デバイスでは、前記冷却手段は、前記変形部が設けられている前記管の外周面上に設けられていることが好ましい。
これにより、流体の流量をさらに容易に制御することができる。
【0008】
本発明の流量調整デバイスでは、前記変形部と、前記管内を流れる前記流体とを隔離する収縮性を有する隔壁を有することが好ましい。
これにより、流体と流量調整デバイスとの接触を防止することができる。
本発明の流量調整デバイスでは、前記変形部を構成する材料は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を含むことが好ましい。
これにより、変形部の膨張・収縮の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の流量調整デバイスの第1実施形態を示す断面図であり、(a)流量調整デバイスが開いている状態を示す図、(b)流量調整デバイスが閉じている状態を示す図である。
【図2】本発明の流量調整デバイスの第2実施形態を示す図であり、(c)流量調整デバイスが開いている状態を示す図、(d)管に設けられた流量調整デバイスの斜視図である。
【図3】本発明の流量調整デバイスの第3実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《第1実施形態》
まず、本発明の流量調整デバイスの第1実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の流量調整デバイスの第1実施形態を示す断面図であり、(a)流量調整デバイスが開いている状態を示す図、(b)流量調整デバイスが閉じている状態を示す図である。
【0011】
図1(a)に示すように、流量調整デバイス10は、管100内を流れる流体の流量を調整するデバイス(マイクロバルブ)であり、管100内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部1と、該変形部1の外周の一部を覆うように設けられた黒色の板状部材2と、当該板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段3とを備えている。
【0012】
変形部1は、図1に示すように、管100の内部に設けられており、温度変化により体積が膨張または収縮する機能を備えている。
例えば、常温においては、図1(a)に示すように、変形部1は収縮しており、変形部1と管100の内壁との間に空隙が存在し、管100内を流体が流れた状態となる。これに対して、変形部1の温度が上昇すると、図1(b)に示すように、変形部1の体積が膨張し、変形部1によって、変形部1と管100の内壁との間の空隙が埋まり、流体の流れが止まる。また、変形部1の体積変化を調整することで、管100内を流れる流体の流量を調整することが可能となる。
【0013】
このような変形部1を構成する材料としては、温度変化により体積が変化するものであれば特に限定されず、例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)やポリカーボネート等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、特にポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を用いることにより、変形部の膨張・収縮の応答性を向上させることができる。
【0014】
板状部材2は、図1に示すように、上記変形部1の一部を覆うように設けられている。
この板状部材2は、その外表面が黒色をなしており、レーザを照射することにより、発熱する機能を備えている。
このような黒色の板状部材2を備えることにより、変形部1の温度を容易に変化させることができる。
【0015】
板状部材2を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、アルミやステンレス等を挙げることができる。
レーザ照射手段3は、板状部材2に対して管100外からレーザを照射する機能を有している。
このように、管100の外側からレーザを照射するので、管100内に設置する装置を小型化することができ、流量調整デバイス10はより小さな管100内にも設置することができる。
【0016】
以上説明したような流量調整デバイス10では、レーザが照射されると板状部材2を通して変形部1の温度が上昇し、変形部1が膨張する。これにより、流体が通過できる面積が連続的に減少し、最後は流量が0となる。さらに、レーザの強度を調節しながら膨張の程度を変えることにより流量を調節することができる。
特に、流量調整デバイス10は、従来のように電圧の印加による変形を利用したものではないので、駆動時の振動や電気ノイズの発生を抑制することができる。また、装置そのものの構成が簡単なため、小型・軽量化が容易である。
なお、上記説明では、板状部材2として黒色のものについて説明したが、これに限定されず、濃青色、濃緑色等の暗色であればよい。
【0017】
《第2実施形態》
次に、本発明の流量調整デバイスの第2実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、前述した第1実施形態と異なる点について説明し、同様な構成についてはその説明を省略する。
図2は、本発明の流量調整デバイスの第2実施形態を示す図であり、(c)流量調整デバイスが開いている状態を示す図、(d)管に設けられた流量調整デバイスの斜視図である。
【0018】
本実施形態に係る流量調整デバイス10は、図2に示すように、前述した第1実施形態と同様に、管100内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部1と、該変形部1の外周の一部を覆うように設けられた黒色の板状部材2と、当該板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段3とを備え、さらに、変形部1を冷却する冷却手段4を有している点で前述した第1実施形態と異なっている。
冷却手段4は、図2(c)および(d)に示すように、管100の変形部1が設けられた部位の外周面上に設けられている。
【0019】
本実施形態において、冷却手段4は、冷媒(例えば、水、プロピレングリコール等)が循環する構成となっている。
このような冷却手段4を備えることにより、温度が上昇した変形部1の温度を迅速に下げることができ、流量調整デバイス10の応答性をより高いものとすることができる。
なお、本実施形態では、冷却手段4として、冷媒を利用したものについて説明したが、これに限定されず、例えば、ペルチェ素子等であってもよい。
また、冷却手段4が、管100の外周面上に設けられた構成について説明したが、これに限定されず、例えば、板状部材2表面に設けられていてもよい。
【0020】
《第3実施形態》
次に、本発明の流量調整デバイスの第3実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、前述した第1実施形態と異なる点について説明し、同様な構成についてはその説明を省略する。
図3は、本発明の流量調整デバイスの第3実施形態を示す断面図である。
【0021】
本実施形態に係る流量調整デバイス10は、図3に示すように、前述した第1実施形態と同様に、管100内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部1と、該変形部1の外周の一部を覆うように設けられた黒色の板状部材2と、当該板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段3とを備え、さらに、管100の内壁面、変形部1および板状部材2を覆う内膜5を有している点で前述した第1実施形態と異なっている。
【0022】
内膜5は、図3に示すように、管100の内壁面、変形部1および板状部材2を覆うように設けられており、管100の内壁面、変形部1および板状部材2と管100内を流れる流体とが接触するのを防止する機能を有している。これにより、流体に対する、管100の内壁面、変形部1および板状部材2の材質等による影響をより小さいものとすることができる。
このような内膜5は、変形部1の変形に対して追従可能は材料で構成されている。このような材料としては、例えば、一般的なチューブの材料として用いられているシリコンゴム等が挙げられる。
【0023】
なお、本実施形態では、管100内全面を内膜5で覆う構成について説明したが、これに限定されず、例えば、変形部1および板状部材2のみを覆うような構成であってもよいし、変形部1のみを覆うような構成であってもよい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0024】
1…変形部 2…板状部材 3…レーザ照射手段 4…冷却手段 5…内膜 10…流量調整デバイス 100…管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部を有し、
前記変形部の体積の膨張または収縮により前記流体の流量を調整することを特徴とする流量調整デバイス。
【請求項2】
前記変形部の周囲の一部に設けられた暗色の板状部材と、
前記管の外部から前記板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段とを有し、
前記板状部材にレーザを照射して前記板状部材を加熱することにより、前記変形部の温度を調整する請求項1に記載の流量調整デバイス。
【請求項3】
前記変形部を冷却する冷却手段を有する請求項1または2に記載の流量調整デバイス。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記変形部が設けられている前記管の外周面上に設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の流量調整デバイス。
【請求項5】
前記変形部と、前記管内を流れる前記流体とを隔離する収縮性を有する隔壁を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の流量調整デバイス。
【請求項6】
前記変形部を構成する材料は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の流量調整デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31894(P2012−31894A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170155(P2010−170155)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】